(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014036
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物、接着剤、および塗料
(51)【国際特許分類】
C08L 61/14 20060101AFI20240125BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C08L61/14
C08K5/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116584
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】身深 元
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC081
4J002EN106
4J002FD206
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA04
4J002HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた水希釈性または水分散性と高い耐熱性を両立し、かつ塩基性触媒由来の金属イオンを含まないフェノール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造単位と、水酸基を含む特定の構造単位とを有する、カルボキシ基含有フェノール樹脂;アミン;および水、を含む樹脂組成物。
式中、Xは、炭素数1~6のアルキレン基、R
1は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH
2OHである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位とを有する、カルボキシ基含有フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む樹脂組成物であって、
【化1】
式(1)において、
Xは、炭素数1~6のアルキレン基であり、
R
1は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH
2OHであり、
【化2】
式(2)において、
R
2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH
2OHである、樹脂組成物。
【請求項2】
前記式(1)中のR1およびR2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または水酸基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシ基含有フェノール樹脂中の、前記式(1)で表される構造単位の割合が、前記カルボキシ基含有フェノール樹脂全体に対して、5モル%以上90モル%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記アミンは、第三級アミンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
水溶液の形態である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
水分散体の形態である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、接着剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ならびに当該樹脂組成物からなる接着剤または塗料に関する。より詳細には、本発明は、フェノール樹脂および水を含む水性フェノール樹脂組成物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、その優れた耐熱性、接着性、機械的特性、電気的特性、価格優位性等を利用し各種基材の成型材料や摩擦材用結合剤、研削材用結合剤、木材用接着剤、積層材用結合剤、鋳型用結合剤、コーティング剤、エポキシ樹脂硬化剤用等として幅広く使用されている。フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂であり、触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を用いるアルカリ型レゾールフェノール樹脂、触媒としてアンモニアやアミン類を用いるアンモニアレゾール型フェノール樹脂、酸性触媒を用いるノボラック型フェノール樹脂が知られている。
【0003】
近年、環境負荷軽減の観点や労働安全衛生的観点から、有機溶剤使用量を用いないか、または有機溶剤使用量の少ないフェノール樹脂材料が求められており、溶媒として水を用いた水溶性樹脂や水系分散剤を用いた水分散型樹脂として提供可能な水希釈性の高いレゾール樹脂が求められている。しかしながら、レゾール樹脂の水希釈性は、通常、レゾール樹脂の分子量が小さくなるにつれて向上するため、低分子量化により水希釈性を高めようとする場合、硬化物の強度や耐熱性が低下してしまうという問題がある。また低分子量化により水希釈性を高めようとする場合、フェノールとホルマリンとの重縮合反応において反応が十分に進行していない、またはフェノールに対してホルマリンを過剰に使用する必要から残存フェノールや、揮発性の残存ホルマリンが多くなり、環境負荷を増大させる場合があった。とりわけ、レゾール樹脂は、水性化が可能であるものの、自己硬化型の熱硬化性樹脂であるために高温下での蒸留ができず、未反応フェノール類、アルデヒド類、あるいは1核体成分などの残存モノマーが樹脂中に残存し易いものであった。
【0004】
残存モノマー量の低減を図りながら、水希釈性を向上させる技術として、例えば、特許文献1では、フェノール類、ホルムアルデヒド、およびアセトンを、所定割合で混合し、塩基性触媒存在下で反応させることで水溶性レゾール型フェノール樹脂を得ることが記載されている。特許文献1では、得られるレゾール型フェノール樹脂の水希釈性を向上するためには、塩基性触媒としてアルカリ金属の水酸化物を用いることが好ましいことが記載されている。
【0005】
また特許文献2には、レゾール型フェノール樹脂と、エチレングリコール等の沸点が110~300℃の溶剤と、水を含有し、pHが7~10である水溶性フェノール樹脂組成物を提供する技術が開示されている。
【0006】
一方、ノボラックフェノール樹脂は、通常、常温で固形の樹脂であることから、水性化が困難であり、その水分散体を調製したとしても、その分散樹脂粒子の平均粒子径が10μm乃至100μmという極めて大きい範囲になり、樹脂粒子が沈降または凝集してしまい、長期の分散安定性が得られない場合があった。
【0007】
上記問題を解決するため、ノボラック型フェノール樹脂を水性媒体中に分散させる技術として、たとえば、特許文献3には、水性媒体中に分散するノボラック型フェノール樹脂の分子構造中に、その芳香核上の置換基として炭素原子数3~30の酸基含有脂肪族炭化水素基を導入するとともに、上記水性媒体中のpHを7.0~9.0の範囲に調節することにより、多量の分散剤を用いなくとも、ノボラック型フェノール樹脂の樹脂粒子径を1μm未満に小径化することが可能で、かつ優れた貯蔵安定性を有するノボラック型フェノール樹脂水性分散体を得る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5472711号公報
【特許文献2】特許第5761464号公報
【特許文献3】特開2008-150449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術で得られたレゾール型フェノール樹脂は、水希釈性は向上されるものの、耐熱性が不十分であった。また特許文献1の技術で得られたレゾール型フェノール樹脂は、触媒として使用したアルカリ金属水酸化物に由来するアルカリ金属が生成物の樹脂中に存在するため、樹脂硬化物の耐水性が劣る場合があった。またこのようなレゾール型フェノール樹脂は、アルカリ金属の存在が不利となる電子部品などの分野には適用できなかった。
特許文献2の技術で得られたフェノール樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂組の水溶性を確保するために、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の水溶性有機溶剤を使用しているため、環境負荷低減の点で改善の余地があった。
また特許文献3で得られたノボラック型フェノール樹脂水性分散体は、分散剤を使用しているため、十分な硬化性、接着性が得られない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、水性であり、塩基性触媒由来の金属イオンを含まず、またその硬化物が高い耐熱性を有するフェノール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[1]式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位とを有する、カルボキシ基含有フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む樹脂組成物であって、
【化1】
式(1)において、
Xは、炭素数1~6のアルキレン基であり、
R
1は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH
2OHであり、
【化2】
式(2)において、
R
2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH
2OHである、樹脂組成物。
[2]前記式(1)中のR
1およびR
2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または水酸基である、項目[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記カルボキシ基含有フェノール樹脂中の、前記式(1)で表される構造単位の割合が、前記カルボキシ基含有フェノール樹脂全体に対して5モル%以上90モル%以下である、項目[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記アミンは、第三級アミンを含む、項目[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]水溶液の形態である、項目[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]水分散体の形態である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]項目[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、接着剤。
[8]項目[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、塗料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた水希釈性または水分散性と高い耐熱性を両立し、かつ塩基性触媒由来の金属イオンを含まないフェノール樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0014】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、
式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位とを有する、カルボキシ基含有フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む。
【0015】
【0016】
式(1)において、
Xは、炭素数1~6のアルキレン基であり、
R1は、独立して、水素原子(H)、炭素数1~20のアルキル基、水酸基(-OH)、またはメチロール基(-CH2OH)である。
【0017】
【0018】
式(2)において、
R2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH2OHである。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物において、カルボキシ基含有フェノール樹脂は、式(1)で表される構造単位と式(2)で表される構造単位とを有する。このような構造単位を有するカルボキシ基含有フェノール樹脂は、硬化性に優れるとともに、得られる硬化物は優れた耐熱性および優れた機械的強度を有する。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物において、上記カルボキシ基含有フェノール樹脂は、当該樹脂組成物に含まれるアミンとの相互作用により、式(1)で表される構造単位が有するカルボキシ基が中和されて、水溶性の油として存在する。よって、本実施形態の樹脂組成物は、水を溶媒または分散媒とする水性樹脂組成物であり、実質的に有機溶剤を使用しないため環境負荷が低減される。
また本実施形態の樹脂組成物は、金属水酸化物を含まない。そのため、金属水酸化物に起因する、当該樹脂組成物の硬化物の耐水性の不足といった問題が生じない。また分散剤としてエチレングリコール等の高沸点の成分を含まないため、作業性に優れる。
以下、本実施形態の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0021】
(フェノール樹脂)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるカルボキシ基含有フェノール樹脂は、式(1)で表される構造単位と、上記式(2)表される構造単位とを有する。このフェノール樹脂は、式(1)で表されるとおり、側鎖にカルボキシ基が導入された構造を有することを特徴とする。本明細書中、上記構造を有するカルボキシ基含有フェノール樹脂を、単に「フェノール樹脂」と称する場合がある。
【0022】
【0023】
式(1)において、
Xは、炭素数1~6のアルキレン基であり、
R1は、独立して、水素原子(H)、炭素数1~20のアルキル基、水酸基(-OH)、またはメチロール基(-CH2OH)である。
【0024】
【0025】
式(2)において、
R2は、独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、水酸基、または-CH2OHである。
【0026】
式(1)中のXを構成し得る炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状または分枝鎖状の炭素数1~6のアルキレンが挙げられ、製造容易性の観点から、メチレン基またはエチレン基であることが好ましい。式(1)中のXの構造は、以下で詳述するカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造において用いるカルボン酸化合物の種類を選択することにより、調整することができる。
【0027】
式(1)および式(2)中のR1およびR2を構成し得る炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状であってもよい。直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。環状のアルキル基としては、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0028】
式(1)で表される構造単位および式(2)で表される構造単位の構造は、以下で詳述するカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造において用いる原料モノマーの種類を選択することにより、または製造条件を選択することにより、制御することができる。
【0029】
一実施形態において、カルボキシ基フェノール樹脂は、式(1)で表される構造単位におけるR1が、メチロール基であり、かつ式(2)で表される構造単位におけるR2が、メチロール基である、レゾール型フェノール樹脂である。一実施形態において、フェノール樹脂は、式(1)で表される構造単位におけるR1が、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または水酸基であり、かつ式(2)で表される構造単位におけるR2が、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または水酸基である、ノボラック型フェノール樹脂である。
【0030】
一実施形態において、樹脂組成物は、カルボキシ基含有フェノール樹脂が水に溶解した状態で存在する、水溶液の形態である。樹脂組成物が水溶液である場合、カルボキシ基含有フェノール樹脂は、好ましくは、レゾール型フェノール樹脂である。別の実施形態において、樹脂組成物は、カルボキシ基含有フェノール樹脂が水中に分散した状態で存在する、水分散体の形態である。樹脂組成物が水分散体である場合、カルボキシ基含有フェノール樹脂は、レゾール型またはノボラック型のいずれであってもよく、好ましくは、ノボラック型フェノール樹脂である。
【0031】
一実施形態において、カルボキシ基含有フェノール樹脂は、上記式(1)で表されるカルボキシ基を含有する構造単位の割合が、カルボキシ基含有フェノール樹脂全体に対して5~90モル%である構造を有する。カルボキシ基含有フェノール樹脂中の、式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは、5~70モル%であり、より好ましくは、5~50モル%であり、さらにより好ましくは、5~30モル%である。式(1)で表される構造単位の割合が上記範囲であるカルボキシ基含有フェノール樹脂は、水溶性または水分散性に優れ、よって得られる樹脂組成物は取扱い性に優れ、かつ耐水性に優れる。カルボキシ基含有フェノール樹脂中の式(1)で表される構造単位の割合は、以下で説明するカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造において、使用する原料の配合割合を調整することにより、または製造条件を調整することにより、変更することができる。
【0032】
カルボキシ基含有フェノール樹脂は、代表的には、フェノール類とアルデヒド類を反応させて得られる反応生成物に、カルボン酸化合物を反応させることにより製造することができる(工程1)。
詳細には、ノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を製造する場合、工程1は、フェノール類とアルデヒド類とを、酸触媒の存在下で縮合重合して、ノボラック型フェノール樹脂を得る工程(工程1-1a)と、工程1-1aで得られたノボラック型フェノール樹脂とカルボン酸化合物とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、ノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を得る工程(工程1-2a)とを含む。
レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を製造する場合、工程1は、フェノール類、アルデヒド類、およびカルボン酸化合物を、塩基性触媒下で縮合重合する工程(工程1b)を含む。もしくは、レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を製造する場合、工程1は、フェノール類とアルデヒド類とを、酸触媒の存在下で縮合重合して、ノボラック型フェノール樹脂を得る(工程1-1b)、工程1-1bで得られたノボラック型フェノール樹脂とカルボン酸化合物とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、ノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を得る工程(工程1-2b)、工程1-2bで得られたノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在させて、このノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂にメチロール基を導入することにより、目的のレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を得る工程(工程1-3b)を含む。
【0033】
カルボキシ基含有フェノール樹脂の製造に使用できるフェノール類としては、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール類;p-tert-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール類;p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体:1-ナフトール、2-ナフトール等の1価のフェノール類;およびレゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類等が挙げられる。これらは、単独でかまたは2種以上混合して使用できる。中でも、製造コストの観点から、フェノールを使用することが好ましい。
【0034】
カルボキシ基含有フェノール樹脂の製造に使用できるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。また、これらのアルデヒド類の前駆体あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。中でも、製造コストの観点から、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが好ましい。
【0035】
カルボキシ基含有フェノール樹脂の製造に使用されるカルボン酸化合物は、フェノール性水酸基の酸素原子に、-X-COOH基が結合した、上記式(1)で表される構造単位を誘導するために使用される。ここで、-X-COOH基中の「X」は、式(1)における「X」と同義であり、炭素数1~6のアルキレン基を表す。このようなカルボン酸化合物としては、式(CA)で表される化合物が挙げられる。
L-X-COOH (CA)
式(CA)において、Lは、ハロゲンを表し、Xは、炭素数1~6のアルキレン基を表す。
式(CA)で表されるカルボン酸化合物の具体例としては、1-クロロ酢酸、1-ブロモ酢酸、1-ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロ酪酸、またはそれらのアルカリ金属塩(例えば、1-クロロ酢酸ナトリウム)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
カルボキシ基含有フェノール樹脂の製造に使用できる酸触媒としては、酢酸、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、スルホン酸、フェノールスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等の有機酸;または塩酸、硫酸、硫酸エステル、リン酸、およびリン酸エステル等の無機酸が挙げられる。
【0037】
カルボキシ基含有フェノール樹脂の製造に使用できる塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;石灰等の酸化物;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;リン酸ナトリウム等のリン酸塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。
【0038】
上記工程1-1aにおけるフェノール類とアルデヒド類との反応において、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)は、例えば、0.5以上であり、好ましくは,0.55以上であり、より好ましくは、0.6以上である。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)の上限値は、例えば、1.2以下であり、好ましくは、1.1以下であり、より好ましくは、1.0以下である。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)が上記範囲である条件下で、反応を行うことにより、所望の重量平均分子量を有するノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を得ることができる。
【0039】
工程1-1aにおける、フェノール類とアルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させる工程は、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。これにより、効率よく反応を十分に進めることができる。工程1-2aにおける、ノボラック型フェノール樹脂とカルボン酸化合物とを、塩基性触媒の存在下で反応させる工程は、工程1-1aで得られた反応混合物に、塩基性触媒を投入した後、カルボン酸化合物を投入し、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~180分間の反応時間で実施されることが好ましい。
上記工程は加熱下で実施することにより、出発物質が均一に混合され、分子間の絡み合いや分子間の作用により、得られるノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の分子量の均一化を図ることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
工程1-1aおよび工程1-2aのノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0041】
工程1-1aおよび工程1-2aを経て得られるノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、100以上8,000以下であり、好ましくは、400以上7,000以下であり、より好ましくは、500以上6,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、水中で分散して存在することができるため好ましい。また、これを硬化して得られる硬化物が高い機械的強度および耐熱性を有するため好ましい。
【0042】
上記方法により生成したノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、必要に応じて、これに含まれる未反応の遊離フェノールを除去するための後処理に供してもよい。後処理としては、150℃まで常圧蒸留を行い、続いて、250℃まで500Paで減圧蒸留を行う手法を用いることができる。上記方法により得られたノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、未反応の遊離フェノール類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。また上記方法により得られたノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、未反応の遊離アルデヒド類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるカルボキシ基含有フェノール樹脂が、レゾール型である場合、その製造に用いた塩基性触媒が、反応生成物中に存在する。塩基性触媒として水酸化ナトリウム等の金属水酸化物を用いた場合、フェノール樹脂の硬化物中に金属水酸化物が残留し、これは硬化物の耐水性の低下をもたらす。したがって、工程1-2で使用する塩基性触媒は、非金属触媒であるアミン類であることが好ましい。
【0044】
上記工程1bにおける、フェノール類とアルデヒド類とカルボン酸化合物とを反応させる工程は、これらの出発物質を、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)が、例えば、0.7以上であり、好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.2以上1.9以下となるような比率で、反応がまに仕込み、さらに重合化触媒としての上述の塩基性触媒を添加して、適当な時間還流を行うことに実施される。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)が上記範囲である条件下で、反応を行うことにより、ゲル化が抑制されて、所望の重量平均分子量を有するレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を得ることができる。
【0045】
工程1bにおけるレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造において、フェノール類、アルデヒド類、およびカルボン酸化合物を、塩基性触媒の存在下で反応させる工程は、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。これにより、効率よく反応を十分に進めることができる。また加熱下で実施することにより、出発物質が均一に混合され、分子間の絡み合いや分子間の作用により、得られるレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の分子量の均一化を図ることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0046】
工程1bのレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の合成のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0047】
工程1bを経て得られるレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、100以上2,000以下であり、好ましくは、200以上1,500以下であり、より好ましくは、500以上1,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するレゾール型のカルボキシ基含有型フェノール樹脂は、エマルジョン化が容易であるため好ましい。また、これを硬化して得られる硬化物が高い機械的強度および耐熱性を有するため好ましい。
【0048】
レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の製造が、工程1-1b~工程1-3bの手法を用いて行われる場合、工程1-1bのフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させる工程は、上記1-1aと同様の条件で実施することができる。
続く工程1-2bもまた、上記工程1-2aと同様の条件で実施することができる。
その後に実施される工程1-3bは、工程1-2bで得られたノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂を含む反応混合物に、所定量のアルデヒド類および塩基性触媒を添加し、例えば、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~100分間加熱するより行われる。これにより、工程1-2bで得られたノボラック型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の芳香環にメチロール基が導入されて、レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂が得られる。
【0049】
工程1-1b~工程1-3bを経て得られるレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、100以上8,000以下であり、好ましくは、400以上7000以下であり、より好ましくは、500以上6,000以下である。上記範囲の重量平均分子量を有するレゾール型のカルボキシ基含有型フェノール樹脂は、エマルジョン化が容易であるため好ましい。また、これを硬化して得られる硬化物が高い機械的強度および耐熱性を有するため好ましい。
【0050】
上記工程1bまたは工程1-1b~工程1-3bの方法により得られたレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、未反応の遊離フェノール類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。また上記方法により得られたレゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂は、未反応の遊離アルデヒド類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。
【0051】
(アミン)
本実施形態の樹脂組成物はアミンを含む。樹脂組成物中で、アミンは、上述のカルボキシ基含有フェノール樹脂のカルボキシ基(式(1)で表される構造単位が有するカルボキシ基)と相互作用し、これによりカルボキシ基が中和されて、カルボキシ基含有フェノール樹脂は水溶性または水分散性の油として存在する。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるアミンとしては、カルボキシ基含有フェノール樹脂を中和するのに適切な塩基性を有するとともに、水溶性である第三級アミンが好ましい。このような第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノール、N-ジエチルアミノエタノール、ピリジン、2,6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。中でも、適度な塩基性を有し、水溶性であり、さらに入手容易であることから、N-ジメチルアミノエタノールを用いることが好ましい。
【0053】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のカルボキシ基含有フェノール樹脂と上述のアミンとを、水中で混合することにより製造することができる。カルボキシ基含有フェノール樹脂は、得られる樹脂組成物の固形分量が10~90質量%となる量で配合することができる。固形分量は、用いる水の量を調整することにより変更することができ、樹脂組成物の用途に応じて所望の範囲に調整することができる。アミンの配合量は、カルボキシ基含有フェノール樹脂が有するカルボキシ基に1モルに対して、例えば0.3モル~2.0モル、好ましくは、0.5モル~1.5モルである。このような配合量でカルボキシ基含有フェノール樹脂とアミンとを含む樹脂組成物は、取扱い性に優れるとともに、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度および耐水性が優れる。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物には、その用途に応じ、さらに添加剤を配合してもよい。用いることができる添加剤としては、チキソ剤、増粘剤、分散剤、硬化促進剤、凍結防止剤等が挙げられる。
【0055】
(用途)
本実施形態の樹脂組成物は、例えば、摩擦材用接着剤、研削材用接着剤、木材用接着剤、積層材用接着剤、鋳型用接着剤等の接着剤、または塗料として使用することができる。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を摩擦材用接着剤として使用する場合、本実施形態の樹脂組成物を、湿式摩擦板用の金属基材に塗布する。塗布方法としては、スプレー塗布法、ロールコータ法等を使用することができる。次いで、塗布した樹脂組成物を、例えば、100℃で20分の条件で加熱して、溶剤/分散媒である水を乾燥除去する。その後、この金属基材上の、乾燥後の樹脂組成物層の側に、湿式摩擦板用の摩擦板を配置し、例えば、150℃の温度で、加熱加圧する。加熱加圧後に、例えば、200℃の温度で焼成し、カルボキシ基含有フェノール樹脂を完全硬化させる。これにより、金属基材と摩擦板とが強固に接着された湿式摩擦板を製造することができる。本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤を含まないため、加熱乾燥時に有機溶剤の揮発が生じない。そのため、環境負荷が小さい。
【0056】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
[カルボキシ基含有フェノール樹脂の調製および組成物の調製]
(合成例1:未変性ノボラック型フェノール樹脂Aの合成)
フェノール(P)1000部、37%ホルマリン(F)570部、蓚酸10部の混合物を100℃で3時間反応させた後、反応混合物の温度が140℃になるまで常圧蒸留で脱水し、更に、0.9kPaまで、徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が220℃になるまで減圧蒸留で脱水、脱モノマーし、水酸基当量が106の未変性ノボラック型フェノール樹脂Aを得た。フェノールに対するホルマリンのモル比(F/P)は、0.77であった。
【0059】
(合成例2:ブチルフェノール変性ノボラック型フェノール樹脂Bの合成)
ブチルフェノール1000部を、フェノール625部、37%ホルマリン553部、蓚酸10部の混合物を100℃で3時間反応させた後、反応混合物の温度が140℃になるまで常圧蒸留で脱水し、更に、0.9kPaまで、徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が220℃になるまで減圧蒸留で脱水、脱モノマーし、水酸基当量が140のブチルフェノール変性ノボラック型フェノール樹脂Bを得た。F/P=0.77であった。
【0060】
(実施例1:式(1)の構造単位の割合が10モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂1の水分散液の調製)
ノボラック型フェノール樹脂Aを250部溶融させ、ブタノール125部で溶解し、50%水酸化ナトリウム溶液84部、純水100部を加えた。得られた混合物に、クロロ酢酸ナトリウム28部を加えて、80℃で2時間反応させ、その後、25%硫酸水溶液195部を加えて中和し、続いて純水を各500部用いて4回水洗することで中和塩を除去した。
その後、ジメチルアミノエタノール75部、および37%ホルマリン水溶液80部を加えて、60℃で1時間反応させることで、メチロール化し、純水300部を加えて、レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂1の水分散液を得た。
【0061】
(実施例2:式(1)の構造単位の割合が24モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂2の水溶液の調製)
クロロ酢酸ナトリウム量を、90部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、式(1)の構造単位の割合が24モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂2の水溶液を得た。
【0062】
(実施例3:式(1)の構造単位の割合が50モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂3の水溶液の調製)
クロロ酢酸ナトリウム量を、189部に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、式(1)の構造単位の割合が50モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂3の水溶液を得た。
【0063】
(実施例4:式(1)の構造単位の割合が29モル%のカルボキシ基含有フェノール樹脂4の水分散体の調製)
ノボラック型フェノール樹脂Bを250部溶融させ、ブタノール125部で溶解し、50%水酸化ナトリウム溶液84部、純水100部を加えた。得られた混合物に、クロロ酢酸ナトリウム60部を加えて、80℃で2時間反応させ、その後、25%硫酸水溶液195部を加えて中和し、続いて純水を各500部用いて4回水洗することで中和塩を除去した。
その後、ジメチルアミノエタノール75部、および37%ホルマリン水溶液80部を加えて、60℃で1時間反応させることで、メチロール化し、純水300部を加えて、レゾール型のカルボキシ基含有フェノール樹脂4の水分散液を得た。
【0064】
(比較例1:未変性ノボラック型フェノール樹脂Aの水溶液の調製)
合成例1で得られた未変性ノボラック型フェノール樹脂A1000部に、50%水酸化ナトリウム水溶液を300部加えて、純水1000部を加え、未変性ノボラック型フェノール樹脂Aの水溶液を調製した。
【0065】
[樹脂組成物の硬化物の物性評価]
上記で得られた樹脂組成物の硬化物について、以下の物性を測定した。
(耐水性)
実施例および比較例の水溶液または水分散液を、乾燥後の膜厚が8~15μmとなるように基材に塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、200℃で1時間加熱することにより、フェノール樹脂を硬化して塗膜を得た。
塗膜付き基材を、80℃の温水中に60時間浸漬した後、塗膜の状態を下記の判定基準に従い目視で判定した。結果を表1に示す。
A:塗膜の剥がれも膨れもみとめられない。
B:塗膜の一部に剥がれや膨れがみとめられる。
C:塗膜全体に剥がれや膨れがみとめられる。
(柔軟性)
実施例および比較例の水溶液または水分散液を、乾燥後の膜厚が8~15μmとなるように基材に塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、200℃で1時間加熱することにより、フェノール樹脂を硬化して塗膜を得た。
塗膜付き基材を、90℃折り曲げた時の、塗膜の状態を以下の判定基準に従い目視で判定した。結果を表1に示す。
A:塗膜の剥がれも膨れもみとめられない。
B:塗膜の一部に剥がれや膨れがみとめられる。
C:塗膜全体に剥がれや膨れがみとめられる。
【0066】