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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140359
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20241003BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20241003BHJP
   B05B 11/10 20230101ALI20241003BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B05B11/00 101Q
B05B11/00 101G
B05B11/00 101A
B05B11/10 101A
B05B11/10 101G
B05B11/10 101Q
B65D83/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051464
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB02
3E014PB03
3E014PC03
3E014PD12
3E014PE02
3E014PE04
3E014PE05
3E014PE06
3E014PE08
3E014PE10
3E014PE12
3E014PE14
3E014PE16
3E014PF08
3E084AA02
3E084AA12
3E084AB01
3E084AB05
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB12
3E084FA09
3E084FB01
3E084KA05
3E084KB01
3E084KB06
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD22
3E084LD26
(57)【要約】
【課題】倒立姿勢としても、内容液が意図せず外部に漏出することを抑制することができる吐出容器を提案する。
【解決手段】本開示の吐出容器100は、口部11、胴部13及び底部を有し、内容液の収容空間Sを形成する容器本体10と、下部に内容液を吸入する吸入孔31c1を有するとともに側部に外気導入孔31dを設けたシリンダ31と、下方に押圧可能に上方付勢されたステム37とを有し、容器本体10内の内容液をノズル41に向けて圧送するポンプ部30と、ポンプ部30を容器本体10に固定する装着キャップ20と、ノズル41を有し、ステム37に装着されるとともに内容液を外部に導くノズルヘッド40と、シリンダ31を径方向外側から囲む、有底筒状の空気溜め筒60と、上下方向に延在し、下端部において吸入孔31c1に連通するとともに上端部において収容空間S内に開放された、倒立時吸入流路Pとを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、胴部及び底部を有し、内容液の収容空間を形成する容器本体と、
下部に内容液を吸入する吸入孔を有するとともに側部に外気導入孔を設けたシリンダと、該シリンダ内において下方に押圧可能に上方付勢されたステムとを有し、前記ステムの押圧により前記容器本体内の内容液をノズルに向けて圧送するポンプ部と、
前記ポンプ部を前記容器本体に固定する装着キャップと、
前記ノズルを有し、前記ステムに装着されるとともに内容液を外部に導くノズルヘッドと、
前記シリンダを径方向外側から囲む、有底筒状の空気溜め筒と、
上下方向に延在し、下端部において前記吸入孔に連通するとともに上端部において前記収容空間内に開放された、倒立時吸入流路と
を備える、吐出容器。
【請求項2】
前記ノズルヘッド及び前記装着キャップは、それぞれ下側ボール保持部、上側ボール保持部並びに前記下側ボール保持部及び前記上側ボール保持部を連結する傾斜部を形成するボール可動領域の上壁及び下壁を備え、
前記容器本体が正立姿勢から倒立姿勢へと姿勢変更すると、ボールが前記下側ボール保持部から前記傾斜部を通って前記上側ボール保持部へと移動することによって、前記下側ボール保持部における前記上壁が前記下壁へと近づくように変位可能となり、前記ノズルヘッドが押下可能となる、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項3】
前記ノズルヘッドを押下していない状態における、前記上側ボール保持部における前記上壁と前記下壁との上下方向距離は、前記ボールの直径と前記ノズルヘッドの押下ストロークの和以上である、請求項2に記載の吐出容器。
【請求項4】
前記ノズルヘッドを押下していない状態における、前記下側ボール保持部における前記上壁と前記下壁との上下方向距離は、前記ボールの直径以上であり、前記ボールの直径と前記ノズルヘッドの押下ストロークの和より小さい、請求項2又は3に記載の吐出容器。
【請求項5】
前記ノズルヘッドを押下した状態において、前記傾斜部における前記上壁と前記下壁との最小距離は、前記ボールの直径よりも小さい、請求項2又は3に記載の吐出容器。
【請求項6】
前記ボール可動領域は、周方向の対向する2箇所に設けられ、一方のボール可動領域を構成する各部位は、他方のボール可動領域の各部位を中心軸線周りに180度回転させた位置に配置されている、請求項2又は3に記載の吐出容器。
【請求項7】
前記装着キャップと前記ノズルヘッドの少なくとも一方に周方向の相対位置を位置決めするための位置決めリブを設けた、請求項1又は2に記載の吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤等を収容し吐出する吐出容器としては、例えば特許文献1に記載されているように、ノズルの側部に設けた操作レバーを後方に引くことによりステムが容器本体に対して下降して内容液がノズルの噴出孔から噴出されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020- 55560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、食材や容器等に倒立姿勢で内容液を噴出させる場合、倒立姿勢とすることでポンプのシリンダに設けた外気導入孔を通じて容器本体内の内容液が逆流し、外部へと漏出してしまう場合があったため、この点において未だ改善の余地があった。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、倒立姿勢としても、内容液が意図せず外部に漏出することを抑制することができる吐出容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本開示の吐出容器は、
[1]
口部、胴部及び底部を有し、内容液の収容空間を形成する容器本体と、
下部に内容液を吸入する吸入孔を有するとともに側部に外気導入孔を設けたシリンダと、該シリンダ内において下方に押圧可能に上方付勢されたステムとを有し、前記ステムの押圧により前記容器本体内の内容液をノズルに向けて圧送するポンプ部と、
前記ポンプ部を前記容器本体に固定する装着キャップと、
前記ノズルを有し、前記ステムに装着されるとともに内容液を外部に導くノズルヘッドと、
前記シリンダを径方向外側から囲む、有底筒状の空気溜め筒と、
上下方向に延在し、下端部において前記吸入孔に連通するとともに上端部において前記収容空間内に開放された、倒立時吸入流路と
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本開示の吐出容器は、
[2]
上記[1]に記載の構成において、前記ノズルヘッド及び前記装着キャップは、それぞれ下側ボール保持部、上側ボール保持部並びに前記下側ボール保持部及び前記上側ボール保持部を連結する傾斜部を形成するボール可動領域の上壁及び下壁を備え、前記容器本体が正立姿勢から倒立姿勢へと姿勢変更すると、ボールが前記下側ボール保持部から前記傾斜部を通って前記上側ボール保持部へと移動することによって、前記下側ボール保持部における前記上壁が前記下壁へと近づくように変位可能となり、前記ノズルヘッドが押下可能となることが好ましい。
【0008】
また、本開示の吐出容器は、
[3]
上記[2]に記載の構成において、前記ノズルヘッドを押下していない状態における、前記上側ボール保持部における前記上壁と前記下壁との上下方向距離は、前記ボールの直径と前記ノズルヘッドの押下ストロークの和以上であることが好ましい。
【0009】
また、本開示の吐出容器は、
[4]
上記[2]又は[3]に記載の構成において、前記ノズルヘッドを押下していない状態における、前記下側ボール保持部における前記上壁と前記下壁との上下方向距離は、前記ボールの直径以上であり、前記ボールの直径と前記ノズルヘッドの押下ストロークの和より小さいことが好ましい。
【0010】
また、本開示の吐出容器は、
[5]
上記[2]から[4]のいずれかに記載の構成において、前記ノズルヘッドを押下した状態において、前記傾斜部における前記上壁と前記下壁との最小距離は、前記ボールの直径よりも小さいことが好ましい。
【0011】
また、本開示の吐出容器は、
[6]
上記[2]から[5]のいずれかに記載の構成において、前記ボール可動領域は、周方向の対向する2箇所に設けられ、一方のボール可動領域を構成する各部位は、他方のボール可動領域の各部位を中心軸線周りに180度回転させた位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本開示の吐出容器は、
[7]
上記[1]から[6]のいずれかに記載の構成において、前記装着キャップと前記ノズルヘッドの少なくとも一方に周方向の相対位置を位置決めするための位置決めリブを設けたことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、倒立姿勢としても、内容液が意図せず外部に漏出することを抑制することができる吐出容器を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係る吐出容器の正面一部断面図である。
図2図1における、ポンプ部部分の拡大図である。
図3】本開示の一実施形態に係る吐出容器の正面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る吐出容器を倒立姿勢として内容液を吐出させている状態を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る吐出容器を横倒し姿勢とした状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示をより具体的に説明する。
【0016】
本開示の一実施形態に係る吐出容器100について、図1図5を用いて詳細に例示説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、容器の正立状態を基準とし、ノズルヘッド40が位置する側を上方(図1における上側)とし、容器本体10が位置する側を下方(図1における下側)とする。この上方及び下方は、吐出容器100が倒立姿勢となった状態においても吐出容器100を基準とし、ノズルヘッド40側を上方、容器本体10側を下方とする。
【0017】
また、径方向外側とは、図1において上下方向に延びる吐出容器100の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oから離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を指すものとする。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る吐出容器100は、口部11、胴部13及び底部(図示せず)を有し、例えば濃縮液などの内容液の収容空間Sを形成する容器本体10と、シリンダ31及びシリンダ31内において下方に押圧可能に上方付勢されたステム37を有し、ステム37の押圧により容器本体10内の内容液をノズル41にむけて圧送するポンプ部30と、ポンプ部30を容器本体10に固定する装着キャップ20と、ノズル41及び上方に向けて縮径するノズルカバー42を有しステム37に装着されるとともに内容液を外部に導くノズルヘッド40とを備えている。
【0019】
容器本体10は、図1等に示すように、装着キャップ20が装着される口部11と、口部11の下端部に連なり口部11よりも径方向外側に拡径された肩部12と、肩部12の下端部に連なり内容液の収容空間Sを形成する胴部13と、胴部13の下端部を閉塞する底部(図示せず)とを備えている。
【0020】
口部11は、略円環状の横断面を有しており、その外面には、装着キャップ20の雌ねじ部21aにねじ係合可能な雄ねじ部11aが形成されている。
【0021】
なお、本実施形態では、口部11に設けた雄ねじ部11aが装着キャップ20の雌ねじ部21aにねじ係合するように構成したが、この態様には限定されない。口部11に設けた環状突部を装着キャップ20側の突部と打栓係合させることにより装着キャップ20を装着するようにしてもよい。
【0022】
装着キャップ20は、図1に示すように、口部11にねじ係合させる装着筒21と、装着筒21の上端を閉塞する天壁23と、天壁23の上面に立設された、上部外筒25a、上部中筒25b及び上部内筒25cと、上部内筒25cの径方向内側から下方に垂下するシール筒26とを備えている。装着筒21の外面には、容易に把持してねじ係合させ、ねじ係合を解除できるように、縦目ローレット21bが形成されている。シール筒26の径方向内側には、後述するポンプ部30のステム37を貫通させるキャップ開口27が設けられている。装着筒21の内面には、上述のように、口部11に設けられた雄ねじ部11aにねじ係合する雌ねじ部21aが形成されている。また、後述するポンプ部30のシリンダ31上端において径方向外側に僅かに拡径した装着端部31aが、シール筒26の径方向外側に形成された凹所25d(図2参照)に嵌合している。さらに、装着端部31aの下端部が天壁23と口部11の上端部との間で挟持されたパッキンPKにより下方から支持されることによってポンプ部30は装着キャップ20によって容器本体10に対して強固に固定されている。
【0023】
ポンプ部30は、ポンプ部30の外形を画するとともに容器本体10に固定されるシリンダ31と、下方に向けて押圧可能に上方付勢されたステム37と、ステム37の下部に固定され、第1付勢ばね32によって上方付勢されたポペット33と、ポンプ部30の圧縮空間PSを下端部に設けたシール部34bによりシールするとともにシリンダ31の内面に沿って上下方向に移動可能なピストン34と、内容液が容器本体10に逆流するのを抑制するボール弁39とを備えている。ピストン34は、第2付勢ばね35によって、ステム37に対して下方に付勢されるとともに上端部に設けたピストン摺動部34aがステム37の下端部のステム摺動部37aの内面に摺動可能に当接している。
【0024】
シリンダ31は、その上端部に径方向外側に僅かに拡径した装着端部31aを有している。また、シリンダ31の下部には、下方に向かって縮径し、ボール弁39が着座する弁座31bと、ボール弁39の上方への変位を規制するストッパ31b1と、弁座31bの下端部から垂下し、空気溜め筒36を嵌合固定する装着筒部31cとを有している。第1付勢ばね32の下端が弁座31bの上端部のストッパ31b1で支持されており、第1付勢ばね32がポペット33を通じてステム37を上方付勢している。
【0025】
空気溜め筒36は、ポンプ部30を構成するシリンダ31を径方向外側から囲む有底筒状の部材である。空気溜め筒36は、シリンダ31を囲む円筒状の筒側壁36aと、筒側壁36aの下部を閉塞するとともに吸入孔31c1に通じる底壁開口36b1を有する筒底壁36bと、筒側壁36aの径方向内側に設けられ、装着筒部31cの外面に嵌合することで空気溜め筒36をシリンダ31に固定する筒内壁36cと、筒側壁36aの径方向外側に形成され、筒側壁36aとの間に形成される凹所に吸入パイプP(倒立時吸入流路)を嵌合固定可能な筒外壁36dと、筒側壁36a及び筒外壁36dの下端部に装着され、吸入パイプPからの内容液を吸入孔31c1へと導く底部空間Bを形成する底皿壁36eとを備えている。
【0026】
筒側壁36aと筒外壁36dとの間の凹所には、筒側壁36aの径方向外側において上下方向に延在し、下端部において底部空間Bを通じて吸入孔31c1に連通するとともに上端部において容器本体10の収容空間S内に開放された、吸入パイプPが装着されている。すなわち、吸入パイプPの上端部は、底部空間B、吸入孔31c1、ボール弁39を通じてポンプ部30の圧縮空間PS内と連通している。
【0027】
本実施形態では、シリンダ31と空気溜め筒36の筒側壁36aとの間の空気溜めARは、空気で満たされている。この構成によって、吐出容器100の倒立姿勢において容器本体10の収容空間S内の内容液がシリンダ31の外気導入孔31d(図2参照)経由で外部に漏出してしまうことを抑制することができる。
【0028】
ノズルヘッド40は、内側にノズル流路Nを形成する筒状のノズル41と、ノズル41の上部に一体形成されノズル41の径方向外側を覆うノズルカバー42と、ノズルカバー42の下端部から径方向外側に延びるノズルフランジ42aと、ノズルフランジ42aの下面から垂下し、上部外筒25aの内側及び上部内筒25cの外側に沿って動くことでノズルヘッド40の上下方向の移動をガイドする外ガイド筒42b及び内ガイド筒42cとを備えている。
【0029】
ノズル41は、上下方向に延びる筒状の部位であり、内側に内容液が流れるノズル流路Nが形成されている。ノズル41の下端部内面に、ステム37の上端部外面が嵌合することによって、ノズルヘッド40がポンプ部30に対して固定されている。
【0030】
本実施形態では、ノズル41の上端部にはノズル孔43aが形成されており、ポンプ部30により圧送された内容液を旋回させながらノズル孔43aへと導くことによって、内容液をノズル孔43aから勢いよく噴出させることができる。
【0031】
本実施形態では、図3等に示すように、ノズルヘッド40の外ガイド筒42bと、装着キャップ20の上部中筒25bとの間の上下方向位置には、容器本体10の姿勢変更とともにボール50が移動可能なボール可動領域60が形成されている。より具体的には、ボール可動領域60は、容器本体10の正立姿勢においてボール50を保持する下側ボール保持部65と、容器本体10の倒立姿勢においてボール50を保持する(図4参照)上側ボール保持部67と、下側ボール保持部65及び上側ボール保持部67を連結する傾斜部62とを形成する上壁61及び下壁63を備えている。
【0032】
本実施形態では、図3及び図4に示すように、上壁61及び下壁63は、それぞれ外ガイド筒42b及び上部中筒25bの一部を切り欠くことにより形成されている。
【0033】
図3は、容器本体10の正立姿勢において、ボール50が下側ボール保持部65内に保持されている状態を示している。ノズルヘッド40を押下していない状態において、この下側ボール保持部65における上壁61と下壁63の上下方向距離Hは、ボール50の直径D以上であり、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和よりも小さい。この構成によって、容器本体10の正立姿勢においてボール50が下側ボール保持部65に保持された状態では、ノズルヘッド40を所定の押下ストロークだけ押下することができない。従って、容器本体10の正立姿勢において意図しない内容液の吐出を抑制することができる。
【0034】
一方、図3に示す容器本体10の正立姿勢から図4に示す倒立姿勢へと変更すると、ボール50は、下側ボール保持部65から傾斜部62を経由して上側ボール保持部67内へと進入する。図3に示すように、ノズルヘッド40を押下していない状態において、上側ボール保持部67における上壁61(本実施形態ではノズルフランジ42aの下端部と同一高さである)と下壁63の上下方向距離Hは、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和以上である。この構成によって、図4に示す容器本体10の倒立姿勢においてボール50が上側ボール保持部67に保持された状態では、ノズルヘッド40を白抜き矢印で示すように所定の押下ストロークだけ押下しても、上側ボール保持部67における上壁61と下壁63との上下方向距離がボール50の直径D未満になることがなくノズルヘッド40の押下が阻害されることがない。従って、容器本体10の倒立姿勢においてのみノズルヘッド40を所定の押下ストロークだけ押下して内容液の吐出を行うことができる。
【0035】
なお、装着キャップ20とノズルヘッド40の少なくとも一方に位置決めリブを設け、他方に設けたリブ又は凹所等に位置決めリブが係合することによって、装着キャップ20とノズルヘッド40との周方向の相対位置を位置決めすることが好ましい。
【0036】
本実施形態では、図4に示すように、ノズルヘッド40を押下した状態において、傾斜部62における上壁61と下壁63との最小距離Hは、ボール50の直径Dよりも小さくなるように構成されている。この構成によって、容器本体10を倒立姿勢としてノズルヘッド40を押下した後は、姿勢変更してもボール50が上側ボール保持部67から傾斜部62内に入ることがない。従って、ノズルヘッド40を押下した状態を安定的に維持して内容液の吐出を継続することができる。
【0037】
以上のような構成の吐出容器100を使用するに際しては、まず、図1及び図3の状態から片手で容器本体10の胴部13を把持して持ち上げ、図4に示す倒立姿勢へと姿勢変更する。この姿勢変更によって、ボール可動領域60内のボール50は、図3に示す下側ボール保持部65から傾斜部62を経由して、図4に示すように、上側ボール保持部67内に移動する。上述のように、ノズルヘッド40を押下していない状態において、上側ボール保持部67における上壁61の最下部と下壁63の最上部との上下方向距離Hは、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和以上となるように構成されている。このため、図4に示す容器本体10の倒立姿勢においてボール50が上側ボール保持部67に保持された状態では、ノズルヘッド40を白抜き矢印で示すように所定の押下ストロークだけ押下しても、上側ボール保持部67における上壁61と下壁63との上下方向距離がボール50の直径D未満になることがなくノズルヘッド40の押下が阻害されることがない。従って、容器本体10の倒立姿勢においてのみノズルヘッド40を所定の押下ストロークだけ押下して内容液の吐出を行うことができる。
【0038】
ノズルヘッド40を下方に押下すると、ノズルヘッド40が装着されたステム37も下方へ移動し、ステム37に固定されたポペット33及び第2付勢ばね35を介してステム37に連なるピストン34も下方に移動し、ポペット33の下方の圧縮空間PS内の内容液は、ピストン34によって圧縮される(図1及び図2参照)。本実施形態では、ポンプ部30は蓄圧式ポンプとされており、圧縮空間PS内が所定の圧力に達すると、第2付勢ばね35の付勢力に抗してピストン34が上方に僅かに移動してポペット33とピストン34の突部33b,34c同士(図2参照)の間に隙間が形成される。圧縮された内容液は、ポペット33とピストン34の間の隙間を通り、更に間欠リブ33a,37b(図2参照)の間の流路を通って、ノズル41のノズル流路N内をノズル孔43aへと圧送される。
【0039】
ノズル41内を通過した内容液は、ノズルヘッド40の上端(先端)に設けられたスピン溝内において旋回しながらノズル孔43aへと導かれる。この構成によって、内容液はノズル孔43aから勢いよく噴出する。
【0040】
本実施形態では、図4に示すように、ノズルヘッド40を押下した状態において、傾斜部62における上壁61と下壁63との最小距離Hは、ボール50の直径Dよりも小さくなるように構成されている。この構成によって、容器本体10を倒立姿勢としてノズルヘッド40を押下した後は、姿勢変更してもボール50が上側ボール保持部67から傾斜部62に入ることがない。従って、ノズルヘッド40を押下した状態を安定的に維持して内容液の吐出を継続することができる。
【0041】
利用者は、内容液の使用が終了すると、ノズルヘッド40の押圧を停止する。これに伴い、押圧されて下方に移動していたノズルヘッド40、ステム37及びポペット33は、第1付勢ばね32の付勢力によって、再び上方へと移動する。このとき、ピストン34とポペット33の隙間は閉じられている。シリンダ31の圧縮空間PS内は体積増加に伴い負圧となり、ボール弁39が弁座31bから離隔して弁が開放される。これによって、容器本体10の収容空間S内の内容液が吸入パイプP、底部空間B、吸入孔31c1及び弁(ボール弁39)を通過してシリンダ31内に充填される。このとき、ボール弁39は、ストッパ31b1に当接して弁が開放された状態が維持される。
【0042】
ノズルヘッド40、ステム37及びポペット33が上死点に至ったところで圧縮空間PSの膨張が停止し、内容液の充填が完了する。シリンダ31内への内容液の充填に伴い、容器本体10の収容空間S内が負圧に転じた場合、ノズルヘッド40と装着キャップ20の間の空間から取り込まれた空気は、ステム37と装着キャップ20の間の隙間を通ってシリンダ31内に入った後、外気導入孔31dを通じて空気溜めAR内に導入される。空気溜めARは、筒側壁36aの上端部において収容空間Sと連通しているため、収容空間S内に必要な空気が導入される。
【0043】
なお、本実施形態では、シリンダ31と空気溜め筒36の筒側壁36aとの間の空気溜めARが空気で満たされることによって、シリンダ31の外面が内容液に直接触れるのを抑制している。この構成によって、倒立姿勢とした際に、容器本体10の収容空間S内の内容液がシリンダ31の外気導入孔31d(図2参照)経由で意図せず外部に漏出してしまうことを抑制することができる。
【0044】
利用者は、内容液の使用を終了すると、ノズルヘッド40の押下を停止するとともに、容器本体10を倒立姿勢から正立姿勢へと変更する。この姿勢変更によって、ボール50は、ボール可動領域60の上側ボール保持部67から傾斜部62を経由して再び下側ボール保持部65内に保持される。ノズルヘッド40を押下していない状態において、この下側ボール保持部65における上壁61と下壁63の上下方向距離Hは、ボール50の直径D以上であり、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和よりも小さい(図3参照)。この構成によって、容器本体10の正立姿勢においてボール50が下側ボール保持部65に保持された状態では、ノズルヘッド40を所定の押下ストロークだけ押下することができない。従って、容器本体10の正立姿勢において意図しない内容液の吐出を抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、ボール可動領域60を周方向の対向する2箇所に設けている。そして、一方のボール可動領域60を構成する各部位(下側ボール保持部65、上側ボール保持部67、傾斜部62等)は、他方のボール可動領域60の各部位を中心軸線O周りに180度回転させた位置に配置されている。この構成によって、図5に示すように吐出容器100を横倒しした状態でも、2箇所のボール可動領域60のうちの1箇所は、下側ボール保持部65の方が上側ボール保持部67よりも図の下方に位置する可能性が高まる。すなわち、一方のボール可動領域60において上側ボール保持部67の方が下側ボール保持部65よりも図の下方に位置する場合、他方のボール可動領域60において下側ボール保持部65の方が上側ボール保持部67よりも図の下方に位置することになる。従って、少なくとも1つのボール50が下側ボール保持部65内で保持される可能性が高まるので、横倒し姿勢でもノズルヘッド40の押下可能距離を所定ストロークより小さくして内容液の吐出を抑制することができる。
【0046】
以上述べたように、本実施形態は、口部11、胴部13及び底部を有し、内容液の収容空間Sを形成する容器本体10と、下部に内容液を吸入する吸入孔31c1を有するとともに側部に外気導入孔31dを設けたシリンダ31と、シリンダ31内において下方に押圧可能に上方付勢されたステム37とを有し、ステム37の押圧により容器本体10内の内容液をノズル41に向けて圧送するポンプ部30と、ポンプ部30を容器本体10に固定する装着キャップ20と、ノズル41を有し、ステム37に装着されるとともに内容液を外部に導くノズルヘッド40と、シリンダ31を径方向外側から囲む、有底筒状の空気溜め筒36と、上下方向に延在し、下端部において吸入孔31c1に連通するとともに上端部において収容空間S内に開放された、倒立時吸入流路(吸入パイプP)とを備えるように構成した。このような構成の採用によって、ポンプ部30のシリンダ31を空気溜め筒36で囲むことで内容液が直接シリンダ31の外面に接し難くすることができる。従って、倒立姿勢としても、外気導入孔31dを通じて内容液が逆流して意図せず外部に漏出することを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ノズルヘッド40及び装着キャップ20は、それぞれ下側ボール保持部65、上側ボール保持部67並びに下側ボール保持部65及び上側ボール保持部67を連結する傾斜部62を形成するボール可動領域60の上壁61及び下壁63を備え、容器本体10が正立姿勢から倒立姿勢へと姿勢変更すると、ボール50が下側ボール保持部65から傾斜部62を通って上側ボール保持部67へと移動することによって、下側ボール保持部65における上壁61が下壁63へと近づくように変位可能となり、ノズルヘッド40が押下可能となるように構成した。このような構成の採用によって、意図しない正立姿勢における内容液の吐出を抑制し、倒立姿勢においてのみ内容液を吐出させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ノズルヘッド40を押下していない状態における、上側ボール保持部67における上壁61と下壁63との上下方向距離Hは、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和以上であるように構成した。このような構成の採用によって、吐出容器100を倒立姿勢としてボール50を上側ボール保持部67で保持したときに、ノズルヘッド40を確実に所定のストロークだけ押下して内容液を吐出することができる。
【0049】
また、本実施形態では、ノズルヘッド40を押下していない状態における、下側ボール保持部65における上壁61と下壁63との上下方向距離Hは、ボール50の直径D以上であり、ボール50の直径Dとノズルヘッド40の押下ストロークの和より小さくなるように構成した。このような構成の採用によって、正立姿勢において下側ボール保持部65内でボール50を確実に保持するとともに、ノズルヘッド40の押下可能距離を所定ストロークより小さくして内容液の吐出を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態では、ノズルヘッド40を押下した状態において、傾斜部62における上壁61と下壁63との最小距離Hは、ボール50の直径Dよりも小さくなるように構成した。このような構成の採用によって、容器本体10を倒立姿勢としてノズルヘッド40を押下した後は、姿勢変更してもボール50が上側ボール保持部67から傾斜部62に入ることがない。従って、ノズルヘッド40を押下した状態を安定的に維持して内容液の吐出を継続することができる。
【0051】
また、本実施形態では、ボール可動領域60は、周方向の対向する2箇所に設けられ、一方のボール可動領域60を構成する各部位は、他方のボール可動領域60の各部位を中心軸線O周りに180度回転させた位置に配置されるように構成した。このような構成の採用によって、吐出容器100を横倒し状態としても、2箇所のうち1箇所は、ボール50が図5に示すように下側ボール保持部65内で保持される可能性が高まるので、ノズルヘッド40の押下可能距離を所定ストロークより小さくして内容液の吐出を抑制することができる。また、正立/倒立姿勢においてノズルヘッド40の押下可能/不能の切り替えを周方向の2箇所で同時に行うので、ノズルヘッド40が装着キャップ20に対して傾いて正常に作動しない等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、装着キャップ20とノズルヘッド40の少なくとも一方に周方向の相対位置を位置決めするための位置決めリブを設けてもよい。このような構成の採用によって、ボール可動領域60の上壁61と下壁63を周方向に精度よく位置決めして、ノズルヘッド40の押下可能/不能の切り替えを正確に行うことができる。
【0053】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0054】
例えば、本実施形態では、食品用の濃縮液を内容液として含むことを前提に説明したが、この態様には限定されない。例えば、食品用途以外(例えば点鼻薬等)の他の医薬用の薬剤などを内容液として含めてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、ノズル41の先端から内容液を噴出可能に構成したが、この態様には限定されない。ノズル41の先端に異なる流路を採用したりノズル41のノズル孔43aの形状を変えるなどによって、霧状に噴霧するなど、様々な吐出態様に対応させてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、ボール可動領域60内をボール50が移動することにより、ノズルヘッド40の押圧可能/不可を切り替えるように構成したが、この態様には限定されない。ボール50は必ずしも球形状ではなく楕円体等であってもよいし、ボール可動領域60の形状も、例えば下側ボール保持部65及び上側ボール保持部67が傾斜面を有しているなど図3図4に示す形状から異なっていてもよい。また、ボール50等の可動体を用いることなく吐出容器100の姿勢によってノズルヘッド40の押圧可能/不可を切り替えるように構成してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、倒立時吸入流路として、周方向の1箇所に吸入パイプPを設けるように構成したが、この態様には限定されない。吸入パイプPは、周方向の複数箇所に設けてもよいし、空気溜め筒36の径方向外側を囲むように周方向に延在する流路として構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示によれば、倒立姿勢としても、内容液が意図せず外部に漏出することを抑制することができる吐出容器100を提案することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10 容器本体
11 口部
11a 雄ねじ部
12 肩部
13 胴部
20 装着キャップ
21 装着筒
21a 雌ねじ部
21b 縦目ローレット
23 天壁
25a 上部外筒
25b 上部中筒
25c 上部内筒
25d 凹所
26 シール筒
27 キャップ開口
30 ポンプ部
31 シリンダ
31a 装着端部
31b 弁座
31b1 ストッパ
31c 装着筒部
31c1 吸入孔
31d 外気導入孔
32 第1付勢ばね
33 ポペット
33a 間欠リブ
33b 突部
34 ピストン
34a ピストン摺動部
34b シール部
34c 突部
35 第2付勢ばね
36 空気溜め筒
36a 筒側壁
36b 筒底壁
36b1 底壁開口
36c 筒内壁
36d 筒外壁
36e 底皿壁
37 ステム
37a ステム摺動部
37b 間欠リブ
39 ボール弁
40 ノズルヘッド
41 ノズル
42 ノズルカバー
42a ノズルフランジ
42b 外ガイド筒
42c 内ガイド筒
43a ノズル孔
50 ボール
60 ボール可動領域
61 上壁
62 傾斜部
63 下壁
65 下側ボール保持部
67 上側ボール保持部
100 吐出容器
AR 空気溜め
B 底部空間
N ノズル流路
O 中心軸線
P 吸引パイプ(倒立時吸入流路)
PK パッキン
PS 圧縮空間
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5