(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140364
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】冷凍餃子を容器から剥離するための方法および装置ならびに冷凍餃子製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241003BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20241003BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A23L7/109 D
A23L35/00
A23L3/365 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051474
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】遠山 優
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】森 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4B022
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B022LA01
4B022LB01
4B022LJ01
4B022LQ10
4B022LT07
4B022LT10
4B022LT11
4B036LF12
4B036LP17
4B036LP19
4B036LP24
4B036LT29
4B046LA09
4B046LB10
4B046LC20
4B046LE11
4B046LP69
4B046LP71
4B046LP80
4B046LQ04
(57)【要約】
【課題】従来技術では、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を、凍結した羽根形成組成物の割れを伴わずに容器から剥離することができなかった。
【解決手段】反転工程、剥離工程および回収工程を有する方法、該方法を含む製造方法、ならびに、反転部材、剥離部材および回収部材を有する装置によって、上記課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した容器に固着して収容された、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を前記容器から剥離するための方法であって:
前記冷凍餃子を収容した前記容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転工程と;
前記容器の底面を加熱して前記冷凍餃子の表面のうち前記容器に固着した部分を解凍することによって前記冷凍餃子を前記容器から剥離する剥離工程と;
前記冷凍餃子と分離した前記容器を回収する回収工程を有する、
前記方法。
【請求項2】
前記反転工程が、反転コンベア、ねじり反転シュートまたは天地反転シュートを使用したものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反転工程が、反転コンベアを使用したものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器の底面の加熱が、温風または鉄板を使用したものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記容器の底面の加熱が、温風を使用したものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記温風の温度が、100℃~250℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記回収工程が、吸着パッド、エアまたはガイドを使用したものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記回収工程が、吸着パッドを使用したものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結した羽根形成組成物の厚さが、3mm~20mmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の方法を含む、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法。
【請求項11】
上部が開口した容器に固着して収容された、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を前記容器から剥離するための装置であって:
前記冷凍餃子を収容した前記容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転部材と;
前記容器の底面を加熱して前記冷凍餃子の表面のうち前記容器に固着した部分を解凍することによって前記冷凍餃子を前記容器から剥離する剥離部材と;
前記冷凍餃子と分離した前記容器を回収する回収部材を有する、
前記装置。
【請求項12】
前記反転部材が、反転コンベア、ねじり反転シュートまたは天地反転シュートを使用したものである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記反転部材が、反転コンベアを使用したものである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記容器の底面の加熱が、温風または鉄板を使用したものである、請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
前記容器の底面の加熱が、温風を使用したものである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記温風の温度が、100℃~250℃である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記回収部材が、吸着パッド、エアまたはガイドを使用したものである、請求項11または12に記載の装置。
【請求項18】
前記回収部材が、吸着パッドを使用したものである、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記凍結した羽根形成組成物の厚さが、3mm~20mmである、請求項11または12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を容器から剥離するための方法および装置に関する。また、本発明は、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷凍食品を製造する際には、冷凍すべき食品をトレイ等の容器に収容した上で冷凍し、その後で冷凍した食品を容器から取り外して包装ラインに供給することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷凍した食品を収容した容器をその開口が下向きになるよう反転させた上で受け止め部に向けて落下させ、落下の衝撃で冷凍した食品を容器から離脱させる技術が開示されている。また、特許文献2には、冷凍した食品を収容した容器を変形させて、冷凍した食品を容器から剥離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-75577号公報
【特許文献2】特開平2-163070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子は容器に固着しているため、特許文献1のように容器をその開口が下向きになるよう反転させても落下せず、仮に落下したとしても落下の衝撃で凍結した羽根形成組成物が割れ外観が損なわれる。また、特許文献2のように容器を変形させると、凍結した羽根形成組成物が割れ外観が損なわれる。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明は、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を、凍結した羽根形成組成物の割れを伴わずに容器から剥離するための方法および装置を提供することを目的とする。また、本発明は、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、反転工程、剥離工程および回収工程を有する方法、該方法を含む製造方法、ならびに、反転部材、剥離部材および回収部材を有する装置を提供することにより上記課題を解決することに初めて成功し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の主たる構成は、次の通りである。
[1]
上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を前記容器から剥離するための方法であって:
前記冷凍餃子を収容した前記容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転工程と;
前記容器の底面を加熱して前記冷凍餃子の表面のうち前記容器に固着した部分を解凍することによって前記冷凍餃子を前記容器から剥離する剥離工程と;
前記冷凍餃子と分離した前記容器を回収する回収工程を有する、
前記方法。
[2]
前記反転工程が、反転コンベア、ねじり反転シュートまたは天地反転シュートを使用したものである、[1]に記載の方法。
[3]
前記反転工程が、反転コンベアを使用したものである、[2]に記載の方法。
[4]
前記容器の底面の加熱が、温風または鉄板を使用したものである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の方法。
[5]
前記容器の底面の加熱が、温風を使用したものである、[4]に記載の方法。
[6]
前記温風の温度が、100℃~250℃である、[5]に記載の方法。
[7]
前記回収工程が、吸着パッド、エアまたはガイドを使用したものである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の方法。
[8]
前記回収工程が、吸着パッドを使用したものである、[7]に記載の方法。
[9]
前記凍結した羽根形成組成物の厚さが、3mm~20mmである、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]
[1]~[9]のいずれか1つに記載の方法を含む、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法。
[11]
上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を前記容器から剥離するための装置であって:
前記冷凍餃子を収容した前記容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転部材と;
前記容器の底面を加熱して前記冷凍餃子の表面のうち前記容器に固着した部分を解凍することによって前記冷凍餃子を前記容器から剥離する剥離部材と;
前記冷凍餃子と分離した前記容器を回収する回収部材を有する、
前記装置。
[12]
前記反転部材が、反転コンベア、ねじり反転シュートまたは天地反転シュートを使用したものである、[11]に記載の装置。
[13]
前記反転部材が、反転コンベアを使用したものである、[12]に記載の装置。
[14]
前記容器の底面の加熱が、温風または鉄板を使用したものである、[11]~[13]のいずれか1つに記載の装置。
[15]
前記容器の底面の加熱が、温風を使用したものである、[14]に記載の装置。
[16]
前記温風の温度が、100℃~250℃である、[15]に記載の装置。
[17]
前記回収部材が、吸着パッド、エアまたはガイドを使用したものである、[11]~[16]のいずれか1つに記載の装置。
[18]
前記回収部材が、吸着パッドを使用したものである、[17]に記載の装置。
[19]
前記凍結した羽根形成組成物の厚さが、3mm~20mmである、[11]~[18]のいずれか1つに記載の装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を、凍結した羽根形成組成物の割れを伴わずに容器から剥離するための方法および装置を提供することができる。また、本発明によれば、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法も提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の方法の概念図である。また、
図1は、本発明の装置の概念図でもある。
【
図2】
図2(A)は、本発明の装置の一実施形態を示す図である。また、
図2(A)は、本発明の方法の一実施形態を示す図でもある。
図2(B)は、左から順に、初期状態(容器の開口部が上を向いた状態)、容器の開口部が下を向くように反転した状態、および、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子が容器から剥離している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
1.本発明の方法
本発明の一実施形態によれば、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子(以下、「連結冷凍餃子」ともいう)を容器から剥離するための方法(以下、「本発明の方法」ともいう)が提供される。
【0013】
本発明の方法における「上部が開口した容器」とは、例えばトレイ状、皿状、コップ状、箱状等のように上部が開口した容器のことをいい、典型的にはトレイである。
【0014】
上部が開口した容器は、内部に、複数個の凍結した餃子本体を個別に配置するための複数個の収容部を有する。各収容部は、底面を下方に向けた凍結した餃子本体を支持するための支持面を有し、該支持面の形状は、凍結した餃子本体の特定の形状の底面を収容し得るように適合されている。また、複数個の収容部は、仕切りのない状態で、または、一部もしくは全部が仕切り用突部によって仕切られた状態となって1列以上の列として配置されてもよく、円盤状に配置されてもよい。複数個の収容部については、例えば、4個の凍結した餃子本体を1列として2列配置するパターン、5個の凍結した餃子本体を1列として3列配置するパターン、6個の凍結した餃子本体を1列として4列配置するパターン、3~16個、好ましくは5個から13個、いっそう好ましくは8~10個の凍結した餃子本体を円盤状に配置するパターン等、供給数に応じた配置パターンを採用すればよい。複数個の収容部は、同じ向きを向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0015】
上部が開口した容器がトレイの場合、その大きさ、材料、成型方法、壁部の各部の厚さ等は特に限定はされず、従来公知の冷凍餃子のトレイを参照することができる。例えば、材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック類、アルミ等の金属類、紙等が挙げられ、成形方法としては、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形等が挙げられ、各部の厚さは、素材の剛性やその部分の機能によって異なるが0.1mm~2.0mm程度が例示される。
【0016】
本発明の方法における「凍結した餃子本体」に用いられる餃子の形状、大きさ、製造に用いられる皮の材料、厚さ、大きさ、形状(通常は円形である)、中具の成分、構成、量、調理法等は特に限定されず、中具と皮の製造方法、包み方等は、当業者に周知の方法を用いることができる。一例としては、味の素社製「ギョーザ」が挙げられる。
【0017】
本発明の方法における「凍結した羽根形成組成物」を構成する羽根形成組成物(以下、単に「羽根形成組成物」ともいう)の組成は特に限定されず、当業者が適宜選択することができる。一例としては、水、澱粉、加工澱粉、油脂、乳化剤および増粘剤を含むものが挙げられ、さらに穀物粉、タンパク質、乳化補助剤、調味料類、塩類、糖類、アミノ酸類、セルロース類等を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の方法における「複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子」(連結冷凍餃子)の作製方法は、特に限定されない。一例としては、以下の工程を含むものが挙げられる。
(工程S1)複数個の未凍結の餃子本体(中具を皮で包んだ生餃子本体)または凍結した餃子本体の下面を下方に向け、羽根形成組成物を接触させる工程。
(工程S2)工程S1によって得られた状態で、複数個の未凍結の餃子本体または凍結した餃子本体と羽根形成組成物とを凍結させ、それによって、連結冷凍餃子を得る工程。なお、凍結前に、餃子本体に蒸し加熱やボイル加熱等の予備的な加熱処理や、必要に応じた処理を適宜加えてもよい。
上記工程S1において、未凍結の餃子本体または凍結した餃子本体の下面に羽根形成組成物を凍結状態で一体化させる方法は任意であって、例えば、餃子本体に対して羽根形成組成物を位置させるための型を用いる方法や、冷却によって粘度を高めた羽根形成組成物を餃子本体に塗布する方法等であってもよい。容器内において上記工程S1およびS2を順次実施することにより、該容器内に収容された状態で連結冷凍餃子を完成させることができる。なお、凍結した羽根形成組成物は、複数個の凍結した餃子本体を連結させるのみならず、連結凍結餃子を収容した容器に固着している。
【0019】
本発明の方法は:
(1)連結冷凍餃子を収容した容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転工程(
図1の左側に示す)と;
(2)容器の底面を加熱して連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離する剥離工程(
図1の中央に示す)と;
(3)連結冷凍餃子と分離した容器を回収する回収工程(
図1の右側に示す)を有する。以下、各工程について詳述する。
【0020】
(1)反転工程
この工程は、連結冷凍餃子を収容した容器をその開口部が下向きになるように反転させる工程である。容器を反転させる方法は特に限定されず、従来技術を適宜使用することができる。容器を反転させるための従来技術としては、容器をベルトで挟み込み、流れの中で反転させるもの(例えば、反転コンベア)、コンベア間の高低差を利用して、螺旋状の板の上を滑らせて容器を反転させるもの(例えば、ねじり反転シュート)、コンベア間の高低差を利用して、半円状のシュートに沿って容器を反転させるもの(例えば、天地反転シュート)等が挙げられ、連結凍結餃子を構成する凍結餃子本体の耳部や凍結した羽根形成組成物欠損防止の観点から反転コンベアが好ましい。
図1では、例として反転コンベアを使用している。反転コンベアを使用する場合、上下のコンベアベルトが容器の搬送途中で180°ねじれているため、容器は上下のコンベアベルトで挟まれて搬送されることになり、その開口部が下向きになるように(言い換えれば、その底面が上になるように)反転する。
【0021】
(2)剥離工程
この工程は、容器の底面を加熱して連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離する工程である。容器を加熱する方法は特に限定されず、従来技術を適宜使用することができ、例えば温風または鉄板を使用したものが挙げられる。
図1では、例として温風を使用している。以下、温風を使用した剥離工程および鉄板を使用した剥離工程について、それぞれ詳述する。
【0022】
(2-1)温風を使用した剥離工程
この工程は、反転工程で上になった容器の底面に温風を当てて連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離する工程である。この工程は、搬送方向に沿って設置された複数の温風を当てる手段により温風を当てることによって実行されてもよく、1つの温風を当てる手段を水平移動させることによって実行されてもよく、製品の生産効率の観点からは前者が好ましい。なお、複数の温風を当てる手段は、直列的に設置されてもよく、容器の底面の四隅それぞれに同時に温風を当てるように設置されてもよい。また、この工程は、連続搬送コンベア上で実行されてもよく、搬送と停止とを交互に繰り返す間欠搬送コンベア上でコンベアが停止している間に実行されてもよい。温風の温度は、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することができる限り特に限定されず、例えば100℃~250℃が挙げられ、110℃~220℃が好ましく、120℃~200℃がいっそう好ましい。温風の温度が100℃未満であると、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を好適に解凍することができず、温風の温度が250℃を超えると、容器が溶けてしまうおそれがある。温風を当てる時間は、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することができる限り特に限定されないが、193℃の時は7秒、120℃の時は12秒が例示される。温風を当てる手段は特に限定されず、従来技術を適宜使用することができ、ノズルが例示される。温風を当てる手段の数は、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することができる限り特に限定されないが、1個~4個が例示される。温風を当てる手段の先端から容器の底面までの距離は、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することができる限り特に限定されないが、100mmが例示される。温風を発生させる手段は特に限定されず、従来技術を適宜使用することができ、熱風発生機が例示される。
【0023】
(2-2)鉄板を使用した剥離工程
この工程は、反転工程で上になった容器の底面に鉄板を当てて連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離する工程である。この工程は、例えばアイロンのように高温に熱した鉄板を容器の底面全体をなぞるように動かすこと、または、容器の底面全体を覆うことが可能な大きさの高温に熱した鉄板を容器の底面に当てることにより実行される。鉄板の温度および鉄板を当てる時間は、連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することが可能であれば特に限定されないが、190℃で27秒、170℃で64秒等が例示される。
【0024】
(2-3)剥離工程についてのまとめ
温風を使用した剥離工程と鉄板を使用した剥離工程とでは、満遍なく容器の底面を加熱できる点および容器が高温になり過ぎないという点から、温風を使用した剥離工程がいっそう好ましい。
【0025】
(3)回収工程
この工程は、連結冷凍餃子と分離した容器を回収する工程である。容器を回収する方法は特に限定されず、従来技術を適宜使用することができ、例えば吸着パッド、エアまたはガイドを使用したものが挙げられる。
図1では、例として吸着パッドを使用している。以下、吸着パッドを使用した回収工程、エアを使用した回収工程およびガイドを使用した回収工程について、それぞれ詳述する。
【0026】
(3-1)吸着パッドを使用した回収工程
この工程は、連結冷凍餃子と分離した容器を吸着パッドによって回収する工程である。吸着パッドは例えば、コンベアの上方に設置されたパラレルリンクロボットや、コンベア横に設置されたスカラロボットや垂直多関節ロボットのエンドエフェクタに装着されてもよい。連結冷凍餃子と分離した容器は、コンベア上を搬送されている間に、吸着パッドによって回収される。連結冷凍餃子の容器の底面には通常、溝が存在するが、容器の底面のうち溝のない部分に吸着パッドを当てることにより、または、溝が小さい場合には溝全体を吸着パッドが覆うように吸着パッドを当てることにより、真空が生じて容器が吸着する。吸着パッドのエア圧は、容器を吸着可能であれば特に限定されないが、0.4MPaが例示される。
【0027】
(3-2)エアを使用した回収工程
この工程は、連結冷凍餃子と分離した容器をエアによって回収する工程である。エアは例えば、コンベアベルト間に設置されたエアノズルによって上向きに放出され、容器のフランジ部分に当てられて、容器を上方に吹き飛ばす。エアノズルの数は、容器を上方に吹き飛ばすことが可能である限り特に限定されないが、2個が例示される。エアノズルのエア圧は、容器を上方に吹き飛ばすことが可能である限り特に限定されないが、0.4MPaが例示される。風量は、容器は吹き飛ぶが連結冷凍餃子は吹き飛ばない程度に調整される。
【0028】
(3-3)ガイドを使用した回収工程
この工程は、連結冷凍餃子と分離した容器をガイドによって回収する工程である。ガイドは例えば、針金であってもよい。コンベア上に設置したガイドに容器のフランジ部分を引っ掛けて、容器のみを回収する。連結冷凍餃子は、コンベア上をそのまま搬送される。
【0029】
(3-4)回収工程についてのまとめ
吸着パッドを使用した回収工程、エアを使用した回収工程およびガイドを使用した回収工程では、容器の回収が容易である点、一般的な容器を使用可能である点および容器の損傷のリスクが少ない点から、吸着パッドを使用した回収工程がいっそう好ましい。
【0030】
本発明の方法における凍結した羽根形成組成物の厚さとしては、例えば3mm~20mmが挙げられ、好ましくは5mm~15mmであり、いっそう好ましくは7mm~13mmである。厚さが3mm未満であると、凍結した羽根形成組成物の割れが生じ、製品の外観が損なわれる。また、厚さが20mmを超えると、冷凍餃子の調理時に凍結した羽根形成組成物が溶けずに残るという問題が発生する。
【0031】
2.本発明の製造方法
本発明の別の実施形態によれば、容器に固着していない連結冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)が提供される。本発明の製造方法は、本発明の方法を含む。現在市販されている冷凍餃子製品においては、連結冷凍餃子は容器に固着しているところ、本発明の製造方法を用いれば、容器に固着していない連結冷凍餃子を提供することができることから、この連結冷凍餃子を袋包材や箱包材に封入してなる冷凍餃子製品を提供することができる。
【0032】
3.本発明の装置
本発明のさらに別の実施形態によれば、上部が開口した容器に固着して収容された連結冷凍餃子を容器から剥離するための装置(以下、「本発明の装置」ともいう)が提供される。本発明の装置は、本発明の方法を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の説明は、適用可能な限り本発明の装置にも適用される。なお、本発明の装置は、本発明の方法以外の方法に使用されてもよい。
【0033】
本発明の装置は:
(1)連結冷凍餃子を収容した容器をその開口部が下向きになるように反転させる反転部材と;
(2)容器の底面を加熱して連結冷凍餃子の表面を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離する剥離部材と;
(3)連結冷凍餃子と分離した容器を回収する回収部材を有する。以下、各部材について説明する。
【0034】
(1)反転部材
この部材は、連結冷凍餃子を収容した容器をその開口部が下向きになるように反転させるための部材である。この部材は、本発明の方法の(1)反転工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(1)反転工程の説明は、適用可能な限り本発明の装置の(1)反転部材にも適用される。
【0035】
(2)剥離部材
この工程は、容器の底面を加熱して連結冷凍餃子の表面を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離するための部材である。この部材は、本発明の方法の(2)剥離工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(2)剥離工程の説明は、適用可能な限り本発明の装置の(2)剥離部材にも適用される。以下、温風を使用した剥離部材および鉄板を使用した剥離部材について、それぞれ説明する。
【0036】
(2-1)温風を使用した剥離部材
この部材は、反転部材によって上になった容器の底面に温風を当てて連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離するための部材である。この部材は、本発明の方法の(2-1)温風を使用した剥離工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(2-1)温風を使用した剥離工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(2-1)温風を使用した剥離部材にも適用される。
【0037】
(2-2)鉄板を使用した剥離部材
この部材は、反転部材によって上になった容器の底面に鉄板を当てて連結冷凍餃子の表面のうち容器に固着した部分を解凍することによって連結冷凍餃子を容器から剥離するための部材である。この部材は、本発明の方法の(2-2)鉄板を使用した剥離工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(2-2)鉄板を使用した剥離工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(2-2)鉄板を使用した剥離部材にも適用される。
【0038】
(2-3)剥離部材についてのまとめ
温風を使用した剥離部材と鉄板を使用した剥離部材とでは、満遍なく容器の底面を加熱できる点および容器が高温になり過ぎないという点から、温風を使用した剥離部材がいっそう好ましい。
【0039】
(3)回収部材
この部材は、連結冷凍餃子と分離した容器を回収するための部材である。この部材は、本発明の方法の(3)回収工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(3)回収工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(3)回収部材にも適用される。以下、吸着パッドを使用した回収部材、エアを使用した回収部材およびガイドを使用した回収部材について、それぞれ説明する。
【0040】
(3-1)吸着パッドを使用した回収部材
この部材は、連結冷凍餃子と分離した容器を吸着パッドによって回収するための部材である。この部材は、本発明の方法の(3-1)吸着パッドを使用した回収工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(3-1)吸着パッドを使用した回収工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(3-1)吸着パッドを使用した回収部材にも適用される。
【0041】
(3-2)エアを使用した回収部材
この部材は、連結冷凍餃子と分離した容器をエアによって回収するための部材である。この部材は、本発明の方法の(3-2)エアを使用した回収工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(3-2)エアを使用した回収工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(3-2)エアを使用した回収部材にも適用される。
【0042】
(3-3)ガイドを使用した回収部材
この部材は、連結冷凍餃子と分離した容器をガイドによって回収するための部材である。この部材は、本発明の方法の(3-3)ガイドを使用した回収工程を実行するために最も好ましく適した構造を有するため、本発明の方法の(3-3)ガイドを使用した回収工程の説明は、適用可能な限り、本発明の装置の(3-3)ガイドを使用した回収部材にも適用される。
【0043】
(3-4)回収部材についてのまとめ
吸着パッドを使用した回収部材、エアを使用した回収部材およびガイドを使用した回収部材では、容器の回収が容易である点、一般的な容器を使用可能である点および容器の損傷のリスクが少ない点から、吸着パッドを使用した回収部材がいっそう好ましい。
【0044】
以下、
図2を参照して、本発明の装置の一実施形態について具体的に説明するが、この実施形態は例示的なものであり、本発明を限定することを意図するものではない。また、
図2は、本発明の方法の一実施形態を示す図でもある。
【0045】
コンベアベルト1の開始端に設置されたトレイ製品2(連結冷凍餃子21がトレイ22に収容されてなる製品)は、搬送方向(紙面を左から右へと進む方向)に沿って反転コンベア本体3の中に入り、そこでその開口部が下向きになるように反転する。
【0046】
反転したトレイ製品2は、コンベア4上を搬送されている間に、コンベア4の上方に設置されたダクト5(熱風発生機(図示せず)から温風を供給されている)から下方に延びるノズルから温風を受け、この温風によって連結冷凍餃子21の表面のうちトレイ22に固着した部分が解凍し、連結冷凍餃子21がトレイ22から剥離する。
【0047】
連結冷凍餃子21と分離したトレイ22は、コンベア6上を搬送されている間に、コンベア6の上方に設置されたパラレルリンクロボット7のエンドエフェクタに装着された吸着パッドによって回収される。なお、回収したトレイ22は成型工程で再利用され、コンベア6上に残った連結冷凍餃子21は包装ラインへと送られる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、上部が開口した容器に固着して収容された、複数個の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子を、凍結した羽根形成組成物の割れを伴わずに容器から剥離するための方法および装置を提供することができる。また、本発明によれば、容器に固着していない、複数の凍結した餃子本体を凍結した羽根形成組成物によって連結させてなる冷凍餃子からなる冷凍餃子製品の製造方法も提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 コンベアベルト
2 トレイ製品
21 連結冷凍餃子
22 トレイ
3 反転コンベア本体
4 コンベア
5 ダクト
6 コンベア
7 パラレルリンクロボット