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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140395
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両用運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20241003BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241003BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20241003BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W50/14
B62D6/00
B60W30/12
B60W40/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051521
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】川添 信幸
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA15
3D232DA84
3D232DA87
3D232DA90
3D232EA01
3D232EB04
3D232GG01
3D241BA12
3D241BA60
3D241BA70
3D241BB27
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DC34Z
3D241DC37Z
(57)【要約】
【課題】車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上で有利な車両用運転支援装置を提供する。
【解決手段】区画線認識情報と、車両情報と、運転者操舵量とに基づいて、操舵系24を制御する度合いを示す車線維持制御量を0%から100%の範囲で算出し、算出された車線維持制御量に基づいて操舵系24の制御を行なうと共に、運転者操舵量が第1所定値以上であり、かつ、車線維持制御量が第2所定値以下である場合に、表示部に、車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なうようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵系を制御することにより車両を走行車線に沿って走行させる車線維持制御を行なう車両用運転支援装置であって、
前記車両が走行する車線の区画線の認識結果を示す区画線認識情報と、前記車両の状況を示す車両情報と、ステアリングホイールに運転者から入力された運転者操舵量とに基づいて、前記操舵系を制御する度合いを示す車線維持制御量を算出し、算出された車線維持制御量に基づいて前記操舵系の制御を行なう車線維持制御部と、
前記運転者の前方箇所に設けられた表示部と、
前記運転者操舵量が第1所定値以上であり、かつ、前記車線維持制御量が第2所定値以下である場合に、前記表示部に、前記車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なう警告制御部と、
を備えることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記車線の延在方向に分割された複数の区画領域を表示可能に構成され、
前記警告制御部による前記第1警告表示は、前記複数の区画領域のうち、少なくとも1つの第1区画領域の表示形態を第1状態から前記第1状態と異なる第2状態へ変更することでなされる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用運転支援装置。
【請求項3】
前記警告制御部による前記第1警告表示は、前記運転者操舵量が前記第1所定値よりも高い第3所定値以上であり、且つ、前記車線維持制御量が前記第2所定値よりも小さい第4所定値以下の場合に、前記複数の区画領域のうち前記第1領域及び前記第1領域よりも車両に近い第2領域の双方の表示形態を前記第1状態から前記第2状態へ変更することでなされる、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用運転支援装置。
【請求項4】
前記警告制御部による前記第1警告表示は、前記運転者操舵量が大きくなるにつれてまたは前記車線維持制御量が低くなるにつれて、前記複数の区画領域のうち前記車両から遠い前記区画領域から前記車両に近い前記区画領域に向かって順番に前記区画領域の表示形態を第1状態から前記第1状態と異なる第2状態へ変更することでなされる、
ことを特徴とする請求項3記載の車両用運転支援装置。
【請求項5】
前記警告制御部は、前記車線の区画線の認識結果の認識度が認識度第1所定値以下になると、前記区画領域の表示形態を前記第1状態または前記第2状態から前記第1状態および前記第2状態と異なる第3状態に変更することで前記認識度が低下傾向にあることを示す第2警告表示を行なう、
ことを特徴とする請求項2から4の何れか1項記載の車両用運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラによって車両が走行する車線の区画線を撮像し、その区画線認識情報、車速などの車両情報、ステアリングホイールに運転者から入力された運転者操舵量に基づいて操舵機構を制御することにより車両を走行車線の中央に沿って走行させる車線維持制御(Lane keep assist:LKA)を行なう車両用運転支援装置が知られている(特許文献1参照)。
このような車両用運転支援装置では、車両が直線道路を走行する場合は、運転者によるステアリングホイールの操作はほとんど不要であり、車線維持制御の度合いは高くなる。
一方、車両が高速道路のジャンクションなどのようにカーブの曲率が大きい道路を走行する場合は、カメラの性能の限界から区画線認識情報の精度が大きく低下することから、運転者によるステアリングホイールの操作を積極的に行なうことが必要であり、車線維持制御の度合いは低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-19012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したように、直線道路や曲率の小さなカーブを走行する場合と、カーブの曲率が大きい道路を走行する場合とで、車両用運転支援装置による車線維持制御の度合いが大きく変化すること、言い換えると、運転者によるステアリングホイールの操作の必要性が大きく変化することを、運転者が正確に認識することは容易ではない。
そのため、例えば、車両が直線道路や曲率が小さなカーブを走行しておりステアリングホイールの操作が必要でない状況下において運転者が無意識にステアリングホイールに力を加えてしまうと、車両用運転支援装置では、運転者によって積極的にステアリングホイールの操作がなされたと推定して車線維持制御の度合いを低く制御することから、車両が車線の中央から幅方向の一方に寄りがちになったり、車両がふらついたりといった不具合が生じることが懸念される。
一方、車両が曲率の大きなカーブを走行する際に、車線維持制御が適切に行われると期待した運転者がステアリングホイールの操作を積極的に行なわないと、上述したようにカメラの性能の限界から区画線認識情報の精度が大きく低下することから、車線維持制御の精度が低下する可能性があり、車両が車線の中央から幅方向の一方に寄りがちになったり、車両がふらついたりといった不具合が生じることが懸念される。
【0005】
前述したように、車線維持制御は、完全な自動運転制御ではなく必要に応じて運転者の操作が必要であるが、運転者は必ずしもこのことを認識しておらず、車線維持制御は自動運転制御または自動運転制御に近いものであり、運転者の操作の必要性が低いものであると期待している場合が多い。
したがって、上述した不具合が生じると、運転者が期待する車線維持制御と、実際に実行される車線維持制御との乖離(期待外れ)をもたらすことから、運転者に違和感を与えることになる。
つまり、このような違和感は、車両用運転支援装置によって実行されている車線維持制御の度合いの高低や、運転者によってステアリングホイールを操作する必要性の高低を運転者が適切に認識することができれば解消される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上で有利な車両用運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、操舵系を制御することにより車両を走行車線に沿って走行させる車線維持制御を行なう車両用運転支援装置であって、前記車両が走行する車線の区画線の認識結果を示す区画線認識情報と、前記車両の状況を示す車両情報と、ステアリングホイールに運転者から入力された運転者操舵量とに基づいて、前記操舵系を制御する度合いを示す車線維持制御量を算出し、算出された車線維持制御量に基づいて前記操舵系の制御を行なう車線維持制御部と、前記運転者の前方箇所に設けられた表示部と、前記運転者操舵量が第1所定値以上であり、かつ、前記車線維持制御量が第2所定値以下である場合に、前記表示部に、前記車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なう警告制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施の形態によれば、運転者が無意識にステアリングホイールを操作したときに、車線維持制御量が低下傾向にあることを運転者に的確に認識させることができるので、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る車両用運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1警告表示の表示例を示す説明図であり、(A)は第1警告表示がなされていない状態を示し、(B)は1つの区画領域の表示形態が第2状態となった状態を示し、(C)は2つの区画領域の表示形態が第2状態となった状態を示し、(D)は3つの区画領域の表示形態が第2状態となった状態を示す。
図3】第2警告表示の表示例を示す説明図であり、(A)は第1、第2警告表示がなされていない状態を示し、(B)は第2警告表示がなされ表示形態が第3状態となった状態を示し、(C)は第2警告表示がなされ表示形態が第3状態となりかつ第3状態がより強調された状態を示す。
図4】メーターディスプレイの表示例を示す説明図である。
図5】車両と車両が走行する車線(道路)の説明図である。
図6】車両用運転支援装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態の車両用運転支援装置は、操舵機構を制御することにより車両を走行車線に沿って走行させる車線維持制御を行なうものである。
なお、本明細書において、車線維持制御とは、レベル0からレベル5の6段階で規定される自動運転レベルのうちのレベル2(運転支援)およびレベル3(部分運転自動化)の制御に相当し、運転主体は人(運転者)である。
すなわち、車線維持制御は、主として高速道路で使用され、運転者の運転を支援し運転者の疲労軽減を目的とするものである。
【0010】
図1に示すように、車両用運転支援装置10は、カメラ12、ナビゲーション装置14、車速センサ16、加速度センサ18、制御装置(制御ECU)20、操舵アクチュエータ22、操舵系24、操舵量検出部26、ヘッドアップディスプレイ28、メーターディスプレイ30などを含んで構成されている。
【0011】
図4に示すように、カメラ12は車両32に搭載され、車両32の前方を撮像して車線(道路)34の幅方向両側で車線34に沿って延在する区画線(白線)36を含む画像情報を生成し、制御装置20に供給するものである。
【0012】
図1に示すように、ナビゲーション装置14は、何れも図示しないが、GPSシステムのように測位衛星からの測位信号を受信して車両32の位置情報を特定する測位装置と、道路情報を含む地図情報を位置情報と紐づけた地図データベースとを含んで構成されている。
ナビゲーション装置14は、車両32の位置情報と地図データベースから読み出した道路情報とに基づいて車両32が道路上のどの位置を走行しているかといった道路情報上における車両32の位置情報や、車両32が走行中の道路およびこれから走行する予定の道路が直線かカーブかといった形状、また、カーブの曲率の大きさといった情報を含む形状情報を制御装置20に供給するものである。
【0013】
車速センサ16は、車両32の走行速度を検出して車速情報を制御装置20に供給するものである。
車速センサ16として、車輪速センサなど従来公知のセンサが使用可能である。
加速度センサ18は、車両32に加わる加速度を検出して車両32の走行中の姿勢変化などを表す加速度情報を制御装置20に供給するものである。
【0014】
操舵系24は、何れも図示しないが、ステアリングハンドル、ステアリングハンドルに連結されたステアリングシャフト、ステアリングシャフトの回転に基づいて操舵輪を操舵する操舵機構を含んで構成されている。
操舵アクチュエータ22は、ステアリングシャフトに操舵トルクを加えて回転させるアクチュエータであり、いわゆる、パワーステアリングモータなどで構成されている。
【0015】
操舵量検出部26は、運転者のステアリングホイールの回転操作によって発生するステアリングシャフトの運転者操舵量を検出して運転者操舵量情報として制御装置20に供給するものである。
なお、本実施の形態では、運転者操舵量情報は、操舵トルクおよび操舵角を含むものとする。
また、操舵量検出部26によって検出される運転者操舵量は、操舵アクチュエータ22からステアリングシャフトに加わる操舵トルクおよび操舵アクチュエータ22による操舵角とは独立して検出されるものである。
【0016】
ヘッドアップディスプレイ28は、運転者の前方箇所に設けられた表示部を構成するものである。
ヘッドアップディスプレイ28は、運転席の前方でインストルメントパネル18の上部に設けられ、図2(A)-(D)に示すように、フロントウィンドウガラス40に対して映像を表示するものであり、この映像は、例えば、運転者の前方2m~2.5m程度に位置する虚像として表示される。
本実施の形態では、図2(A)-(D)に示すように、ヘッドアップディスプレイ28は、車両32が走行する車線34の延在方向に分割された複数の区画領域38を表示可能に構成され、後述する第1警告表示、第2警告表示を表示する。
したがって、運転者は、フロントウィンドウガラス40に表示された複数の区画領域38が、フロントウィンドウガラス40を透過して視認される車線34、区画線36に重ね合わされた状態を視認することになる。
【0017】
図4に示すように、メーターディスプレイ30は、運転者の前方箇所に設けられた表示部を構成するものである。
メーターディスプレイ30は、ヘッドアップディスプレイ28の表示と同様の表示を行なう。
すなわち、メーターディスプレイ30には、車線34の両側の区画線36、車両32、車両32が走行する車線34の延在方向に分割された複数の区画領域38が表示可能に構成されている。
なお、ヘッドアップディスプレイ28の表示と、メーターディスプレイ30の表示は同様であるため、以下では、ヘッドアップディスプレイ28の表示について説明し、メーターディスプレイ30の表示については説明を省略する。
また、本実施の形態では、ヘッドアップディスプレイ28とメーターディスプレイ30とを併設した場合について説明するが、何れか一方のみを設けるなど任意である。
【0018】
図1に示すように、制御装置20(制御ECU)は、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROMなどの記憶部、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
制御装置20は、制御プログラムを実行することにより、区画線認識部20A、車線維持制御部20B、警告制御部20Cとして機能する。
【0019】
区画線認識部20Aは、カメラ12から供給された画像情報に基づいて、車両32が走行する車線34の区画線36の認識結果を示す区画線認識情報を生成し、車線維持制御部20Bに供給するものである。
また、区画線認識部20Aは、車線34の区画線36の認識結果の認識度(言い換えると区画線認識情報の精度)を生成し、警告制御部20Cに供給するものである。
この認識度は、区画線36の状態、あるいは、カメラ12で撮像される画像情報の状態に左右される。
例えば、区画線36が摩耗したり汚損されて不明瞭となっている場合には、区画線36の認識結果の認識度が低下する。
また、車両が直線道路や曲率の小さなカーブを走行している場合は、カメラ12によって得られる画像情報が区画線36を広くカバーし、区画線36の認識を良好に行なうに足る画像情報が得られるため、区画線36の認識度は高いものとなる。
一方、車両が曲率の大きなカーブを走行している場合は、例えばカメラ12の性能の限界があることから、カメラ12によって得られる画像情報が区画線36を広くカバーすることが難しくなるため、区画線36の認識を良好に行なうに足る画像情報が得られにくくなるため、区画線36の認識度は低いものとなる。
【0020】
車線維持制御部20Bは、区画線認識部20Aから供給される区画線認識情報と、車速センサ16から供給される車速情報と、加速度センサ18から供給される加速度情報と、ナビゲーション装置14から供給される車両32の位置情報(道路上の車両32の位置情報)および道路の形状情報と、操舵量検出部26から供給される運転者操舵量とに基づいて、操舵系24を制御する度合いを示す車線維持制御量を算出する。
本実施の形態では、車線維持制御量が0%から100%の範囲で算出されるものとして説明するが、車線維持制御量を表現する数値やその範囲、また、数値の単位などは任意であり、本実施の形態に限定されるものではない。
なお、上述した車速情報、加速度情報、車両32の位置情報(道路上の車両32の位置情報)、道路の形状情報は、車両32の状況を示す車両情報を構成している。
また、車線維持制御部20Bは、算出された車線維持制御量に基づいて操舵アクチュエータ22を駆動することにより操舵系24の制御を行なうことで、車両32を車線34の中央に沿って走行させる車線維持制御を実行する。
【0021】
ここで、車線維持制御量が高くなるほど、車線維持制御部20Bによる操舵系24の制御の度合いが高くなり、言い換えると、運転者によるステアリングホイールの操作の必要性が低くなる。
したがって、車線維持制御量が100%では、運転者はステアリングホイールの操作を行なう必要がなく、車線維持制御量が100%に近いほど、運転者はステアリングホイールを積極的に操作する必要性が低くなり、例えば、ステアリングホイールに軽く手を添える程度の操作で足りる。
また、車線維持制御量が50%前後では、運転者はステアリングホイールの操作を中程度に行なう必要がある。
また、車線維持制御量が低くなるほど、車線維持制御部20Bによる操舵系24の制御の度合いが低くなり、言い換えると、運転者によるステアリングホイールの操作の必要性が高くなる。
したがって、車線維持制御量が0%に近いほど、運転者はステアリングホイールを積極的に操作する必要性が高くなり、車線維持制御量が0%では、車線維持制御部20Bによる操舵系24の制御がなされないので、運転者がステアリングホイールの操作を行なわなければならない。
【0022】
すなわち、車線維持制御部20Bは、区画線認識情報に基づいて車両32が車線34の中央に沿って走行するように操舵系24の制御を行なうが、その際、車両情報や運転者操舵量情報に基づいて車線維持制御量を算出する。
以下では、車速、道路(カーブ)の曲率、運転者によるステアリングホイールの操作の状態を1)から4)の4つに分けて、車線維持制御量の算出方法の一例について説明する。
【0023】
1)車速情報が高速であるほど、また、図5に示すように、走行中のカーブCあるいはこれから進入すると予測されるのカーブCの曲率が大きいほど、車両32を車線34の中央に沿わせて精度良く走行させることが難しくなるので、運転者によるステアリングホイールの操作の必要性が高くなる。
したがって、この場合、車線維持制御部20Bは、車線維持制御量を低く算出する。
【0024】
2)車速情報が低速であるほど、また、図5に示すように、走行中のカーブCあるいはこれから進入すると予測されるのカーブCの曲率が小さいほど、車両32を車線34の中央に沿わせて精度良く走行させることが容易となるので、運転者によるステアリングホイールの操作の必要性が低くなる。
したがって、この場合、車線維持制御部20Bは、車線維持制御量を高く算出する。
【0025】
3)また、運転者がステアリングホイールを強くあるいは大きく操作するほど運転者操舵量が大きくなる(操舵トルクが大きく、あるいは、操舵角が大きくなる)。
この場合、車線維持制御部20Bは、ステアリングホイールを操作する運転者の意思がより高いものと推定し、車線維持制御量を低く算出する。
【0026】
4)また、運転者がステアリングホイールを弱くあるいは小さく操作するほど運転者操舵量が小さくなる(操舵トルクが小さく、あるいは、操舵角が小さくなる)。
この場合、車線維持制御部20Bは、ステアリングホイールを操作する運転者の意思がより低いものと推定し、車線維持制御量を高く算出する。
したがって、3)、4)を踏まえると、運転者操舵量と車線維持制御量とはトレードオフの関係にあるといえる。
【0027】
なお、上記1)から4)では、説明を簡素化するために、車両情報から加速度情報を除いた場合について説明したが、実際は、加速度情報によって示される車両の姿勢変化も考慮して車線維持制御量の算出がなされる。
また、車線維持制御を実行するにあたって、車両情報として、上述した車速情報、加速度情報、車両32の位置情報、道路の形状情報以外の情報を用いるなど任意である。
また、このような車線維持制御量を算出する方法として従来公知の様々な方法が採用可能であり、本実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
警告制御部20Cは、表示部としてのヘッドアップディスプレイ28(メーターディスプレイ30)に対して、以下に説明する第1警告表示、第2警告表示の実行が必要であるか否かを判定し、必要であると判定した場合に第1警告表示、第2警告表示を実行するものである。
第1警告表示から説明すると、警告制御部20Cは、運転者操舵量および車線維持制御量に基づいて第1警告表示の実行が必要である否かを判定し、必要であると判定すると、ヘッドアップディスプレイ28によって、車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なう。
すなわち、警告制御部20Cは、運転者操舵量が第1所定値以上であり、かつ、車線維持制御量が第2所定値以下である場合に、ヘッドアップディスプレイ28によって、車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なう。
【0029】
図2は第1警告表示の表示例の説明図である。
図2(A)は、第1警告表示がなされていない状態を示し、車線維持制御量が100%である状態に対応している。
すなわち、図2(A)に示すように、車両32の前方の状況はフロントウィンドウガラス40を通して運転者に視認されており、したがって、車線34の両側の区画線36もフロントウィンドウガラス40を通して視認されている。
そして、ヘッドアップディスプレイ28によってフロントウィンドウガラス40に表示される領域には、車両32の前方には、車両32から最も離れた箇所から車両32に接近するに従って、区画領域38A、区画領域38B、区画領域38Cの3つの区画領域38がこれらの順番で並べられて設定されている。
本実施の形態では、3つの区画領域38は、各区画領域38を囲む輪郭線で区切られており、各区画領域38を囲む輪郭線の内側が緑色で表示されており、3つの区画領域38の表示形態は第1状態となっている。この場合、輪郭線は省略してもよい。
また、以下に説明する図2図3においては、各区画領域38に表示される色の種類をハッチングの種類によって表現している。
また、ヘッドアップディスプレイ28によってフロントウィンドウガラス40に表示される各区画領域38の色は、車両32の前方の状況の視認を妨げないような明るさや透明度となるように設定されていることは無論である。
【0030】
図2(B)、(C)、(D)は、第1警告表示がなされた状態を示し、車線維持制御量が100%から低下するにつれて図2(B)、(C)、(D)の表示態様となっている。
図2(B)は、3つの区画領域38のうち、車両32から最も遠くに位置する区画領域38Aの表示形態が第1状態(緑色)と異なる第2状態(青色)となっており、例えば、車線維持制御量が70%である状態に対応している。
また、残りの区画領域38Bと区画領域38Cはその表示形態が第1状態(緑色)となっている。
すなわち、図2(B)において、警告制御部20Cによる第1警告表示は、複数の区画領域38のうち、少なくとも1つの第1区画領域38(38A)の表示形態を第1状態(緑色)から第1状態と異なる第2状態(青色)へ変更することでなされる。
【0031】
図2(C)は、3つの区画領域38のうち、車両32から最も遠くに位置する区画領域38Aとこの区画領域38Aの手前に位置する区画領域38Bの表示形態が第1状態(緑色)と異なる第2形態(青色)となっており、例えば、車線維持制御量が30%である状態に対応している。
また、車両32から最も近い区画領域38Cはその表示形態が第1状態(緑色)となっている。
すなわち、図2(C)において、警告制御部20Cによる第1警告表示は、運転者操舵量が第1所定値よりも高い第3所定値以上であり、且つ、車線維持制御量が第2所定値よりも小さい第4所定値以下となっており、複数の区画領域38のうち第1区画領域38A及び第1区画領域38Aよりも車両32に近い第2区画領域38Bの双方の表示形態を第1状態(緑色)から第2状態(青色)へ変更することでなされる。
【0032】
図2(D)は、区画領域38A、区画領域38B、区画領域38Cの全ての表示形態が第1表示状態(緑色)と異なる第2状態(青色)となっており、例えば、車線維持制御量が0%である状態に対応している。
すなわち、図2(D)において、警告制御部20Cによる第1警告表示は、運転者操舵量が第3所定値より大きい第5所定値以上であり、且つ、車線維持制御量が第4所定値より小さい第6所定値以下となっており、複数の区画領域38の全ての表示形態を第1状態(緑色)から第2状態(青色)へ変更することでなされる。
【0033】
また、図2(B)、(C)、(D)に示すように、警告制御部20Cによる第1警告表示は、運転者操舵量が大きくなるにつれて、または、車線維持制御量が低くなるにつれて、複数の区画領域38のうち車両32から遠い区画領域38Aから車両32に近い区画領域38Cに向かって順番に区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)から第1状態と異なる第2状態(青色)へ変更することでなされている。
【0034】
次に、第2警告表示について説明すると、警告制御部20Cは、車線34の区画線36の認識結果の認識度に基づいて第2警告表示の実行が必要であるか否かを判定する。
すなわち、警告制御部20Cは、車線34の区画線36の認識結果の認識度が低下すると、区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)または第2状態(青色)から、第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(黄色または赤色)に変更することで認識度が低下傾向にあることを示す第2警告表示を行なう。
【0035】
図3は第2警告表示の表示例の説明図である。
なお、以下に示す図3の説明では、車線維持制御量が一定の値(例えば100%)に維持され変化していないものとして説明する。
図3(A)は、前述した図2(A)と同様に第1、第2警告表示がなされていない状態を示し、3つの区画領域38の表示形態は第1状態(緑色)となっている。
【0036】
図3(B)は、第2警告表示がなされた状態を示す。
3つの区画領域38の表示形態が第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(黄色)となっている。
すなわち、図3(B)において、警告制御部20Cによる第2警告表示は、車線34の区画線36の認識結果の認識度が第1認識度所定値以下になると、区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)から第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(黄色)に変更することで認識度が低下傾向にあることを示す第2警告表示を行なう。
【0037】
図3(C)も、第2警告表示がなされた状態を示す。
3つの区画領域38の表示形態が第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(赤色)となっている。
すなわち、図3(C)において、警告制御部20Cによる第2警告表示は、車線34の区画線36の認識結果の認識度が第1認識度所定値よりも小さい第2認識度所定値以下になると、区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)から第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(赤色)に変更することで認識度が低下傾向にあることを示す第2警告表示を行なう。
すなわち、図3(B)、(C)の何れも第2警告表示として区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(黄色または赤色)としているが、図3(B)に比較して図3(C)では、第2警告表示の警告度合いがより高いことを示すために第3状態の表示形態として区画領域38の色を黄色から赤色に変更している。
したがって、警告度合いの高低に応じて第3状態の表示形態を2段階(黄色と赤色)に変化させることで、第2警告表示を視認した運転者は、車線34の区画線36の認識結果の認識度が低下した度合いを2段階で認識することができ、区画線36の認識結果の認識度をより正確に把握する上で有利となる。
【0038】
なお、図3では、車線維持制御量が100%に維持されており、第1警告表示がなされていない状態で、第2警告表示が3つの区画領域38A、38B、38Cの全てを用いて表示された場合について説明した。
しかしながら、車線維持制御量が低下することで第1警告表示が実行されると同時に、第2警告表示が実行されてもよい。
例えば、1つの区画領域38Aの表示形態が第1状態(緑色)から第2状態(青色)となることで第1警告表示が実行され、かつ、2つの区画領域38B、38Cの表示形態が第1状態(緑色)から第3状態(黄色または赤色)となることで第2警告表示が実行されてもよい。
あるいは、2つの区画領域38A、38Bの表示形態が第1状態(緑色)から第2状態(青色)となることで第1警告表示が実行され、かつ、1つの区画領域38Cの表示形態が第1状態(緑色)から第3状態(黄色または赤色)となることで第2警告表示が実行されてもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、区画領域38が3つの区画領域38A、38B、38Cで構成されている場合について説明したが、区画領域38は2つであっても、4つ以上であってもかまわない。
また、本実施の形態では、表示形態の第1状態、第2状態、第3状態が区画領域38の色(表示色)で表現された場合について説明したが、第1状態、第2状態、第3状態は色に限定されない。
要するに、第1状態、第2状態、第3状態は、区画領域38の表示形態が異なって視認できればよく、例えば、区画領域38を点灯、点滅、滅灯することで表示形態を異ならせてもよく、あるいは、区画領域38の輝度を変化させることで表示形態を異ならせてもよく、あるいは、上述した2種類以上の表示形態を組み合わせるなど任意である。
【0040】
次に図6のフローチャートを参照して車両用運転支援装置10の動作について説明する。
予め、車両用運転支援装置10の機能が有効になった状態で車両32が道路を走行しているものとする。
まず、カメラ12によって撮像された画像情報が区画線認識部20Aで取得される(ステップS10)。
これにより、区画線認識部20Aによって区画線36が認識されて区画線認識情報と共にその認識度が生成される(ステップS12)。
次いで、区画線認識情報が車線維持制御部20Bに取得され、認識度が警告制御部20Cに取得される(ステップS14)。
次に、ナビゲーション装置14、車速センサ16、加速度センサ18から車両情報が車線維持制御部20Bによって取得される(ステップS16)。
次いで、操舵量検出部26で検出された運転者操舵量が車線維持制御部20Bによって取得される(ステップS18)。
次いで、車線維持制御部20Bは、車両情報および運転者操舵量に基づいて操舵系24を制御する度合いを示す車線維持制御量を0%から100%の範囲で算出する(ステップS20)。
そして、車線維持制御部20Bは、車線維持制御量を取得し、取得した車線維持制御量に基づいて操舵アクチュエータ22を制御し、これにより車線維持制御が実行される(ステップS22)。
【0041】
次いで、警告制御部20Cは、運転者操舵量および車線維持制御量に基づいて第1警告表示を行なうか否かを判定する(ステップS24)。
ステップS24が肯定ならば第1警告表示を実行する(ステップS26)。
また、ステップS24が否定の場合、および、ステップS26の実行後、警告制御部20Cは、区画線36の認識度に基づいて第2警告表示を行なうか否かを判定する(ステップS28)。
ステップS28が肯定ならば第2警告表示を実行する(ステップS30)。
ステップS28が否定の場合、および、ステップS30の実行後、ステップS10に戻り、同様の処理を繰り返して実行する。
【0042】
本実施の形態によれば、区画線認識情報と、車両情報と、運転者操舵量とに基づいて、操舵系24を制御する度合いを示す車線維持制御量を算出し、算出された車線維持制御量に基づいて操舵系24の制御を行なうと共に、運転者操舵量が第1所定値以上であり、かつ、車線維持制御量が第2所定値以下である場合に、表示部に、車線維持制御量が低下傾向にあることを示す第1警告表示を行なうようにした。
したがって、運転者が無意識にステアリングホイールを操作したときに、車線維持制御量が低下傾向にあることを運転者に的確に認識させることができので、運転者が不要なステアリングホイールの操作に気が付き、車両用運転支援装置10による車線維持制御に任せることができる。
そのため、運転者は、運転者が期待する車線維持制御と、実際に実行される車線維持制御との乖離に起因する違和感を感じることがなく、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上で有利となる。
【0043】
また、本実施の形態では、警告制御部20Cによる第1警告表示は、複数の区画領域38のうち、少なくとも1つの第1区画領域38Aの表示形態を第1状態(緑色)から第1状態(緑色)と異なる第2状態(青色)へ変更することでなされるようにした。
したがって、第1警告表示を的確に確実に運転者に報知する上で有利となり、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上でより有利となる。
【0044】
また、本実施の形態では、警告制御部20Cによる第1警告表示は、運転者操舵量が第1所定値よりも高い第3所定値以上であり、且つ、車線維持制御量が第2所定値よりも小さい第4所定値以下の場合に、複数の区画領域38のうち第1区画領域38A及び第1区画領域38Aよりも車両32に近い第2区画領域38Bの双方の表示形態を第1状態(緑色)から第2状態(青色)へ変更することでなされるようにした。
したがって、運転者操舵量が高くなるほど、かつ、車線維持制御量が低くなるほど、第1警告表示をより一層強調して強調して運転者に報知することができるので、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上でより一層有利となる。
【0045】
また、本実施の形態では、警告制御部20Cによる第1警告表示は、運転者操舵量が大きくなるにつれてまたは車線維持制御量が低くなるにつれて、複数の区画領域38のうち車両32から遠い区画領域38Aから車両32から近い区画領域38Cに向かって順番に区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)から第1状態(緑色)と異なる第2状態(青色)へ変更することでなされるようにした。
したがって、運転者操舵量が大きくなるほど、または、車線維持制御量が低くなるほど、表示形態が第2状態(青色)となる区画領域38が車両32に近づくことから、第1警告表示を強調して運転者に報知することができるので、車線維持制御の度合いやステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上でより一層有利となる。
【0046】
また、本実施の形態では、警告制御部20Cは、車線34の区画線36の認識結果の認識度が認識度第1所定値以下になると、区画領域38の表示形態を第1状態(緑色)または第2状態(青色)から第1状態(緑色)および第2状態(青色)と異なる第3状態(黄色または赤色)に変更することで認識度が低下傾向にあることを示す第2警告表示を行なうようにした。
したがって、車線34の区画線36の認識結果の認識度が低くなった場合に、第2警告表示を運転者に報知することで、ステアリングホイール操作の必要性を運転者が適切に認識する上で有利となる。
【0047】
本実施の形態では、第1警告表示、第2警告表示を行なう場合について説明したが、さらに以下のような注意喚起情報を表示部に表示させるようにしてもよい。
例えば、図5に示すように、車両32が、曲率の大きなカーブCに高い車速のままで接近しており、そのままでは、車両用運転支援装置10による車線維持制御の能力が不足することが想定される場合には、警告制御部20Cによって、第1、第2警告表示とは別に、運転者のステアリングホイールの操作を促すための注意喚起情報、例えば、ステアリングホイールのアイコンを目立つように表示部に表示させるようにするなど任意である。
このような注意喚起情報を表示させると、運転者は、カーブCの進入に際して余裕を持ってステアリングホイールの操作を行なうことができ、運転支援を効果的に行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0048】
10 運転支援装置
12 カメラ
14 ナビゲーション装置
16 車速センサ
18 加速度センサ
20 制御装置
20A 区画線認識部
20B 車線維持制御部
20C 警告制御部
22 操舵アクチュエータ
24 操舵系
26 操舵量検出部
28 ヘッドアップディスプレイ(表示部)
30 メーターディスプレイ(表示部)
32 車両
34 車線
36 区画線(白線)
38 区画領域
38A 区画領域(第1区画領域)
38B 区画領域(第2区画領域)
38C 区画領域
40 フロントウィンドウガラス
C カーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6