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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014037
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20240125BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20240125BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61G5/10 715
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116585
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀樹
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084JA05
(57)【要約】
【課題】起立を補助するユーザの転倒を防止する技術を提供する。
【解決手段】本開示の転倒防止装置は、利用者が着座する着座部と、前記着座部に配置され、前記利用者が、前記着座部に着座した状態から起立状態へ移行する際の起立動作を補助する動作補助部と、前記利用者の動作や状態を検知するセンサと、前記センサからの信号に基づいて前記利用者の姿勢を判断し、規定の状態に対する前記姿勢の偏りを測定してバランス状態として定めるバランス判定部と、前記バランス判定部による前記バランス状態に基づいて前記動作補助部を制御し、前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように前記動作補助部を動作させる動作制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座する着座部と、
前記着座部に配置され、前記利用者が、前記着座部に着座した状態から起立状態へ移行する際の起立動作を補助する動作補助部と、
前記利用者の動作や状態を検知するセンサと、
前記センサからの信号に基づいて前記利用者の姿勢を判断し、規定の状態に対する前記姿勢の偏りを測定してバランス状態として定めるバランス判定部と、
前記バランス判定部による前記バランス状態に基づいて前記動作補助部を制御し、前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように前記動作補助部を動作させる動作制御部と、
を備える転倒防止装置。
【請求項2】
前記動作補助部は、前記着座部の前記利用者と接する着座面において前後若しくは左右又は前後及び左右に配置された複数の領域をそれぞれ独立して駆動させるアクチュエータを含み、前記アクチュエータが前記動作制御部の制御によって前記着座面の各領域を異なる動作量で動作させることにより、前記動作補助部は、前記利用者に与える補助の量を調整して前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように補助する請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記センサは、前記利用者が起立時に足を置く床面又は地面への左足による荷重と右足による荷重とを測定し、
前記バランス判定部は、左足による荷重と右足による荷重との比率によって前記バランス状態を判定する請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記着座部の着座面への荷重を測定する第二センサを更に含む請求項3に記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記利用者の上半身に装着され、当該上半身の姿勢及び動きのうち少なくとも一方を検出する上体センサを更に含む請求項3に記載の転倒防止装置。
【請求項6】
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記利用者の上半身に装着され、当該上半身の姿勢及び動きのうち少なくとも一方を検知する上体センサを更に含む請求項4に記載の転倒防止装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記着座部内に設けられ、前記着座面を前記領域毎に隆起又は陥没させる請求項2に記載の転倒防止装置。
【請求項8】
前記アクチュエータは、
流体の給排によって膨張若しくは収縮する袋状の容器が、膨張することにより前記着座面を隆起させ、収縮することにより前記着座面を陥没させる機構、又は、
駆動源の往復運動若しくは回転運動によって前記着座面を隆起若しくは陥没させる機構を備える請求項2に記載の転倒防止装置。
【請求項9】
警報を出力する警報部を更に備え、
前記利用者が起立状態へ移行する際に、前記バランス判定部が、前記センサからの信号
に基づいて前記利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたか否かを判定し、
前記利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたと判定された場合に、前記警報部が警報を出力する、
請求項1又は2に記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や身体に障がいを持つ人にとっては、椅子に着座した状態から起立状態となることが難しい場合があり、起立を補助する装置の普及が望まれている。
【0003】
特許文献1には、着座時に使用者の臀部を支持する座面部の水平状態を保ったまま上方へ移動させる始動機構と、始動機構の上方に配設されるとともに、座面部の前方を低く、後方を高く傾斜させる起立補助機構を備えることを特徴とする起立着座補助椅子が開示されている。
【0004】
特許文献2には、空気を直接、あるいは間接的に利用して使用される気密マットにおいて、空気を送り込むことによって前部より後部がより高くふくらむ断面構造を有する空気式起立補助マットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-377号公報
【特許文献2】特開2000-288027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
起立が難しく補助装置を利用する人(利用者)の場合、筋力が不足していることに加え、バランスをとる機能が十分でないことがあり、補助装置で利用者の身体を無理に押し上げて起立状態にしたのでは、起立後の「ふらつき」や、「転倒」を招き易いという問題があった。
【0007】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、利用者の起立を補助する際に当該利用者の転倒を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の転倒防止装置は、
利用者が着座する着座部と、
前記着座部に配置され、前記利用者が、前記着座部に着座した状態から起立状態へ移行する際の起立動作を補助する動作補助部と、
前記利用者の動作や状態を検知するセンサと、
前記センサからの信号に基づいて前記利用者の姿勢を判断し、規定の状態に対する前記姿勢の偏りを測定してバランス状態として定めるバランス判定部と、
前記バランス判定部による前記バランス状態に基づいて前記動作補助部を制御し、前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように前記動作補助部を動作させる動作制御部と、
を備える。
【0009】
前記転倒防止装置において、前記動作補助部は、前記着座部の前記利用者と接する着座面において前後若しくは左右又は前後及び左右に配置された複数の領域をそれぞれ独立して駆動させるアクチュエータを含み、前記アクチュエータが前記動作制御部の制御によって前記着座面の各領域を異なる動作量で動作させることにより、前記動作補助部は、前記
利用者に与える補助の量を調整して前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように補助してもよい。
【0010】
前記転倒防止装置において、
前記センサは、前記利用者が起立時に足を置く床面又は地面への左足による荷重と右足による荷重とを測定し、
前記バランス判定部は、左足による荷重と右足による荷重との比率によって前記バランス状態を判定してもよい。
【0011】
前記転倒防止装置において、
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記着座面への荷重を測定する第二センサを更に含んでもよい。
【0012】
前記転倒防止装置において、
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記利用者の上半身に装着され、当該上半身の姿勢及び動きのうち少なくとも一方を検出する上体センサを更に含んでもよい。
【0013】
前記転倒防止装置において、
前記センサは、
前記床面又は前記地面への荷重を測定する第一センサに加え、
前記利用者の上半身に装着され、当該上半身の姿勢及び動きのうち少なくとも一方を検知する上体センサを更に含んでもよい。
【0014】
前記転倒防止装置において、
前記アクチュエータは、前記着座部内に設けられ、前記着座面を前記領域毎に隆起又は陥没させてもよい。
【0015】
前記転倒防止装置において、
前記アクチュエータは、
流体の給排によって膨張若しくは収縮する袋状の容器が、膨張することにより前記着座面を隆起させ、収縮することにより前記着座面を陥没させる機構、又は、
駆動源の往復運動若しくは回転運動によって前記着座面を隆起若しくは陥没させる機構を備えてもよい。
【0016】
前記転倒防止装置において、
警報を出力する警報部を更に備え、
前記利用者が起立状態へ移行する際に、前記バランス判定部が、前記センサからの信号に基づいて前記利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたか否かを判定し、
前記利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたと判定された場合に、前記警報部が警報を出力してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、利用者の起立を補助する際に当該利用者の転倒を防止する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第一本実施形態に係る転倒防止装置の構成を示す側面図である。
図2図2は、第一実施形態に係る転倒防止装置の正面図である。
図3図3は、第一実施形態に係る転倒防止装置の平面図である。
図4図4は、第一実施形態に係るアクチュエータの駆動例を示す正面図である。
図5図5は、第一実施形態に係るアクチュエータの駆動例を示す側面図である。
図6図6は、制御部の構成を示す図である。
図7図7は、制御部が実行する転倒防止装置の転倒防止方法を示す図である。
図8図8は、第二実施形態に係る転倒防止装置の構成を示す図である。
図9図9は、第二実施形態に係るアクチュエータの駆動例を示す正面図である。
図10図10は、第二実施形態に係るアクチュエータの駆動例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る転倒防止装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0020】
<第一実施形態>
≪装置構成≫
図1は、本実施形態に係る転倒防止装置1の概略構成を示す側面図、図2は、本実施形態に係る転倒防止装置1の正面図、図3は、本実施形態に係る転倒防止装置1の平面図である。図1図3では、上下方向をY方向、左右方向をX方向、前後方向をZ方向として示す。なお、以下の説明において、左右は、着座したユーザの右手側を右側、同ユーザの左手側を左側と称する。これらの方向は、説明の便宜のため一例として示すものであり、転倒防止装置1の構成をこれに限定するものではない。以降の図面についても同様である。
【0021】
転倒防止装置1は、床面又は地面など、利用者が起立しようとする面(以下、起立対象面とも称す)20に設置された椅子型の装置である。転倒防止装置1は、利用者が着座する着座部11や、着座部11を支える脚部12、背もたれ13、動作補助部15、センサ16、及び制御部17を備える。なお、転倒防止装置1は、既存の椅子に装着して用いられるものであってもよく、この場合、脚部12や背もたれ13等、椅子に含まれる要素は省略されてもよい。
【0022】
着座部11は、制御部17等を内蔵する概ね直方体状の筐体111を備え、筐体111の四隅から下側へ向かって脚部12が延設され、筐体111の後部には、背もたれ13が上方へ向けて立設されている。また、筐体111の上部には、動作補助部15が設けられ、動作補助部15の上面が着座面151となっている。図1図2の例では、着座部11が四本の脚部12で支えられた構成であるが、これに限らず、利用者が着座できる構成であればよい。例えば転倒防止装置1は、筐体111の下面中央に一本の支柱及びこの支柱の下端に設けられた放射状の足によって筐体111が支えられる構成や、着座部11の筐体111及び脚部12が一体となった箱型の構成であってもよい。本実施形態の転倒防止装置1は、利用者が着座状態にあるときの着座面151が、起立状態にある利用者の腰よりも低い位置に配置される。即ち、利用者は、起立状態から腰を下ろすことによって転倒防止装置1の着座面151に座り、着座面151から腰を上げることで着座状態から起立状態へ移行する。着座面151の高さは、例えば膝付近の高さ、具体的には平均的な膝の高さに対して上下200mm以内、好ましくは上下100mm以内の高さに配置することが挙げられるが、脚部12の長さを調節可能として、利用者の利便性に合わせて着座面151の高さを変えることができるようにしてもよい。
【0023】
センサ16は、利用者の動作や状況を検知するものである。センサ16は、例えば、起立対象面20に対する利用者の荷重を検出する第一センサ161と、着座部11に対する利用者の荷重を検出する第二センサ162とを有する。第一センサ161は、起立対象面20上であって、着座状態にある利用者が起立しようとするとき(起立時)に足を置く箇所に配置される。即ち、第一センサ161は、起立しようとする利用者の足と床面又は地面との間に位置し、利用者による起立対象面20への荷重を測定する。また、第一センサ161は、起立対象面20における位置に応じた荷重を測定でき、例えば利用者の左足による荷重と右足による荷重とを測定できる。なお、第一センサ161の設置位置は、起立対象面20上に限らず、起立対象面20への荷重を測定できる位置であればよく、起立対象面20内に埋設されても、利用者の靴などに配置されてもよい。さらに第一センサ161は、起立対象面20から離れた部分に利用者の足を置く面を有する台や、脚部12に取り付けられたフットレスト上に取り付けられてもよい。この場合の台あるいはフットレストの足を置く面は、利用者がその面上に立ちあがることができる程度に広くすることができる。
【0024】
第二センサ162は、着座部11の筐体111内に配置され、利用者による着座面151への荷重を測定する。また、第二センサ162は、着座面151における位置に応じた荷重を測定でき、例えば着座面151における左右の領域毎に荷重を測定できる。そのため第二センサ162は、後述する上板部材152の中に配置してもよい。センサ16は、荷重センサに限らず、利用者の上半身に取り付けられた加速度センサや、ジャイロセンサ等であって、利用者の姿勢及び動きのうち少なくとも一方を検出する上体センサを備えてもよい。また、センサ16は、転倒防止装置1に着座する利用者を撮影する撮影装置であってもよい。この撮影装置によって利用者の動作を撮影した撮影画像を制御部17へ入力し、制御部17が画像処理を行って、利用者の姿勢の偏りや動作を抽出してもよい。
【0025】
動作補助部15は、着座部11に配置され、ユーザが着座部11に着座した状態から起立状態へ移行する際の起立動作を補助するユニットである。動作補助部15は、左右に分割され、左側に配置された左側ユニット15Lと右側に配置された右側ユニット15Rとを有し、夫々独立して動作可能である。動作補助部15の左側ユニット15L及び右側ユニット15Rは、夫々上板部材152と、アクチュエータ153とを備えている。
【0026】
上板部材152は、上面が着座面151となる板状の部材であり、アクチュエータ153によって上下に駆動される。上板部材152は、転倒防止装置1が利用者の起立動作を補助する前の状態(以下、初期状態とも称す)では、下端に位置し、起立動作を補助するとき(作動時)にアクチュエータ153によって上側へ駆動されることで利用者の臀部を押し上げる。このため上板部材152は、利用者を支えられる剛性を有するが、少なくとも着座面151を成す上側部分がクッション性を有していてもよい。また、上板部材152の着座面151は、利用者の臀部にフィットする凹凸を有し、起立動作を補助する際に、利用者の臀部がズレるのを抑制できるように構成されてもよい。
【0027】
アクチュエータ153は、一端が筐体111に固定され、他端が上板部材152に接続され、電動の駆動源の往復運動若しくは回転運動によって伸縮することで、筐体111に対して上板部材152を上下に駆動し、着座面151を隆起若しくは陥没させる機構である。アクチュエータ153は、後述のように制御部17によって、左側ユニット15Lに設けられたアクチュエータ153と右側ユニット15Rに設けられたアクチュエータ153とが独立に制御され、着座面151における左右の領域をそれぞれ独立して駆動させる。また、本実施形態のアクチュエータ153は、四つのアクチュエータ1531~1534が上板部材152の四隅に設けられ、各アクチュエータ1531~1534の駆動量を変えることにより上板部材152の角度を変えることができる。図4は、アクチュエータ
153の駆動例を示す正面図、図5は、アクチュエータ153の駆動例を示す側面図である。初期状態では、各アクチュエータ1531~1534が縮んだ状態となり、図4図5における二点鎖線のように、右側ユニット15Rおよび左側ユニット15Lの上板部材152をそれぞれ略水平に保持している。そして、左側のアクチュエータ1531,1532に対して右側のアクチュエータ1533,1534が伸びるように駆動されると、図4に示すように右側が高くなるように上板部材152が駆動される。反対に、右側のアクチュエータ1533,1534に対して左側のアクチュエータ1531,1532が伸びるように駆動されると、左側が高くなるように上板部材152が駆動される。また、前側のアクチュエータ1531,1533に対して後側のアクチュエータ1532,1534が伸びるように駆動されると、後側が高くなるように上板部材152が駆動される。反対に、後側のアクチュエータ1532,1534に対して前側のアクチュエータ1531,1533が伸びるように駆動されると、前側が高くなるように上板部材152が駆動される。このようにアクチュエータ153は、上板部材152の規定状態に対する傾きを調整することができる。特に、本実施形態では、各アクチュエータ1531~1534が、異なる駆動量で上板部材152を駆動することにより、着座部11の利用者と接する着座面151における前後左右の領域を異なる動作量で動作させることができる。なお、これに限らず、動作補助部15は、着座面151における前後又は左右の領域のみを異なる動作量で動作させる構成であってもよい。また、アクチュエータ153は、上板部材152が初期状態から陥没するように収縮してもよい。
【0028】
制御部17は、センサ16による検出結果を取得し、検出結果が所定条件を満たした場合に動作補助部15を制御する。図6は、制御部17の構成を示す図である。制御部17は、プロセッサ171、記憶部172、及び入出力部173を備える。プロセッサ171は、制御部17における各種の演算処理を統括的に実行する。プロセッサ171は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA
(Field-Programmable Gate Array)などの演算処理手段である。
【0029】
記憶部172は、例えば、主記憶部1721と、補助記憶部1722を備える。主記憶部1721は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリやROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリを備え、例えばプロセッサ171で演算処理に用いられるプログラムやデータ等の情報をキャッシュする。なお、主記憶部1721は、プロセッサ171と一体に形成されてもよい。
【0030】
補助記憶部1722は、RAM、ROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)
、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、又はリムーバブルメディアな
どの記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、メモリカード等、外部から装着可能で、かつコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0031】
補助記憶部1722には、転倒防止装置1の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース、ユーザデータなどが記憶可能である。
【0032】
入出力部173は、例えば、センサ16からの情報(検出結果等)の入力、及びセンサ16や他の装置への情報(制御信号等)の出力を行うインターフェイスである。また、入出力部173は、通信回線を介して、他の装置からの情報の入力(受信)、及び他の装置への情報の出力(送信)を行う通信モジュールであってもよい。更に、入出力部173は、操作ボタンやタッチパネルなどユーザによる操作情報の入力、及びディスプレイやスピーカ、バイブレータなどによるユーザへの出力(表示や音出力、振動等)を行うユーザインターフェイスであってもよい。このディスプレイやスピーカ、バイブレータなどの出力
手段は、利用者に対して警報を出力する場合に警報部174としても機能する。
【0033】
本実施形態の転倒防止装置1では、制御部17のプロセッサ171が、アプリケーションプログラムを実行することにより、制御部17のプロセッサ171が、バランス判定部1701や、動作制御部1702、警報制御部1703といった各処理部として機能する。即ち、制御部17は、実行するソフトウェアに応じて各処理部として兼用され得る。但し、上記各処理部の一部又は全部が、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用LSI(large scale integration)、論理回路、その他のデジタル回路と
いったハードウェアで形成されたものであってもよい。また、上記各処理部の少なくとも一部にアナログ回路を含む構成としてもよい。制御部17は、一つのプロセッサが複数の処理部として機能する構成であっても、一つの処理部として機能するプロセッサを複数備える構成であってもよい。
【0034】
バランス判定部1701は、センサ16からの信号に基づいて利用者の姿勢を判断し、規定の状態に対する姿勢の偏りを測定し、利用者のバランス状態として定める。また、バランス判定部1701は、利用者が起立状態へ移行する際に、センサ16からの信号に基づいて利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたか否かを判定する。
【0035】
動作制御部1702は、前記バランス判定部による前記バランス状態に基づいて前記動作補助部を制御し、前記利用者の姿勢が規定の状態に近づくように前記動作補助部を動作させる。
【0036】
警報制御部1703は、利用者のバランス状態が所定の範囲から外れたと判定された場合に、ディスプレイやスピーカ、バイブレータ等の警報部174から警報を出力させる。
【0037】
≪動作≫
図7は、制御部17が実行する転倒防止装置1の転倒防止方法を示す図である。転倒防止装置1は、電源がONとなっている期間、或いは起動の指示を受けた場合に、図7の処理を繰り返し実行する。
【0038】
ステップS10にて、制御部17は、入出力部173を介して取得した情報に基づいて起立動作の補助を開始するか否かを判定する。例えば、利用者が操作部を操作して補助の開始を選択し、入出力部173を介して補助開始を示す信号が入力された場合に、制御部17は、肯定判定する。また、利用者が起立しようとして前側に重心を移し、第二センサ162で検出した荷重に対する第一センサ161で検出した荷重の比率が、所定値を超えた場合に、制御部17は、肯定判定してもよい。これらの入力がない場合、制御部17は否定判定し、図7の処理を終了する。
【0039】
ステップS20にて、制御部30は、第一センサ161及び第二センサ162からの信号(検出結果)に基づいて利用者の姿勢を判断し、規定の状態に対する前記姿勢の偏りを測定して利用者のバランス状態を求める。例えば、利用者の重心が左側に偏っている場合、左側のセンサ16で検出する荷重が大きくなり、利用者の重心が右側に偏っている場合、右側のセンサ16で検出する荷重が大きくなるので、センサ16による左右の検出結果に基づいて利用者の左右の偏りを判定する。また、利用者の重心が前側に偏っている場合、第一センサ161で検出する荷重が大きくなり、利用者の重心が後側に偏っている場合、第二センサ162で検出する荷重が大きくなるので、第一センサ161と第二センサ162による検出結果の比率に基づいて利用者の前後の偏りを判定する。また、利用者の上半身にモーションセンサが付いている場合は、このモーションセンサの検出結果に基づいて利用者のバランス状態を求める。更に、センサ16として利用者の動きを撮影する撮影
装置を用いる場合、この撮影装置で撮影した撮影画像を画像処理して利用者のバランス状態を求める。
【0040】
ステップS30にて、制御部17は、センサ16からの信号に基づいて利用者のバランス状態が所定の範囲から外れているか否かを判定する。例えば、制御部17は、センサ16によって検出した左右の荷重の比率によってバランス状態を求め、この荷重の偏りが所定範囲内であればバランスが崩れていない状態であるため、否定判定する。一方、当該荷重の偏りが所定範囲から外れていれば、バランスが崩れている状態であるため、制御部17は肯定判定する。ステップS30で肯定判定であれば、制御部17は、ステップS40へ移行して、警報部174から一定時間警報を出力させる。ここで、警報とは、例えば、「左側へ偏り過ぎています。重心を中央へ近づけて下さい。」などのように、重心が偏り過ぎていることを示すメッセージをスピーカやディスプレイから出力させる。これに限らず、警告は、バイブレータによる振動の出力や、警告灯の点灯などであってもよい。
【0041】
また、制御部17は、ステップS20で求めたバランス状態に基づいて動作補助部15の駆動量を決定する。ここで、動作補助部15の駆動量は、動作補助部15によって利用者の起立動作を補助する場合に、前後左右の駆動量を調整することにより、利用者の姿勢を規定の状態に近づけるものである。例えば、利用者の姿勢が左に傾いている場合、着座面の左側を高く右側を低くするように駆動させることにより、利用者の姿勢を規定の状態に近づける。また、着座面151は、初期状態において略水平であり、初期状態から上昇するにつれて徐々に所定の角度で前傾するように駆動される。このとき利用者のバランス状態が、前側に傾いている場合、着座面151が所定の角度よりも後傾するように駆動され、利用者のバランス状態が、後側に傾いている場合、着座面151が所定の角度よりも前傾するように駆動されて、利用者の姿勢が規定の状態に近づけられる。なお、駆動量の決定は、例えば、補助の開始から終了までの複数のタイミングにおいて、利用者のバランス状態毎に、動作補助部15をどの程度駆動すれば利用者の姿勢が規定の状態となるかを試験などによって求め、データテーブルとして記憶部172に記憶しておき、ステップS20で求めたバランス状態と対応する値を当該データテーブルから抽出する。これに限らず、動作補助部15は、所定の関数等を用い、ステップS20で求めたバランス状態から動作補助部15の駆動量を求めてもよい。
【0042】
ステップS50にて、制御部17は、ステップS40で決定した駆動量に応じて動作補助部15を駆動させる。即ち、制御部17は、着座面151における前後左右の領域を隆起又は陥没させることによって、着座面151に着座する利用者の姿勢を規定の状態に近づけさせる。その後、制御部17は、ステップS20へ戻ってバランス状態の検出を行い、ステップS30でバランス状態が所定の範囲から外れている否かを判定する。
【0043】
ステップS30で否定判定であれば、制御部17は、ステップS60へ移行し、着座面151を上昇させて利用者の起立動作を補助するように動作補助部15を駆動させる。
【0044】
ステップS70にて、制御部17は、起立動作の補助が完了したか否かを判定する。例えば、制御部17は、着座面151を所定の高さまで上昇させ、利用者による第二センサ162に対する荷重が無くなった場合に肯定判定し、そうでない場合に否定判定する。ステップS70で否定判定であれば、制御部17は、ステップS20へ戻り、肯定判定であればステップS80へ移行する。
【0045】
ステップS80にて、制御部17は、着座面151を初期状態に戻すように動作補助部15をリセットし、図7の処理を終了する。
【0046】
このように、本実施形態の転倒防止装置1は、利用者が起立する際、着座面151を押
し上げて起立動作を補助すると共に、利用者のバランス状態に応じて各アクチュエータ1531~1534の駆動量を調整し、着座面151における前後左右の領域を異なる動作量で動作させることにより、利用者に与える補助の量を調整して利用者の姿勢が規定の状態に近づける。これにより、利用者の姿勢の偏りが補正され、バランス良く立ち上がることができるため、起立補助時の転倒を防止することができる。
【0047】
<第二実施形態>
図8は、第二実施形態に係る転倒防止装置1Aの構成を示す図である。本実施形態の転倒防止装置1Aは、前述の実施形態と比べ、電動のアクチュエータ153に代え、流体の給排によって動作するアクチュエータ154を用いた構成が異なっている。なお、その他の構成は前述の第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0048】
本実施形態の動作補助部15は、左側ユニット15L及び右側ユニット15Rが、夫々上板部材152と、アクチュエータ154とを備えている。アクチュエータ154は、流体の給排によって膨張若しくは収縮する袋状の容器であるエアバッグ1540と、エアバッグ1540へエアを供給し、またエアバッグ1540からエアを排気する吸排気部1545とを備えている。なお、アクチュエータ154は、液体の給排によって膨張若しくは収縮する袋状の容器と、当該容器に液体を供給する又は当該容器から液体を排出する装置とを備える構成であってもよい。
【0049】
本実施形態のアクチュエータ154は、四つのエアバッグ1541~1544が上板部材152の四隅に設けられ、吸排気部1545が各エアバッグ1541~1544内のエアの量を変えることにより上板部材152の角度を変えることができる。図9は、アクチュエータ154の駆動例を示す正面図、図10は、アクチュエータ154の駆動例を示す側面図である。初期状態では、各エアバッグ1541~1544が縮んだ状態となり、図9図10における二点鎖線のように、右側ユニット15Rおよび左側ユニット15Lの上板部材152をそれぞれ略水平に保持している。そして、左側のエアバッグ1541,1542に対して右側のエアバッグ1543,1544が膨張するように駆動されると、図9に示すように右側が高くなるように上板部材152が駆動される。反対に、右側のエアバッグ1543,1544に対して左側のエアバッグ1541,1542が膨張するように駆動されると、左側が高くなるように上板部材152が駆動される。また、前側のエアバッグ1541,1543に対して後側のエアバッグ1542,1544が膨張するように駆動されると、図10に示すように後側が高くなるように上板部材152が駆動される。反対に、後側のエアバッグ1542,1544に対して前側のエアバッグ1541,1543が膨張するように駆動されると、前側が高くなるように上板部材152が駆動される。このようにアクチュエータ154は、上板部材152の規定状態に対する傾きを調整することができる。
【0050】
このように、本実施形態では、各エアバッグ1541~1544が、異なる駆動量で上板部材152を駆動することにより、着座部11の利用者と接する着座面151における前後左右の領域を異なる動作量で動作させることができる。これにより、前述の実施形態と同様に、利用者の起立動作を補助する際、利用者の姿勢の偏りを補正し、起立補助時の転倒を防止することができる。
【0051】
以上、本開示に係る転倒防止装置の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また動作補助部15も左側ユニット15Lと右側ユニット15Rの2つではなく、それぞれ前ユニットと後ユニットで構成し、各々を独立に駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 :転倒防止装置
1A :転倒防止装置
11 :着座部
12 :脚部
13 :背もたれ
15 :動作補助部
15L :左側ユニット
15R :右側ユニット
16 :センサ
17 :制御部
20 :起立対象面
30 :制御部
111 :筐体
151 :着座面
152 :上板部材
153 :アクチュエータ
154 :アクチュエータ
161 :第一センサ
162 :第二センサ
171 :プロセッサ
172 :記憶部
173 :入出力部
174 :警報部
1531~1534:アクチュエータ
1540~1544:エアバッグ
1545 :吸排気部
1701 :バランス判定部
1702 :動作制御部
1703 :警報制御部
1721 :主記憶部
1722 :補助記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10