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特開2024-140377物性値センサ、フローセンサ、物性値検出方法および流体検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140377
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】物性値センサ、フローセンサ、物性値検出方法および流体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20241003BHJP
   G01F 1/684 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01F1/00 W
G01F1/684 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051492
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知之
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CC14
2F030CC15
2F030CE04
2F035EA02
2F035EA03
2F035EA05
2F035EA08
2F035EA09
(57)【要約】
【課題】流量検出値の流体物性依存性を簡単に低減可能な物性値センサを提供すること。
【解決手段】本物性値センサ(1)は、流体の流れ方向(323)に沿う方向を長手とする第1ヒータ(11)と、第1ヒータ(11)の長手方向と直交する方向において、それぞれが第1ヒータ(11)に対して異なる位置に配置された複数の温度センサ(12)と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、
前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、それぞれが前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有する、物性値センサ。
【請求項2】
前記複数の温度センサは、
前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第1距離を離隔して配置された第1温度センサと、
前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第2距離を離隔して配置された第2温度センサと、を含む、請求項1に記載の物性値センサ。
【請求項3】
前記長手方向において、前記複数の温度センサそれぞれの中心は、前記第1ヒータの中心から前記流体の流れ方向の下流に位置する、請求項1に記載の物性値センサ。
【請求項4】
前記第1ヒータおよび前記複数の温度センサを載置するメンブレンと、
前記メンブレンを支持する支持部材と、をさらに有し、
前記流体の流れ方向において、前記第1ヒータ、前記複数の温度センサおよび前記メンブレンそれぞれの中心は、前記支持部材の中心よりも下流に位置する、請求項1に記載の物性値センサ。
【請求項5】
前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する第1出力部を有する、請求項1に記載の物性値センサ。
【請求項6】
前記第1出力部は、前記複数の温度センサによる検出値のそれぞれに重み係数を乗じた値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する、請求項5に記載の物性値センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の物性値センサと、
前記流体の流量を検出する流量検出部と、を有する、フローセンサ。
【請求項8】
前記流量検出部は、
前記流体の流れ方向と直交する方向を長手とする第2ヒータと、
前記流体の流れ方向における前記第2ヒータの上流に配置される第3温度センサと、
前記流体の流れ方向における前記第2ヒータの下流に配置される第4温度センサと、を有する、請求項7に記載のフローセンサ。
【請求項9】
前記物性値センサおよび前記流量検出部は、同じ支持部材により支持される、請求項7に記載のフローセンサ。
【請求項10】
前記物性値センサは、前記第1ヒータと、前記複数の温度センサと、を載置する第1メンブレンを含み、
前記流量検出部は、前記第2ヒータと、前記第3温度センサと、前記第4温度センサと、を載置する第2メンブレンを含み、
前記第1メンブレンの面積は、前記第2メンブレンの面積よりも小さい、請求項8に記載のフローセンサ。
【請求項11】
前記複数の温度センサそれぞれによる検出値から得られる前記流体の物性値に関する情報と、前記流量検出部による検出値と、に基づいて、前記流体の流量に関する情報を取得して出力する第2出力部を有する、請求項7に記載のフローセンサ。
【請求項12】
流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有する物性値センサによる物性値検出方法であって、前記物性値センサが、
前記複数の温度センサは、
前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第1距離を離隔して配置された第1温度センサと、
前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第2距離を離隔して配置された第2温度センサと、を含み、
第1出力部により、前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する、物性値検出方法。
【請求項13】
物性値センサと、流体の流量を検出する流量検出部と、を有するフローセンサによる流体検出方法であって、
前記物性値センサは、流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有し、
前記フローセンサが、
第1出力部により、前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力し、
第2出力部により、前記第1出力部から出力される前記流体の物性値に関する情報と、前記流量検出部による検出値と、に基づいて前記流体の流量に関する情報を出力する、流体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物性値センサ、フローセンサ、物性値検出方法および流体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気等の流体の流量を検出するフローセンサが知られている。フローセンサは、空調機器における空気の流量制御や、自動車のエンジン内の空気の流量制御において使用される。
【0003】
フローセンサには、流量検出値における流体物性依存性を低減するために、物性値検出部により検出された流体の物性値に基づき、流量検出値を補正するものが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6493235号公報
【特許文献2】米国特許第8408050号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のフローセンサでは、物性値検出部等の流体物性値センサによって検出可能な範囲に流体の流量を制限するために、流量検出用の流体流路とは別に物性値検出用の流体流路を設ける。このため、フローセンサの構成が複雑になる場合がある。また特許文献2に記載のフローセンサでは、ルックアップテーブルを用いて流体の物性検出値の流速依存性を補正するため、処理が複雑になる場合がある。
【0006】
本発明は、流量検出値の流体物性依存性を簡単に低減可能な物性値センサ、フローセンサ、物性値検出方法および流体検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本物性値センサ(1)は、流体の流れ方向(323)に沿う方向を長手とする第1ヒータ(11)と、第1ヒータ(11)の長手方向と直交する方向において、それぞれが第1ヒータ(11)に対して異なる位置に配置された複数の温度センサ(12)と、を有する。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流量検出値の流体物性依存性を簡単に低減可能な物性値センサ、フローセンサ、物性値検出方法および流体検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るフローセンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図1におけるII-II線の模式的断面図である。
図3】実施形態に係るフローセンサの副流路を模式的に示す下面図である。
図4】実施形態に係る流体物性値センサの構成例を模式的に示す上面図である。
図5図4におけるV-V線の模式的断面図である。
図6図4におけるVI-VI線の模式的断面図である。
図7】実施形態に係る流量検出部の構成例を模式的に示す上面図である。
図8】実施形態に係るフローセンサのハードウェア構成例を示す図である。
図9】流れ方向下流から視た温度分布と検出温度例を示す図である。
図10】流れ方向と直交する側方から視た温度分布と検出温度例を示す図である。
図11】温度検出値の流速依存性について説明する図である。
図12】実施形態に係る温度差分値の一例を示す図である。
図13】実施形態に係る物性値が異なる流体の物性値情報の一例を示す図である。
図14】実施形態に係る物性値情報と物性値との関係の一例を示す図である。
図15】補正されていない流量と流量情報との関係を示す図である。
図16】実施形態に係る補正後の流量と流量情報との関係を示す図である。
図17】実施形態に係る流体物性値センサのハードウェア構成例を示す図である。
図18】第1変形例に係る流体物性値センサを模式的に示す上面図である。
図19】第2変形例に係る流体物性値センサを模式的に示す上面図である。
図20】第3変形例に係る流体物性値センサを模式的に示す上面図である。
図21】第4変形例に係る流体物性値センサを模式的に示す上面図である。
図22】第4変形例に係る流体物性値センサの作用を説明する図である。
図23】第5変形例に係る流体物性値センサを模式的に示す上面図である。
図24図23で流れ方向下流から視た温度分布と検出温度例を示す図である。
図25】第6変形例に係るフローセンサを模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸およびZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸およびZ軸は、互いに略直交する。Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る物性値センサおよびフローセンサの検出対象である流体が主流路を流れる方向に沿う方向を示すものとする。
【0013】
X軸の矢印が向く方向を+X方向または+X側、+X方向とは反対方向を-X方向または-X側と表記する。Y軸の矢印が向く方向を+Y方向または+Y側、+Y方向とは反対方向を-Y方向または-Y側と表記する。Z軸の矢印が向く方向を+Z方向または+Z側、+Z方向とは反対方向を-Z方向または-Z側と表記する。本明細書では、検出対象である流体は、+Z方向に流れるものとする。
【0014】
本明細書では、流体の物性値を検出する流体物性値センサを物性値センサの一例として、実施形態を説明する。但し、物性値センサは、流体物性値センサに限らず、様々な対象の物性値を検出する用途に適用できる。また、本明細書および特許請求の範囲において「方向に沿う」とは、2つの軸または方向が±10度以下の差異で平行であることを意味する。また、+Y側を「上」、-Y側を「下」と称する。但し、これらの方向表現は、実施形態の方向を限定するものではない。流体物性値センサおよびフローセンサの使用時における向きは任意である。
【0015】
[実施形態]
<フローセンサ100の全体構成例>
図1~3を参照して、実施形態に係るフローセンサ100の構成について説明する。図1は、フローセンサ100の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1におけるII-II線の模式的断面図である。図3は、フローセンサ100における副流路32を模式的に示す下面図である。
【0016】
図1~3に示すように、フローセンサ100は、流体物性値センサ1と、流量検出部2と、を有する。フローセンサ100は、空気等の流体の流量を検出するものである。またフローセンサ100は、流体物性値センサ1により検出される物性値に関する情報に基づいて、流量検出部2で検出される流量検出値を補正することより、流量検出値における流体物性依存性を低減することができる。特に本実施形態では、流量検出値の流体物性依存性を簡単に低減できる。ここで、流体の物性値とは、流体の組成に関する情報を含む値をいう。流体の物性値には、流体の熱伝導率、熱拡散率等が挙げられる。
【0017】
図1~2に示すように、流体物性値センサ1および流量検出部2は、フローセンサ100の筐体3の内部に配置される。筐体3は、樹脂等の材料を含んで構成された略直方体の部材である。但し、筐体3の形状は、略直方体に限らず、フローセンサ100の用途に応じて適宜変更できる。筐体3は、主流路31と副流路32とを含む。副流路32は、主流路31から分岐される流路である。
【0018】
検出対象である流体(以下、単に流体という)は、フローセンサ100の外部から主流路31の入口開口311を通ってフローセンサ100の内部に入る。該流体は、主流路31を主流方向30に流れた後、出口開口312を通ってフローセンサ100の外部に排出される。また、図2~3に示すように、主流路31を流れる流体の一部は、供給口321を通って副流路32に入り、副流路32を流れ方向323に流れた後、排出口322を通って副流路32から排出される。副流路32から排出された流体は、主流路31に合流する。
【0019】
図2に示すように、流体物性値センサ1および流量検出部2は、基板4の下面(-Y側の面)に実装される。基板4の上面(+Y側の面)が副流路32の上側の内壁面に固定されることで、流体物性値センサ1および流量検出部2は、筐体3の内部に配置される。図3に示すように、副流路32では、供給口321から排出口322までの間における流路の幅が広くなっている。流体物性値センサ1および流量検出部2は、副流路32における幅が広い部分を流れる流体を検出することができる。
【0020】
<流体物性値センサ1の構成例>
図4~6を参照して、流体物性値センサ1の構成について説明する。図4は、流体物性値センサ1の構成の一例を模式的に示す上面図である。図4は、図3における領域IVを拡大して示している。図5は、図4におけるV-V線の模式的断面図である。図6は、図4におけるVI-VI線の模式的断面図である。
【0021】
図4~6に示すように、流体物性値センサ1は、第1ヒータ11と、複数の温度センサ12と、第1メンブレン13と、第1支持部材14と、を有する。
【0022】
第1ヒータ11は、流れ方向323に沿う方向(ここではZ方向)を長手とする。第1ヒータ11は、例えば通電により発熱する発熱抵抗体である。
【0023】
本実施形態では、複数の温度センサ12は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向(ここではX方向)において、第1ヒータ11に対して異なる位置に配置される。温度センサ12は、サーミスタ、リニア抵抗器、白金測温抵抗体、熱電対(サーモカップル)、熱電推(サーモパイル)等のいずれか1つを含む。なお、複数の温度センサ12は、同じ種類を選択する方が特性上は好ましい。但し、同じ種類でなくても検出は可能であるため、必ずしも同じ種類のものでなくてよい。
【0024】
第1メンブレン13は、第1ヒータ11および複数の温度センサ12を載置するメンブレンの一例である。なお、第1ヒータ11および複数の温度センサ12は、それぞれの全部ではなく少なくとも一部が第1メンブレン13上に載置されればよい。第1メンブレン13は、第1支持部材14の第1開口141を塞ぐように設けられた第1薄膜構造体15のうち、第1開口141上の領域に対応する。第1薄膜構造体15は、例えば複数の絶縁膜が積層されることにより形成される。第1薄膜構造体15の厚みは0.5~5.0μm程度である。
【0025】
第1支持部材14は、第1メンブレン13を支持する支持部材の一例である。第1支持部材14は、上面視において、略矩形の第1開口141を含み、外形形状が略矩形である枠体である。第1支持部材14は、例えばシリコンを含んで構成される。第1支持部材14は、上面に第1薄膜構造体15が固定されることにより、第1薄膜構造体15の一部である第1メンブレン13を支持する。
【0026】
本実施形態では、複数の温度センサ12は、第1温度センサ12-1と、第2温度センサ12-2と、を含む。第1温度センサ12-1は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向に第1ヒータ11から第1距離L1を離隔して配置されている。ここでは、第1温度センサ12-1は、+X方向に離隔配置されている。第2温度センサ12-2は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向に第1ヒータ11から第2距離L2を離隔して配置されている。ここでは、第2温度センサ12-2は、+X方向に離隔配置されている。例えば、第1距離L1は、X方向における第1ヒータ11と第1温度センサ12-1の中心間距離である。また第2距離L2は、X方向における第1ヒータ11と第2温度センサ12-2の中心間距離である。
【0027】
また、本実施形態では、Z方向において、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2のそれぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に位置する。図4に示す例では、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2のそれぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に所定距離Yf離隔している。
【0028】
<流量検出部2の構成例>
図7を参照して、流量検出部2の構成について説明する。図7は、流量検出部2の構成の一例を模式的に示す上面図である。
【0029】
図7に示すように、流量検出部2は、第2ヒータ21と、第3温度センサ22と、第4温度センサ23と、を有する。
【0030】
第2ヒータ21は、流れ方向323と直交する方向(ここではX方向)を長手とする。第2ヒータ21は、例えば通電により発熱する発熱抵抗体である。
【0031】
第3温度センサ22は、流れ方向323における第2ヒータ21の上流に配置される。第4温度センサ23は、流れ方向323における第2ヒータ21の下流に配置される。第3温度センサ22および第4温度センサ23のそれぞれは、サーミスタ、リニア抵抗器、白金測温抵抗体、熱電対(サーモカップル)、熱電推(サーモパイル)等のいずれか1つを含む。なお、第3温度センサ22および第4温度センサ23は、同じ種類のものを選択する方が特性上は好ましい。但し、同じ種類でなくても検出は可能であるため、必ずしも同じ種類のものでなくてよい。
【0032】
第2ヒータ21、第3温度センサ22および第4温度センサ23は、第2メンブレン24上に載置される。なお、第2ヒータ21、第3温度センサ22および第4温度センサ23は、それぞれの全部ではなく少なくとも一部が第2メンブレン24上に載置されればよい。第2メンブレン24は、第2支持部材25の第2開口251を塞ぐように設けられた第2薄膜構造体26のうち、第2開口251上の領域に対応する。第2薄膜構造体26は、例えば複数の絶縁膜が積層されることで形成される。第2薄膜構造体26の厚みは0.5~5.0μm程度である。
【0033】
第2支持部材25は、第2メンブレン24を支持する。第2支持部材25は、上面視において、略矩形の第2開口251を含み、外形形状が略矩形である枠体である。第2支持部材25は、例えばシリコンを含んで構成される。第2支持部材25は、上面に第2薄膜構造体26が固定されることにより、第2薄膜構造体26の一部である第2メンブレン24を支持する。
【0034】
<フローセンサ100のハードウェア構成例>
図8を参照して、フローセンサ100の電気的なハードウェア構成の一例について説明する。図8は、フローセンサ100のハードウェア構成の一例を示す図である。図8に示すように、フローセンサ100は、電流源Ipと、電流源Is1と、電流源Is2と、電流源Iuと、電流源Ifと、電流源idと、Amp(Amplifier)101と、を含む。またフローセンサ100は、ADC(Analog to Digital Converter)102と、MUX(Multiplexer)103と、MCU(Micro Controller Unit)104と、を含む。
【0035】
図8において、VDDは電源、GNDはグラウンドを示している。電流源Ipは第1ヒータ11の駆動用電流源である。抵抗体Rpは、第1ヒータ11に含まれる発熱抵抗体である。電流源Is1は、第1温度センサ12-1の駆動用電流源である。抵抗体RT1は、第1温度センサ12-1に含まれる測温抵抗体である。電流源Is2は、第2温度センサ12-2の駆動用電流源である。抵抗体RT2は、第2温度センサ12-2に含まれる測温抵抗体である。
【0036】
電流源Ifは、第2ヒータ21の駆動用電流源である。抵抗体Rfは、第2ヒータ21に含まれる発熱抵抗体である。電流源Iuは、第3温度センサ22の駆動用電流源である。抵抗体Ruは、第3温度センサ22に含まれる測温抵抗体である。電流源Idは、第4温度センサ23の駆動用電流源である。抵抗体Rdは、第4温度センサ23に含まれる測温抵抗体である。
【0037】
信号T1Vは、第1温度センサ12-1から出力される温度に関する信号である。信号T2Vは、第2温度センサ12-2から出力される温度に関する信号である。信号TUVは、第3温度センサ22から出力される温度に関する信号である。信号TDVは、第4温度センサ23から出力される温度に関する信号である。
【0038】
Amp101は、信号T1Vと信号T2Vの差電圧、または信号TUVと信号TDVの差電圧をA倍に増幅する増幅用差動アンプである。ADC102は、Amp101から入力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号にアナログデジタル変換して出力するアナログデジタル変換器である。MUX103は、選択信号SELに応じて、信号T1V、信号T2V、信号TUVおよび信号TDVに基づく信号を選択出力するマルチプレクサである。
【0039】
MCU104は、ADC102およびMUX103のそれぞれから入力される信号に基づき、演算処理を実行するマイクロコントローラである。MCU104は、複数の温度センサ12それぞれによる検出値から得られる流体の物性値に関する情報と、流量検出部による検出値と、に基づいて、流体の流量に関する情報である流量情報S2を取得して出力する第2出力部に対応する。第1温度センサ12-1による検出値は、信号T1Vに基づいて得られる。第2温度センサ12-2による検出値は、信号T2Vに基づいて得られる。流量検出部による検出値は、信号TUVと信号TDVに基づいて得られる。
【0040】
フローセンサ100は、MUX103により選択した信号T1Vと信号T2Vの差電圧信号をAmp101により増幅した後、ADC102によりアナログデジタル変換した物性信号DpをMCU104に入力する。MCU104は、物性信号Dpに基づいて、流体の物性値に関する情報である物性値情報S1を演算により取得する。
【0041】
また、フローセンサ100は、MUX103により選択した信号TUVと信号TDVの差電圧信号をAmp101により増幅した後、ADC102によりアナログデジタル変換した流量信号DfをMCU104に入力する。MCU104は、この流量信号Dfと、物性信号Dpに基づいて取得した物性値情報S1と、に基づいて得られる流量情報S2を出力する。例えば、MCU104は、物性値情報S1を用いて流量信号Dfを補正することにより、流体物性値依存性を低減した流量情報S2を取得し、出力することができる。
【0042】
<検出方法および作用効果>
図9~14を参照して、流体物性値センサ1およびフローセンサ100による検出方法および作用効果について説明する。
【0043】
(検出方法)
図9は、流れ方向323の下流から視た温度分布と、フローセンサ100により検出される温度の一例を説明する図である。図10は、流れ方向323と直交する側方から視た温度分布と、フローセンサ100により検出される温度の一例を説明する図である。
【0044】
図4に示した第1ヒータ11に通電すると、第1ヒータ11が発熱するとともに、第1ヒータ11周辺の第1メンブレン13が加熱される。この結果、流れ方向323の下流から第1ヒータ11近傍を視ると、図9に示すような温度分布が得られる。また、流れ方向323と直交する側方から第1ヒータ11近傍を視ると、図10に示すような温度分布が得られる。
【0045】
図9において、横軸はX方向おける位置を表し、縦軸は温度を表している。横軸における「0」は、X方向における第1ヒータ11の中心位置を示している。図10において、横軸はZ方向おける位置を表し、縦軸は温度を表している。横軸における「0」は、Z方向における第1ヒータ11の中心位置を示している。
【0046】
図9に示すように、第1温度センサ12-1は、温度T1に関する信号T1Vを出力する。第2温度センサ12-2は、温度T2に関する信号T2Vを出力する。図8に示したMCU104は、信号T1Vと信号T2Vとの差電圧信号に基づく物性信号Dpを入力し、物性値情報S1を演算により取得する。物性値情報S1は、温度T1と温度T2の温度差分値DTにほぼ比例した値を含む。また物性値情報S1は、流体の熱伝導率の逆数、または熱拡散率にほぼ比例した値を含む。
【0047】
(温度検出値の流速依存性の低減)
図11は、温度検出値の流速依存性について説明する図である。図11において、温度T1は、第1温度センサ12-1により検出された温度を示している。温度T2は、第2温度センサ12-2により検出された温度を示している。第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2それぞれの第1ヒータ11に対する距離に応じて、温度T1と温度T2は異なっている。
【0048】
図11に示すように、温度T1および温度T2は、流体の流速に応じて変化する。この流体の流速に応じた変化は、温度T1および温度T2でほぼ同じ傾向になる。このため、温度T1と温度T2を差分演算すると、流体の流速に応じた変化は取り除かれ、図12に示すように、流体の流速によらずほぼ一定の温度差分値DTが得られる。フローセンサ100は、温度差分値DTから、温度差分値DTにほぼ比例する物性値情報S1を得ることができる。
【0049】
(物性値情報の流速依存性の低減)
図13は、温度差分値DTから得られた、物性値が異なる流体の物性値情報S1の一例を示す図である。図13において、実線のグラフは流体F1の物性値情報S1を表している。破線のグラフは流体F2の物性値情報S1を表している。点線のグラフは流体F3の物性値情報S1を表している。温度差分値DTを用いることで、流体F1~F3のいずれにおいても、流速によらずほぼ一定の物性値情報S1が得られる。
【0050】
図14は、物性値情報S1と物性値1/Gとの関係の一例を示す図である。「●」のプロットは流体F1、「■」のプロットは流体F2、「▲」のプロットは流体F3をそれぞれ表している。なお、Gは熱伝導率を表す。図14に示すように、物性値情報S1と物性値1/Gはほぼ比例関係にある。本実施形態では、物性値情報S1の流速依存性を低減することで、物性値情報S1に基づき、流体の物性値を高精度に検出することができる。
【0051】
(流量情報の流体物性依存性の低減)
図15は、流体物性の影響が補正されていない流量と流量情報との関係の一例を示す図である。図16は、本実施形態に係る流体物性の影響を補正後の流量と流量情報との関係の一例を示す図である。図15~16において、横軸は流速を示し、縦軸は流量情報S2を示している。また、実線のグラフは流体F1の流量情報S2、破線のグラフは流体F2の流量情報S2、点線のグラフは流体F3の流量情報S2をそれぞれ示している。
【0052】
流量と流量情報S2の関係は、流体F1~F3の種類によらずほぼ同じ関係になる。しかしながら、図15に示すように、流体F1~F3の物性値の相違に応じて、流体F1~F3ごとで流量と流量情報S2の関係が異なる場合がある。換言すると、流量情報S2は流体物性依存性を含む場合がある。
【0053】
図16に示す例では、フローセンサ100は、流体物性値センサ1により流体物性の影響を補正している。この結果、流体F1~F3における流量と流量情報S2の関係は、いずれもほぼ同じになっている。このように、本実施形態では、流量検出値の流体物性依存性を低減し、流体の流量を高精度に検出することができる。
【0054】
また、本実施形態では、流量検出のために流体が流れる流路と、流体の物性値検出のために流体を流れる流路を分けず、同じ流路を流れる流体に対し、流量検出と流体の物性検出を行う。このため、簡単な構成により、流量検出値の流体物性依存性を低減することができる。また本実施形態では、ルックアップテーブルを用いて流体の物性検出値の流速依存性を補正する等の複雑な処理を行うことなく、温度検出値の差分値を用いた簡単な処理により、流量検出値の流体物性依存性を低減することができる。以上より、本実施形態では、流量検出値の流体物性依存性を簡単に低減可能な流体物性値センサ1、フローセンサ100、流体物性値検出方法および流体検出方法を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1ヒータ11の長手方向において、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2のそれぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に位置する。図10に示したように、流れ方向323における第1ヒータ11の中心よりも上流と比較して、流れ方向323における第1ヒータ11の中心よりも下流は、温度分布が平坦でかつ平坦な分布が長い距離にわたっている。温度分布が平坦な位置で温度を検出することで、第1温度センサ12-1と第2温度センサ12-2それぞれによる温度検出値Tを安定化させ、温度差分値DTを安定化させることができる。この結果、本実施形態では、流体の物性値情報S1の検出精度を高くでき、フローセンサ100の流量検出精度を高くすることができる。
【0056】
<流体物性値センサ1のハードウェア構成例>
本実施形態では、流体物性値センサ1による検出値を外部装置に出力することもできる。図17は、流体物性値センサ1による検出値を外部装置に出力するためのハードウェア構成の一例を示す図である。なお、上述した図8に示したフローセンサ100と同じ構成部は適宜重複した説明を省略する。図17に示すように、流体物性値センサ1は、Amp16と、ADC17と、MCU18と、を含む。
【0057】
Amp16は、信号T1Vと信号T2Vの差電圧をA倍に増幅する増幅用差動アンプである。ADC17は、Amp16から入力されるアナログ電圧信号をデジタル電圧信号にアナログデジタル変換して出力するアナログデジタル変換器である。
【0058】
MCU18は、ADC17から入力される信号に基づき、演算処理を実行するマイクロコントローラである。MCU18は、信号T1Vと信号T2Vとに基づいて得られる物性値情報S1を出力する第1出力部に対応する。物性値情報S1は、流体の物性値に関する情報である。
【0059】
流体物性値センサ1は、信号T1Vと信号T2Vの差電圧信号をAmp16により増幅した後、ADC17によりアナログデジタル変換した物性信号DpをMCU18に入力する。MCU18は、この物性信号Dpに基づいて、物性値情報S1を演算により取得して出力する。このように、流体物性値センサ1は、流体物性値センサ1による検出値を外部装置に出力することができる。
【0060】
また、本実施形態では、MCU18は、信号T1Vおよび信号T2VそれぞれをAmp16により増幅し、ADC17によりアナログデジタル変換したデジタル電圧信号に重み係数を乗じた値に基づいて得られる物性値情報S1を出力してもよい。より詳しくは、MCU18は、信号T1Vに基づくデジタル電圧信号に重み係数W1を乗じた値と、信号T2Vに基づくデジタル電圧信号に重み係数W2を乗じた値の差分値から物性値情報S1を取得して出力してもよい。信号T1Vおよび信号T2VそれぞれがAmp16により増幅され、ADC17によりアナログデジタル変換されたデジタル電圧信号は、複数の温度センサによる検出値に対応する。このようにすることで、例えば複数の温度センサによる検出値ごとで物性値情報S1に対する寄与率が異なる場合にも、寄与率の差を補正し、正確な物性値情報S1を取得して出力できる。
【0061】
<変形例>
実施形態に係る流体物性値センサおよびフローセンサは、様々な変形が可能である。以下、変形例について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の名称、符号については、同一もしくは同質の部材又は構成部を示しており、詳細説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の実施形態および変形例においても同様とする。
【0062】
(第1変形例)
図18は、第1変形例に係る流体物性値センサ1aを模式的に示す上面図である。本変形例では、流体の流れ方向323において、複数の温度センサ12は、第1ヒータ11の中心とほぼ等しい位置に配置されている点が、上述した実施形態と主に異なる。換言すると、流体の流れ方向323において、複数の温度センサ12は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に配置されていない点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0063】
図18に示すように、流体物性値センサ1aでは、Z方向において、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2それぞれの中心は、第1ヒータ11の中心とほぼ等しい位置になるように配置されている。このような配置においても、流体物性値センサ1aは、流体物性値センサ1とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0064】
(第2変形例)
図19は、第2変形例に係る流体物性値センサ1bを模式的に示す上面図である。本変形例では、流体の流れ方向323において、複数の温度センサ12それぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の上流に離隔して配置されている点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0065】
図19に示すように、流体物性値センサ1bでは、Z方向において、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2それぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の上流に所定距離Yf離隔して配置されている。このような配置においても、流体物性値センサ1bは、流体物性値センサ1とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0066】
(第3変形例)
図20は、第3変形例に係る流体物性値センサ1cを模式的に示す上面図である。本変形例では、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向において、第1ヒータ11に対して異なる距離を離隔して配置された4つの温度センサ12を有する点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0067】
図20に示すように、流体物性値センサ1cは、4つの温度センサ12を有する。4つの温度センサ12は、第1温度センサ12-1と、第2温度センサ12-2と、第5温度センサ12-3と、第6温度センサ12-4と、を含む。
【0068】
第5温度センサ12-3は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向に第1ヒータ11から第1距離L1を離隔して配置されている。ここでは、第5温度センサ12-3は、-X方向に第1ヒータ11から第1距離L1を離隔して配置されている。第6温度センサ12-4は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向に第1ヒータ11から第2距離L2を離隔して配置されている。ここでは、第6温度センサ12-4は、-X方向に第1ヒータ11から第2距離L2を離隔して配置されている。例えば、第1距離L1は、X方向における第1ヒータ11と第5温度センサ12-3の中心間距離である。また第2距離L2は、X方向における第1ヒータ11と第6温度センサ12-4の中心間距離である。
【0069】
流体の流れ方向323において、第5温度センサ12-3および第6温度センサ12-4のそれぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に位置する。図20に示す例では、第5温度センサ12-3および第6温度センサ12-4のそれぞれの中心は、第1ヒータ11の中心から流れ方向323の下流に所定距離Yf離隔している。
【0070】
第1温度センサ12-1による検出値をT1、第2温度センサ12-2による検出値をT2、第5温度センサ12-3による検出値をT3、第6温度センサ12-4による検出値をT4とする。図8に示したMCU104または図17に示したMCU18は、以下の式を用いて温度差分値DTを算出する。
DT=(T1+T3)-(T2+T4)
これにより、温度差分値DTにおける信号強度は約2倍となる。温度差分値DTを用いることで、本変形例では、物性値情報S1および流量S2のSN(Signal to Noise)比を向上させることができる。
【0071】
(第4変形例)
図21は、第4変形例に係る流体物性値センサ1dを模式的に示す上面図である。本変形例では、流体の流れ方向323において、第1ヒータ11、複数の温度センサ12および第1メンブレン13それぞれの中心は、第1支持部材14の中心よりも下流に位置する点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0072】
図21において、第1メンブレン13は、第1ヒータ11、第1温度センサ12-1および第2温度センサ12-2を載置している。第1支持部材14は、第1メンブレン13を支持している。流体の流れ方向323において、第1ヒータ11、第1温度センサ12-1、第2温度センサ12-2および第1メンブレン13それぞれの中心は軸M1上に位置している。また流体の流れ方向323において、第1支持部材14の中心は、軸C1上に位置している。流体の流れ方向323において、軸M1は、軸C1よりも下流に位置する。例えば軸M1は、軸C1よりも距離Ys下流に位置する。
【0073】
図22は、流体物性値センサ1dの作用を説明する図である。図22は、+X側の側方から視た流体物性値センサ1dを示している。流れ方向323に流れる流体では、流体物性値センサ1dにおける第1支持部材14の端部14aに流体が当たり、流体の流れが乱れることで、流速が変動する場合がある。
【0074】
図22における速度境界層324は、流速が変化する様子を模式的に表したものである。速度境界層324によって表したように、端部14a近傍では、流体物性値センサ1dの上方を流れる流体の流速は変化している。流れ方向323に端部14aから遠ざかるにつれて、流体の流速は安定し、やがてほぼ均一な流速になる。流れ方向323において、端部14aからより下流側で流速が安定する。従って、第1ヒータ11、複数の温度センサ12および第1メンブレン13を、それぞれの中心が第1支持部材14の中心よりもできる限り下流に位置するように配置することで、流体物性値センサ1dは、流体の流速依存性を抑えた状態で流体物性値を検出できる。これにより、本変形例では、流体物性値センサ1dによる検出精度を向上させることができる。
【0075】
(第5変形例)
図23は、第5変形例に係る流体物性値センサ1eを模式的に示す上面図である。本変形例では、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向において、第1ヒータ11に対して異なる距離を離隔して配置された3つの温度センサ12を有する点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0076】
図23に示すように、流体物性値センサ1eは、第7温度センサ12-5を有する。第7温度センサ12-5は、第1ヒータ11の長手方向と直交する方向において、第1ヒータ11に対して第3距離L3離隔して配置されている。例えば、第3距離L3は、X方向における第1ヒータ11と第7温度センサ12-5の中心間距離である。
【0077】
図24は、図23の配置において、流れ方向の下流から視た温度分布と検出温度例を示す図である。図24の見方は、上述した図9と同じである。
【0078】
図23に示した第1温度センサ12-1は、温度T1に関する信号T1Vを出力する。第2温度センサ12-2は、温度T2に関する信号T2Vを出力する。第7温度センサ12-5は、温度T3に関する信号T3Vを出力する。
【0079】
図8に示したMCU104または図17に示したMCU18は、温度T1と温度T2の温度差分値DT1と温度T2と温度T3の温度差分値DT2に基づき、流体の物性値情報S1を取得できる。本変形例では、3つの温度センサ12による検出値を用いることで、流速の影響をほとんど受けないため、流体の物性値を高精度に検出することができる。
【0080】
(第6変形例)
図25は、第6変形例に係るフローセンサ100fを模式的に示す上面図である。本変形例では、流体物性値センサ1および流量検出部2は、同じ支持部材により支持される点が、上述した実施形態と主に異なる。また、本変形例では、流体物性値センサ1fにおける第1メンブレン13の面積は、流量検出部2fにおける第2メンブレン24の面積よりも小さい点が、上述した実施形態と主に異なる。
【0081】
図25に示すように、フローセンサ100fは、流体物性値センサ1fと、流量検出部2fと、第3支持部材50と、を有する。流体物性値センサ1fは、流体の流れ方向323における流量検出部2fの下流に配置される。流量検出部2fは、流体の流れ方向323において、第2ヒータ21の中心が第3支持部材50の中心軸C2上に位置するように配置される。
【0082】
本実施形態では、第3支持部材50は、流体物性値センサ1fと流量検出部2fとを支持する。第3支持部材50は、流体物性値センサ1fおよび流量検出部2fが支持される「同じ支持部材」に対応する。第3支持部材50は、上面視において、略矩形の第1開口141と、略矩形の第2開口251と、を含む。第3支持部材50は、例えばシリコンを含んで構成される。第3支持部材50は、上面に薄膜構造体51が固定されることにより、それぞれが薄膜構造体51の一部である第1メンブレン13および第2メンブレン24を支持する。第3支持部材50は、第1メンブレン13することにより流体物性値センサ1fを支持する。また第3支持部材50は、第2メンブレン24を支持することにより流量検出部2fを支持する。
【0083】
本実施形態では、第1メンブレン13の面積は、第2メンブレン24の面積よりも小さい。第2メンブレン24は、面積が大きいほど流量検出のためのSN比が高くなり、検出精度が向上する。一方、第1メンブレン13は、面積が小さいほど流体物性値検出における流速依存性を低減でき、検出精度が向上する。従って、本実施形態では、第1メンブレン13の面積を第2メンブレン24の面積よりも小さくすることで、第1メンブレン13の面積と第2メンブレン24の面積が同じ場合、または第1メンブレン13の面積が第2メンブレン24の面積よりも大きい場合と比較して、流量および流体物性値それぞれの検出精度を高くすることができる。
【0084】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0085】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、それぞれが前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有する、物性値センサである。
<2> 前記複数の温度センサは、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第1距離を離隔して配置された第1温度センサと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第2距離を離隔して配置された第2温度センサと、を含む、前記<1>に記載の物性値センサである。
<3> 前記長手方向において、前記複数の温度センサそれぞれの中心は、前記第1ヒータの中心から前記流体の流れ方向の下流に位置する、前記<1>または前記<2>に記載の物性値センサである。
<4> 前記第1ヒータおよび前記複数の温度センサを載置するメンブレンと、前記メンブレンを支持する支持部材と、をさらに有し、前記流体の流れ方向において、前記第1ヒータ、前記複数の温度センサおよび前記メンブレンそれぞれの中心は、前記支持部材の中心よりも下流に位置する、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の物性値センサである。
<5> 前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する第1出力部を有する、前記<1>から前記<4>のいずれか1つに記載の物性値センサである。
<6>前記第1出力部は、前記複数の温度センサによる検出値のそれぞれに重み係数を乗じた値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する、前記<5>に記載の物性値センサである。
<7> 前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の物性値センサと、前記流体の流量を検出する流量検出部と、を有する、フローセンサである。
<8> 前記流量検出部は、前記流体の流れ方向と直交する方向を長手とする第2ヒータと、前記流体の流れ方向における前記第2ヒータの上流に配置される第3温度センサと、前記流体の流れ方向における前記第2ヒータの下流に配置される第4温度センサと、を有する、前記<7>に記載のフローセンサである。
<9> 前記物性値センサおよび前記流量検出部は、同じ支持部材により支持される、前記<7>または前記<8>に記載のフローセンサである。
<10> 前記物性値センサは、前記第1ヒータと、前記複数の温度センサと、を載置する第1メンブレンを含み、前記流量検出部は、前記第2ヒータと、前記第3温度センサと、前記第4温度センサと、を載置する第2メンブレンを含み、前記第1メンブレンの面積は、前記第2メンブレンの面積よりも小さい、前記<8>に記載のフローセンサである。
<11> 前記複数の温度センサそれぞれによる検出値から得られる前記流体の物性値に関する情報と、前記流量検出部による検出値と、に基づいて、前記流体の流量に関する情報を取得して出力する第2出力部を有する、前記<7>から前記<10>のいずれか1つに記載のフローセンサである。
<12> 流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有する物性値センサによる物性値検出方法であって、前記物性値センサが、前記複数の温度センサは、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第1距離を離隔して配置された第1温度センサと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向に前記第1ヒータから第2距離を離隔して配置された第2温度センサと、を含み、第1出力部により、前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力する、物性値検出方法である。
<13> 物性値センサと、流体の流量を検出する流量検出部と、を有するフローセンサによる流体検出方法であって、前記物性値センサは、流体の流れ方向に沿う方向を長手とする第1ヒータと、前記第1ヒータの長手方向と直交する方向において、前記第1ヒータに対して異なる位置に配置された複数の温度センサと、を有し、前記フローセンサが、第1出力部により、前記複数の温度センサそれぞれによる検出値に基づいて得られる前記流体の物性値に関する情報を出力し、第2出力部により、前記第1出力部から出力される前記流体の物性値に関する情報と、前記流量検出部による検出値と、に基づいて前記流体の流量に関する情報を出力する、流体検出方法である。
【符号の説明】
【0086】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f・・・流体物性値センサ、11・・・第1ヒータ、12・・・温度センサ、12-1・・・第1温度センサ、12-2・・・第2温度センサ、12-3・・・第5温度センサ、12-4・・・第6温度センサ、13・・・第1メンブレン、14・・・第1支持部材、14a・・・端部、141・・・第1開口、15・・・第1薄膜構造体、16・・・Amp、17・・・ADC、18・・・MCU、2・・・流量検出部、21・・・第2ヒータ、22・・・第3温度センサ、23・・・第4温度センサ、24・・・第2メンブレン、25・・・第2支持部材、251・・・第2開口、26・・・第2薄膜構造体、3・・・筐体、30・・・主流方向、31・・・主流路、311・・・入口開口、312・・・出口開口、32・・・副流路、321・・・供給口、322・・・排出口、323・・・流れ方向、324・・・速度境界層、4・・・基板、50・・・第3支持部材、100、100f・・・フローセンサ、101・・・Amp、102・・・ADC、103・・・MUX、104・・・MCU、C1・・・軸、C2・・・中心軸、DT、DT1、DT2・・・温度差分値、F1~F3・・・流体、L1・・・第1距離、L2・・・第2距離、L3・・・第3距離、M1・・・軸、S1・・・物性値情報、S2・・・流量情報、T1~T4・・・温度、Yf・・・所定距離、Ys・・・距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25