IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

特開2024-140365腹膜透析用医療装置、及び注液カセット
<>
  • 特開-腹膜透析用医療装置、及び注液カセット 図1
  • 特開-腹膜透析用医療装置、及び注液カセット 図2
  • 特開-腹膜透析用医療装置、及び注液カセット 図3
  • 特開-腹膜透析用医療装置、及び注液カセット 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140365
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】腹膜透析用医療装置、及び注液カセット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241003BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20241003BHJP
   A61M 60/268 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
A61M1/28 110
A61M60/113
A61M60/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051475
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】重田 勝美
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077CC08
4C077DD02
4C077DD12
4C077DD18
4C077DD27
4C077JJ24
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】未注入の腹膜透析液が汚染することを防止するとともに、腹膜透析に要するコストの削減を図ることができる腹膜透析用医療装置及び注液カセットを提供する。
【解決手段】腹膜透析用医療装置10は、腹膜透析液を腹腔B内に注入するための注液カセット100と、腹腔内から腹膜透析液を排液するための排液カセット200と、注液カセット及び排液カセットが装着される腹膜透析装置300と、を有し、注液カセットは、腹腔内に注入される前の未注入の腹膜透析液を流通させる注液流路110と、注液流路を介して未注入の腹膜透析液を腹腔内へ送液するための第1ポンプ112と、を有し、排液カセットは、腹腔内から排液された使用済みの腹膜透析液を流通させる排液流路210と、排液流路を介して使用済みの腹膜透析液を回収するための第2ポンプ212と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析液を腹腔内に注入するための注液カセットと、
腹腔内から腹膜透析液を排液するための排液カセットと、
前記注液カセット及び前記排液カセットが装着される腹膜透析装置と、を有し、
前記注液カセットは、
腹腔内に注入される前の未注入の腹膜透析液を流通させる注液流路と、
前記注液流路を介して前記未注入の腹膜透析液を前記腹腔内へ送液するための第1ポンプと、を有し、
前記排液カセットは、
前記腹腔内から排液された使用済みの腹膜透析液を流通させる排液流路と、
前記排液流路を介して前記使用済みの腹膜透析液を回収するための第2ポンプと、を有する、腹膜透析用医療装置。
【請求項2】
前記注液カセットは、
前記未注入の腹膜透析液を保持する透析液バッグと接続される第1チューブと連通される第1ポートと、
前記未注入の腹膜透析液を送液する第2チューブと連通される第2ポートと、を有し、
前記排液カセットは、
前記腹腔内から排液した前記使用済みの腹膜透析液を前記排液流路内に流入させるための第3チューブと連通される第3ポートと、
前記排液流路内に流入させた前記使用済みの腹膜透析液を前記排液カセットの外部へ排液させるための第4チューブと連通される第4ポートと、を有する、請求項1に記載の腹膜透析用医療装置。
【請求項3】
前記腹膜透析装置は、前記注液流路内の前記第2ポート付近に配置され、前記注液流路内での前記未注入の腹膜透析液の流通を制御するための注液側クランプ部と、前記排液流路内での前記使用済みの腹膜透析液の流通を制御するための排液側クランプ部と、を有し、
前記排液側クランプ部は、前記未注入の腹膜透析液を前記腹膜内に注液する際に前記排液流路を閉じることにより、前記排液流路内で前記未注入の腹膜透析液が流通することを制限し、
前記注液側クランプ部は、前記使用済みの腹膜透析液を前記排液流路内へ流入させる際に前記注液流路を閉じることにより、前記注液流路内で前記使用済みの腹膜透析液が流通することを制限する、請求項2に記載の腹膜透析用医療装置。
【請求項4】
前記第1チューブを介して前記注液カセットと前記腹腔内とが連通され、かつ、前記第3チューブを介した前記排液カセットと前記腹腔内との連通が遮断された第1状態と、前記第1チューブを介した前記注液カセットと前記腹腔内との連通が遮断され、かつ、前記第3チューブを介して前記排液カセットと前記腹腔内とが連通された第2状態と、を切り替え可能に構成された切替機構を有する、請求項1又は請求項2に記載の腹膜透析用医療装置。
【請求項5】
前記注液カセットは、前記未注入の腹膜透析液を加温するための加温部を有する、請求項1に記載の腹膜透析用医療装置。
【請求項6】
腹膜透析液を腹腔内に注入するための腹膜透析装置に装着可能な注液カセットであって、
腹腔内に注入される前の未注入の腹膜透析液のみを流通させる注液流路と、
前記注液流路を介して前記未注入の腹膜透析液を前記腹腔内へ送液するための第1ポンプと、を有する、注液カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腹膜透析用医療装置、及び注液カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自宅等で患者自身が腹膜透析を行えるように構成された腹膜透析装置が知られている。例えば、特許文献1には、腹膜透析液を送液するためのポンプを備えるカセットと、カセットを装着可能な装置本体と、を備える腹膜透析装置が開示されている。
【0003】
上記のカセットには、腹膜透析液を流通させるための流路が備えられる。また、上記の装置本体には、流路の閉鎖及び開放を制御するためのクランプ部が備えられる。腹膜透析装置は、カセットが装置本体に装着された状態において、流路の各部に対応するように配置されたクランプ部を動作させることにより、使用前の未注入の腹膜透析液を患者の身体へ送液することを可能にするための流路の区画と、患者から排出された使用済みの腹膜透析を排液バッグへ送液することを可能にするための流路の区画を切り替えることが可能な構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-182255号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の腹膜透析装置のように、1つのカセットの内部に未注入の腹膜透析液が流通可能な流路と使用済みの腹膜透析液が流通可能な流路を任意のタイミングで切り替えて区画することが可能な構成を備える場合、使用するカセットの個数を削減することができるため、腹膜透析に要するコストの削減等を図り得ると考えられる。
【0006】
しかしながら、カセットの内部に形成された流路中に、未注入の腹膜透析液と使用済みの腹膜透析液の各々が流れるような共用部分が存在すると、患者の身体への腹膜透析液の注入と患者の身体からの腹膜透析液の排液とを繰り返し行うような場合に、未注入の腹膜透析液中に使用済みの腹膜透析液が混入し、未注入の腹膜透析液の汚染が生じる可能性がある。そのため、特許文献1の腹膜透析装置を使用する場合、腹膜透析液の注液及び排液を一度実施した後、カセットを廃棄することで細菌の感染リスクに備えるような対策が必要になる。ただし、前述しように、カセットには腹膜透析液の送液を行うためのポンプ等の機械構成が備えられているため、使用の都度廃棄すると、腹膜透析に要するコストの削減が図り難くなる。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、未注入の腹膜透析液が汚染することを防止するとともに、腹膜透析に要するコストの削減を図ることができる腹膜透析用医療装置及び注液カセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の(1)~(6)のいずれかの手段によって達成され得る。
【0009】
(1)腹膜透析液を腹腔内に注入するための注液カセットと、腹腔内から腹膜透析液を排液するための排液カセットと、前記注液カセット及び前記排液カセットが装着される腹膜透析装置と、を有し、前記注液カセットは、腹腔内に注入される前の未注入の腹膜透析液を流通させる注液流路と、前記注液流路を介して前記未注入の腹膜透析液を前記腹腔内へ送液するための第1ポンプと、を有し、前記排液カセットは、前記腹腔内から排液された使用済みの腹膜透析液を流通させる排液流路と、前記排液流路を介して前記使用済みの腹膜透析液を回収するための第2ポンプと、を有する、腹膜透析用医療装置。
【0010】
(2)前記注液カセットは、前記未注入の腹膜透析液を保持する透析液バッグと接続される第1チューブと連通される第1ポートと、前記未注入の腹膜透析液を送液する第2チューブと連通される第2ポートと、を有し、前記排液カセットは、前記腹腔内から排液した前記使用済みの腹膜透析液を前記排液流路内に流入させるための第3チューブと連通される第3ポートと、前記排液流路内に流入させた前記使用済みの腹膜透析液を前記排液カセットの外部へ排液させるための第4チューブと連通される第4ポートと、を有する、上記(1)に記載の腹膜透析用医療装置。
【0011】
(3)前記腹膜透析装置は、前記注液流路内の前記第2ポート付近に配置され、前記注液流路内での前記未注入の腹膜透析液の流通を制御するための注液側クランプ部と、前記排液流路内での前記使用済みの腹膜透析液の流通を制御するための排液側クランプ部と、を有し、前記排液側クランプ部は、前記未注入の腹膜透析液を前記腹膜内に注液する際に前記排液流路を閉じることにより、前記排液流路内で前記未注入の腹膜透析液が流通することを制限し、前記注液側クランプ部は、前記使用済みの腹膜透析液を前記排液流路内へ流入させる際に前記注液流路を閉じることにより、前記注液流路内で前記使用済みの腹膜透析液が流通することを制限する、上記(2)に記載の腹膜透析用医療装置。
【0012】
(4)前記第1チューブを介して前記注液カセットと前記腹腔内とが連通され、かつ、前記第3チューブを介した前記排液カセットと前記腹腔内との連通が遮断された第1状態と、前記第1チューブを介した前記注液カセットと前記腹腔内との連通が遮断され、かつ、前記第3チューブを介して前記排液カセットと前記腹腔内とが連通された第2状態と、を切り替え可能に構成された切替機構を有する、上記(2)又は上記(3)に記載の腹膜透析用医療装置。
【0013】
(5)前記注液カセットは、前記未注入の腹膜透析液を加温するための加温部を有する、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の腹膜透析用医療装置。
【0014】
(6)腹膜透析液を腹腔内に注入するための腹膜透析装置に装着可能な注液カセットであって、腹腔内に注入される前の未注入の腹膜透析液のみを流通させる注液流路と、前記注液流路を介して前記未注入の腹膜透析液を前記腹腔内へ送液するための第1ポンプと、を有する、注液カセット。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る腹膜透析用医療装置及び注液カセットによれば、未注入の腹膜透析液が汚染することを防止するとともに、腹膜透析に要するコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の外観斜視図である。
図2】実施形態に係る腹膜透析用医療装置の使用例を簡略的に示す図である。
図3】注液カセットの注液流路を示す図である。
図4】排液カセットの排液流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0018】
(腹膜透析用医療装置10)
図1に示すように、腹膜透析用医療装置10は、腹膜透析液を腹腔B内に注入するための注液カセット100と、腹腔B内から腹膜透析液を排液するための排液カセット200と、注液カセット100及び排液カセット200が装着される腹膜透析装置300と、を有する。なお、注液カセット100及び排液カセット200は、腹膜透析装置300に装着可能なカセットセットを構成することができる。
【0019】
(腹膜透析装置300)
腹膜透析装置300は、カセット装着部301と、操作部303、304と、表示部305と、複数のクランプ部311~317(図3図4を参照)と、ヒーター320と、を有する。
【0020】
カセット装着部301は、開閉可能に構成されており、腹膜透析装置300の内部に注液カセット100及び排液カセット200を収容した状態で装着することができる。
【0021】
操作部303、304は、ユーザー(例えば、患者H自身)が腹膜透析を開始する際の開始指示や、腹膜透析を終了する際の終了指示を入力するために使用される。
【0022】
表示部305は、ユーザーに腹膜透析装置300の動作状態等を報知する。「動作状態」は、例えば、腹腔Bに透析液を注入する注入処理や腹腔Bから透析液を排液する排液処理の実施中、終了などの状態である。
【0023】
複数のクランプ部311~317は、各カセット100、200の各流路110、210の閉鎖や開放を行うために使用される。各クランプ部311~317は、例えば、各流路110、210をなすチューブに対する押圧及び押圧の解除に伴って各流路110、210の閉鎖及び開放を切り替える押圧部材で構成することができる。
【0024】
図3に示すように、第1クランプ部311は、注液流路110の第1部位110aに対応した位置に配置されている。第2クランプ部312は、注液流路110の第2部位110bに対応した位置に配置されている。第3クランプ部313は、注液流路110の第3部位110cに対応した位置に配置されている。第4クランプ部314は、注液流路110の第4部位110dに対応した位置に配置されている。第5クランプ部315は、注液流路110の第5部位110eに対応した位置に配置されている。
【0025】
本実施形態では、注液流路110内の第2ポート114付近に配置された第1クランプ部311は、注液流路110内での未注入の腹膜透析液の流通を制御するための注液側クランプ部を構成している。
【0026】
図4に示すように、第6クランプ部316は、排液流路210の第1部位210aに対応した位置に配置されている。第7クランプ部317は、排液流路210の第2部位210bに対応した位置に配置されている。
【0027】
本実施形態では、第6クランプ部316及び第7クランプ部317は、排液流路210内での使用済みの腹膜透析液の流通を制御するための排液側クランプ部を構成している。
【0028】
ヒーター320は、注液カセット100が備える加温部111(加温チューブ)を流れる未注入の腹膜透析液を加温するために使用される。ヒーター320は、例えば、腹膜透析装置300に注液カセット100が装着された状態において、加温部111を挟み込むような位置に配置することができる。
【0029】
(注液カセット100)
図2図3に示すように、注液カセット100は、腹腔B内に注入される前の未注入の腹膜透析液を流通させる注液流路110と、未注入の腹膜透析液を加温する加温部111と、注液流路110を介して未注入の腹膜透析液を加温部111及び腹腔B内へ送液するための第1ポンプ112と、を有する。
【0030】
注液流路110は、注液カセット100の内部に配列されたチューブで構成することができる。図3に示すように、注液流路110は、第1部位110aと、第2部位110bと、第3部位110cと、第4部位110dと、第5部位110eと、を有する。
【0031】
第1部位110aは、加温部111に繋がる部分と第2ポート114(図2を参照)の間に延在している。第2部位110bは、加温部111に繋がる部分と第3部位110cとの間に延在している。第3部位110cは、第1ポンプ112に繋がる部分と第4部位110d及び第5部位110eとの間に延在している。第4部位110dは、第3部位110cと第1ポート113a(図2を参照)の間に延在している。第5部位110eは、第3部位110cと第1ポート113b(図2を参照)の間に延在している。
【0032】
図2に示すように、注液カセット100は、未注入の腹膜透析液を保持する透析液バッグ510a、510bと接続される第1チューブ410a、410bと連通される第1ポート113a、113bと、加温部111によって加温された未注入の腹膜透析液を送液する第2チューブ420と連通される第2ポート114と、を有する。
【0033】
本実施形態では、2つの透析液バッグ510a、510bと、2つの第1チューブ410a、410bを接続した例を示している。ただし、使用する透析液バッグの個数について特に制限はない。なお、各ポートと各チューブの間には任意に中継チューブ等を介在させることができる。
【0034】
第2チューブ420は、第2ポート114に接続された端部と反対側の端部側が切替機構460を介して腹膜透析カテーテル450と接続されている。
【0035】
加温部111は、例えば、内部に未注入の腹膜透析液が流通可能に構成された加温チューブで構成することができる。
【0036】
第1ポンプ112は、例えば、公知のダイアフラムポンプで構成することができる。
【0037】
図2に示すように、注液カセット100は、流路切替部115を有する。
【0038】
流路切替部115は、例えば、腹膜透析装置300の各クランプ部311、312、313、314、315に対応した箇所に形成された複数の開口部115a、115b、115c、115e、115dで構成することができる。各クランプ部311、312、313、314、315は、注液流路110の閉鎖を行う際、開口部115a、115b、115c、115e、115dを介して注液流路110側に突出し、注液流路110をなすチューブを押し潰すようにして閉鎖することができる。
【0039】
(排液カセット200)
図2図3に示すように、排液カセット200は、腹腔B内から排液された使用済みの腹膜透析液を流通させる排液流路210と、排液流路210を介して使用済みの腹膜透析液を回収するための第2ポンプ212と、を有する。
【0040】
排液流路210は、排液カセット200の内部に配列されたチューブで構成することができる。図4に示すように、排液流路210は、第1部位210aと、第2部位210bと、第3部位210cと、を有する。
【0041】
第1部位210aは、第3ポート213(図2を参照)と第3部位210cとの間に延在している。第2部位210bは、第4ポート214(図2を参照)と第3部位210cとの間に延在している。第3部位210cは、第2ポンプ212に繋がる部分と第1部位210a及び第2部位210bとの間に延在している。
【0042】
図2に示すように、排液カセット200は、腹腔B内から排液した使用済みの腹膜透析液を排液流路210内に流入させるための第3チューブ430と連通される第3ポート213と、排液流路210内に流入させた使用済みの腹膜透析液を排液カセット200の外部へ排液させるための第4チューブ440と連通される第4ポート214と、を有する。
【0043】
図2に示すように、第3チューブ430は、第3ポート213に接続された端部と反対側の端部側が切替機構460を介して腹膜透析カテーテル450と接続されている。第4チューブ440は、第4ポート214に接続された端部と反対側の端部側が使用済みの腹膜透析液を収容するための排液バッグ610と接続されている。
【0044】
第2ポンプ212は、例えば、公知のダイアフラムポンプで構成することができる。
【0045】
図2に示すように、排液カセット200は、流路切替部215を有する。
【0046】
流路切替部215は、例えば、腹膜透析装置300の各クランプ部316、317に対応した箇所に形成された複数の開口部215a、215bで構成することができる。各クランプ部316、317は、排液流路210の閉鎖を行う際、開口部215a、215bを介して排液流路210側に突出し、排液流路210をなすチューブを押し潰すようにして閉鎖することができる。
【0047】
腹膜透析用医療装置10は、所定の第1状態と第2状態とを切り替え可能に構成された切替機構460を有する。切替機構460は、例えば、三方活栓等によって構成することができる。
【0048】
第1状態は、第2チューブ420を介して注液カセット100と腹腔B内が連通され、かつ、第3チューブ430を介した排液カセット200と腹腔B内との連通が遮断された状態である。本実施形態では、腹腔B内に未注入の腹膜透析液を注入する際に、上記の第1状態に切り替えられる。
【0049】
第2状態は、第2チューブ420を介した注液カセット100と腹腔B内との連通が遮断され、かつ、第3チューブ430を介して排液カセット200と腹腔B内とが連通された状態である。本実施形態では、腹腔Bから使用済みの腹膜透析液を排液する際に、上記の第2状態に切り替えられる。
【0050】
次に、腹膜透析用医療装置10の使用例を説明する。
【0051】
患者Hは、腹膜透析を開始するにあたり、図2に示すように、腹膜透析用医療装置10をセットする。患者Hの腹腔Bは、腹膜透析カテーテル450を介して注液カセット100の注液流路110と排液カセット200の排液流路210と連通される。なお、図2に示す状態において、各カセット100、200は、腹膜透析装置300のカセット装着部301に装着される。
【0052】
(腹膜透析液の注液)
患者Hは、腹膜透析を開始するにあたり、切替機構460を操作して、第1状態とする。これにより、第3チューブ430を介した排液カセット200と腹腔B内との連通を遮断することができる。
【0053】
腹膜透析装置300による腹膜透析液の注入が開始すると、排液流路210内での使用済みの腹膜透析液の流通を制御するための第6クランプ部316及び第7クランプ部317が閉じられる。これにより、排液流路210と第3チューブ430の連通が遮断される。そのため、排液流路210内に未注入の腹膜透析液が流通することをより確実に制限することができる。
【0054】
注液作業が開始すると、第1クランプ部311及び第2クランプ部312が注液流路110を閉じるように動作し、第3クランプ部313、第4クランプ部314(及び/又は第5クランプ部315)が注液流路110を開くように動作する(図2を参照)。この状態で第1ポンプ112が動作し、注液流路110を介して透析液バッグ510a(及び/又は510b)に保持された未注入の腹膜透析液を第1ポンプ112側へ引き込む。
【0055】
次に、第3クランプ部313、第4クランプ部314(及び/又は第5クランプ部315)が注液流路110を閉じるように動作し、第1クランプ部311、第2クランプ部312が注液流路110を開くように動作する。この状態で第1ポンプ112が動作し、未注入の透析液を加温部111(図2を参照)へ送液し、さらに加温部111から第1部位110aを介して第2チューブ420へ送液する。これにより、患者Hの腹腔B内に腹膜透析液を注入することができる。
【0056】
(腹膜透析液の排液)
患者Hは、腹膜透析液の排液を開始するにあたり、切替機構460を操作して、第2状態とする。これにより、第2チューブ420を介した注液カセット100と腹腔B内との連通を遮断することができる。
【0057】
腹膜透析液の排液が開始すると、注液流路110内での未注入の腹膜透析液の流通を制御するための第1クランプ部311が閉じられる。これにより、注液流路110と第2チューブ420の連通が遮断される。そのため、注液流路110内に使用済みの腹膜透析液が流通することをより確実に制限することができる。
【0058】
排液作業が開始すると、第6クランプ部316が排液流路210を開くように動作し、第7クランプ部317が排液流路210を閉じるように動作する(図4を参照)。この状態で第2ポンプ212が動作し、排液流路210を介して腹腔B内の使用済みの腹膜透析液を第2ポンプ212側へ引き込む。
【0059】
次に、第6クランプ部316が排液流路210を閉じるように動作し、第7クランプ部317が排液流路210を開くように動作する。この状態で第2ポンプ212が動作し、使用済みの腹膜透析液を第2部位210bを介して第4チューブ440へ送液する。これにより、排液バッグ610へ使用済みの腹膜透析液を送液することができる。
【0060】
本実施形態に係る腹膜透析用医療装置10では、注液カセット100と排液カセット200を別個の構成部材とし、それぞれを独立して腹膜透析装置300に装着させることができる。また、使用済みの腹膜透析液は、注液カセット100の注液流路110内を通過させることなく、排液カセット200側へ排液させることができる。そのため、注液カセット100は、注液及び排液を繰り返して行うような場合に、一度の使用で廃棄する必要がなく、繰り返し使用することができる。そのため、腹膜透析用医療装置10を使用することにより、腹膜透析に要するコストの削減を図ることができる。
【0061】
以上、実施形態を通じて本発明に係る腹膜透析用医療装置及び注液カセットを説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 腹膜透析用医療装置
100 注液カセット
110 注液流路
111 加温部
112 第1ポンプ
113a 第1ポート
113b 第1ポート
114 第2ポート
115 流路切替部
200 排液カセット
210 排液流路
212 第2ポンプ
213 第3ポート
214 第4ポート
215 流路切替部
300 腹膜透析装置
311 第1クランプ部(注液側クランプ部)
312 第2クランプ部
313 第3クランプ部
314 第4クランプ部
315 第5クランプ部
316 第6クランプ部(排液側クランプ部)
317 第7クランプ部(排液側クランプ部)
320 ヒーター
410a 第1チューブ
410b 第1チューブ
420 第2チューブ
430 第3チューブ
440 第4チューブ
450 腹膜透析カテーテル
460 切替機構
510a 透析液バッグ
510b 透析液バッグ
610 排液バッグ
B 腹腔
H 患者
図1
図2
図3
図4