(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014038
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】栽培トレイ、及び植物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240125BHJP
A01G 31/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116586
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 政樹
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314NA14
2B314NC07
2B314NC24
2B314NC31
2B314ND03
2B314ND06
2B314ND15
2B314ND16
2B314ND30
2B314ND40
2B314PB02
2B314PC02
2B314PC09
2B314PC12
2B314PC16
2B314PC24
2B314PC34
2B314PC35
2B314PD07
(57)【要約】
【課題】培地を用いた養液栽培用の栽培トレイ、及び植物の栽培方法を提供する。
【解決手段】栽培トレイ1は、植物の苗を保持して養液栽培するものであり、トレイ本体2と、苗保持部材3と、内パネル5と、積層構造物8を備える。積層構造物8は、トレイ本体2と、苗保持部材3及び内パネル5との間にある。積層構造物8は、不織布等からなる第一シート材と、スポンジ等からなる第一培地と、スポンジ等からなる第二培地と、不織布等からなる第二シート材とがこの順番で積層された構造を有する。第一シート材が養液を吸収し、第一培地に養液を供給する。苗保持部材3で植物の苗を保持し、積層構造物8の第一培地と第二培地との間で、植物の根を平面状に伸長させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、
トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、
前記積層構造物は、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された構造を有し、
前記第一シート材は、養液を吸収して前記養液を前記第一培地に供給可能であり、
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイ。
【請求項2】
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給されることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項3】
前記トレイ本体は、前記液体貯留部に隣接した位置に、余剰の養液を排出する液体排出孔を有することを特徴とする請求項2に記載の栽培トレイ。
【請求項4】
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項5】
前記トレイ本体は、並列した複数の溝からなる溝部を有し、
前記溝部に前記第一シート材が接触するように、前記積層構造物が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項6】
前記トレイ本体の底面には、同一直線上に位置する少なくとも2個のガイドローラが設けられており、
前記ガイドローラによる案内で、所定の走行路に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項7】
前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、
前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項8】
前記苗保持部材は、苗を挿入する開口と、苗の茎部を支持する凹部とを有することを特徴とする請求項7に記載の栽培トレイ。
【請求項9】
前記苗保持部材は、第一板部と、前記第一板部に対して略直角に設けられた第二板部を有する断面L字状であり、
前記第一板部に前記開口が設けられ、前記第二板部に前記凹部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の栽培トレイ。
【請求項10】
前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されていることを特徴とする請求項7に記載の栽培トレイ。
【請求項11】
前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、
前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触していることを特徴とする請求項10に記載の栽培トレイ。
【請求項12】
トレイ本体には通風孔が設けられており、
前記通風孔は、前記内パネルに対向する位置にあることを特徴とする請求項11に記載の栽培トレイ。
【請求項13】
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給され、
前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、
前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられており、
前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されており、
前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、
前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触していることを特徴とする請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項14】
植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、
トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、
前記積層構造物は、第一培地と第二培地とが積層された構造を有し、
前記第一培地に養液を供給可能であり、
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイ。
【請求項15】
培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された積層構造物を提供する工程、
前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項16】
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする請求項15に記載の植物の栽培方法。
【請求項17】
栽培トレイを用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
請求項1乃至13のいずれかに記載の栽培トレイを提供する工程、
前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項18】
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液を供給し、さらに前記第一シート材から前記養液を前記第一培地に供給することを特徴とする請求項17に記載の植物の栽培方法。
【請求項19】
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする請求項17に記載の植物の栽培方法。
【請求項20】
培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を提供する工程、
養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項21】
栽培トレイを用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
請求項14に記載の栽培トレイを提供する工程、
養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培トレイ、及び植物の栽培方法に関する。本発明は、培地を用いた植物の養液栽培に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
植物工場による植物の養液栽培が行われている。例えば、土壌の代わりに固形培地を用いる固形培地耕や、培地を用いない水耕による養液栽培が、植物工場で行われている。
【0003】
養液栽培用の栽培トレイとして、例えば特許文献1には、水耕栽培用の栽培トレイが開示されている。この栽培トレイは、培養液を溜める貯留槽部と、複数の開口を有する植物保持具を備え、前記開口に植物の苗を保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、培地を用いた養液栽培用の栽培トレイとしては、水耕栽培用とは異なった構成のものが求められる。本発明は、新たな構成を有する、培地を用いた養液栽培用の栽培トレイ、及び植物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、前記積層構造物は、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された構造を有し、前記第一シート材は、養液を吸収して前記養液を前記第一培地に供給可能であり、前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイである。
【0007】
ここでいう培地とは、土壌以外の固形培地を指す。
本態様の栽培トレイは積層構造物を備えており、当該積層構造物は、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された構造を有する。そして、第一シート材が養液を吸収して当該養液を第一培地に供給可能であり、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させるよう構成されている。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【0008】
好ましくは、前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給される。
【0009】
好ましくは、前記トレイ本体は、前記液体貯留部に隣接した位置に、余剰の養液を排出する液体排出孔を有する。
【0010】
好ましくは、前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されている。
【0011】
好ましくは、前記トレイ本体は、並列した複数の溝からなる溝部を有し、前記溝部に前記第一シート材が接触するように、前記積層構造物が設けられている。
【0012】
好ましくは、前記トレイ本体の底面には、同一直線上に位置する少なくとも2個のガイドローラが設けられており、前記ガイドローラによる案内で、所定の走行路に沿って移動可能である。
【0013】
好ましくは、前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられている。
【0014】
好ましくは、前記苗保持部材は、苗を挿入する開口と、苗の茎部を支持する凹部とを有する。
【0015】
好ましくは、前記苗保持部材は、第一板部と、前記第一板部に対して略直角に設けられた第二板部を有する断面L字状であり、前記第一板部に前記開口が設けられ、前記第二板部に前記凹部が設けられている。
【0016】
好ましくは、前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されている。
【0017】
好ましくは、前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触している。
【0018】
好ましくは、トレイ本体には通風孔が設けられており、前記通風孔は、前記内パネルに対向する位置にある。
【0019】
好ましくは、前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給され、前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられており、前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されており、前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触している。
【0020】
本発明の別の態様は、植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、前記積層構造物は、第一培地と第二培地とが積層された構造を有し、前記第一培地に養液を供給可能であり、前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイである。
【0021】
本態様の栽培トレイは積層構造物を備えており、当該積層構造物は、第一培地と第二培地とが積層された構造を有する。そして、第一培地に養液を供給可能であり、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させるよう構成されている。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【0022】
本発明の別の態様は、培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された積層構造物を提供する工程、前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法である。
【0023】
本態様の植物の栽培方法では、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された積層構造物を用い、第一シート材に養液を吸収させて前記養液を前記第一培地に供給し、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させる。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【0024】
好ましくは、前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されている。
【0025】
本発明の別の態様は、栽培トレイを用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、第一シート材を備える上記栽培トレイを提供する工程、前記第一シート材に養液を吸収させて前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法である。
【0026】
本態様の植物の栽培方法では、第一シート材を備える上記栽培トレイを用い、第一シート材に養液を吸収させて前記養液を第一培地に供給し、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させる。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【0027】
好ましくは、前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液を供給し、さらに前記第一シート材から前記養液を前記第一培地に供給する。
【0028】
好ましくは、前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されている。
【0029】
本発明の別の態様は、培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を提供する工程、養液を前記第一培地に供給する工程、及び前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法である。
【0030】
本態様の植物の栽培方法では、第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を用い、養液を前記第一培地に供給し、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させる。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【0031】
本発明の別の態様は、栽培トレイを用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を備える上記栽培トレイを提供する工程、養液を前記第一培地に供給する工程、及び前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法である。
【0032】
本態様の植物の栽培方法では、第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を備える上記栽培トレイを用い、養液を第一培地に供給し、第一培地と第二培地との間で植物の根を平面状に伸長させる。本態様によれば、植物の根を広範囲に伸長させることができるので、植物を効率的に養液栽培することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、培地を用いた植物の養液栽培を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る栽培トレイの正面図である。
【
図9】ガイドローラとキャリアローラを取り付けた状態のトレイ本体の底面図である。
【
図10】(a)は平面側からみた苗保持部材の斜視図、(b)は底面側から見た苗保持部材の斜視図、(c)は(a)のA-A断面図である。
【
図11】(a)は平面側からみた内パネルの斜視図、(b)は底面側から見た内パネルの斜視図である。
【
図12】(a)は積層構造物の斜視図、(b)は積層構造物の断面斜視図である。
【
図13】(a)は第一シート材の平面図であり、液体貯留部との位置関係も表している。(b)は第一培地の平面図、(c)は第二培地の平面図、(d)は第二シート材の平面図である。
【
図14】第一シート材と液体貯留部の一部を模式的に表した断面図であり、片部が液体貯留部に接触している様子を示す。
【
図15】
図1の栽培トレイを用いて植物を栽培する方法を説明する説明図である。
【
図16】本発明の第二実施形態で用いる苗を示す説明図であり、(a)はポット内で育苗した状態、(b)はポットから苗を取り出した状態を示す。
【
図17】第二実施形態で用いる積層構造物を示し、(a)は積層構造物の斜視図、(b)は積層構造物の断面斜視図である。
【
図18】
図17に示す積層構造物を構成する第一シート材、第一培地、第二培地、及び第二シート材を示し、(a)は第一シート材の平面図であり、液体貯留部との位置関係も表している。(b)は第一培地の平面図、(c)は第二培地の平面図、(d)は第二シート材の平面図である。
【
図19】第二実施形態に係る栽培トレイを用いて植物を栽培する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、発明の理解を容易にするために、各図面において、各部分・部材の大きさや厚みについては一部誇張して描かれて、実際の大きさや比率等とは必ずしも一致しないことがある。また、以下の説明において、上下、左右、前後(手前と奥)の各方向は、
図1の姿勢を基準とする。さらに、
図1における左右方向を第一方向、前後方向を第二方向、上下方向を第三方向と称することがある。
【0036】
図1~
図4に示す本発明の第一実施形態に係る栽培トレイ1は、トレイ本体2、一対の苗保持部材3,3、及び内パネル5を有する。トレイ本体2、苗保持部材3,3、及び内パネル5は、いずれも発泡スチロール等の軽量の樹脂で作製されている。また栽培トレイ1は、トレイ本体2と、苗保持部材3,3及び内パネル5との間に、植物の根を支持する培地として機能する積層構造物8を備えている。さらに、栽培トレイ1は、その底面側にガイドローラ6とキャリアローラ7を備えている。
【0037】
栽培トレイ1を概観すると、
図2に示すように、平面視において、栽培トレイ1の外郭形状は長方形である。さらに、栽培トレイ1を平面視すると、当該長方形の対角線の交点を中心として点対称であり、換言すれば、左右対称かつ上下対称である。
また栽培トレイ1は、主に植物の栽培に関わる栽培領域Xと、主に栽培物の収穫に関わる収穫領域Yに大別される。栽培領域Xは、苗保持部材3,3、内パネル5、及び積層構造物8が設置された領域であり、平面視で中央部分に位置する。一方、収穫領域Yは、主にトレイ本体2の平面部26(後述)で構成される領域であり、平面視で栽培領域Xの両側に位置する。
【0038】
図5~9に示すように、トレイ本体2は、上方に向かって開放した容器である。
図6に示すように、トレイ本体2もまた、平面視において外郭形状が長方形である。さらに、トレイ本体2を平面視すると、当該長方形の対角線の交点を中心として点対称であり、換言すれば、左右対称かつ上下対称である。
トレイ本体2の底面(裏面)についても同様であり、
図7に示すように、ガイドローラ6とキャリアローラ7を装着していない状態でトレイ本体2を底面視すると、外郭の長方形の対角線の交点を中心として点対称であり、換言すれば、左右対称かつ上下対称である。
トレイ本体2の左右方向(第一方向)の長さ(幅、前記長方形の長辺)は、例えば700~900mm程度、前後方向(第二方向)の長さ(奥行、前記長方形の短辺)は、例えば500~700mm程度、上下方向(第三方向)の長さ(高さ)は、例えば90~110mm程度である。
トレイ本体2は、発泡スチロール等の樹脂で一体的に成形されている。
【0039】
トレイ本体2の内側には、通風孔10、液体貯留部11、液体排出孔12、及び溝部15が設けられている。
【0040】
トレイ本体2の内側の中央部分には、前後方向(第二方向)に延びる隆起部25がある。そして、隆起部25上に通風孔10が設けられている。通風孔10は、平面視が長穴状の貫通孔である。本実施形態では5個の通風孔10が設けられ、これらが直列に配されている。隆起部25の天面は水平面である。
通風孔10から冷風又は温風を送り込むことにより、栽培環境の温度を調節することができる。
【0041】
通風孔10の開口部分の左右方向(短手方向、第一方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の幅の5~7%程度である。通風孔10の開口部分の前後方向(長手方向、第二方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の奥行の10~15%程度である。
【0042】
隆起部25に隣接して、2個の液体貯留部11が設けられている。液体貯留部11は、平面視が細長い長方形の窪みで形成されており、トレイ本体2の前後方向(第二方向)に延びている。2個の液体貯留部11は、平面視で、隆起部25を挟んで左右対称に配置されている。
図8に示すように、液体貯留部11は、底壁16と、隆起部25の側面からなる第一側壁17と、第一側壁17に繋がる2つの第二側壁18で囲まれている。一方、第一側壁17に対向する側には明確な側壁はなく、底壁16から徐々に上昇する斜面を成し、後述する溝部15に接している。これにより、液体貯留部11は、液体を貯留できる窪みを成している。
第一側壁17の高さは、第二側壁18の高さよりも大きい。そのため、第一側壁17と第二側壁18との間には段差がある。
底壁16は、平面視が長方形の平坦な面からなる。
【0043】
液体貯留部11の左右方向(短手方向、第一方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の幅の6~8%程度である。液体貯留部11の前後方向(長手方向、第二方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の奥行の70~80%程度である。
【0044】
液体貯留部11の第二側壁18側には小さい水平面があり、当該水平面上に液体排出孔12が設けられている。液体排出孔12は、各液体貯留部11の第二側壁18側に1個ずつ、計4個設けられている。
液体排出孔12は、非対称なすり鉢状の貫通孔である。すなわち、平面視すると、液体排出孔12の上側の開口は長穴状で、下側の開口は略正円状であり、これらの開口の重心は左右方向に並ぶが一致しない。平面視すると、上側の開口の長穴における左右方向中央側(隆起部25側)の円弧と、下側の開口における正円の円弧が略一致する。そのため、液体排出孔12の中央側(隆起部25側)の内壁は略垂直で、一方、外側(溝部15(後述)側)の内壁は傾斜面となっている。
【0045】
液体貯留部11に隣接して、溝部15が設けられている。溝部15は、各液体貯留部11の第一側壁17に対向する側に1個ずつ、計2個設けられている。2個の溝部15は、平面視で、隆起部25と液体貯留部11を挟んで左右対称に配置されている。
溝部15は、複数の溝20を有する。溝20は、平面視が細長い長方形で左右方向(第一方向)に延びており、並列して等間隔に配置されている。溝20の断面形状は凹字状である。
【0046】
図8に示すように、溝20は、長溝20aと短溝20bを含んでいる。長溝20aは、溝部15の前後方向(第二方向)の中央部分にあり、溝部15の大半を占めている。一方、短溝20bは、溝部15の前後方向の両端部分にある。
長溝20aの中央側(液体貯留部11側)の端部である第一端部21aは、液体貯留部11に繋がり、液体貯留部11に向かって開放している。一方、他端である第二端部22aは、やや傾斜した側壁(傾斜面)を成している。
短溝20bの中央側(液体貯留部11側)の端部である第一端部21bも、液体貯留部11に繋がり、液体貯留部11に向かって開放している。一方、他端である第二端部22bは底面から直立した側壁を成し、後述する載置台部27の側面と繋がっている。
溝部15は全体的に液体貯留部11に向かって下方に傾斜しており、溝20(長溝20a、短溝20b)の底面も液体貯留部11に向かって下方に傾斜している。
溝20は、潅水された養液を液体貯留部11に導く作用を有するとともに、通気用の空間として機能する。
【0047】
長溝20aの左右方向(長手方向、第一方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の幅の16~18%程度である。短溝20bの左右方向(長手方向、第一方向)の長さは、例えば、長溝20aの左右方向(長手方向、第一方向)の40~60%程度である。長溝20a、短溝20bの前後方向(第二方向)の長さ(溝の幅)は、例えば、トレイ本体2の奥行の1~2%程度である。
【0048】
図5、
図6に示すように溝部15に隣接して平面部26がある。平面部26は、平面視で、溝部15,15の左右方向(第一方向)外側に1個ずつ、計2個設けられている。
平面部26は、前後方向(第二方向)の中央部分を占める第一平面26aと、前後方向(第二方向)の両端部分を占める2個の第二平面26bからなる。そして、第二平面26bが第一平面26aに向かって下方に傾斜しており、第一平面26aが溝部15に向かって下方に傾斜している。
平面部26の左右方向(第一方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の幅の17~20%程度である。
平面部26は、収穫領域Y(
図2)と重なる。
【0049】
平面部26と短溝20bとの間には、載置台部27がある。載置台部27は、後述する苗保持部材3が載置される部分である。
載置台部27は、平面視が長方形で、全体形状が直方体状かつブロック状である。
載置台部27の天面28は水平面である。
載置台部27の内部には、後述するガイドローラ6とキャリアローラ7を収容する空間(第一ローラ収容部63、第二ローラ収容部64)がある。
図8に示すように、載置台部27の左右方向中央側(隆起部25側)の側面は、短溝20bに接している。載置台部27の左右方向外側の側面は、平面部26(第二平面26b)に接している。載置台部27の前後方向中央側(長溝20a側)の側面は、長溝20aに接している。載置台部27の前後方向外側は、トレイ本体2の内壁と一体化している。
【0050】
載置台部27の左右方向(第一方向)の長さは、例えば、溝部15の左右方向の長さの40~60%程度である。載置台部27の前後方向(第二方向)の長さは、例えば、トレイ本体2の奥行の18~22%程度である。
【0051】
図8に示すように、トレイ本体2の内壁の一部であって載置台部27から隆起部25に至る部分には、載置側壁部30がある。載置側壁部30は、トレイ本体2の内壁から少し飛び出た壁である。載置側壁部30の天面は、水平面からなる水平天面31と、傾斜面からなる傾斜天面32からなる。水平天面31は載置台部27側に位置し、載置台部27の天面と繋がって共通の水平面を構成している。一方、傾斜天面32は隆起部25側に位置し、隆起部25に向かって下方に傾斜している。
傾斜天面32の下方側端面の高さは隆起部25の高さより大きい。そのため、傾斜天面32と隆起部25との間には段差がある。
平面視すると、左右方向(第一方向)において、傾斜天面32と液体貯留部11の端部の位置が略一致している。
【0052】
トレイ本体2の内壁の厚みについて、栽培領域Xに相当する部分の厚みは、収穫領域Yに相当する部分の厚みよりも小さい。そのため、栽培領域Xと収穫領域Yとの境界には、段差33が形成されている。
トレイ本体2の各部分の高さについて、通風孔10の開口部分は、高さ方向において、第一側壁17の上面と同じ位置にある。また、液体排出孔12の上側の開口部分は、高さ方向において、第二側壁18の上面と同じ位置にある。
【0053】
図7、
図9に示すように、トレイ本体2の底面(裏面)には、第一ガイド溝60と第二ガイド溝61が設けられている。第一ガイド溝60と第二ガイド溝61は、前後方向(第二方向)に延びる溝であり、底面視で左右対称に配されている。
第一ガイド溝60の前後方向における両端部には、ガイドローラ6が取り付けられる第一ローラ収容部63が2個設けられている。第二ガイド溝61の前後方向における両端部には、キャリアローラ7が取り付けられる第二ローラ収容部64が2個設けられている。第一ローラ収容部63と第二ローラ収容部64はいずれも直方体状の有底穴であり、載置台部27の真裏の位置にある。
【0054】
図9に示すように、ガイドローラ6は、金属製のローラホルダー66に軸支された状態で、第一ローラ収容部63に収容されている。同様に、キャリアローラ7は、金属製のローラホルダー67に軸支された状態で、第二ローラ収容部64に収容されている。ガイドローラ6はローラの中央にR溝を有する。一方、キャリアローラ7の表面はフラットである。
【0055】
トレイ本体2の載置台部27及び傾斜天面32の上に、一対の苗保持部材(第一苗保持部材、第二苗保持部材)3,3が設置されている。
図10(a)~(c)に示すように、苗保持部材3は、正面視及び断面形状がL字状の長尺部材である。
苗保持部材3は、水平姿勢を取る第一板部35と、第一板部35から直立する第二板部36を有する。第一板部35と第二板部36の交差部分には、L字の角に相当する角部49がある。
【0056】
第一板部35には、苗を挿入するための開口37が設けられている。開口37は等間隔で4個設けられている。開口37は平面視が馬蹄形であり、左右方向中央側の一端が開放している。左右方向外側の円弧部分の内壁は、中央側に向かって下方に傾斜している。また、第一板部35の上面は、前後方向の中央部分を占める第一平面35aと、前後方向の両端部分を占める2個の第二平面35bからなる。そして、第二平面35bが第一平面35aに向かって下方に傾斜しており、第一平面35aが中央側に向かって下方に傾斜している。なお、
図10(c)では開口37の周縁の細かい表面形状については省略して描いている。
【0057】
第二板部36には、植物の茎部を支持するための凹部38が設けられている。凹部38は、直立した第二板部36の天面に、等間隔で6個設けられている。
【0058】
苗保持部材3の底面39には、突条部40がある。突条部40は第二板部36の真下にあり、第二板部36から下方に延びている。突条部40の長手方向の長さは、第二板部36の長手方向の長さよりも短く、突条部40は前後方向中央寄りに位置する。そのため、突条部40と底面39との間には段差48がある。
底面39の突条部40の両端には、小平面部41がある。小平面部41は、段差48から角部49に至る、前後方向と左右方向に広がる平面である。
【0059】
一対の苗保持部材3,3の間に、内パネル5が設けられている。
図11(a)、
図11(b)に示すように、内パネル5は全体形状が長尺状かつ板状の部材である。
図11(a)に示すように、内パネル5の天面42の断面形状は、緩やかな山形となっている。そのため、天面42は、左右方向の中央部分から両端側に向かって、僅かに下方に傾斜している。
天面42の前後方向の両端部には、天面42から垂直に立つ立壁部43がある。立壁部43は、天面42に左右方向全体にわたって形成されており、内パネル5の前後方向の端面の一部を構成している。立壁部43の天面も、天面42と同様に、左右方向の中央部分から両端側に向かって、僅かに下方に傾斜している。
図11(b)に示すように、内パネル5の底面45は、天面42に類似した傾斜構造を有している。底面45の断面形状は緩やかな円弧状である。
底面45の前後方向の両端部には、底面45から垂直に延びる凸部46がある。凸部46は、底面45の中央部分に形成されており、内パネル5の前後方向の端面の一部を構成している。
【0060】
積層構造物8は、トレイ本体2の隆起部25、一対の液体貯留部11,11、及び一対の溝部15,15と、内パネル5及び苗保持部材3との間に設けられている。
図12(a)、
図12(b)、
図13(a)~(d)に示すように、積層構造物8は、第一シート材50、第一培地51、第二培地52、及び第二シート材53がこの順番に積層された構造を有している。
【0061】
平面視における外郭形状について、第一シート材50と第一培地51の外郭形状が略一致し、第二培地52と第二シート材53の外郭形状が略一致している。
第一シート材50と第一培地51の外郭形状は、トレイ本体2を平面視したとき(
図6)の隆起部25、一対の液体貯留部11,11、及び一対の溝部15,15に相当する部分の形状であり、長方形の角の部分が四角形状に欠けたような形状である。一方、第二培地52と第二シート材53の外郭形状はいずれも長方形状である。そして、平面視において、第二培地52と第二シート材53は、第一シート材50と第一培地51の中央部分と重なる。
また積層構造物8は、平面視で栽培領域X(
図2)と重なる。
なお、
図12(a)、
図12(b)では積層構造物8の積層構造の理解を容易にするため、厚みを誇張して描いている。
【0062】
図13(a)に示す第一シート材50は積層構造物8の最下段に位置する。第一シート材50は吸水性を有する材料、例えば不織布からなる。
第一シート材50には、切り込み55が設けられている。切り込み55は、前後方向に延びる長辺55aと、左右方向に延びる2つの短辺55bからなり、長辺55aと短辺55bによって縦長コ字状をなしている。切り込み55は平面視で左右対称に2個設けられており、長辺55a同士が対向している。
切り込み55で囲まれた部分は下側に折り曲げられて、長辺55aと短辺55bの三辺で囲まれた片部56が形成されている。そして、
図14に示すように、片部56はトレイ本体2の液体貯留部11に接触している。なお、
図14では、トレイ本体2における液体貯留部11以外の部分(例えば、隆起部25)を省略して描いている。また、
図12(b)では切り込み55を省略して描いている。
【0063】
図13(b)に示す第一培地51は第一シート材50の上に位置している。第一培地51は、養液栽培における固形培地として機能する部分であり、ポリウレタン等のスポンジからなる。
【0064】
図13(c)に示す第二培地52は第一培地51の上に位置している。第二培地52は第一培地51と同様に、養液栽培における固形培地として機能する部分であり、ポリウレタン等のスポンジからなる。
第二培地52の外郭形状は長方形状であり、第一培地51の中央部分に置かれている。そして、第一培地51の上面と第二培地52の端面との間に段差57が形成され、かつ段差57に沿って直線状の隙間58が形成されている。隙間58は、第一培地51と第二培地52との境界でもある。
【0065】
図13(d)に示す第二シート材53は第二培地52の上に位置している。第二シート材53は、例えば不織布からなる。
【0066】
第一培地51と第二培地52がスポンジで構成されているので、積層構造物8は積層方向において弾力性を有する。また、積層構造物8は柔軟性を有し、少なくとも積層方向において変形可能である。
積層構造物8単体の高さは、トレイ本体2の溝部15から苗保持部材3の底面39までの距離よりも少し大きい。そのため、栽培トレイ1に組み込まれた状態の積層構造物8は、苗保持部材3と内パネル5によって上から軽く押圧されている。そして、積層構造物8はトレイ本体2の内面形状、特に溝部15と隆起部25の形状に沿って変形している。
【0067】
第一シート材50は、液体貯留部11に貯留されている養液を片部56から吸い上げて、第一培地51と第二培地52に供給する機能を有する。第一培地51と第二培地52は、養液を保持する機能を有する。第二シート材53は、第一培地51と第二培地52の乾燥を防止する機能を有する。
【0068】
栽培トレイ1の組み立て構造について説明する。
図4に示すように、栽培トレイ1では、トレイ本体2の上に積層構造物8があり、積層構造物8の上に2個の苗保持部材3,3と内パネル5がある。また、2個の苗保持部材3,3の間に内パネル5がある。また、トレイ本体2の底面(裏面)に、2個のガイドローラ6と、2個のキャリアローラ7が組み込まれている。
【0069】
トレイ本体2の隆起部25、一対の液体貯留部11,11、及び一対の溝部15,15の上に、積層構造物8が設置されている。
積層構造物8の第一シート材50が、隆起部25、一対の液体貯留部11,11、及び一対の溝部15,15に面的に接触している。
第一シート材50の切り込み55で囲まれた部分は、平面視で液体貯留部11と重なる(
図13(a))。第一シート材50の片部56が、液体貯留部11に接している(
図14)。
【0070】
積層構造物8の上に、苗保持部材3と内パネル5が設置されている。
内パネル5の左右方向の両端面と、苗保持部材3,3の第一板部35の左右方向の端面とが突き合わされ、当接している。
【0071】
苗保持部材3の角部49がトレイ本体2の段差33に嵌る。さらに、トレイ本体2の載置台部27上及び載置側壁部30の水平天面31上に、苗保持部材3の小平面部41が乗る。さらに、前後方向に位置する2個の載置台部27の間に、苗保持部材3の突条部40が嵌ると共に、段差48が載置台部27に当接する。
突条部40は溝部15に届いておらず、突条部40と溝部15との間には隙間がある。当該隙間に、積層構造物8の端部、詳細には第一シート材50と第一培地51の端部が入り込んでいる。
【0072】
内パネル5の底面45が、トレイ本体2の載置側壁部30の傾斜天面32に当接する。さらに、左右方向に位置する2個の傾斜天面32の間に、内パネル5の凸部46が嵌る。
【0073】
積層構造物8の第二シート材53が、苗保持部材3の底面39及び内パネル5の底面45に接している。すなわち、積層構造物8は、トレイ本体2の隆起部25、一対の液体貯留部11,11、及び一対の溝部15,15と、苗保持部材3の底面39及び内パネル5の底面45との間に挟まれている。さらに、積層構造物8は、苗保持部材3と内パネル5によって上から押圧されている。
【0074】
トレイ本体2の底面にある2個の第一ローラ収容部63に、ガイドローラ6が取り付けられている。トレイ本体2の底面にある2個の第二ローラ収容部64に、キャリアローラ7が取り付けられている。
【0075】
栽培トレイ1の使用方法について説明する。一例として、イチゴを栽培する場合について説明する。
イチゴの苗70を苗保持部材3の開口37に挿入して保持する。ここで、本実施形態では開口37の左右方向外側の円弧部分の内壁が、中央側に向かって下方に傾斜しているから、苗70が傷つきにくい。
イチゴの根70aを、積層構造物8の隙間58から挿入し、第一培地51と第二培地52との間で挟む。また、イチゴの茎70bを、苗保持部材3の凹部38に掛けて支持する。
【0076】
この状態で養液を潅水する。例えば、栽培トレイ1をガイドレールに沿って移動させ、潅水用のゲートを通過させる。このとき、栽培トレイ1の各部が下方に傾斜しているので、養液が最終的に液体貯留部11に溜まる。例えば、トレイ本体2の溝20、第一平面26a、第二平面26b、内パネル5の天面42が傾斜しており、これらの部材上にあった養液が液体貯留部11に導かれる。なお、液体貯留部11から溢れた余剰の養液は、第二側壁18を超えて、液体排出孔12から排出される。
【0077】
液体貯留部11に溜まった養液は、第一シート材50の片部56に接触し、第一シート材50に吸い上げられる(吸収される)。第一シート材50に吸収された養液は、第一培地51、第二培地52へと移動し、イチゴの根70aに接触する。
【0078】
この状態で、人工光又は太陽光下で栽培を続ける。すると、
図15に示すように、第一培地51と第二培地52との間でイチゴの根70aが平面状に広く伸長し、イチゴが成長する。必要に応じて、通風孔10から冷風又は温風を送り込んで、栽培環境の温度を調節する。
【0079】
イチゴが成長し、収穫領域Yでイチゴの果実70cが成る。そして、イチゴの果実70cを収穫する。
【0080】
なお、本実施形態では第一ガイド溝60にガイドローラ6が装着され、第二ガイド溝61にキャリアローラ7が装着されている。すなわち、ガイドローラ6は片方のガイド溝のみに装着されている。かかる構成により、キャリアローラ7側が適度の遊びを有することとなり、栽培トレイ1をレールに沿って長距離移動させた場合に、脱輪が起こりにくくなる。
【0081】
上記した実施形態では、イチゴの苗70を苗保持部材3の開口37に直接挿入しているが、他の実施形態も可能である。一例として、培地(スポンジ培地等)を充填したポットを別に用意し、ポット内で予め育苗した苗を使用することが挙げられる(第二実施形態)。
例えば、
図16(a)に示すように、培地を充填したポット76を用いてイチゴの苗70を予め育苗する。イチゴの根がポット76内で十分に伸長した段階で、
図16(b)に示すように、ポット76からイチゴの苗70を培地ごと取り出す。このとき、根が3次元に広がって培地中を網羅しているので、根を含む培地(根と培地の複合体85)はポット76の内側形状をほぼ保っている。そして、イチゴの苗70を、ポットの形状を保った複合体85と共に、苗保持部材3の開口37に挿入する。そして、第一培地と第二培地との間で根を平面状に広く伸長させる。
【0082】
第二実施形態に対応する積層構造物78の例を
図17、
図18に示す。本実施形態の積層構造物78は、第一シート材80、第一培地81、第二培地82、及び第二シート材83がこの順番に積層された構造を有する。第一シート材80、第一培地81は、それぞれ第一シート材50、第一培地51(
図12、
図13)と同じ構成を有する。一方、第二培地82、第二シート材83は、いずれも第二培地52、第二シート材53と比較して幅が小さい。平面視すると、第二培地82と第二シート材83の幅は、内パネル5の幅と略同じか僅かに大きい。これにより、後述するように、複合体85が嵌るスペースを確保することができる。
【0083】
積層構造物78を用い、イチゴの苗70を複合体85と共に開口37に挿入して栽培すると、
図19に示すような構成となる。詳細には、まず開口37にイチゴの苗70を複合体85と共に挿入する。このとき、積層構造物78では第二培地82と第二シート材83の幅が小さいので、複合体85が嵌るスペースを確保でき、第一培地81と第二培地82との隙間58に複合体85が到達可能となる。そして、複合体85の一部を隙間58から挿入する。そして、第一培地81と第二培地82との間で根70aを平面状に伸長させる。本実施形態によれば、複合体85と共にイチゴの苗70を開口37に挿入するので、イチゴの苗70が傷付きにくい。なお本実施形態でも、開口37の円弧部分の内壁が下方に傾斜しているので、複合体85中の根が傷付きにくく、かつ複合体85がポットの形状を保持しているので挿入が容易である。
【0084】
なお、理解を容易にするために、
図15と
図19では実施形態ごとに部材のサイズ等を誇張して描いているので、両図面でサイズ等は必ずしも一致していない。
【0085】
上記した実施形態では、第一シート材50に細長い切り込み55が1個設けられているが、切り込み55の数に限定はない。例えば、短い切り込み55を複数設けてもよい。
また上記した実施形態は、第一シート材50に切り込み55を入れて設けた片部56を液体貯留部11に接触させるものであるが、切り込み55を設けずに、第一シート材50の一部を折り曲げて液体貯留部11に接触させてもよい。第一シート材80についても同様である。
【0086】
上記した実施形態では、隙間58からイチゴの根70aを挿入しているが、他の実施形態も可能である。例えば、第二シート材53の表面から第二培地52を貫通して第一培地51の表面に至る穴を設け、当該穴からイチゴの根70aを挿入してもよい。当該穴の形状としては、スリット状や円形のものが挙げられる。
【0087】
上記した実施形態では、積層構造物8が第一シート材50を有しているが、第一シート材50を省略して、第一培地51と第二培地52のみで積層構造物を構成してもよい。そして、この栽培トレイを提供する工程、養液を前記第一培地に供給する工程、及び前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含む方法で、植物を養液栽培することができる。積層構造物78についても同様であり、第一シート材80を省略して、第一培地81と第二培地82のみで積層構造物を構成してもよい。
【0088】
上記した実施形態は、必要に応じて通風孔10から冷風又は温風を送り込むものであるが、冷風又は温風に代えて冷水又は温水を送り込んでもよい。
【0089】
本発明は、培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された積層構造物を提供する工程、
前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法、を包含する。本方法は、例えば、上記した栽培トレイ1を用いて行うことができる。
【0090】
本発明の対象となる植物としては、特に限定はないが、イチゴ等の果菜類が好適である。
【0091】
本開示は、以下の項目に記載の栽培トレイ及び植物の栽培方法を含む。
【0092】
〔項目1〕
植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、
トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、
前記積層構造物は、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された構造を有し、
前記第一シート材は、養液を吸収して前記養液を前記第一培地に供給可能であり、
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイ。
【0093】
〔項目2〕
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給されることを特徴とする項目1に記載の栽培トレイ。
【0094】
〔項目3〕
前記トレイ本体は、前記液体貯留部に隣接した位置に、余剰の養液を排出する液体排出孔を有することを特徴とする項目2に記載の栽培トレイ。
【0095】
〔項目4〕
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする項目1乃至3のいずれかに記載の栽培トレイ。
【0096】
〔項目5〕
植物の苗を保持し、前記植物を養液栽培する栽培トレイであって、
トレイ本体と、前記トレイ本体上に設けられた積層構造物とを備え、
前記積層構造物は、第一培地と第二培地とが積層された構造を有し、
前記第一培地に養液を供給可能であり、
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させるものであることを特徴とする栽培トレイ。
【0097】
〔項目6〕
前記トレイ本体は、並列した複数の溝からなる溝部を有し、
前記溝部に前記第一シート材が接触するように、前記積層構造物が設けられていることを特徴とする項目1乃至5のいずれかに記載の栽培トレイ。
【0098】
〔項目7〕
前記トレイ本体の底面には、同一直線上に位置する少なくとも2個のガイドローラが設けられており、
前記ガイドローラによる案内で、所定の走行路に沿って移動可能であることを特徴とする項目1乃至6のいずれかに記載の栽培トレイ。
【0099】
〔項目8〕
前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、
前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられていることを特徴とする項目1乃至7のいずれかに記載の栽培トレイ。
【0100】
〔項目9〕
前記苗保持部材は、苗を挿入する開口と、苗の茎部を支持する凹部とを有することを特徴とする項目8に記載の栽培トレイ。
【0101】
〔項目10〕
前記苗保持部材は、第一板部と、前記第一板部に対して略直角に設けられた第二板部を有する断面L字状であり、
前記第一板部に前記開口が設けられ、前記第二板部に前記凹部が設けられていることを特徴とする項目9に記載の栽培トレイ。
【0102】
〔項目11〕
前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されていることを特徴とする項目8乃至10のいずれかに記載の栽培トレイ。
【0103】
〔項目12〕
前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、
前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触していることを特徴とする項目11に記載の栽培トレイ。
【0104】
〔項目13〕
トレイ本体には通風孔が設けられており、
前記通風孔は、前記内パネルに対向する位置にあることを特徴とする項目12に記載の栽培トレイ。
【0105】
〔項目14〕
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液が供給され、さらに前記第一シート材から前記養液が前記第一培地に供給され、
前記植物の苗を保持する苗保持部材をさらに有し、
前記トレイ本体と前記苗保持部材との間に前記積層構造物が設けられており、
前記苗保持部材は、第一苗保持部材と第二苗保持部材を含み、これらが対向して配置されており、
前記第一苗保持部材と前記第二苗保持部材との間には、内パネルが設けられており、
前記内パネルの一方の端面が前記第一苗保持部材に接触し、他方の端面が前記第二苗保持部材に接触していることを特徴とする項目1に記載の栽培トレイ。
【0106】
〔項目15〕
培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された積層構造物を提供する工程、
前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【0107】
〔項目16〕
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする項目15に記載の植物の栽培方法。
【0108】
〔項目17〕
栽培トレイを用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
項目1乃至14のいずれかに記載の栽培トレイを提供する工程、
養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【0109】
〔項目18〕
前記積層構造物として、吸水性を有する第一シート材と、第一培地と、第二培地とがこの順番で積層された構造を有するものを用い、前記第一シート材に養液を吸収させて、前記養液を前記第一培地に供給することを特徴とする項目17に記載の植物の栽培方法。
【0110】
〔項目19〕
前記トレイ本体は、養液を貯留する液体貯留部を有し、
前記液体貯留部に前記第一シート材の一部が接触しており、これにより前記液体貯留部から前記第一シート材に養液を供給し、さらに前記第一シート材から前記養液を前記第一培地に供給することを特徴とする項目18に記載の植物の栽培方法。
【0111】
〔項目20〕
前記積層構造物は、第二シート材をさらに有し、
前記第一シート材と、前記第一培地と、前記第二培地と、前記第二シート材がこの順番で積層されていることを特徴とする項目18又は19に記載の植物の栽培方法。
【0112】
〔項目21〕
培地を用いて植物を養液栽培する植物の栽培方法であって、
第一培地と第二培地とが積層された積層構造物を提供する工程、
養液を前記第一培地に供給する工程、及び
前記第一培地と前記第二培地との間で、前記植物の根を平面状に伸長させる工程、
を含むことを特徴とする植物の栽培方法。
【符号の説明】
【0113】
1 栽培トレイ
2 トレイ本体
3 苗保持部材
5 内パネル
6 ガイドローラ
7 キャリアローラ
8、78 積層構造物
10 通風孔
11 液体貯留部
12 液体排出孔
15 溝部
20 溝
20a 長溝
20b 短溝
35 第一板部
36 第二板部
37 開口
38 凹部
50、80 第一シート材
51、81 第一培地
52、82 第二培地
53、83 第二シート材
55 切り込み
56 片部
70 苗
70a 根
70b 茎
70c 果実