(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140369
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 15/00 20060101AFI20241003BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20241003BHJP
G10L 21/0208 20130101ALI20241003BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20241003BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20241003BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F24C15/00 K
G10L15/00 200N
G10L21/0208 100Z
H04R3/00 320
F24C15/00 M
F24C3/12 E
G06F3/16 630
G06F3/16 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051483
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大日野 肇
(72)【発明者】
【氏名】稲熊 富世
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220BA06
5D220BC05
(57)【要約】
【課題】音声操作者の特定を簡単且つ確実に行うことができ、利便性の高い加熱調理システムを提供する。
【解決手段】調理機器1の音声操作者を特定する音声操作者特定手段13と、複数方向からの音声入力が可能とされ、少なくともそのうちの何れか一方向からの音声入力感度を選択して調節可能に構成される音声入力手段14と、音声入力手段14から入力された音声による操作内容を認識して調理機器1を制御する音声操作制御手段21とを備える。音声操作者特定手段13は、調理機器1の使用に関する最初の操作がされた時点で、認識領域内の人を音声操作者と特定する。音声入力手段14は、音声操作者の位置に対応する方向からの音声入力感度を調節する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理に用いる調理機器を音声により操作する加熱調理システムであって、
前記調理機器の音声操作者を特定する音声操作者特定手段と、複数方向からの音声入力が可能とされ、少なくともそのうちの何れか一方向からの音声入力感度を選択して調節可能に構成される音声入力手段と、前記音声入力手段から入力された音声による操作内容を認識し、当該認識した操作内容に基づいて前記調理機器を制御する音声操作制御手段とを備え、
前記音声操作者特定手段は、前記調理機器の使用に関する最初の操作がされた時点で、予め設定された認識領域内に位置している人を音声操作者と特定し、
前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により特定された音声操作者の位置に対応する方向からの音声入力感度を調節することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
請求項1記載の加熱調理システムにおいて、
前記音声操作者特定手段は、前記調理機器の使用に関する最初の操作がされた時点で複数の人を検出する場合、前記認識領域内に位置している前記複数の人を音声操作者として特定し、
前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により特定された複数の音声操作者の夫々の位置に対応する方向からの音声入力感度を調節することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作制御手段は、予め設定された操作内容のみを受け付けることを特徴とする加熱調理システム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作者特定手段は、前記音声操作者が認識不能となった後に最初に前記調理機器の使用に関する操作が行われたとき、予め設定された領域内に位置している人を新たに音声操作者として特定することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項5】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作者特定手段は、前記音声操作者が認識不能となった後に前記音声操作者と同一の人を認識したとき、当該人を音声操作者として再度特定することを特徴とする加熱調理システム。
【請求項6】
請求項1又は2記載の加熱調理システムにおいて、
音声操作の禁止対象の年代を推定可能に構成され、前記認識領域内に位置している人を音声操作の禁止対象の年代と推定した場合、前記音声操作者特定手段による音声操作者の特定を禁止する特定禁止手段を備えることを特徴とする加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンに設置された加熱調理器等の調理機器を音声により操作する加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器に音声認識機能を備え、音声操作によって加熱調理器等を動作させるようにした加熱調理システムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された加熱調理システムは、音声入力部に入力された音声が、音声認識部によって認識されることにより制御指令が生成される。
【0003】
これにより、食材を扱いながら調理を行う場合、食材で手が汚れていても音声により操作することができるので、手を洗う手間がなく、また、操作部分への汚れの付着もないので、操作の煩わしさを解消することができる。
【0004】
更に、音声操作に際して誤動作を防止するために、特許文献1に記載された加熱調理システムにおいては、所定のスイッチが押されている間のみ音声入力を有効とする、或いは、事前に特定の操作者の音声を登録しておき、入力された音声が登録された音声と一致した場合のみ音声入力を受け付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のものでは、音声入力の度に所定のスイッチを押していなければならず、食材で手が汚れている場合等の操作の煩わしさを解消することができない。また、入力された音声が登録された音声とを照合して音声入力を受け付ける場合、事前に特定の操作者の音声を登録しておく必要があり、手間がかかる。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、音声操作者の特定を簡単且つ確実に行うことができ、利便性の高い加熱調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第1の発明は、加熱調理に用いる調理機器を音声により操作する加熱調理システムであって、前記調理機器の音声操作者を特定する音声操作者特定手段と、複数方向からの音声入力が可能とされ、少なくとも何れか一方向からの音声入力感度を選択して調節可能に構成される音声入力手段と、前記音声入力手段から入力された音声による操作内容を認識し、当該認識した操作内容に基づいて前記調理機器を制御する音声操作制御手段とを備え、前記音声操作者特定手段は、前記調理機器の使用に関する最初の操作がされた時点で、予め設定された認識領域内に位置している人を音声操作者と特定し、前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により特定された音声操作者の位置に対応する方向からの音声入力感度を調節することを特徴とする。
【0009】
前記音声操作者特定手段は、加熱調理に用いる調理機器が最初に操作した時点で前記認識領域内に位置している人を音声操作者と特定する。これによれば、音声操作者を特定するための操作を必要とせず、前記調理機器を使用するための操作のみで音声操作者を特定することができる。
【0010】
音声操作者が特定されると、音声入力手段が、特定された音声操作者の位置に対応する方向(即ち、音声操作者が居る方向)からの音声入力感度を調節する。具体的には、例えば、音声入力手段は、他の方向からの音に比べて音声操作者が居る方向からの感度が大となるように調節する。これにより、特定された音声操作者からの音声を確実に捉えることができ、誤動作等の発生を防止して、確実に音声による操作内容を認識することができる。
【0011】
このように、第1の発明によれば、音声操作者の特定を簡単且つ確実に行うことができ、利便性の高い加熱調理システムを提供することができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明の加熱調理システムにおいて、前記音声操作者特定手段は、前記調理機器の使用に関する最初の操作がされた時点で複数の人を検出する場合、前記認識領域内に位置している前記複数の人を音声操作者として特定し、前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により特定された複数の音声操作者の夫々の位置に対応する方向からの音声入力感度を調節することを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、調理に従事する複数の人を音声操作者として特定することができる。よって、複数の人が共同して調理を行う場合等であっても確実に音声操作者が音声操作することができ、利便性が向上する。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明の加熱調理システムにおいて、前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作制御手段は、予め設定された操作内容のみを受け付けることを特徴とする。
【0015】
特定された音声操作者が認識不能となった場合には、前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により音声操作者の位置に対応する方向からの音声入力感度の調節を解除する。これにより、特定された音声操作者が不在となったとき、特定された音声操作者以外の人による様々な方向からの音声入力が可能となる。
【0016】
更にこの場合、音声操作制御手段は、予め設定された操作内容のみを受け付ける。具体的には、例えば、前記調理機器として、ガスコンロ等の加熱調理器である場合、予め設定された操作内容として、安全性の高い操作(消火、火力ダウン、自動調理の進捗状況の確認等)を挙げることができる。これにより、前記調理機器の安全性を容易に確保することができる。
【0017】
第4の発明は、上記第1又は第2の発明の加熱調理システムにおいて、前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作者特定手段は、前記音声操作者が認識不能となった後に最初に前記調理機器の使用に関する操作が行われたとき、予め設定された領域内に位置している人を新たに音声操作者として特定することを特徴とする。
【0018】
第4の発明は、第3の発明と同様に、特定された音声操作者が認識不能となった場合には、前記音声入力手段は、前記音声操作者特定手段により音声操作者の位置に対応する方向からの音声入力感度の調節を解除する。これにより、特定された音声操作者が不在となったとき、特定された音声操作者以外の人による様々な方向からの音声入力が可能となる。
【0019】
更に、第4の発明における音声操作者特定手段は、音声操作者が認識不能となった後の最初の前記調理機器の使用に関する操作により、当該操作を行った人を新たな音声操作者として特定するようになっている。従って、特定された音声操作者が不在となったときには、一時的に特定された音声操作者以外の人による音声入力による操作が可能となるが、前記調理機器の使用に関する操作が行われた時に新たな音声操作者が特定される。これによって、音声操作者を特定するための操作を必要とせず、前記調理機器を使用するための操作のみで新たに音声操作者を特定することができ、煩わしさをなくして高い利便性及び安全性とを得ることができる。
【0020】
第5の発明は、上記第1又は第2の発明の加熱調理システムにおいて、前記音声操作者特定手段が前記音声操作者を特定した後、前記音声操作者が認識不能となった場合、前記音声入力手段は、音声入力感度の調節を解除して複数の任意の方向からの音声入力を許容し、前記音声操作者特定手段は、前記音声操作者が認識不能となった後に前記音声操作者と同一の人を認識したとき、当該人を音声操作者として再度特定することを特徴とする。
【0021】
第5の発明における音声操作者特定手段は、音声操作者が認識不能となった後に前記音声操作者と同一の人を認識したとき、当該人を音声操作者として再度特定するようになっている。これによれば、音声操作者特定手段が同一の人を音声操作者として再度特定するので、音声操作者を特定するための操作を必要とせず、煩わしさをなくして高い利便性及び安全性とを得ることができる。
【0022】
第6の発明は、上記第1又は第2の発明の加熱調理システムにおいて、音声操作の禁止対象の年代を推定可能に構成され、前記認識領域内に位置している人を音声操作の禁止対象の年代と推定した場合、前記音声操作者特定手段による音声操作者の特定を禁止する特定禁止手段を備えることを特徴とする。
【0023】
第6の発明によれば、前記特定禁止手段を設けたことにより、音声操作者特定手段によって特定可能となる音声操作者から、音声操作の禁止対象の年代(例えば、幼児や高齢者等)を除くことができ、高い安全性を得ることができる。
【0024】
なお、第3~第6の発明は、その夫々の構成を矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態の加熱調理システムの概略構成を示す説明図。
【
図2】本実施形態の加熱調理システムの要部の構成を模式的に示すブロック図。
【
図3】キッチンルームにおける広角カメラの認識可能エリアを平面視して模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の加熱調理システムは、
図1及び
図2に示すように、キッチンルームに設置されたガスコンロ1とレンジフード2とを備えている。
【0027】
ガスコンロ1は、上面に3つのコンロバーナ3,4,5を備え、内部にグリル6を備えている。ガスコンロ1の前面には、グリル6を開閉するグリル扉6aが設けられている。また、ガスコンロ1の前面には、電源のON/OFFを操作する電源スイッチ7や各コンロバーナ3,4,5及びグリル6の点火、消火、火力調節等を行う操作スイッチ8,9,10,11が設けられている。さらに、ガスコンロ1は、設定内容等を報知するスピーカ22を備えている。ガスコンロ1は、本発明における調理機器に相当する。
【0028】
レンジフード2は、換気扇のON/OFF及び強弱を選択する換気スイッチや照明のON/OFF操作を行う照明スイッチ等が並ぶスイッチパネル12を備えている。
【0029】
また、レンジフード2には、広角カメラ13と指向性マイクロフォンアレイ14(以下、マイクアレイ14と言う)とが設けられている。マイクアレイ14は、複数のマイクロフォンを備えて少なくともキッチンルーム内の全方向からの音を集音することができ、入力された音を信号処理することにより指向性を形成して特定の方向の音を抽出する。特定の方向以外からの音も集音することができるため、特殊な音については、特定の方向以外からであっても信号処理により抽出することができる。
【0030】
広角カメラ13は、画像処理により顔、服装、身長等から人を判別し特定する特定部15(
図2参照)と、特定された人を音声操作者として当該音声操作者の情報を記憶する記憶部16(
図2参照)とを備え、記憶部16に記憶した人(特定した人)の位置を検出して追跡する機能を有している。広角カメラ13の特定部15によって特定される人は、後述するように、音声によってガスコンロ1の操作を行う音声操作者となる。
【0031】
特定部15は、複数の人を特定することができる。特定部15は、特定した複数の人の夫々に識別のためのコードを付して記憶部16に記憶する。識別のためのコードは、特定された人に与えられる音声操作レベルも含んでおり、例えば、特定された人ごとに割り振られる一意の番号や符号である。広角カメラ13は、特定部15が特定した人の識別コードと位置情報とをマイクアレイ14に送信する。
【0032】
マイクアレイ14は、広角カメラ13から得られた情報に基づいて、人の位置に合わせて指向性を形成する。これにより、広角カメラ13が特定して追跡している人の音声のみを、常時マイクアレイ14が拾う。
【0033】
また、広角カメラ13は、人の見た目等から年代を推定して当該年代を示すデータを出力する年代推定部17(
図2参照)を備えている。更に、広角カメラ13は、年代推定部17の情報に基づいて幼児の年代や高齢者の年代を音声操作者として特定することを禁止する特定禁止部18(
図2参照)を備えている。特定禁止部18が禁止した年代の人は、広角カメラ13による追跡が行われず、位置情報を出力しない。よって、マイクアレイ14による禁止された人に対する指向性の形成は行われない。
【0034】
広角カメラ13は、本発明における音声操作者特定手段に相当し、マイクアレイ14は、本発明における音声入力手段に相当する。また、広角カメラ13の特定禁止部18は、本発明における特定禁止手段に相当する。
【0035】
図2に示すように、ガスコンロ1は、調理に関する動作を総合的に制御するためのコントローラ19を備えている。コントローラ19は、コンロバーナ3,4,5及びグリル6の加熱運転を制御する加熱制御部20を備えている。また、コントローラ19は、音声操作制御部21(音声操作制御手段)を備えている。
【0036】
音声操作制御部21は、マイクアレイ14に入力された音声信号による操作内容を認識し、当該音声信号に対応する制御信号に変換して加熱制御部20に送信する。マイクアレイ14は、音声操作制御部21に対して音声操作者の音声信号と共に当該音声信号に紐づけされた音声操作レベルを送信する。
【0037】
音声操作制御部21は、マイクアレイ14からの音声信号を受信すると、当該音声信号に紐づけされた音声操作レベルに対応する操作内容を加熱制御部20に送信する。音声操作レベルについては後述する。
【0038】
また、コントローラ19は、ガスコンロ1の動作内容を示す音声による報知を行うためにスピーカ22を駆動する音声発生制御部23と備えている。
【0039】
マイクアレイ14とコントローラ19とは、無線又は有線で接続される。即ち、マイクアレイ14は送受信部24を備え、コントローラ19はマイクアレイ14の送受信部24との間で信号の送受信を行う送受信部25を備えている。マイクアレイ14の送受信部24からは、マイクアレイ14が出力する音声信号(発声した人の個別の情報を含む)が送信される。コントローラ19の送受信部25はマイクアレイ14の送受信部24から送信された音声信号を受信し、この時の音声信号が音声操作制御部21に入力される。
【0040】
以上の構成による本実施形態の加熱調理システムは、次に示す複数の特徴的な制御を行うことにより、調理に際してのガスコンロ1を音声により操作することができる。
【0041】
音声操作レベルについては、特定された音声操作者ごとにレベル3~レベル1の何れかのレベルが付与される。各レベルは、本発明における予め設定された操作内容に相当するものであり、各レベルごとに以下の操作内容に設定されている。
【0042】
レベル3が付与された音声操作者は、ガスコンロ1のコンロバーナ3,4,5及びグリル6のうちの何れかの加熱運転に関して最も多くの操作が音声により可能となる。本実施形態においては、具体的には、点火、火力アップ、火力ダウン、調理設定モード変更、消火、調理設定確認、調理進捗確認、及び自動調理終了による消火後の再点火がレベル3の操作内容となっている。
【0043】
レベル2が付与された音声操作者は、レベル3が付与された音声操作者よりも許容される音声操作の内容が少なく、具体的には、本実施形態においては、火力ダウン、一部の調理設定モード変更、消火、調理設定確認、及び調理進捗確認が許容される音声操作の内容となっている。
【0044】
レベル1が付与された音声操作者は、レベル2が付与された音声操作者よりも許容される音声操作の内容が少なく、具体的には、本実施形態においては、調理設定確認、及び調理進捗確認が許容される音声操作の内容となっている。
【0045】
次に、上記の構成による本実施形態の加熱調理システムの動作について、想定される調理状況と対応させて動作の例を説明する。
【0046】
次に示す動作例は、その状況として、成人A、B、D、幼児Cが、
図3に例示したように、キッチンルームKにおける広角カメラ13の認識可能エリアS(予め設定された認識領域)に存在する。そして状況に応じて次の(1)~(10)の動作が行われる。なお、
図3に示した認識可能エリアSは、これに限らず所望の領域(撮像範囲)に設定することができる。認識可能エリアSの設定は、例えば、広角カメラ13の一部をシールドしたり、複数の広角カメラを適宜位置に設ける等によって行うことができる。
【0047】
(1)成人Aがガスコンロ1の右コンロバーナ3の点火操作を行うと、右コンロバーナ3の点火操作を示す信号がガスコンロ1の送受信部25からマイクアレイ14の送受信部24を介して広角カメラ13に送信され、成人Aは、右コンロバーナ3の音声操作者と特定される。次に、成人Bがグリル6の点火操作を行うと、グリル6の点火操作を示す信号がガスコンロ1の送受信部25からマイクアレイ14の送受信部24を介して広角カメラ13に送信され、成人Bは、グリル6の音声操作者と特定される。
【0048】
(2)広角カメラ13は、年代推定部17により成人A、B、D、及び幼児Cの年代を推定し、これに基づき特定禁止部18が幼児Cの特定を禁止する。これにより、幼児Cは音声操作者から除外される。成人Aは、右コンロバーナ3に対してレベル3までの音声操作が可能となり、成人Bは、グリル6に対してレベル3までの音声操作が可能となる。
【0049】
また、音声操作者は、その他のコンロバーナ4,5についてはレベル2までの音声操作が可能となる。成人Dは、ガスコンロ1の音声操作者として、レベル2までの音声操作が可能となる。なお、音声操作者以外は、認識可能エリアSの内外にかかわらず一律にレベル1までの音声操作を可能としてもよく、或いは、全ての音声操作を禁止してもよい。
【0050】
(3)マイクアレイ14は、広角カメラ13から出力される成人A、B、Dの位置情報に基づく方向の感度を、他の方向の感度よりも相対的に増大させる。相対的に増大させる方法として、A、B、D位置情報に基づく方向の感度のみを増大させても良く、他の方向のみを減少させても良く、さらには、その両方を組み合わせても良い。なお、「緊急消火」といった特殊な音声については、特定、不特定にかかわらず、マイクアレイ14は全方向からの音声入力が許容する。
【0051】
(4)マイクアレイ14は、音声操作者として特定した成人A、B、Dの夫々の方向からの音声を採取して、音声情報をコントローラ19に送信し、音声操作制御部21は、マイクアレイ14から送信された音声情報に含まれる操作指示を受け付ける。
【0052】
(5)成人Aが広角カメラ13の認識可能エリアSから外れると、右コンロバーナ3の音声操作者は不在となる。成人Bは、グリル6のレベル3までの音声操作が引き続き可能であり、且つ、右コンロバーナ3の音声操作がレベル2まで可能である。この状態で、成人Bが右コンロバーナ3の接触操作を行う(例えば、右コンロバーナ3の操作スイッチ8を操作して火力調整する)と、右コンロバーナ3の接触操作を示す信号がガスコンロ1の送受信部25からマイクアレイ14の送受信部24を介して広角カメラ13に送信される。そして、グリル6と右コンロバーナ3の音声操作者と特定され、右コンロバーナ3の音声操作もレベル3まで可能となる。
【0053】
(6)成人Aは、広角カメラ13の認識可能エリアS内に戻った後、右コンロバーナ3に関する接触操作を行うことにより、右コンロバーナ3のレベル3までの音声操作が可能となる音声操作者として再特定される。そして、(5)によって、成人Bが右コンロバーナ3の音声操作者と特定されている場合は、成人A、B双方が右コンロバーナ3の音声操作者とされる。成人Aは、右コンロバーナ3の接触操作を行わずに左コンロバーナ5の接触による点火操作を行うと、新たに成人Aが左コンロバーナ5の音声操作者として特定される。
【0054】
(7)成人A、B、Dが広角カメラ13の認識可能エリアSから外れた場合、マイクアレイ14は広角カメラ13からの情報に基づき、特定の方向への感度調節を解除し、全方向からの音声入力を可能とする。
【0055】
(8)広角カメラ13の認識可能エリアSへの人の存否に関わらず、マイクアレイ14が感度調節を解除している限り、ガスコンロ1の音声操作制御部21は、レベル1の音声操作のみを受け付ける。
【0056】
(9)成人D、E(今まで居なかった成人)が広角カメラ13の認識可能エリアSに入り、成人Dが右コンロバーナ3の接触操作を行うと、新たに成人Dが右コンロバーナ3の音声操作者と特定され、グリル6の音声操作者は不在のままとなる。一方、成人Eは、何れの接触操作も行っていないが、レベル2の音声操作が可能となる。
【0057】
(10)全ての加熱調理を停止後、所定の時間(例えば10分)を経過すると、マイクアレイ14は感度調節を解除して全方向からの音声入力を可能とする。その後、さらに一定の時間(例えば5分)を経過しても接触操作がない場合、ガスコンロ1のコントローラ19は、自動的に電源をOFFにする。
【0058】
次に、他の動作例を、成人A、B、幼児Cが、広角カメラ13の認識可能エリアSに存在する場合を上記(1)~(10)の状況に対応させて説明する。
【0059】
上記(1)において、成人Aがガスコンロ1の電源スイッチ7をONしたとき、成人A、Bを、特定のバーナに限らずガスコンロ1の全ての動作に関する音声操作者と特定する。このとき、成人Bはガスコンロ1の正面に位置していなくてもよい。また、図示しないが、例えば、ガスコンロ1に、音声操作者を特定するためのスイッチを設けてもよい。また、テーブルコンロのように電源スイッチのない場合は、何れかのコンロバーナの点火操作を行ったときに音声操作者を特定してもよい。
【0060】
この場合にも、上記(3)に対応する動作として、マイクアレイ14は、音声操作者と特定された成人A、Bが位置する方向の感度を、他の方向の感度よりも相対的に増大させる。
【0061】
上記(5)においては、成人Aが広角カメラ13の認識可能エリアSから外れたとき、音声操作者は成人Bのみとなる。また、上記(5)においては、広角カメラ13の記憶部16に記憶されている成人Aの情報と一致する人物が認識可能エリアS内に入ったとき、画像解析を行って、顔、服装、身長等から成人Aと判別することができる。この場合、成人Aが所定の時間(例えば1分)以内に広角カメラ13の認識可能エリアSに戻ったとき、接触操作を行わなくても、音声操作者と再特定することができる。
【0062】
なお、成人Aが不在となる時間(上記所定の時間)として、火力や調理設定によって変えてもよい(例えば、調理設定されていなければ1分、自動調理設定中なら5分等とすることが挙げられる)。
【0063】
また、上記(8)においては、広角カメラ13の認識可能エリアSへの人の存否に関わらず、マイクアレイ14が感度調節を解除している限り、ガスコンロ1はレベル2までの音声操作のみを受け付けるようにしてもよい。更に、マイクアレイ14は、可聴域以外の音が不自然にカットされた音声を無視するように構成されていることが好ましい。
【0064】
上記(10)においては、成人D、Eが広角カメラ13の認識可能エリアSに入り、成人Dがガスコンロ1の接触操作を行った場合、新たに成人D、Eを音声操作者と特定してもよい。このとき、更に、再特定される音声操作者の人数に上限を設けてもよい。具体的には、例えば、学生寮やシェアハウスでの不特定多人数でのガスコンロ1の使用の際には、音声操作を用いるには不適切な環境と判断し、音声操作機能を無効化することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、調理機器としてガスコンロ1を採用したが、これに限らず、例えば、IHコンロ、電子レンジ、オーブン等の調理機器であっても本発明の加熱調理システムを構築することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、音声操作者特定手段として広角カメラ13を採用したが、これに限らず、例えば、ミリ波レーダや赤外線サーモパイル等を用いてもよい。
【0067】
また、本実施形態においては、複数の人を音声操作者として特定した例を示したが、これに限るものではなく、一人のみを音声操作者として特定するようにしてもよい。
【0068】
また、本発明においては、音声操作者特定手段(広角カメラ13)と音声入力手段(マイクアレイ14)とを共にレンジフード2に設けた例を示したが、音声操作者特定手段や音声入力手段は、これに限るものではなく、キッチンルームの広さや形状に応じて、夫々が最適となる位置(例えば、天井や壁面等)に設けることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…ガスコンロ(調理機器)、13…広角カメラ(音声操作者特定手段)、14…指向性マイクロフォンアレイ(音声入力手段)、18…特定禁止部(特定禁止手段)、21…音声操作制御部(音声操作制御手段)。