(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140386
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械の昇降装置および建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20241003BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/16 G
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051506
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹山 詠祐
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 和季
【テーマコード(参考)】
2D015
3D022
【Fターム(参考)】
2D015EA02
3D022AA01
3D022AC10
3D022AD05
3D022AE10
(57)【要約】
【課題】車両における昇降装置の収納性に優れ、且つ上部構造体へ好適にアクセスし得る建設機械の昇降装置および建設機械を提供する。
【解決手段】走行体3の上に上部構造体を備えた建設機械(クローラキャリア)1の前記上部構造体(フレーム4)に取り付けられる梯子状の固定部21と、固定部21に対し可動する梯子状の展開部22とを備え、展開部22は、格納時においては固定部21と重なる格納状態を取り、使用時においては固定部21の下方へ伸びる展開状態を取るよう昇降装置20を構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体の上に上部構造体を備えた建設機械の前記上部構造体に取り付けられる梯子状の固定部と、
前記固定部に対し可動する梯子状の展開部とを備え、
前記展開部は、格納時においては前記固定部と重なる格納状態を取り、
使用時においては前記固定部の下方へ伸びる展開状態を取るよう構成されていること
を特徴とする建設機械の昇降装置。
【請求項2】
前記展開部は、前記固定部に対し回転することにより、格納状態と展開状態とを切替可能に構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の建設機械の昇降装置。
【請求項3】
前記展開部は、展開時において、前記固定部の下部から下方手前へ斜めに伸びる角度で固定されるよう構成されていること
特徴とする請求項1に記載の建設機械の昇降装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の昇降装置を前記上部構造体に備えたこと
を特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械において上部構造体へのアクセスのために設けられる昇降装置、およびこれを適用した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラ等の走行体の上に車体のフレームや運転室、さらにエンジンや作動油といった機器類等を備えたクローラキャリアや移動式クレーン等の建設機械は、乗用車等と比べると大型であり、上部構造体に設けられた運転室等にアクセスするためには、少なくとも走行体の高さもしくはこれに準じる高さを昇降する必要がある(尚、本明細書では、建設機械において走行体の上部に設けられる車体や、これに取り付けられる機器等の構造体をまとめて「上部構造体」と称することとする)。そこで、この種の建設機械においては、例えば下記の特許文献1、2等のように、上部構造体側に梯子状もしくは階段状の昇降装置が取り付けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-60868号公報
【特許文献2】特開2022-165861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に記載された昇降装置は、主に運転室への出入りを補助する目的で設置される。しかしながら、建設機械においては、運転室への出入り以外の目的でも、しばしば上部構造体へアクセスする必要が生じる。例えば、燃料の補給、エンジンやその他の機械類の点検・メンテナンス、作動油の交換や補給、排気浄化装置に供給する尿素水の補給、といった各種の作業を行う際にも、上部構造体へ昇って作業を行う必要がある。上述の如き建設機械においては、燃料タンクやエンジン、作動油タンクといった設備機器類も上部構造体に取り付けられるからである。
【0005】
運転室への出入りを念頭に設計された昇降装置は、これらの設備機器類へのアクセスには必ずしも適していない。エンジンや燃料タンクといった設備機器類は通常、運転室の外に設けられ、一方、運転室の扉は車両の左右方向に関して外側、すなわち前記設備機器類の反対側に設けられる。よって、運転室の扉側に設けられる昇降装置からは、前記設備機器類の設けられた側へは行き来できない。
【0006】
むろん、同様の昇降装置を上部構造体の運転室以外の部分に設置することも考えられるが、運転室とその他の部分では、車両における位置的な条件が異なるため、運転室に設置されるような昇降装置と同様の装置をそのまま他の部分に設置することは必ずしも適当でない。運転室は、建設機械において車両の最前方に設置されることが多く、また、運転室の床面は、上部構造体のうちでも最下部に近い高さに設定されることが多い。このため、運転室にアクセスするための昇降装置においては、走行体と干渉するおそれが小さい。車両の最前方に張り出すような形で運転室が設けられる場合、運転室のうち少なくとも一部は走行体の前端よりも旋回中心から遠く、その位置に昇降装置を設ければ、これが走行体と干渉することは避けられるからである。また、昇降に必要な高さ方向の寸法も短い。よって、運転室への昇降を想定する場合には、実際の車両の構成によっても異なるものの、例えば運転室の前方下部に小さい梯子状の昇降装置を取り付けておけば足りる。
【0007】
これに対し、運転室以外の部分にアクセスすることを考えると、まず上部構造体に設置される運転室以外の設備機器類は、運転室と比べて旋回中心の近くに位置することが多く、すなわち走行体により近い。また、昇降に係る高低差も大きい。例えばエンジンのメンテナンスのために上部構造体にアクセスする場合、フレームの上に設けられた機器類の筐体の上面まで昇る必要がある。つまり、運転室へ昇降可能な程度の高さの昇降装置では不足であり、より高さ方向の寸法が大きい昇降装置が必要である。このような大きい寸法の昇降装置を、上部構造体における運転室以外の位置に、フレームの高さから下方へ突出するように設けた場合、走行体と干渉してしまう可能性が高い。仮に走行体に干渉しないような位置に昇降装置を設けることができるとしても、車両の周囲の物体や構造物の状況によっては車両の移動や運転の妨げとなり得るし、かといって寸法を小さくすれば、上部構造体への昇降という機能が不十分となってしまう可能性がある。
【0008】
よって、上部構造体のうち運転室以外の部分へアクセスする必要がある場合には、昇降装置を設ける代わりに、例えば外部から脚立を運んできて設置したり、あるいは、(上部構造体が走行体に対して旋回可能に設置された旋回式の車両の場合に限られるが)クローラである走行体に対し上部構造体を斜めの角度に旋回させ、前記クローラを足掛かりとして上部構造体へ昇る、といった方法がしばしば用いられてきた。しかしながら、これらの方法では、上部構造体へのアクセスの度に脚立の運搬や設置、上部構造体の旋回操作といった手順が発生し、面倒であった。
【0009】
また、例えば上記特許文献2には、運転室以外の部分に設置され、軸回転によって上部構造体に収納可能に構成された乗降用階段が記載されているが、この乗降用階段は上部構造体側へ収納するにあたってステップを取り外す必要があるほか、上部構造体の高い位置までそれ自体でアクセスし得るようにはできていない(乗降用階段の他に、上部構造体にアクセス経路を設ける必要がある)など、上述の問題点を完全に解消し得るものとは言えない。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、車両における昇降装置の収納性に優れ、且つ上部構造体へ好適にアクセスし得る建設機械の昇降装置および建設機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、走行体の上に上部構造体を備えた建設機械の前記上部構造体に取り付けられる梯子状の固定部と、前記固定部に対し可動する梯子状の展開部とを備え、前記展開部は、格納時においては前記固定部と重なる格納状態を取り、使用時においては前記固定部の下方へ伸びる展開状態を取るよう構成されていることを特徴とする建設機械の昇降装置にかかるものである。
【0012】
本発明の建設機械の昇降装置において、前記展開部は、前記固定部に対し回転することにより、格納状態と展開状態とを切替可能に構成することができる。
【0013】
本発明の建設機械の昇降装置において、前記展開部は、展開時において、前記固定部の下部から下方手前へ斜めに伸びる角度で固定されるよう構成することができる。
【0014】
また、本発明は、上述の昇降装置を前記上部構造体に備えた建設機械にかかるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建設機械の昇降装置および建設機械によれば、車両における昇降装置の収納性に優れ、且つ上部構造体へ好適にアクセスし得るという優れた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した建設機械(クローラキャリア)の形態の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1、
図2の要部(昇降装置およびその周囲)の形態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の昇降装置を展開した状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3、
図4における昇降装置の形態を示す斜視図であり、展開部を格納した状態を示している。
【
図6】
図5の昇降装置において、展開部を展開した状態を示す斜視図である。
【
図7】本発明を適用した建設機械(クローラキャリア)の形態の別の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1~
図4は本発明の実施による建設機械、およびこれに設置された昇降装置の形態の一例を示しており、ここでは建設機械として旋回式のクローラキャリアを想定している。クローラキャリア1は、車体2の下部にクローラである走行体3を備えており、車体2を構成するフレーム4は、旋回台5を介して走行体3に対し旋回可能に取り付けられている。車体2の最前部の左側には運転室6が設けられ、運転室6よりも後方に荷台7が取り付けられている。
【0019】
車両の左右方向に関して運転室6の反対側(右側)には、燃料タンク8や作動油タンク9、エンジン10等の設備機器類が設けられている(本明細書では、走行体3の上に設けられた車体2、フレーム4、運転室6、荷台7、燃料タンク8や作動油タンク9やエンジン10の筐体といった構造物や設備機器類を「上部構造体」とする)。そして、この設備機器類の前面にあたる位置に、昇降装置20が取り付けられている。
【0020】
昇降装置20は、
図5、
図6に示す如く、車両の上部構造体に取り付けられる固定部21と、該固定部21に対し動作可能に取り付けられた展開部22を備えて構成された梯子状の装置である。展開部22は、固定部21に対して可動し、
図5に示す如く固定部21と重なる姿勢で格納された収納状態と、
図6に示す如く固定部21の下方へ伸びる展開状態との間で切替可能に構成されている。すなわち、昇降装置20は、各々が梯子状に構成された固定部21と展開部22が、格納状態においては互いに重なる姿勢で格納され、展開状態においては固定部21の下方へ展開部22が伸びる形で展開されて車両の上部構造体への昇降に使用されるようになっている。
【0021】
固定部21は、縦方向に沿って互いに平行に伸びる一対の支柱21aと、該支柱21a同士の間に横方向に沿って渡された踏み桟21bを備えて構成された梯子状の部材である。各支柱21aの下端部は、車両の上部構造体の一部であり、車体2を構成し設備機器類を支持するフレーム4の前面に、支持ブラケット23を介して固定されている。支持ブラケット23は、板状の素材を屈曲して形成された部材であり、フレーム4の前面に基部側を固定されると共に、先端側がフレーム4の前面から前方へ突出し、この先端側に固定部21の支柱21aの下端部が溶接されている。フレーム4の前方へ支持ブラケット23が突出し、ここから固定部21の全体が上方へ突出する形である。
【0022】
固定部21の各踏み桟21bは、2本1組の細い板状の部材として構成されており、各踏み桟21bを構成するこれら一対の部材は、互いに平行な面をなして近接し、且つ長手方向が互いに平行をなす位置関係で、一対の支柱21aの間に取り付けられている。板状の前記各部材は、各々のなす面が鉛直方向に沿い、且つ長手方向が水平方向に沿った姿勢である。前記各部材の上縁部には、鋸歯状の形状が設けられており、各踏み桟21bをなす一対の部材同士において、上縁の高さは略一致している。各々が一対の前記部材により構成される踏み桟21bは、固定部21において上下方向に計3組が設けられている。
【0023】
尚、本明細書において、「縦方向に沿う」「鉛直方向に沿う」「横方向に沿う」「水平方向に沿う」といった表現は、鉛直方向や水平方向と正確に一致することのみを指すものではなく、実用上、概ね縦や横、あるいは鉛直方向や水平方向と見なして良い角度を指す。
【0024】
展開部22は、固定部21と同様、縦方向に沿って互いに平行に伸びる一対の支柱22aと、該支柱22a同士の間に横方向に沿って渡された踏み桟22bを備えて構成された梯子状の部材である。各踏み桟22bは、固定部21の踏み桟21bと同様、2本1組の細い板状の部材として構成されており、各踏み桟22bを構成するこれら一対の部材は、互いに平行な面をなして近接し、且つ長手方向が互いに平行をなす位置関係で、一対の支柱22aの間に取り付けられている。
【0025】
図5に示す収納状態において、板状の各部材は、各々のなす面が鉛直方向に沿い、且つ長手方向が水平方向に沿った姿勢である。且つ、
図6に示すように、展開部22が固定部21に対し斜めの角度に展開された展開状態においては、各踏み桟22bをなす一対の各部材は上縁の高さが互いに略一致するよう、支柱22aにおける取付位置を設定されている。踏み桟22bをなす部材の展開状態における上縁部には、鋸歯状の形状が設けられている。各々が一対の前記部材により構成される踏み桟22bは、展開部22の支柱22aが伸びる方向に関し計2組が設けられており、うち一個の踏み桟22bは支柱22aの先端部に、もう一個の踏み桟22bは支柱22aの中間部に位置している。
【0026】
展開部22を構成する各支柱22aは、固定部21を構成する支柱21aの下端部に回転可能に取り付けられている。すなわち、支柱22aの基端部(車体2に取り付けられる側の端部)は、固定部21の支柱21aをフレーム4に固定する支持ブラケット23に対し、回転軸24を介して接続されている。
【0027】
固定部21の支柱21aを支持する支持ブラケット23の一部は、支柱21aを取り付けた部分よりもさらに前方(固定部21に関してフレーム4の反対側)へ突出しており、ここに回転軸24を介して展開部22の支柱22aが取り付けられている。回転軸24は、固定部21の支柱21a同士を渡す踏み桟21b、および展開部22の支柱22a同士を渡す踏み桟22bと平行な向きに設定されており、展開部22は、この回転軸24を中心に固定部21に対し回転し、上述の格納状態と展開状態とを切替可能に構成されている。こうして、展開部22の展開および格納の操作を簡単な機構により行うことができるようになっている。
【0028】
支持ブラケット23における展開部22の支柱22aを取り付けた部分の下部には、ストッパ部23aが設けられている。ストッパ部23aは、展開部22の回転軸24に対し下方に位置しており、昇降装置20の展開状態において、支柱22aの一部(ここに示した例では、回転軸24に近い基部付近の展開状態における下縁にあたる一部)に当接し、支柱22aを支持しつつ、展開部22がそれより下方へ回転することを妨げるようになっている。これにより、展開部22は、展開時、
図4、
図6に示す如く、固定部21の下部から下方手前へ斜めに伸びる角度で固定されるようになっている。
【0029】
固定部21を構成する支柱21aの上下方向における寸法(支持ブラケット23に固定された下端から、上端までの高さ)と、展開部22を構成する支柱22aの基端(支持ブラケット23に取り付けられた部分)から先端までの寸法は、概ね同じに設定されており、
図5に示す格納状態においては、支柱21aの上端部と支柱22aの先端部の位置が概ね一致している。この支柱21aの上端部と支柱22aの先端部には、それぞれ係留部25a,25bが設けられており、格納状態において展開部22を固定部21に対し係留できるようになっている。
【0030】
固定部21側の係留部25aは、一方の支柱21aの先端部における外側(踏み桟21bの長手方向に関する外側)に突出するように設けられた2枚の板状の部材である。展開部22側の係留部25bは、展開部22の一方の支柱22aにおける固定部21側の係留部25aと対応する位置に設けられた1枚の板状の部材である。格納状態においては、
図5に示す如く、展開部22側の係留部25bが固定部21側の係留部25bの間に位置する。それぞれ板状の部材である係留部25a,25bには、これを貫通するように孔が設けられており、計3個の各孔に一本のピン26を通すことで、展開部22を固定部21に対し係留し、展開部22が自重で回転して不意に展開してしまうような事態を防止することができる。
【0031】
昇降装置20を使用する場合には、係留部25a,25bからピン26を抜き、展開部22を回転させて昇降装置20を開き、
図6に示す如き展開状態とする。昇降装置20は、上半分を固定部21、下半分を展開部22として上下に伸びる一本の梯子状に展開する。上述のように、固定部21の支柱21aの下端部が車体2のフレーム4の前面に固定されているので、展開部22の下端はフレーム4より下、固定部21の上端はフレーム4より上にそれぞれ位置する。また、固定部21の上端は、車体の前面に位置する燃料タンク8の上面より若干低い程度の高さに設定されている。よって、踏み桟21b,22bを足掛かりとし、車体2の前面からフレーム4の上、さらに燃料タンク8の上面へ好適にアクセスすることができる。
【0032】
ここで、各踏み桟21b,22bは上述の通り一対の細長い板状の部材で構成されているが、
図6に示す展開状態において、各踏み桟21b,22bを構成する一対の部材は、それぞれ上縁の高さが一致するように設定されている。さらに、前記上縁には鋸歯状の形状が設けられているので、踏み桟21b,22bを足掛かりとした昇降の際には、各踏み桟21b,22bを構成する一対の部材に体重を分散しつつ、鋸歯状の形状を滑り止めとして好適な昇降が可能である。
【0033】
また、展開状態において、昇降装置20の下半分を構成する展開部22は、フレーム4から斜め手前に突出し、昇降に好適な角度をなしているため昇りやすい。また、フレーム4に対し下方へ突出する展開部22がこのような角度をなしているため、フレーム4の下方に位置する走行体3とも干渉しにくくなっている。
【0034】
特に本実施例のクローラキャリア1では、
図1に示す如く、車体2の前方部分のうち、運転室6の設けられた部分以外の部分(燃料タンク8等が設けられた部分)が運転室6の設けられた部分と比べて後方、すなわち旋回中心の近くに位置しており、ここに設置された昇降装置20もその分だけ後方に位置している。このような構成の車両および昇降装置の配置においては、展開状態においてフレームより下方に突出するような昇降装置を考えた場合、該昇降装置が前記フレームの下方に位置する走行体と干渉しやすいといえる。そこで本実施例では、昇降装置20のうち、フレーム4から下方へ突出する展開部22に関し、昇降装置20を支持する支持ブラケット23にストッパ部23aを設け、展開状態において展開部22を上述した斜めの角度で保持するようにしている。こうすることにより、上部構造体における昇降装置20の設置位置が旋回中心に近くとも、展開状態において昇降装置20が走行体3と接触しにくくなっている。特に本実施例の場合、昇降装置20を展開したままの状態でも、昇降装置20が走行体3と干渉することなく上部構造体の旋回を行えるようになっている。車両の周囲の状況等によっては、昇降装置20を使用して上部構造体にアクセスするにあたり、上部構造体を旋回させて昇降しやすい角度に調整するといった場合も想定できるが、その際、例えば一旦展開した昇降装置20を、走行体3との干渉を避けるために格納し、旋回操作の後で再び昇降装置20を展開する、といった手間が本実施例においては不要である。
【0035】
一方、昇降装置20は
図3、
図5に示す格納状態で上部構造体に格納することも可能である。走行体3との干渉とは別に、車両の周囲の状況によっては、展開した昇降装置20が上部構造体の旋回に伴い周辺の物体や構造物等に干渉する場合も考え得るが、そのような場合には昇降装置20を格納すれば、展開部22が外側へ突出することがない。このように、本実施例の昇降装置20は、使用時には下半分の展開部22を手前に突出させることで昇降をしやすくし、また走行体3との干渉も避けることができる一方、昇降装置20を使用しない場合や、昇降装置20が設置された部分における旋回半径を小さくしたい場合には格納すればよく、車両における収納性と、上部構造体へのアクセス性の両立を実現している。
【0036】
このような昇降装置20は、上部構造体のうち、特に運転室6以外への昇降に好適であると言える。上にも述べたように、運転室以外の部分にアクセスすることを考えると、昇降に係る高低差が大きい場合があり、そういった場合、好適に昇降を行うためには、昇降装置全体の上下方向の寸法を相応に大きくする必要がある。ところが、昇降装置の寸法を単純に大きくすれば、走行体との干渉の可能性が高くなり、また車両における収納性も悪化する。例えば上記特許文献2における乗降用階段は、運転室への乗降のために設置されつつ、上部構造体における運転室以外の部分への昇降も可能な装置であるが、上部構造体側へ収納するにあたってステップを取り外す必要があるなど収納の際に不便があるし、また、それ自体で例えばフレームの上に設置された燃料タンクの上まで昇り降りできるようにもなっていない(乗降用階段によって昇降できるのはフレームの高さまでであり、それより上の高さへのアクセスには、別途経路が設定されている)。本実施例のように、昇降装置20を固定部21と展開部22に分割し、格納時には両者を重ねて全長を縮め、且つ固定部21は車両側へ取り付けられたままの状態で格納し、使用時には展開部22を固定部21の下方へ展開して全長を伸ばす構成を採用すれば、格納時における収納性と、使用時における十分な高低差を両立できるのである。
【0037】
図7は上述の昇降装置20を適用した建設機械(クローラキャリア)1の形態の別の一例を示している。本例のクローラキャリア1では、
図1、
図2に示した例と比較して走行体3が大きく、車体2に対し、より前方まで張り出している。
【0038】
このような構成のクローラキャリア1において、上述の如き昇降装置20を設ける場合、例えば図中に示す如く、フレーム4のうち昇降装置20を取り付ける部分を、展開状態の昇降装置20が走行体3と干渉しない位置まで伸ばせばよい。ただし、この場合も、上述の如く昇降装置20の下半分を構成する展開部22が斜めの角度をなして前方へ張り出しているため、例えば展開状態において全体が鉛直方向に沿った向きをなすような昇降装置を取り付ける場合と比較すると、フレーム4をさほど前方へ伸ばす必要はない。
【0039】
以上のように、上記実施例の建設機械の昇降装置20は、走行体3の上に上部構造体を備えた建設機械(クローラキャリア)1の前記上部構造体(フレーム4)に取り付けられる梯子状の固定部21と、固定部21に対し可動する梯子状の展開部22とを備え、展開部22は、格納時においては固定部21と重なる格納状態を取り、使用時においては固定部21の下方へ伸びる展開状態を取るよう構成されている。このようにすれば、格納時には両者を重ねて全長を縮め、且つ固定部21は車両側へ取り付けられたままの状態で格納し、使用時には展開部22を固定部21の下方へ展開して全長を伸ばすことにより、格納時における収納性と、使用時における十分な高低差を両立することができる。
【0040】
実施例の建設機械の昇降装置20において、展開部22は、固定部21に対し回転することにより、格納状態と展開状態とを切替可能に構成されている。このようにすれば、展開部22の展開および格納の操作を簡単な機構により行うことができる。
【0041】
実施例の建設機械の昇降装置20において、展開部22は、展開時において、固定部21の下部から下方手前へ斜めに伸びる角度で固定されるよう構成されている。このようにすれば、展開部22が昇降に好適な角度をなすことで昇降をしやすくでき、また、展開部22を下方に位置する走行体3と干渉しにくくすることができる。
【0042】
また、上記実施例の建設機械(クローラキャリア)1は、上述の昇降装置20を上部構造体に備えているので、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
したがって、上記本実施例によれば、昇降装置は車両における昇降装置の収納性に優れ、且つ上部構造体へ好適にアクセスし得る。
【0044】
尚、本発明の建設機械の昇降装置および建設機械は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、上記実施例においては運搬車両として旋回式のクローラキャリアを例示したが、本発明はこれに限らず、走行体および上部構造体を備えた建設機械であれば各種の車両を対象として想定し得る。その他、本発明は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 建設機械(クローラキャリア)
3 走行体
4 上部構造体(フレーム)
20 昇降装置
21 固定部
22 展開部