(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140389
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】温調ケース
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F25D11/00 101D
F25D11/00 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051510
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】杉本 明男
(72)【発明者】
【氏名】中登 啓介
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA01
3L045AA04
3L045BA01
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA02
3L045DA04
3L045EA03
3L045GA05
3L045HA01
3L045KA07
(57)【要約】
【課題】対象物を温調されている状態で維持する。
【解決手段】温調ケース10は、対象物Aを収容する対象物収容空間1Aを形成する箱体1と、箱体1のうち対象物収容空間1Aを形成している壁31を構成し、対象物Aと熱交換を行う熱媒が通流する熱媒流路40を形成する熱交換器4と、熱媒流路40から流出した熱媒を冷却し、冷却された熱媒を熱媒流路40に戻す冷却機構6と、箱体1に設けられ、冷却機構6を熱交換器4に接続する接続部8と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容する対象物収容空間を形成する壁を有する箱体と、
前記壁の一部を構成し、前記対象物と熱交換を行う熱媒が通流する熱媒流路を形成する熱交換器と、
前記熱媒流路から流出した前記熱媒を冷却し、冷却された前記熱媒を前記熱媒流路に戻す冷却機構と、
前記箱体に設けられ、前記冷却機構を前記熱交換器に接続する接続部と、
を備える、温調ケース。
【請求項2】
前記箱体が、前記対象物収容空間から隔絶された冷却ユニット収容空間を形成し、
前記冷却機構が、前記接続部に接続された状態で前記冷却ユニット収容空間に収容される、
請求項1に記載の温調ケース。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記箱体とは別個の冷却ユニット筐体に収容され、
前記冷却機構が、前記接続部に着脱可能に接続され、前記冷却ユニット筐体が、前記箱体に取外し可能に装着される、
請求項1に記載の温調ケース。
【請求項4】
前記熱交換器が、前記箱体の底壁を構成し、前記冷却機構が、前記底壁の下方に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温調ケース。
【請求項5】
前記冷却機構が、前記熱媒流路から流出した前記熱媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された前記熱媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器で凝縮された前記熱媒を膨張させる膨張弁を有し、
前記膨張弁で膨張された前記熱媒が、前記熱交換器内の前記熱媒流路を通流中に蒸発することで、前記対象物が冷却される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温調ケース。
【請求項6】
前記冷却機構が、前記熱媒流路の通流中に昇温された前記熱媒を冷却するペルチェ素子を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温調ケース。
【請求項7】
前記熱交換器は、
流路面と、前記流路面に凹設された溝とを有する流路形成板と、
前記流路面に重ねられたカバー面と、前記カバー面とは反対側で対象物と近接する熱交換面とを有する温調板と、を有し、
前記熱媒流路は、前記溝が前記カバー面で覆われることによって構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温調ケース。
【請求項8】
断熱材で構成され、前記対象物収容空間の上側の開口を開放可能に閉鎖する蓋を更に備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の温調ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インナーフィンを内蔵したトレイ部材をカバー部材で閉塞することによって構成された熱交換器を開示している。カバー部材の表面には、閉塞された空間に対して熱媒を流出入させる入口及び出口が設けられている。熱交換又は温調の対象物は、トレイ部材の表面に接触している。熱媒は、閉塞された空間内を通流し、対象物との間で固体伝熱により熱交換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
倉庫内で対象物を長期間保管する場合、あるいは車両や荷役機械で対象物を移送する場合には、上記の熱交換器で対象物を温調された状態に維持することが難しい。
【0005】
本発明は、対象物を温調されている状態で維持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、対象物を収容する対象物収容空間を形成する壁を有する箱体と、前記壁の一部を構成し、前記対象物と熱交換を行う熱媒が通流する熱媒流路を形成する熱交換器と、前記熱媒流路から流出した前記熱媒を冷却し、冷却された前記熱媒を前記熱媒流路に戻す冷却機構と、前記箱体に設けられ、前記冷却機構を前記熱交換器に接続する接続部と、を備える、温調ケースを提供する。
【0007】
上記構成によれば、対象物は、箱体の対象物収容空間に収容されることができ、熱交換器は、対象物収容空間を形成する箱体の壁を部分的に構成する。そのため、熱媒が、熱交換器内(すなわち、箱体の壁内)の熱媒流路を通流する過程で、熱媒と対象物との間で熱交換を効率的に行うことができる。熱媒は、対象物との熱交換によって昇温する可能性がある。箱体には、熱交換器を冷却機構に接続する冷却機構が設けられており、冷却機構は、昇温された熱媒を冷却して熱媒流路に戻す。熱媒を循環及び冷却するための機構が、対象物を収容する箱体に接続されているため、対象物を温調した状態で維持しやすい。一例として、対象物を温調された状態に維持しながら対象物を容易に移送できる。
【0008】
前記箱体が、前記対象物収容空間から隔絶された冷却ユニット収容空間を形成し、前記冷却機構が、前記接続部に接続された状態で前記冷却ユニット収容空間に収容されてもよい。
【0009】
上記構成によれば、冷却機構が箱体に一体化される。そのため、対象物を温調した状態を維持しやすい。
【0010】
前記冷却機構は、前記箱体とは別個の冷却ユニット筐体に収容され、前記冷却機構が、前記接続部に着脱可能に接続され、前記冷却ユニット筐体が、前記箱体に取外し可能に装着されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、冷却機構が、冷却ユニット筐体に収容されてユニット化される。この冷却ユニット筐体が、箱体に着脱可能に装着されるため、対象物を温調した状態を維持しやすい。冷却機構のメンテナンスを容易に行うことができ、また、対象物の温調を必要としない状況で箱体の取扱いやすさが向上する。
【0012】
前記熱交換器が、前記箱体の底壁を構成し、前記冷却機構が、前記底壁の下方に配置されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、熱媒が、対象物収容空間に収容されて底壁に載置された対象物との間で熱交換を効率的に行うことができる。冷却機構が箱体の下方に取り付けられることで、温調ケースの重心が低くなり、対象物を安定して移送しやすくなる。
【0014】
前記冷却機構が、前記熱媒流路から流出した前記熱媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された前記熱媒を凝縮させる凝縮器、前記凝縮器で凝縮された前記熱媒を膨張させる膨張弁を有し、前記膨張弁で膨張された前記熱媒が、前記熱交換器内の前記熱媒流路を通流中に蒸発することで、前記対象物が冷却されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、蒸気圧縮冷凍サイクルの原理に従って熱交換器が蒸発器として機能し、熱交換器で対象物を冷却できる。
【0016】
前記冷却機構が、前記熱媒流路の通流中に昇温された前記熱媒を冷却するペルチェ素子を有してもよい。
【0017】
上記構成によれば、ペルチェ素子を使用した簡素な構成により、熱交換器で対象物を冷却できる。
【0018】
前記熱交換器は、流路面と、前記流路面に凹設された溝とを有する流路形成板と、前記流路面に重ねられたカバー面と、前記カバー面とは反対側で対象物と近接する熱交換面とを有する温調板と、を有し、前記熱媒流路は、前記溝が前記カバー面で覆われることによって構成されてもよい。
【0019】
上記構成によれば、2枚の板材の重ね合わせにより熱交換器が構成されるので、熱交換器を簡便に製造でき、また、熱交換器の熱抵抗が小さくなって熱交換性能の向上が図られる。
【0020】
断熱材で構成され、前記対象物収容空間の上側の開口を開放可能に閉鎖する蓋を更に備えてもよい。
【0021】
上記構成によれば、蓋で対象物収容空間が閉鎖されている状態で、蓋の断熱効果によって対象物の温度を目標とする温度に管理しやすい。対象物収容空間が蓋の操作により開放可能であるため、対象物の対象物収容空間に対する出し入れが容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対象物が温調されている状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る温調ケースの分解斜視図。
【
図4】温調ケースの蓋以外を組み付けた状態で示す斜視図。
【
図6A】冷却機構が取り外されている状態で示す接続部の断面図。
【
図6B】冷却機構が取り付けられている状態で示す接続部の断面図。
【
図8A】第3実施形態に係る温調ケースを冷却ユニット筐体及び蓋が取り外されている状態で示す断面図。
【
図8B】冷却ユニット筐体及び蓋が取り付けられている状態で示す温調ケースの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。
【0025】
(第1実施形態)
図1を参照して、第1実施形態に係る温調ケース10は、箱体1、熱交換器4、断熱材5、冷却機構6、蓋7、及び接続部8A,8Bを備える。箱体1は、外箱2及び内箱3からなる二重構造を有する。外箱2も内箱3も、上側に開口した直方体状である。
【0026】
外箱2は、平面視で長方形状の底壁21、底壁21の一対の短辺縁それぞれに立設された一対の第1周壁22、及び底壁21の一対の長辺縁それぞれに立設された一対の第2周壁23を有する。各周壁22,23は、側面視で長方形状である。
【0027】
内箱3は、平面視で長方形状の底壁31、底壁21の一対の短辺縁それぞれに立設された一対の第1周壁32、及び底壁31の一対の長辺縁それぞれに立設された第2周壁33を有する。各周壁32,33は、側面視で長方形状である。内箱3は、一対の第1周壁32の上縁それぞれから第1周壁32の対向方向(底壁31の長手方向)において互いに反対側に延びる一対の第1フランジ34、及び一対の第2周壁33の上縁それぞれから第2周壁33の対向方向(底壁31の短手方向)において互いに反対側に延びる一対の第2フランジ35を有する。4つのフランジ34,35は、周壁32,33からの突出量を短辺長とする長方形状である。第1フランジ34の長辺長は、対応する第1周壁32の上縁の長さと同等である。第2フランジ35は、対応する第2周壁33の上縁に対し、第2フランジ35の長手方向の両側に、第1フランジ34の周壁32からの突出量だけ、突出している。このため、第1フランジ34の長辺と第2フランジ35の短辺とが平面視で一直線状に連なり、4つのフランジ34,35が、全体として、平面視で矩形窓枠形状をなす。
【0028】
図2を参照して、外箱2は、アルミニウム合金製の1枚の板金材を折り曲げることによって構成される。各周壁22,23は、底壁21と継ぎ目なく連続する。隣り合う2つの周壁22,23は、溶接によって接合される。
【0029】
図3を参照して、内箱3も、アルミニウム合金製の1枚の板金材を折り曲げることによって構成される。各周壁32,33は、底壁31と継ぎ目なく連続し、各フランジ34,35は、対応する周壁32,33と継ぎ目なく連続する。隣り合う2つの周壁32,33は、溶接によって接合される。隣り合う2つのフランジ34,35は、溶接によって接合される。
【0030】
図1、
図4及び
図5を参照して、内箱3は、外箱2に収容される。これにより、箱体1が構成される。平面視において、フランジ34,35の外形状は、外箱2の開口と略合同であり、フランジ34,35の外周縁部が外箱2の開口の縁部に近接する。外箱2の底壁21上には、冷却機構6及び断熱材5が配置されており、更にその上に内箱3が配置される。内箱3の底壁31は、外箱2の底壁21の上方に位置付けられる。内箱3は外箱2よりも低背である一方、フランジ34,35の上面は外箱2の上端と略同じ高さにある。
【0031】
箱体1は、対象物収容空間1A、冷却ユニット収容空間1B、及び断熱材充填空間1Cを形成する。対象物収容空間1Aは、冷却ユニット収容空間1B及び断熱材充填空間1Cから隔絶される。冷却ユニット収容空間1B及び断熱材充填空間1Cは、外箱2の内面によって画定されており、上下方向に連続する。
【0032】
対象物収容空間1Aには、対象物Aが収容される。対象物収容空間1Aは、内箱3の内部に形成される。換言すれば、対象物収容空間1Aは、内箱3の底壁31及び周壁32,33の内面によって画定される。
【0033】
断熱材充填空間1Cには、断熱材5が充填される。断熱材5は、底壁部51及び周壁部52を有し、上側で開口した箱形状である。断熱材5の周壁部52は、断熱材充填空間1Cのうち、外箱2の周壁22,23の内面及び内箱3の周壁32,33の外面によって画定された部分に充填される。当該部分は、4つのフランジ34,35で閉塞される。断熱材5の底壁部51は、断熱材充填空間1Cのうち、内箱3の底壁31の外面の下方の部分に充填される。
【0034】
冷却ユニット収容空間1Bには、冷却機構6が収容される。冷却ユニット収容空間1Bは、断熱材充填空間1Cの下方に位置し、外箱2の底壁21の内面、外箱2の周壁22,23の下端部の内面、及び断熱材5の底壁部51の底面によって画定される。冷却機構6は、断熱性を有する被覆材59で覆われる。被覆材59は、直方体状の外観を有する。
【0035】
冷却機構6が、被覆材59で覆われた状態で外箱2の内部に収納されている。箱形状の断熱材5が、外箱2に収納され、被覆材59に載置されている。これにより、冷却ユニット収容空間1Bが、被覆材59で充填される。内箱3が、外箱2の内部(換言すれば、箱形状の断熱材5の内部)に収納され、断熱材5の底壁部51に載置されている。断熱材充填空間1Cが、内箱3の外面側に形成されて断熱材5で充填される一方、対象物収容空間1Aが、内箱3の内面側に形成され、上向きに開放される。
【0036】
蓋7は、箱体1の開口(換言すれば、内箱3の開口、又は対象物収容空間1Aの開口)を開放可能に閉鎖する。蓋7は、内箱3の周壁32,33の内面上端部に密着する嵌合部71、及び嵌合部71の上方に設けられて内箱3のフランジ34,35の上面に密着する載置部72を有する。蓋7は、断熱材73の表面をアルミニウム合金製の板金材74で覆うことによって構成される。嵌合部71及び載置部72が内箱3に密着することで、対象物収容空間1Aが外気から断熱される。
【0037】
図1及び
図5を参照して、熱交換器4は、対象物収容空間1Aを形成している箱体1の壁に設けられる。対象物収容空間1Aは、内箱3の底壁31及び4つの周壁32,33によって画定されている。本実施形態では、熱交換器4が、内箱3の底壁31によって部分的に構成されている。
【0038】
熱交換器4は、2枚の板材を貼り合わせることによって構成される。内箱3の底壁31が、そのうちの一方の板材(すなわち、温調板)として機能する。他方の板材が、流路形成板41である。流路形成板41は、外箱2及び内箱3とは独立した部品である。流路形成板41は、流路面41a、及び流路面41aに凹設された溝42を有する。温調板としての底壁31の外面は、流路面41aと重ね合わされて溝42を閉塞するカバー面31aであり、底壁31の内面は、対象物収容空間1Aに収容された対象物Aが載置されて接触する熱交換面31bである。溝42がカバー面31aで閉塞されることにより、熱媒が通流する熱媒流路40が構成される。熱媒は、熱媒流路40を通流する過程で、底壁31の固体伝熱によって熱交換面31b上の対象物Aと熱交換を行う。
【0039】
なお、断熱材5の底壁部51は、流路形成板41の下面(流路面41aと反対側の面)に接触する。溝42の存在により、流路形成板41の下面側には、凸部が設けられる。このような下面側との接触のため、底壁部51の上面には、凸部を嵌合させる凹部51aが形成されている。
【0040】
溝42は、流路形成板41の流路面41aの略全体を網羅するように蛇行しながら延びている。溝42は、途中で分岐又は合流しない。熱媒流路40は、この溝42の閉塞により構成され、熱交換器4内(すなわち、温調板と流路形成板との間で)一本道且つ一方通行の流路を形成する。熱交換器4は、熱媒流路40に熱媒を流入させる流入口43A、及び熱媒流路40から熱媒を流出させる流出口43Bを備える。流入口43Aは、熱媒流路40の一端部に開口し、流出口43Bは、熱媒流路40の他端部に開口する。
【0041】
冷却機構6は、熱媒流路40から流出した熱媒を冷却し、冷却された熱媒を熱媒流路40に戻す。このため、冷却機構6は、流出口44と接続されると共に流入口43Aと接続され、熱媒を循環させる循環路60を有する。冷却機構6は、内箱3の底壁31の下方に配置されている。流入口43A及び流出口43Bは、溝42の両端部それぞれの底面に開口し、流路形成板41から下方に、すなわち冷却機構6に向かって延びている。
【0042】
冷却機構6は、圧縮機61、凝縮器62、及び膨張弁63を更に有する。圧縮機61、凝縮器62、及び膨張弁63は、循環路60上に、熱媒が流れる方向(流出口43B側から流入口43A側に向かう方向)において、この順番で設けられている。圧縮機61は、熱媒流路40から流出した気体の熱媒を圧縮する。凝縮器62は、圧縮機61で圧縮された熱媒を冷却して凝縮させる。膨張弁63は、凝縮器62で冷却された熱媒を減圧膨張させる。熱媒流路40には、低温低圧の液体状の熱媒が供給される。熱媒は、熱媒流路40を通流する過程で対象物Aから吸熱して蒸気に変化し、対象物Aは気化熱で冷却される。蒸気圧縮冷凍サイクルの原理に従って、熱交換器4は、蒸発器として機能する。これにより、対象物Aに寒冷を与えることができ、対象物Aが対象物収容空間1A内で冷蔵される。
【0043】
冷却機構6は、バッテリ68、コントローラ69、及び性状センサ(不図示)を更に有する。バッテリ68は、圧縮機61及びコントローラ69の電源である。外箱体の周壁22,23の外面には、バッテリ68と電気的に接続されたプラグ(不図示)が設けられており、商用電源などを使用して温調ケース10の外部からプラグに給電することで、バッテリ68を充電できる。性状センサは、循環路60を通流する熱媒の性状、例えば、温度、圧力、及び/又は流量を検出する。コントローラ69は、性状センサの検出結果に基づいて冷却機構6の動作(具体的には、圧縮機の回転数など)を制御し、それにより対象物Aが目標の温度に保たれる。
【0044】
圧縮機61は、電気モータ(不図示)を駆動源とする。膨張弁63は、絞りの機能を有していればよく、毛細管も含む概念である。バッテリ68は、充放電可能であればどのような形式でもよい。コントローラ69は、CPU、メモリ、及び入出力インターフェースを有するコンピュータである。CPUは、メモリに記憶されたプログラムにより指示される手順に沿って情報を処理し、それにより所要の制御が実行される。これにより、冷却機構6を使用した対象物Aの温調が自動化される。
【0045】
接続部8A,8Bは、箱体1に設けられ、冷却機構6を熱交換器4に接続する。本実施形態では、箱体1が、対象物収容空間1Aと共に、対象物収容空間1Aから隔絶された冷却ユニット収容空間1Bを形成しており、冷却機構6は、接続部8A,8Bを介して熱交換器4と接続された状態で、冷却ユニット収容空間1Bに収容されている。接続部8Bは、熱交換器4の流出口43Bを循環路60の流入口60Bに接続する。接続部8Aは、循環路60の流出口60Aを熱交換器4の流入口43Aに接続する。
【0046】
図6A及び
図6Bを参照して、単なる一例として、接続部8Aは、流入口43Aに挿し込まれ、流路形成板41から下方に延び、断熱材5の底壁部51を通過する導通管84Aと、導通管84Aを循環路60の流出口60Aと接続する継手80Aとを有する。導通管84Aは、両端が開口している。継手80Aは、底壁部51の底面側に設けられた第1継手85Aと、被覆材59の上面側に設けられた第2継手86Aとを有する。単なる一例として、第1継手85Aが雌型、第2継手86Aが雄型である。第1継手85Aは、断熱材5の底壁部51の底面に凹設された孔によって構成される。導通管84Aの先端部は、第1継手85Aの中心部に位置付けられている。第2継手86Aは、筒状であり、被覆材59の上面から上方に突出する。第2継手86Aの外径は、第1継手85Aの内径と同等であり、第2継手86Aの内径は、導通管84Aの外径と同等である。なお、接続部8Bも、これと同様に構成される。
【0047】
このため、熱交換器4の下面側に断熱材5が取り付けられた状態で、被覆材59の上面と底壁部51の下面とを重ね合わせると、第2継手86A,86Bが、第1継手85A,85Bと接続される共に導通管84A,84Bと嵌合される。これにより、冷却機構6が熱交換器4と機械的に接続される。また、熱媒流路40が、導通管84A,84B及び第2継手86A,86Bの中空空間を介して循環路60と流体的に連通され、熱媒を循環させる閉回路が構成される。
【0048】
上記の構成によれば、温調ケース10が、対象物Aを収容する対象物収容空間1Aを形成する壁31~33を有する箱体1と、この壁31~33の一部(一例として、底壁31)を構成し、対象物Aと熱交換を行う熱媒が通流する熱媒流路40を形成する熱交換器4と、熱媒流路40から流出した熱媒を冷却し、冷却された熱媒を熱媒流路40に戻す冷却機構6と、箱体1に設けられ、冷却機構6を熱交換器4に接続する接続部8A,8Bと、を備える。
【0049】
これにより、熱媒が、熱交換器4内(すなわち、箱体1の壁内)の熱媒流路40を通流する過程で、熱媒と対象物Aとの間で熱交換を効率的に行うことができる。熱媒は、対象物Aとの熱交換によって昇温する。箱体1には、熱交換器4を冷却機構6に接続する冷却機構6が設けられており、冷却機構6は、昇温された熱媒を冷却して熱媒流路40に戻す。熱媒を循環及び冷却するための機構が、対象物Aを収容する箱体1に接続されるため、対象物Aを温調した状態で維持しやすい。一例として、対象物Aを温調された状態に維持しながら対象物Aを容易に移送できる。
【0050】
箱体1が、対象物収容空間1Aから隔絶された冷却ユニット収容空間1Bを形成し、冷却機構6が、接続部8A,8Bに接続された状態で冷却ユニット収容空間1Bに収容される。冷却機構6が箱体1に一体化されるため、対象物Aを温調した状態を維持しやすい。
【0051】
熱交換器4が、箱体1(特に内箱3)の底壁31を構成し、冷却機構6が、当該底壁31の下方に配置される。熱媒が、対象物収容空間1Aに収容されて底壁31に載置された対象物Aとの間で底壁31の固体伝熱により熱交換を効率的に行うことができる。冷却機構6が箱体1の下方に取り付けられることで、温調ケース10の重心を低くすることができる。荷役機械を使用する際に対象物Aの安定移送に資する。
【0052】
冷却機構6が、熱媒流路40から流出した熱媒を圧縮する圧縮機61、圧縮機61で圧縮された熱媒を凝縮させる凝縮器62、凝縮器62で凝縮された熱媒を膨張させる膨張弁63を有する。膨張弁63で膨張された熱媒が、熱交換器4内の熱媒流路40を通流中に蒸発することで、対象物Aが冷却される。蒸気圧縮冷凍サイクルの原理に従って熱交換器4が蒸発器として機能することができ、熱交換器4で対象物Aを冷却でき、対象物Aを対象物収容空間1A内で冷蔵できる。
【0053】
温調ケース10が、断熱材で構成され、対象物収容空間1Aの上側の開口を開放可能に閉鎖する蓋7を更に備える。蓋7で対象物収容空間1Aが閉鎖されている状態で、蓋7の断熱効果によって対象物Aの温度を目標とする温度に管理しやすい。対象物収容空間1Aが蓋7の操作により開放可能であるため、対象物Aの対象物収容空間1Aに対する出し入れが容易である。
【0054】
熱交換器4は、流路面41aと、流路面41aに凹設された溝42とを有する流路形成板41と、流路面41aに重ねられたカバー面31aと、カバー面31aとは反対側で対象物Aと近接する熱交換面31bとを有する温調板(例えば、底壁31)と、を有し、熱媒流路40は、溝42がカバー面31aで覆われることによって構成される。2枚の板材の貼り合わせにより熱交換器4が構成されるので、熱交換器4を簡便に製造できる。また、熱交換器4の熱抵抗が小さくなり、熱交換性能の向上が図られる。
【0055】
図6A又は
図6Bを参照して、温調板としての底壁31のカバー面31aと、流路形成板41の流路面41aとはどちらも、無極性樹脂の皮膜49で覆われている。皮膜49は、アルミニウム合金の板素材の表面を化成処理し、化成処理済の表面に無極性樹脂を主成分とする接着剤を塗布し、塗布された接着剤を乾燥することによって形成される。皮膜49は、板素材の表面に形成される化成処理層49aと、化成処理層49aに積層される樹脂層49bとで構成される。皮膜49は、熱融着性を有する。温調板としての底壁31と、流路形成板41とは、熱融着により貼り合わされる。蝋付け等と対比して、熱交換器4ひいては箱体1を大型化することができ、対象物収容空間1Aの容積を大型化できる。接合に寄与するのは、熱媒流路40を画定している面以外の箇所である。逆に言えば、熱媒流路40を画定している面には、皮膜49が残存する。皮膜49は、無極性樹脂製であるため、熱媒がアルカリ性を有していても、アルミニウム合金製の温調板及び流路形成板41の腐食を防止できる。また、皮膜49の厚さは数μm~数十μmであるため、熱交換器4の熱抵抗を増大させず、熱交換性能が高く維持される。
【0056】
(第2実施形態)
次に、
図7を参照して、第1実施形態との相違を中心に、第2実施形態に係る温調ケース210について説明する。本実施形態では、冷却機構206の構成が第1実施形態のものと相違する。
【0057】
冷却機構206は、循環路60、バッテリ68、及びコントローラ69と共に、ペルチェ素子が組み込まれた冷却室261及びポンプ262を有する。冷却室261及びポンプ262は、循環路60上に設けられている。図示例では、冷却室261がポンプ262に対して流入口60B側に配置されているが、配置は逆でもよい。
【0058】
ペルチェ素子そのものは公知であるため、その動作原理についての説明を省略する。ペルチェ素子は、ペルチェ効果を応用した熱電素子であり、電力を消費して熱を移動させる機能を有する。バッテリ68は、ペルチェ素子とポンプ262の電源として機能する。コントローラ69は、ペルチェ素子及びポンプ262の動作を制御し、熱媒及び対象物Aの温度を目標とする温度に制御する。
【0059】
熱媒はポンプ262で圧送され、循環路60の流出口60A及び接続部8Aを介して熱交換器4に供給され、流入口43Aを介して熱媒流路40に流入する。熱媒は、熱媒流路40を通流する過程で、温調板としての底壁31の固体伝熱により、対象物Aとの間で熱交換を行う。熱媒は、流出口43Bを介して熱媒流路40から流出し、接続部8B及び流入口60Bを介して循環路60に流入する。熱媒は、循環路60を通流する過程で、冷却室261で冷却される。なお、温調ケース210には、ペルチェ素子で熱媒から取り去られた熱を温調ケース210外に排出する装置(図示せず)が設けられている。熱媒は熱交換器4内で対象物に寒冷を与えることができ、対象物Aが低温に保たれる。対象物Aとの熱交換により熱媒が昇温したとしても、冷却室261で熱媒は降温される。
【0060】
本実施形態によれば、ペルチェ素子を使用した簡素な構成により、熱交換器4で対象物を冷却できる。温調ケース210の下部構造を簡素化できる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、
図8A及び
図8Bを参照して、上記実施形態との相違を中心に、第3実施形態に係る温調ケース310について説明する。冷却機構206そのものは第2実施形態のものと同様であるが、冷却機構206が箱体1に対して取外し可能である点で、本実施形態は、上記の実施形態のいずれとも相違している。
【0062】
外箱2は、対象物収容空間1A及び断熱材充填空間1Cを形成する。断熱材5が、外箱2の底壁21上に載置されている。冷却機構6は、箱体1とは別個の冷却ユニット筐体9に収容されている。冷却ユニット筐体9は、箱体1に対して取外し可能に装着される。接続部308A,308Bは、上記の実施形態と概ね同じ構造を有するが、箱体1と、これとは別個の冷却ユニット筐体9とに分かれて設けられている点で、上記実施形態とは相違している。これにより、冷却機構6は、状況に応じて熱交換器4から分離されることが許容される。
【0063】
冷却ユニット筐体9は、矩形箱状であり、密閉された冷却ユニット収容空間9Bを形成する。冷却ユニット筐体9は、平面視で矩形状の底壁91、底壁91の上方に位置付けられる上壁92、及び底壁91の各辺縁と上壁92の各辺縁を上下に接続する周壁93を備える。冷却ユニット収容空間9Bは、これらの壁91~93の内面によって画定される。
【0064】
冷却機構206は、断熱性を有する被覆材59で覆われており、被覆材59の外観は、冷却ユニット収容空間9Bと同形状の直方体状である。冷却機構206は、被覆材59で覆われた状態で冷却ユニット収容空間9Bに収容され、被覆材59が、冷却ユニット収容空間9Bに充填される。
【0065】
導通管384A,384Bは、上記の実施形態と同様にして設けられている。本実施形態では、導通管384A,384Bの先端部が、断熱材5の底壁部51及び外箱2の底壁21を貫通し、箱体1に対して下方に突出している。継手380A,380Bは、箱体1側の第1継手381A,381Bと、冷却ユニット筐体9側の第2継手389A,389Bとで構成される。第1継手381A,381Bは、導通管384A,384Bの先端部によって構成され、雄型である。第2継手389A,389Bは、冷却ユニット筐体9の上壁に形成された凹部によって構成され、雌型である。
【0066】
冷却ユニット筐体9の上壁92の上面と箱体1の底面(外箱2の底壁21の外面)とを重ね合わせると、第2継手389A,389Bが、第1継手381A,381Bと接続される。これにより、冷却機構6が熱交換器4と機械的に接続される。また、熱媒流路40が、導通管384A,384Bを介して循環路60と流体的に連通され、熱媒を循環させる閉回路が構成される。
【0067】
本実施形態によれば、冷却機構206が、冷却ユニット筐体9に収容されてユニット化される。この冷却ユニット筐体9が、箱体1に着脱可能に装着されるため、対象物Aを温調した状態を維持しやすい。冷却機構206のメンテナンスを容易に行うことができ、また、対象物Aの温調を必要としない状況で箱体1の取扱いやすさが向上する。なお、冷却ユニット筐体9が箱体1から分離可能である場合において、冷却ユニット筐体9は、上記の冷却機構206に代えて、第1実施形態と同様の蒸気圧縮冷凍サイクルで作動する冷却機構6を収容していてもよい。
【0068】
(変形例)
上記の実施形態は一例であり、上記構成は、本発明の範囲内で適宜追加、変更、又は削除可能である。
【0069】
上記の実施形態では、熱交換器4が内箱3の底壁31を部分的に構成している。熱交換器4は、対象物収容空間1Aを形成しているその他の壁、例えば、内箱3の周壁32,33のいずれかを構成してもよい。複数の熱交換器4が、2以上の壁をそれぞれ構成していてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 箱体
1A 対象物収容空間
1B 冷却ユニット収容空間
1C 断熱材充填空間
2 外箱
21 底壁
22,23 周壁
3 内箱
31 底壁
31a カバー面
31b 熱交換面
32,33 周壁
34,35 フランジ
4 熱交換器
40 熱媒流路
41 流路形成板
41a 流路面
42 溝
43A 流入口
43B 流出口
49 皮膜
49a 化成処理層
49b 樹脂層
5 断熱材
51 底壁部
52 周壁部
59,359 被覆材
6,206 冷却機構
60 循環路
60A 流出口
60B 流入口
61 圧縮機
62 凝縮器
63 膨張弁
68 バッテリ
69 コントローラ
261 冷却室
262 ポンプ
7 蓋
71 嵌合部
72 載置部
73 断熱材
74 板金材
8A,8B 接続部
80A,80B 継手
84A,84B 導通管
85A,85B 第1継手
86A,86B 第2継手
308A,308B 接続部
380A,380B 継手
381A,381B 第1継手
384A,384B 導通管
389A,389B 第2継手
9 冷却ユニット筐体
9B 冷却ユニット収容空間
91 底壁
92 上壁
93 周壁
10,210,310 温調ケース
A 対象物