(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140382
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】化粧シート、化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241003BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241003BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20241003BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 Z
E04F13/07 B
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051498
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】氏居 真弓
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
【Fターム(参考)】
2E110AA26
2E110AA27
2E110AA57
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110BA04
2E110BA05
2E110BB02
2E110BB03
2E110BB04
2E110BB09
2E110BB22
2E110BB23
2E110BB32
2E110CA03
2E110CA04
2E110EA09
2E110GA03W
2E110GA03X
2E110GA04W
2E110GA04X
2E110GA05W
2E110GA13X
2E110GA32W
2E110GA32X
2E110GB01X
2E110GB01Z
2E110GB42W
2E110GB42X
2E110GB42Z
2E110GB43W
2E110GB43X
2E110GB44W
2E110GB44X
2E110GB46W
2E110GB46X
2E110GB48W
2E110GB48X
2E110GB49W
2E110GB49X
2E110GB52W
2E110GB52X
2E110GB54W
2E110GB54X
2E110GB55X
2E110GB55Z
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA30
4F100CA30A
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ65
4F100EJ65D
4F100EJ65E
4F100EJ86
4F100HB00
4F100HB00B
4F100JD04
4F100JK13
4F100JK13E
4F100JL09
4F100JN01
4F100JN01E
4F100JN26
(57)【要約】
【課題】化粧シートの変形を抑制することが可能な、化粧シートと化粧板を提供する。
【解決手段】化粧板10が、基板8と、基板8の少なくとも一方の面に積層され、且つ透湿度が5g/m
2・24hr以下である化粧シート1とを備え、化粧シート1が、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成され、且つナノサイズの添加剤としての分散材が添加された基材層2と、基材層2の一方の面に積層され、且つ絵柄が形成された絵柄模様層4と、絵柄模様層4の一方の面に積層された表面保護層5とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層と、
前記基材層の一方の面に積層され、且つ絵柄が形成された絵柄模様層と、
前記絵柄模様層の一方の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記基材層は、ナノサイズの添加剤としての分散材が添加され、
透湿度が5g/m2・24hr以下である化粧シート。
【請求項2】
前記透湿度が3g/m2・24hr以下である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において、硬度がB以上である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記基材層は、第一透明層と、前記第一透明層の一方の面に積層されたコア層と、前記コア層の一方の面に積層された第二透明層と、を備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記基材層と前記絵柄模様層との間に配置された着色層をさらに備え、
前記着色層は、透明又は半透明である請求項1に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記基材層の他方の面に積層されたプライマー層をさらに備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記基材層と前記プライマー層との間に配置された防湿層をさらに備える請求項6に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記基材層の他方の面に積層された防湿層をさらに備える請求項1に記載した化粧シート。
【請求項9】
前記基材層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される請求項1に記載した化粧シート。
【請求項10】
前記造核剤ベシクルの添加量は、前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記造核剤ベシクルが内包する前記造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である請求項9に記載した化粧シート。
【請求項11】
前記造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである請求項9に記載した化粧シート。
【請求項12】
前記造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに前記造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている請求項9に記載した化粧シート。
【請求項13】
前記第一透明層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成され、
前記第二透明層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される請求項4に記載した化粧シート。
【請求項14】
前記造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである請求項13に記載した化粧シート。
【請求項15】
前記造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに前記造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている請求項13に記載した化粧シート。
【請求項16】
前記表面保護層には、グロスコート及びマットコートのうち少なくとも一方が施されている請求項1に記載した化粧シート。
【請求項17】
前記グロスコートが施されている部分により形成された線及び前記マットコートが施されている部分により形成された線のうち少なくとも一方と、前記絵柄模様層に形成されている絵柄を形成する線とは、前記基材層、前記絵柄模様層、前記表面保護層とを積層した方向から見て少なくとも一部が互いに重なっている請求項16に記載した化粧シート。
【請求項18】
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項17のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧板。
【請求項19】
前記基板の前記化粧シートと対向する面と反対の面に積層された防湿フィルムをさらに備える請求項18に記載した化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートと化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の摩耗から絵柄を保護する化粧シートの技術として、例えば、特許文献1に開示されているように、着色したオレフィンシートに透明のオレフィンシートを貼り合わせ、化粧シートを複層構造とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術を含め、従来の構成を有する化粧シートでは、室内と室外との気温差や湿度差によって、化粧シートに変形が発生するという問題がある。
本発明は、上述した問題点を鑑み、化粧シートの変形を抑制することが可能な、化粧シートと化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基材層と、絵柄模様層と、表面保護層を備え、透湿度が5g/m2・24hr以下の化粧シートである。基材層は、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成されており、ナノサイズの添加剤としての分散材が添加された層である。絵柄模様層は、基材層の一方の面に積層され、且つ絵柄が形成された層である。表面保護層は、絵柄模様層の一方の面に積層された層である。
また、上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、基板と、基板の少なくとも一方の面に積層された化粧シートとを備える化粧板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、化粧シートの変形を抑制することが可能な、化粧シートと化粧板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態における化粧板の構成を示す断面図である。
【
図2】グロスコートが施されている部分により形成された線と、絵柄模様層に形成されている絵柄を形成する線との位置関係を表す模式図である。
【
図3】第一実施形態の変形例における化粧板の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本技術の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合が含まれる。以下に示す実施形態は、本技術の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本技術の技術的思想は、下記の実施形態に例示した装置や方法に特定するものでない。本技術の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0009】
(第一実施形態)
以下、
図1を参照して、第一実施形態における化粧シート1の構成について説明する。
化粧シート1は、例えば、室内に使用される。具体的には、建具(室内ドア、玄関収納)・造作材(見切り、廻り縁、巾木、窓枠、ドア枠)等の表面に貼り付け、家や部屋毎に、建具・造作材の柄を合わせて使用する。
また、化粧シート1は、
図1に示すように、基材層2と、着色層3と、絵柄模様層4と、表面保護層5と、防湿層6と、プライマー層7を備える。
【0010】
<基材層>
基材層2は、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成された原反層であり、化粧シート1の支持体を形成する層である。
また、基材層2は、第一透明層2aと、コア層2bと、第二透明層2cを備えており、例えば、押出し成形により製造する。なお、基材層2は、
図1において、第一透明層2aと、コア層2bと、第二透明層2cが別の層を形成するように図示しているが、実際は、第一透明層2aと、コア層2bと、第二透明層2cは連続的に形成されている。したがって、第一透明層2aとコア層2bとの界面と、コア層2bと第二透明層2cとの界面は存在しない。
第一実施形態では、第一透明層2aの厚さ:コア層2bの厚さ:第二透明層2cの厚さが、0.5:9:0.5の比率になるように、同時押出しを行い、基材層2の厚さを50[μm]とした場合について説明する。
【0011】
(第一透明層)
第一透明層2aは、透明なポリプロピレン系の熱可塑性樹脂に、ナノサイズの添加剤としての分散剤を添加して形成されている。また、第一透明層2aには、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーが添加されている。
【0012】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、又は、前述した樹脂を二種類以上用いた混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することが可能である。
【0013】
特に、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりを考慮すると、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくないため、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
また、各種物性や加工性、汎用性、経済性等を考慮すると、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂として、ポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)、又は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、又は、前述した樹脂を二種類以上用いた混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することが可能である。
【0015】
特に、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりを考慮すると、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル樹脂等の塩素(ハロゲン)を含有する熱可塑性樹脂を使用することは好ましくないため、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
また、各種物性や加工性、汎用性、経済性等を考慮すると、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂として、ポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)、又は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリオレフィン系樹脂を使用することが最も好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂として、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が95%以上の高結晶性ホモポリプロピレン樹脂を、30質量%以上100質量%以下含むポリプロピレン樹脂を使用することが好ましい。
【0016】
(ナノサイズの添加剤)
ナノサイズの添加剤とは、添加剤をナノサイズ化する手法(ナノ化処理)によってナノサイズの粒子とされた添加剤のことである。
ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形でポリプロピレン樹脂に添加されて使用される。
また、第一透明層2aを構成する樹脂中の造核剤は、造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていてもよい。第一透明層2aは、造核剤を含むため、結晶化度を向上させることが可能となり、化粧シート1の耐擦傷性(耐傷性)を向上させることが可能である。
【0017】
(造核剤の粒径)
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400[nm]以上750[nm]以下であるので、平均粒径が375[nm]以下であることが好ましい。
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることが可能である。
【0018】
この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることが可能であると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することが可能である。
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が2次凝集することで粒径が大きくなる。
一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純に添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。
このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することが可能である。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0019】
第一透明層2aは、例えば、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内で造核剤が添加された樹脂材料により形成される。
造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクルが内包する造核剤に換算した添加量である。
【0020】
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、ポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、第一透明層2aの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のためポリプロピレンの球晶成長が逆に阻害され、結果的にポリプロピレンの結晶化度が十分に向上せず、第一透明層2aの耐傷性が十分に向上しないおそれがある。
【0021】
(造核剤をナノ化する手法)
また、造核剤をナノ化する手法としては、例えば、固相法、液相法、気相法等の方法を用いることが可能である。
固相法は、添加剤に対して、主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る方法である。また、固相法としては、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等を用いることが可能である。
液相法は、添加剤や当該添加剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う方法である。また、液相法としては、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等を用いることが可能である。
気相法は、添加剤や、添加剤により形成されたガスや蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う方法である。また、気相法としては、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等を用いることが可能である。
【0022】
以下、ナノ化処理の、より具体的な方法を説明する。
固相法の具体例では、例えば、100[g]のイソプロピルアルコールと、50[g]の2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムとの混合物を、ビーズミルで60分間、30[μm]の安定化ジルコニアビーズを用いて、平均粒子径が100[nm]以上150[nm]以下の範囲内程度である、ナノサイズの造核剤粒子を得る。
【0023】
また、晶析法の具体例では、例えば、キシレン96[g]、72[g]のイソプロピルアルコールと、24[g]の水とを混合した混合溶媒に、50[g]の2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウムを溶解させた溶液を、マイクロリアクター内でエタノール等の貧溶媒と接触させることで、平均粒子径が1[nm]以上150[nm]以下の範囲内である、ナノサイズの造核剤粒子を析出させる。
また、添加剤内包ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞状のカプセルのことであり、特に、内部に液相を含むものが添加剤内包ベシクルと呼ばれている。本発明においては、液相中に添加剤が含まれている場合について説明する。
【0024】
また、添加剤内包ベシクルは、互いの外膜同士が反発し合う作用によって粒子が凝集することがなく、極めて高い分散性を有している。そして、互いの外膜同士が反発し合う作用によって、各樹脂層を構成する樹脂組成物中に対し、添加剤を均一に分散させることを可能とする。
ナノ化処理の中で、ナノサイズの添加剤を添加剤内包ベシクルとして得る手法(ベシクル化処理)としては、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等を用いることが可能である。
【0025】
以下、ベシクル化処理について説明する。
Bangham法は、フラスコ等の容器にクロロホルム又はクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解させる。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去することで、脂質を含む薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることにより、ベシクルを得る方法である。
【0026】
エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代えてフィルターを通過させることにより、ベシクルを得る方法である。
水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌することで分散させてベシクルを得る方法である。
【0027】
逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを形成し、形成したエマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。
凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、冷却・加熱を繰り返すことによりベシクルを得る方法である。
特に、単層膜の外膜を備える添加剤内包ベシクルを得るための方法として、超臨界逆相蒸発法が挙げられる。
【0028】
超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下、もしくは、圧力条件下の二酸化炭素を用いて、対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98[℃])及び臨界圧力(7.3773±0.0030[MPa])以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味する。
臨界点以上の温度条件下、もしくは、圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0029】
超臨界逆相蒸発法による具体的なベシクル化処理は、超臨界二酸化炭素と、外膜形成物質としてのリン脂質と、内包物質としての添加剤の混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成する。その後、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)が生成される。
【0030】
超臨界逆相蒸発法を用いることにより、添加剤粒子表面で分散剤が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することが可能となるので、より小径なカプセルを調製することが可能となる。
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等によって調製される。造核剤ベシクルは、特に、超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0031】
ナノカプセルを、多重膜のカプセルとしたい場合には、リン脂質、添加剤、水相の混合流体中に超臨界二酸化炭素を注入することで、容易に作製することが可能となる。
添加剤内包ベシクルを調製する際に用いるリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセルロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。また、添加剤内包ベシクルは、リン脂質の外膜を備えることにより、樹脂材料との優れた相溶性を実現することが可能である。
【0032】
また、添加剤内包ベシクルは、分散剤を含む外膜を備えていてもよい。分散剤としては、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂等が挙げられる。
高分子系の界面活性剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0033】
脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ラウリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ミリスチン酸等とリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム等が結合したものが挙げられる。
シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
チタネートカップリング剤としては、テトラキス[2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジ-i-プロポキシチタンジオソステアレート、(2-nーブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジ-n-ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン等が挙げられる。
【0035】
シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル等のオレフィンを重合又は、ポリオレフィンを熱分解したもので、それをさらに酸化又はマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸等によって変性したものが挙げられる。
樹脂としては、ポリオレフィンをマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸等によって変性したものが挙げられる。
【0036】
(造核剤ベシクルを構成する外膜)
造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば、単層膜から構成される。また、造核剤ベシクルを構成する外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。
以降の説明では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと記載する場合がある。
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
【0037】
(外膜となるその他の物質)
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、ノニオン系界面活性剤とコレステロール類、又は、トリアシルグリセロールの混合物等の分散剤が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することが可能である。
【0038】
コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することが可能である。
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成してもよい。
【0039】
第一実施形態では、造核剤ベシクルを、リン脂質により形成された外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームとすることが好ましい。これは、外膜をリン脂質から構成することによって、化粧シート1の主成分である樹脂材料とベシクルとの相溶性を、良好なものとすることが可能となるためである。なお、「主成分」とは、例えば、基材層を構成する樹脂材料の50質量%以上を占める樹脂材料を示す。
【0040】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば、特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー、タルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るために、非溶融型で良好な透明性が期待される、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルク等も用いることが可能である。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0041】
(コア層2b)
コア層2bは、第一透明層2aの一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、例えば、透明なポリプロピレン系の熱可塑性樹脂に、耐候剤をブレンドしたものを用いて形成されている。
コア層2bには、必要に応じて、例えば、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等、各種の添加剤から選択した一種類以上の添加材を添加してもよい。
【0042】
(第二透明層)
第二透明層2cは、コア層2bの一方の面(
図1では、上側の面)に積層されており、透明なポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成されている。
また、第二透明層2cには、ナノサイズの添加剤としての分散剤に加え、無機フィラーを添加する。
以上により、第一実施形態では、基材層2の構成を、第一透明層2aと、コア層2bと、第二透明層2cの順に積層した、二種類且つ三層で形成された構成とした場合について説明する。
【0043】
(基材層の特徴)
化粧シート1は、基材層2が樹脂材料と造核剤とを含有する点に特徴を有する。
また、化粧シート1は、基材層2を形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させる点に特徴を有している。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料の中、すなわち、基材層2の中への造核剤の分散性が飛躍的に向上するという効果を奏する。
一方、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート1の状態における物の構造や特性にて直接特定することが、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は,次の通りである。
【0044】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート1の前駆体である積層体の状態においても、基材層に高分散されている。
しかしながら、化粧シート1の作製工程において、通常、積層体は、圧縮処理や硬化処理等の種々の処理が施されることで、造核剤を内包するベシクルの外膜の破砕や、化学反応が生じる場合がある。
このため、化粧シート1の処理工程によって、完成後の化粧シート1における造核剤の外膜の破砕や、化学反応の発生状態にばらつきが生じ、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。
【0045】
そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また、破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか、造核剤とは別に添加された材料なのか、判定が困難な場合も想定される。
このように、本開示は、従来に比して、化粧シート1に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート1の状態において、その構造や特性を、測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0046】
以上により、基材層2は、ナノサイズの添加剤としての分散材が添加されている。
また、基材層2は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される。
さらに、造核剤ベシクルの添加量は、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクルが内包する造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である。
【0047】
また、第一透明層2aと第二透明層2cは、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される。
また、造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである。
さらに、造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに前記造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている。
【0048】
<着色層>
着色層3は、基材層の一方の面(
図1では、上側の面)に積層され、公知の印刷方法(例えば、グラビア印刷法)を用いて形成されている。
また、着色層3は、透明又は半透明に形成する。
【0049】
<絵柄模様層>
絵柄模様層4は、着色層3を間に挟んで基材層の一方の面(
図1では、上側の面)に積層され、化粧シート1に意匠性を付与するための絵柄が形成された層である。すなわち、着色層3は、基材層2と表面保護層5との間に配置された層である。
絵柄模様層4は、例えば、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷して形成されている。なお、絵柄模様層4を形成する印刷方法としては、グラビア印刷法の他に、例えば、オフセット印刷方法、凸版印刷方法、フレキソ印刷方法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等、各種の印刷方法を用いることが可能である。
【0050】
絵柄模様層4に形成する絵柄の種類は、使用目的や使用者の嗜好等により任意であり、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、又はそれらの組み合わせ等を用いることが可能である。また、模様の種類は、例えば、全面ベタ印刷等であってもよい。
絵柄模様層4の形成に用いる印刷インキとしては、ウレタン系樹脂以外にも、例えば、有機又は無機の染料や、顔料等の着色剤等を用いることが可能である。
【0051】
絵柄模様層4の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m2]以上15[g/m2]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m2]以上10[g/m2]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m2]以上9[g/m2]以下の範囲内である。
また、絵柄模様層4は、例えば、化粧シート1が貼りつけられる下地の色・模様を隠蔽するために、ベタ塗りされた着色基材層と、意匠性を付与するための絵柄を付加するための絵柄層とを有する構成としてもよい。
【0052】
絵柄模様層4の厚さは、1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは0.5[μm]以上5[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは0.7[μm]以上3[μm]以下の範囲内に設定する。これは、絵柄模様層4の厚さが1[μm]以上である場合、印刷を明瞭にすることが可能であることに起因する。また、絵柄模様層4の厚さが10[μm]以下である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、且つ製造コストを抑制することが可能であることに起因する。
なお、絵柄模様層4には、各種機能を付与するために、例えば、体質顔料、可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、硬化剤、硬化促進剤及び硬化遅延剤等の機能性添加剤を添加してもよい。
【0053】
<表面保護層>
表面保護層5(トップコート)は、絵柄模様層4の一方の面(
図1では、上側の面)に積層され、公知の印刷方法を用いて形成されている。また、表面保護層5は、例えば、化粧シート1に、耐磨耗性や耐水性等の表面物性を付与する目的で設ける。
また、表面保護層5は、下塗り層5aと、上塗り層5bを備える。
【0054】
下塗り層5aは、絵柄模様層4の一方の面に形成されており、アクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィックス株式会社製:アクリルウレタン樹脂)を塗布して、例えば、厚さが6[μm]となるように形成する。
上塗り層5bは、下塗り層5aの一方の面(
図1では、上側の面)に積層され、下塗り層5aと同じ樹脂であるとともに、艶を低くした樹脂を塗布して形成されている。すなわち、上塗り層5bは、下塗り層5aよりも艶が低い。
また、上塗り層5bは、絵柄模様層4に形成された絵柄と同調した絵柄を印刷して形成されている。
【0055】
具体的には、表面保護層5が備える上塗り層5bには、グロスコートと、マットコートが施されている。
そして、上塗り層5bのうち、グロスコートが施されている部分により形成された線及びマットコートが施されている部分により形成された線のうち少なくとも一方と、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線とは、基材層2、絵柄模様層4、表面保護層5とを積層した方向から見て、少なくとも一部が互いに重なっている。
なお、グロスコートが施されている部分により形成された線や、マットコートが施されている部分により形成された線や、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線は、例えば、絵柄が木目柄である場合には、導管を形成する線である。
【0056】
すなわち、一例として
図2に示すように、グロスコートが施されている部分により形成された線GLと、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線KLとが、基材層2、絵柄模様層4、表面保護層5とを積層した方向から見て、少なくとも一部が互いに重なっている。これにより、表面保護層5は、絵柄模様層4に形成された絵柄と同調した絵柄を印刷して形成されている。
【0057】
なお、図示を省略するが、マットコートが施されている部分により形成された線と、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線KLとが、基材層2、絵柄模様層4、表面保護層5とを積層した方向から見て、少なくとも一部が互いに重なっている構成としてもよい。また、図示を省略するが、グロスコートが施されている部分により形成された線GLと、マットコートが施されている部分により形成された線と、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線KLとが、基材層2、絵柄模様層4、表面保護層5とを積層した方向から見て、少なくとも一部が互いに重なっている構成としてもよい。
【0058】
さらに、表面保護層5には、抗ウイルス剤を添加することで、抗ウイルス処理を施している。
抗ウイルス剤としては、例えば、銀イオンを担持させた銀系無機添加剤(タイショーテクノス株式会社製:ビオサイドTB-B100)を用いることが可能である。
抗ウイルス剤は、表面保護層5が下塗り層5aと上塗り層5bを備えることから、下塗り層5a及び上塗り層5bの両方に添加してもよい。また、抗ウイルス剤は、例えば、表面保護層5の表面側に位置する上塗り層5bだけに添付してもよい。
なお、表面保護層5に抗ウイルス剤を添加したが、これに限定するものではなく、表面保護層5の表面側、すなわち、少なくとも上塗り層5bの表面に、抗ウイルス剤を塗布してもよい。
【0059】
表面保護層5の乾燥後の重量は、好ましくは0.1[g/m2]以上15[g/m2]以下の範囲内、より好ましくは3[g/m2]以上10[g/m2]以下の範囲内、さらに好ましくは6[g/m2]以上9[g/m2]以下の範囲内である。
表面保護層5の厚さは、好ましくは0.1[μm]以上10[μm]以下の範囲内、より好ましくは3[μm]以上10[μm]以下の範囲内、さらに好ましくは6[μm]以上9[μm]以下の範囲内である。
【0060】
また、表面保護層5には、必要に応じて、耐候剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤及び艶調整剤等の各種添加剤等を含有させてもよい。
さらに、表面保護層5には、必要に応じて、抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加剤等を含有させてもよい。
【0061】
<防湿層>
防湿層6は、基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)に形成されており、例えば、図示を省略するが、アンカーコート層と、蒸着層と、オーバーコート層を積層して形成されている。なお、
図1では、防湿層6を、単層で図示する。
アンカーコート層は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステルの中から選択した少なくとも一つの材料を有する第一ポリオレフィンを含む層である。
蒸着層は、アンカーコート層とオーバーコート層との間に配置されており、金属又は無機化合物を蒸着した層である。
オーバーコート層は、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステルの中から選択した少なくとも一つの材料を有する第二ポリオレフィンを含む層である。
【0062】
<プライマー層>
プライマー層7は、基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)に形成されており、プライマー(下塗り剤)を基材層2の他方の面に塗布することで形成されている。
プライマー層7の機能には、主として接着性改善があり、さらに、表面処理後の表面安定化、金属表面の防食、粘着性の付与、接着剤の劣化防止等も含まれる。
【0063】
プライマー層7は、例えば、グラビア印刷法により固形分量が1[g/m2]となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成している。
プライマー層7には、例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することが可能である。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による二液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、プライマー層7の材料に、シリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加してプライマー層7を形成すると、投錨効果による接着力の向上に有効である。
【0064】
(化粧シートの硬度)
化粧シート1は、JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において、硬度がB以上、すなわち、B又はBよりも硬くなるように形成される。したがって、化粧シート1を構成する各層は、化粧シート1の硬度が、鉛筆硬度試験の硬度がB以上となるように形成される。
化粧シート1の硬度を調整する方法としては、例えば、基材層2の厚さを調整する方法や、基材層2に添加するナノサイズの添加剤としての分散剤の添加の有無による方法等がある。
なお、化粧シート1の硬度は、化粧シート1全体の硬度である。また、鉛筆硬度試験は、表面保護層5に対する試験である。
【0065】
(化粧シートの透湿度)
化粧シート1の透湿度は、5[g/m2・24hr]以下である。
第一実施形態では、一例として、化粧板の反り等を抑制する観点から、化粧シート1の透湿度を、3[g/m2・24hr]以下とした場合について説明する。
【0066】
(化粧シートの製造方法)
化粧シート1を製造する製造方法は、インラインで化粧シート1を製造する方法であり、第一工程と、第二工程と、第三工程を有する。
ここで、「インライン」は、フィルム同士をラミネートするラミネート工程が無く、通常では複数の工程となる印刷を、一つのラインで加工することが可能であることを意味する。すなわち、化粧シート1の製造方法では、印刷から表面保護層5を付与するまでの製造工程を、一工程のインラインで行うことが可能である。
【0067】
(1)第一工程
第一工程は、透明なポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成するコア層2bと、熱可塑性樹脂にナノサイズの添加剤としての分散剤を添加した第一透明層2a及び第二透明層2cとを、押出し成形により形成した基材層2を製造する工程である。
【0068】
(2)第二工程
第二工程は、第一工程で製造した基材層2の一方の面に、着色層3と、絵柄模様層4と、表面保護層5とを形成する工程である。
なお、第二工程で形成する層は、着色層3と、絵柄模様層4と、表面保護層5の三層に限定するものではなく、例えば、一層のみ、二層、四層以上としてもよい。
【0069】
(3)第三工程
第三工程は、第二工程の後、又は、第二工程に先立ち、第一工程で製造した基材層2の他方の面(
図1では、下側の面)に、プライマー層7を形成する工程である。
したがって、化粧シート1の製造方法は、第一工程、第二工程、第三工程の順番と、第一工程、第三工程、第二工程の順番との二通りの順番のうち、一方の順番で行う。
【0070】
<化粧板>
図1を参照して、化粧板10の構成を説明する。
図1に示すように、化粧板10は、例えば、板状に形成されており、化粧シート1と、基板8と、防湿フィルム9を備える。
【0071】
<基板>
基板8は、化粧シート1のうち、プライマー層7の他方の面(
図1では、下側の面)の側に配置されている。
なお、基板8の材料は、木材、鋼材、樹脂材等、種類を問わないが、例えば、不燃仕様の鋼板や、建設省告示1400号で定められた不燃材料を用いてもよい。
また、基板8は、折り曲げ加工が施されている構造、又は、三次元の構造を有している。
基板8に化粧シート1を積層する際には、必要に応じて適宜選択した接着剤を介して積層してもよく、また、接着剤等を介さずに積層してもよい。
【0072】
化粧シート1を基板8に積層して接着する方法としては、金属板を接触させて平圧プレスする方法や、円圧式の連続ラミネート方式を用いることが可能である。特に、金属製の無端ベルトを使用した連続ラミネート方式を用いると、表面の反りや波打ち等が無く、さらに、層間の密着性が良く、稠密に硬化一体化された高品質の化粧板10を、高速で連続的に製造することが可能となる。
【0073】
<防湿フィルム>
防湿フィルム9は、例えば、接着剤等を介して、基板8の化粧シート1と対向する面と反対の面(
図1では、下側の面)に積層されている。
また、防湿フィルム9は、例えば、(メタ)アクリル酸系重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体との組成物により形成されたガスバリア層を積層した、ポリプロピレン系防湿フィルムを用いて形成されている。また、例えば、防湿フィルム9は、ポリプロピレンと変性ポリプロピレン重合体を共押し出しした積層シートに、(メタ)アクリル酸系重合体とエチレン・ビニルアルコール共重合体とにより形成されたガスバリア層をコーティングして、横方向へ延伸した透明ポリプロピレンフィルムを用いて形成されている。
【0074】
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この第一実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0075】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の化粧シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層2と、基材層2の一方の面に積層され、且つ絵柄が形成された絵柄模様層4と、絵柄模様層4の一方の面に積層された表面保護層5を備える。そして、基材層2は、ナノサイズの添加剤としての分散材が添加されている。これに加え、化粧シート1の透湿度が、5[g/m2・24hr]以下である。
その結果、透湿度を5[g/m2・24hr]以下とすることで、化粧シート1の吸湿や放湿によって発生する反り等を抑制することが可能となり、化粧シート1の変形を抑制することが可能な、化粧シート1を提供することが可能となる。
【0076】
また、製造時において、他のシートとのラミネート工程を必要としないため、製造工程数を削減することが可能となり、さらに、製造工程を一工程のインラインで行うことが可能となる。
さらに、単層であるため、薄膜化が容易であり、ナノサイズの添加剤を使用することで、薄膜でも化粧シート1の硬度を向上させることが可能となり、優れた防湿性を付加することが可能となる。
【0077】
(2)透湿度が3[g/m2・24hr]以下である。
その結果、透湿度が3[g/m2・24hr]を超える場合と比較して、さらに、化粧シート1の吸湿や放湿によって発生する反り等を抑制することが可能となり、化粧シート1の変形を抑制することが可能となる。
【0078】
(3)JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において、硬度がB以上である。
その結果、JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において硬度がB以上となるように化粧シート1を形成することによって、ポリサンドシートや、防湿フィルムを用いることなく、透湿度の低い化粧シート1を得ることが可能となる。これにより、化粧シート1を木質基材に貼り付けた場合の反りや寸法変化等の発生を抑制することが可能となる。また、製造工程数の増加を伴うことなく、透湿度の低い化粧シート1を容易に得ることが可能となる。さらに、透湿度が低く、且つ単層の化粧シート1を得ることが可能となるため、透湿度を低下させるための専用機等を用いることなく、透湿度の低い化粧シート1を得ることが可能となる。また、ポリサンドシートや防湿フィルムを用いない構成とすることが可能となることで、化粧シート1のモノマテリアル化が可能となり、リサイクルを容易に行うことが可能となる。
【0079】
(4)基材層2は、第一透明層2aと、第一透明層2aの一方の面に積層されたコア層2bと、コア層2bの一方の面に積層された第二透明層2cを備える。
その結果、化粧シート1の構成を、着色層3を備えていない構成とすることが可能となる。
(5)基材層2と絵柄模様層4との間に配置された着色層3をさらに備え、着色層3は、透明又は半透明である。
その結果、化粧シート1に隠蔽性を付与することが可能となる。
(6)基材層2の他方の面に積層されたプライマー層7をさらに備える。
その結果、例えば、化粧シート1と基板8との層間密着力を向上させることが可能となる。
(7)基材層2とプライマー層7との間に配置された防湿層6をさらに備える。
その結果、化粧シート1の防湿性を向上させることが可能となる。
【0080】
(8)基材層2は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルをポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される。
その結果、化粧シート1に対し、耐傷性及び耐摩耗性を向上させることが可能となる。
これに加え、基材層2を構成する樹脂材料の結晶化度が十分に向上するため、耐傷性及び耐摩耗性を十分に有する化粧シート1を提供することが可能となる。
【0081】
(9)造核剤ベシクルの添加量は、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクルが内包する造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である。
その結果、造核剤ベシクルの添加量が、ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対し、造核剤ベシクルが内包する造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲外である構成と比較して、基材層2を構成する樹脂材料の結晶化度を向上させることが可能となる。
【0082】
(10)造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである。
その結果、基材層2の主な成分であるポリプロピレン系の熱可塑性樹脂とベシクルとの相溶性を、良好なものとすることが可能となる。
(11)造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている。
その結果、単層膜の、造核剤を内包したベシクルを容易に生成することが可能となり、より小径な、造核剤を内包したベシクル(カプセル)を調製することが可能となる。
【0083】
(12)第一透明層2aは、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルをポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される。また、第二透明層2cは、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルをポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される。
その結果、第一透明層2a及び第二透明層2cを構成する樹脂材料の結晶化度が十分に向上するため、耐傷性及び耐摩耗性を十分に有する化粧シート1を提供することが可能となる。
(13)表面保護層5には、グロスコート及びマットコートのうち少なくとも一方が施されている。
その結果、化粧シート1の意匠性を向上させることが可能となる。
【0084】
(14)グロスコートが施されている部分により形成された線及びマットコートが施されている部分により形成された線のうち少なくとも一方と、絵柄模様層4に形成されている絵柄を形成する線KLとは、基材層2、絵柄模様層4、表面保護層5とを積層した方向から見て少なくとも一部が互いに重なっている。
その結果、表面保護層5に形成された絵柄と、絵柄模様層4に形成された絵柄とを同調させることが可能となり、化粧シート1の意匠性を向上させることが可能となる。
【0085】
また、第一実施形態における化粧板10であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(15)基板8と、基板8の少なくとも一方の面に積層された化粧シート1とを備える。
その結果、化粧シート1の吸湿や放湿によって発生する反り等を抑制することが可能となり、化粧シート1の変形を抑制することが可能な、化粧板10を提供することが可能となる。
(16)基板8の化粧シート1と対向する面と反対の面に積層された防湿フィルム9をさらに備える。
その結果、化粧板10の防湿性を向上させることが可能となる。
【0086】
<第一実施形態の変形例>
(1)第一実施形態では、基材層2の構成を、第一透明層2aと、コア層2bと、第二透明層2cを備える、二種類且つ三層で形成された構成としたが、これに限定するものではなく、例えば、
図3に示すように、基材層2の構成を、一層のみの構成としてもよい。
(2)第一実施形態では、防湿層6の構成を、基材層2とプライマー層7との間に配置された構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、化粧シート1の構成を、プライマー層7を備えていない構成とし、防湿層6の構成を、基材層2の他方の面に積層された構成としてもよい。この場合であっても、化粧シート1の防湿性を向上させることが可能となる。
【実施例0087】
第一実施形態を参照しつつ、以下、実施例1から4の化粧シートと、比較例1から2の化粧シートについて説明する。
(実施例1)
基材層は、透明なポリプロピレン系の熱可塑性樹脂に、耐候剤と、ナノサイズの添加剤としての分散材を添加して、押出し成形により、厚さを70[μm]として形成した。すなわち、実施例1では、基材層の構成を、一層のみの構成とした。
着色層は、二液ウレタン系樹脂で形成した。
絵柄層は、グラビア印刷法によりウレタン系樹脂で絵柄を印刷して形成した。
【0088】
表面保護層は、まず、艶の低いアクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィックス社製:アクリルウレタン樹脂)を、厚さが6[μm]となるよう塗布して下塗り層を形成した。さらに、下塗り層に、下塗り層よりも艶の高いアクリル系二液硬化型樹脂(DICグラフィックス社製:アクリルウレタン樹脂)により、絵柄模様層に形成された絵柄と同調した絵柄を印刷して上塗り層を形成して、表面保護層を形成した。
プライマー層は、グラビア印刷法により、固形分量が1[g/m2]となるようにウレタン系樹脂を塗工して形成した。
硬度は、JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験においてBとし、透湿度は、5[g/m2・24hr]とした。
以上により、実施例1の化粧シートを形成した。
【0089】
(実施例2)
基材層の厚さを100[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例2の化粧シートを形成した。
(実施例3)
基材層の構成を、第一透明層と、コア層と、第二透明層を備える、二種類且つ三層で形成された構成とした点と、基材層の厚さを80[μm]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、実施例3の化粧シートを形成した。
(実施例4)
基材層の厚さを100[μm]とした点を除き、実施例3と同様に形成して、実施例4の化粧シートを形成した。
【0090】
(比較例1)
基材層の構成を、ナノサイズの添加剤としての分散材を添加していない構成とした点と、硬度をJIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において3Bとした点と、透湿度を6[g/m2・24hr]とした点を除き、実施例1と同様に形成して、比較例1の化粧シートを形成した。
(比較例2)
基材層の厚さを100[μm]とした点を除き、比較例1と同様に形成して、比較例2の化粧シートを形成した。
【0091】
(性能評価)
実施例1から4の化粧シートと、比較例1から2の化粧シートに対し、それぞれ、性能評価を行った。評価方法としては、スクラッチ試験と、ひっかき硬度試験(鉛筆硬度)と、透湿試験を用いた。
スクラッチ試験とひっかき硬度試験は、実施例及び比較例の化粧シートを、厚さが3[mm]のMDF(中質繊維板)に、水系のウレタン系接着剤を塗布して基板を貼り合わせ、温度を30[℃]以上50[℃]以下の範囲内に設定したプレス機を用いて圧縮して形成した化粧板を用いて評価を行った。
透湿試験は、化粧シートの状態で試験を行った。
【0092】
(スクラッチ試験)
スクラッチ試験は、化粧板に対してコインスクラッチ試験を行い、化粧板の表面(表面保護層)に連続的な傷跡が生じなかった際の荷重を測定して行った。
なお、スクラッチ試験では、10円硬貨を化粧板の表面に当てて、荷重1[Kg]から試験を開始し、荷重を1[Kg]増加させて、荷重4[Kg]まで試験を行った。
(ひっかき硬度試験)
ひっかき硬度試験は、化粧板に対して、JIS K5600-5-4:1999で規定されるひっかき硬度試験(鉛筆硬度試験)により、化粧板の表面(表面保護層)に傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定して行った。
【0093】
(透湿試験)
透湿試験は、JIS A 1324で規定される建築材料の透湿性測定方法(カップ法)に規定される方法により行った。
具体的には、まず、水蒸気に対して非透過性であるカップの底に吸湿剤を入れ、試料となる化粧シートを四つのカップに取り付け、アルミテープで密封する。その後、温度が23[℃]であり、相対湿度が50[%]に設定した恒温恒湿槽の内部にサンプルを置き、120時間が経過した後にサンプルを取り出す。そして、カップの質量が増加した量を測定し、試料の透過量を求めて透湿度を得て行った。
【0094】
(評価基準)
スクラッチ試験においては、荷重が1[Kg]以上である場合を合格(「○」)とし、荷重が1[Kg]未満である場合を不合格(「×」)とした。
ひっかき硬度試験においては、鉛筆の硬度(鉛筆硬度)が「2B」以上である場合を合格(「○」)とし、鉛筆硬度が「2B」未満である場合を不合格(「×」)とした。
透湿試験は、得られた透湿度が5[g/m2・24hr]以下である場合を合格(「○」)とし、得られた透湿度が5[g/m2・24hr]を超える場合を不合格(「×」)とした。
【0095】
【0096】
(評価結果)
表1に示すように、実施例1から4の化粧シートは、ひっかき硬度が2B以上であり、スクラッチ試験及び透湿度は共に合格であった。すなわち、ひっかき硬度が2B以上であれば、[g/m2・24hr]以下の透湿度を得ることが可能であることが確認された。
一方、比較例1から2に示すように、ひっかき硬度が2B未満の化粧シートの場合には、透湿度が[g/m2・24hr]を超えることが確認された。
以上により、実施例1から4の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示すことが可能であった。一方、比較例1から2の化粧シートは、全ての評価試験に対して、優れた性能を示すことが不可能であった。
【0097】
なお、本技術は、以下のような構成を取ることが可能である。
(1)
ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂を用いて形成された基材層と、
前記基材層の一方の面に積層され、且つ絵柄が形成された絵柄模様層と、
前記絵柄模様層の一方の面に積層された表面保護層と、を備え、
前記基材層は、ナノサイズの添加剤としての分散材が添加され、
透湿度が5g/m2・24hr以下である化粧シート。
(2)
前記透湿度が3g/m2・24hr以下である前記(1)に記載した化粧シート。
(3)
JIS K 5600で規定される鉛筆硬度試験において、硬度がB以上である前記(1)又は(2)に記載した化粧シート。
(4)
前記基材層は、第一透明層と、前記第一透明層の一方の面に積層されたコア層と、前記コア層の一方の面に積層された第二透明層と、を備える前記(1)~(3)のいずれかに記載した化粧シート。
(5)
前記基材層と前記絵柄模様層との間に配置された着色層をさらに備え、
前記着色層は、透明又は半透明である前記(1)~(4)のいずれかに記載した化粧シート。
(6)
前記基材層の他方の面に積層されたプライマー層をさらに備える前記(1)~(5)のいずれかに記載した化粧シート。
(7)
前記基材層と前記プライマー層との間に配置された防湿層をさらに備える前記(1)~(6)のいずれかに記載した化粧シート。
(8)
前記基材層の他方の面に積層された防湿層をさらに備える前記(1)~(6)のいずれかに記載した化粧シート。
(9)
前記基材層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される前記(1)~(8)のいずれかに記載した化粧シート。
(10)
前記造核剤ベシクルの添加量は、前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂100質量部に対し、前記造核剤ベシクルが内包する前記造核剤に換算して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲内である前記(9)に記載した化粧シート。
(11)
前記造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである前記(9)又は(10)に記載した化粧シート。
(12)
前記造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに前記造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている前記(9)~(11)のいずれかに記載した化粧シート。
(13)
前記第一透明層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成され、
前記第二透明層は、単層膜の外膜を備えるベシクルにナノサイズの造核剤が内包された造核剤ベシクルを前記ポリプロピレン系の熱可塑性樹脂へ添加して形成される前記(1)~(8)のいずれかに記載した化粧シート。
(14)
前記造核剤ベシクルは、リン脂質を用いて形成された外膜を備える造核剤リポソームである前記(13)に記載した化粧シート。
(15)
前記造核剤ベシクルは、単層膜を備えるベシクルに前記造核剤を内包させ、さらに、超臨界逆相蒸発法によってベシクル化して形成されている前記(13)又は(14)に記載した化粧シート。
(16)
前記表面保護層には、グロスコート及びマットコートのうち少なくとも一方が施されている前記(1)~(15)のいずれかに記載した化粧シート。
(17)
前記グロスコートが施されている部分により形成された線及び前記マットコートが施されている部分により形成された線のうち少なくとも一方と、前記絵柄模様層に形成されている絵柄を形成する線とは、前記基材層、前記絵柄模様層、前記表面保護層とを積層した方向から見て少なくとも一部が互いに重なっている前記(16)に記載した化粧シート。
(18)
基板と、
前記基板の少なくとも一方の面に積層された前記(1)~(17)のいずれかに記載した化粧シートと、を備える化粧板。
(19)
前記基板の前記化粧シートと対向する面と反対の面に積層された防湿フィルムをさらに備える前記(18)に記載した化粧板。
1…化粧シート、2…基材層、2a…第一透明層、2b…コア層、2c…第二透明層、3…着色層、4…絵柄模様層、5…表面保護層、5a…下塗り層、5b…上塗り層、6…防湿層、7…プライマー層、8…基板、9…防湿フィルム、10…化粧板、GL…グロスコートが施されている部分により形成された線、KL…絵柄模様層に形成されている絵柄を形成する線