(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014040
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240125BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240125BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/14 605
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116592
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】四十物 孝憲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EC15
2C056EC32
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KB15
2C056KB16
2C057AF84
2C057AG30
2C057AG31
2C057AG68
2C057AG75
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】共通流路における増粘の進行を抑制する。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズルと対応し、第1方向に沿って配置された複数の個別流路と、複数の個別流路の一方側に共通に連通する第1共通流路と、複数の個別流路の他方側に共通に連通する第2共通流路と、第1共通流路に連通し、第1共通流路に液体を供給する第1流路と、第1流路よりも第1方向における一方側において第1共通流路に連通し、第1共通流路から液体を回収する第2流路と、第2共通流路に連通し、第2共通流路に液体を供給する第3流路と、第3流路よりも第1方向における他方側において第2共通流路に連通し、第2共通流路から液体を回収する第4流路と、を備える、ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと対応し、第1方向に沿って配置された複数の個別流路と、
前記複数の個別流路の一方側に共通に連通する第1共通流路と、
前記複数の個別流路の他方側に共通に連通する第2共通流路と、
前記第1共通流路に連通し、前記第1共通流路に液体を供給する第1流路と、
前記第1流路よりも前記第1方向における一方側において前記第1共通流路に連通し、前記第1共通流路から液体を回収する第2流路と、
前記第2共通流路に連通し、前記第2共通流路に液体を供給する第3流路と、
前記第3流路よりも前記第1方向における他方側において前記第2共通流路に連通し、前記第2共通流路から液体を回収する第4流路と、
を備える、
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1流路は、前記第1方向における他方側の端部において前記第1共通流路と連通し、
前記第2流路は、前記第1方向における一方側の端部において前記第1共通流路と連通し、
前記第3流路は、前記第1方向における一方側の端部において前記第2共通流路と連通し、
前記第4流路は、前記第1方向における他方側の端部において前記第2共通流路と連通する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1共通流路は、
前記第1流路と連通する連通部と、
前記複数の個別流路と連通する共通部と、
前記連通部及び前記共通部の間に設けられ、前記連通部及び前記共通部よりも断面積の小さい狭窄部と、を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッド内の液体は、剪断応力が作用することにより粘度が低下する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1流路内の液体に付与される圧力は、前記第2流路内の液体に付与される圧力よりも高く、
前記第3流路内の液体に付与される圧力は、前記第4流路内の液体に付与される圧力よりも高い、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1流路内の液体に付与される圧力は、前記第4流路内の液体に付与される圧力よりも高く、
前記第2流路内の液体に付与される圧力は、前記第3流路内の液体に付与される圧力よりも高い、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第4流路内の液体に付与される圧力と大気圧との相違の程度は、
前記第1流路内の液体に付与される圧力と大気圧との相違の程度よりも大きく、
前記第3流路内の液体に付与される圧力と大気圧との相違の程度は、
前記第2流路内の液体に付与される圧力と大気圧との相違の程度よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1流路内の液体に付与される圧力は、大気圧よりも高く、
前記第2流路内の液体に付与される圧力は、大気圧よりも高く、
前記第3流路内の液体に付与される圧力は、大気圧よりも低く、
前記第4流路内の液体に付与される圧力は、大気圧よりも低い、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1流路内の液体に付与される圧力と、前記第4流路内の液体に付与される圧力との和は、前記第2流路内の液体に付与される圧力と、前記第3流路内の液体に付与される圧力との和と、略同じである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記複数の個別流路は、
第1個別流路と、
前記第1個別流路よりも前記第1方向における一方側に配置された第2個別流路と、を含み、
前記第1個別流路の流路抵抗は前記第2個別流路の流路抵抗よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記複数の個別流路は、
第1個別流路と、
前記第1個別流路よりも前記第1方向における一方側に配置された第2個別流路と、を含み、
前記第1個別流路の体積は前記第2個別流路の体積よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1から11のうち何れか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記第1流路内の圧力を調整し、
前記第2流路内の圧力を調整し、
前記第3流路内の圧力を調整し、
前記第4流路内の圧力を調整する圧力調整装置を制御し、
前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出を制御する制御装置と、
を備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の液体吐出装置に設けられ、インク等の液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいて、液体吐出ヘッドの内部に充填された液体内の気泡の滞留や、液体の増粘を防止するために、液体吐出ヘッドに設けられた流路内で液体を循環させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数のノズルと対応する複数の個別流路と、複数の個別流路の一方側に共通に連通する共通供給流路と、複数の個別流路の他方側に共通に連通する共通回収流路と、共通共通流路へと液体を供給する2つの供給ポートと、共通回収流路から液体を回収する2つの回収ポートと、を備える液体吐出ヘッドであって、2つの供給ポートから共通供給流路を介して複数の個別流路へと供給された液体を、共通回収流路を介して2つの回収ポートから回収する液体吐出ヘッドに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術において、個別流路は共通供給流路よりも流路抵抗が大きいので、共通供給流路、個別流路、共通回収流路の全体の中で個別流路がインク流れの律速となる。そうすると、個別流路よりも流路抵抗が小さい共通供給流路や共通回収流路では、インクの流量が想定よりも少なくなってしまう場合がある。これにより、増粘したインクの回収や増粘していないインクの供給が好適に行えず、その結果、増粘が進行してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の問題を解決するために、本発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズルと対応し、第1方向に沿って配置された複数の個別流路と、前記複数の個別流路の一方側に共通に連通する第1共通流路と、前記複数の個別流路の他方側に共通に連通する第2共通流路と、前記第1共通流路に連通し、前記第1共通流路に液体を供給する第1流路と、前記第1流路よりも前記第1方向における一方側において前記第1共通流路に連通し、前記第1共通流路から液体を回収する第2流路と、前記第2共通流路に連通し、前記第2共通流路に液体を供給する第3流路と、前記第3流路よりも前記第1方向における他方側において前記第2共通流路に連通し、前記第2共通流路から液体を回収する第4流路と、を備える、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る液体吐出装置は、上述した液体吐出ヘッドと、前記第1流路内の圧力を調整し、前記第2流路内の圧力を調整し、前記第3流路内の圧力を調整し、前記第4流路内の圧力を調整する圧力調整装置を制御し、前記液体吐出ヘッドからの液体の吐出を制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置100の一例を示す構成図である。
【
図2】インク供給装置8の構成の一例を示す説明図である。
【
図3】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図4】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図5】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】液体吐出ヘッド1の構成の一例を示す平面図である。
【
図7】液体吐出ヘッド1内のインクの圧力の一例を示す説明図である。
【
図8】変形例1に係る液体吐出ヘッド1Bの構成の一例を示す平面図である。
【
図9】変形例2に係る液体吐出ヘッド1Cの構成の一例を示す平面図である。
【
図10】変形例2に係る液体吐出ヘッド1Dの構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。但し、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
<<A.実施形態>>
以下、本実施形態に係る液体吐出装置100について説明する。
【0010】
<<1.液体吐出装置の概要>>
図1は、本実施形態に係る液体吐出装置100を示す説明図である。
【0011】
液体吐出装置100は、インクを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。媒体PPは、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムまたは布帛等の任意の印刷対象が媒体PPとして利用され得る。なお、インクは「液体」の一例である。
【0012】
液体吐出装置100は、複数の液体吐出ヘッド1と、制御装置7と、インク供給装置8と、移動機構91と、搬送機構92と、を備える。
【0013】
制御装置7は、例えばCPUまたはFPGA等の処理回路と、半導体メモリ等の記憶回路とを含み、液体吐出装置100の各要素を制御する。ここで、CPUとは、Central Processing Unitの略称であり、FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略称である。
【0014】
移動機構91は、制御装置7による制御のもとで、媒体PPを、Y軸に沿ったY1方向に搬送する。以下では、Y軸に沿ったY1方向と、Y1方向とは反対のY2方向とを、Y軸方向と総称する。また、以下では、Y軸に交差するX軸に沿ったX1方向と、X1方向とは反対のX2方向とを、X軸方向と総称する。また、以下では、X軸及びY軸に交差するZ軸に沿ったZ1方向と、Z1方向とは反対のZ2方向とを、Z軸方向と総称する。また、以下では、一の物体を起点として他の物体を終点とするベクトルと、X1方向に向かうベクトルとの内積が「正」となる場合、一の物体を基準として他の物体が、「X1側」に存在すると称する。また、以下では、一の物体を起点として他の物体を終点とするベクトルと、X2方向に向かうベクトルとの内積が「正」となる場合、一の物体を基準として他の物体が、「X2側」に存在すると称する。Y1側、Y2側、Z1側、及び、Z2側についても同様である。
本実施形態では、一例として、X軸、Y軸、及び、Z軸が、互いに直交する場合を想定して説明する。但し、本発明はこのような態様に限定されるものではない。X軸、Y軸、及び、Z軸は、互いに交差していればよい。
【0015】
搬送機構92は、制御装置7による制御のもとで、複数の液体吐出ヘッド1を、X1方向及びX2方向に往復動させる。搬送機構92は、複数の液体吐出ヘッド1を収容する収納ケース921と、収納ケース921が固定された無端ベルト922とを具備する。なお、液体容器93を液体吐出ヘッド1とともに収納ケース921に収納してもよい。
【0016】
制御装置7は、液体吐出ヘッド1に対して、液体吐出ヘッド1を駆動するための駆動信号Comと、液体吐出ヘッド1を制御するための制御信号SIと、を供給する。そして、液体吐出ヘッド1は、制御信号SIによる制御のもとで駆動信号Comにより駆動され、液体吐出ヘッド1に設けられた複数のノズルNの一部または全部から、Z1方向にインクを吐出させる。すなわち、液体吐出ヘッド1は、移動機構91による媒体PPの搬送と、搬送機構92による液体吐出ヘッド1の往復動とに連動して、複数のノズルNの一部又は全部からインクを吐出させて、当該吐出されたインクを媒体PPの表面に着弾させることで、媒体PPの表面に所望の画像を形成する。なお、ノズルNについては、
図3及び
図4において後述する。
【0017】
インク供給装置8は、インクを貯留する。また、インク供給装置8は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、インク供給装置8が貯留しているインクを液体吐出ヘッド1に供給する。また、インク供給装置8は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、液体吐出ヘッド1からインクを回収し、当該回収したインクを液体吐出ヘッド1に還流させる。
なお、本実施形態では、一例として、インク供給装置8が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックに対応する4種類のインクを貯留する場合を想定する。また、本実施形態では、一例として、液体吐出ヘッド1が、4種類のインクに対応する、4個の液体吐出ヘッド1を備える場合を想定する。但し、以下では、説明の簡素化のために、インク供給装置8が貯留する4種類のインクのうち、1種類のインクに着目して説明する。また、以下では、説明の簡素化のために、液体吐出ヘッド1が具備する4個の液体吐出ヘッド1のうち、1種類のインクに対応する1個の液体吐出ヘッド1に着目して説明する。
【0018】
<<2.インク供給装置の概要>>
以下、
図2を参照しつつ、インク供給装置8の概要を説明する。
【0019】
図2は、インク供給装置8を説明するための説明図である。
【0020】
図2に示すように、インク供給装置8は、インク貯留容器81と、インク供給容器82と、ポンプG0と、圧力調整装置83と、を備える。
【0021】
インク貯留容器81は、インクを貯留する容器である。インク貯留容器81としては、例えば、液体吐出装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、または、インクを補充可能なインクタンク等を採用することができる。
【0022】
ポンプG0は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、インク貯留容器81に貯留されたインクを、インク供給容器82に供給するポンプである。
インク供給容器82は、インク貯留容器81から供給されるインクと、液体吐出ヘッド1から回収されたインクとを、一時的に貯留する容器である。
【0023】
圧力調整装置83は、ポンプG11と、ポンプG12と、ポンプG21と、ポンプG22とを備える。
【0024】
ポンプG11は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、インク供給容器82に貯留されたインクを、循環流路J11を介して液体吐出ヘッド1に供給する。ここで、循環流路J11は、液体吐出ヘッド1に設けられた接続口H11に接続する。ポンプG11は、循環流路J11及び接続口H11を介して、液体吐出ヘッド1にインクを供給する。
【0025】
ポンプG12は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、循環流路J12を介して液体吐出ヘッド1からインクを回収し、回収したインクをインク供給容器82に供給する。ここで、循環流路J12は、液体吐出ヘッド1に設けられた接続口H12に接続する。ポンプG12は、循環流路J12及び接続口H12を介して、液体吐出ヘッド1からインクを回収する。
【0026】
ポンプG21は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、循環流路J21を介して液体吐出ヘッド1からインクを回収し、回収したインクをインク供給容器82に供給する。ここで、循環流路J21は、液体吐出ヘッド1に設けられた接続口H21に接続する。ポンプG21は、循環流路J21及び接続口H21を介して、液体吐出ヘッド1からインクを回収する。
【0027】
ポンプG22は、制御装置7から供給される制御信号Ctrに基づいて、インク供給容器82に貯留されたインクを、循環流路J22を介して液体吐出ヘッド1に供給する。ここで、循環流路J22は、液体吐出ヘッド1に設けられた接続口H22に接続する。ポンプG22は、循環流路J22及び接続口H22を介して、液体吐出ヘッド1にインクを供給する。
【0028】
なお、図示は省略するが、インク供給装置8には、循環流路J11内のインクに付与される圧力、循環流路J12内のインクに付与される圧力、循環流路J21内のインクに付与される圧力、及び、循環流路J22内のインクに付与される圧力を推定する圧力推定装置が設けられていてもよい。当該圧力推定装置は、循環流路J11内のインクに付与される圧力を検出するセンサーと、循環流路J12内のインクに付与される圧力を検出するセンサーと、循環流路J21内のインクに付与される圧力を検出するセンサーと、循環流路J22内のインクに付与される圧力を検出するセンサーと、から構成されてもよい。また、当該圧力推定装置は、ポンプG11の稼働状況と、ポンプG12の稼働状況と、ポンプG21の稼働状況と、ポンプG22の稼働状況と、から、循環流路J11内のインクに付与される圧力と、循環流路J12内のインクに付与される圧力と、循環流路J21内のインクに付与される圧力と、循環流路J22内のインクに付与される圧力と、を推定する演算装置であってもよい。
【0029】
なお、本実施形態において、循環流路J11は「第1流路」の一例であり、循環流路J12は「第2流路」の一例であり、循環流路J22は「第3流路」の一例であり、循環流路J21は「第4流路」の一例である。
【0030】
<<3.液体吐出ヘッドの概要>>
以下、
図3乃至
図5を参照しつつ、液体吐出ヘッド1の概要を説明する。
【0031】
図3は、液体吐出ヘッド1の分解斜視図であり、
図4は、
図3におけるII-II線の断面図であり、
図5は、
図3におけるIII-III線の断面図であり、
【0032】
図3乃至
図5に示すように、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板21と、コンプライアンスシートCS1及びCS2と、連通板22と、圧力室基板23と、振動板24と、封止基板25と、流路形成基板26と、配線基板4と、を備える。
【0033】
図3に示すように、ノズル基板21は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。ここで、「略平行」とは、完全に平行である場合の他に、誤差を考慮すれば平行であると看做せる場合を含む概念である。本実施形態では、「略平行」とは、10%程度の誤差を考慮すれば平行であると看做せる場合を含む概念であることとする。ノズル基板21は、例えば、エッチング等の半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造されるが、ノズル基板21の製造には公知の材料及び製法を任意に採用してもよい。
【0034】
ノズル基板21には、M個のノズルNが形成される。ここで、ノズルNとは、ノズル基板21に設けられた貫通孔である。また、値Mは、M≧2を満たす自然数である。本実施形態では、M個のノズルNが、ノズル基板21において、Y軸方向に延在するように配列されている場合を想定する。以下では、Y軸方向に延在するM個のノズルNを、ノズル列Lnと称する場合がある。
【0035】
図3乃至
図5に示すように、ノズル基板21を基準としてZ2側の位置には、連通板22が設けられる。連通板22は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。連通板22は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造されるが、連通板22の製造には公知の材料及び製法を任意に採用してもよい。
【0036】
連通板22には、インクの流路が形成される。
具体的には、連通板22には、Y軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BB1と、共通流路BB1を基準としてX2側の位置においてY軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BB2とが形成される。また、連通板22には、共通流路BB1及び共通流路BB2の間の位置においてY軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BA1と、共通流路BA1及び共通流路BB2の間の位置においてY軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BA2とが形成される。
【0037】
また、連通板22には、M個のノズルNと対応するM個の接続流路BK1と、M個のノズルNと対応するM個の接続流路BK2と、M個のノズルNと対応するM個の接続流路BR1と、M個のノズルNと対応するM個の接続流路BR2と、M個のノズルNと対応するM個のノズル流路BNと、が形成される。
このうち、接続流路BK1は、共通流路BA1と連通し、共通流路BB1を基準としてX2側の位置であって、共通流路BA1を基準としてZ2側の位置においてZ軸方向に延在するように設けられる。接続流路BR1は、接続流路BK1を基準としてX2側の位置においてZ軸方向に延在するように設けられる。接続流路BK2は、共通流路BA2と連通し、共通流路BB2を基準としてX1側の位置であって、共通流路BA2を基準としてZ2側の位置においてZ軸方向に延在するように設けられる。接続流路BR2は、接続流路BR1を基準としてX2側の位置であって、接続流路BK2を基準としてX1側位置においてZ軸方向に延在するように設けられる。ノズル流路BNは、接続流路BR1及び接続流路BR2の間の位置において、接続流路BR1及び接続流路BR2と連通し、また、当該ノズル流路BNに対応するノズルNに連通する。
【0038】
なお、以下では、共通流路BA1及び共通流路BA2を、共通流路BAと総称し、共通流路BB1及び共通流路BB2を、共通流路BBと総称し、接続流路BK1及び接続流路BK2を、接続流路BKと総称し、接続流路BR1及び接続流路BR2を、接続流路BRと総称する場合がある。
【0039】
図3乃至
図5に示すように、連通板22を基準としてZ2側の位置に、圧力室基板23が設けられる。圧力室基板23は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。圧力室基板23は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造されるが、圧力室基板23の製造には公知の材料及び製法を任意に採用してもよい。
【0040】
圧力室基板23には、インクの流路が形成される。具体的には、圧力室基板23には、M個のノズルNと対応するM個の圧力室CV1と、M個のノズルNと対応するM個の圧力室CV2と、が形成される。このうち、圧力室CV1は、接続流路BK1を基準としてZ2側の位置であって、接続流路BR1を基準としてZ2側の位置において、X軸方向に延在し、接続流路BK1及び接続流路BR1に連通するように設けられる。圧力室CV2は、接続流路BK2を基準としてZ2側の位置であって、接続流路BR2を基準としてZ2側の位置において、X軸方向に延在し、接続流路BK2及び接続流路BR2に連通するように設けられる。
なお、以下では、圧力室CV1及び圧力室CV2を、圧力室CVと総称する場合がある。
【0041】
以下では、接続流路BK1と、当該接続流路BK1に連通する圧力室CV1と、当該圧力室CV1に連通する接続流路BR1と、当該接続流路BR1に連通するノズル流路BNと、当該ノズル流路BNに連通する接続流路BR2と、当該接続流路BR2に連通する圧力室CV2と、当該圧力室CV2に連通する接続流路BK2とを、個別流路RKと称する場合がある。また、以下では、M個のノズルNのうちm番目のノズルNに対応する個別流路RKを、個別流路RK[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、1≦m≦Mを満たす自然数である。本実施形態において、M個のノズルNに対応するM個の個別流路RK[1]~RK[M]は、Y軸方向に沿って配置される。
【0042】
なお、本実施形態では、一例として、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の各々が互いに略同じ形状を有し、また、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の各々が互いに略同じ大きさを有する場合を想定する。ここで、「略同じ」とは、完全に同一である場合の他に、誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む概念である。本実施形態では、「略同じ」とは、10%程度の誤差を考慮すれば同一であると看做せる場合を含む概念であることとする。
【0043】
図3乃至
図5に示すように、圧力室基板23を基準としてZ2側の位置には、振動板24が設けられる。振動板24は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材であって、弾性的に振動可能な部材である。振動板24は、例えば、酸化シリコンからなる弾性膜と、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜と、を有する。
【0044】
図3乃至
図5に示すように、振動板24を基準としてZ2側の位置には、M個の圧力室CV1に対応するM個の圧電素子PZ1と、M個の圧力室CV2に対応するM個の圧電素子PZ2と、が設けられる。以下では、圧電素子PZ1及び圧電素子PZ2を、圧電素子PZと総称する場合がある。圧電素子PZは、駆動信号Comの電位変化に応じて変形する受動素子である。具体的には、圧電素子PZは、駆動信号Comの電位変化に応じて駆動されて変形する。振動板24は、圧電素子PZの変形に連動して振動する。振動板24が振動すると、圧力室CV内の圧力が変動する。そして、圧力室CV内の圧力が変動することで、圧力室CVの内部に充填されたインクが、接続流路BR及びノズル流路BNを経由してノズルNから吐出される。
【0045】
図3乃至
図5に示すように、圧力室基板23を基準としてZ2側の位置には、M個の圧電素子PZ1と、M個の圧電素子PZ2とを保護するための封止基板25が設けられる。封止基板25は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。封止基板25は、例えば、半導体製造技術を利用してシリコンの単結晶基板を加工することで製造されるが、封止基板25の製造には公知の材料及び製法を任意に採用してもよい。
【0046】
封止基板25が有するZ軸方向を法線方向とする2つの面のうちZ1側の面には、M個の圧電素子PZ1を覆うための凹部と、M個の圧電素子PZ2を覆うための凹部とが設けられる。以下では、M個の圧電素子PZ1を覆い、振動板24と封止基板25との間に形成された封止空間を、封止空間SP1と称し、M個の圧電素子PZ2を覆い、振動板24と封止基板25との間に形成された封止空間を、封止空間SP2と称する。また、以下では、封止空間SP1及び封止空間SP2を、封止空間SPと総称する場合がある。封止空間SPは、圧電素子PZを封止し、圧電素子PZが水分等の影響により変質することを防ぐための空間である。
【0047】
封止基板25には、貫通孔250が設けられている。貫通孔250は、封止基板25をZ1方向に見たときに、封止空間SP1及び封止空間SP2の間に位置し、封止基板25のZ1側の面から、封止基板25のZ2側の面までを貫通する穴である。貫通孔250には、配線基板4が挿通される。
【0048】
図3乃至
図5に示すように、連通板22を基準としてZ2側の位置には、流路形成基板26が設けられる。流路形成基板26は、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。流路形成基板26は、例えば、樹脂材料の射出成型により形成されるが、流路形成基板26の製造には公知の材料及び製法を任意に採用してもよい。
【0049】
流路形成基板26には、インクの流路が形成される。
具体的には、流路形成基板26には、Y軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BC1と、Y軸方向に延在するように設けられた1個の共通流路BC2とが形成される。このうち、共通流路BC1は、共通流路BB1と連通し、共通流路BB1を基準としてZ2側の位置に設けられる。共通流路BC2は、共通流路BB2と連通し、共通流路BB2を基準としてZ2側の位置であって、共通流路BC1を基準としてX2側の位置に設けられる。なお、以下では、共通流路BC1及び共通流路BC2を、共通流路BCと総称する場合がある。
【0050】
以下では、共通流路BA1と、共通流路BA1に連通する共通流路BB1と、共通流路BB1に連通する共通流路BC1とを、共通流路R1と称する場合がある。また、以下では、共通流路BA2と、共通流路BA2に連通する共通流路BB2と、共通流路BB2に連通する共通流路BC2とを、共通流路R2と称する場合がある。また、以下では、共通流路R1及び共通流路R2を、共通流路Rと総称する場合がある。なお、共通流路R1は「第1共通流路」の一例であり、共通流路R2は「第2共通流路」の一例である。
【0051】
流路形成基板26には、共通流路BC1と連通する接続口H11と、共通流路BC1と連通する接続口H12と、共通流路BC2と連通する接続口H21と、共通流路BC2と連通する接続口H22と、が設けられる。
そして、共通流路BC1を含む共通流路R1には、循環流路J11及び接続口H11を介して、インク供給容器82からインクが供給される。共通流路R1に貯留されているインクの一部は、循環流路J12及び接続口H12を介してインク供給容器82に回収される。また、共通流路BC2を含む共通流路R2には、循環流路J22及び接続口H22を介して、インク供給容器82からインクが供給される。共通流路R2に貯留されているインクの一部は、循環流路J21及び接続口H21を介してインク供給容器82に回収される。
【0052】
また、共通流路R1に供給されたインクの一部は、接続流路BK1を経由して圧力室CV1に充填される。そして、駆動信号Comにより圧電素子PZ1が駆動される場合、圧力室CV1に充填されたインクの一部は、連通流路BR1を経由して、ノズルNから吐出される。また、圧力室CV1に供給されたインクの一部は、接続流路BR1とノズル流路BNと接続流路BR2とを経由して圧力室CV2に充填される。そして、駆動信号Comにより圧電素子PZ2が駆動される場合、圧力室CV2に充填されたインクの一部は、接続流路BR2を経由して、ノズルNから吐出される。
【0053】
流路形成基板26には、貫通孔260が設けられている。貫通孔260は、流路形成基板26をZ1方向に見たときに、共通流路BC1及び共通流路BC2の間に位置し、流路形成基板26のZ1側の面から、流路形成基板26のZ2側の面までを貫通する穴である。貫通孔260には、配線基板4が挿通される。
【0054】
図3乃至
図5に示すように、振動板24が有するZ軸方向を法線方向とする2つの面のうち、Z2側の面には、配線基板4が実装される。配線基板4は、液体吐出ヘッド1を制御装置7に電気的に接続するための部品である。配線基板4としては、例えば、FPCまたはFFC等の可撓性の配線基板が好適に採用される。ここで、FPCとは、Flexible Printed Circuitの略称であり、また、FFCとは、Flexible Flat Cableの略称である。配線基板4には、集積回路40が実装される。集積回路40は、制御信号SIによる制御のもとで、圧電素子PZ1に対して、駆動信号Comを供給するか否かを切り替える電気回路である。
【0055】
図3乃至
図5に示すように、連通板22を基準としてZ1側の位置であって、ノズル基板21を基準としてX1側の位置には、共通流路BA1と共通流路BB1とを閉塞するようにコンプライアンスシートCS1が設けられる。また、連通板22を基準としてZ1側の位置であって、ノズル基板21を基準としてX2側の位置には、共通流路BA2と共通流路BB2とを閉塞するようにコンプライアンスシートCS2が設けられる。以下では、コンプライアンスシートCS1及びコンプライアンスシートCS2を、コンプライアンスシートCSと総称する場合がある。コンプライアンスシートCSは、Y軸方向に長尺で、XY平面に略平行に延在する板状の部材である。コンプライアンスシートCSは、弾性材料から形成されており、共通流路BA及び接続流路BK内のインクの圧力変動を吸収する。
【0056】
なお、図示は省略するが、液体吐出ヘッド1は、ノズル基板21が有するZ軸方向を法線方向とする2つの面のうちZ1側の面であるノズル面NPを封止するためのキャップを備える。キャップは、ノズルNからインクが吐出されない期間において、ノズルNが形成されたノズル基板21の有するノズル面NPを封止する。
【0057】
<<4.液体吐出ヘッドにおけるインクの流れ>>
以下、
図6及び
図7を参照しつつ、液体吐出ヘッド1におけるインクの流れを説明する。
【0058】
図6は、液体吐出ヘッド1におけるインクの流れを説明するための説明図である。具体的には、
図6では、液体吐出ヘッド1をZ1方向に平面視した場合において、共通流路R及び個別流路RKにおけるインクの流れを表している。なお、
図6及び後述する
図8乃至
図10では、図示の都合上、接続流路BKがX軸方向に延在するように記載しているが、液体吐出ヘッド1において接続流路BKはZ軸方向に延在している。また、
図6及び後述する
図8乃至
図10では、一例として、値Mが「8」である場合を想定している。
【0059】
図6に示すように、循環流路J11は共通流路R1へとインクを供給し、循環流路J12は共通流路R1からインクを回収し、循環流路J22は共通流路R2へとインクを供給し、循環流路J21は共通流路R2からインクを回収する。よって、共通流路R1には、矢印EA1に示すように、Y1方向に向かってインクが流れ、共通流路R2には、矢印EA2に示すように、Y2方向に向かってインクが流れる。また、個別流路RK[m]には、共通流路R1からインクが供給され、共通流路R2へとインクが回収される。よって、個別流路RK[m]には、矢印FA[m]に示すように、共通流路R1から共通流路R2へとX2方向に向かってインクが流れる。
【0060】
図7は、液体吐出装置100に設けられた流路内のインクに付与される圧力を説明するための説明図である。
【0061】
図7に示すように、制御装置7は、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11と、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12と、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21と、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22とが、以下の式(1)及び式(2)により示される第1圧力条件を満たすように、インク供給装置8の圧力調整装置83を制御する。
<第1圧力条件>
P11 > P12 …… 式(1)
P22 > P21 …… 式(2)
【0062】
本実施形態では、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、第1圧力条件を満たすため、矢印EA1に示すように、循環流路J11から循環流路J12へと共通流路R1内のインクを循環させることが可能となり、また、矢印EA2に示すように、循環流路J22から循環流路J21へと共通流路R2内のインクを循環させることが可能となる。このため、本実施形態によれば、共通流路R内でインクを循環させない態様と比較して、共通流路R内において増粘の進行を抑制することが可能となる。
【0063】
図7に示すように、制御装置7は、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、以下の式(3)及び式(4)により示される第2圧力条件を満たすように、インク供給装置8の圧力調整装置83を制御する。
<第2圧力条件>
P11 > P21 …… 式(3)
P12 > P22 …… 式(4)
【0064】
本実施形態では、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、第2圧力条件を満たすため、矢印FA[m]に示すように、共通流路R1から個別流路RK[m]を介して共通流路R2へと、インクを循環させることが可能となり、個別流路RK[m]に設けられた圧力室CVに対して円滑にインクを供給することが可能となる。
【0065】
図7に示すように、制御装置7は、圧力P11、P12、P21、及び、P22と、大気圧PCとが、以下の式(5)及び式(6)により示される第3圧力条件を満たすように、インク供給装置8の圧力調整装置83を制御する。
<第3圧力条件>
|P11-PC| < |P21-PC| …… 式(5)
|P12-PC| < |P22-PC| …… 式(6)
【0066】
なお、本実施形態において、大気圧PCとは、標準大気圧であり、1気圧、すなわち、101325パスカルである。但し、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。大気圧PCは、液体吐出装置100が設置されている地域の大気圧であってもよい。
【0067】
また、圧力P11、P12、P21、及び、P22は、第2圧力条件及び第3圧力条件を満たすため、圧力P11、P12、P21、及び、P22の各々と、大気圧PCとの間には、以下の式(7)、式(8)、式(9)、及び、式(10)に示す大気圧関連条件が成立することになる。
<大気圧関連条件>
P11 > PC …… 式(7)
P12 > PC …… 式(8)
PC > P21 …… 式(9)
PC > P22 …… 式(10)
【0068】
すなわち、本実施形態において、圧力P11、P12、P21、及び、P22は、大気圧関連条件を満たすため、上述した第3圧力条件は、以下の式(5A)及び式(6A)としても表現することができる。
<第3圧力条件>
P11-PC < PC-P21 …… 式(5A)
P12-PC < PC-P22 …… 式(6A)
【0069】
また、以下では、個別流路RK[m]内のインクのうち、ノズル流路BNのノズルN近傍におけるインクに付与される圧力を、ノズル近傍圧力PN[m]と称する場合がある。
【0070】
本実施形態では、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、第3圧力条件を満たすため、ノズル近傍圧力PN[m]を、大気圧PCよりも低い圧力に設定することができる。そして、本実施形態では、ノズル近傍圧力PN[m]が、大気圧PCよりも低い圧力に設定されるため、圧電素子PZの駆動に起因して圧力室CV内のインクがノズルNから吐出する場合以外において、ノズルNからのインクの漏洩を抑制することが可能となる。
【0071】
図7に示すように、制御装置7は、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、以下の式(11)により示される第4圧力条件を満たすように、インク供給装置8の圧力調整装置83を制御する。
<第4圧力条件>
P11+P21 = P12+P22 …… 式(11)
【0072】
なお、第4圧力条件は、圧力P11と圧力P21との和が、圧力P12と圧力P22との和と完全に同一の場合の他に、圧力P11と圧力P21との和が、圧力P12と圧力P22との和と略同じ場合を含むこととする。
【0073】
また、以下では、共通流路R1内のインクのうち、個別流路RK[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR1[m]と称し、共通流路R2内のインクのうち、個別流路RK[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR2[m]と称する。本実施形態では、一例として、ノズル近傍圧力PN[m]が、個別流路近傍圧力PR1[m]と個別流路近傍圧力PR2[m]とを用いて、以下の式(12)で表される場合を想定する。
PN[m] = {PR1[m]+PR2[m]}÷2 …… 式(12)
【0074】
本実施形態では、圧力P11、P12、P21、及び、P22が、第4圧力条件を満たすため、M個の個別流路RK[1]~RK[M]に対応するM個のノズル近傍圧力PN[1]~PN[M]を、略同じ値とすることが可能となる。より具体的には、本実施形態のように、ノズル近傍圧力PN[m]が上述した式(12)を満たす場合、ノズル近傍圧力PN[1]~PN[M]の各々は、以下の式(13)に示す圧力P11及び圧力P21の平均圧力PM1と、以下の式(14)に示す圧力P12及び圧力P22の平均圧力PM2とを用いて、以下の式(15)に示すノズル圧力条件を満たす。
<ノズル圧力条件>
PM1 = {P11+P21}÷2 …… 式(13)
PM2 = {P12+P22}÷2 …… 式(14)
PN[m] = PM1 = PM2 …… 式(15)
【0075】
なお、本実施形態では、ノズル圧力条件を、上述した式(15)で定義するが、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。ノズル圧力条件は、例えば、以下の式(16)で定義されてもよい。
<ノズル圧力条件>
PN[m] = {P11+P12+P21+P22}÷4 …… 式(16)
【0076】
このように、本実施形態によれば、M個の個別流路RK[1]~RK[M]に対応するM個のノズルNが、ノズル圧力条件を満たしつつ、インクを吐出することが可能となるため、M個のノズル近傍圧力PN[1]~PN[M]が互いに異なる態様と比較して、M個の個別流路RK[1]~RK[M]に対応するM個のノズルNからのインクの吐出特性のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0077】
なお、
図6に示すように、本実施形態において、循環流路J11は、Y軸方向における共通流路R1のY2側の端部で共通流路R1と連通し、循環流路J12は、Y軸方向における共通流路R1のY1側の端部で共通流路R1と連通する。このため、本実施形態では、例えば、循環流路J11が、Y軸方向における共通流路R1の中央部で共通流路R1と連通し、また、循環流路J11が、Y軸方向における共通流路R1の中央部で共通流路R1と連通する態様と比較して、共通流路R1での増粘の進行を抑制することができる。なお、本実施形態において、Y軸方向つまりY1方向及びY2方向は「第1方向」の一例であり、Y1側は「第1方向における一方側」の一例であり、Y2側は「第1方向における他方側」の一例である。
【0078】
また、
図6に示すように、本実施形態において、循環流路J21は、Y軸方向における共通流路R2のY2側の端部で共通流路R2と連通し、循環流路J22は、Y軸方向における共通流路R2のY1側の端部で共通流路R2と連通する。このため、本実施形態では、例えば、循環流路J21が、Y軸方向における共通流路R2の中央部で共通流路R2と連通し、また、循環流路J22が、Y軸方向における共通流路R2の中央部で共通流路R2と連通する態様と比較して、共通流路R2での増粘の進行を抑制することができる。
【0079】
<<5.実施形態の結び>>
以上において説明したように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1は、M個のノズルNと対応し、Y軸方向に沿って配置されたM個の個別流路RKと、M個の個別流路RKの一方側に共通に連通する共通流路R1と、M個の個別流路RKの他方側に共通に連通する共通流路R2と、共通流路R1に連通し、共通流路R1にインクを供給する循環流路J11と、循環流路J11よりもY1側において共通流路R1に連通し、共通流路R1からインクを回収する循環流路J12と、共通流路R2に連通し、共通流路R2にインクを供給する循環流路J22と、循環流路J22よりもY2側において共通流路R2に連通し、共通流路R2からインクを回収する循環流路J21と、を備える、ことを特徴とする。
【0080】
このように、本実施形態によれば、共通流路R1の内部で、循環流路J11から循環流路J12へとインクを循環させ、また、共通流路R2の内部で、循環流路J22から循環流路J21へとインクを循環させることができる。よって、本実施形態によれば、例えば、共通流路R1が循環流路J11のみに連通し、且つ、共通流路R2が循環流路J21のみに連通し、循環流路J11から共通流路R1へと供給されたインクが、個別流路RK及び共通流路R2を介して循環流路J21から回収される、所謂キャビティ循環と比較して、共通流路R1及び共通流路R2内における増粘の進行を抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、共通流路R1においてY2側からY1側へとY1方向にインクが流れ、共通流路R2においてY1側からY2側へとY2方向にインクが流れる。このため、本実施形態によれば、例えば、共通流路R1においてインクの流れる方向と、共通流路R2においてインクの流れる方向とが同じ方向となる態様と比較して、M個の個別流路RKに対応するM個のノズルNの近傍におけるインクに付与される圧力のばらつきを小さくすることが可能となり、M個の個別流路RKに対応するM個のノズルNからのインクの吐出特性のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J11は、Y軸方向におけるY2側の端部において共通流路R1と連通し、循環流路J12は、Y軸方向におけるY1側の端部において共通流路R1と連通し、循環流路J22は、Y軸方向におけるY1側の端部において共通流路R2と連通し、循環流路J21は、Y軸方向におけるY2側の端部において共通流路R2と連通する、ことを特徴とする。
【0083】
このため、本実施形態によれば、例えば、循環流路J11が、Y軸方向における中央部において共通流路R1と連通し、また、循環流路J12が、Y軸方向における中央部において共通流路R1と連通する態様、及び、循環流路J22が、Y軸方向における中央部において共通流路R2と連通し、また、循環流路J21が、Y軸方向における中央部において共通流路R2と連通する態様と比較して、共通流路R1内における増粘の進行、及び、共通流路R2内における増粘の進行を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11は、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12よりも高く、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22は、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21よりも高い、ことを特徴とする。
【0085】
このため、本実施形態によれば、循環流路J11から循環流路J12へと共通流路R1内のインクを循環させることが可能となり、また、循環流路J22から循環流路J21へと共通流路R2内のインクを循環させることが可能となる。よって、本実施形態によれば、共通流路R内でインクを循環させない態様と比較して、共通流路R内において増粘の進行を抑制することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11は、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21よりも高く、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12は、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22よりも高い、ことを特徴とする。
【0087】
このため、本実施形態によれば、循環流路J11及び循環流路J12を接続する共通流路R1内のインクに付与される圧力が、循環流路J22及び循環流路J21を接続する共通流路R2内のインクに付与される圧力よりも高くなる。よって、本実施形態によれば、共通流路R1から個別流路RKを介して共通流路R2へとインクを循環させることが可能となり、個別流路RKに対する円滑なインクの供給が可能となる。
【0088】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21と大気圧PCとの相違の程度は、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11と大気圧PCとの相違の程度よりも大きく、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22と大気圧PCとの相違の程度は、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12と大気圧PCとの相違の程度よりも大きい、ことを特徴とする。
【0089】
このため、本実施形態によれば、個別流路RK[m]のうちノズルNの近傍におけるインクに付与される圧力であるノズル近傍圧力PN[m]を、大気圧PCよりも低い圧力に設定することができる。よって、本実施形態によれば、ノズルNからのインクの漏洩を抑制することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11は、大気圧PCよりも高く、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12は、大気圧PCよりも高く、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22は、大気圧PCよりも低く、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21は、大気圧PCよりも低い、ことを特徴とする。
【0091】
このため、本実施形態によれば、循環流路J11及び循環流路J12を接続する共通流路R1内のインクに付与される圧力が、循環流路J22及び循環流路J21を接続する共通流路R2内のインクに付与される圧力よりも高くなる。よって、本実施形態によれば、共通流路R1から個別流路RKを介して共通流路R2へとインクを循環させることが可能となり、個別流路RKに対する円滑なインクの供給が可能となる。
【0092】
また、本実施形態に係る液体吐出ヘッド1において、循環流路J11内のインクに付与される圧力P11と、循環流路J21内のインクに付与される圧力P21との和は、循環流路J12内のインクに付与される圧力P12と、循環流路J22内のインクに付与される圧力P22との和と、略同じである、ことを特徴とする。
【0093】
このため、本実施形態によれば、圧力P11及び圧力P21の和と圧力P12及び圧力P22の和とが異なる態様と比較して、M個の個別流路RKに対応するM個のノズルNの近傍におけるインクに付与される圧力のばらつきを小さくすることが可能となり、M個の個別流路RKに対応するM個のノズルNからのインクの吐出特性のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0094】
また、本実施形態に係る液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド1と、循環流路J11内の圧力P11を調整し、循環流路J12内の圧力P12を調整し、循環流路J22内の圧力P22を調整し、循環流路J21内の圧力P21を調整する圧力調整装置83を制御し、液体吐出ヘッド1からのインクの吐出を制御する制御信号SIを出力する制御装置7と、を備える、ことを特徴とする。
【0095】
このため、本実施形態によれば、共通流路R1、及び、共通流路R2内における増粘の進行を抑制しつつ、液体吐出ヘッド1からのインクの吐出による媒体PPへの画像の形成が可能となる。
【0096】
<<B.変形例>>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0097】
<変形例1>
上述した実施形態において、インクは、擬塑性及びチキソトリピック性のように、剪断応力が作用することにより粘度が低下する性質を有するインクであってもよい。この場合、共通流路R1には、インクに対して剪断応力を作用させるための構成が設けられていてもよい。
【0098】
図8は、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Bの構成を説明するための平面図である。具体的には、
図8では、液体吐出ヘッド1BをZ1方向に平面視した場合において、液体吐出ヘッド1Bにおけるインクの流れを表している。
【0099】
図8に示すように、液体吐出ヘッド1Bは、共通流路R1の代わりに、共通流路RB1を備える点において、実施形態に係る液体吐出ヘッド1と相違する。なお、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Bにおいて、共通流路RB1には、矢印EB1に示すように、Y1方向に向かってインクが流れ、共通流路R2には、矢印EB2に示すように、Y2方向に向かってインクが流れ、個別流路RK[m]には、矢印FB[m]に示すように、X2方向に向かってインクが流れる。
【0100】
共通流路RB1は、狭窄部RB12を備える点において、実施形態に係る共通流路R1と相違する。具体的には、共通流路RB1は、循環流路J11と連通する連通部RB11と、M個の個別流路RK[1]~RK[M]と連通し、循環流路J12と連通する共通部RB13と、連通部RB11及び共通部RB13の間に設けられた狭窄部RB12と、を有する。狭窄部RB12の断面積S12は、連通部RB11の断面積S11よりも小さく、且つ、共通部RB13の断面積S13よりも小さい。
【0101】
本変形例において、循環流路J11から供給されるインクは、擬塑性またはチキソトリピック性を有しており、剪断応力が作用することにより、粘度が低下する。
【0102】
つまり、本変形例において、循環流路J11から供給されるインクは、狭窄部RB12を通過する際に、剪断応力が作用し、粘度が低下する。このため、本変形例において、循環流路J11から供給されるインクは、共通流路R1、個別流路RK[m]、及び、共通流路R2を円滑に循環することができる。
【0103】
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例1では、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の各々が互いに略同じ形状を有し、且つ、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の各々が互いに略同じ大きさを有する場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。M個の個別流路RK[1]~RK[M]は、一の個別流路RKと、当該一の個別流路RKとは異なる形状の個別流路RKとを含んでもよい。また、M個の個別流路RK[1]~RK[M]は、一の個別流路RKと、当該一の個別流路RKとは異なる大きさの個別流路RKとを含んでもよい。
【0104】
図9は、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Cの構成を説明するための平面図である。具体的には、
図9では、液体吐出ヘッド1CをZ1方向に平面視した場合において、液体吐出ヘッド1Cにおけるインクの流れを表している。
【0105】
図9に示すように、液体吐出ヘッド1Cは、共通流路R1の代わりに共通流路RC1を備える点と、共通流路R2の代わりに共通流路RC2を備える点と、個別流路RK[1]~RK[M]の代わりに個別流路RKC[1]~RKC[M]を備える点と、において、実施形態に係る液体吐出ヘッド1と相違する。共通流路RC1は、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の代わりに、M個の個別流路RKC[1]~RKC[M]と連通する点において、実施形態に係る共通流路R1と相違する。共通流路RC2は、M個の個別流路RK[1]~RK[M]の代わりに、M個の個別流路RKC[1]~RKC[M]と連通する点において、実施形態に係る共通流路R2と相違する。なお、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Cにおいて、共通流路RC1には、矢印EC1に示すように、Y2側からY1側に向かってインクが流れ、共通流路RC2には、矢印EC2に示すように、Y1側からY2側に向かってインクが流れ、個別流路RKC[m]には、矢印FC[m]に示すように、X2方向に向かってインクが流れる。
【0106】
個別流路RKC[m]は、接続流路BK1の代わりに接続流路BKC1[m]を備える点と、接続流路BK2の代わりに接続流路BKC2[m]を備える点と、において、実施形態に係る個別流路RK[m]と相違する。
【0107】
個別流路RKC[1]~RKC[M]は、個別流路RKC[m1]と、個別流路RKC[m2]とを含む。ここで、変数m1は、1≦m1<m2を満たす自然数であり、変数m2は、m1<m2≦Mを満たす自然数である。本変形例において、個別流路RKC[m1]の流路抵抗は、個別流路RKC[m2]の流路抵抗よりも大きい。具体的には、本変形例において、個別流路RKC[m1]のうち接続流路BKC1[m1]は、個別流路RKC[m2]のうち接続流路BKC1[m2]よりも長い。また、本変形例において、個別流路RKC[m1]のうち接続流路BKC2[m1]は、個別流路RKC[m2]のうち接続流路BKC2[m2]よりも長い。但し、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。例えば、接続流路BKC1[m1]の断面積が接続流路BKC1[m2]の断面積よりも小さく、且つ、接続流路BKC2[m1]の断面積が接続流路BKC2[m2]の断面積よりも小さくてもよい。なお、本変形例において、個別流路RKC[m1]は「第1個別流路」の一例であり、個別流路RKC[m2]は「第2個別流路」の一例である。
【0108】
図9に示す例においても、実施形態と同様に、共通流路RC1内のインクのうち個別流路RKC[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR1[m]と称し、共通流路RC2内のインクのうち個別流路RKC[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR2[m]と称することとする。
図9に示す例において、個別流路近傍圧力PR1[m1]と個別流路近傍圧力PR2[m1]との差分は、個別流路近傍圧力PR1[m2]と個別流路近傍圧力PR2[m2]との差分よりも大きい。このため、仮に、個別流路RKC[m1]の流路抵抗と、個別流路RKC[m2]の流路抵抗とが、略同じの場合、個別流路RKC[m1]におけるインクの流速が、個別流路RKC[m2]におけるインクの流速よりも速くなる。
これに対して、本変形例では、個別流路RKC[m1]の流路抵抗を、個別流路RKC[m2]の流路抵抗よりも大きくする。このため、本変形例によれば、個別流路RKC[m1]の流路抵抗と、個別流路RKC[m2]の流路抵抗とを略同じとする態様と比較して、個別流路RKC[m1]におけるインクの流速と、個別流路RKC[m2]におけるインクの流速とを近づけることができる。これにより、本変形例によれば、個別流路RKC[m1]の流路抵抗と、個別流路RKC[m2]の流路抵抗とを略同じとする態様と比較して、M個の個別流路RKC[1]~RKC[M]に対応するM個のノズルNからのインクの吐出特性のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0109】
図10は、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Dの構成を説明するための平面図である。具体的には、
図10では、液体吐出ヘッド1DをZ1方向に平面視した場合において、液体吐出ヘッド1Dにおけるインクの流れを表している。
【0110】
図10に示すように、液体吐出ヘッド1Dは、個別流路RK[1]~RK[M]の代わりに個別流路RKD[1]~RKD[M]を備える点と、において、実施形態に係る液体吐出ヘッド1と相違する。なお、本変形例に係る液体吐出ヘッド1Dにおいて、共通流路R1には、矢印ED1に示すように、Y1方向に向かってインクが流れ、共通流路R2には、矢印ED2に示すように、Y2方向に向かってインクが流れ、個別流路RKD[m]には、矢印FD[m]に示すように、X2方向に向かってインクが流れる。
【0111】
個別流路RKD[m]は、圧力室CV1の代わりに圧力室CVD1[m]を備える点と、圧力室CV2の代わりに圧力室CVD2[m]を備える点と、において、実施形態に係る個別流路RK[m]と相違する。
【0112】
個別流路RKD[1]~RKD[M]は、個別流路RKD[m1]と、個別流路RKD[m2]とを含む。本変形例において、個別流路RKD[m1]のうち圧力室CVD1[m1]の体積は、個別流路RKD[m2]のうち圧力室CVD1[m2]の体積よりも大きい。また、本変形例において、個別流路RKD[m1]のうち圧力室CVD2[m1]の体積は、個別流路RKD[m2]のうち圧力室CVD2[m2]の体積よりも大きい。但し、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。例えば、個別流路RKD[m1]の体積が、個別流路RKD[m2]の体積よりも大きくてもよい。なお、本変形例において、個別流路RKD[m1]は「第1個別流路」の他の例であり、個別流路RKD[m2]は「第2個別流路」の他の例である。
【0113】
図10に示す例においても、実施形態と同様に、共通流路R1内のインクのうち個別流路RKD[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR1[m]と称し、共通流路R2内のインクのうち個別流路RKD[m]との接続部分におけるインクに付与される圧力を、個別流路近傍圧力PR2[m]と称することとする。
図10に示す例において、個別流路近傍圧力PR1[m1]と個別流路近傍圧力PR2[m1]との差分は、個別流路近傍圧力PR1[m2]と個別流路近傍圧力PR2[m2]との差分よりも大きい。このため、仮に、個別流路RKD[m1]の体積と、個別流路RKD[m2]の体積とが、略同じの場合、個別流路RKD[m1]におけるインクの流速が、個別流路RKD[m2]におけるインクの流速よりも速くなる。
これに対して、本変形例では、個別流路RKD[m1]の体積を、個別流路RKD[m2]の体積よりも大きくする。このため、本変形例によれば、個別流路RKD[m1]の体積と、個別流路RKD[m2]の体積とが、略同じとする態様と比較して、個別流路RKD[m1]におけるインクの流速と、個別流路RKD[m2]におけるインクの流速とを近づけることができる。これにより、本変形例によれば、個別流路RKD[m1]の体積と、個別流路RKD[m2]の体積とを略同じとする態様と比較して、M個の個別流路RKD[1]~RKD[M]に対応するM個のノズルNからのインクの吐出特性のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0114】
<変形例3>
上述した
図9に示す変形例2では、個別流路RKC[m1]の流路長を個別流路RKC[m2]の流路長よりも長くする場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。上述のように、流路抵抗が同じ場合、個別流路RKC[m1]におけるインクの流速は、個別流路RKC[m2]におけるインクの流速よりも速くなる。
これに対して、本変形例では、個別流路RKC[m1]のインクの流れ方向から見たときの断面積を、個別流路RKC[m2]のインクの流れ方向から見たときの断面積よりも小さくする。これにより、個別流路RKC[m1]は個別流路RKC[m2]よりも流路抵抗が大きくなるので、インクの流速差を低減できる。
しかし、この場合、個別流路RKC[m2]の流路抵抗が小さくなり過ぎ、圧電素子PZ1及び圧電素子PZ2を駆動したときに、ノズルNではなく、共通流路RC1及び共通流路RC2に向かって逃げる圧力が大きくなり、吐出量などの吐出特性が低下してしまう虞がある。これを解消するために、個別流路RKC[m2]を個別流路RKC[m1]に比して、属する圧力室CV1及び圧力室CV2の容積を大きくしたり、属する圧電素子PZ1及び圧電素子PZ2のXY平面のサイズを大きくしたり、属する圧電素子PZ1及び圧電素子PZ2に印可する駆動電圧を大きくしたりしても良い。
【0115】
<変形例4>
上述した実施形態並びに変形例1乃至3では、1つの個別流路RKが、圧力室CV1と圧力室CV2の2つの圧力室を含む場合を例示して説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものでは無い。1つの個別流路RKが、1つの圧力室CVのみを含んでいても良い。
【0116】
<変形例5>
上述した実施形態並びに変形例1乃至4では、液体吐出ヘッド1を搭載した収納ケース921を、X軸方向に往復同させるシリアル方式の液体吐出装置100を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置100は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
【0117】
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例1乃至5で例示した液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【符号の説明】
【0118】
1…液体吐出ヘッド、7…制御装置、8…インク供給装置、83…圧力調整装置、J11…循環流路、J12…循環流路、J21…循環流路、J22…循環流路、R1…共通流路、R2…共通流路、RK…個別流路、N…ノズル。