(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140394
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】焼成用治具
(51)【国際特許分類】
C04B 35/64 20060101AFI20241003BHJP
C23C 4/11 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
C04B35/64
C23C4/11
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051519
(22)【出願日】2023-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智実
(72)【発明者】
【氏名】小野田 和洋
(72)【発明者】
【氏名】松永 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広務
【テーマコード(参考)】
4K031
【Fターム(参考)】
4K031AA03
4K031AB02
4K031BA01
4K031CB42
4K031CB43
4K031CB48
(57)【要約】
【課題】安定的に多段積みすることができ、通気性が良好な焼成用治具を提供すること。
【解決手段】ここに開示される焼成用治具100は、被焼成材料を載置するための焼成用治具であって、略矩形状の底面12と、該底面12の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁14と、を有する基材10と、底面12の少なくとも一部を被覆するセラミックからなる被膜20と、を備えている。底面12は、複数の貫通孔30を有し、底面12と側壁14とがなす角はそれぞれ鋭角であり、側壁14にはガスが流通可能に構成されたガス流通部16が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成材料を載置するための焼成用治具であって、
略矩形状の底面と、該底面の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁と、を有する基材と、
前記底面の少なくとも一部を被覆するセラミックからなる被膜と、
を備えており、
前記底面は、複数の貫通孔を有し、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角であり、
前記側壁にはガスが流通可能に構成されたガス流通部が設けられている、焼成用治具。
【請求項2】
前記ガス流通部は、前記側壁を該側壁の板厚み方向に貫通する貫通孔である、請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項3】
前記底面が有する複数の貫通孔の孔径は、前記側壁が有する貫通孔の孔径よりも小さい、請求項2に記載の焼成用治具。
【請求項4】
前記底面が有する複数の貫通孔および前記側壁が有する複数の貫通孔は、エッチング孔である、請求項2に記載の焼成用治具。
【請求項5】
前記底面は、該底面と前記側壁との接続部分の近傍において、前記底面の外表面側から内表面側に向けて凹んだ溝部を有している、請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項6】
被焼成材料を載置するための焼成用治具の製造方法であって、
基材に複数の貫通孔を形成することと、
前記基材が底面と側壁とを有するように成形することと、
前記基材にセラミックからなる被膜を形成することと、
を含み、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角となるように成形する、焼成用治具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば積層セラミックコンデンサ(Multilayer Ceramic
Capacitors:MLCC)等の電子部品の焼成には、セラミックからなる焼成用治具(焼成用容器)が用いられている。一例として、特許文献1には、セラミック製の第1線条部と、セラミック製の第2線条部と、を有し、第1線条部と第2線条部とが交差することによって、格子をなし、該格子によって画成される複数の貫通孔を有するセラミック格子体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MLCC等の小型電子部品は、性能発現性や生産性の観点からなるべく高速、短時間で焼成することが求められている。その一方で、焼成用治具の取扱い性や生産効率向上の観点からは、対向する一対の側壁を有する形態であることが好ましい。その一方で、側壁を有する場合には、通気性が低くなる傾向にあり、バインダ等が不均一に溜まる虞がある。
【0005】
また、特許文献1の比較例においては、ニッケル線材を平織りにして形成したニッケル金網にジルコニアをコートした格子体が開示されている。しかしながら、かかる格子体は、機械的強度が低いために、繰り返し使用した際には変形することが記載されている。側壁を有するように(すなわち、段積みできるように)加工した際には、曲げ部の強度がさらに低下する虞がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、安定的に多段積みすることができ、通気性が良好な焼成用治具を提供することを目的とする。また、他の目的は、上記した焼成用治具を好適に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、ここに開示される焼成用治具が提供される。ここに開示される焼成用治具は、被焼成材料を載置するための焼成用治具であって、略矩形状の底面と、該底面の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁と、を有する基材と、上記底面の少なくとも一部を被覆するセラミックからなる被膜と、を備えている。上記底面は、複数の貫通孔を有している。上記底面と上記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角であり、上記側壁にはガスが流通可能に構成されたガス流通部が設けられている。
【0008】
かかる構成によれば、焼成用治具が基材と被膜とから構成され、基材が側壁を有していることにより、焼成用治具の機械的強度が向上する。また、底面と側壁とがなす角が鋭角となるように構成されることにより、安定して多段積みをすることができる。さらに、側壁がガス流通部を有することにより通気性が向上し、被焼成材料を焼成する際の脱脂性が向上する。したがって、高品質な電子部品等を製造することができる焼成用治具が実現される。
【0009】
ここに開示される焼成用治具の好ましい一態様では、上記ガス流通部は、上記側壁を該側壁の板厚み方向に貫通する貫通孔である。
かかる構成によれば、好適に通気性を向上させることができる。
【0010】
ここに開示される焼成用治具の好ましい一態様では、上記底面が有する複数の貫通孔の孔径は、上記側壁が有する貫通孔の孔径よりも小さい。
かかる構成によれば、被焼成材料が外部に落下することを防止しつつ、通気性を好適に向上させることができる。
【0011】
ここに開示される焼成用治具の好ましい一態様では、上記底面が有する複数の貫通孔および上記側壁が有する複数の貫通孔は、エッチング孔である。
かかる構成によれば、平滑性や均一性の高い貫通孔であるため、被焼成材料をより好適に支持することができる。また、より好適な通気性向上が実現される。
【0012】
ここに開示される焼成用治具の好ましい一態様では、上記底面は、該底面と上記側壁との接続部分の近傍において、上記底面の外表面側から内表面側に向けて凹んだ溝部を有している。
かかる構成によれば、より安定して焼成用治具を多段積みすることができる。
【0013】
上記他の目的を達成するべく、ここに開示される焼成治具の製造方法が提供される。ここに開示される製造方法は、被焼成材料を載置するための焼成用治具の製造方法であって、基材に複数の貫通孔を形成することと、上記基材が底面と側壁とを有するように成形することと、上記基材にセラミックからなる被膜を形成することと、を含む。上記底面と上記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角となるように成形する。
かかる構成によれば、安定して多段積みすることができる焼成用治具を提供することができる。また、より好適な通気性を有する焼成用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る焼成用治具を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、焼成用治具に被焼成材料を載置して積み上げた状態を模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、焼成用治具の一部分を拡大した平面図である。
【
図4】
図4は、ガス流通部の他の一例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る焼成用治具を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は、実際の寸法関係を反映するものではない。以下の説明において、図面中の符号Xは焼成用治具の「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「厚み方向(高さ方向ともいう。)」を示すものとする。
【0016】
ここに開示される焼成用治具は、電子部品等の被焼成材料を焼成する際に用いられる治具である。焼成用治具は、例えば被焼成材料を載置するための焼成用セッター、プレート、匣鉢等を包含する概念であり得る。焼成用治具は、その表面に被焼成材料が載置された状態で、被処理材料とともに焼成炉内で焼成される。ここで、被焼成材料は、例えば電子部品に用いられるセラミック材料や、車載用のMLCCなどであり得る。焼成用治具は、例えば、被焼成材料が供給される供給装置と、被焼成材料を焼成する焼成炉と、焼成後の被焼成材料を回収する回収装置と、を備える焼成システムにおいて繰り返し用いられ得る。
【0017】
図1は、ここに開示される焼成用治具100を模式的に示す斜視図である。
図2は、焼成用治具100に被焼成材料50を載置して積み上げた状態を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、焼成用治具100は、基材10と、当該基材10の少なくとも一部を被覆する被膜20と、を備えている。基材10は、底面12と、該底面12の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁14と、を有している。基材10において、底面12と側壁14とがなす角θは、鋭角である。底面12には、複数の貫通孔30が設けられている。複数の貫通孔30は、底面12の厚み方向(底面12の板厚み方向、
図1のZ方向)に基材10および被膜20を貫通している。また、側壁14には、ガスが流通可能に構成されたガス流通部16が設けられている。
【0018】
焼成用治具100のサイズは、焼成炉や被焼成材料50の種類等によって適宜調整されればよく、特に限定されない。焼成用治具100の奥行方向Xの長さは、例えば、100mm以上350mm以下であることが好ましく、100mm以上330mm以下であってもよい。また、焼成用治具100の幅方向Yの長さは、奥行方向Xと同等程度であってよく、例えば、100mm以上350mm以下であることが好ましく、100mm以上330mm以下であってもよい。焼成用治具100の上下方向Zの長さは、特に限定されないが、例えば、5mm以上25mm以下であることが好ましく、10mm以上15mm以下であることがより好ましい。これにより、多段積みした場合でも通気性を良好にすることができる。
【0019】
焼成用治具100の厚み(基材10と被膜20との合計厚み。以下同じ。)t1は、機械的強度を確保する観点から、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上であってもよい。一方で、熱容量を低くする観点からは、焼成用治具100の厚みt1は、より薄いことが好ましい。かかる観点から焼成用治具100の厚みt1は、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。これにより、焼成用治具の温度追従性を好適に向上させることができる。なお、焼成用治具の厚みt1は、焼成用治具の厚みを無作為的に3点以上(例えば5点)測定した平均値(平均板厚み)とすることができる。焼成用治具の厚みは、例えば電子マイクロメータ等により測定することができる。
【0020】
焼成用治具100は、上記したとおり、基材10と被膜20とを備えている。そして、当該基材10は、底面12と側壁14とを有している。これにより、焼成用治具100は一定の機械的強度を有し得る。底面12は、平面視において略矩形状である。底面12は、被焼成材料50を載置するための部材である。側壁14は、当該略矩形状の底面12の2辺から上方(斜め上方向)に延び相互に対向する。基材10が側壁14を有することにより、
図2に示すように焼成用治具100を安定して多段積みすることができる。また、側壁14は、何らかの衝撃によって被焼成材料50が外部に落下することを抑制する機能を有し得る。
【0021】
基材10の材質は、特に限定されないが、機械的強度をさらに十分に確保する観点からは、金属製であることが好ましい。基材10は、例えば、ニッケル、タングステン、ステンレス等の金属材料から構成されることが好ましい。ステンレスとしては具体的に、SUS304、SUS430、SUS410等が挙げられる。基材10を金属製とすることにより、基材10の底面12と側壁14との接続部分(以下、「曲げ部10r」ともいう。)の強度を十分に確保することができる。このため、焼成用治具100が好適に段積みできるように、基材10が底面12と側壁14とを有したとしても、機械的強度が十分に確保される焼成用治具100を実現することができる。
【0022】
ところで、電子部品等の被焼成材料50は、性能発現性や生産性の観点から高速、短時間で焼成することが好ましい。上記した金属材料の中でもニッケルは耐熱性が高く、温度追従性も良好である。また、ニッケルは加工が容易であるという利点も有する。このため、焼成用治具100の基材10としてニッケルを主成分とした基材を用いることが好ましい。これにより、被焼成材料50を高速、短時間で焼成することができる。また、電子部品等においては、ニッケルを含む導電性ペーストが用いられ得る。このため、ニッケルを主成分とした基材10を用いることにより、コンタミ等の発生をさらに低減することができる。したがって、ニッケルを主成分として構成される基材10を備える焼成用治具100を用いることにより、高品質な電子部品(例えばMLCC)を効率よく生産することができる。
【0023】
ここで、「ニッケルを主成分とする基材」とは、基材を構成する金属成分のうち、原子数基準で最も多く含まれる成分がニッケルであることを意味する。例えば、「ニッケルを主成分とする基材」とは、該基材の50atm%以上、60atm%以上、70atm%以上、好ましくは80atm%以上、90atm%以上、あるいは95atm%以上(例えば100atm%であってもよい)がニッケルから構成される基材をいう。なお、基材に含まれる金属元素の元素数は、例えば基材の断面SEM画像に対してエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を実施して求めることができる。
【0024】
上記したとおり、基材10において底面12と側壁14とがなす角θは鋭角である。底面12と側壁14とがなす角θは、例えば、10°以上85°以下であることが好ましく、20°以上80°以下であることがより好ましく、30°以上70°以下であることがさらに好ましく、50°以上70°以下であることが特に好ましい。基材10がこのような形状を有していることにより、焼成用治具100の強度が向上し、例えば焼成炉で焼成された際の熱により、焼成用治具100の反りや表面が波状にうねることが抑制される。また、いくつかの焼成用治具100を安定して多段積みすることができる。
【0025】
底面12は、複数の貫通孔30を有している。複数の貫通孔30は、底面12の厚み方向に基材10と被膜20とを貫通する。焼成用治具100がこのような貫通孔30を有していることにより、被焼成材料50を焼成する際の通気性が向上し、高品質な電子部品等を製造することができる。
【0026】
貫通孔30は、断面視において柱状であってもよいし、基材10の一方の表面から他方の表面に向かって断面積が小さくなるように形成された錐形状であってもよい。
図3は、ここに開示される焼成用治具100の一部を拡大した平面図である。
図3に示すように、貫通孔30の平面視における形状は、ここでは円形状(真円形状)である。ただし、貫通孔30の平面視における形状は、楕円形状であってもよいし、三角形や四角形等の多角形状であってもよい。一例として、ここに開示される焼成用治具100は、略円柱形状の貫通孔30が複数形成されている。
【0027】
特に限定されないが、底面12に設けられる貫通孔30の平均孔径r1は、後述する側壁14に設けられる貫通孔16hの平均孔径よりも小さいことが好ましい。例えば、貫通孔30の平均孔径r1は、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また、貫通孔30の平均孔径r1は、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。貫通孔30の平均孔径r1をかかるサイズとすることで、機械的強度と温度追従性とがより好適に両立される。なお、本明細書において「孔径」とは、貫通孔の開口部の最大長さのことをいう。すなわち、貫通孔30の平面視の形状が
図3に示すような円形状である場合、孔径は直径である。一方で、貫通孔30の平面視における形状が四角形である場合、孔径は対角線の長さとなる。また、「平均孔径」を算出する際には、複数(例えば100個)の貫通孔の孔径を測定し、その平均値を算出するとよい。
【0028】
また、特に限定されないが、例えば、底面12は概ね25メッシュ相当~80メッシュ相当(例えば32メッシュ相当~60メッシュ相当)の目開きを有することが好ましい。なお、「メッシュ」は、1インチ(25.4mm)あたりの網目数(線の数であり得る)を示している。
【0029】
特に限定されないが、底面12における貫通孔30のピッチP1は、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましい。これによって、隣接する貫通孔30の間隔を十分に空けることができるため、焼成用治具100の機械的強度を確保することができる。一方で、焼成用治具100における貫通孔30のピッチP1は、0.9mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。
【0030】
図3に示すように、複数の貫通孔30は、ここでは平面視において一列ごとに位置をずらした千鳥状(ジグザグ状)に形成されている。しかしながら、複数の貫通孔30を形成する位置は、千鳥状に限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、複数の貫通孔30は、行列状に配置されていてもよい。
【0031】
図4は、ガス流通部16の他の一例を模式的に示す図である。
図1および
図4に示すように、側壁14はガス流通部16を有している。側壁14にガス流通部16を設けることにより、通気性が向上して被焼成材料50を焼成する際の脱脂性が向上する。したがって、高品質な電子部品等を製造することができる。ガス流通部16は、ガスが流通可能に構成されている限りにおいて特に限定されない。例えば、ガス流通部16は、複数の貫通孔16hであることが好ましい。当該ガス流通部16としての貫通孔16hは、側壁14の板厚み方向(
図1および
図4のX方向)に当該側壁14を貫通する。
【0032】
ガス流通部16としての貫通孔16h(すなわち、側壁14に設けられる貫通孔16h)の平均孔径は、底面12に設けられる貫通孔30の平均孔径r1よりも大きいことが好ましい。これにより、通気性を好適に向上させることができる。
【0033】
特に限定されないが、貫通孔16hの平均孔径は、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また、貫通孔16hの平均孔径r2は、1.5mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。また、特に限定されないが、例えば、側壁14は概ね25メッシュ相当~80メッシュ相当(例えば32メッシュ相当~60メッシュ相当)の目開きを有することが好ましい。
【0034】
貫通孔16hの断面視における形状は特に限定されない。例えば、貫通孔16hの断面視における形状は、底面12に設けられる貫通孔30の断面視における形状と略同様であってもよい。具体的には、貫通孔16hの断面視における形状は柱状であってもよいし、基材10の一方の表面から他方の表面に向かって断面積が小さくなるように形成された錐形状であってもよい。貫通孔16hの平面視における形状は、
図1に示すように円形状(真円形状)であってもよいし、
図4に示すように四角形状であってもよい。また、貫通孔16hの平面視における形状は、楕円形状であってもよいし、三角形や四角形等の多角形状であってもよい。
【0035】
特に限定されないが、側壁14における貫通孔16hのピッチは、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましい。これによって、隣接する貫通孔16hの間隔を十分に空けることができるため、焼成用治具100の機械的強度を確保することができる。一方で、側壁14における貫通孔16hのピッチは、0.9mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。
【0036】
図1に示すように、複数の貫通孔16hは、ここでは平面視において一列ごとに位置をずらした千鳥状(ジグザグ状)に形成されている。しかしながら、複数の貫通孔30を形成する位置は、千鳥状に限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、複数の貫通孔16hは、
図4に示すように、行列状に配置されていてもよい。
【0037】
ガス流通部16は、底面12と側壁14との接続部分(曲げ部10r)には存在しないことが好ましい。これにより、曲げ部10rの強度が向上する。また、ガス流通部16は、底面12から所定のクリアランス(距離)L1(
図1参照)を設けて配置されることが好ましい。例えば、ガス流通部16は、所望するMLCC等の電子部品の高さ(大きさ)よりも、底面12からの距離L1が長くなる位置に配置される。これにより、何らかの衝撃によって、MLCC等の電子部品が側壁14にぶつかったとしても、ガス流通部16から電子部品が外部に落下することを防止する。底面12からガス流通部16が形成される位置までの距離L1は、MLCC等の電子部品の大きさに合わせて適宜変更すればよく、特に限定されるものではないが、例えば1mm~3mm程度であるとよい。
【0038】
特に限定されないが、上記した貫通孔16hおよび貫通孔30は、エッチング処理によって形成されたエッチング孔であることが好ましい。エッチング孔は、例えばドリル等で形成された貫通孔よりもバリが少なく、平滑性や均一性の高い貫通孔である。また、エッチング孔は、比較的安価に形成することができ、コストの面からも好ましい。
【0039】
図5は、底面12に配置される溝部18を模式的に示す図である。
図5に示すように、底面12の外表面12b(すなわち、被焼成材料50が載置されない側の表面)には、溝部18が設けられていることが好ましい。かかる溝部18は、他の焼成用治具100の側壁14が嵌るように構成される。溝部18は、底面12と側壁14との接続部分(曲げ部10r)の近傍において形成されている。底面12が溝部18を有していることにより、安定して多段積みをすることができる。なお、「底面と側壁との接続部分(曲げ部)の近傍」とは、当該曲げ部から概ね10mm以内の位置(例えば、当該曲げ部から5mm以内の位置)のことをいう。
【0040】
溝部18は、底面12の外表面側から内表面側に向けて所定の深さd1で凹んだ形状である。溝部18は、他の焼成用治具100の側壁14が嵌るように構成される限りにおいて特に限定されない。例えば、溝部18は、焼成用治具100の厚みt1に対する凹部深さd1の比(d1/t1)が0.1~0.8程度(好ましくは0.1~0.5)となるように構成されているとよい。これにより、底面12の強度を確保しつつ、安定的に多段積みすることができる。
【0041】
図5に示すように、溝部18は、ここでは、底面12の幅方向Yの一方の端部から他方の端部まで連続して形成されている。これにより、他の焼成用治具100の側壁14がかかる溝部18に好適に嵌るため、より安定して多段積みすることができる。ただし、溝部18は、底面12の外表面12bの一部のみに設けられていてもよい。
【0042】
このような溝部18は、例えば、基材10をエッチング処理(例えば、ハーフエッチング処理)することにより好適に形成することができる。
【0043】
基材10の大きさや厚みは、焼成炉や被焼成材料50の種類等によって適宜調整されればよく、特に限定されない。一例として、基材10の奥行方向Xの長さは、例えば、100mm以上350mm以下であることが好ましく、100mm以上330mm以下であってもよい。また、焼成用治具100の幅方向Yの長さは、奥行方向Xと同等程度であってよく、例えば、100mm以上350mm以下であることが好ましく、100mm以上330mm以下であってもよい。基材10の厚み(平均板厚み)t2は、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。また、基材10の厚みt2は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上がより好ましい。このような厚みや大きさの基材10であれば、温度追従性が良好かつ機械的強度が好適に向上する。また、基材10の一部が側壁14を有するように折り曲げ加工等が実施されても、曲げ部において十分な強度を確保することができる。
【0044】
焼成用治具100は、少なくとも基材10の一部を被覆する被膜20を備えている。被膜20はセラミックからなるセラミック被膜である。被膜20は、焼成用治具100に載置される被焼成材料50(例えば電子部品等)が基材10と反応することを防止する。セラミック成分としては、例えば、各種金属の酸化物からなるセラミック(酸化物系セラミック)材料であってもよいし、炭化物、方化物、窒化物、アパタイト等の非酸化物からなるセラミック材料であってもよい。セラミック成分としては、具体的に、ジルコニア、アルミナ、ムライト、シリカ、イットリア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、コーディライト、チタン酸バリウム等が挙げられる。なかでも、セラミック成分としては、ジルコニア、アルミナ、ムライト、シリカを好ましく用いることができる。セラミック成分は、上記した中から1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
特に限定されないが、被膜20は、ジルコニア、アルミナ、ムライトおよびシリカのうち、少なくとも1種または2種以上を組み合わせたセラミック被膜であることが好ましい。なかでも、被膜20は、ジルコニアからなるジルコニア被膜であることがより好ましい。ジルコニアはMLCC等の反応性の高い小型電子部品との耐反応性が高いため、被膜20のセラミック成分として特に好ましく用いることができる。ジルコニアとしては、安定化ジルコニアが好ましく用いられ得る。安定化ジルコニアとしては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等が挙げられる。
【0046】
図1に示す形態では、焼成用治具100の基材10は、被膜20によって両面全面を被覆(コート)されているが、被膜20の被覆の形態はこれに限定されない。被膜20は、上記したとおりセラミックから構成され、被焼成材料50が基材10と反応することを防止する。かかる観点からは、被焼成材料50が配置される部分が被膜20によって被覆されているとよい。例えば、基材10の底面12の表面であって、被焼成材料50が載置される側の表面(内表面12a)の少なくとも一部が被膜20によって被覆されていればよい。これにより、被焼成材料50が金属製の基材10と反応することを好適に抑制する。特に限定されないが、被膜20は、底面12の表面であって、貫通孔30が形成されている領域に設けられているとよい。これにより、より高品質な電子部品を製造することができる。被焼成材料50が基材10と反応することをさらに好適に防止する観点からは、底面12の内表面全面が被膜20によって被覆されていることが好ましく、底面12の両面全面が被膜20によって被覆されていることがより好ましい。
【0047】
基材10の側壁14は、被膜20によって被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。基材10と被焼成材料50とが反応することを好適に防止する観点からは、側壁14の内壁面14aが被膜20によって被覆されていることが好ましく、内壁面14aおよび外壁面14bが被膜20によって被覆されていることがより好ましい。ただし、側壁14は、被焼成材料50を焼成する際に被焼成材料50と直接接触する可能性が低いため、被膜20を有していなくてもよい。
【0048】
被膜20の厚み(平均厚み)t3は、薄すぎる場合には基材10と被焼成材料50との反応を十分に抑制できないことがあり得る。一方で、被膜20の厚みt3が厚すぎる場合には焼成用治具100の温度追従性が低下する虞がある。このため、被膜20の片面の厚みt3は、例えば20μm以上500μm以下とすることが好ましく、30μm以上250μm以下であってもよく、50μm以上100μm以下であってもよい。なお、被膜の厚みt3は、被膜の厚み(片面厚み)を無作為的に3点以上(例えば5点)測定した平均値(平均厚み)とすることができる。被膜の厚みは、例えば焼成用治具の断面を電子顕微鏡で観察することにより求めることができる。
【0049】
特に限定されないが、被膜20は、例えば、セラミック溶射によって形成されたセラミック溶射被膜であることが好ましい。これにより、被膜20と基材10との密着性が向上し、焼成用治具100を繰り返し使用した場合でも、基材10と被焼成材料50とが反応することを好適に抑制し得る。
【0050】
上記した焼成用治具100は、例えば以下の手順で作製することができる。ここに開示される焼成用治具100の製造方法は、例えば、基材10に複数の貫通孔を形成すること(貫通孔形成工程)と、基材10が底面12と側壁14とを有するように成形すること(成形工程)と、基材10に被膜20を形成すること(被膜形成工程)と、を少なくとも含み得る。ただし、ここに開示される焼成用治具100の製造方法をこれに限定することを意図したものではない。また、後述するように、貫通孔形成工程と成形工程と被膜形成工程とは順不同に実施することができる。
【0051】
貫通孔形成工程では、まず、基材10としての金属板(例えばニッケル板)を用意する。金属板の厚みや大きさ等は、特に限定されず、所望する被焼成材料等に合わせて適宜選択すればよい。次いで、金属板に複数の貫通孔を形成する。例えば、複数の貫通孔は後述する成形工程において、底面12となる領域よりも側壁14となる領域の孔径の方が大きくなるように調整されているとよい。貫通孔の形成方法は、特に限定されないが、例えば、エッチング処理(腐食処理)、レーザー加工、ドリル加工、パンチング加工等が挙げられる。なかでも、ここに開示される焼成用治具100の複数の貫通孔は、エッチング処理によって形成することが好ましい。エッチング処理によって複数の貫通孔を形成することにより、ドリル等を用いて形成する場合よりも、バリが低減し、平滑性の高い貫通孔を形成することができる。また、エッチング処理は、他の加工方法と比較して工程数が少なく、比較的安価に複数の貫通孔を形成することができるため、コストの面からも好ましい。エッチング処理は、室温または沸点以下の温度(例えば20℃~40℃程度)に加熱した硫酸、塩酸、硝酸、過酸化水素水等を用いた湿式エッチング(ウェットエッチング)が好適である。
【0052】
成形工程では、基材10を所望する形状に成形する。具体的には、基材10が底面12と底面12の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁14とを有するように成形する。このとき、底面12と側壁14とがなす角θが鋭角(例えば10°以上85°以下、好ましくは50°以上70°以下)となるように、基材10を成形する。かかる成形工程は、例えば絞り加工(深絞り加工を含む)と呼ばれるプレス加工によって実施され得る。ただし、焼成用治具200の成形は、絞り加工に限定されない。例えば、基材210の表面に被膜220が形成された平板状の部材を複数用意して、複数の部材の端辺をそれぞれ溶接接合(例えばレーザー溶接)することによって、底面12と側壁14とを有する治具を作製してもよい。
【0053】
被膜形成工程では、基材10に対して被膜20を形成する。被膜20の形成方法は、特に限定されないが、例えば、溶射、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や、物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)、スパッタリング、スピンクート、ディッピング、噴霧塗装等が挙げられる。なかでも、ここに開示される焼成用治具100の被膜20は、セラミック溶射によって形成することが好ましい。これにより、基材10との密着性が良好な被膜20を形成することができる。溶射方法は特に限定されないが、例えば、大気プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)、減圧プラズマ溶射(LPS:low pressure plasma spraying)、加圧プラズマ溶射(high pressure plasma spraying)等のプラズマ溶射法、酸素支燃型高速フレーム(High Velocity Oxygen Flame:HVOF)溶射法、ウォームスプレー溶射法および空気支燃型(High Velocity Air flame:HVAF)高速フレーム溶射法等の高速フレーム溶射等が挙げられる。
【0054】
特に限定されないが、基材10と被膜20との密着性や密着強度を向上させるために、セラミック溶射によって被膜20を形成する前に、基材10の表面を粗面化処理してから被膜20を形成するとよい。これにより、基材10の隙間に溶射されたセラミックが入り込みアンカー効果が発揮されて、より好適な密着強度を実現し得る。粗面化処理としては、例えば、#10~50程度の砥粒を用いたブラスト処理等を好ましく採用することができる。
【0055】
なお、上記した成形工程は、貫通孔形成工程および被膜形成工程よりも前に実施してもよい。すなわち、基材10が底面12と側壁14とを有するように成形した後で、複数の貫通孔および被膜20を形成してもよい。あるいは、成形工程は、貫通孔形成工程および被膜形成工程の後に実施してもよい。すなわち、基材10に複数の貫通孔を形成し、基材10の少なくとも一部の表面に被膜20を形成した後で、基材10が底面12と側壁14とを有するように成形してもよい。
【0056】
ここに開示される焼成用治具100は、上記したとおり、基材10と被膜20とを備え、基材10が底面12と側壁14とを有することにより、機械的強度が向上している。また、ここに開示される焼成用治具100は、底面12が複数の貫通孔30を有することで温度追従性が向上し、側壁14がガス流通部16を有することで通気性が向上しているため、より高品質な電子部品等を製造することができる。さらに、基材10が側壁14を有していることにより、安定して段積みすることができ、焼成用治具100の取扱い性が向上する。上述した焼成用治具100は、各種用途に利用可能であるが、特に電子部品等の被焼成材料を焼成する際に好適に用いることができる。
【0057】
上述した一実施形態は、ここに開示される焼成用治具の一例に過ぎない。ここに開示される技術は、他にも種々の形態にて実施することができる。以下、ここに開示される技術の他の変形例について説明する。なお、以下の説明において、特に言及している点以外は、上記第1実施形態に係る焼成用治具100と略同等の構成を採用することができる。
【0058】
図6は、変形例に係る焼成用治具200を模式的に示す図である。
図6に示すように、焼成用治具200は、略矩形状の底面212と、該底面212の2辺から上方に延び相互に対向する二対の側壁(以下、第1側壁214s、第2側壁214tともいう。)を有する基材210と、当該基材210の少なくとも一部を被覆する被膜220と、を備えている。そして、底面212は複数の貫通孔230が設けられており、第1側壁214sと第2側壁214tとの間には、ガスが流通可能に構成されたガス流通部216が設けられている。焼成用治具200が貫通孔230を有することによって、通気性が向上する。また、第1側壁214sおよび第2側壁214tを有することにより、スペーサ等を用いることなく焼成用治具200を多段積みすることができる。さらに、ガス流通部216を有することにより、通気性が向上する。したがって、高品質な電子部品等を製造することができる。
【0059】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。また、ここでの開示は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【0060】
なお、ここに開示される技術は以下の項目1~6を含んでいる。以下の項目1~6は、上記した実施形態に限定されない。
【0061】
項目1は、被焼成材料を載置するための焼成用治具に関する。項目1における焼成用治具は、
略矩形状の底面と、該底面の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁と、を有する基材と、
前記底面の少なくとも一部を被覆するセラミックからなる被膜と、
を備えており、
前記底面は、複数の貫通孔を有し、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角であり、
前記側壁にはガスが流通可能に構成されたガス流通部が設けられている。
【0062】
項目2は、項目1に記載された焼成用治具であって、
前記ガス流通部は、前記側壁を該側壁の板厚み方向に貫通する貫通孔である。
【0063】
項目3は、項目2に記載された焼成用治具であって、
前記底面が有する複数の貫通孔の孔径は、前記側壁が有する貫通孔の孔径よりも小さい。
【0064】
項目4は、項目2または3に記載された焼成用治具であって、
前記底面が有する複数の貫通孔および前記側壁が有する複数の貫通孔は、エッチング孔である。
【0065】
項目5は、項目1~4のいずれか一つに記載された焼成用治具であって、
前記底面は、該底面と前記側壁との接続部分の近傍において、前記底面の外表面側から内表面側に向けて凹んだ溝部を有している。
【0066】
項目6は、被焼成材料を載置するための焼成用治具の製造方法に関する。項目6における製造方法は、
基材に複数の貫通孔を形成することと、
前記基材が底面と側壁とを有するように成形することと、
前記基材にセラミックからなる被膜を形成することと、
を含み、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角となるように成形する。
【符号の説明】
【0067】
10 基材
10r 曲げ部
12 底面
12a 内表面
12b 外表面
14 側壁
14a 内壁面
14b 外壁面
16 ガス流通部
16h 貫通孔
18 溝部
20 被膜
30 貫通孔
50 被焼成材料
100 焼成用治具
200 焼成用治具
210 基材
212 底面
214 第1側壁
214s 第1側壁
214t 第2側壁
216 ガス流通部
220 被膜
230 貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2023-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成材料を載置するための焼成用治具であって、
矩形状の底面と、該底面の2辺から上方に延び相互に対向する一対の側壁と、を有する基材と、
前記底面の少なくとも一部を被覆するセラミックからなる被膜と、
を備えており、
前記底面は、複数の貫通孔を有し、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角であり、
前記側壁にはガスが流通可能に構成されたガス流通部が設けられており、
前記底面は、該底面の外表面側から内表面側に向けて凹んだ溝部を有しており、
前記溝部は、他の前記焼成用治具の側壁が嵌るように構成されている、焼成用治具。
【請求項2】
前記ガス流通部は、前記側壁を該側壁の板厚み方向に貫通する貫通孔である、請求項1に記載の焼成用治具。
【請求項3】
前記底面が有する複数の貫通孔の孔径は、前記側壁が有する貫通孔の孔径よりも小さい、請求項2に記載の焼成用治具。
【請求項4】
前記底面が有する複数の貫通孔および前記側壁が有する複数の貫通孔は、エッチング孔である、請求項2に記載の焼成用治具。
【請求項5】
被焼成材料を載置するための焼成用治具の製造方法であって、
基材に複数の貫通孔を形成することと、
前記基材が底面と側壁とを有するように成形することと、
前記基材にセラミックからなる被膜を形成することと、
を含み、
前記底面と前記側壁とがなす角はそれぞれ鋭角となるように成形し、
前記底面において該底面の外表面側から内表面側に向けて凹んだ溝部を成形し、該溝部は、他の前記焼成用治具の側壁が嵌るように成形する、焼成用治具の製造方法。