IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想テクノロジーズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図1
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図2
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図3
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図4
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図5
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図6
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図7
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図8
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図9
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図10
  • 特開-駆動装置及び液体吐出装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140406
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】駆動装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20241003BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20241003BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/045
B41J2/205
B41J2/01 401
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051537
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】高村 純
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC42
2C056ED01
2C056FA04
2C056FA13
2C057AF23
2C057AM21
2C057AN05
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】細かい調整が可能な駆動装置及び液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】実施形態にかかる駆動装置は、制御部を備える。制御部は、複数の異なるドロップ波形を組み合わせた、複数のマルチ波形パターンにより、液体吐出部を駆動する。マルチ波形パターンの少なくともいずれかのパターンは、液体を吐出する標準ドロップ波形と吐出体積を調整可能な微調ドロップ波形とを含む。
【選択図】 図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれかのパターンが、液体を吐出する標準ドロップ波形と吐出体積を調整可能な微調ドロップ波形とを含む複数の異なるドロップ波形を組み合わせた、複数のマルチ波形パターンにより、液体吐出部を駆動する、制御部を備える、駆動装置。
【請求項2】
前記標準ドロップ波形及び前記微調ドロップ波形は、拡張電圧により前記液体吐出部に設けられる圧力室を拡張する拡張要素を備え、
前記微調ドロップ波形は、拡張要素のパルス幅が前記標準ドロップ波形の拡張要素のパルス幅よりも短い、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、印字データに基づき、前記標準ドロップ波形、前記微調ドロップ波形、及び非吐出波形、を含む複数のマルチ波形パターンにて、前記液体吐出部に設けられる複数のノズルにそれぞれ対応する複数の駆動素子を、駆動する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、調整データに基づき、前記微調ドロップ波形のパルス幅を複数段階で調整し、吐出体積を調整し、
前記マルチ波形パターンに前記微調ドロップ波形が含まれる場合、印刷周期の最初に前記微調ドロップ波形を設定する、請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置と、
前記駆動装置に駆動されて液体を吐出する液体吐出ヘッドと、を備える、
液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、駆動装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッド等の液体吐出装置において、吐出制御の1つとしてマルチドロップ駆動が知られている。マルチドロップ駆動では、インク滴を吐出させる駆動波形を一印刷周期内に複数有する駆動信号を供給することで、1つの駆動波形で得られる単位吐出体積の整数倍の合計吐出体積が得られる。例えばマルチドロップで吐出制御する場合、印字データに応じてドロップ数を選択する。また、印字データとは別に微調整用のデータに基づいて、各ノズルに与える駆動波形の吐出パルスを微調整した微調整駆動波形を用いて、各ドロップ数の中で吐出体積を調整することもある。このような吐出制御において、ドロップ数が多い場合には調整のステップが粗くなる。
【0003】
このようなインクジェットヘッドにおいて、印字性能を向上するために、より細かい調整が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-193153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、細かい調整が可能な駆動装置及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態にかかる駆動装置は、制御部を備える。制御部は、複数の異なるドロップ波形を組み合わせた、複数のマルチ波形パターンにより、液体吐出部を駆動する。マルチ波形パターンの少なくともいずれかのパターンは、液体を吐出する標準ドロップ波形と吐出体積を調整可能な微調ドロップ波形とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る液体吐出装置の構成を示す説明図。
図2】第1の実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
図3】同実施形態にかかるマルチドロップ動波形を示すグラフ。
図4】同実施形態における標準ドロップ波形を示す波形図。
図5】同実施形態における微調ドロップ波形を示す波形図。
図6】実施形態に係る印字パターンと駆動波形の組み合わせの対応を示す説明図。
図7】実施形態及び比較例における吐出体積と微調レベルを示す説明図。
図8】実施形態にかかる印字パターンにおける吐出体積と微調レベルを示す説明図。
図9】実施形態にかかる印字パターンにおける微調ステップと可変ステップを示す説明図。
図10】比較例に係る印字パターンと駆動波形の組み合わせの対応を示す説明図。
図11】比較例にかかる印字パターンにおける微調ステップと可変ステップを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド1及び液体吐出ヘッド1を用いた液体吐出装置2について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る液体吐出装置2の構成を示す説明図であり、図2は、液体吐出ヘッド1の構成を示す斜視図である。図3は第1実施形態におけるマルチドロップ波形を示す波形図であり、図4は標準ドロップ波形を示す波形図であり、図5は微調ドロップ波形を示す波形図である。図6は、実施形態に係る印字パターンと駆動波形の組み合わせの対応を示す説明図。なお、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0009】
液体吐出ヘッド1を有する液体吐出装置2について、図1を参照して説明する。液体吐出装置2は、筐体2111と、媒体供給部2112と、画像形成部2113と、媒体排出部2114と、支持装置である搬送装置2115と、制御部2118と、を備える。
【0010】
液体吐出装置2は、媒体供給部2112から画像形成部2113を通って媒体排出部2114に至る所定の搬送路2001に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0011】
媒体供給部2112は複数の給紙カセット21121を備える。画像形成部2113は、用紙を支持する支持部2120と、支持部2120の上方に対向配置された複数のヘッドユニット2130と、を備える。媒体排出部2114は、排紙トレイ21141を備える。
【0012】
支持部2120は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト21201と、搬送ベルト21201を裏側から支持する支持プレート21202と、搬送ベルト21201の裏側に備えられた複数のベルトローラ21203と、を備える。
【0013】
ヘッドユニット2130は、複数のインクジェットヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク2132と、インクを供給するポンプ2134と、液体吐出ヘッド1と供給タンク2132とを接続する接続流路2135と、を備える。
【0014】
液体吐出ヘッド1は、供給タンク2132に貯留された液体としてのインクが供給される。なお、液体吐出ヘッド1は、インクを循環させない非循環式のヘッドであってもよく、また、インクを循環させる循環式のヘッドであってもよい。
【0015】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容する4色の供給タンク2132を備える。供給タンク2132は接続流路2135によって液体吐出ヘッド1に接続される。
【0016】
図2に示すように、液体吐出ヘッド1は、インクジェットヘッドであり、複数のノズル211を有するノズルプレート21と、アクチュエータ基板22と、アクチュエータ基板22に接合されたマニフォルド23と、駆動回路24と、を備える。
【0017】
アクチュエータ基板22は、ノズル211に対向配置され、ノズル211に連通する複数の圧力室26と、複数の圧力室26に隣接する駆動素子部と、を有する液体吐出部としてのアクチュエータ25を備える。アクチュエータ基板22は、ノズルプレート21との間に複数の圧力室26を含む所定の流路を形成する所定形状に構成される。
【0018】
アクチュエータ25の圧力室26に隣接する駆動素子部には、駆動回路24に接続される電極が形成される。電極は、例えば駆動回路24に接続される配線により駆動回路24の後述するドライバを介して、制御部2118に接続され、プロセッサによる制御によって駆動制御可能に構成される。
【0019】
駆動回路24は、ドライバIC241や、各種配線基板242を備える。駆動回路24は、ドライバIC241により駆動電圧をアクチュエータ25の配線パターンに印加することでアクチュエータ25を駆動し、圧力室26の容積を増減させて、対向配置されたノズル211から液滴を吐出させる。
【0020】
液体吐出ヘッド1は、ノズルプレート21と、アクチュエータ基板22と、マニフォルド23とによって、内部に圧力室26を有する所定の流路を構成する。液体吐出ヘッド1の流路は、液体吐出装置の接続流路2135に接続される。
【0021】
ポンプ2134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。ポンプ2134は、制御部2118に接続され、制御部2118により駆動制御される。
【0022】
接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク供給管に接続される供給流路を備える。また、接続流路2135は、液体吐出ヘッド1のインク排出管に接続される回収流路を備える。例えば、液体吐出ヘッド1が非循環式の場合には、回収流路は、メンテナンス装置に接続され、液体吐出ヘッド1が循環式の場合には、回収流路は、供給タンク2132に接続される。
【0023】
搬送装置2115は、媒体供給部2112の給紙カセット21121から画像形成部2113を通って媒体排出部2114の排紙トレイ21141に至る搬送路2001に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置2115は、搬送路2001に沿って配置される複数のガイドプレート対21211~21218と、複数の搬送用ローラ21221~21228と、を備えている。搬送装置2115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0024】
制御部2118は、例えば、制御基板である。制御部2118は、プロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートであるI/Oポート、画像メモリを搭載している。
【0025】
プロセッサは、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の処理回路である。プロセッサは、I/Oポートを通して、液体吐出装置2に設けられるヘッドユニット2130、駆動モータ、操作部、及び各種センサ等を制御する。プロセッサは、画像メモリに保存した印字データを描画順に駆動回路24に送信する。
【0026】
また制御部2118は、調整データに基づき、調整波形を決定する。例えば複数段階で設定可能な調整波形から、適用する調整波形を選択する。
【0027】
ROMは、各種のプログラムなどを記憶する。RAMは、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶する。I/Oポートは、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部である。外部接続機器からの印字データは、I/Oポートを通じて制御部2118へ送信され、画像メモリに保存される。
印字データは、領域毎の色や濃度画像の情報を含む画像データなどから、液体を吐出させるために変換されたヘッドに入力するデータである。液体吐出ヘッド1は印字データによって、駆動波形を選択し、アクチュエータ25に駆動波形を印加する。
【0028】
以下、実施形態に係る液体吐出装置2に用いられる液体吐出ヘッド1の特性及び液体吐出ヘッド1の駆動回路24で生成される駆動信号による駆動波形について説明する。例えば液体吐出ヘッド1は、マルチドロップ駆動であり、標準ドロップ波形と調整波形とを含む複数のドロップ波形を組み合わせることにより、複数階調で駆動できる。すなわち、駆動回路24は、複数パターン(複数種類)のマルチドロップ信号により、多階調の駆動波形で駆動する。
【0029】
制御部2118は、印字データに基づき、各駆動素子に印加する駆動波形を設定する。例えば制御部2118は、印字データに基づき、微調ドロップ波形と標準ドロップ波形の組み合わせを設定する。具体的には、制御部2118は、予め設定され記憶された複数のパターンから、駆動パターンを素子毎に選択する。
【0030】
制御部2118は、少なくともいずれかのパターンが、液体を吐出する標準ドロップ波形と、吐出体積を調整可能な微調ドロップ波形と、を含む、複数の異なるドロップ波形を組み合わせた複数のマルチ波形パターンにより、液体吐出部を駆動する。
例えば制御部2118は、印字データに基づき、標準ドロップ波形、微調ドロップ波形、及び非吐出波形、を含む複数のマルチ波形パターンにて、液体吐出部の各ノズルに対応する複数の駆動素子をそれぞれ駆動する。
【0031】
また、制御部2118は、ノズル毎に、微調ドロップ波形の微調整の段階を設定する。すなわち、例えば16段階で可変とした場合にはこの16段階のうち、微調データに適した特定の段階を選択する。
【0032】
図6は、実施形態にかかる複数階調の印字パターンと各印字パターンに対応する駆動波形を示す表である。本実施形態は、1印刷周期に最大4つのドロップ波形(要素)を有する駆動波形であり、パターン0~パターン4までの、5階調で駆動する。本実施形態において、1印刷周期は4ドロップを有し、各ドロップ波形の周期的な長さTは等しく、例えばこの場合1印刷周期は4Tとなる。一例として、標準ドロップ波形の吐出体積は、1ドロップ=6pLである。本実施形態において、標準吐出体積は4ドロップ=24pLに対する微調制御について説明する。
【0033】
各パターンにおける駆動波形は複数のドロップ波形を有するマルチドロップ波形であり、図3、及び図4に示す複数のドロップ波形WvA,WvB及び非吐出波形との組み合わせで構成される。
【0034】
実施例1において、パターン0の駆動波形は、1~4ドロップ目がいずれも非吐出波形である。
【0035】
パターン1の駆動波形は、最初の1ドロップ目が微調ドロップ波形WvBで、2ドロップ目~4ドロップ目までが標準ドロップ波形WvAとなる、マルチ波形パターンである。
【0036】
パターン2の駆動波形は、最初の1ドロップ目及び2ドロップ目が微調ドロップ波形WvBで、3ドロップ目と4ドロップ目が標準ドロップ波形WvAとなる、マルチ波形パターンである。
【0037】
パターン3の駆動波形は、1ドロップ目~3ドロップが微調ドロップ波形WvBで、4ドロップ目が標準ドロップ波形WvAとなる、マルチ波形パターンである。
【0038】
パターン4は、いずれも微調ドロップ波形WvBとなる、マルチ波形パターンである。本実施形態では、マルチ波形パターンに微調ドロップ波形WvBが含まれる場合、4ドロップの内、印刷周期の最初に設定する。すなわち、微調ドロップ波形WvBが1つ含まれる場合は、4ドロップの内、1ドロップ目に設定する。微調ドロップ波形WvBが2つ含まれる場合は、4ドロップの内、1ドロップ目と2ドロップ目に設定する。微調ドロップ波形WvBが3つ含まれる場合は、4ドロップの内、1ドロップ目~3ドロップ目に設定する。
【0039】
図3はドロップ波形WvAを示し、図4は微調ドロップ波形WvBを示す。図3乃至図5において、縦軸は電圧[V]、横軸は時間[μs]を示す。
【0040】
ここで、各ドロップ波形WvA,WvBはそれぞれ拡張要素と収縮要素とを有し、その拡張要素のパルス幅が異なることにより、ドロップ波形WvA,WvBによる吐出体積が異なる。なお、複数のドロップ波形WvA,WvBの周期Tは一定である。
【0041】
各階調における駆動波形は複数のドロップ波形を有するマルチドロップ波形であり、複数のドロップ波形の組み合わせで構成される。
【0042】
各ドロップ波形WvA,WvBはそれぞれ拡張要素と収縮要素とを有し、その拡張要素のパルス幅が異なることにより、複数のドロップ波形による吐出体積が異なる。すなわち、駆動回路24は、吐出体積が異なる複数のドロップ波形の組み合わせにより、1印刷周期内における液体の合計吐出体積が異なる複数の階調でアクチュエータを駆動する。
【0043】
図3乃至図5に示すように、標準ドロップ波形WvA,及び微調ドロップ波形WvBは、いずれも中間電圧Vbから拡張電圧Vaまで下げて圧力室26を拡張させ、一定時間経過後に中間電圧Vbまで戻すことでインクを吐出させる拡張要素PEと、中間電圧Vbから中間電圧Vbよりも高い収縮電圧Vcまで上げて圧力室26を収縮させて、再び中間電圧Vbにまで戻す収縮要素PSと、を含む。例えば中間電圧Vb=0Vである。拡張要素PEと収縮要素PSの間は、中間電圧Vbを一定時間保つ。なお拡張電圧Vaよりも収縮電圧Vcの方が、電圧が高い。微調ドロップ波形WvBの拡張要素のパルス幅PBは標準ドロップ波形WvAの拡張要素PEのパルス幅PAよりも短い。また、微調ドロップ波形WvBの拡張要素のパルス幅PBを調整することで、吐出体積を増減させ、細かく調整することができる。
【0044】
2つのドロップ波形WvA,WvBは、拡張要素PEのパルス幅PA,PBが異なり、異なる吐出体積で吐出する波形である。実施例1では、微調ドロップ波形WvBの拡張要素PEのパルス幅が標準ドロップ波形WvAよりも狭く、吐出体積が小さい。すなわち、標準ドロップ波形WvAは拡張要素PEのパルス幅が微調ドロップ波形WvBよりも広く、吐出体積が大きい。
【0045】
標準ドロップ波形における拡張要素のパルス幅は液体吐出ヘッド1の圧力室26の固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とする。拡張要素のパルス幅はALで決まる値である。一例として、標準ドロップ波形WvAは吐出体積が6pLとなる波形である。
【0046】
微調ドロップ波形WvBは、微調用のデータ(4ビット)が各ノズルに割り当てられていて、微調データによって16段階の吐出量の調整が可能になっている。例えば制御部2118が調整波形のパルス幅を複数段階にて調整することで吐出体積を調整する。例えば、微調ドロップ波形における拡張要素のパルス幅は、16段階で、ALよりも小さい値に設定される。すなわち、微調ドロップ波形WvBの拡張要素のパルス幅PBは、標準ドロップ波形WvAの拡張要素のパルス幅PAを、16段階で段階的に狭めた幅である。
微調データは、例えば微調整用の各種データである。微調データは、吐出波形に対して波形幅を変更するためのデータや、駆動電圧を変更するためのデータである。
【0047】
すなわち、制御部2118は、ノズル毎に、微調データによって16段階で微調ドロップ波形WvBのパルス幅を選択し設定することに加え、印字データによって微調ドロップ波形WvBと標準ドロップ波形WvAの組み合わせのパターンを選択することにより、当該ノズルからの吐出される液滴の吐出体積を微調整することができる。
【0048】
図7は、実施形態及び比較例の印字パターンにおける吐出体積と微調レベルを示す説明図であり、各印字パターンによる波形の組み合わせと微調データによる吐出体積の変化を示すグラフである。図7において、本実施形態の印字パターンのうち、印字パターン1,2,3の場合の微調レベルと吐出体積とを示すとともに、図10に示す比較例において全て微調整波形とした印字パターン4の微調レベルと吐出体積を示している。
【0049】
図8は、本実施形態にかかる印字パターンにおける吐出体積と微調レベルを示す説明図である。図9は、実施形態にかかる印字パターンにおける微調ステップと可変ステップを示す説明図である。図9は、図8の隣接するポイント間の吐出体積の差を示すグラフである。図10は、比較例に係る印字パターンと駆動波形の組み合わせの対応を示す説明図である。図10は、複数のドロップを微調ドロップ波形または非吐出とした組み合わせパターンを示す。図11は、比較例にかかる印字パターン4における微調ステップと可変ステップを示す説明図である。図11は、図10の隣接するポイント間の吐出体積の差を示すグラフである。
【0050】
図7によれば、比較例の場合、24pL付近では全て微調ドロップ波形としたパターン4の16段階の分布のみとなり、いずれかを非吐出波形とした印字パターン1~3は吐出体積18pL以下となる。一方、本実施形態の場合には、この微調ドロップ波形としたパターン4の分布に加えて、標準ドロップ波形を組み合わせた別の印字パターン1,2,3も24pL付近に分布しており、より細かい調整ができることがわかる。なお図7において比較例のパターン4と、実施形態のパターン4は、4ドロップ全てが微調ドロップ波形WvBとなるパターンであり同じパターンとなる。
【0051】
また、図9の可変ステップと、図11の可変ステップを比べると、本実施形態では比較例に比べて可変ステップを低減できていることがわかる。
【0052】
さらに、図7の比較例の分布と、図9の分布によれば、例えば、24pL-23pLの範囲での調整に関して、図7の比較例は8段階での調整であるのに対して、図9に示す本実施形態では43段階の調整が可能となることがわかる。
【0053】
本実施形態によれば、各階調の駆動波形において、2つのドロップ波形WvA,WvBを組み合わせて吐出体積を制御する事で、吐出体積を任意に制御できる。すなわち、比較例1によれば23.0~24.0pLまでの間において8段階となるのに対し、実施例1によれば、23.0~24.0pLまでの間において43段階で、吐出体積を制御する事が出来る。このように特定の吐出体積の周辺で細かく吐出体積を調整することができる。
【0054】
すなわち、本実施形態によれば、ノズル毎に、微調ドロップ波形で吐出体積を調整することに加えて、標準ドロップ波形と微調ドロップ波形とを含む組み合わせのパターンで階調制御をする事で、ノズル毎に、小さい刻み量で吐出体積を制御できる。すなわち、標準ドロップ波形と微調ドロップ波形を組み合わせることで、より階調表現の幅を広げることができ、例えば画像のインクの濃さを細かく微調整することができ、均一塗布をすることができる。
【0055】
また、微調ドロップ波形は標準ドロップ波形に比べて吐出体積が小さい波形であり、吐出速度も遅い傾向となる。したがって、微調ドロップ波形で前半のドロップを駆動し標準ドロップ波形で後半のドロップを駆動することにより後半のドロップが前半のドロップに追いつきやすくなり、ドットが一体となって着弾する方向になる。また、標準ドロップ波形は固有振動周期の半分(AL)に時間拡張し吐出動作を行う波形としたことで、吐出効率がよい。一方微調ドロップ波形は拡張時間がALより短く、その結果吐出体積が標準ドロップ波形より小さくできる。
【0056】
なお、本発明の実施形態は上述した構成に限定されない。
【0057】
例えば上記実施形態においては、制御部2118の制御動作とした例を示したがこれに限られるものではない。例えば液体吐出ヘッド1に、アクチュエータを駆動する駆動回路が備えられ、液体吐出ヘッド1自体が駆動装置となる、あるいは駆動装置を搭載している構成であってもよい。
【0058】
例えば上記実施形態においては、4ドロップ駆動の例を示したがこれに限られず、3ドロップ以下、あるいは5ドロップ以上のドロップ数であってもよい。さらに、ドロップ波形は2種類に限らず、3種類、あるいは4種類以上で組み合わせてもよい。
【0059】
少なくともいずれかのマルチ波形パターンは液体を吐出しない非吐出波形であってもよく、あるいは少なくともいずれかの一部のドロップ波形が非吐出波形であってもよい。例えばパターン間で、液体の吐出を伴うドロップ数が異なっていてもよい。
【0060】
また、例えば、マルチ波形パターンにおいて、吐出波形の数を変化させることも可能である。すなわち、マルチ波形パターンのいずれかに、1以上の非吐出波形を含み、また非吐出波形の数を変更することにより、吐出体積を調整することも可能である。この場合にも、いずれかのマルチ波形パターンとして標準ドロップ波形と微調ドロップ波形の組み合わせを含むことで、上記実施形態と同様に、細かい階調での制御が可能となる。また標準ドロップ波形や微調ドロップ波形の具体的な条件は上記実施形態に限られるものではない。例えば微調ドロップ波形は、吐出体積が調整できる波形であればよく、他の条件を適応できることは言うまでもない。
【0061】
また、上記実施例においては拡張要素のパルス幅によって吐出体積を異ならせる例を示したがこれに限られるものではなく、例えば電圧値や他の要素のパルス幅によって吐出体積を異ならせることも可能である。
【0062】
例えば、液体吐出ヘッド1の構成は上記の例に限られるものではなく、他のタイプのヘッドに用いてもよい。例えば液体吐出ヘッドは、圧力室と駆動素子部との間に設けられる振動板を駆動素子部の変形によって振動させることで、液体吐出部を駆動する構成であってもよい。
【0063】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、より細かい調整が可能となる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1…液体吐出ヘッド、2…液体吐出装置、21…ノズルプレート、22…アクチュエータ基板、23…マニフォルド、24…駆動回路、25…アクチュエータ、26…圧力室、211…ノズル、241…ドライバIC、242…配線基板、2001…搬送路、2111…筐体、2112…媒体供給部、2113…画像形成部、2114…媒体排出部、2115…搬送装置、2118…制御部、2120…支持部、2130…ヘッドユニット、2132…供給タンク、2134…ポンプ、2135…接続流路、21121…給紙カセット、21141…排紙トレイ、21201…搬送ベルト、21202…支持プレート、21203…ベルトローラ、21211~21218…ガイドプレート対、21221~21228…搬送用ローラ、WvA…標準ドロップ波形、WvB…微調ドロップ波形、PE…拡張要素、PS…収縮要素。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11