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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014044
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20240125BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20240125BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240125BHJP
   B60W 10/184 20120101ALI20240125BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60W10/00 120
F02D29/02 321A
B60W10/06
B60W10/184
B60T7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116596
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椿 健一
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3G093
【Fターム(参考)】
3D241AA22
3D241AA72
3D241AC01
3D241AC26
3D241AC30
3D241AD02
3D241AD04
3D241AD05
3D241AD10
3D241AD41
3D241AD51
3D241AE08
3D241AE41
3D246DA01
3D246EA02
3D246GB15
3D246GC07
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA26A
3D246HA27A
3D246HA48A
3D246HA86A
3D246HB08A
3D246JB03
3D246JB05
3D246JB27
3D246JB43
3G093AA01
3G093BA09
3G093BA21
3G093BA22
3G093CA02
3G093CB05
3G093DA01
3G093DA06
3G093DA09
3G093DB05
3G093DB15
3G093DB19
3G093DB20
3G093DB21
3G093EA05
3G093EB04
(57)【要約】
【課題】自動停止条件が成立して燃料カットが行われた後にドライバの意思の変化等によって再始動条件が成立した場合に、ドライバに飛び出し感を与えず、かつ迅速な発進を可能にする。
【解決手段】駆動源としての内燃エンジンを備え、所定の停止条件が成立したら内燃エンジンを自動停止する自動停止制御を実行し、自動停止制御の実行中に所定の再始動条件が成立したら内燃エンジンを自動再始動させる自動再始動制御を実行し、自動停止制御の実行中は車輪に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を併せて行い、再始動条件が成立したら、内燃エンジンを自動再始動させ、再始動条件が成立してから所定期間が経過したときにブレーキ保持制御を解除する、車両の制御方法において、所定期間を、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に応じて変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としての内燃エンジンを備え、所定の停止条件が成立したら前記内燃エンジンを自動停止する自動停止制御を実行し、前記自動停止制御の実行中に所定の再始動条件が成立したら前記内燃エンジンを自動再始動させる自動再始動制御を実行し、
前記自動停止制御の実行中は車輪に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を併せて行い、
前記再始動条件が成立したら、前記内燃エンジンを自動再始動させ、前記再始動条件が成立してから所定期間が経過したときに前記ブレーキ保持制御を解除する、車両の制御方法において、
前記所定期間を、前記再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に応じて変化させることを特徴とする、車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法において、
前記所定期間を、前記再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度が高いほど短くする、車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御方法において、
前記再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に加えて、前記車両が停止している路面の勾配に応じても前記所定期間を変化させる、車両の制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御方法において、
前記路面の勾配が前記車両の仕様に応じて定まる閾値以上の場合には、少なくとも所定エンジン回転速度に到達するまでは前記ブレーキ保持制御を継続する、車両の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の制御方法において、
前記所定エンジン回転速度を、前記再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に応じて変化させる、車両の制御方法。
【請求項6】
駆動源としての内燃エンジンと、
車輪に制動力を付与するブレーキシステムと、
前記内燃エンジン及び前記ブレーキシステムを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラが、所定の停止条件が成立したら前記内燃エンジンを自動停止する自動停止制御を実行し、前記自動停止制御の実行中に所定の再始動条件が成立したら前記内燃エンジンを自動再始動させる自動再始動制御を実行し、前記自動停止制御の実行中は車輪に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を併せて行い、前記再始動条件が成立したら、前記内燃エンジンを自動再始動させ、前記再始動条件が成立してから所定期間が経過したときに前記ブレーキ保持制御を解除する、車両において、
前記コントローラが、前記再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に応じて変化させることを特徴とする、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
停車時に所定の自動停止条件が成立したらエンジンを自動停止し、所定の再始動条件が成立したらエンジンを自動再始動する機能を有する、いわゆるアイドルストップ車が知られている。特許文献1には、アイドルストップ車の制御として、少なくともブレーキ圧が所定未満になることを再始動条件とし、エンジンを再始動する際に、ブレーキペダルが踏み込まれており、かつブレーキ圧が所定値未満であって、エンジン回転速度が所定回転数(十分なクリープ力が発生する回転速度)以上であればブレーキ力の付与を所定期間継続する制御が開示されている。ブレーキペダルが踏み込まれている場合には、ドライバには発進する意思がないと見做せる。また、エンジン回転速度が所定回転数以上であれば、エンジン再始動により発生するクリープ力による飛び出しが生じるおそれがある。つまり上記の制御は、ドライバに発進する意思がなく、かつエンジン再始動により飛び出しが生じるおそれがある状態では、エンジンを再始動する際に、アイドルストップ中に実行していたブレーキ力の付与を継続するというものである。当該制御により、エンジン再始動に伴う飛び出し感をドライバに与えることを防止できる。また、上記文献の制御においては、自動停止中にブレーキペダルが踏み込まれている状態から踏み込まれていない状態になった場合は、ブレーキ力の付与は継続されない。これは、ブレーキペダルの踏み込みを解除するということはドライバがエンジンの再始動を意図したということなので、ドライバが飛び出し感を感じることはないと見做して、迅速なエンジン再始動及び発進を優先するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-076521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動停止条件が成立してエンジンを停止させるために燃料カットを行った後、エンジン回転速度が低下している最中に、ドライバの意思の変化等によって、ドライバがブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替えを行い、再始動条件が成立する場合がある。この場合、上記文献の制御では、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態なので、ドライバに飛び出し感を与えることはないと見做され、ブレーキ力の付与は継続されない。しかし、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度は、燃料カットを行った時点におけるエンジン回転速度によって異なる。このため、エンジン回転速度しだいではドライバが予期しているクリープ力より大きなクリープ力が発生し、ドライバに飛び出し感を与えるおそれがある。一方、ブレーキペダルが踏み込まれている場合と同様にブレーキ力の付与を所定期間継続すると、迅速な発進を妨げることになる。
【0005】
そこで本発明では、自動停止条件が成立して燃料カットが行われた後にドライバの意思の変化等によって再始動条件が成立した場合に、ドライバに飛び出し感を与えず、かつ迅速な発進を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、駆動源としての内燃エンジンを備え、所定の停止条件が成立したら内燃エンジンを自動停止する自動停止制御を実行し、自動停止制御の実行中に所定の再始動条件が成立したら内燃エンジンを自動再始動させる自動再始動制御を実行し、自動停止制御の実行中は車輪に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を併せて行い、再始動条件が成立したら、内燃エンジンを自動再始動させ、再始動条件が成立してから所定期間が経過したときにブレーキ保持制御を解除する車両の制御方法が提供される。この制御方法では、所定期間を、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に応じて変化させる。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、自動停止条件が成立して燃料カットが行われた後にドライバの意思の変化等によって再始動条件が成立した場合に、ドライバに飛び出し感を与えず、かつ迅速な発進を可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車両のシステム構成の一例を示す概略構成図である。
図2図2は、エンジンを自動停止した状態から自動再始動した場合のタイミングチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態に係る、自動再始動時にコントローラが実行する制御のフローチャートである。
図4図4は、図3の制御を実行した場合のタイミングチャートの第1例である。
図5図5は、図3の制御を実行した場合のタイミングチャートの第2例である。
図6図6は、図3の制御を実行した場合のタイミングチャートの第3例である。
図7図7は、判定時回転速度を第1回転速度に固定し、保持時間を変化させた場合のタイミングチャートである。
図8図8は、判定時回転速度を第2回転速度に固定し、保持時間を変化させた場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両1のシステム構成の一例を示す概略構成図である。
【0011】
車両1は、駆動源としての内燃エンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)2と、車輪9に制動力を付与するブレーキシステム3と、内燃エンジン2及びブレーキシステム3を制御するコントローラ10と、コントローラ10による制御に用いられる各種情報を取得するセンサ類を備える。
【0012】
エンジン2は、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンのいずれであっても構わない。
【0013】
ブレーキシステム3は、ドライバのブレーキペダル操作に応じて車輪9に制動力を付与する機能に加え、ドライバがブレーキペダル操作をしていない場合であっても、衝突回避や横滑り防止、その他の運転支援等のためにコントローラ10からの指示に応じて車輪9に制動力を付与する機能も有する。
【0014】
なお、コントローラ10は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0015】
車両1は、センサ類として、図示しないアクセルペダルの開度を検出するアクセルペダルセンサ4と、図示しないブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するブレーキペダルセンサ5と、車速を検出する車速センサ6と、現在位置の路面勾配を検出する勾配センサ7と、エンジン2の回転速度を検出するクランク角センサ8と、を備える。なお、ブレーキペダルセンサ5は、少なくともブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出できればよいが、ドライバの踏力を検出するものであってもよい。また、車両1は、上記の各センサの他に、吸入空気量を検出するエアフローセンサ(図示せず)、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ(図示せず)等も備える。
【0016】
上述したセンサ類の検出値は、検出信号としてコントローラ10に読み込まれる。コントローラ10はこれらの検出値に基づいて、エンジン2及びブレーキシステム3の制御を行う。
【0017】
コントローラ10が行う制御に、エンジン2の自動停止制御及び自動再始動制御がある。自動停止制御は、例えばブレーキペダルが踏み込まれており、かつ車速が所定車速以下である、という停止条件が成立したらエンジン2を自動停止する制御である。自動再始動制御は、自動停止制御によりエンジン2が停止している場合に、例えばブレーキペダルが解放される、またはバッテリ容量が閾値以下になる等といった再始動条件が成立したら、エンジン2を自動再始動する制御である。なお、自動停止条件及び再始動条件は公知の各条件を適用すればよいので、詳細な説明を省略する。
【0018】
自動停止制御によりエンジン2を停止して停車している場合に、コントローラ10はブレーキシステム3により車輪9に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を実行する。ブレーキ保持制御は、例えば停止信号に従って停車している最中にバッテリ容量が閾値以下になった場合の、エンジン2の自動再始動によって生じたトルクによる、ドライバの意図しない発進を抑制できる。
【0019】
ここで、ドライバに発進する意思に応じてエンジン2を自動再始動する際の、ブレーキ保持制御が問題となる。
【0020】
再始動条件の成立後にブレーキ保持制御を継続しない場合には、ドライバに飛び出し感を与えるおそれがある。なお、ここでいう「飛び出し感」とは、加速度の時間変化率が大きくなるほど強くなる唐突感や、加速度の最初のピークが高くなるほど強くなる押し出され感等の総称である。一方、再始動条件が成立した後もブレーキ保持制御を継続すれば、例えば、登坂路で停車中に発進のためにドライバがブレーキペダルから足を離してエンジン2が自動再始動した場合の、エンジン2がトルクを発生するまでのずり下がりを抑制できる。ただし、ブレーキ保持制御を継続することで、迅速な発進を妨げるおそれがある。
【0021】
また、再始動条件の成立後もブレーキ保持制御を継続する場合でも、継続する時間が適切でないとドライバに飛び出し感を与えるおそれがある。これは、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度(判定時回転速度ともいう)は状況に応じて異なり、判定時回転速度が異なれば、再始動した後のエンジン回転速度及びエンジントルクのプロフィールが異なるからである。
【0022】
これについて図2を参照して説明する。図2は、エンジン2を自動停止した状態から自動再始動した場合の、エンジン回転速度、ブレーキ入力及び加速度のタイミングチャートである。当該チャートでは、タイミングT0で再始動条件が成立し、その後、所定の遅れ時間をもってエンジン2が自動再始動している。
【0023】
エンジン2の回転が停止した状態であれば、判定時回転速度はゼロ[rpm]である。しかし、自動停止条件の成立に伴い燃料カットを実行して停車した直後にドライバの意思が変化してブレーキペダルが解放された場合には、再始動条件が成立した時点でエンジン回転速度がゼロまで低下していないこともある。図2では、判定時回転速度がゼロの場合を実線で示し、ゼロより高い第1回転速度の場合を破線で示し、第1回転速度より高い第2回転速度の場合を一点鎖線で示す。
【0024】
また、再始動条件の成立後にブレーキ保持制御を継続する時間、つまりブレーキ入力が一定に保持される時間(タイミングT0からタイミングT1)を保持時間という。なお、ブレーキ入力が徐々に低下してゼロになるまでの期間(タイミングT1からT2)は抜き時間という。そして、図2においては、いずれの判定時回転速度の場合も、保持時間及び抜き時間は同一である。
【0025】
抜き時間が経過した後(つまりタイミングT2以降)は、判定時回転速度が第2回転速度の場合は、判定時回転速度がゼロ[rpm]の場合(以下、これを通常時ともいう)に比べて加速度が同等か又は小さい。これに対し、判定時回転速度が第1回転速度の場合は、図2の領域Aで、通常時に比べて加速度が大きくなっている。つまり、判定時回転速度が第1回転速度の場合には、通常時に比べて飛び出し感が強くなっている。また、停車している道路が平坦路か否かによっても、適切な保持時間は異なる。そこで本実施形態では、飛び出し感を抑制しつつ迅速な発進を可能にする保持時間を設定するために以下に説明する制御を実行する。
【0026】
図3は、エンジン2が自動停止し、かつブレーキシステム3がブレーキ保持制御を実行している状態で再始動条件が成立した場合にコントローラ10が実行する制御のフローチャートである。
【0027】
ステップS10において、コントローラ10は勾配センサ7の検出値に基づいて停車中の路面の勾配を取得する。なお、図示しないナビゲーションシステムにより取得した位置情報と予め記憶しておいた地図データから勾配を取得することもできる。
【0028】
ステップS20において、コントローラ10はステップS10で取得した勾配に基づいて、ずり下がりの懸念があるか否かを判定し、ない場合はステップS30の処理を実行し、ある場合はステップS40の処理を実行する。具体的には、勾配が予め設定した閾値以上であれば懸念あり、閾値より小さければ懸念なし、と判定する。ここで用いる閾値は、車両1の車重等によって異なるものであり、車両1の仕様毎にシミュレーション等により設定する。
【0029】
コントローラ10は、ステップS30においてクランク角センサ8の検出値に基づいて判定時回転速度を取得し、その後、後述するステップS70の処理を実行する。
【0030】
ステップS40において、コントローラ10はステップS30と同様に判定時回転速度を取得する。
【0031】
ステップS50において、コントローラ10は判定時回転速度に基づいてタイマースタート回転速度を設定する。カウント開始回転速度とは、保持時間をカウントするタイマーのカウントを開始するエンジン回転速度である。また、カウント開始回転速度は、車両1のずり下がりを防止し得る駆動力を発生できるエンジン回転速度であり、勾配が大きいほど高い値になる。
【0032】
ステップS60において、コントローラ10は実際のエンジン回転速度がカウント開始回転速度以上になったか否かを判定し、カウント開始回転速度以上になったらステップS70の処理を実行する。
【0033】
ステップS70において、コントローラ10は保持時間を設定し、保持時間をカウントするタイマーのカウントを開始する。ここでは、判定時回転速度が高いほど、短い保持時間を設定する。
【0034】
コントローラ10は、ステップS80において保持時間が経過したか否かの判定を、保持時間が経過するまで繰り返し行い、保持時間が経過したらステップS90においてブレーキシステム3の制動力を低下させて、本制御のルーチンを終了する。
【0035】
なお、ブレーキシステム3を制御するブレーキシステム用コントローラをコントローラ10とは別に備えることとしてもよい。その場合には、コントローラ10はステップS10~S80の処理をした後、ステップS90においてブレーキシステム用コントローラにブレーキ解除要求を送信する。
【0036】
図4図6は、平坦路で停車している状態で上記制御を実行した場合のタイミングチャートであり、図4は、判定時回転速度がゼロ[rpm](つまり、通常時)の場合を示し、図5は判定時回転速度が第1回転速度の場合を示し、図6は判定時回転速度が第2回転速度の場合を示している。なお、ゼロ<第1回転速度<第2回転速度である。
【0037】
また、図4図6のいずれにおいても、タイミングT1でブレーキペダルが解放され、タイミングT2で再始動条件が成立し、その後エンジン2の始動動作が開示される。なお、タイミングT1からタイミングT2までは、制御上の遅れ時間である。また、再始動条件が成立してから実際にエンジン2の始動動作が開始されるまでも同様に遅れ時間がある。
【0038】
図4に示す通常時では、判定時回転速度がゼロ[rpm]であり、再始動条件が成立してから所定の保持時間が経過したタイミングT3でブレーキ保持制御が終了し、制動力が低下し始めている。
【0039】
図5に示す判定時回転速度がゼロより高い第1回転速度の場合には、通常時よりも短い保持時間が設定され、タイミングT3よりも早いタイミングT4でブレーキ保持制御が終了する。
【0040】
図6に示す判定時回転速度が第1回転速度よりさらに高い第2回転速度の場合には、さらに短い保持時間が設定され、タイミングT4よりさらに早いタイミングT5でブレーキ保持制御が終了する。
【0041】
上記のように判定時回転速度が高いほどブレーキ保持制御の保持時間を短くすることで、判定時回転速度が第1回転速度の場合も第2回転速度の場合も、通常時とほぼ同様の加速度プロフィールにすることができる。換言すれば、判定時回転速度に応じて保持時間を設定することで、飛び出し感を通常時のレベルに抑えることができる。
【0042】
図7は、判定時回転速度を第1回転速度に固定し、保持時間を変化させた場合のタイミングチャートである。図7の実線は通常時と同様の保持時間の場合を示し、破線は保持時間が通常時より短い場合を示し、一点鎖線は保持時間が通常時より長い場合を示している。
【0043】
保持時間を通常時より短くした場合には、通常時の保持時間の場合に比べて、加速度の最初のピークを迎えるタイミングが早く、かつ最初のピークが低くなっている(図7の領域Bを参照のこと)。すなわち、通常時に比べて保持時間を短くすることで、保持時間が通常時と同じ場合に比べて迅速に発進でき、かつ飛び出し感のうち特に押し出され感を抑制できる。
【0044】
なお、保持時間を通常時より長くした場合にも、保持時間が通常時と同じ場合に比べて加速度の最初のピークは低くなるので、飛び出し感を抑制できる。ただし、加速度が上昇タイミングは通常時よりも遅くなるので、迅速な発進を実現することはできない。
【0045】
図8は、判定時回転速度を第2回転速度に固定し、保持時間を変化させた場合のタイミングチャートである。図8の実線は通常時と同様の保持時間の場合を示し、破線は保持時間が通常時より短い場合を示している。なお、保持時間が終了するタイミングT5は、判定時回転速度が第1回転速度の場合の保持時間が終了するタイミングT4よりも早い。
【0046】
保持時間を短くすることで、エンジン2が自動再始動してから加速度が立ち上がるまでに要する時間が短くなっている(図8の領域Cを参照のこと)。すなわち、迅速な発進が可能となっている。
【0047】
以上のように本実施形態では、駆動源としての内燃エンジン2を備え、コントローラ10が、所定の停止条件が成立したら内燃エンジン2を自動停止する自動停止制御を実行し、自動停止制御の実行中に所定の再始動条件が成立したら内燃エンジン2を自動再始動させる自動再始動制御を実行する車両1が提供される。コントローラ10は、自動停止制御の実行中は、車輪9に制動力を与えて車両停止状態を維持するブレーキ保持制御を併せて行う。また、再始動条件が成立したら、内燃エンジン2を自動再始動させ、再始動条件が成立してから所定期間が経過したときにブレーキ保持制御を解除する。コントローラ10は、所定期間を、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度(判定時回転速度)に応じて変化させる。より具体的にいうと、コントローラ10は、所定期間を再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度が高いほど短くする。エンジン2が自動再始動した後の発生駆動力プロフィールは判定時回転速度によって異なるが、本実施形態によれば発生駆動力プロフィールに合わせた保持時間を設定することが可能となり、その結果、ドライバに飛び出し感を与えず、かつ迅速に発進することが可能になる。
【0048】
本実施形態では、コントローラ10は再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度に加えて、車両1が停止している路面の勾配に応じても所定期間(保持時間)を変化させる。勾配も判定時回転速度と同様に発生駆動力プロフィールに影響を与えるので、勾配に応じて保持時間を変化させることで、飛び出し感等を抑制できる。
【0049】
本実施形態では、コントローラ10は、路面の勾配が車両1の仕様に応じて定まる閾値以上の場合には、少なくとも所定エンジン回転速度に到達するまではブレーキ保持制御を継続する。登坂路での自動再始動時には、車両1がずり下がることが懸念されるが、本実施形態によればずり下がりを防止できる。なお、所定エンジン回転速度は車両1のずり下がりを防止し得る駆動力を発生できるエンジン回転速度とする。
【0050】
本実施形態では、コントローラ10は、所定エンジン回転速度を、再始動条件が成立した時点におけるエンジン回転速度(判定時回転速度)に応じて変化させる。つまり、判定時回転速度によって異なる自動再始動後の発生駆動力プロフィールに応じて、ブレーキ保持制御を解除するタイミングを設定する。これにより、自動再始動後の飛び出し感を抑制し、かつ車両1のずり下がりを防止できる。
【0051】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 車両、 2 内燃エンジン、 3 ブレーキシステム、 4 アクセルペダルセンサ、 5 ブレーキペダルセンサ、 6 車速センサ、 7 勾配センサ、 8 クランク角センサ、 9 車輪、 10 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8