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特開2024-140396脱気装置、液滴吐出装置、脱気方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140396
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】脱気装置、液滴吐出装置、脱気方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/19 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/18
B01D19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051522
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 博司
【テーマコード(参考)】
2C056
4D011
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB04
2C056EB16
2C056EB34
2C056EC15
2C056EC17
2C056EC37
2C056EC47
2C056EC49
2C056HA44
2C056KA01
2C056KB08
2C056KB11
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC02
2C056KD02
4D011AA17
4D011AD06
(57)【要約】
【課題】適切なタイミングで脱気モジュールの脱気性能を回復させることができる脱気装置、液滴吐出装置、脱気方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】脱気装置100は、液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜4512を備える外部還流型の脱気モジュール451を備え、気体透過膜4512の詰まり具合を検知可能な検知部50と、検知部の検知結果に応じて脱気モジュール451の脱気性能を回復させる制御部50と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知可能な検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部と、を備える脱気装置。
【請求項2】
前記脱気モジュールは、前記気体透過膜の第一端と連通する第一真空室と、前記気体透過膜の第二端と連通する第二真空室と、を備え、
前記検知部は、前記第一真空室と、前記第二真空室と、の圧力差である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記検知部は、前記脱気モジュールを大気開放した時の、前記気体透過膜内の気圧が所定値に到達するまでの時間である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する請求項1に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記脱気モジュールを大気開放した時の、前記気体透過膜内の空気の流量である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する請求項1に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記検知部は、液体消費量及びスタンバイ制御時間の値である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する請求項1に記載の脱気装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記評価値が所定値以上であると判定した場合、前記脱気モジュールの大気開放を所定回数繰り返す請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記評価値が所定値以上であると判定した場合、前記気体透過膜を連続加圧する請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置。
【請求項8】
前記気体透過膜は、中空糸膜である請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記評価値に応じて前記脱気モジュールの脱気性能回復方法及び/又は強度が異なる複数の回復モードを有し、
前記複数の回復モードの中から一の回復モードを選択して実行する請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置。
【請求項10】
前記制御部は、脱気性能の回復動作を実行しても前記脱気モジュールの脱気性能が回復しない場合、前記脱気モジュールの交換を指示する報知を行う請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置。
【請求項11】
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、の間に設けられ、液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える液滴吐出装置であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知可能な検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部と、を備える液滴吐出装置。
【請求項12】
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置の脱気方法であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知する検知ステップと、
前記検知ステップの検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御ステップと、を備える脱気方法。
【請求項13】
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置のコンピューターを、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知する検知部、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部、として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気装置、液滴吐出装置、脱気方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の記録面に液滴吐出部から液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置においては、液体中に気体が溶存していると、不具合を発生させる原因となる。そのため、液滴吐出装置には、液滴吐出部への液体供給経路上に、気体透過膜を通過した液体を脱気する脱気モジュールが設けられる。
【0003】
しかしながら、脱気モジュールは、使用するにつれて、気体透過膜内に浸潤した成分による詰まりが生じる。その結果、脱気モジュールの脱気性能が低下する。また、脱気モジュールは高価である。そのため、脱気性能が低下する度に脱気モジュールを交換するのは、コスト的に好ましくない。そこで、例えば特許文献1には、所定の制御によって脱気性能を回復可能な脱気モジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-168257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、脱気開始から所定時間後に脱気性能を回復させる。すなわち、脱気モジュールの脱気性能の低下具合を、脱気性能を回復させるにあたっての判断材料としていない。そのため、脱気性能が低下していないにも関わらず、脱気モジュールの脱気性能を回復させようとして、液滴吐出装置の生産性を低下させるおそれがある。また、脱気性能が低下していないにも関わらず脱気モジュールの脱気性能を回復させとようとして、脱気モジュール内部に余計な負荷を与えるおそれがある。あるいは、脱気性能が低下しているにも関わらず脱気モジュールの脱気性能を回復させようとせず、脱気モジュールに溜まった液体を飛散させるおそれがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、適切なタイミングで脱気モジュールの脱気性能を回復させることができる脱気装置、液滴吐出装置、脱気方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知可能な検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脱気装置であって、
前記脱気モジュールは、前記気体透過膜の第一端と連通する第一真空室と、前記気体透過膜の第二端と連通する第二真空室と、を備え、
前記検知部は、前記第一真空室と、前記第二真空室と、の圧力差である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の脱気装置であって、
前記検知部は、前記脱気モジュールを大気開放した時の、前記気体透過膜内の気圧が所定値に到達するまでの時間である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の脱気装置であって、
前記検知部は、前記脱気モジュールを大気開放した時の、前記気体透過膜内の空気の流量である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の脱気装置であって、
前記検知部は、液体消費量及びスタンバイ制御時間の値である評価値に基づいて前記気体透過膜の詰まり具合を検知する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置であって、
前記制御部は、前記評価値が所定値以上であると判定した場合、前記脱気モジュールの大気開放を所定回数繰り返す。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置であって、
前記制御部は、前記評価値が所定値以上であると判定した場合、前記気体透過膜を連続加圧する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置であって、
前記気体透過膜は、中空糸膜である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置であって、
前記制御部は、前記評価値に応じて前記脱気モジュールの脱気性能回復方法及び/又は強度が異なる複数の回復モードを有し、
前記複数の回復モードの中から一の回復モードを選択して実行する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項2から5のいずれか一項に記載の脱気装置であって、
前記制御部は、脱気性能の回復動作を実行しても前記脱気モジュールの脱気性能が回復しない場合、前記脱気モジュールの交換を指示する報知を行う。
【0017】
請求項11に記載の発明は、
液体を貯留する液体貯留部と、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、の間に設けられ、液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える液滴吐出装置であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知可能な検知部と、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部と、を備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置の脱気方法であって、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知する検知ステップと、
前記検知ステップの検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御ステップと、を備える。
【0019】
請求項13に記載の発明は、プログラムであって、
液体中の溶存気体を脱気可能な気体透過膜を備える外部還流型の脱気モジュールを備える脱気装置のコンピューターを、
前記気体透過膜の詰まり具合を検知する検知部、
前記検知部の検知結果に応じて前記脱気モジュールの脱気性能を回復させる制御部、として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、適切なタイミングで脱気モジュールの脱気性能を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】インクジェット記録装置の側断面図である。
図2】送液部の概略構成図である。
図3】脱気モジュールの側断面図である。
図4】インクジェット記録装置のブロック図である。
図5】回復処理の一例のフローチャートである。
図6】第一圧力センサー及び第二圧力センサーの圧力値の推移を例示するグラフである。
図7】気体透過膜に詰まりがある場合と無い場合における、第一圧力センサーと第二圧力センサーの圧力差の推移を例示するグラフである。
図8】第1回復モードのフローチャートである。
図9】大気開放回数と脱気モジュールの脱気度の関係を例示するグラフである。
図10】気体透過膜に詰まりがある場合と無い場合における、気体透過膜内の圧力値の推移を例示するグラフである。
図11】インク消費量とスタンバイ制御時間に基づく気体透過膜の評価値を例示するマトリクス表である。
図12】各色のインク消費量とインク中成分の排出量の関係を例示するグラフである。
図13】第2回復モードのフローチャートである。
図14】連続加圧時間と脱気モジュールの脱気度の関係を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
[インクジェット記録装置の全体構成]
初めに、脱気モジュールを備える液滴吐出装置について、図1に基づいて説明する。図1は、脱気モジュール451(図2参照)を備える液滴吐出装置の一実施形態である、インクジェット記録装置1の主要構成を示す側断面図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、送液部40(図2参照)、制御部50及び報知部60(いずれも図4参照)等を備える。また、送液部40と制御部50とにより、脱気装置100(図4参照)が構成される。
【0024】
インクジェット記録装置1は、制御部50の制御に基づいて、給紙部10から画像形成部20に記録媒体Pを搬送する。そして、制御部50は、送液部40から供給されたインクにより、画像形成部20で記録媒体Pに画像を形成する。画像形成後、制御部50は、当該記録媒体Pを排紙部30に排出する。
【0025】
(給紙部)
給紙部10は、画像形成前の記録媒体Pを格納する。給紙部10は、制御部50の制御下で、記録媒体Pを画像形成部20に搬送する。給紙部10は、給紙トレー11及び搬送部12等を備える。
【0026】
{給紙トレー}
給紙トレー11は、記録媒体Pを格納する板状部材である。給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられる。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動する。給紙トレー11は、当該上下動により、最上の記録媒体Pが搬送部12によって搬送される位置で保持される。
【0027】
{搬送部}
搬送部12は、給紙トレー11から画像形成部20へ記録媒体Pを搬送する。搬送部12は、搬送機構を備える。搬送機構は、ベルト123を駆動して、ベルト123上の記録媒体Pを搬送する。ベルト123は、輪状であり、当該輪の内側が複数のローラー121、122により担持される。搬送部12は、供給部を備える。供給部は、給紙トレー11に載置された最上の記録媒体Pをベルト123上に受け渡す。搬送部12は、当該供給部により、記録媒体Pをベルト123に沿わせるように搬送する。
【0028】
(画像形成部)
画像形成部20は、送液部40と協働して、制御部50の制御下で記録媒体Pに画像記録をする。画像形成部20は、画像形成ドラム21、受け渡しユニット22、用紙加熱部23、ヘッドユニット24、照射部25及びデリバリー部26等を備える。
【0029】
{画像形成ドラム}
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転に伴って当該記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24及び照射部25と対向し、搬送される記録媒体Pに対して画像形成処理をする。
【0030】
{受け渡しユニット}
受け渡しユニット22は、搬送部12と画像形成ドラム21の間に介在する位置に設けられる。受け渡しユニット22は、爪部221及び受け渡しドラム222等を備える。
【0031】
爪部221は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持する円筒状部材である。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録媒体Pを誘導する部材である。
【0032】
受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pを爪部221で取り上げて受け渡しドラム222の外周面に沿わせる。受け渡しユニット22は、当該動作により、記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。
【0033】
{用紙加熱部}
用紙加熱部23は、例えば、電熱線等を備え、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、制御部50により制御され、その近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように発熱する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であり、かつ、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の上流側に位置するよう設けられる。
【0034】
用紙加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられる。制御部50は、当該温度センサーにより用紙加熱部23付近の温度を検知する。制御部50は、当該検知した温度に基づいて、用紙加熱部23の発熱を制御する。
【0035】
{ヘッドユニット}
ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対してノズルからインク滴を吐出して画像を形成する液滴吐出部として機能する。ヘッドユニット24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各色に対応するものがそれぞれ設けられている。図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して、上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。
【0036】
ここで、平面視において記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向を幅方向とする。本実施形態のヘッドユニット24は、幅方向につき、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で複数配列されるように設けられている。すなわち、インクジェット記録装置1は、ワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。ヘッドユニット24は、液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド24a(図2参照)が複数配列されて構成されている。なお、ヘッドユニット24の数は5つ以上であっても3つ以下であってもよい。また、単一のインクジェットヘッド24aがヘッドユニット24を構成してもよい。
【0037】
ヘッドユニット24が吐出するインクは、例えば紫外線硬化型インクである。紫外線硬化型インクは、照射部25から紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化するゲル状インクである。紫外線硬化型インクは、例えば40~100℃程度の相変化温度を有し、相変化温度以上に加熱上昇されることで一様に液化(ゾル化)する。一方で、紫外線硬化型インクは、通常の室温程度、すなわち0~30℃程度である場合はゲル化する。
【0038】
{照射部}
照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、当該蛍光管の発光により、紫外線等のエネルギー線を照射する。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍に設けられる。また、照射部25は、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の下流側に位置するよう設けられる。照射部25は、インクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射する。記録媒体P上のインクは、当該エネルギー線の作用により硬化する。
【0039】
なお、紫外線を発する蛍光管は低圧水銀ランプに限られない。蛍光管は、例えば数百Pa~1MPa程度の動作圧力を備える水銀ランプであってよい。また、蛍光管は、殺菌灯として利用可能な光源、例えば、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプあるいは発光ダイオード等であってよい。この中でも、蛍光管は、紫外線をより高照度で照射可能であって省電力な光源であることが望ましい。蛍光管は、例えば、発光ダイオード等である。なお、エネルギー線は紫外線に限られず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良い。そして、光源もエネルギー線に応じて置換される。
【0040】
上記においてはヘッドユニット24が紫外線硬化型のインクを吐出する場合を例示したが、これに限定されない。ヘッドユニット24が吐出するインクは、水性インクやその他の物性を有するインクであっても良い。
【0041】
{デリバリー部}
デリバリー部26は、搬送機構を備える。搬送機構は、内側が複数のローラー261、262に担持された輪状のベルト263を駆動して、記録媒体Pを搬送する。デリバリー部26は、円筒状の受け渡しローラー264を備える。受け渡しローラー264は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から当該搬送機構に受け渡す。デリバリー部26は、受け渡しローラー264によりベルト263上に受け渡された記録媒体Pを搬送して排紙部30に送り出す。
【0042】
(排紙部)
排紙部30は、画像形成部20で画像形成された記録媒体Pが排紙される。排紙部30は、板状の排紙トレー31等を備える。デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pは、排紙トレー31に載置される。排紙部30は、当該記録媒体Pを、ユーザーが取り出すまで格納する。
【0043】
(送液部)
送液部40の概略構成図を図2に示す。送液部40は、各色のインクを貯留する複数のメインタンク41を備える。送液部40は、メインタンク41内の各色のインクを各ヘッドユニット24へ供給する。送液部40は、当該制御により、各色のインクをノズルから吐出可能とする。
【0044】
図2に示すように、送液部40は、液体貯留部であるメインタンク41、第一サブタンク42及び第二サブタンク43等を備える。また、送液部40は、ヘッドユニット24への送液前にインク中の溶存気体を脱気する脱気モジュール451を備える。
【0045】
<メインタンク>
メインタンク41は、送液部40の各部に供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク41は、例えば金属製の剛体密閉タンクである。メインタンク41は、供給管44を介して第一サブタンク42と連通している。供給管44には、供給ポンプ441及び供給弁442が設けられている。
【0046】
〈供給ポンプ、供給弁〉
供給ポンプ441及び供給弁442は、制御部50の制御下で動作する。メインタンク41のインクは、供給弁442の開放時に、供給ポンプ441の駆動により、供給管44を介して、第一サブタンク42に供給される。メインタンク41は、その全体を交換可能である。また、メインタンク41は、供給ポンプ441の駆動状況によらず、供給管44と着脱可能である。
【0047】
<第一サブタンク>
第一サブタンク42は、メインタンク41よりも容積が小さい1又は複数のインク室である。供給ポンプ441によってメインタンク41から汲み出されたインクは、第一サブタンク42に貯留される。第一サブタンク42を設けることで、供給ポンプ441がメインタンク41内のインクを供給する際の脈動による圧力変動が緩和される。また、インクジェットヘッド24aから排出されなかったインクは、アウトレットから第一サブタンク42に回収される。第一サブタンク42は、送液管45を介して第二サブタンク43と連通している。送液管45には、脱気モジュール451、送液ポンプ452及び送液弁453等が設けられる。脱気モジュール451の詳細な説明は後述する。
【0048】
〈送液ポンプ〉
送液ポンプ452は、脱気モジュール451のインク流出口4511b(図3参照)から流出したインクを第二サブタンク43に送出する。送液ポンプ452と第二サブタンク43の間には、不図示の逆止弁が設けられ、第二サブタンク43に送出されたインクの逆流を防止する。
【0049】
〈送液弁〉
送液弁453は、電磁弁であり、制御部50の制御下で、送液ポンプ452の動作時に送液管45を選択的に開閉する。
【0050】
<第二サブタンク>
第二サブタンク43は、脱気モジュール451で脱気されたインクが一時的に貯留される小型のタンク室である。第二サブタンク43の容量は、例えば第一サブタンク42と略同一程度である。第二サブタンク43は、供給路46を介して各インクジェットヘッド24aのインレットと連通している。第二サブタンク43のインクは、ノズルから吐出されるインク量に応じて、各インクジェットヘッド24aに供給される。また、第二サブタンク43には、インクジェットヘッド24aに適切な負圧をかけることで、インクが漏れ出すのを防ぐ、不図示の背圧調整手段が設けられる。
【0051】
〈脱気モジュール〉
図3に、脱気モジュール451を示す。脱気モジュール451は、流入したインク中の溶存気体を除去して、脱気されたインクを排出する。脱気モジュール451は、インク流通室4511、気体透過膜4512、第一真空室4513及び第二真空室4514等を備える。
【0052】
{インク流通室}
インク流通室4511は、脱気モジュール451を形成するケーシングの内部の中央部分に設けられる。インク流通室4511は、インク流入口4511aが設けられ、第一サブタンク42からインクの流入を受け付ける。また、インク流通室4511は、インク流出口4511bが設けられ、第二サブタンク43へインクを流出する。
【0053】
なお、図3に示すように、インク流入口4511aとインク流出口4511bは、それぞれインク流通室4511の第一端側と第二端側に設けられるのが好ましい。当該構成とすると、インクがより気体透過膜4512と接しやすくなり、脱気モジュール451の脱気効率を高められる。
【0054】
{気体透過膜}
気体透過膜4512は、管状であり、その膜面が気体透過性を有する。気体透過膜4512は、例えば中空糸膜であり、多数の中空状の微細糸構造を有し、多数が束状となって、インク流通室4511の軸方向に延びるように配設される。
【0055】
また、気体透過膜4512は、図3に示すように、第一真空室4513及び第二真空室4514を連通するように配設される。そのため、気体透過膜4512は、その第一端が、後述する大気開放弁4513cを介して大気接続する。また、気体透過膜4512は、その第二端が、後述する真空ポンプ4514eと繋がる。
【0056】
{第一真空室}
第一真空室4513は、脱気モジュール451の第一端に設けられる。第一真空室4513は、隔壁によってインク流通室4511と仕切られて形成される。第一真空室4513は、インク流通室4511と対向する側が第一真空経路4513aにより大気接続する。第一真空経路4513aには、図2に示すように、第一圧力センサー4513b及び大気開放弁4513c等が設けられる。
【0057】
第一圧力センサー4513bは、第一真空室4513内の圧力値を検知して、制御部50に当該圧力値を送信する。また、大気開放弁4513cは電磁弁である。大気開放弁4513cは、制御部50の制御信号により、第一真空経路4513a内を大気開放する。
【0058】
{第二真空室}
第二真空室4514は、脱気モジュール451の第二端側に設けられる。第二真空室4514は、隔壁によってインク流通室4511と仕切られて形成される。第二真空室4514は、第二真空経路4514aにより減圧タンク4514cと連通する。第二真空経路4514aには、図2に示すように、その内部の圧力値を検知する第二圧力センサー4514bが設けられている。
【0059】
第二圧力センサー4514bは、第二真空室4514内の圧力を検知して、制御部50に当該圧力値を送信する。制御部50は、後述するように、例えば第一圧力センサー4513b及び第二圧力センサー4514bから取得した圧力値に応じて、脱気モジュール451の駆動を制御する。なお、図2においては、第二圧力センサー4514bを脱気モジュール451と減圧タンク4514cの間の流路に設ける場合を例示しているが、これに限られない。第二圧力センサー4514bは、減圧タンク4514cと後述する真空ポンプ4514eの間の流路に設けても良い。
【0060】
減圧タンク4514cは、インク排出弁4514d及び真空ポンプ4514e等を備える。減圧タンク4514cは、所定容量の気体を収容可能であり、真空ポンプ4514eの脈動による気体透過膜4512内の圧力変動を抑制できる。また、減圧タンク4514cは、気体透過膜4512内に浸潤し、第二真空経路4514a内に侵入したインクを内部に貯留する。減圧タンク4514cにインクが貯留されることで、真空ポンプ4514eにインクが到達して、真空ポンプ4514eが故障するのを防ぐ。当該インクは、インク排出弁4514dにより、外部に排出される。
【0061】
真空ポンプ4514eは、ダイアフラムポンプである。詳細には、真空ポンプ4514eは、伸縮可能なダイアフラムを備えたポンプチャンバーを備える。また、真空ポンプ4514eは、ポンプチャンバーの容積が拡縮するようにダイアフラムを動作させる駆動源等を備える。ポンプチャンバーは、外部からの流体の流入のみを許容する逆止弁を備えた吸入口を備える。また、ポンプチャンバーは、内部からの流体の排出のみを許容する逆止弁を備えた排出口を備える。
【0062】
真空ポンプ4514eは、制御部50の制御下で、大気開放弁4513cの開放時に、気体透過膜4512内の大気を吸引する。真空ポンプ4514eの当該動作により、気体透過膜4512内は異物が除去され、また、減圧する。そのため、インク流通室4511に流入したインクが、気体透過膜4512の膜面に接触すると、溶存気体が選択的に膜面を透過して脱気される。そして、気体透過膜4512を通過した溶存気体は、第二真空室4514を介して減圧タンク4514cへ流下する。
【0063】
本発明においては、上記のように構成された外部還流型の脱気モジュール451が採用されている。脱気モジュール451の形態は問わないが、例えば、複数の気体透過膜4512を互いに編目状に編み込んだシートにするのが好ましい。当該構成とすると、気体透過膜4512の目が細かくなり、全てのインクが気体透過膜4512の目を通過しやすくなり、脱気効率を高めやすい。また、当該構成とすると、柔軟な気体透過膜4512であっても一定以上の強度を得やすい。
【0064】
(制御部)
図4は、インクジェット記録装置1の内部構成を示すブロック図である。制御部50は、インクジェット記録装置1を構成する各部を制御する。制御部50は、図4に示すように、上記インクジェット記録装置1を構成する各部と接続される。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53等を備える。
【0065】
CPU51は、ROM53等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行する。また、CPU51は、実行された処理内容に応じてインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。RAM52は、CPU51により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM53は、CPU51等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0066】
(報知部)
報知部60は、制御部50の制御下で、種々の情報を報知する。報知部60は、例えば画面を有する表示部や、ネットワークを介して他の装置と通信可能な通信部である。
【0067】
[回復処理]
このようなインクジェット記録装置1における、脱気モジュール451の回復処理につき、図5のフローチャートを元に説明する。本処理において、制御部50は、気体透過膜4512の詰まり具合を検知する検知部として機能する。また、制御部50は、検知部の検知結果に応じて、脱気モジュール451の脱気性能を回復させる。
【0068】
まず、制御部50は、気体透過膜4512内の詰まり具合に係る評価値を取得する(ステップS101)。気体透過膜4512内の詰まり具合に係る評価値は、例えば第一圧力センサー4513b及び第二圧力センサー4514bが取得する圧力値の差である。気体透過膜4512内が詰まっていると、気体透過膜4512内を流れる空気への抵抗が大きくなり、当該圧力差が大きくなるからである。
【0069】
図6は、大気開放弁4513cの開放後及び閉鎖後に第一圧力センサー4513bと第二圧力センサー4514bが取得する圧力値の推移を例示するグラフである。図6において、横軸は時間、縦軸は圧力値をそれぞれ示す。
【0070】
また、図7は、気体透過膜4512内に詰まりが有る場合と無い場合の第一圧力センサー4513bと第二圧力センサー4514bの圧力差の推移を例示するグラフである。図7において、横軸は時間、縦軸は圧力差の値をそれぞれ示す。また、両図においては、0秒から大気開放弁4513cを開放して、時間tで大気開放弁4513cを閉鎖している。
【0071】
大気開放弁4513cの開放中は、真空ポンプ4514eの駆動により、気体透過膜4512内を空気が流れる。そのため、第一圧力センサー4513bと、第二圧力センサー4514bとで、気体透過膜4512内の詰まり具合に応じた圧力差が生まれる。しかしながら、時間tで大気開放弁4513cを閉鎖すると、気体透過膜4512内を流れる空気の量は微小となる。結果、両図に示すように、第一圧力センサー4513bと第二圧力センサー4514bとで圧力差が生まれにくくなる。そのため、評価値として第一圧力センサー4513b及び第二圧力センサー4514bの圧力差を取得する場合、大気開放弁4513cの開放中に取得するのが好ましい。
【0072】
図5に戻って、制御部50は、取得した評価値が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS102)。図7に示す例において、制御部50が大気開放弁4513cの開放中に評価値を取得する場合、評価値の閾値は例えば3kPaであり、好ましくは5kPaである。また、図7に示す例において、制御部50が大気開放弁4513cの閉鎖中に評価値を取得する場合、評価値の閾値は例えば0.3kPaであり、好ましくは0.5kPaである。
【0073】
評価値が所定の閾値未満である場合(ステップS102;No)、気体透過膜4512内は詰まっておらず、脱気モジュール451の脱気性能は低下していない。そのため、脱気モジュール451の脱気性能を回復させる必要は無く、制御部50は回復処理を終了する。
【0074】
評価値が所定の閾値以上である場合(ステップS102;Yes)、気体透過膜4512内は詰まっており、脱気モジュール451の脱気性能が低下している。そのため、制御部50は、脱気モジュール451の脱気性能を回復させる回復モードを実行する(ステップS103)。回復モードの詳細については後述する。
【0075】
回復モードの実行後、制御部50は、再度評価値を取得する(ステップS104)。そして、制御部50は、評価値が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS105)。評価値が所定の閾値未満である場合(ステップS105;No)、回復モードにより、脱気モジュール451は脱気性能が回復している。そのため、制御部50は、回復処理を終了する。
【0076】
評価値が所定の閾値以上である場合(ステップS105;Yes)、脱気モジュール451の脱気性能の回復具合は不十分である。そのため、制御部50は、再度回復モードを実行する(ステップS106)。
【0077】
二回目の回復モードの実行後、制御部50は、再度評価値を取得する(ステップS107)。そして、制御部50は、評価値が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS108)。評価値が所定の閾値未満である場合(ステップS108;No)、脱気モジュール451は脱気性能が回復している。そのため、制御部50は、回復処理を終了する。
【0078】
評価値が所定の閾値以上である場合(ステップS108;Yes)、回復モードを複数回実行しても脱気性能が回復しないほど、脱気モジュール451の脱気性能は低下している。そのため、制御部50は、報知部60により、脱気モジュール451の交換を催促する(ステップS109)。報知部60による報知後、制御部50は、回復処理を終了する。
【0079】
ステップS103及びステップS106で実行する回復モードについて、図8のフローチャートを元に説明する。以下においては、回復モードの1つである第1回復モードについて説明する。初めに、制御部50は、大気開放弁4513cを開放させる(ステップS201)。大気開放弁4513cの開放後、制御部50は、真空ポンプ4514eを所定時間駆動させる(ステップS202)。制御部50は、当該制御により、大気を気体透過膜4512内に流して、気体透過膜4512内の詰まりを解消させる。
【0080】
制御部50は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS203)。所定時間が経過していない場合(ステップS203;No)、ステップS203に遷移し、制御部50は、所定時間が経過するまで待機する。真空ポンプ4514eの駆動時間である当該所定時間は、例えば10秒であり、より好ましくは15秒である。
【0081】
所定時間が経過したら(ステップS203;Yes)、制御部50は、真空ポンプ4514eの駆動を停止する(ステップS204)。また、制御部50は、大気開放弁4513cを閉鎖する(ステップS205)。ここで、ステップS201からステップS205の制御を、大気開放動作とする。
【0082】
制御部50は、大気開放動作を所定回数繰り返したか否かを判定する(ステップS206)。大気開放動作を所定回数繰り返していない場合(ステップS206;No)、ステップS201に遷移し、制御部50は、再度大気開放動作を実行する。大気開放動作を所定回数繰り返した場合(ステップS206;Yes)、制御部50は、回復モードを終了する。
【0083】
図9は大気開放動作の実行回数と脱気モジュール451の脱気度の関係性を例示するグラフである。図9において、横軸は大気開放動作の実行回数、縦軸は脱気モジュール451の脱気度をそれぞれ示す。本例においては、大気開放動作は、10回繰り返すのが好ましい。
【0084】
[実施形態の効果]
以上に示すように、本実施形態に係る液滴吐出装置1の制御部50は、気体透過膜4512の詰まり具合を検知可能な検知部として機能する。また、本実施形態に係る液滴吐出装置1の制御部50は、検知部の検知結果に応じて脱気モジュール451の脱気性能を回復させる。
当該構成によれば、適切なタイミングで脱気モジュール451の脱気性能を回復させることができる。
【0085】
[その他の構成]
以上、本発明に係る実施の形態に基づいて具体的に説明を行ったが、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明が、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む様々な変更が可能であるのはもちろんである。
【0086】
例えば上記においては、評価値の一例として、第一真空室4513と第二真空室4514の圧力差を例示したが、これに限られない。例えば、大気開放弁4513cの開放時に真空ポンプ4514eを駆動させ、気体透過膜4512内の圧力値が所定値に到達するまでの時間を評価値としてもよい。なお、気体透過膜4512内の圧力値は、第一圧力センサー4513bにより取得できる。
【0087】
図10は、真空ポンプ4514eを駆動させたときの、気体透過膜4512に詰まりが有る場合と無い場合の第一圧力センサー4513bの圧力値の推移を例示するグラフである。図10に示すように、気体透過膜4512内に詰まりが有る場合、気体透過膜4512内の圧力値が例えば-90kPaになるまでの時間に遅れが生じる。なお、図10に示す例において、評価値の閾値は例えば12秒となる。
【0088】
あるいは、気体透過膜4512内を減圧した上で大気開放弁4513cを開放状態とした時の気体透過膜4512内の空気流量を評価値としてもよい。気体透過膜4512内に詰まりが有る場合、空気流量は小さくなる。
【0089】
あるいは、インク消費量及びスタンバイ制御時間に基づく評価値を取得してもよい。本発明において、スタンバイ制御とは、インクジェットヘッド24aによりインク排出制御が長時間(例えば6時間)実行されない状態を指す。インク消費量が増加すると、気体透過膜4512内の詰まりの原因となる気体透過膜4512内に浸潤するインク中の成分の排出量が増加する。また、スタンバイ制御状態であると、大気開放弁4513cが長時間開放状態とならず、気体透過膜4512内に詰まりが生じるリスクが増加する。そのため、制御部50は、例えば図11に示すような、インク消費量とスタンバイ制御時間のマトリクス表に基づいて、評価値を取得できる。図11に示す例において、評価値の閾値は1である。
【0090】
なお、インクはその色に応じて成分の排出量が異なる。図12は、各色のインクの使用量とインク中成分の排出量の関係を例示するグラフである。図12においては、横軸はインク使用量を示し、縦軸はインク中成分の排出量を示す。図12に示すように、およそM、C、K、Yの順に、同じインク消費量に対するインク中成分の排出量が多い。そのため、制御部50がインク消費量に基づいて評価値を取得する場合、Y、K、C、Mの順にインク消費量の閾値を大きく設定するのが好ましい。
【0091】
また、上記においては、評価値は、圧力差、気体透過膜4512内の圧力値が所定値に到達するまでの時間、気体透過膜4512内の空気流量、あるいはインク消費量とスタンバイ制御時間のいずれかに基づくものとしたが、これに限られない。また、評価値は、上記の複数の組み合わせに基づくものであってもよい。
【0092】
また、上記においては、回復モードとして、大気開放動作を実行する第1回復モードを例示したが、これに限られない。回復モードは、コンプレッサー等の加圧源により気体透過膜4512内の連続加圧動作を実行する第2回復モードであってもよい。
【0093】
第2回復モードにつき、図13を元に説明する。初めに、制御部50は、第一真空経路4513aに加圧源が接続されたか否かを判定する(ステップS301)。加圧源の接続が確認できない場合(ステップS301;No)、制御部50は、ステップS301に遷移し、加圧源が接続されるまで待機する。
【0094】
制御部50は、加圧源の接続を確認すると(ステップS301;Yes)、真空ポンプ4514eの駆動を停止する(ステップS302)。また、制御部50は、大気開放弁4513cを開放する(ステップS303)。そして、制御部50は、加圧源により気体透過膜4512内を所定時間連続加圧する(連続加圧動作)(ステップS304)。加圧源の圧力は、例えば0.1MPaであり、好ましくは0.15MPaである。加圧源の圧力が高いとより脱気モジュール451の脱気性能は回復しやすくなるが、気体透過膜4512が破損するリスクは高まる。
【0095】
図14は、加圧源で気体透過膜4512内を連続加圧する時間と、脱気モジュール451の脱気度の関係性を例示するグラフである。図14において、横軸は加圧源で気体透過膜4512内を連続加圧した時間、縦軸は脱気モジュール451の脱気度をそれぞれ示す。図14に示すように、加圧源で気体透過膜4512内を連続加圧する時間を長くすると、その分脱気モジュール451の脱気性能は回復しやすくなる。一方で、加圧源で気体透過膜4512内を連続加圧する時間を長くすると、その分インクジェット記録装置1のダウンタイムは長くなる。そのため、図14に示す例において、加圧源で気体透過膜4512内を連続加圧する時間は、3分が好ましく、より好ましくは5分である。
【0096】
制御部50は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS305)。所定時間が経過していない場合(ステップS305;No)、制御部50は、所定時間が経過するまで待機する。所定時間の経過後(ステップS305;Yes)、制御部50は、加圧源の駆動を停止させる(ステップS306)。そして、制御部50は、大気開放弁4513cを閉鎖して(ステップS307)、ユーザーに加圧源を取り外させる(ステップS308)。
【0097】
上記したように、連続加圧動作は、加圧源により気体透過膜4512を加圧する。そのため、連続加圧動作は、大気開放動作よりも高圧力での加圧が可能である。また、連続加圧動作は、大気開放動作と異なり、気体透過膜4512内に空気以外の気体を流したり、空気よりも高温の気体を流したりすることができる。そのため、第2回復モードは、第1回復モードよりも脱気モジュール451の脱気性能の回復力に優れる。他方で、第2回復モードは、ユーザーが加圧源を着脱する必要がある。そのため、第1回復モードは、第2回復モードよりも回復モードの実行コストを抑制でき、かつ、ダウンタイムも短くできる。
【0098】
なお、上記においては一の回復処理において、第1回復モードと第2回復モードのいずれかのみを複数回実行する場合を例示したが、これに限られない。すなわち、一の回復処理において、第1回復モードと第2回復モードを組み合わせても構わない。また、回復モードの実行回数も2回に限られない。
【0099】
また、一の回復処理において、第1回復モードないし第2回復モードのいずれかを複数回実行する場合、その強度は、1回ごとに異なっていてもよい。ここで、第1回復モードの強度とは、大気開放動作の繰り返し回数や時間を指す。また、第2回復モードの強度とは、連続加圧動作における加圧源の圧力や連続加圧時間を指す。
【0100】
また、ステップS102、ステップS105及びステップS108における所定の閾値はそれぞれ同じ値に限られず、順番に小さくなるように設定してもよい。また、評価値の判定回数も3回に限られず、脱気モジュール451の脱気性能の回復率や、回復モードにかかる時間等に応じて適宜設定してよい。
【0101】
また、回復処理における上記したような各種の設定は、常に一定でなくて良い。すなわち、ステップS101、ステップS104及びステップS107で取得した評価値に応じて、制御部50が当該設定を適宜変更する構成であってもよい。なお、制御部50による設定の変更は、制御部50が自動的に行うものでもよく、また、ユーザーによる指示に基づくものでもよい。
【0102】
また、上記においては、液滴吐出装置の一実施形態として、インクを吐出するインクジェット記録装置1を例示したが、これに限られない。すなわち、本発明に係る脱気装置100が脱気する液体は、インクに限られず、例えば前処理剤や血液、水でもよい。また、脱気装置100は、液滴吐出装置に設けられる構成に限定されない。
【0103】
また、上記においては、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用できる。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0104】
1 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
24a インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)
41 メインタンク(液体貯留部)
42 第一サブタンク(液体貯留部)
43 第二サブタンク(液体貯留部)
451 脱気モジュール
4512 気体透過膜
4513 第一真空室
4514 第二真空室
50 制御部(検知部)
60 報知部
100 脱気装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14