(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140368
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ダンプトラックの走行装置
(51)【国際特許分類】
B60K 7/00 20060101AFI20241003BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60K7/00
F16H1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051482
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内野 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】川田 理央
(72)【発明者】
【氏名】竹下 大翼
(72)【発明者】
【氏名】宮原 瑶子
【テーマコード(参考)】
3D235
3J027
【Fターム(参考)】
3D235AA19
3D235BB25
3D235CC46
3D235FF32
3D235GA04
3D235GA13
3D235GA34
3D235GB04
3D235GB13
3D235GB34
3J027FB06
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027GE01
(57)【要約】
【課題】太陽歯車と遊星歯車との片当たりによる偏摩耗を抑制できるダンプトラックの走行装置を提供する。
【解決手段】ダンプトラック1の走行駆動装置11は、スピンドル14と、車輪取付筒18と、減速歯車機構24と、を備えている。減速歯車機構24は、第1遊星歯車減速機構25と、第2遊星歯車減速機構33と、を有している。第2遊星歯車減速機構33は、第2太陽歯車34、第2遊星歯車36および第2キャリア38を有している。第2キャリア38は、非回転のキャリアとしてスピンドル14に固定されている。第2キャリア38と第2太陽歯車34との間には、第2キャリア38に対して第2太陽歯車34を回転可能に支持する太陽歯車支持部材61が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプトラックに設けられた筒状のスピンドルと、
前記スピンドルに回転可能に取付けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、
前記車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を前記車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、を備え、
前記減速歯車機構は、
第1太陽歯車、第1遊星歯車および第1キャリアを有する第1遊星歯車減速機構と、
前記第1遊星歯車減速機構よりも前記ダンプトラックの幅方向の内側に配置され、第2太陽歯車、第2遊星歯車および第2キャリアを有する第2遊星歯車減速機構と、を有しており、
前記第2遊星歯車減速機構の前記第2キャリアは、非回転のキャリアとして前記スピンドルに固定されたダンプトラックの走行装置において、
前記第2遊星歯車減速機構の前記第2キャリアと前記第2太陽歯車との間には、前記第2キャリアに対して前記第2太陽歯車を回転可能に支持する太陽歯車支持部材が設けられていることを特徴とするダンプトラックの走行装置。
【請求項2】
前記太陽歯車支持部材は、円環状に形成されると共に、周方向に離間して複数のボルト挿通孔が設けられており、
前記太陽歯車支持部材は、前記ボルト挿通孔に挿通され、かつ、前記第2キャリアのネジ穴に螺合するボルトにより、前記第2キャリアに固定されることを特徴とする請求項1に記載のダンプトラックの走行装置。
【請求項3】
前記第2キャリアには、前記減速歯車機構を潤滑する潤滑油の油通路が設けられており、
前記太陽歯車支持部材は、前記油通路の一部を構成していることを特徴とする請求項1に記載のダンプトラックの走行装置。
【請求項4】
前記油通路は、
前記第2キャリア内で上下方向に延び、前記車輪取付筒内の潤滑油を吸込む上流側吸込通路と、
前記上流側吸込通路よりも潤滑油の流通方向の下流側に配置され、前記第2キャリア内を軸方向に延びる下流側吸込通路と、
前記太陽歯車支持部材に設けられ、前記上流側吸込通路と前記下流側吸込通路とを接続する接続通路と、を有していることを特徴とする請求項3に記載のダンプトラックの走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば露天の採掘場、石切り場、鉱山で採掘した砕石物を運搬するのに好適に用いられるダンプトラックの走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダンプトラックと呼ばれる大型の車両は、車体のフレーム上に起伏可能となったベッセル(荷台)を備えている。ダンプトラックは、砕石物に代表される重い荷物をベッセルに多量に積載した状態で荷受け場所へと運搬する。ダンプトラックの駆動輪を走行駆動する走行装置は、車体に非回転状態で取付けられる筒状のスピンドル(アクスルハウジング)と、スピンドルに回転可能に取付けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、を備えている。ここで、例えば、特許文献1には、減速歯車機構に潤滑油を供給する潤滑油供給装置を設けたダンプトラックの走行装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンプトラックの走行装置を構成する減速歯車機構は、第1遊星歯車減速機構と、この第1遊星歯車減速機構よりもダンプトラックの幅方向の内側に配置された第2遊星歯車減速機構と、を有している。従来技術によれば、第2遊星歯車減速機構の太陽歯車の回転軸芯(回転中心軸)が振れる可能性がある。これにより、第2遊星歯車減速機構の太陽歯車と遊星歯車との歯当たりが片当たりとなり、この片当たりによる摩耗(偏摩耗)が増大する可能性がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、太陽歯車と遊星歯車との片当たりによる偏摩耗を抑制できるダンプトラックの走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、好ましくは、ダンプトラックに設けられた筒状のスピンドルと、前記スピンドルに回転可能に取付けられ車輪と一体に回転する筒状の車輪取付筒と、前記車輪取付筒内に設けられ駆動源の回転を前記車輪取付筒に減速して伝える減速歯車機構と、を備え、前記減速歯車機構は、第1太陽歯車、第1遊星歯車および第1キャリアを有する第1遊星歯車減速機構と、前記第1遊星歯車減速機構よりも前記ダンプトラックの幅方向の内側に配置され、第2太陽歯車、第2遊星歯車および第2キャリアを有する第2遊星歯車減速機構と、を有しており、前記第2遊星歯車減速機構の前記第2キャリアは、非回転のキャリアとして前記スピンドルに固定されたダンプトラックの走行装置において、前記第2遊星歯車減速機構の前記第2キャリアと前記第2太陽歯車との間には、前記第2キャリアに対して前記第2太陽歯車を回転可能に支持する太陽歯車支持部材が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2太陽歯車と第2遊星歯車との片当たりによる偏摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態による走行駆動装置が適用されたダンプトラックを示す全体図である。
【
図2】後輪側の走行駆動装置を
図1中の矢示II-II方向からみた断面図である。
【
図3】
図2中の遊星歯車減速機構等を拡大して示す断面図である。
【
図4】第2遊星歯車減速機構の第2キャリア、第2遊星歯車、太陽歯車支持部材、上流側吸込管路等を示す分解断面図である。
【
図5】第2遊星歯車減速機構の第2キャリアに太陽歯車支持部材および上流側吸込管路を取り付けた状態を示す部分断面図である。
【
図6】
図5中の(VI)部を
図5の背面側からみた拡大図である。
【
図7】太陽歯車支持部材を単体で示す正面図である。
【
図8】太陽歯車支持部材を
図7中の矢示VIII-VIII方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態によるダンプトラックの走行装置を、後輪駆動式のダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
図1において、ダンプトラック1は、頑丈なフレーム構造をなす車体2と、該車体2上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル3と、を含んだ大型車両として構成されている。ベッセル3は、砕石物に代表される重い荷物を多量に積載するため全長が9~13メートルにも及ぶ大型の容器として形成されている。ベッセル3の後側底部は、車体2の後端側に連結ピン4を介して起伏(傾転)可能に連結されている。ベッセル3の前側上部には、キャブ5を上側から覆う庇部3Aが一体に設けられている。
【0011】
キャブ5は、庇部3Aの下側に位置して車体2の前部に設けられている。キャブ5は、ダンプトラック1の運転者が乗降する運転室を形成している。キャブ5の内部には、運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドルおよび複数の操作レバー(いずれも図示せず)が設けられている。ベッセル3の庇部3Aは、キャブ5を上側からほぼ完全に覆うことにより、岩石等の飛び石からキャブ5を保護すると共に、車両(ダンプトラック1)の転倒時にもキャブ5内の運転者を保護する機能を有している。
【0012】
左右の前輪6は、車体2の前部側に回転可能に設けられている。左右の前輪6は、ダンプトラック1の運転者(または、外部からの自動運転)によってステアリング操作される操舵輪を構成している。前輪6は、後輪7と同様に、例えば2~4メートルに及ぶタイヤ径(即ち、外径寸法)をもって形成されている。車体2の前部と前輪6との間には、油圧緩衝器からなる前輪側サスペンション6SPがそれぞれ設けられている。
【0013】
左右の後輪7は、車体2の後部側に回転可能に設けられている。左右の後輪7は、ダンプトラック1の駆動輪を構成している。左右の後輪7は、
図2および
図3に示す走行駆動装置11により車輪取付筒18と一体に回転駆動される。後輪7は、複輪式タイヤからなるインナタイヤ7Aおよびアウタタイヤ7A(
図2参照)と、各タイヤ7Aの径方向内側に配設されるリム7B(
図2参照)と、を含んで構成されている。車体2の後部と後輪7との間には、油圧緩衝器からなる後輪側サスペンション7SPがそれぞれ設けられている。
【0014】
エンジン8は、キャブ5の下側に位置して車体2内に設けられている。エンジン8は、例えば大型のディーゼルエンジンにより構成されている。エンジン8は、車載の発電機、油圧源となる油圧ポンプ(いずれも図示せず)を回転駆動する。油圧ポンプから吐出される圧油は、ホイストシリンダ9、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に供給される。
【0015】
ホイストシリンダ9は、ベッセル3を起伏させるための一対のシリンダ装置である。
図1に示すように、ホイストシリンダ9は、前輪6と後輪7との間に位置して車体2の左右両側にそれぞれ配設されている。ホイストシリンダ9は、車体2とベッセル3との間に上下方向で伸縮可能に取付けられている。即ち、ホイストシリンダ9は、油圧ポンプからの圧油が給排されることにより上下方向に伸縮する。これにより、ホイストシリンダ9は、後部側の連結ピン4を中心にしてベッセル3を起伏(傾転)させる。
【0016】
図1に示すように、作動油タンク10は、ベッセル3の下方に位置して車体2の側面等に取付けられている。作動油タンク10内に収容した作動油は、油圧ポンプにより吸込まれつつ吐出され、圧油となってホイストシリンダ9およびパワーステアリング用の操舵シリンダ等に給排される。
【0017】
次に、ダンプトラック1の後輪7側に設けられた走行装置としての走行駆動装置11について説明する。
【0018】
図2に示すように、走行駆動装置11は、アクスルハウジング12、走行用モータ16、車輪取付筒18、減速歯車機構24等を含んで構成されている。走行駆動装置11は、走行用モータ16の回転を減速歯車機構24により減速し、車両の駆動輪となる後輪7を車輪取付筒18と一緒に大なる回転トルクで走行駆動する。
【0019】
後輪7用のアクスルハウジング12は、車体2の後部側に非回転状態で設けられている。アクスルハウジング12は、左右の後輪7,7間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。即ち、アクスルハウジング12は、車幅方向(左右方向)に延びる筒状体として形成されている。アクスルハウジング12は、各後輪側サスペンション7SPを介して車体2の後部側に取付けられた懸架筒13と、懸架筒13の左右両側にそれぞれ設けられたスピンドル14と、により構成されている。
【0020】
スピンドル14は、筒状体として形成され、アクスルハウジング12の軸方向両端側にそれぞれ設けられている。
図2中に示すように、スピンドル14は、軸方向一側(車幅方向の内側となる
図2の右側)に位置してテーパ形状をなし懸架筒13にボルト15を介して着脱可能に固着された大径筒部14Aと、大径筒部14Aの軸方向他側(車幅方向の外側となる
図2の左側)に一体形成された支持筒部14Bと、により構成されている。支持筒部14Bは、車輪取付筒18内を軸方向に延びるように配置されている。支持筒部14Bの外周側は、車輪支持軸受20,21を介して後輪7側の車輪取付筒18を回転可能に支持する。
【0021】
一方、スピンドル14の外周側には、大径筒部14Aの長さ方向(軸方向)中間部から径方向外向きに突出し後述の湿式ブレーキ40が取付けられる環状フランジ部14Cと、後述のリテーナ42を軸方向に位置決めするため支持筒部14Bの軸方向一側に設けられた環状の段差部14Dと、が一体に形成されている。大径筒部14Aの軸方向一側には、径方向の内向きに突出する複数のモータ取付座14Eが一体に形成されている。モータ取付座14Eには、走行用モータ16が取付けられている。
【0022】
また、支持筒部14Bの軸方向他側(先端側)は、開口端となっている。この開口端の内周側には、第2キャリア38がスプライン結合されている。さらに、支持筒部14Bの軸方向の中間部には、その内周側に環状の内側突部14Fが一体に形成されている。内側突部14Fには、外側リテーナ51がボルト等を介して固定されている。
【0023】
走行用モータ16は、後輪7の駆動源として用いられている。走行用モータ16は、アクスルハウジング12内に着脱可能に設けられている。走行用モータ16は、車体2に搭載された発電機(図示せず)からの電力供給によって回転駆動される大型の電動モータにより構成されている。走行用モータ16は、左右の後輪7,7を互いに独立して回転駆動するため、懸架筒13の左,右両側に位置してスピンドル14内にそれぞれ取付けられている。
【0024】
走行用モータ16は、その外周側に複数の取付フランジ16Aを有している。取付フランジ16Aは、スピンドル14のモータ取付座14Eにボルトを用いて着脱可能に取付けられている。走行用モータ16は、発電機から電力が供給されることにより、シャフト17を回転駆動する。
【0025】
シャフト17は走行用モータ16の出力軸を構成している。シャフト17は、走行用モータ16によって正方向または逆方向に回転駆動される。シャフト17は、スピンドル14の内周側を軸方向(左右方向)に延びる1本の長尺な棒状体により構成されている。シャフト17の一端側は、走行用モータ16の出力側に連結されている。一方、シャフト17の他端側は、スピンドル14を構成する支持筒部14Bの開口端側から軸方向の外側へと突出している。シャフト17の突出端側には、第1太陽歯車26が一体回転するように設けられている。
【0026】
シャフト17の軸方向の中間部は、スピンドル14の支持筒部14B内にシャフトベアリング52を用いて回転可能に支持されている。シャフト17の軸方向の中間部(即ち、シャフトベアリング52の取付位置)は、スピンドル14の外周側で車輪取付筒18を回転可能に支持する後述の車輪支持軸受20,21に対し、両者の間となる軸方向位置に配置されている。
【0027】
車輪取付筒18は、所謂ホイールハブを構成しており、車輪としての後輪7と一体に回転する。車輪取付筒18の外周側には、後輪7の各リム7Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられている。車輪取付筒18は、車輪支持軸受20,21間にわたって軸方向に延び中空構造をなした中空筒部18Aと、中空筒部18Aの外周側端部から第2内歯車35に向けて軸方向の他側(即ち、軸方向の外側)に一体に延びた延設筒部18Bと、により、段付筒状体として形成されている。
【0028】
車輪取付筒18の延設筒部18Bには、第2内歯車35と外側ドラム22とが長尺ボルト23を用いて一体的に固着されている。これにより、車輪取付筒18は、第2内歯車35と一体に回転される。リムスペーサ19は筒状のリングにより形成されている。リムスペーサ19は、後輪7のインナタイヤ7Aとアウタタイヤ7Aとの間に予め決められた軸方向の隙間を確保するため、車輪取付筒18の外周側に配置されている。
【0029】
車輪支持軸受20,21は、スピンドル14の外周側で車輪取付筒18を回転可能に支持する軸受である。車輪支持軸受20,21は、例えば円錐ころ軸受を用いて構成されている。車輪支持軸受20,21は、スピンドル14の支持筒部14Bと車輪取付筒18の中空筒部18Aとの間に軸方向に離間して配設されている。
【0030】
外側ドラム22は、第2内歯車35と共に車輪取付筒18の一部を構成している。
図2および
図3に示すように、外側ドラム22は、車輪取付筒18の軸方向の外側となる位置に第2内歯車35を挟んで取付けられている。外側ドラム22は、複数の長尺ボルト23を用いて第2内歯車35と共に車輪取付筒18に着脱可能に固着されている。
【0031】
次に、シャフト17の突出端(他端)側と車輪取付筒18との間にスピンドル14を介して設けられた減速歯車機構24について説明する。
【0032】
減速歯車機構24は、後輪7側の車輪取付筒18に対し走行用モータ16(即ち、シャフト17)の回転を減速して伝える。これにより、後輪7側の車輪取付筒18は、減速して得られた大きな回転力(トルク)をもって後輪7と一緒に回転駆動される。減速歯車機構24は、1段目の遊星歯車減速機構25(以下、第1遊星歯車減速機構25という)と2段目の遊星歯車減速機構33(以下、第2遊星歯車減速機構33という)とにより構成されている。
【0033】
最終段となる第2遊星歯車減速機構33は、その前段側(即ち、第1遊星歯車減速機構25)よりもスピンドル14の開口端に近い位置に配設されている。即ち、第2遊星歯車減速機構33は、第1遊星歯車減速機構25よりも車輪取付筒18の軸方向の内側となる位置に配置されている。換言すると、第1遊星歯車減速機構25は、第2遊星歯車減速機構33よりも車輪取付筒18の軸方向の外側となる位置に配置されている。
【0034】
第1遊星歯車減速機構25は、減速歯車機構24の1段目の減速段を構成している。第1遊星歯車減速機構25は、シャフト17の自由端となる突出端側(軸方向の外側端部)にスプライン結合された第1太陽歯車26と、第1太陽歯車26とリング状の第1内歯車27とに噛合する複数(例えば、3~4個)の第1遊星歯車28と、これら第1遊星歯車28をそれぞれ遊星軸29を介して回転可能に支持する第1キャリア30と、により構成されている。
【0035】
第1キャリア30の外周側は、車輪取付筒18に一体化された外側ドラム22の開口端(軸方向外側の端面)にボルトを介して着脱可能に固定されている。第1キャリア30は、外側ドラム22および車輪取付筒18と一体に回転する。第1キャリア30の内周側には、例えば円板状の蓋板31が着脱可能に取付けられている。蓋板31は、例えば第1太陽歯車26と各第1遊星歯車28との噛合部を保守、点検する場合に第1キャリア30から取外される。
【0036】
リング状の第1内歯車27は、第1太陽歯車26および各第1遊星歯車28を径方向の外側から取囲むリングギヤを用いて形成されている。第1内歯車27は、外側ドラム22の径方向の内側に相対回転可能に配置され、外側ドラム22の内周面と第1内歯車27との間には、小さな径方向の隙間が形成されている。第1内歯車27の回転(公転)は、カップリング32を介して第2遊星歯車減速機構33に伝えられる。
【0037】
第1遊星歯車減速機構25は、走行用モータ16によってシャフト17と一体に第1太陽歯車26が回転すると、この第1太陽歯車26の回転を各第1遊星歯車28の自転運動と公転運動とに変換する。各第1遊星歯車28の自転(回転)は、リング状の第1内歯車27に減速した回転として伝えられる。第1内歯車27の回転は、カップリング32を介して第2遊星歯車減速機構33に伝達される。一方、各第1遊星歯車28の公転は、第1キャリア30の回転となって車輪取付筒18側の外側ドラム22に伝達される。しかし、車輪取付筒18は、第2内歯車35と一体に回転するため、各第1遊星歯車28の公転は、第2内歯車35(車輪取付筒18)に同期した回転に抑えられる。
【0038】
カップリング32は、第1内歯車27と一体に回転する。カップリング32は、第1遊星歯車減速機構25と第2遊星歯車減速機構33との間に位置する環状の回転伝達部材として形成されている。即ち、カップリング32の外周側は、第1内歯車27にスプライン結合されている。カップリング32の内周側は、第2太陽歯車34にスプライン結合されている。これにより、カップリング32は、第1内歯車27の回転を第2太陽歯車34に伝達し、この第2太陽歯車34を第1内歯車27と一体に回転させる。
【0039】
第2遊星歯車減速機構33は、減速歯車機構24の最終段の減速段を構成している。第2遊星歯車減速機構33は、シャフト17と車輪取付筒18との間に第1遊星歯車減速機構25を介して配設され、第1遊星歯車減速機構25と共にシャフト17の回転を減速する。第2遊星歯車減速機構33は、シャフト17と同軸に配置されカップリング32と一体に回転する円筒状の第2太陽歯車34と、第2太陽歯車34とリング状の第2内歯車35とに噛合する複数の第2遊星歯車36と、各第2遊星歯車36をそれぞれ第2遊星軸37を介して回転可能に支持する第2キャリア38と、により構成されている。
【0040】
第2太陽歯車34は、筒状の平歯車として形成されている。第2太陽歯車34の内周側には、シャフト17が隙間をもって挿通されている。第2太陽歯車34は、シャフト17の周囲を相対回転(シャフト17よりも遅い速度で回転)する。第2太陽歯車34の外周側は、複数(例えば、3~4個)の第2遊星歯車36と噛合している。
【0041】
第2内歯車35は、第2太陽歯車34および各第2遊星歯車36を径方向の外側から取囲むリングギヤを用いて形成されている。第2内歯車35は、車輪取付筒18の一部を構成する延設筒部18Bと外側ドラム22との間に長尺ボルト23を用いて一体的に固着されている。第2内歯車35の内周側に形成された内歯には、各第2遊星歯車36が噛合する。
【0042】
図3ないし
図5に示すように、第2キャリア38は、2枚の支持板38A,38Bと、複数(例えば、4個)の連結部38Cと、筒状連結部38Dと、を含んで構成されている。支持板38A,38Bは、互いに板厚が異なる環状体からなり、シャフト17(即ち、車輪取付筒18の軸中心)と同心上で軸方向に離間(対面)して配置されている。連結部38Cは、支持板38A,38B間に各第2遊星歯車36を配置するため周方向に一定の間隔をもって配置されている。連結部38Cは、環状の支持板38A,38B間を一体的に連結する。
【0043】
第2キャリア38の支持板38A,38Bのうち軸方向一側の支持板38Aには、スピンドル14(支持筒部14B)の開口端側に向けて軸方向に延びる筒状連結部38Dが一体に形成されている。
図2および
図3に示すように、筒状連結部38Dは、スピンドル14の支持筒部14Bにスプライン結合されている。即ち、筒状連結部38Dの外周は、支持筒部14Bの開口端内周側にスプライン結合されている。これにより、第2キャリア38は、スピンドル14に結合して設けられた非回転のキャリアを構成している。
【0044】
図4および
図5に示すように、第2キャリア38には、例えば4個の第2遊星歯車36がそれぞれ遊星軸37を介して回転可能に取付けられる。軸方向一側の支持板38Aおよび上下方向の下側に位置する連結部38Cには、後述の吸込管路46の一部を構成する上流側吸込管路46Aが設けられている。この場合、連結部38Cには、上流側吸込管路46Aが挿通される貫通孔38Eが形成されている。また、軸方向一側の支持板38Aには、上流側吸込管路46Aが装着されるガイド凹部38Fが形成されている。貫通孔38Eは、連結部38Cの下側から支持板38Aの径方向の中心に向けて延びている。ガイド凹部38Fは、連結部38Cの上側、即ち、貫通孔38Eの上端側の開口から支持板38Aの径方向の中心に向けて延びている。
【0045】
また、
図2および
図3に示すように、第2キャリア38の筒状連結部38Dの内周側(中心側)には、シャフト17が隙間をもって挿通されている。シャフト17と筒状連結部38Dとの間には、吸込管路46の一部を構成する下流側吸込管路46Bと、供給管路47と、が設けられている。この場合、筒状連結部38Dの内周側には、下流側吸込管路46Bが装着されるガイド凹部38Gが形成されている。ガイド凹部38Gは、筒状連結部38Dの内周面のうち上下方向の下側に配置され、筒状連結部38Dの軸方向に延びている。
【0046】
ここで、第2遊星歯車減速機構33は、第2キャリア38の筒状連結部38Dがスピンドル14の支持筒部14Bにスプライン結合されている。これによって、第2キャリア38は、スピンドル14に対して回転が拘束された非回転のキャリアとなり、第2遊星歯車36も公転が拘束される。従って、第2遊星歯車減速機構33は、第2太陽歯車34がカップリング32と一体に回転すると、この第2太陽歯車34の回転を第2遊星歯車36の自転に変換する。第2遊星歯車36の自転は、第2内歯車35に伝達され、第2内歯車35は、減速された状態で回転する。これにより、第2内歯車35が固定された車輪取付筒18には、第1遊星歯車減速機構25と第2遊星歯車減速機構33とにより2段階で減速された大出力の回転トルクが伝達される。
【0047】
図2に示すように、湿式ブレーキ40は、車輪取付筒18の回転(即ち、左右の後輪7)に制動力を与える。湿式ブレーキ40は、湿式多板型の油圧ブレーキにより構成されている。湿式ブレーキ40は、アクスルハウジング12のスピンドル14と車輪取付筒18との間にブレーキハブ41を介して設けられている。湿式ブレーキ40は、車輪取付筒18と一体に回転するブレーキハブ41に対して制動力を付与する。
【0048】
ブレーキハブ41は、湿式ブレーキ40の一部を構成している。ブレーキハブ41は、車輪取付筒18と一体に回転する。ブレーキハブ41は、スピンドル14と湿式ブレーキ40との間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。ブレーキハブ41の軸方向一側には、湿式ブレーキ40の各回転側ディスクが廻止め状態で、軸方向に移動可能に取付けられている。ブレーキハブ41の軸方向他側は、車輪取付筒18の中空筒部18Aに複数のボルトを介して着脱可能に固定されている。
【0049】
リテーナ42は、スピンドル14の支持筒部14Bに車輪支持軸受20の内輪側を位置決めしている。リテーナ42は、支持筒部14Bの外周面に嵌合して設けられている。リテーナ42の軸方向一側は、スピンドル14の環状の段差部14Dに当接している。リテーナ42の軸方向他側は、車輪支持軸受20の内輪側に軸方向で当接している。これにより、車輪支持軸受20は、その外輪側が車輪取付筒18の中空筒部18Aにより軸方向に位置決めされ、内輪側がリテーナ42により軸方向に位置決めされている。
【0050】
他のリテーナ(以下、エンドリテーナ43という)は、スピンドル14の支持筒部14Bの開口端に複数のボルトを介して取付けられている。エンドリテーナ43は、車輪支持軸受21の内輪側を支持筒部14Bの外周側で軸方向に位置決めしている。即ち、車輪支持軸受21は、その外輪側が車輪取付筒18の中空筒部18Aにより軸方向に位置決めされ、内輪側がエンドリテーナ43により軸方向に位置決めされている。エンドリテーナ43は、環状のリング体として形成されている。
【0051】
ところで、従来技術の場合、最終段の遊星歯車減速機構(第2遊星歯車減速機構)の太陽歯車は、軸方向の片側(一側)が自由端、即ち、径方向の動きが拘束されない自由端となっており、回転軸芯(回転中心軸)が振れる可能性がある。これにより、最終段の遊星歯車減速機構の太陽歯車と遊星歯車とが片当たりし、偏摩耗が増大する可能性がある。このため、最終段の遊星歯車減速機構の太陽歯車と遊星歯車の偏摩耗を抑制できることが望ましい。また、ダンプトラックの走行装置は、ダンプトラックが停車中であるか高速運転中であるかに拘わらず、減速歯車機構に潤滑油を安定して供給できることが望ましい。
【0052】
そこで、実施の形態では、スピンドル14の開口側に非回転状態で締結された最終段のキャリアである第2キャリア38に、最終段の太陽歯車である第2太陽歯車34の軸芯を支持する円環状部材、即ち、軸芯支持部材となる太陽歯車支持部材61を固定している。太陽歯車支持部材61は、第2太陽歯車34を回転可能に支持する滑り軸受となる。このため、太陽歯車支持部材61が第2太陽歯車34の軸芯支持の役割を果たすことにより、第2太陽歯車34と第2遊星歯車36(最終段の遊星歯車)との歯当たりを適切な状態に維持できる。
【0053】
これにより、実施の形態では、第2太陽歯車34と第2遊星歯車36の偏摩耗を抑制することができ、歯車寿命を向上できる。しかも、太陽歯車支持部材61は、車輪取付筒18内から潤滑油100を吸込む吸込管路46の一部を構成している。このため、吸込管路46を通じて潤滑油100の吸込みおよび循環を安定して行うことができることに加えて、太陽歯車支持部材61を通過する潤滑油100により太陽歯車支持部材61を冷却することができる。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0054】
まず、
図1ないし
図3に示すように、ダンプトラック1の走行駆動装置11は、スピンドル14と、車輪取付筒18と、減速歯車機構24と、を備えている。スピンドル14は、筒状に形成され、ダンプトラック1に設けられている。車輪取付筒18は、スピンドル14に回転可能に取付けられている。車輪取付筒18は、筒状に形成されており、車輪としての後輪7と一体に回転する。減速歯車機構24は、車輪取付筒18内に設けられている。減速歯車機構24は、駆動源(走行駆動源)としての走行用モータ16の回転を車輪取付筒18に減速して伝える。
【0055】
減速歯車機構24は、第1遊星歯車減速機構25と、最終段の遊星歯車機構となる第2遊星歯車減速機構33と、を有している。第1遊星歯車減速機構25は、第1太陽歯車26、第1遊星歯車28および第1キャリア30を有している。第2遊星歯車減速機構33は、第1遊星歯車減速機構25よりもダンプトラック1の幅方向の内側に配置されている。第2遊星歯車減速機構33は、最終段の太陽歯車となる第2太陽歯車34、最終段の遊星歯車となる第2遊星歯車36および最終段のキャリアとなる第2キャリア38を有している。第2遊星歯車減速機構33の第2キャリア38は、非回転のキャリアとしてスピンドル14に固定されている。
【0056】
この上で、第2遊星歯車減速機構33の第2キャリア38と第2太陽歯車34との間には、第2キャリア38に対して第2太陽歯車34を回転可能に支持する太陽歯車支持部材61(以下、単に「支持部材61」ともいう)が設けられている。このために、
図4に示すように、第2キャリア38の軸方向一側の支持板38Aには、支持部材61が取付けられる取付部62が形成されている。取付部62は、支持板38Aの開口側に位置して内径寸法が大きい大径孔62Aと、大径孔62Aよりも軸方向一側に位置して内径寸法が小さい小径孔62Bと、これらの間を接続する当接面62Cと、を有している。大径孔62Aには、支持部材61の大径筒部61Aが挿入される。小径孔62Bには、支持部材61の小径筒部61Bが挿入される。当接面62Cには、軸方向に延びるネジ穴62Dが開口している。ネジ穴62Dには、支持部材61を第2キャリア38(軸方向一側の支持板38A)の取付部62に固定するボルト63が螺合される。
【0057】
これに対して、
図4、
図7および
図8に示すように、支持部材61は、外径寸法の大きい大径筒部61Aと、外径寸法の小さい小径筒部61Bと、を有している。支持部材61は、大径筒部61Aと小径筒部61Bとにより全体として段付き円環状に形成されている。大径筒部61Aは、第2キャリア38(支持板38A)の大径孔62Aに挿入される。小径筒部61Bは、第2キャリア38(支持板38A)の小径孔62Bに挿入される。大径筒部61Aには、第2キャリア38(支持板38A)のネジ穴62Dと対応する位置にボルト挿通孔61Cが設けられている。
【0058】
支持部材61は、大径筒部61Aの側面を第2キャリア38(支持板38A)の当接面62Cに当接させた状態で、ボルト63をボルト挿通孔61Cに挿通しネジ穴62Dに螺合することにより、第2キャリア38(支持板38A)に固定される。支持部材61の内周面は、第2太陽歯車34の突出筒部34Aが摺動する摺動面となっている。即ち、支持部材61の内周面は、第2太陽歯車34(突出筒部34A)の滑り軸受となっている。また、後述するように、支持部材61には、潤滑油100が流通する接続通路としての接続油路46Cが設けられている。
【0059】
図2および
図3に示すように、最終段の遊星歯車減速機構である第2遊星歯車減速機構33の第2太陽歯車34は、支持部材61と対面する側の側面に、支持部材61側に向けて突出する突出筒部34Aが設けられている。突出筒部34Aは、支持部材61の内側に挿入される。第2太陽歯車34は、突出筒部34Aの外周面と支持部材61の内周面とが摺接することにより、支持部材61に回転可能に支持される。即ち、第2太陽歯車34は、突出筒部34Aの外周面と支持部材61の内周面とが摺動することにより、第2太陽歯車34の回転軸芯が振れることが抑制される。
【0060】
以上のように、実施の形態では、太陽歯車支持部材61は、円環状に形成されると共に、周方向に離間して複数のボルト挿通孔61Cが設けられている。支持部材61は、ボルト挿通孔61Cに挿通され、かつ、第2キャリア38のネジ穴62Dに螺合するボルト63により、第2キャリア38に固定される。そして、後述するように、第2キャリア38には、減速歯車機構24を潤滑する潤滑油100の油通路としての吸込管路46が設けられている。この場合、支持部材61は、吸込管路46の一部を構成している。即ち、支持部材61には、接続油路46Cが設けられており、この接続油路46Cは、吸込管路46の途中部位となっている。
【0061】
次に、減速歯車機構24(即ち、第1遊星歯車減速機構25、第2遊星歯車減速機構33)および車輪支持軸受20,21等を潤滑しつつ、これらを冷却する潤滑油供給装置44について説明する。
【0062】
図2に示すように、潤滑油供給装置44は、例えば、隔壁45、吸込管路46、供給管路47、潤滑ポンプ48、オイルクーラ49、内側リテーナ50、外側リテーナ51等を含んで構成されている。
図2および
図3に示すように、車輪取付筒18の内部には、潤滑油100が貯留されている。第1,第2遊星歯車減速機構25,33は、潤滑ポンプ48からオイルクーラ49、供給管路47を介して潤滑油100が供給された状態で作動する。
【0063】
車両の停車状態(車輪取付筒18の停止状態)において、潤滑油100の液面は、例えばスピンドル14を構成する支持筒部14Bの最下部よりも低い位置にあり、かつ、車輪支持軸受20,21の下側部位が潤滑油100中に浸漬されるような位置に設定されている。車両の走行時(走行駆動装置11の作動時)、潤滑油100は、各遊星歯車減速機構25,33によって攪拌される。このとき、潤滑油100は、遠心力の影響によって車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動する。
【0064】
図2に示すように、隔壁45は、スピンドル14内に設けられている。隔壁45は、環状の板体により形成されている。隔壁45の外周側は、スピンドル14の大径筒部14Aの内周側にボルト等を用いて着脱可能に取付けられている。隔壁45は、スピンドル14内を、軸方向一側に位置し走行用モータ16が収容されるモータ収容空間部45Aと、軸方向他側に位置しスピンドル14の支持筒部14B内と連通する筒状空間部45Bとに区画している。
【0065】
吸込管路46は、車輪取付筒18内に貯溜された潤滑油100を回収するための吸込側配管部である。吸込管路46は、長さ方向の一側がモータ収容空間部45A内に配置されると共に、アクスルハウジング12の懸架筒13内を軸方向に延びて設けられている。吸込管路46は、潤滑ポンプ48の吸込側に接続されている。ここで、筒状空間部45B内に位置する吸込管路46の長さ方向の中間部は、車輪取付筒18側に向けてスピンドル14内を軸方向に延びている。そして、
図2および
図3に示すように、吸込管路46の先端側(長さ方向他側)は、スピンドル14内で外側リテーナ51を貫通し、第2キャリア38の筒状連結部38D内のガイド凹部38Gに沿って軸方向に延びている。
【0066】
さらに、吸込管路46の先端側は、筒状連結部38Dのガイド凹部38Gの他端側から太陽歯車支持部材61を介して第2キャリア38内を下側(径方向外側)に向けて延びている。そして、吸込管路46の上流端となる先端は、第2キャリア38の外周面に開口している。この場合、吸込管路46の先端側(リテーナ51よりも長さ方向の他側)は、上流側吸込通路としての上流側吸込管路46Aと、下流側吸込通路としての下流側吸込管路46Bと、接続通路としての接続油路46Cと、を備えている。これら上流側吸込管路46A、下流側吸込管路46Bおよび接続油路46Cは、第2キャリア38に設けられており、減速歯車機構24を潤滑する潤滑油100の油通路に対応する。
【0067】
図3ないし
図6に示すように、上流側吸込管路46Aは、第2キャリア38内で上下方向に延びている。上流側吸込管路46Aは、車輪取付筒18内の潤滑油100を吸込む。下流側吸込管路46Bは、上流側吸込管路46Aよりも潤滑油100の流通方向の下流側に配置されている。下流側吸込管路46Bは、第2キャリア38内を軸方向に延びている。接続油路46Cは、太陽歯車支持部材61に設けられている。接続油路46Cは、上流側吸込管路46Aと下流側吸込管路46Bとを接続する。これら上流側吸込管路46A、下流側吸込管路46Bおよび接続油路46Cを含んで構成される吸込管路46は、車輪取付筒18内の潤滑油100を吸い上げ、この潤滑油100を潤滑ポンプ48の吸込側に回収させる。
【0068】
上流側吸込管路46Aおよび下流側吸込管路46Bは、管体により構成されている。上流側吸込管路46Aは、第2キャリア38の連結部38Cに設けられた貫通孔38Eに挿通されると共に、軸方向一側の支持板38Aに設けられたガイド凹部38Fに装着されている。下流側吸込管路46Bは、第2キャリア38の筒状連結部38Dの内周側に設けられたガイド凹部38Gに装着されている。上流側吸込管路46Aは、取付ブラケット64を用いて第2キャリア38に固定されている。
【0069】
取付ブラケット64は、上流側吸込管路46Aを支持する支持板部64Aと、支持板部64Aの長さ方向の一側の端部から90°上側に折れ曲がった固定板部64Bと、を有しており、全体として略L字状に形成されている。支持板部64Aには、長さ方向の他側となる先端側に上流側吸込管路46Aが貫通して固定されている。支持板部64Aの先端側は、第2キャリア38(連結部38C)の外周側に設けられた係合部65に係合される。固定板部64Bには、取付ブラケット64を上流側吸込管路46Aと共に第2キャリア38に固定するための取付ボルト67が挿通されるボルト挿通孔64Cが設けられている。
【0070】
取付ボルト67は、第2キャリア38(軸方向一側の支持板38A)の背面(軸方向一側の側面)に設けられたネジ穴68に螺合される。即ち、上流側吸込管路46Aは、貫通孔38Eに挿通されると共にガイド凹部38Fに装着された状態で、取付ブラケット64を介して第2キャリア38に固定される。この場合、取付ブラケット64は、支持板部64Aの先端側を係合部65に係合した状態で、取付ボルト67を固定板部64Bのボルト挿通孔64Cに挿通しネジ穴68に螺合することにより、第2キャリア38に固定される。
【0071】
接続油路46Cは、太陽歯車支持部材61に設けられている。接続油路46Cは、支持部材61の大径筒部61Aに設けられた径方向油路46C1と、小径筒部61Bに設けられた軸方向油路46C2と、を有している。径方向油路46C1は、大径筒部61Aの外周面に開口し、大径筒部61Aの径方向に延びている。軸方向油路46C2は、小径筒部61Bの側面に開口し、小径筒部61Bの軸方向に延びている。径方向油路46C1と軸方向油路46C2は、支持部材61内で直交しており、潤滑油100の流通を可能に接続されている。径方向油路46C1の開口(上流側開口)は、上流側吸込管路46Aに接続されている。軸方向油路46C2の開口(下流側開口)は、下流側吸込管路46Bに接続されている。これにより、上流側吸込管路46Aの下端側の開口から吸い上げられた潤滑油100は、接続油路46Cの径方向油路46C1および軸方向油路46C2を介して下流側吸込管路46Bに流通する。
【0072】
供給管路47は、減速歯車機構24に潤滑油100を供給するための供給側配管部である。供給管路47は、スピンドル14内で吸込管路46、シャフト17よりも上方となる位置に配置されると共に、スピンドル14とシャフト17との間を軸方向に延びている。供給管路47の先端部47Aは自由端となって、第2キャリア38の筒状連結部38D内へと延びている。即ち、供給管路47の先端部47Aは、第2キャリア38の筒状連結部38D内に向けて潤滑油100を供給するように筒状連結部38Dの内側に挿入されている。
【0073】
図2および
図3に示すように、供給管路47の長さ方向一側(基端側)は、潤滑ポンプ48の吐出側にオイルクーラ49を介して接続されている。潤滑ポンプ48は、後輪7の駆動源として用いられる走行用モータ16とは別のモータで駆動される。潤滑ポンプ48から吐出される潤滑油100は、オイルクーラ49により冷却される。冷却された潤滑油100は、供給管路47の先端部47A(長さ方向他側)から第2キャリア38の筒状連結部38D内に向けて供給される。このとき、潤滑油100は、シャフト17の周囲を流下しつつ該シャフト17を冷却し、筒状連結部38Dの内側から車輪取付筒18の下部側に流下する。
【0074】
車輪取付筒18の下部側に貯留された潤滑油100は、潤滑ポンプ48の駆動により流入側となる第2キャリア38の外周面の開口(上流側吸込管路46Aの開口)から吸込管路46に吸込まれる。潤滑ポンプ48により吸込まれた潤滑油100は、オイルクーラ49によって冷却される。冷却された潤滑油100は、供給管路47を通じて第1,第2遊星歯車減速機構25,33に供給され、これらの遊星歯車減速機構25,33を潤滑する。
【0075】
内側リテーナ50は、シャフト17の軸方向中間部に嵌合して設けられた環状体として形成されている。外側リテーナ51は、内側リテーナ50の外周側にシャフトベアリング52を位置決めして保持する部材である。内側リテーナ50は、その内周側がシャフト17の中間部に圧入されることにより、シャフト17と一体に回転する。外側リテーナ51は、スピンドル14の内側突部14Fにボルト等を用いて固定されている。
図2および
図3に示すように、吸込管路46および供給管路47の途中部位は、外側リテーナ51を軸方向に貫通して延びている。これにより、吸込管路46および供給管路47の途中部位は、スピンドル14内に外側リテーナ51を介して位置決めされ、固定されている。
【0076】
シャフトベアリング52は、シャフト17側の内側リテーナ50とスピンドル14側の外側リテーナ51との間に配設されている。シャフトベアリング52は、シャフト17の軸方向中間部をスピンドル14の支持筒部14B内で内側リテーナ50、外側リテーナ51を介して回転可能に支持している。これにより、長尺なシャフト17は、軸方向の中間部での芯振れが抑制され、第1太陽歯車26に対してシャフト17の安定した回転を伝えることができる。
【0077】
ここで、非回転のキャリアである第2キャリア38には、車輪取付筒18内に溜められた潤滑油100を吸込む油通路としての吸込管路46が設けられている。吸込管路46は、第2キャリア38の支持板38A内を上下方向(即ち、径方向)に延びる上流側吸込管路46Aを備えている。
図7および
図8は、第2太陽歯車34の軸芯支持部材となる太陽歯車支持部材61を示している。最終段の遊星歯車減速機構である第2遊星歯車減速機構33の第2太陽歯車34は、円盤状の太陽歯車支持部材61によって円周方向に支持されている。
【0078】
即ち、最終段の太陽歯車である第2太陽歯車34は、太陽歯車支持部材61に向けて突出する円筒状の突出筒部34Aが設けられており、突出筒部34Aの外周面が太陽歯車支持部材61の内周面に挿入されている。一方、太陽歯車支持部材61は、第2キャリア38に固定されている。第2キャリア38は、非回転部材であるスピンドル14に固定されているため、太陽歯車支持部材61も、第2キャリア38に安定的に固定された非回転部材となる。このため、第2太陽歯車34が回転する際に、第2太陽歯車34は、太陽歯車支持部材61によって周方向の軸振れが抑制される。
【0079】
太陽歯車支持部材61は、円環状に形成されると共に、周方向に離間して複数のボルト挿通孔61Cが設けられている。太陽歯車支持部材61は、ボルト挿通孔61Cに挿通され、かつ、第2キャリア38のネジ穴62Dに螺合するボルト63により、第2キャリア38に固定される。また、第2キャリア38には、減速歯車機構24を潤滑する潤滑油100を車輪取付筒18内から吸込む吸込管路46が設けられている。この場合、太陽歯車支持部材61には、吸込管路46の途中部位となる接続油路46Cが設けられている。
図4ないし
図6に示すように、吸込管路46の上流側吸込管路46Aは、第2キャリア38に固定されている。
【0080】
この場合、上流側吸込管路46Aは、その先端側(下端側)が取付ブラケット64によって第2キャリア38(連結部38C)の貫通孔38Eから抜け止めされた状態で支持されている。取付ブラケット64は、第2キャリア38の外周側に配置される支持板部64Aを有しており、支持板部64Aは、第2キャリア38の軸方向に延びている。そして、支持板部64Aの先端は、第2キャリア38の外周側に設けられた溝状の係合部65に挿入されている。また、取付ブラケット64は、支持板部64Aの基端側から第2キャリア38の径方向の中心に向けて延びる固定板部64Bを有している。固定板部64Bには、取付ボルト67が挿通されるボルト挿通孔64Cが設けられている。
【0081】
取付ボルト67は、固定板部64Bのボルト挿通孔64Cに挿入されると共に第2キャリア38のネジ穴68に螺合される。取付ブラケット64は、取付ボルト67によって第2キャリア38に固定される。これにより、上流側吸込管路46Aも取付ブラケット64を介して第2キャリア38に固定される。上流側吸込管路46Aは、太陽歯車支持部材61の接続油路46Cに接続されている。従って、車輪取付筒18の下部側に貯留された潤滑油100は、上流側吸込管路46A、接続油路46C、下流側吸込管路46Bを介して潤滑ポンプ48に吸込まれる。
【0082】
本実施の形態によるダンプトラック1の走行駆動装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0083】
ダンプトラック1のキャブ5に乗り込んだ運転者がエンジン8を起動すると、油圧源となる油圧ポンプが回転駆動されると共に、発電機(いずれも図示せず)により発電が行われる。ダンプトラック1の走行駆動時には、発電機から走行用モータ16に電力が供給されることにより、走行用モータ16が作動してシャフト17が回転する。
【0084】
シャフト17の回転は、1段目の遊星歯車減速機構である第1遊星歯車減速機構25の第1太陽歯車26から各第1遊星歯車28に減速されて伝達される。各第1遊星歯車28の回転は、第1内歯車27およびカップリング32を介して2段目の遊星歯車減速機構である第2遊星歯車減速機構33の第2太陽歯車34に減速されて伝達される。第2遊星歯車減速機構33では、第2太陽歯車34の回転が各第2遊星歯車36に減速されて伝達される。このとき、各第2遊星歯車36を支持する第2キャリア38は、スピンドル14の支持筒部14Bにスプライン結合されているため、各第2遊星歯車36の公転は拘束され、第2キャリア38はスピンドル14と同様に非回転となっている。
【0085】
これにより、各第2遊星歯車36は、第2太陽歯車34の周囲で自転のみを行い、車輪取付筒18に固定された第2内歯車35には、第2遊星歯車36の自転により減速された回転が伝達される。これにより、車輪取付筒18は、第1遊星歯車減速機構25と第2遊星歯車減速機構33とで2段階に減速された大出力の回転トルクをもって回転する。この結果、駆動輪となる左右の後輪7は、車輪取付筒18と一体に回転し、ダンプトラック1を走行駆動することができる。
【0086】
走行駆動装置11の作動時においては、車輪取付筒18内に貯溜された潤滑油100が、車輪取付筒18の回転と第1,第2遊星歯車減速機構25,33の各遊星歯車28,36等によって順次上方へと掻き上げられ、各歯車の噛合部位、スピンドル14の支持筒部14Bと車輪取付筒18との間の車輪支持軸受20,21等に供給される。そして、潤滑油100は順次下方へと滴下し、車輪取付筒18の下部側へと溜められる。
【0087】
車輪取付筒18の下部側に収容された潤滑油100は、潤滑ポンプ48により第2キャリア38の下端側から吸込管路46を介して強制的に吸い上げられる。潤滑ポンプ48から吐出される潤滑油100は、オイルクーラ49で冷却された後に供給管路47内を下流側へと流通する。そして、供給管路47の先端部47Aから車輪取付筒18内の減速歯車機構24(即ち、第1遊星歯車減速機構25、第2遊星歯車減速機構33)に向けて潤滑油100を連続的に供給することができる。
【0088】
ここで、ダンプトラック1の路上走行時、特に、高速走行時には、遠心力の影響によって車輪取付筒18内の潤滑油100が車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動する。即ち、高速走行中は、遠心力の影響により油面が変動し、潤滑油100の吸込みが難しくなる。これにより、装置全体の冷却、潤滑性能が低下するおそれがある。そこで、実施の形態では、第2遊星歯車減速機構33の第2キャリア38には、車輪取付筒18内の潤滑油100を吸込む上流側吸込管路46Aが設けられている。上流側吸込管路46Aの入口側の開口は、第2キャリア38の外周側で、上下方向の下側に位置している。
【0089】
これにより、車輪取付筒18内に収容された潤滑油100は、高速走行時の遠心力の影響等で車輪取付筒18の内壁側に張り付くように流動した状態でも、上流側吸込管路46Aの開口から潤滑ポンプ48によって潤滑油100を確実に吸込むことができる。即ち、車両の停車中も高速走行中も、上流側吸込管路46Aの開口は、車輪取付筒18内の潤滑油100に浸漬された状態に保持することができる。また、上流側吸込管路46Aの開口から吸込まれた潤滑油100は、太陽歯車支持部材61の接続油路46Cを介して下流側吸込管路46Bに流通する。このとき、潤滑油100は、第2太陽歯車34の軸芯支持部材である太陽歯車支持部材61を冷却することができる。即ち、潤滑油100は、太陽歯車支持部材61の接続油路46Cを通過するときに、第2太陽歯車34の滑り軸受となる太陽歯車支持部材61を冷却することができる。
【0090】
以上のように、実施の形態によれば、第2遊星歯車減速機構33の第2キャリア38と第2太陽歯車34との間に太陽歯車支持部材61が設けられている。このため、この支持部材61によって、第2太陽歯車34の回転軸芯(回転中心軸)が振れることを抑制できる。特に、ダンプトラック1の走行駆動装置11は、大型の体格であることに加えて、高速回転の条件下で使用される。このため、ダンプトラック1の走行駆動装置11は、大きな振動が発生する。これに対して、第2太陽歯車34は、支持部材61によって回転可能に支持される。このため、走行駆動装置11が大きく振動しても、第2太陽歯車34の軸芯振れを抑制できる。これにより、第2太陽歯車34と第2遊星歯車36との片当たりによる偏摩耗を抑制できる。
【0091】
実施の形態によれば、支持部材61は、支持部材61のボルト挿通孔61Cに挿通されるボルト63によって第2キャリア38に固定される。このため、支持部材61を第2キャリア38に対して安定して取付けることができる。これにより、この面からも、支持部材61に支持される第2太陽歯車34の軸芯の振れを抑制できる。
【0092】
実施の形態によれば、第2キャリア38には、減速歯車機構24を潤滑する潤滑油100の油通路としての吸込管路46が設けられている。このため、第2キャリア38の吸込管路46を流通する潤滑油100によって、減速歯車機構24を潤滑することができる。しかも、支持部材61は、吸込管路46の一部を構成している。このため、支持部材61を流通する潤滑油100によって、支持部材61を冷却することができる。即ち、支持部材61が吸込管路46の一部を構成しているため、この吸込管路46を通過する潤滑油100で支持部材61を冷却することができる。これにより、第2太陽歯車34と支持部材61との摺動に伴う摩擦熱を潤滑油100によって冷却することができる。
【0093】
実施の形態によれば、吸込管路46は、第2キャリア38内で上下方向に延びる上流側吸込通路としての上流側吸込管路46Aを有している。このため、走行駆動装置11の高速回転時に、後輪7の回転に伴う遠心力により車輪取付筒18内の径方向外側に押し付けられた潤滑油100を、上流側吸込管路46Aによって安定して吸込むことができる。これにより、走行駆動装置11の高速回転時にも減速歯車機構24(即ち、第1遊星歯車減速機構25、第2遊星歯車減速機構33)に安定して潤滑を供給することができる。さらに、上流側吸込管路46Aによって吸込まれた潤滑油100は、支持部材61の接続通路である接続油路46Cを介して下流側吸込通路としての下流側吸込管路46Bに流通する。このため、接続油路46Cを通過する潤滑油100で支持部材61を冷却することができる。
【0094】
なお、実施の形態では、第2キャリア38に設けた筒状連結部38Dをスピンドル14(支持筒部14B)の開口端側に直接的にスプライン結合することにより第2キャリア38を非回転にする場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、スピンドル(支持筒部)の開口端側に、スピンドル(支持筒部)および第2キャリアとは別体の連結筒体を設け、この連結筒体を介して第2キャリアとスピンドル(支持筒部)とを接続する構成としてもよい。この場合、例えば、スピンドル(支持筒部)の開口端側に連結筒体をスプライン結合し、かつ、この連結筒体の開口端に第2キャリアをスプライン結合することができる。
【0095】
実施の形態では、第1遊星歯車減速機構25の第1内歯車27の回転がカップリング32を介して第2遊星歯車減速機構33の第2太陽歯車34に伝達される構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第1遊星歯車減速機構の第1キャリアの回転が第2遊星歯車減速機構の第2太陽歯車に伝達される構成としてもよい。この場合も、第2キャリアに設けた太陽歯車支持部材により第2太陽歯車を回転可能に支持することができる。
【0096】
実施の形態では、太陽歯車支持部材61の内周面と第2太陽歯車34(突出筒部34A)の外周面とが直接摺動する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、太陽歯車支持部材の内周面と第2太陽歯車(突出筒部)の外周面との間にこれら両周面と摺動する円環状(円筒状)の摺動部材を設けてもよい。この場合には、太陽歯車支持部材の内周面と第2太陽歯車(突出筒部)の外周面との間に摺動部材が挟まることにより、それぞれの摺動面の摺動速度を低くできる。また、摺動部材に代えて、転がり軸受(ラジアル転がり軸受)を設けてもよい。また、太陽歯車支持部材を転がり軸受により構成してもよい。
【0097】
実施の形態では、第2太陽歯車34の軸方向の側面とこの側面に対向する太陽歯車支持部材61の軸方向の側面との間を軸方向に離間させた場合、即ち、これらの側面の間に隙間(軸方向隙間)を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、第2太陽歯車の軸方向の側面とこの側面に対向する太陽歯車支持部材の軸方向の側面とを摺接させてもよい。また、これら第2太陽歯車の軸方向の側面とこの側面に対向する太陽歯車支持部材の軸方向の側面との間にこれら両側面と摺接する摺動部材を設けてもよい。また、摺動部材に代えて、転がり軸受(スラスト転がり軸受)を設けてもよい。
【0098】
実施の形態では、上流側吸込管路46Aの上流端を第2キャリア38の外周面に開口させた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、上流側吸込通路の上流側を、第2キャリアの軸方向他側の支持板の側面(第1遊星歯車減速機構に対向する側面)で、かつ、この側面の径方向外寄りに開口させてもよい。この場合、上流側吸込通路は、第2キャリアの軸方向他側の支持板の側面の開口から連結部内を通って軸方向一側の支持板まで軸方向に延びる第1上流側吸込通路と、軸方向一側の支持板内を径方向に延びると共に上流側が第1上流側吸込通路の下流側に接続され下流側が太陽歯車支持部材の接続通路に接続される第2上流側吸込通路と、を備える構成とすることができる。換言すれば、上流側吸込通路は、第2キャリアの軸方向に延びる軸方向通路と、この軸方向通路に接続され第2キャリアの径方向に延びると共に太陽歯車支持部材の接続通路に接続される径方向通路と、を備える構成とすることができる。この場合、軸方向通路および径方向通路は、第2キャリアと別体の管体としてもよいし、第2キャリアに直接形成される穿孔(油孔)としてもよい。即ち、潤滑油が流通する通路は、管体(例えば、パイプ、ホース)でもよいし穿孔(油孔)でもよい。
【0099】
実施の形態では、減速歯車機構24を2段の遊星歯車減速機構25,33により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、減速歯車機構を3段以上の遊星歯車減速機構により構成してもよい。この場合は、複数の遊星歯車減速機構のうちの最もダンプトラックの幅方向の内側に配置される最終段の遊星歯車減速機構が第2遊星歯車減速機構に対応する。この場合も、最終段の遊星歯車減速機構となる第2遊星歯車減速機構のキャリア(第2キャリア)と太陽歯車(第2太陽歯車)との間に太陽歯車支持部材を設けることができる。そして、この太陽歯車支持部材により、最終段の遊星歯車減速機構(第2遊星歯車減速機構)のキャリア(第2キャリア)に対して太陽歯車(第2太陽歯車)を回転可能に支持する。
【0100】
さらに、実施の形態では、後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば前輪駆動式のダンプトラック、または、前後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用することもできる。
【符号の説明】
【0101】
1 ダンプトラック
2 車体
3 ベッセル
5 キャブ
6 前輪
7 後輪(車輪)
8 エンジン
9 ホイストシリンダ
10 作動油タンク
11 走行駆動装置(走行装置)
14 スピンドル
16 走行用モータ(駆動源)
17 シャフト(回転軸)
18 車輪取付筒
24 減速歯車機構
25 第1遊星歯車減速機構
26 第1太陽歯車
27 第1内歯車
28 第1遊星歯車
30 第1キャリア
33 第2遊星歯車減速機構(最終段の遊星歯車減速機構)
34 第2太陽歯車(最終段の太陽歯車)
35 第2内歯車(最終段の内歯車)
36 第2遊星歯車(最終段の遊星歯車)
37 第2遊星軸(最終段の支持ピン)
38 第2キャリア(非回転のキャリア)
46 吸込管路(油通路)
46A 上流側吸込管路(上流側吸込通路)
46B 下流側吸込管路(下流側吸込通路)
46C 接続油路(接続通路)
61 太陽歯車支持部材
61C ボルト挿通孔
62D ネジ穴
63 ボルト
100 潤滑油