(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140372
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20241003BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20241003BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/06 301D
H01L29/86 301P
H01L29/78 301D
H01L29/78 301W
H01L29/78 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051487
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】倪 威
(72)【発明者】
【氏名】丸井 俊治
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健志
(72)【発明者】
【氏名】矢野 新也
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 裕一
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AC21
5F140BC15
5F140BE07
5F140BE16
5F140BE17
5F140BF01
5F140BF04
5F140BF43
5F140BH14
5F140BH30
5F140BH34
5F140BH49
5F140BK13
5F140BK21
5F140CD09
(57)【要約】
【課題】半導体素子の外周部で耐圧が低下することを防止して高耐圧を実現することのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板1と、基板1の主面上に形成されたドリフト領域3と、ドリフト領域3に接して形成されたコラム領域5と、ドリフト領域3とコラム領域5に接して形成されたウェル領域7と、ドリフト領域3に接して形成されたドレイン領域9と、ドレイン領域9と電気的に接続された第1電極11と、ウェル領域7と電気的に接続された第2電極13とを備え、ドリフト領域3の外周部の第1側面23とコラム領域5の外周部の第2側面25との間の面間距離Lは、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面上に形成された第1導電型ドリフト領域と、
前記第1導電型ドリフト領域に接して形成された第2導電型コラム領域と、
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型コラム領域に接して形成された第2導電型ウェル領域と、
前記第1導電型ドリフト領域に接して形成された第1導電型ドレイン領域と、
前記第1導電型ドレイン領域と電気的に接続された第1電極と、
前記第2導電型ウェル領域と電気的に接続された第2電極とを備え、
前記第1導電型ドリフト領域の外周部の第1側面と前記第2導電型コラム領域の外周部の第2側面との間の面間距離は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所が前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型コラム領域の界面となる距離に設定されている半導体装置。
【請求項2】
前記第2電極と電気的に接続され、前記第1導電型ドリフト領域に接して形成された第3電極をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電型ウェル領域に接して形成された第1導電型ソース領域と、
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ウェル領域と前記第1導電型ソース領域に接して形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜を介して前記第2導電型ウェル領域に接する第4電極と
をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1絶縁膜と前記第4電極に接して形成された第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜を介して前記第1導電型ドリフト領域と前記第4電極に接し、前記第2電極または前記第4電極と電気的に接続された第5電極と
をさらに備えた請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2導電型ウェル領域に接して形成された第1導電型ソース領域と、
前記第1導電型ドリフト領域と前記第2導電型ウェル領域と前記第1導電型ソース領域に接して前記基板の深さ方向に形成された溝と、
前記溝の内面に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜に接して前記溝の内部に形成された第4電極と
をさらに備えた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記基板の不純物濃度は、前記第1導電型ドリフト領域の不純物濃度よりも低い請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板は、半絶縁性半導体基板である請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基板は、ワイドバンドギャップ半導体からなる請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、高耐圧で低いオン抵抗を実現することを目的とした半導体装置が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された半導体装置では、ソース電極とドレイン電極の間に所定の電圧を印加したときに、p型とn型の2つのドリフト領域が完全に空乏化するように両者の厚さを選定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体素子の耐圧は、半導体素子の外周部の構造によって大きく影響を受けるにも関わらず、上述した特許文献1では、半導体素子の中央部分の構造しか開示されておらず、中央部とは構造が異なる外周部の構造については開示されていない。そのため、上述した従来の半導体装置では、半導体素子の外周部で耐圧が低下して高耐圧を実現することができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、半導体素子の外周部で耐圧が低下することを防止して高耐圧を実現することのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る半導体装置は、第1導電型ドリフト領域の外周部の第1側面と第2導電型コラム領域の外周部の第2側面との間の面間距離を、第1電極と第2電極との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所が第1導電型ドリフト領域と第2導電型コラム領域の界面となる距離に設定している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体素子の外周部で耐圧が低下することを防止して高耐圧の半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構造を示すための
図1B、
図1CのA-Aにおける断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置における面間距離と最大電界の間の関係を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図4B】
図4Bは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図4C】
図4Cは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図4D】
図4Dは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その4)。
【
図4E】
図4Eは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その5)。
【
図4F】
図4Fは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その6)。
【
図4G】
図4Gは、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その7)。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図7B】
図7Bは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図7C】
図7Cは、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図10B】
図10Bは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【
図10C】
図10Cは、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その3)。
【
図11A】
図11Aは、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の構造を示す上面図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その1)。
【
図12B】
図12Bは、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための模式的な工程図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含んでいる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
また、本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
[半導体装置の構造]
図1Aは、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面斜視図であり、
図1Bは断面図、
図1Cは上面図である。本実施形態に係る半導体装置100は、ショットキーバリアダイオードである。
図1A~1Cに示すように、半導体装置100は、基板1と、第1導電型のドリフト領域3と、第2導電型のコラム領域5と、第2導電型のウェル領域7と、第1導電型のドレイン領域9とを備える。また、半導体装置100は、ドレイン領域9に接合された第1電極(カソード電極)11と、ウェル領域7に接合された第2電極13と、ドリフト領域3とウェル領域7に接合された第3電極(アノード電極)15と、層間絶縁膜17とを備える。ただし、
図1A、1Cでは、層間絶縁膜17を省略している。
【0012】
尚、第1導電型と第2導電型は互いに異なる導電型である。すなわち、第1導電型がP型であれば、第2導電型はN型であり、第1導電型がN型であれば、第2導電型はP型である。本実施形態では、第1導電型がN型、第2導電型がP型の場合について説明する。
【0013】
基板1は、半絶縁性半導体基板である。これにより、同一の基板1に複数の半導体装置を集積する際の素子分離プロセスを簡略化することができる。ここで、半絶縁性基板とは、基板の抵抗率が数kΩ・cm以上のことをいう。また、基板1の不純物濃度は、ドリフト領域3の不純物濃度よりも低くなっている。
【0014】
例えば、基板1に半絶縁性を有する炭化珪素基板(SiC基板)を用いることができる。SiCはワイドバンドギャップ半導体であり真性キャリヤ数が少ないため、高い絶縁性を得やすく、耐圧の高い半導体装置を実現できる。また、半絶縁性炭化珪素基板は、熱伝導率が高いことから、基板1の裏面を、導電材料を介して冷却機構に直接取り付ければ、半導体装置100がオンのときの電流による発熱を効率よく発散することができる。
【0015】
さらに、基板1は、SiC基板に限らず、バンドギャップの広い半導体材料からなる半導体基板を使用してもよい。バンドギャップの広い半導体材料には、例えばGaN、ダイヤモンド、ZnO、AlGaNなどが挙げられる。
【0016】
ドリフト領域3は、基板1の主面上に形成され、コラム領域5とウェル領域7とドレイン領域9と接している。ドリフト領域3のN型の不純物濃度は、例えば、1×1017/cm3程度であり、基板1の不純物濃度よりも高くなっている。
【0017】
コラム領域5は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域3とウェル領域7に接して形成されている。コラム領域5は、基板1にイオン注入によってP型の不純物を添加することによって形成される。また、コラム領域5は、基板1の深さ方向において、ドリフト領域3よりも深い位置に形成され、基板1とドリフト領域3の間に形成されている。このようにコラム領域5を形成したことにより、スーパージャンクション構造になり、高耐圧で低オン抵抗の特性を得ることができる。
【0018】
ウェル領域7は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域3とコラム領域5に接して形成されている。ウェル領域7のP型の不純物濃度は、例えば、4×1017/cm3程度である。ウェル領域7は、基板1の深さ方向において、ドリフト領域3よりも深い位置まで形成され、コラム領域5の位置まで達している。
【0019】
ドレイン領域9は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域3に接して形成されている。ドレイン領域9のN型の不純物濃度はドリフト領域3よりも高濃度であり、例えば、1×1019/cm3程度である。
【0020】
第1電極11は、基板1の主面上に形成されたメタル電極であり、ドレイン領域9の表面に接合され、ドレイン領域9と電気的に接続されている。第1電極11は、ダイオードである半導体装置100のカソード電極として機能する。
【0021】
第2電極13は、基板1の主面上に形成されたメタル電極であり、ウェル領域7の表面に接合され、ウェル領域7と電気的に接続されている。
【0022】
第3電極15は、基板1の主面上に形成され、ドリフト領域3とウェル領域7に接して形成され、第2電極13と電気的に接続されている。第3電極15は、ダイオードである半導体装置100のアノード電極として機能する。
【0023】
層間絶縁膜17は、基板1とドリフト領域3とウェル領域7とドレイン領域9の表面に接して形成されている。
【0024】
[半導体装置の動作]
次に、本実施形態に係る半導体装置100における基本的な動作の一例を説明する。
図1A~1Cに示す構成の半導体装置100は、ダイオードとして動作する。まず、第3電極15と第2電極13を同電位にし、第3電極15の電位を基準として、第1電極11に所定の電位を超える負の電位を印加すると、ダイオードが導通して第3電極15からドリフト領域3を通って、第1電極11に順方向電流が流れる。所定の電位は第3電極15の材料によって異なる。
【0025】
一方、第1電極11に所定の正電位を印加すると、ダイオードに電流が流れなくなり、ウェル領域7と接するドリフト領域3に空乏層が広がる。さらに、第1電極11の電圧を高くすると、コラム領域5と接するドリフト領域3に空乏層が広がる。第1電極11にさらに高い電圧を印加すると、ドリフト領域3とコラム領域5はすべて空乏する。この状態でさらに第1電極11の電圧を高めると、ドリフト領域3とコラム領域5が接する領域が電界集中によってブレークダウンが起こる。
【0026】
次に、本実施形態に係る半導体装置100の効果について説明する。
図2は、
図1B、1CのA-Aにおける断面図を示しており、半導体装置100の外周部を示している。
図2に示すように、外周面21は、半導体素子の最も外側に位置する外周部の側面である。同様に、ドリフト領域3の最も外側に位置する外周部の側面が第1側面23であり、コラム領域5の最も外側に位置する外周部の側面が第2側面25である。
【0027】
高電圧用途の半導体素子の耐圧は、半導体素子の外周部の構造に大きく影響され、特に、第1側面23と第2側面25との間の面間距離Lによって影響される。
図3は、第1電極11と第2電極13との間に所定の電圧を印加したときの最大電界と面間距離Lとの関係を示す図である。面間距離Lは、
図2に示すようにコラム領域5がドリフト領域3の内部にある場合がマイナスとなり、第1側面23と第2側面25が同じ位置になる場合は0となる。
【0028】
図3に示すように、面間距離Lが変化すると、最大電界が変化する。これは、電界集中する箇所が変化するためである。例えば、面間距離Lが-1μmの場合には、ウェル領域7とドリフト領域3の界面に電界が集中するので、最大電界が大きくなり耐圧が低下している。一方、面間距離Lが0に近づくと、電界集中する箇所は、ドリフト領域3とコラム領域5の界面にシフトして、最大電界が小さくなることが分かる。すなわち、ドリフト領域3とコラム領域5の界面に電界を集中させることによって高い耐圧を得ることができる。
図3では、面間距離Lが-0.15μmのときに最大電圧が最小になっている。
【0029】
そこで、本実施形態に係る半導体装置100では、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に、面間距離Lを設定している。特に、面間距離Lを0.15μmに設定することによって、最大電圧を最小にすることができる。これにより、本実施形態に係る半導体装置100では、半導体素子の外周部で耐圧が低下することを防止して、高耐圧の半導体装置100を実現することができる。
【0030】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図4A~
図4Gを参照して、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。
【0031】
まず、不純物が添加されていない基板1を用意する。次に、
図4Aに示すように、基板1上に形成した酸化シリコンのマスク材41をパターニングして、コラム領域5を形成する領域を露出させる。
【0032】
一般的なマスク材としては、酸化シリコンを用いることができ、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。パターニングの方法としては、フォトリソグラフィ法を用いることができる。即ち、パターニングされたフォトレジスト膜をマスクにしてマスク材をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。マスク材をエッチングした後、フォトレジスト膜を酸素プラズマや硫酸などで除去する。このようにして、マスク材41がパターニングされる。
【0033】
次に、
図4Bに示すように、マスク材41をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってコラム領域5を形成する。P型不純物としてはアルミニウムを用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から1μm~1.5μmの深さ範囲に均一濃度のアルミニウムを注入する。例えば、不純物濃度を2×10
17/cm
3として注入する。尚、半導体素子の用途に合わせて、必要な耐圧やオン抵抗によって、深さと濃度を変えてもよい。アルミニウムを注入する際には、基板1を加熱した状態で注入することもできる。加熱注入することによって、注入領域に結晶欠陥が生じることを抑制できる。注入後にマスク材41を除去する。除去方法としてはフッ酸を用いたウェットエッチングが好適である。
【0034】
次に、
図4Cに示すように、基板1の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ドリフト領域3を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってドリフト領域3を形成する。N型不純物としては窒素を用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から1μmあるいは1.5μmまでの深さ範囲に均一濃度の窒素を注入する。例えば、不純物濃度は1×10
17/cm
3として注入する。尚、半導体素子の用途に合わせて濃度を変えてもよい。
【0035】
次に、
図4Dに示すように、ドリフト領域3の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ウェル領域7を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、ウェル領域7を形成する。P型不純物としてはアルミニウムを用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から1.5μmの深さ範囲に均一濃度のアルミニウムを注入する。例えば、不純物濃度を4×10
17/cm
3として注入する。尚、半導体素子の用途に合わせて、必要な耐圧やオン抵抗によって、深さと濃度を変えてもよい。アルミニウムを注入する際には、基板1を加熱した状態で注入することもできる。加熱注入することによって、注入領域に結晶欠陥が生じることを抑制できる。注入後にマスク材を除去する。除去方法としてはフッ酸を用いたウェットエッチングが好適である。
【0036】
次に、
図4Eに示すように、ドリフト領域3とウェル領域7の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ドレイン領域9を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、ドレイン領域9を形成する。N型不純物としては窒素を用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から0.5μmの深さ範囲に均一濃度の窒素を注入する。例えば、不純物濃度を1×10
19/cm
3として注入する。注入後にマスク材を除去する。除去方法としてはフッ酸を用いたウェットエッチングが好適である。
【0037】
次に、イオン注入した不純物を熱処理することによって活性化する。熱処理温度としては1700℃程度の温度を用いることができ、雰囲気としてはアルゴンや窒素を好適に用いることができる。
【0038】
次に、
図4Fに示すように、層間絶縁膜17を形成する。層間絶縁膜17はシリコン酸化膜が好適であり、成膜方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。そして、第1電極11と第2電極13を形成するために、層間絶縁膜17の一部を除去する。除去する方法は、層間絶縁膜17にレジスト43を形成し、一般的なフォトリソグラフィ法を用いてレジスト43をパターニングし、パターニングしたレジスト43をマスクとして層間絶縁膜17をエッチングすればよい。エッチング方法としては、イオンでのドライエッチングやフッ酸によるエッチングを用いることができる。
【0039】
次に、
図4Gに示すように、第1電極11と第2電極13を、リフトオフ法により電極材となるニッケルを成膜して形成する。この後に、アセトンなどでレジスト43を除去する。ここではニッケルを電極材として使用しているが、他のメタル材であってもよい。そして、同様の方法で、第3電極15を形成すれば、
図1A~1Cに示す本実施形態に係る半導体装置100が完成する。尚、第3電極15の材料としては、Ti、Mo、Niが好適である。
【0040】
[変形例]
上述した実施形態では、第2電極13と第3電極15を別々に設けていたが、一体の電極として形成することも可能である。
図5に示すように、変形例に係る半導体装置110は、第2電極13と第3電極15を一体に形成した電極51を備えている。
【0041】
[第1実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置100は、面間距離Lを、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に設定している。これにより、半導体素子の外周部で耐圧が低下することを防止して高耐圧の半導体装置100を実現することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る半導体装置100は、第2電極13と電気的に接続され、ドリフト領域3に接して形成された第3電極15をさらに備えている。これにより、第1電極11と第3電極15との間でダイオードとして機能させることができ、高耐圧のショットキーバリアダイオードを実現することができる。
【0043】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1の不純物濃度がドリフト領域3の不純物濃度よりも低い。これにより、第1電極11と第2電極13との間に所定の電圧を印加したときに、基板1とコラム領域5の間の空乏層が、ドリフト領域3とコラム領域5の間の空乏層より広くなる。そのため、基板1とコラム領域5の間よりドリフト領域3とコラム領域5の間のほうが、電界集中が起こりにくくなるので、耐圧の高い半導体装置100を提供することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1が半絶縁性半導体基板である。これにより、第1電極11と第2電極13との間に所定の電圧を印加したときに、基板1とコラム領域5の間の空乏層が、ドリフト領域3とコラム領域5の間の空乏層より広くなる。そのため、基板1とコラム領域5の間よりドリフト領域3とコラム領域5の間のほうが、電界集中が起こりにくくなるので、耐圧の高い半導体装置100を提供することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る半導体装置100では、基板1がワイドバンドギャップ半導体からなる。これにより、高い絶縁性を容易に得ることができるので、耐圧の高い半導体装置100を実現することができる。
【0046】
[第2実施形態]
以下、本発明を適用した第2実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
[半導体装置の構造]
図6Aは、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図であり、
図6Bは上面図である。本実施形態に係る半導体装置120はトランジスタである。
図6A、6Bに示すように、半導体装置120は、第1導電型のソース領域61と、ゲート絶縁膜63と、第4電極(ゲート電極)65と、第5電極67をさらに備えたことが第1実施形態と相違している。ただし、
図6Bでは、層間絶縁膜17とゲート絶縁膜63を省略している。
【0048】
尚、本実施形態に係る半導体装置120でも、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に、面間距離Lを設定している。
【0049】
第2電極13は、本実施形態では、ウェル領域7とソース領域61の表面に接合され、ウェル領域7とソース領域61と電気的に接続されている。第2電極13は、トランジスタである半導体装置120のソース電極として機能する。
【0050】
ソース領域61は、基板1の主面上に形成され、ウェル領域7に接して形成されている。ソース領域61のN型の不純物濃度はドリフト領域3よりも高濃度であり、例えば、1×1019/cm3程度である。ソース領域61の表面には第2電極13が電気的に接続されている。また、ソース領域61は、ゲート絶縁膜63を介して第4電極65に接している。
【0051】
ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)63は、基板1とドリフト領域3とウェル領域7とドレイン領域9とソース領域61の表面に接して形成されている。
【0052】
第4電極65は、基板1の主面上に形成され、ゲート絶縁膜63を介して、ドリフト領域3とウェル領域7とソース領域61に接して形成されている。第4電極65は、トランジスタである半導体装置120のゲート電極として機能する。
【0053】
第5電極67は、基板1の主面上に形成され、層間絶縁膜17を介してドリフト領域3と第4電極65に接して形成され、第2電極13または第4電極65と電気的に接続されている。
【0054】
層間絶縁膜(第2絶縁膜)17は、本実施形態では、ゲート絶縁膜63と第4電極65の表面に接して形成されている。
【0055】
[半導体装置の動作]
次に、本実施形態に係る半導体装置120における基本的な動作の一例を説明する。
図6A、6Bに示す構成の半導体装置120は、トランジスタとして動作する。具体的に、第2電極13の電位を基準として、第1電極(ドレイン電極)11に正の電位を印加した状態で、第4電極65の電位を制御することでトランジスタとして機能させることができる。
【0056】
まず、第4電極65と第2電極13との間の電圧を所定の閾値電圧以上にすると、第4電極65の下部のウェル領域7に反転層が形成される。これによりソース領域61とドレイン領域9が導通し、トランジスタがオン状態となるので、第1電極11から第2電極13へ電流が流れる。具体的には、電子が第2電極13からソース領域61に流れ、ソース領域61からチャンネルを介してドリフト領域3へ流れ込み、次にドリフト領域3からドレイン領域9に流れて最後に第1電極11へ流出する。
【0057】
一方、第4電極65と第2電極13との間の電圧を所定の閾値電圧未満にすると、反転層が消滅し、トランジスタがオフ状態となって電流が遮断される。このとき、第1電極11と第2電極13との間には数百から数千ボルトの高電圧が印加される。そして、トランジスタの内部において、ウェル領域7に接するドリフト領域3に空乏層が広がるとともに、第4電極65とドリフト領域3が接する部分からもドリフト領域3へ空乏層が広がる。この場合には、第4電極65とドリフト領域3が接する角の部分に電界集中が起こりやすい。しかし、第5電極67も層間絶縁膜17を介してドリフト領域3に接しており、第5電極67と第2電極13が同電位のため、第4電極65に集中する一部の電界が第5電極67へ分散するので、第4電極65への電界集中を緩和することができる。
【0058】
さらに、第1電極11の電圧を高くすると、コラム領域5と接するドリフト領域3に空乏層が広がる。第1電極11に所定の電圧を印加すると、ドリフト領域3とコラム領域5はすべて空乏する。この状態でさらに第1電極11の電圧を高めると、ドリフト領域3とコラム領域5が接する領域で電界集中によってブレークダウンが起こる。尚、本実施形態に係る半導体装置120の効果は、第1実施形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0059】
[半導体装置の製造方法]
次に、
図7A~
図7Cを参照して、本実施形態に係る半導体装置120の製造方法の一例を説明する。ただし、第1実施形態で説明した製造方法と相違する工程のみを説明し、第1実施形態と同一の工程については詳細な説明を省略する。
【0060】
まず、第1実施形態の
図4A-
図4Dと同様のプロセスを行って基板1上に、ドリフト領域3、コラム領域5、ウェル領域7を形成する。
【0061】
次に、
図7Aに示すように、ドリフト領域3とウェル領域7の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ドレイン領域9とソース領域61を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行って、ドレイン領域9とソース領域61を同時に形成する。N型不純物としては窒素を用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から0.5μmの深さ範囲に均一濃度の窒素を注入する。例えば、不純物濃度を1×10
19/cm
3として注入する。注入後にマスク材を除去する。除去方法としてはフッ酸を用いたウェットエッチングが好適である。
【0062】
次に、イオン注入した不純物を熱処理することによって活性化する。熱処理温度としては1700℃程度の温度を用いることができ、雰囲気としてはアルゴンや窒素を好適に用いることができる。
【0063】
次に、
図7Bに示すように、ゲート絶縁膜63を形成し、第4電極65を形成する。ゲート絶縁膜63を形成する工程では、熱酸化法で形成しても堆積法で形成しても構わない。一例として、熱酸化法で形成する場合には、基板1を酸素雰囲気中で1100℃程度に加熱することで、基板1が酸素に触れるすべての部分にシリコン酸化膜が形成される。こうしてゲート絶縁膜63を形成した後に、ウェル領域7とゲート絶縁膜63との間の界面の界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N
2O等の雰囲気中で1000℃程度のアニールを行っても良い。また、直接NOかN
2Oの雰囲気中で熱酸化を行うことも可能である。その場合の温度は1100℃~1400℃が好適である。形成されるゲート絶縁膜63の厚さは数十nmが好適である。
【0064】
次に、第4電極65を形成する。第4電極65の材料はポリシリコンが一般的なので、ここではポリシリコンを用いて説明する。ポリシリコンの堆積方法としては、減圧CVD法を用いてもよい。ポリシリコンの堆積厚さは限定しないが、1μm前後であればよい。また、ポリシリコンの堆積後に、950℃のオキシ塩化リン(POCl3)中でアニール処理することで、N型のポリシリコン膜が形成され、第4電極65に導電性を付与する。そして、第4電極65のポリシリコンをエッチングする。エッチング方法は等方性エッチングでも異方性の選択エッチングでも適応可能であり、エッチング用のマスクはレジストでよい。エッチング後はマスクを除去する。
【0065】
次に、
図7Cに示すように、層間絶縁膜17を形成し、電極用コンタクトホールを形成する。層間絶縁膜17は一般的にシリコン酸化膜が好適で、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。厚さは1μm以上が好ましい。層間絶縁膜17の堆積後に第1電極11と第2電極13を形成するためのコンタクトホールを形成する。形成方法は層間絶縁膜17上にレジストをパターニングする。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィ法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、層間絶縁膜17とゲート絶縁膜63をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。その後、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。第1電極用コンタクトホール71はドレイン領域9を露出させ、第2電極用コンタクトホール73はウェル領域7とソース領域61を同時に露出させるようにコンタクトホールを開ける。
【0066】
この後、コンタクトホールに第1電極11と第2電極13を形成し、さらに層間絶縁膜17の上に第5電極67を形成する。電極材料としてはメタル配線が一般的である。メタル材料としてはTi、Ni、Moのいずれでもよい。また、Ti/Ni/Moなどの積層メタルでもよい。例えば、Tiの場合では、スパッタ法でTiを堆積してレジストマスクによる選択エッチングを行えば、
図6A、6Bに示す本実施形態に係る半導体装置120が完成する。
【0067】
[変形例]
上述した実施形態では、第2電極13と第5電極67を別々に設けていたが、一体の電極として形成することも可能である。
図8に示すように、変形例に係る半導体装置130は、第2電極13と第5電極67を一体に形成した電極81を備えている。
【0068】
[第2実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置120は、ウェル領域7に接して形成されたソース領域61と、ドリフト領域3とウェル領域7とソース領域61に接して形成されたゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63を介してウェル領域7に接する第4電極65をさらに備えている。これにより、半導体装置120をトランジスタとして動作させることができるので、高耐圧のトランジスタを実現することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る半導体装置120は、ゲート絶縁膜63と第4電極65に接して形成された層間絶縁膜17と、層間絶縁膜17を介してドリフト領域3と第4電極65に接し、第2電極13または第4電極65と電気的に接続された第5電極67をさらに備えている。これにより、第4電極65に集中する一部の電界を第5電極67へ分散させることができるので、第4電極65への電界集中を緩和することができる。
【0070】
[第3実施形態]
以下、本発明を適用した第3実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0071】
[半導体装置の構造]
図9Aは、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図であり、
図9Bは上面図である。
図9A、9Bに示すように、本実施形態に係る半導体装置140では、ゲート溝91を形成し、ゲート溝91の内部に第4電極65を形成したことが第2実施形態と相違している。また、本実施形態では、第5電極67を設けていない。ただし、
図9Bでは、層間絶縁膜17とゲート絶縁膜63を省略している。
【0072】
尚、本実施形態に係る半導体装置140でも、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に、面間距離Lを設定している。
【0073】
ゲート溝91は、ドリフト領域3とコラム領域5とウェル領域7とソース領域61に接して基板1の深さ方向に形成されている。特に、ゲート溝91は、ドリフト領域3やウェル領域7の表面からドリフト領域3を貫通してコラム領域5の深さまで達している。
【0074】
ゲート絶縁膜63は、基板1とドリフト領域3とウェル領域7とドレイン領域9とソース領域61の表面に形成されるとともに、ゲート溝91の内面全体にも形成される。
【0075】
第4電極65は、ゲート絶縁膜63に接してゲート溝91の内部に形成され、ゲート絶縁膜63を介して、ドリフト領域3とコラム領域5とウェル領域7とソース領域61に接している。第4電極65は、トランジスタである半導体装置140のゲート電極として機能する。また、第4電極65は複数形成されており、各第4電極65はゲート配線で接続されている。
【0076】
[半導体装置の動作]
本実施形態に係る半導体装置140の基本的な動作と効果は、第2実施形態と同様なので省略する。ただし、本実施形態では、ゲート溝91に第4電極65を形成したことにより、ゲート溝91の側壁に反転層が形成される。反転層の幅は基板1の深さ方向に形成されるので、反転層の幅を増やしたいときにはドリフト領域3とゲート溝91を深さ方向に拡大すればよい。したがって、半導体素子の面積を増加させることなく反転層の幅を増やすことができるので、第2実施形態と比べて、単位面積当たりの抵抗を容易に低減することができる。
[半導体装置の製造方法]
次に、
図10A~
図10Cを参照して、本実施形態に係る半導体装置140の製造方法の一例を説明する。ただし、第1及び第2実施形態で説明した製造方法と相違する工程のみを説明し、第1及び第2実施形態と同一の工程については詳細な説明を省略する。
【0077】
まず、第1実施形態の
図4A-
図4Dと同様のプロセスを行って基板1上に、ドリフト領域3、コラム領域5、ウェル領域7を形成する。次に、第2実施形態の
図7Aと同様のプロセスを行ってドレイン領域9とソース領域61を形成する。
【0078】
次に、
図10Aに示すように、ドリフト領域3とウェル領域7とドレイン領域9とソース領域61の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ゲート溝91を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして、ドライエッチングまたはウェットエッチングを行う。これにより、ドリフト領域3の一部、コラム領域5の一部、ウェル領域7の一部及びソース領域61の一部を選択的にエッチングして、ゲート溝91を形成する。この結果、ゲート溝91は、ドリフト領域3、コラム領域5、ウェル領域7及びソース領域61に接する位置に形成される。
【0079】
次に、
図10Bに示すように、ゲート絶縁膜63を形成し、第4電極65を形成する。ゲート絶縁膜63を形成する工程では、熱酸化法で形成しても堆積法で形成しても構わない。一例として、熱酸化法で形成する場合には、基板1を酸素雰囲気中で1100℃程度に加熱することで、基板1が酸素に触れるすべての部分にシリコン酸化膜が形成される。こうしてゲート絶縁膜63を形成した後に、ウェル領域7とゲート絶縁膜63との間の界面の界面準位を低減するために、窒素、アルゴン、N
2O等の雰囲気中で1000℃程度のアニールを行っても良い。また、直接NOかN
2Oの雰囲気中での熱酸化することも可能である。その場合の温度は1100℃~1400℃が好適である。形成されるゲート絶縁膜63の厚さは数十nmが好適である。
【0080】
次に、ゲート絶縁膜63が形成されたゲート溝91の内部に第4電極65を形成する。第4電極65の材料はポリシリコンが一般的なので、ここではポリシリコンを用いて説明する。ポリシリコンの堆積方法としては、減圧CVD法を用いてもよい。ポリシリコンの堆積厚さは限定しないが、1μm前後であればよい。また、ポリシリコンの堆積後に、950℃のオキシ塩化リン(POCl3)中でアニール処理することで、N型のポリシリコン膜が形成され、第4電極65に導電性を付与する。そして、第4電極65のポリシリコンをエッチングする。エッチング方法は等方性エッチングでも異方性の選択エッチングでも適応可能であり、エッチング用のマスクはレジストでよい。エッチング後はマスクを除去する。
【0081】
次に、
図10Cに示すように、層間絶縁膜17を形成し、電極用コンタクトホールを形成する。層間絶縁膜17は一般的にシリコン酸化膜が好適で、堆積方法としては熱CVD法やプラズマCVD法を用いることができる。厚さは1μm以上が好ましい。堆積後に第1電極11と第2電極13を形成するためのコンタクトホールを形成する。形成方法は層間絶縁膜17上にレジストをパターニングする。パターニングの方法としては、一般的なフォトリソグラフィ法を用いることができる。パターニングされたレジストをマスクにして、層間絶縁膜17とゲート絶縁膜63をエッチングする。エッチング方法としては、フッ酸を用いたウェットエッチングや、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができる。その後、レジストを酸素プラズマや硫酸等で除去する。第1電極用コンタクトホール71はドレイン領域9を露出させ、第2電極用コンタクトホール73はウェル領域7とソース領域61を同時に露出させるようにコンタクトホールを開ける。
【0082】
この後、コンタクトホールに第1電極11と第2電極13を形成する。電極材料としてはメタル配線が一般的である。メタル材料としてはTi、Ni、Moのいずれでもよい。また、Ti/Ni/Moなどの積層メタルでもよい。例えば、Tiの場合では、スパッタ法でTiを堆積してレジストマスクによる選択エッチングを行えば、
図9A、9Bに示す本実施形態に係る半導体装置140が完成する。
【0083】
[第3実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置140は、ウェル領域7に接して形成されたソース領域61と、ドリフト領域3とウェル領域7とソース領域61に接して基板1の深さ方向に形成されたゲート溝91と、ゲート溝91の内面に形成されたゲート絶縁膜63と、ゲート絶縁膜63に接してゲート溝91の内部に形成された第4電極65をさらに備えている。これにより、半導体装置140をトランジスタとして動作させることができるので、高耐圧のトランジスタを実現することができる。また、ゲート溝91に第4電極65を形成したことにより、単位面積当たりの抵抗を容易に低減することができる。
【0084】
[第4実施形態]
以下、本発明を適用した第4実施形態について図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
[半導体装置の構造]
図11Aは、本実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図であり、
図11Bは上面図である。
図11A、11Bに示すように、本実施形態に係る半導体装置150では、コラム領域5をドリフト領域3の上部に形成したことが第3実施形態と相違している。ただし、
図11Bでは、層間絶縁膜17とゲート絶縁膜63を省略している。
【0086】
尚、本実施形態に係る半導体装置150でも、第1電極11と第2電極13との間に電圧を印加したときに電界集中する箇所がドリフト領域3とコラム領域5の界面となる距離に、面間距離Lを設定している。また、本実施形態に係る半導体装置150の基本的な動作と効果は、第3実施形態と同様なので説明を省略する。
[半導体装置の製造方法]
次に、
図12A、12Bを参照して、本実施形態に係る半導体装置150の製造方法の一例を説明する。ただし、第1~第3実施形態で説明した製造方法と相違する工程のみを説明し、第1~第3実施形態と同一の工程については詳細な説明を省略する。
【0087】
まず、第1実施形態の
図4Aと同様のプロセスを行って、基板1上に形成した酸化シリコンのマスク材41をパターニングして、コラム領域5を形成する領域を露出させる。
【0088】
次に、
図12Aに示すように、マスク材41をマスクとして基板1にP型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってコラム領域5を形成する。P型不純物としてはアルミニウムを用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から0.5μmの深さ範囲に均一濃度のアルミニウムを注入する。例えば、不純物濃度を2×10
17/cm
3として注入する。尚、半導体素子の用途に合わせて、必要な耐圧やオン抵抗によって、深さと濃度を変えてもよい。アルミニウムを注入する際には、基板1を加熱した状態で注入することもできる。加熱注入することによって、注入領域に結晶欠陥が生じることを抑制できる。注入後にマスク材41を除去する。除去方法としてはフッ酸を用いたウェットエッチングが好適である。
【0089】
次に、
図12Bに示すように、基板1とコラム領域5の上に形成されたマスク材(図示せず)をパターニングして、ドリフト領域3を形成する領域を露出させる。そして、マスク材をマスクとして基板1にN型の不純物を選択的に添加するイオン注入を行ってドリフト領域3を形成する。N型不純物としては窒素を用いることができる。注入方法はボックス注入で基板1の表面から1.5μmまでの深さ範囲に均一濃度の窒素を注入する。例えば、不純物濃度は1×10
17/cm
3として注入する。尚、半導体素子の用途に合わせて濃度を変えてもよい。
【0090】
この後、第1実施形態の
図4D、第2実施形態の
図7A及び第3実施形態の
図10A-
図10Cと同様のプロセスを行うことによって、
図11A、11Bに示す本実施形態に係る半導体装置150が完成する。
【0091】
[第4実施形態の効果]
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る半導体装置150では、コラム領域5をドリフト領域3の上部に形成する。これにより、第3実施形態と同様に、半導体装置150をトランジスタとして動作させることができるので、高耐圧のトランジスタを実現することができる。
【0092】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 基板
3 ドリフト領域
5 コラム領域
7 ウェル領域
9 ドレイン領域
11 第1電極
13 第2電極
15 第3電極
17 層間絶縁膜
21 外周面
23 第1側面
25 第2側面
41 マスク材
51、81 電極
61 ソース領域
63 ゲート絶縁膜
65 第4電極
67 第5電極
91 ゲート溝
71 第1電極用コンタクトホール
73 第2電極用コンタクトホール
100、110、120、130、140、150 半導体装置
L 面間距離