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特開2024-140405水素製造システムの製造方法及び水素製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140405
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】水素製造システムの製造方法及び水素製造システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241003BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20241003BHJP
   C01C 1/12 20060101ALI20241003BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
C01C1/12 B
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051534
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】橋口 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 延弘
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140FA02
4G140FB06
4G140FC03
4G140FE01
4G169AA03
4G169BB02
4G169BB04
4G169BC09
4G169BC16
4G169BC68
4G169CB81
4G169DA05
4G169FB13
(57)【要約】
【課題】炭化水素から水素を製造する水素製造システムからアンモニアから水素を製造する水素製造システムに容易に改造できる製造方法を提供する。
【解決手段】炭化水素から水素を製造する第1水素製造システム10を改造してアンモニアから水素を製造する第2水素製造システム20を製造する。第1水素製造システムは、SMRによって水素を含む合成ガスを生成する改質ユニット12と、合成ガスから水素を分離する第1PSAユニット14とを備える。第2水素製造システムは、気化ユニット21と、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニット22と、アンモニア分解ガスから水素を分離する第2PSAユニット24とを備える。そして、空間11に気化ユニット21を新設し、改質ユニット12を分解ユニット22に改造し、第1PSAユニット14を第2PSAユニット24に改造する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素から水素を製造する第1水素製造システムを改造してアンモニアから前記水素を製造する第2水素製造システムを製造する水素製造システムの製造方法であって、
前記第1水素製造システムは、空きの空間と、前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットと、を備え、
前記第2水素製造システムは、液体アンモニアを気化する気化ユニットと、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットと、を備え、
前記製造方法は、前記空間に前記気化ユニットを新設する工程と、
前記改質ユニットを前記分解ユニットに改造する工程と、
を備える水素製造システムの製造方法。
【請求項2】
前記分解ユニットは、前記改質ユニットで使用する触媒と同種の触媒を含んでいる
請求項1に記載の水素製造システムの製造方法。
【請求項3】
前記第1水素製造システムは、圧力変動吸着法によって前記合成ガスから前記水素を分離する第1PSAユニットを更に備え、
前記第2水素製造システムは、前記圧力変動吸着法によって前記アンモニア分解ガスから前記水素を分離する第2PSAユニットを更に備え、
前記製造方法は、前記第1PSAユニットを前記第2PSAユニットに改造する工程を更に備える
請求項1に記載の水素製造システムの製造方法。
【請求項4】
前記第1水素製造システムは、前記改質ユニットと前記第1PSAユニットの間に、前記合成ガスにおける一酸化炭素を転化する転化ユニットを更に備え、
前記第2水素製造システムは、前記分解ユニットと前記第2PSAユニットの間に、前記アンモニア分解ガスから前記アンモニアを回収する回収ユニットを更に備え、
前記製造方法は、前記転化ユニットを撤去して、前記回収ユニットを新設する工程を更に備える
請求項3に記載の水素製造システムの製造方法。
【請求項5】
前記回収ユニットで回収された前記アンモニアは、前記気化ユニットに戻される
請求項4に記載の水素製造システムの製造方法。
【請求項6】
前記第1水素製造システムは、前記第1PSAユニットの後段に、取り出した前記水素を圧縮する第1圧縮ユニットを備え、
前記第2水素製造システムは、前記第2PSAユニットの後段に、取り出した前記水素を圧縮する第2圧縮ユニットを備え、
前記製造方法は、前記第1圧縮ユニットを前記第2圧縮ユニットに改造する工程を更に備える
請求項3または4に記載の水素製造システムの製造方法。
【請求項7】
アンモニアから水素を製造する水素製造システムへの改造を可能とした、炭化水素から前記水素を製造する水素製造システムであって、
液体アンモニアを気化する気化ユニットを新設するための空間と、
前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットであって、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットへの改造を可能とした前記改質ユニットと、を備える
水素製造システム。
【請求項8】
炭化水素から水素を製造する水素製造システムを改造した、アンモニアから前記水素を製造する水素製造システムであって、
液体アンモニアを気化する気化ユニットと、
前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットを改造した、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットと、を備える
水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造システムの製造方法及び水素製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼してもCOを発生させない水素を燃料として使用することが注目されている。水素を製造するには、炭化水素等を含む天然ガスから水素を製造する水素製造システム(特許文献1参照)と、アンモニアから水素を製造する水素製造システム(特許文献2参照)と、がある。現在、天然ガスは、国際的な供給網が確立している。このため、水素を製造するには、天然ガスから水素を製造する水素製造システムが用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-338206号公報
【特許文献2】特開平5-330802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアからの水素の製造は、天然ガスから水素を製造するよりも二酸化炭素の排出を抑えることができる。また、アンモニアは、天然ガスに比べて比較的容易に液体にすることができるため、運搬や貯蔵が容易である点で水素キャリアとして優れている。
【0005】
しかしながら、現在のところ、アンモニアは、国際的な供給網が天然ガスほどに発達していない。したがって、水素の需要が高まる中、当面の間、水素の製造は、天然ガスから水素が製造され、アンモニアの国際的な供給網が発達した段階で、多くの水素がアンモニアから製造されるようになることが予想される。アンモニアから水素を製造する水素製造システムが普及してくると、天然ガスから水素を製造する水素製造システムは座礁資産となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための水素製造システムの製造方法は、炭化水素から水素を製造する第1水素製造システムを改造してアンモニアから前記水素を製造する第2水素製造システムを製造する水素製造システムの製造方法である。この製造方法において、前記第1水素製造システムは、空きの空間と、前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットと、を備える。前記第2水素製造システムは、液体アンモニアを気化する気化ユニットと、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットと、を備える。前記製造方法は、前記空間に前記気化ユニットを新設する工程と、前記改質ユニットを前記分解ユニットに改造する工程と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、改質ユニットを分解ユニットに改造することで、第1水素製造システムを第2水素製造システムに容易に改造することができる。第2水素製造システムを製造するときには、気化ユニットを新設する。気化ユニットは、第1水素製造システムを新設するときに、予め空間を用意しておくことで、その空間を使って容易に新設することができる。
【0008】
上記水素製造システムの製造方法において、前記分解ユニットは、前記改質ユニットで使用する触媒と同種の触媒を含んでいる構成としてもよい。上記構成によれば、第1水素製造システムの改質ユニットで使用する触媒を第2水素製造システムの分解ユニットに流用することもできる。例えば、改質ユニットで使用するバーナを分解ユニットで使用するバーナとして流用することができる。
【0009】
上記水素製造システムの製造方法において、前記第1水素製造システムは、圧力変動吸着法によって前記合成ガスから前記水素を分離する第1PSAユニットを更に備える。前記第2水素製造システムは、必要とされる水素純度によっては、前記圧力変動吸着法によって前記アンモニア分解ガスから前記水素を分離する第2PSAユニットを更に備える場合もある。そして、前記製造方法は、前記第1PSAユニットを前記第2PSAユニットに改造する工程を更に備える構成としてもよい。上記構成によれば、第1PSAユニットを第2PSAユニットに改造することで、第1水素製造システムを第2水素製造システムに容易に改造することができる。
【0010】
上記水素製造システムの製造方法において、前記第1水素製造システムは、前記改質ユニットと前記第1PSAユニットの間に、前記合成ガスにおける一酸化炭素を転化する転化ユニットを更に備える。前記第2水素製造システムは、前記分解ユニットと前記第2PSAユニットの間に、前記アンモニア分解ガスから前記アンモニアを回収する回収ユニットを更に備える。そして、前記製造方法は、前記転化ユニットを撤去して、前記回収ユニットを新設する工程を更に備える構成としてもよい。上記構成によれば、回収ユニットを分解ユニットと第2PSAユニットの間に設けることができる。そして、転化ユニットを撤去して回収ユニットを新設する場合であっても、転化ユニットの付帯設備は流用しながら改造して使用することができる。
【0011】
上記水素製造システムにおいて、前記回収ユニットで回収されたアンモニアは、前記気化ユニットに戻されるように構成してもよい。上記構成によれば、回収ユニットで回収されたアンモニアをリサイクルできる。
【0012】
上記水素製造システムにおいて、前記第1水素製造システムは、前記第1PSAユニットの後段に、取り出した前記水素を圧縮する第1圧縮ユニットを備える。前記第2水素製造システムは、前記第2PSAユニットの後段に、取り出した前記水素を圧縮する第2圧縮ユニットを備える。そして、前記製造方法は、前記第1圧縮ユニットを前記第2圧縮ユニットに改造する工程を更に備えるように構成してもよい。上記構成によれば、第1圧縮ユニットを第2圧縮ユニットに改造することで、第1水素製造システムを第2水素製造システムに容易に改造することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するための水素製造システムは、アンモニアから水素を製造する水素製造システムへの改造を可能とした、炭化水素から前記水素を製造する水素製造システムである。そして、液体アンモニアを気化する気化ユニットを新設するための空間と、前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットであって、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットへの改造を可能とした前記改質ユニットと、を備える。上記構成によれば、炭化水素から前記水素を製造する水素製造システムからアンモニアから水素を製造する水素製造システムへの改造を容易に行うことができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための水素製造システムは、炭化水素から水素を製造する水素製造システムを改造した、アンモニアから前記水素を製造する水素製造システムである。そして、液体アンモニアを気化する気化ユニットと、前記炭化水素と水蒸気との吸熱反応によって前記水素を含む合成ガスを生成する改質ユニットを改造した、気化アンモニアを吸熱反応によって分解することで前記水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する分解ユニットと、を備える。上記構成によれば、アンモニアから水素を製造する水素製造システムを炭化水素から前記水素を製造する水素製造システムに改造して製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、天然ガスから水素を製造する水素製造システムからアンモニアから水素を製造する水素製造システムに容易に改造できる。また、アンモニアから水素を製造する水素製造システムに改造が容易な天然ガスから水素を製造する水素製造システムを提供できる。更に、水素を製造する水素製造システムを改造したアンモニアから水素を製造する水素製造システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、アンモニアから水素を製造する水素製造システムへの改造を可能とした、天然ガスから水素を製造する水素製造システムの構成図である。
図2図2は、天然ガスの改質ユニットの構成図である。
図3図3は、第1PSAユニット及び第2PSAユニットの構成図である。
図4図4は、天然ガスから水素を製造する水素製造システムを改造した、アンモニアから水素を製造する水素製造システムの構成図である。
図5図5は、アンモニアの分解ユニットの構成図である。
図6図6は、アンモニアの回収ユニットの構成図である。
図7図7は、天然ガスから水素を製造する水素製造システムをアンモニアから水素を製造する水素製造システムに改造する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明が適用された水素製造システムについて図面を参照して説明する。
〔概要〕
水素製造システムは、天然ガスから水素を製造する第1水素製造システム10(図1参照)である。また、水素製造システムは、アンモニアから水素を製造する第2水素製造システム20である(図4参照)。第1水素製造システム10は、天然ガスを吸熱反応によって改質することで水素を含む合成ガスを生成し、その後、圧力変動吸着法(PSA:Pressure Swing Adsorption)によって水素を分離するシステムである。第2水素製造システム20は、アンモニアから窒素及び水素を含むアンモニア分解ガスを生成し、その後、PSAによって水素を分離するシステムである。第1水素製造システム10と第2水素製造システム20とは、共に、原料から吸熱反応によって水素を含むガスを生成し、その後、PSAによって水素を分離するシステムである点で共通している。第1水素製造システム10は、第2水素製造システム20への改造を想定して製造されたシステムである(図1参照)。
【0018】
〔第1水素製造システム〕
図1に示すように、第1水素製造システム10は、空間11と、改質ユニット12と、転化ユニット13と、第1PSAユニット14と、第1圧縮ユニット15と、を備えている。
【0019】
空間11は、第2水素製造システム20における原料の液体アンモニアを気化する気化ユニット21の新設を想定して用意された空間である。空間11は、建屋内の空間として用意されていてもよいし、土地として用意されていてもよい。空間11は、第2水素製造システム20において、分解ユニット22でのアンモニアの分解工程の前に行うアンモニアの気化工程を行う気化ユニット21を設けるに適した場所である。例えば、この場所は、第2水素製造システム20において、気化ユニット21と分解ユニット22とをパイプラインで繋ぐ際に、パイプラインが必要以上に長くならない場所であったり、最短距離又はそれに近い距離となる位置である。
【0020】
第1水素製造システム10において、原料ガスは、天然ガスである。具体的に、原料の天然ガスは、メタン(CH)、エタン(C)、プロパンガス(C)、ブタン(C10)等の炭化水素、並びに窒素(N)、二酸化炭素(CO)等の成分を含むガスである。
【0021】
原料となる天然ガスは、付臭剤として硫黄成分が微量添加されている。硫黄成分は、改質ユニット12の改質触媒の活性を低下させるおそれがある。そこで、改質ユニット12には、脱硫された原料ガスが供給される。原料の天然ガスを脱硫する脱硫ユニットでは、例えばCo-Mo触媒の存在下において、天然ガス中の有機硫黄が硫化水素に転換され、生成された硫化水素が酸化亜鉛(ZnO)に吸着されて脱硫される。脱硫ユニットは、空間11に設置されていてもよいし、空間11と異なる場所に設置されていてもよい。改質ユニット12には、脱硫された天然ガスがガス供給ライン12a(図2参照)を通じて供給される。
【0022】
改質ユニット12は、水蒸気改質プロセスによって、天然ガスから水素を含む合成ガスを生成する。改質ユニット12は、下記の反応式のように天然ガスと水蒸気とを反応させて、水素と一酸化炭素とに変える水蒸気改質を行う(SMR:Steam Methane Reforming)。このとき、生成された一酸化炭素の一部は、更に水蒸気と反応することによって、水素と二酸化炭素に変わる。ここでの水蒸気改質は、吸熱反応である。
【0023】
CH+HO→CO+3H
CO+HO→CO+H
図2に示すように、改質ユニット12は、ガス供給ライン12aと、改質器12bと、排出ライン12cと、水蒸気供給ライン12gと、予熱部12hと、を備えている。更に、改質ユニット12は、加熱炉12dと、バーナ12eと、を備えている。ガス供給ライン12aは、加熱炉12d内を通って、天然ガスを改質器12bに供給する。ガス供給ライン12aは、水蒸気供給ライン12gから水蒸気が供給される。ガス供給ライン12aは、天然ガスと水蒸気とを、混合状態で改質器12bに供給する。原料となる天然ガスと水蒸気は、改質器12bに供給される前に、加熱炉12dの排熱を利用した予熱部12hで予熱される。バーナ12eは、燃料ライン12fを通じて燃料となる例えば天然ガスが供給される。バーナ12eは、改質器12bを加熱すると共に、加熱炉12dを加熱する。
【0024】
改質器12bに配置される触媒は、天然ガスを合成ガスに改質する反応を促進させる。改質器12bで使用されている触媒は、例えばニッケル系触媒であって、活性成分が担体に担持されている。一例として、担体は、酸化カルシウム(CaO)と、酸化カルシウムと酸化アルミニウム(Al)との化合物と、を含んでいる。また、触媒は、活性成分としてニッケルを含んでいる。改質ユニット12は、排出ライン12cから水素、一酸化炭素、二酸化炭素等を含む合成ガスを排出する。合成ガスは、更に、メタン、水蒸気等の不純物が含まれている。合成ガスは、排出ライン12cを通じて転化ユニット13に供給される。
【0025】
転化ユニット13は、例えば以下の反応式のように、合成ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に転化する。
CO+HO→CO+H
転化ユニット13は、CO転化触媒を備えている。転化ユニット13は、一酸化炭素の量が低減された合成ガスを第1PSAユニット14に供給する。
【0026】
第1PSAユニット14は、昇圧工程と、吸着工程と、減圧工程と、を周期的に行う。図3は、第1PSAユニット14の構成を示している。第1PSAユニット14は、例えば4つの塔(第1塔14a,第2塔14b,第3塔14c,第4塔14d)を備えている。塔14a~14dの各々は、繰り返し3つの工程を行う。
【0027】
このような4つ塔14a~14dを備える場合、次のような運転が可能である。例えば、第1塔14a~第3塔14cが吸着している間、残りの第4塔14dが減圧、昇圧工程後、4つのすべての塔14a~14dが吸着工程となる。次に、第2塔14b~第4塔14dは吸着工程のまま、第1塔14aだけを減圧させ、昇圧後、吸着工程とする。そして次に、第2塔14bだけを減圧させる。
【0028】
昇圧工程は、減圧工程終了後の塔に対して、転化ユニット13から供給された合成ガス、減圧工程で得られる排出ガス、水素ガス等を用いて塔内を昇圧する。吸着工程は、加圧下において、水素以外のガス成分を吸着除去する。減圧工程は、吸着工程の後、塔内を例えば大気圧まで減圧する。これにより、吸着剤に吸着されている水素以外のガス成分(レストガス)は、排出ガスとして脱着される。排出ガスは、燃料として使用されたり、他の目的に使用されたり、又は廃棄される。取り出された水素ガスは、第1圧縮ユニット15に供給される。
【0029】
第1圧縮ユニット15は、水素ガスを高圧に圧縮にして、ボンベ等で輸送・貯蔵を可能とする。第1圧縮ユニット15は、水素ガスを、例えば、45MPa以上、若しくは、70MPa以上など所定の圧力以上に昇圧する。
【0030】
〔第2水素製造システム〕
図4に示すように、第2水素製造システム20は、気化ユニット21と、分解ユニット22と、回収ユニット23と、第2PSAユニット24と、第2圧縮ユニット25と、を備えている。
【0031】
気化ユニット21は、液体アンモニアを気化する(NH(L)→NH(G))。気化ユニット21は、原料として供給される液体アンモニアの他、回収ユニット23で回収された液体アンモニアもリターンライン23eを通じて戻される。第1水素製造システム10を改造する場合、気化ユニット21は、空間11に新設されるユニットである。
【0032】
分解ユニット22は、例えば以下の反応式のように、原料となる気化アンモニアから水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを生成する。アンモニア分解ガスは、水素及び窒素の他に、残留した気化アンモニアも含む。
【0033】
2NH→3H+N
図5に示すように、分解ユニット22は、供給ライン22aと、分解器22bと、排出ライン22cと、を備えている。更に、分解ユニット22は、加熱炉22dと、バーナ22eと、予熱部22fと、燃料ライン22gと、を備えている。供給ライン22aは、加熱炉22d内を通って、気化アンモニアを分解器22bに供給する。気化アンモニアは、分解器22bに供給される前に、加熱炉22dの排熱を利用して予熱部22fで予熱される。バーナ22eは、燃料ライン22gを通じて燃料ガスが供給される。燃料ライン22gは、燃料ガスとして主に排出ガスライン24xからの燃料が供給される。排出ガスライン24xは、第2PSAユニット24からの排出ガスである窒素、水素、アンモニア等を燃料ライン22gに燃料として供給される。また、排出ガスライン24xには、燃料としてのアンモニアも供給される場合もある。バーナ22eは、これらの供給された燃料を燃焼することで、分解器22bを加熱すると共に、加熱炉22dを加熱する。バーナ22eの燃料は、水素を主燃料ガスとし、アンモニア等も混合されることで、二酸化炭素の排出が抑えられる。
【0034】
分解器22bに配置される触媒は、例えばニッケル系触媒であって、活性成分が担体に担持されている。一例として、担体は、酸化ケイ素(SiO、シリカ)、酸化アルミニウム(Al、アルミナ)、酸化チタン(TiO、チタニア)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化セシウム(CsO)、酸化プラセオジウム(Pr11)、酸化ランタン(La)等である。また、触媒は、活性成分としてニッケルを含んでいる。分解ユニット22は、排出ライン22cから水素及び窒素を含むアンモニア分解ガスを排出する。アンモニア分解ガスは、更に、未反応のアンモニア等も含まれている。アンモニア分解ガスは、排出ライン22cを通じて回収ユニット23に供給される。
【0035】
図6に示すように、回収ユニット23は、アブソーバ23aと、ストリッパ23bと、を備えている。アブソーバ23aには、分解ユニット22からアンモニア分解ガスが供給される。アブソーバ23aは、アンモニアを水に溶解して捕捉し、窒素ガス及び水素ガスを取り出す。窒素ガス及び水素ガスは、第2PSAユニット24に供給される。ストリッパ23bは、熱交換器23fで予熱された、アンモニアを捕捉したアンモニア捕捉水が供給される。ストリッパ23bは、リボイラ23cでアンモニア捕捉水を加熱してアンモニアを気化する。気化されたアンモニアは、コンデンサ23dで冷却されて液体の状態で取り出される。液体アンモニアは、リターンライン23e(図4参照)を通じて気化ユニット21に戻されリサイクルされる。また、ストリッパ23bからのアンモニアが取り出された水は、熱交換器23fでアブソーバ23aからストリッパ23bに供給されるアンモニア捕捉水と熱交換された後、アブソーバ23aに戻される。
【0036】
第2PSAユニット24も、昇圧工程と、吸着工程と、減圧工程と、を周期的に行う。図3に示すように、第2PSAユニット24は、例えば4つの塔(第1塔24a,第2塔24b,第3塔24c,第4塔24d)を備えている。塔24a~24dの各々は、繰り返し3つの工程を行う。
【0037】
このような4つ塔24a~24dを備える場合、次のような運転が可能である。例えば、第1塔24a~第3塔24cが吸着している間、残りの第4塔24dが減圧、昇圧工程後、4つのすべての塔24a~24dが吸着工程となる。次に、第2塔24b~第4塔24dは吸着工程のまま、第1塔24aだけを減圧させ、昇圧後、吸着工程とする。そして次に、第2塔24bだけを減圧させる。
【0038】
昇圧工程は、減圧工程終了後の塔に対して、回収ユニット23から供給された水素ガス及び窒素ガス、減圧工程で得られる排出ガス等を用いて塔内を昇圧する。吸着工程は、加圧下において、水素以外のガス成分を吸着除去する。すなわち、回収ユニット23で残留した窒素ガス、アンモニア等を除去する。減圧工程は、吸着工程の後、塔内を例えば大気圧まで減圧する。これにより、吸着剤に吸着されている水素以外のガス成分(窒素ガス、水素ガス、アンモニア等の排出ガス)は、脱着される。排出ガスは、燃料として使用されたり、他の目的に使用されたり、又は廃棄される。取り出された水素ガスは、第2圧縮ユニット25に供給される。
【0039】
第2圧縮ユニット25は、水素ガスを高圧に圧縮にして、ボンベ等で輸送・貯蔵を可能とする。第2圧縮ユニット25は、水素ガスを、例えば、45MPa以上、若しくは、70MPa以上など所定の圧力以上に昇圧する。
【0040】
〔改造方法(第2水素製造システム20の製造方法)〕
図7に示すように、第1水素製造システム10は、次のような考え方で、第2水素製造システム20に改造される。すなわち、改造方法は、空間11に気化ユニット21を新設する工程と、改質ユニット12を分解ユニット22に改造する工程と、を備えている。更に、改造方法は、転化ユニット13を撤去して、回収ユニット23を新設する工程と、第1PSAユニット14を第2PSAユニット24に改造する工程と、第1圧縮ユニット15を第2圧縮ユニット25に改造する工程と、を備えている。
【0041】
空間11に気化ユニット21を新設する工程において、気化ユニット21は、空間11に新設される。具体的に、気化ユニット21は、第1水素製造システム10を構成する建屋内の空間11に設けたり、第1水素製造システム10に含まれる土地である空間11に設けられる。空間11は、第2水素製造システム20において、分解ユニット22でのアンモニアの分解工程より前の工程を行うのに適した場所である。したがって、気化ユニット21と分解ユニット22とをパイプラインで繋ぐ際、パイプラインは、必要以上に長くならず、例えば最短距離又はそれに近い距離となる。
【0042】
改質ユニット12と分解ユニット22とは、吸熱反応に耐え得る耐熱性を有する設備である点で共通している。改質ユニット12を分解ユニット22に改造する工程において、分解ユニット22は、改質ユニット12を構成する建屋、配管等を、できるだけ流用しながら改造して製造される。また、改質ユニット12の加熱炉12d及びバーナ12eは、できるだけ部材を流用しながら改造して、分解ユニット22の加熱炉22d及びバーナ22eとされる。更に、改質ユニット12の改質器12bは、その容器や配管等をできるだけ流用しながら改造して、分解ユニット22の分解器22bの容器や配管等とされる。
【0043】
改質ユニット12が行う天然ガスの改質工程も、分解ユニット22が行うアンモニアの分解工程も、水素を製造する工程の中で前半の工程である。したがって、分解ユニット22の位置は、気化ユニット21が行う気化工程の次工程を行うユニットとして、最適な位置に設けられることになる。更に、改質器12bに使用するニッケル系触媒も、分解器22bに使用するニッケル系触媒に使用することもできる。また、バーナ12eは、バーナ22eとしてそのまま流用することもできる。また、バーナ12eは、軽微な改造だけでバーナ22eとして流用することができる。
【0044】
回収ユニット23を新設する工程において、回収ユニット23は、転化ユニット13を撤去して、転化ユニット13の位置に新設される。改質ユニット12は、分解ユニット22に改造され、かつ、後述のように第1PSAユニット14は、第2PSAユニット24に改造される。したがって、回収ユニット23は、分解ユニット22の位置と第2PSAユニット24の位置の間に新設することができる。この際、転化ユニット13の付帯設備は流用又は改造して使用することもできる。そして、分解ユニット22と回収ユニット23とを繋ぐパイプラインも、必要以上に長くならず、例えば最短距離又はそれに近い距離となる。
【0045】
第1PSAユニット14を第2PSAユニット24に改造する工程において、共に、各塔では、昇圧工程と、吸着工程と、減圧工程と、を周期的に行う。したがって、第1PSAユニット14は、塔14a~14d等を流用しながら改造して第2PSAユニット24の塔24a~24dとされる。第1PSAユニット14が行うPSA工程も、第2PSAユニット24が行うPSA工程も、水素を製造する工程の中で後半の工程である。したがって、第2PSAユニット24は、回収ユニット23が行うアンモニアの回収工程の次工程として、最適な位置に設けられることになる。したがって、回収ユニット23と第2PSAユニット24とを繋ぐパイプラインも、必要以上に長くならず、例えば最短距離又はそれに近い距離となる。
【0046】
第1圧縮ユニット15を第2圧縮ユニット25に改造する工程において、第1圧縮ユニット15及び第2圧縮ユニット25は、共に、水素ガスを高圧に圧縮にして、ボンベ等で輸送・貯蔵を可能とするユニットである。したがって、第1圧縮ユニット15は、流用又は改造して第2圧縮ユニット25とされる。第1圧縮ユニット15が行う水素の圧縮工程も、第2圧縮ユニット25が行う水素の圧縮工程も、水素を製造する工程の中でPSA工程に次ぐ工程である。したがって、第2圧縮ユニット25の位置は、第2PSAユニット24が行うPSA工程の次工程として、最適な位置に設けられることになる。したがって、第2圧縮ユニット25と第2圧縮ユニット25とを繋ぐパイプラインも、必要以上に長くならず、例えば最短距離又はそれに近い距離となる。
【0047】
〔実施形態の効果〕
以上のような実施形態は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)空間11に新設された気化ユニット21は、アンモニアから水素を製造する工程の中で前半の工程の最適な位置に設けることができる。分解ユニット22も、改質ユニット12を改造することで、液体アンモニアの気化工程に次ぐ分解工程を行うユニットとして、最適な場所に設けることができる。回収ユニット23も、転化ユニット13の位置に新設することで、アンモニアの分解工程に次ぐ回収工程を行うユニットとして、最適な場所に設けることができる。更に、第2PSAユニット24も、第1PSAユニット14を改造することで、アンモニアの回収工程に次ぐPSA工程を行うユニットとして、最適な場所に設けることができる。更に、第2圧縮ユニット25も、第1圧縮ユニット15を改造することで、PSA工程に次ぐ圧縮工程を行うユニットとして、最適な場所に設けることができる。
【0048】
すなわち、分解ユニット22は、改質ユニット12を改造するにあたって、場所変更等は不要である。また、第2PSAユニット24も、第1PSAユニット14を改造するにあたって、場所変更等は不要である。更に、第2圧縮ユニット25も、第1圧縮ユニット15を改造するにあたって、場所変更等は不要である。また、各ユニットを接続するパイプラインも、必要以上に長くならないようにできたり、最短長さ又はそれに近い長さとすることができる。これにより、第1水素製造システム10は、第2水素製造システム20に容易に改造することができる。
【0049】
したがって、アンモニアの国際的な供給網が発達した段階で、第1水素製造システム10から第2水素製造システム20に切り替えることになっても、第1水素製造システム10が座礁資産になることを抑制できる。また、第2水素製造システム20は、第1水素製造システム10を改造することで、製造コストを抑制することができる。
【0050】
(2)第1水素製造システム10から第2水素製造システム20を製造するときに新設するユニットは、少なくとも気化ユニット21である。気化ユニット21は、第1水素製造システム10を新設するときに、予め空間11を用意しておくことで、その空間11を使って容易に新設することができる。
【0051】
(3)改質ユニット12と第1PSAユニット14との間にある転化ユニット13を除去することで、分解ユニット22と第2PSAユニット24の間に、回収ユニット23を新設することができる。この際、転化ユニット13の付帯設備は流用しながら改造して使用することもできる。
【0052】
(4)回収ユニット23で回収されたアンモニアをリターンライン23eによってリサイクルできる。リターンライン23eは、第1水素製造システム10のパイプラインを流用しながら改造して使用できる。
【0053】
(5)第1圧縮ユニット15を第2圧縮ユニット25に改造することで、第1水素製造システム10を第2水素製造システム20に容易に改造することができる。すなわち、第2圧縮ユニット25の改造では、第1圧縮ユニット15の建屋は圧縮設備等を流用できる。
【0054】
(6)天然ガスから水素を製造する第1水素製造システム10は、アンモニアから水素を製造する第2水素製造システムに容易に改造することができる。したがって、第2水素製造システム20を製造するにあたっての、工事時間や製造コストを削減することができる。
【0055】
(7)第2水素製造システム20は、第1水素製造システム10を改造して製造することで、短い工期で製造し、更に、製造コストを抑えることができる。
なお、本実施形態は、更に、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0056】
・第1PSAユニット14及び第2PSAユニット24で生成された水素ガスは、トルエン等の有機物に化合させて有機ハイドライドの形で輸送・貯蔵を可能とするユニットに供給されてもよい。また、水素ガスは、パイプラインで輸送するようにしてもよい。このようなユニットは、第1圧縮ユニット15及び第2圧縮ユニット25に対して追加して設けてもよいし、第1圧縮ユニット15及び第2圧縮ユニット25に代えて設けるようにしてもよい。
【0057】
・回収ユニット23で回収されたアンモニアは、リサイクルされなくてもよい。
・分解ユニット22でアンモニアが残留しても、残留アンモニアを第2PSAユニット24で除去できるのであれば、回収ユニット23は省略してもよい。転化ユニット13で残留した一酸化炭素が残留しても、第1PSAユニット14で除去できるのであれば、転化ユニット13は省略してもよい。
【0058】
・第1水素製造システム10が第1PSAユニット14を備える場合であっても、第2水素製造システム20を製造するときに、第2PSAユニット24を設けないようにしてもよい。また、第1PSAユニット14があった場所に他のユニットを設けるようにしてもよい。更に、第1水素製造システム10が第1PSAユニット14を備えない場合は、第2水素製造システム20を製造するときに第2PSAユニット24をそのまま設けないようにしてもよい。また、第2PSAユニット24を追加で新設してもよい。
【0059】
・第1PSAユニット14における各塔14a~14dの運転方法及び第2PSAユニット24における各塔24a~24dの運転方法は、上述の例に限定されるものではない。PSAユニット14,24の塔の数も限定されるものではない。
【0060】
・第1水素製造システム10の改質ユニット12及び第2水素製造システム20の分解ユニット22において、使用する触媒は、同種の触媒であればよく、ニッケル系以外にも、白金族金属等であってもよい。また、第1水素製造システム10の改質ユニット12及び第2水素製造システム20の分解ユニット22において、使用する触媒は、別種でもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…第1水素製造システム
11…空間
12…改質ユニット
12a…ガス供給ライン
12b…改質器
12c…排出ライン
12d…加熱炉
12e…バーナ
12f…燃料ライン
12g…水蒸気供給ライン
12h…予熱部
13…転化ユニット
14…第1PSAユニット
15…第1圧縮ユニット
20…第2水素製造システム
21…気化ユニット
22…分解ユニット
22a…供給ライン
22b…分解器
22c…排出ライン
22d…加熱炉
22e…バーナ
22f…予熱部
22g…燃料ライン
23…回収ユニット
23a…アブソーバ
23b…ストリッパ
23c…リボイラ
23d…コンデンサ
23e…リターンライン
23f…熱交換器
24…第2PSAユニット
24x…排出ガスライン
25…第2圧縮ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7