(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140464
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/107 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051602
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕幸
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA20
4C316AB16
4C316FA06
4C316FA10
4C316FY04
(57)【要約】
【課題】適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することのできる眼科装置を提供する。
【解決手段】眼科装置1では、角膜厚さを測定する測定光LMを被検眼Eに投影する測定光投影系(60)と、被検眼Eと装置本体4との前後方向のアライメントのためのアライメント光LAを投影するアライメント光投影系(90)と、被検眼Eからの測定光LMの反射光(LMa、LMb)と被検眼Eからのアライメント光LAの反射光(LAa)とを受光する受光光学系70と、を備える。受光光学系70には、有効径を変化させる有効径変更部73が設けられている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
角膜厚さを測定する測定光を被検眼に投影する測定光投影系と、
前記被検眼と装置本体との前後方向のアライメントのためのアライメント光を投影するアライメント光投影系と、
前記被検眼からの前記測定光の反射光と前記被検眼からの前記アライメント光の反射光とを受光する受光光学系と、を備え、
前記受光光学系には、有効径を変化させる有効径変更部が設けられていることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記受光光学系は、前記被検眼に対向される対物レンズを有し、
前記測定光と前記アライメント光とは異なる波長とされ、
前記有効径変更部は、前記対物レンズに円環状に設けられたダイクロイックフィルタで構成され、
前記ダイクロイックフィルタは、前記測定光を透過させるとともに、前記アライメント光の透過を阻むことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記ダイクロイックフィルタは、前記対物レンズにおける周辺部への蒸着により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記ダイクロイックフィルタは、前記対物レンズの入射面に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記有効径変更部は、開口の径寸法の変更が可能とされて絞り機構で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置は、装置本体に対するZ軸方向(前後方向)のZアライメントを行ってから、被検眼の角膜厚さを測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の眼科装置は、角膜厚さを測定する測定光を投影する測定光投影系と、Zアライメントのためのアライメント光を投影するアライメント光投影系と、両投影系からの反射光を受光する受光光学系と、を備え、測定光投影系とアライメント光投影系とが同一の光軸上で被検眼に投影する。これにより、従来の眼科装置は、高い精度でZ軸方向のアライメントをした状態として、被検眼の角膜厚さを適切に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の眼科装置は、測定光投影系とアライメント光投影系とで共通の受光光学系を用いるので、双方の光に対する受光光学系の有効径が等しくなる。しかしながら、適切な角膜厚さの測定のために測定光投影系からの測定光に求められる有効径と、適切で迅速なアライメントのために求められるアライメント光投影系からのアライメント光に求められる有効径と、は異なる。このため、従来の眼科装置は、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定する観点から改良の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することのできる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本開示の眼科装置は、角膜厚さを測定する測定光を被検眼に投影する測定光投影系と、前記被検眼と装置本体との前後方向のアライメントのためのアライメント光を投影するアライメント光投影系と、前記被検眼からの前記測定光の反射光と前記被検眼からの前記アライメント光の反射光とを受光する受光光学系と、を備え、前記受光光学系には、有効径を変化させる有効径変更部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の眼科装置によれば、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施例の眼科装置の構成を模式的に示す説明図である。
【
図2】眼科装置における制御系構成を示すブロック図である。
【
図3】眼科装置の光学系の要部構成を上方から見た様子で示す説明図である。
【
図4】眼科装置の光学系の要部構成を側方から見た様子で示す説明図である。
【
図5】角膜に正面から照射されたXYアライメント視標光の反射の様子を示す説明図である。
【
図6】角膜に斜め方向から投影された測定光が角膜表面および角膜内皮で反射される様子を示す説明図である。
【
図7】角膜に斜め方向から投影された測定光の角膜表面および角膜内皮での反射光をラインセンサで受光したときの様子を示す説明図であり、(a)はラインセンサ上に結像されるスリット像を示し、(b)はラインセンサ上の光量分布を示す。
【
図8】角膜に斜め方向から投影されたアライメント光の反射の様子を示す説明図である。
【
図9】
図3においてアライメント光が進行する様子を示す説明図である。
【
図10】有効径変更部が設けられた対物レンズを示す説明図であり、(a)は入射面側から見た様子で示し、(b)は(a)のI-I線に沿って得られた断面で示す。
【
図11】対物レンズに有効径変更部を設ける工程を模式的な断面で段階的に示す説明図であり、(a)は対物レンズのみの様子を示し、(b)は反射防止膜を設ける様子を示し、(c)はマスク部材を配置してダイクロイックフィルタ膜を設ける様子を示し、(d)は反射防止膜とダイクロイックフィルタ膜とを有する有効径変更部が設けられた様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る眼科装置の一実施形態について
図1から
図11を参照しつつ説明する。なお、
図9では、
図3とは異なり、スリット投影光学系60のスリット光源61から出射された光を省略しつつ、視標投影光学系90のZアライメント光源91から出射された光が被検眼Eの角膜Cで反射されて受光光学系70へと進行する様子を示している。この
図9では、Zアライメント光源91から出射された光が平行光(コリメートされた光(平行光束))とされて被検眼Eの角膜Cへと進行する様子の把握を容易とするために、この光を強調して示しているが、実際の構成と必ずしも一致するものではない。また、
図11では、有効径変更部を設ける工程の把握を容易とするために、対物レンズ71を長方形状の模式的な断面としているが、実際の構成と一致するものではない。さらに、
図3、
図9、
図10、
図11では、有効径変更部73(反射防止膜74、ダイクロイックフィルタ膜75)の把握を容易とするために強調して示しているが、実際の構成と必ずしも一致するものではない。
【実施例0010】
眼科装置1は、
図1に示すように、ベース2に駆動部3を介して装置本体4が設けられて構成されている。その駆動部3は、装置本体4をベース2に対して、上下方向(Y軸方向)と、前後方向(Z軸方向(
図1を正面視して左右方向))と、それらに直交する左右方向(X軸方向(
図1の紙面に直交する方向)と、に移動させる。なお、この実施例では、上下方向の上側をY軸方向の正側とし、前後方向の被検者側(
図1を正面視して右側)をZ軸方向の正側とし、左右方向において
図1を正面視して手前側をX軸方向の正側とする。
【0011】
駆動部3は、ベース2に内蔵された電源により駆動可能とされており、ベース2の上部に設けられた架台3aを有する。その架台3aには、傾倒操作可能にコントロールレバー3bが設けられている。架台3aは、コントロールレバー3bへの傾倒操作により、ベース2に対して前後方向(Z軸方向)と左右方向(X軸方向)とに移動可能とされている。コントロールレバー3bには、アライメントを手動で行う手動モードのときに用いられる手動スイッチ3cが設けられている。架台3aの上部には、モータ3dと支柱3eとが設けられている。支柱3eは、ピニオンとラックとによりモータ3dに結合され、そのモータ3dによって上下方向(Y軸方向)に移動可能とされている。
【0012】
その支柱3eの上端には、テーブル3fが設けられている。そのテーブル3fには、支柱3gとモータ3hとが設けられている。支柱3gの上端には、テーブル3kが左右方向(X軸方向)にスライド移動可能に設けられている。テーブル3kの後端にはラック3mが設けられ、モータ3hの出力軸にはピニオン3nが設けられ、そのピニオン3nがラック3mに噛み合わされている。
【0013】
また、テーブル3kの上部には、モータ3pと支柱3qとが設けられている。モータ3pの出力軸には、ピニオン3rが設けられている。支柱3qの上部には、装置本体4が前後方向(Z軸方向)にスライド移動可能に設けられている。装置本体4の側部には、ラック3sが設けられ、そのラック3sには、ピニオン3rが噛み合わされている。
【0014】
なお、
図1では、理解容易とするために省略しているが、眼科装置1では、全体の外形形状を形作るカバー部材が設けられており、ベース2から駆動部3を経て装置本体4までが当該カバー部材により覆われている。また、
図1では、駆動部3において、架台3aからモータ3pや支柱3qまでの構成を上下方向に積層して示しているが、完全に上下方向に分割されて構成されているものではなく、上下方向に直交する方向で見ると各部が互いに重なり合うように構成されている。このため、駆動部3すなわち眼科装置1では、高さ寸法(上下方向で見た大きさ寸法)の増大を防止しつつ、装置本体4をベース2に対して適宜移動することができる。
【0015】
装置本体4の内部には、後述する各光学系(10、20、30、40、50、60、70、90(
図3、
図4参照))や制御部80(
図2参照)が収納されている。制御部80は、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。このハードディスクドライブには、制御プログラムが予め記憶されている。制御部80の動作は、この制御プログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。なお、制御部80は、電子回路により構成されていてもよい。制御部80は、図示を略す操作部やコントロールレバー3bへの入力操作に基づいて、眼科装置1を統括的に制御する。この制御部80には、後述する前眼部照明光源11、撮像素子19、XYアライメント用光源21、固視標用光源31、センサ41、センサ52、スリット光源61、ラインセンサ72、Zアライメント光源91が接続されている。制御部80は、それらの各光源を適宜点灯するとともに、各センサからの信号を取得することができる。
【0016】
制御部80は、駆動部3を適宜駆動して被検眼Eと装置本体4とのアライメントを行い、各光学系を駆動して被検眼Eの角膜Cの厚さや眼圧を取得する。また、制御部80には、表示部5が接続されており、後述する撮像素子19が取得した画像(動画を含む)を表示させることができる。その表示部5は、液晶ディスプレイで形成されており、後述する主制御部81(
図2参照)の制御下で、被検眼Eの前眼部像等の画像や検査結果等を表示させる。表示部5は、タッチパネルの機能を搭載するものとして、各種の操作を行うことを可能としてもよい。この制御部80は、主制御部81とXYアライメント検出部82とZアライメント検出部83と角膜厚さ算出部84と眼圧算出部85と記憶部86とを有する。
【0017】
主制御部81は、XYアライメント検出部82、Zアライメント検出部83、角膜厚さ算出部84と眼圧算出部85とのデータのやり取りが可能とされている。また、主制御部81は、記憶部86に記憶されたデータの読み出し処理や、記憶部86に対するデータの書き込み処理を行う。主制御部81は、上記の各光源を適宜点灯することができ、各センサからの信号を取得できる。この主制御部81は、コントロールレバー3bへの入力操作に応じてまたは自動で、駆動部3を駆動してベース2に対して装置本体4を適宜移動させる。このとき、主制御部81は、モータ3dにより上下方向(Y軸方向)に、モータ3hにより左右方向(X軸方向)に、モータ3pにより前後方向(Z軸方向)に、ベース2に対して装置本体4を適宜移動させる。そのベース2には、図示は略すが被検者(患者)の顔、すなわち被検眼Eの位置を固定する顎受部や額当部が設けられる。このため、装置本体4は、駆動部3により、ベース2に対して移動すること、すなわち顎受部と額当部とにより固定された被検眼E(被検者の顔)に対して移動することが可能とされている。このため、主制御部81は、コントロールレバー3bへの入力操作に応じて、被検眼Eに対する装置本体4のアライメント(位置合わせ)を行うことができる。なお、主制御部81は、XYアライメント検出部82、Zアライメント検出部83からの信号に応じて駆動部3を駆動して装置本体4を移動させることにより、自動アライメント(自動による位置合わせ(自動調整))を行うものとしてもよい。
【0018】
その装置本体4には、内方に、
図3、
図4に示すように、前眼部観察光学系10、XYアライメント視標投影光学系20、固視標投影光学系30、XYアライメント検出光学系40、角膜変形検出光学系50、スリット投影光学系60、受光光学系70、視標投影光学系90が設けられている。前眼部観察光学系10は、被検眼Eの前眼部の観察を可能とする。XYアライメント視標投影光学系20は、左右方向および上下方向(以下ではXY方向ともいう)のアライメント検出および角膜変形検出のための視標光(XYアライメント視標光K)を被検眼Eの角膜Cに正面から投影する。固視標投影光学系30は、被検眼Eに固視標を投影する。XYアライメント検出光学系40は、XY方向のアライメントのために、XYアライメント視標光Kの角膜Cによる反射光を受光する。角膜変形検出光学系50は、被検眼Eの眼圧の測定のために、XYアライメント視標光Kの角膜Cによる反射光を受光する。スリット投影光学系60は、角膜Cに斜めから幅の狭いスリット光束(角膜厚さ測定用の測定光LM)を投影する。視標投影光学系90は、Z軸方向(前後方向)のアライメント用のアライメント光LAを、角膜Cに斜めから投影する。受光光学系70は、測定光LMやアライメント光LAの角膜Cによる反射光を前眼部観察光学系10の光軸に対して対称な方向から受光する。
【0019】
前眼部観察光学系10は、複数個の前眼部照明光源11と、光軸O1上の気流吹付ノズル12、前眼部窓ガラス13、チャンバー窓ガラス14、ハーフミラー15、対物レンズ16、ハーフミラー17、ハーフミラー18および撮像素子19と、を有する。前眼部照明光源11は、被検眼Eの左右の位置に複数設けられており、その前眼部を直接照明する。この前眼部観察光学系10では、前眼部照明光源11によって照明された被検眼Eの前眼部像が、気流吹付ノズル12の内外を通り、前眼部窓ガラス13、チャンバー窓ガラス14、ハーフミラー15を透過し、対物レンズ16により集束されつつハーフミラー17、ハーフミラー18を透過して撮像素子19上に形成される。
【0020】
また、前眼部観察光学系10では、気流吹付機構12Aが設けられている。気流吹付機構12Aは、空気圧縮室12a内の空気を圧縮して気流吹付ノズル12から被検眼Eの角膜Cに向けて吹き付ける気流を形成する。この気流吹付機構12A(その駆動機構)は、制御部80(主制御部81)に接続されており、主制御部81の制御下で適宜駆動される。この気流吹付機構12Aには、圧力センサが設けられており、吹き付けた気流の圧力を眼圧算出部85に出力する。このため、前眼部観察光学系10では、気流吹付機構12Aが形成した気流を、気流吹付ノズル12から被検眼Eの角膜Cに向けて吹き付けることができる。
【0021】
XYアライメント視標投影光学系20は、XYアライメント用光源21、集光レンズ22、開口絞り23、ピンホール板24、ダイクロイックミラー25、投影レンズ26を有し、前眼部観察光学系10とハーフミラー15を共用する。XYアライメント用光源21は、XYアライメント視標光Kとしての赤外光を出射する。開口絞り23は、投影レンズ26に関して角膜Cの頂点(角膜頂点P)と共役な位置に設けられている。投影レンズ26は、ピンホール板24に焦点を一致させるように光路上に配置されている。XYアライメント視標投影光学系20では、XYアライメント用光源21からの赤外光が、集光レンズ22により集束されつつ開口絞り23を通過してピンホール板24に導かれる。そして、ピンホール板24を通過した光束は、ダイクロイックミラー25で反射され、投影レンズ26によって平行光(平行光束)となってハーフミラー15で反射された後に、チャンバー窓ガラス14を透過して気流吹付ノズル12の内部を通過し、
図5に示すようにXYアライメント視標光Kとして被検眼E(角膜C)を照射する。XYアライメント視標光Kは、角膜頂点Pと角膜Cの曲率中心との中間位置に輝点像Rを形成するようにして角膜表面Tで反射される。
【0022】
固視標投影光学系30は、可視光を出射する固視標用光源31、ピンホール板32を有し、XYアライメント視標投影光学系20とダイクロイックミラー25、投影レンズ26を共用し、前眼部観察光学系10とハーフミラー15を共用する。固視標投影光学系30では、固視標用光源31から出射された固視標光が、ピンホール板32、ダイクロイックミラー25を経た後に投影レンズ26により平行光とされ、ハーフミラー15で反射された後にチャンバー窓ガラス14を透過し、気流吹付ノズル12の内部を通過して被検眼Eに導かれる。被検者は、その固視標を固視目標として注視することにより視線が固定される。
【0023】
XYアライメント検出光学系40は、センサ41を有し、前眼部観察光学系10とハーフミラー15、対物レンズ16、ハーフミラー17、ハーフミラー18を共用する。XYアライメント検出光学系40では、XYアライメント視標投影光学系20から角膜Cに投影されて角膜表面Tで反射された反射光束が、気流吹付ノズル12の内部を通りチャンバー窓ガラス14、ハーフミラー15を透過する。その透過した光束は、対物レンズ16により集束されつつハーフミラー17でその一部が透過し、ハーフミラー18でその一部が反射されて、センサ41上に輝点像R’1を形成する。そのセンサ41は、PSD(Position Sensitive Device)等の位置検出可能な受光センサであり、受光した輝点像R’1の信号をXYアライメント検出部82(
図2参照)に出力する。そのXYアライメント検出部82は、センサ41の出力に基づいて、装置本体4と角膜Cとの間のXY方向でのアライメントずれ量ΔXYを公知の方法によって算出し、その算出結果を角膜厚さ算出部84および主制御部81に出力する。主制御部81は、XYアライメント検出部82からのアライメントずれ量ΔXYに基づいて駆動部3のモータ3d、モータ3hを制御して装置本体4をXY方向に移動させることにより、被検眼Eに対する装置本体4のXY方向でのアライメントを行うことができる。このため、XYアライメント検出光学系40は、XYアライメント視標投影光学系20、主制御部81およびXYアライメント検出部82と協働して、被検眼Eに対する装置本体4のXY方向の位置を調整するためのXYアライメント機構として機能する。
【0024】
また、前眼部観察光学系10では、ハーフミラー18を透過した角膜Cによる反射光束が、撮像素子19上に輝点像を形成する。このため、撮像素子19は、取得した被検眼Eの前眼部像とXYアライメント視標光Kの輝点像とを取得できる。これらを示す画像は、制御部80の制御下で表示部5に適宜表示される。このため、検者は、表示部5の表示に基づいてアライメントを手動で行うことができるとともに、自動アライメントの場合であっても現在の状況を把握することができる。
【0025】
角膜変形検出光学系50は、ピンホール板51、センサ52を有し、前眼部観察光学系10とハーフミラー15、対物レンズ16およびハーフミラー17を共用する。角膜変形検出光学系50では、XYアライメント視標光Kの角膜Cによる反射光の一部の光束が、ハーフミラー17で反射されて、ピンホール板51を通過してセンサ52に導かれる。センサ52は、フォトダイオード等の光量検出の可能な受光センサであり、受光した光量に応じた信号を出力する構成とされている。ここで、被検眼Eでは、気流吹付機構12Aにより気流吹付ノズル12から角膜Cに向けて気流を吹き付けられることで、角膜Cの表面が変形して徐々に平らな状態とされていく。そのとき、角膜変形検出光学系50では、上述した設定により、角膜Cの表面が平らとされると進行してきた反射光束の全体がピンホール板51の穴を通してセンサ52に到達し、その他の状態ではピンホール板51で部分的に遮られつつセンサ52に到達する。このセンサ52は、受光した光量のデータを眼圧算出部85に出力する。
【0026】
主制御部81は、気流吹付機構12Aを作動させて、気流吹付ノズル12から被検眼Eの角膜Cに向けて気流を吹き付けさせる。すると、被検眼Eでは、角膜Cの表面が変形して徐々に平らな状態(圧平)とされていく。角膜Cが徐々に平らな状態(圧平)とされていく過程において、角膜Cの表面が平らと(圧平)されるとセンサ52での受光量が最大となる。眼圧算出部85は、センサ52で受光した光量が最大となった時点を検出することにより、角膜Cの表面が平らとされたこと(圧平)を検知できる。そして、眼圧算出部85は、圧平を検出した際の吹き付けた気流の圧力に基づいて、被検眼Eの眼圧を求め(眼圧値を算出し)、その算出結果を主制御部81により適宜表示部5に表示させる。なお、眼圧算出部85では、気流吹付ノズル12(気流吹付機構12A)による気流の吹き付けを開始時点から角膜Cの表面が平らと(圧平)されたことを検知した時点までの時間に基づいて、被検眼Eの眼圧を求める(眼圧値を算出する)ものであってもよい。このため、角膜変形検出光学系50は、気流吹付ノズル12(気流吹付機構12A)、主制御部81および眼圧算出部85と協働して、被検眼Eの眼圧を求める眼圧測定機構として機能する。
【0027】
スリット投影光学系60は、その光軸O2上のスリット光源61、集光レンズ62、スリット63、矩形開口絞り64、ハーフミラー65、投影レンズ66を有する。スリット光源61は、角膜厚さ測定用の測定光LMを出射するもので、後述するZアライメント光源91とは異なる波長帯域の光を出射する。実施例1のスリット光源61は、一例として850nmの波長帯域の赤外光を出射する。このため、スリット投影光学系60は、角膜厚さを測定する測定光LMを被検眼Eに投影する測定光投影系として機能する。スリット63は、投影レンズ66に関して後述する角膜内皮N(
図6参照)と共役な位置に設けられている。投影レンズ66は、矩形開口絞り64に焦点を一致させるように光路上に配置されている。スリット投影光学系60では、スリット光源61からの測定光LMが、集光レンズ62により集光されてスリット63に導かれて、そのスリット63を通過して細長いスリット光束とされる。このスリット投影光学系60は、スリット光束とした測定光LMを、角膜内皮Nにピントが合うように投影する光学的な設定とされている。そのスリット光束とされた測定光LMは、矩形開口絞り64、ハーフミラー65を通過し、投影レンズ66によって角膜Cに投影される。角膜Cに投影された測定光LMの一部は、
図6に示すように、空気と角膜Cの境界面である角膜表面Tで反射され、角膜表面Tを通過した光束の一部は角膜内皮Nで反射される。角膜表面Tからの反射光束LMaの光量は角膜内皮Nからの反射光束LMbの光量よりも100倍程度多くなる。
【0028】
受光光学系70は、
図3に示すように、光軸O3上の対物レンズ71、ラインセンサ72を有する。受光光学系70では、スリット投影光学系60の測定光LM(スリット光束)により角膜表面Tおよび角膜内皮Nで反射された反射光束LMa、LMbが対物レンズ71によって集束されて、ラインセンサ72上に
図7(a)に示すスリット像63Aが形成される。そのスリット像63Aは、光像63aと光像63bとを有する。そのスリット像63Aの光量分布を
図7(b)に示す。その光量分布では、角膜表面Tで反射された反射光束LMaによるピークUが光像63aに対応し、角膜内皮Nで反射された反射光束LMbによるピークVが光像63bに対応している。このラインセンサ72は、各番地情報をZアライメント検出部83(
図2参照)に出力する。Zアライメント検出部83は、ピークU、Vの位置情報(番地情報)を求めて角膜厚さ算出部84へ出力する。角膜厚さ算出部84は、ピークU、Vの位置情報に基づいて角膜Cの厚さを公知の方法によって算出する。このため、スリット投影光学系60は、受光光学系70、Zアライメント検出部83および角膜厚さ算出部84と協働して、被検眼Eの角膜Cの厚さを検出する角膜厚さ測定機構として機能する。なお、受光光学系70では、ラインセンサ72を用いているが、PSD等の位置検出可能な受光センサとしてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0029】
視標投影光学系90は、
図9に示すように、Zアライメント光源91、集光レンズ92、開口絞り93、ピンホール板94を有し、スリット投影光学系60とハーフミラー65および投影レンズ66を共用する。Zアライメント光源91は、Z軸方向(前後方向)のアライメント用のアライメント光LAを出射するものであり、スリット光源61とは異なる波長帯域の光を出射する。実施例1のZアライメント光源91は、一例として770nmの波長帯域の赤外光を出射する。このため、視標投影光学系90は、被検眼Eと装置本体4との前後方向のアライメントのためのアライメント光LAを投影するアライメント光投影系として機能する。開口絞り93は、投影レンズ66に関して角膜頂点Pと共役な位置に設けられている。ピンホール板94は、投影レンズ66の焦点に一致するように配置されている。視標投影光学系90では、Zアライメント光源91からのアライメント光LAが、集光レンズ92により集光されて開口絞り93に達し、この開口絞り93を通過してピンホール板94に導かれる。ピンホール板94を通過したアライメント光LAは、ハーフミラー65で反射して投影レンズ66によって平行光(平行光束)とされて角膜Cに導かれる。
【0030】
このアライメント光LAは、
図8に示すように、角膜表面Tにおいて反射されて輝点像Qを形成する。視標投影光学系90によって投影されたアライメント光LAの角膜表面Tにおけるアライメント反射光LAaは、対物レンズ71によって集束されてラインセンサ72上に輝点像Q’(
図9参照)を形成する。このラインセンサ72上における輝点像Q’の位置、すなわち輝点像Q’としての光量分布の中心位置を各番地の出力から求めることができ、その中心位置から装置本体4の前後方向の位置を求めることができる。このラインセンサ72は、上記のように各番地情報をZアライメント検出部83(
図2参照)に出力する。そのZアライメント検出部83は、輝点像Q’の中心位置の位置情報(番地情報)を求めて主制御部81へ出力する。主制御部81は、輝点像Q’の中心位置の位置情報に基づいて駆動部3のモータ3pを制御して装置本体4を前後方向に移動させることにより、被検眼E(角膜C)に対する装置本体4の前後方向でのアライメントを行うことができる。このため、視標投影光学系90は、受光光学系70、主制御部81およびZアライメント検出部83と協働して、被検眼E(角膜C)に対する装置本体4の前後方向(Z軸方向)の位置を調整するためのZアライメント機構として機能する。なお、このZアライメント機構は、主制御部81の制御下で、輝点像Q’の中心位置の位置情報を表示部5に表示させることもできる。
【0031】
次に、眼科装置1における特徴的な構成について説明する。この例の眼科装置1では、受光光学系70の対物レンズ71に有効径変更部73が設けられている。有効径変更部73は、スリット投影光学系60からの測定光LMの反射光(LMa、LMb)を受光する場合と、視標投影光学系90からのアライメント光LAの反射光(LAa)を受光する場合と、で受光光学系70における有効径を変化させるものである。実施例1の有効径変更部73は、
図10等に示すように、対物レンズ71の入射面71aに形成された反射防止膜74とダイクロイックフィルタ膜75とを有する。
【0032】
反射防止膜74は、光の反射を抑えるものであり、一般的に用いられるものとすることができる。この反射防止膜74は、入射面71aの全域に亘って設けられており、測定光LMの反射光やアライメント光LAの反射光が入射面71aで反射されることを抑える。
【0033】
ダイクロイックフィルタ膜75は、受光光学系70の光軸O3を中心とする円環状とされている。このダイクロイックフィルタ膜75は、光軸O3から半径r1の位置よりも外側であって、外径となる半径r2の位置よりも内側となる領域に設けられている。このダイクロイックフィルタ膜75は、略820nmよりも大きな波長の光を透過する光学特性とされた所謂ロングパスフィルタとされている。このため、ダイクロイックフィルタ膜75は、850nmの波長帯域の赤外光とされた測定光LMを透過させるとともに、770nmの波長帯域の赤外光とされたアライメント光LAの透過を阻む。
【0034】
このため、有効径変更部73は、対物レンズ71において、光軸O3を中心とする半径r1以内の領域では、測定光LMとアライメント光LAとの双方を透過させるとともに、半径r1よりも外側の領域では測定光LMを透過させるとともにアライメント光LAの透過を阻む。これにより、有効径変更部73では、アライメント光LAに対する有効径を半径r1とするとともに、測定光LMに対する有効径を半径r2としている。
【0035】
ここで、半径r1は、受光光学系70において、ラインセンサ72上におけるアライメント光LAの反射光の輝点像Q’(
図9参照)のボケを許容範囲とするために設定される。すなわち、受光光学系70では、上記のように半径r1がアライメント光LAに対する有効径となるが、この有効径が大きいとアライメント光LAによる輝点像Q’がボケてしまう。これは、アライメント光LAが平行光とされて角膜C(被検眼E)に導かれることによる。すなわち、このような構成であると、一般的に物点がずれるとボケが生じ易くなるが、被検眼E(角膜C)の前後方向でのアライメントを行うためのものであることから、物点となる被検眼E(角膜C)がずれた状態で輝点像Q’が形成される場面が多くなる。ここで、上記のように、Zアライメント検出部83は、ラインセンサ72上における輝点像Q’としての光量分布の中心位置を求める必要があるので、輝点像Q’がボケると中心位置の算出が困難となって時間を要したり算出できてもその精度が低下したりする。このため、半径r1は、前後方向でのアライメントを行う場面において、輝点像Q’の中心位置の算出を高い精度で簡易に行うことができる有効径とする観点から設定されている。換言すると、半径r1は、前後方向でのアライメントのために中心位置の算出の観点から、輝点像Q’のボケを許容できるものとするように設定されている。
【0036】
これにより、受光光学系70では、アライメント光LAの反射光が進行すると、対物レンズ71においてダイクロイックフィルタ膜75が設けられていない領域すなわち半径r1以内の領域を透過するとともに、半径r1よりも外側の領域ではダイクロイックフィルタ膜75により遮られる。このため、受光光学系70では、アライメント光LAの反射光に対しては、半径r1の有効径とされている。これにより、受光光学系70は、アライメント光LAの反射光の輝点像Q’がラインセンサ72上でボケることを抑制することができ、Zアライメント検出部83が輝点像Q’の中心位置を適切にかつ迅速に求めることができる。
【0037】
また、受光光学系70では、測定光LMの反射光が進行すると、ダイクロイックフィルタ膜75の有無に拘わらず対物レンズ71の全域(半径r2の領域)を透過する。このため、受光光学系70では、測定光LMの反射光に対しては、半径r2の有効径とされており、大きな有効径で対物レンズ71に入射させることができる。ここで、スリット投影光学系60では、角膜内皮Nにピントが合うようにスリット光束とした測定光LMを投影していることから、大きな有効径としても平行光とされて角膜Cに導かれるアライメント光LAのようにはボケは生じない。また、スリット投影光学系60では、角膜表面Tからの反射光束LMaと角膜内皮Nからの反射光束LMbとの双方を受光光学系70に入射させる必要があるが、それらは互いに間隔を広げるように進行する(
図8参照)ので、その有効径を大きくすることが望ましい。これらのことから、受光光学系70は、大きな有効径とすることにより、反射光束LMaと反射光束LMbとの双方を適切に入射させることができ、Zアライメント検出部83にピークU、Vの位置情報を適切に取得させることができる。
【0038】
次に、このZアライメント検出部83を対物レンズ71に設ける方法の一例について、
図11を用いて説明する。先ず、
図11(a)に示すように、塗布面となる入射面71aを、図示を略す塗布装置側(
図11では上側)に向けて対物レンズ71を配置する。次に、
図11(b)に示すように、入射面71aの全域に対して、反射防止膜74を塗布する。次に、
図11(c)に示すように、反射防止膜74上において、対物レンズ71の光軸(光軸O3に一致される軸線)を中心に半径r1の領域を覆う大きさのマスク部材76を配置する。このマスク部材76は、位置ずれを防ぐように固定することが望ましい。この固定の方法としては、例えば、マスク部材76を磁性を帯びた構成とし、対物レンズ71の出射面71bに磁石77を配置するものとすることができる。なお、マスク部材76は、次に述べるダイクロイックフィルタ膜75の塗布を阻害しないものであれば、他の方法で固定してもよく、実施例1の構成に限定されない。そして、反射防止膜74およびマスク部材76の上からダイクロイックフィルタ膜75を塗布する。すると、
図11(d)に示すように、対物レンズ71の入射面71aには、反射防止膜74の上にダイクロイックフィルタ膜75が重ねられるとともに、そのダイクロイックフィルタ膜75が中央に半径r1の穴が形成されたものとされる。
【0039】
次に、眼科装置の技術の課題について説明する。上記した従来の眼科装置では、測定光投影系とアライメント光投影系とで共通の受光光学系を用いるので、受光光学系における有効径が同じものとなる。しかしながら、適切な角膜厚さの測定のために測定光投影系からの測定光に求められる有効径と、適切で迅速なアライメントのために求められるアライメント光投影系からのアライメント光に求められる有効径と、は異なる。このため、従来の眼科装置は、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定する観点から改良の余地がある。
【0040】
これに対し、本開示の眼科装置1は、被検眼Eからの測定光LMの反射光と被検眼Eからのアライメント光LAの反射光とを受光する受光光学系70に、有効径を変化させる有効径変更部73を設けている。このため、眼科装置1は、共通の受光光学系70を用いるものとしても、測定光LMの反射光とアライメント光LAの反射光とで異なる有効径として受光光学系70に受光させることができる。これにより、眼科装置1は、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することができる。
【0041】
本開示に係る眼科装置の実施例1の眼科装置1は、以下の各作用効果を得ることができる。
眼科装置1は、角膜Cの厚さを測定する測定光LMを被検眼Eに投影する測定光投影系としてのスリット投影光学系60と、被検眼Eと装置本体4との前後方向のアライメントのためのアライメント光LAを投影するアライメント光投影系としての視標投影光学系90と、を備える。また、眼科装置1は、被検眼Eからの測定光LMの反射光(LMa、LMb)と被検眼Eからのアライメント光LAの反射光(LAa)とを受光する受光光学系70を備える。その受光光学系70には、有効径を変化させる有効径変更部73を設けている。このため、眼科装置1は、共通の受光光学系70を用いるものとしても、測定光LMの反射光とアライメント光LAの反射光とで異なる有効径として受光光学系70に受光させることができる。これにより、眼科装置1は、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することができる。
【0042】
また、眼科装置1では、受光光学系70が、被検眼Eに対向される対物レンズ71を有し、測定光LMとアライメント光LAとは異なる波長とされている。また、眼科装置1では、有効径変更部73が、対物レンズ71に円環状に設けられたダイクロイックフィルタ(ダイクロイックフィルタ膜75)で構成され、そのダイクロイックフィルタが、測定光LMを透過させるとともに、アライメント光LAの透過を阻む。このため、眼科装置1は、対物レンズ71において、ダイクロイックフィルタが設けられていない中心部のみでアライメント光LAの反射光を通すことができるとともに、全域で測定光LMの反射光を通すことができる。これにより、眼科装置1は、受光光学系70において、アライメント光LAの反射光に対しては対物レンズ71よりも小さな有効径にできるとともに、測定光LMの反射光に対しては対物レンズ71を有効径にできる。よって、眼科装置1は、受光光学系70上でのダイクロイックフィルタの形状がアライメント光LAの反射光に対する有効径となるので、簡易にかつ適切にアライメント光LAの反射光に対する有効径を設定できる。
【0043】
さらに、眼科装置1では、ダイクロイックフィルタが、対物レンズ71における周辺部への蒸着により形成されたダイクロイックフィルタ膜75とされている。このため、眼科装置1は、簡易な構成としつつ、受光光学系70上におけるダイクロイックフィルタ膜75の形状を適切なものにできるとともに、受光光学系70とダイクロイックフィルタ膜75との位置関係を適切なものにできる。
【0044】
眼科装置1では、ダイクロイックフィルタ膜75を、対物レンズ71の入射面71aに設けている。このため、眼科装置1は、ダイクロイックフィルタ膜75を設けることに起因して、対物レンズ71内への反射等による迷光(意図しない光)が生じることを抑制できる。これは、対物レンズ71の出射面71bにダイクロイックフィルタ膜75を設けた場合、そのダイクロイックフィルタ膜75で反射した光が対物レンズ71内に進行して迷光となる虞があることによる。特に、実施例1の対物レンズ71では、対物レンズ71の入射面71aに反射防止膜74を設けていることから、同じ入射面71aにダイクロイックフィルタ膜75を重ねて設けることにより、そのダイクロイックフィルタ膜75に起因する迷光をより効果的に抑制できる。
【0045】
したがって、本開示に係る眼科装置の一実施例としての眼科装置1では、適切で迅速なZアライメントを行ってから角膜厚さを適切に測定することができる。
【0046】
以上、本開示の眼科装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0047】
例えば、実施例1では、有効径変更部73を、対物レンズ71に設けたダイクロイックフィルタ膜75としている。しかしながら、有効径変更部73は、受光光学系70において、測定光LMの反射光(LMa、LMb)に対する有効径と、アライメント光LAの反射光(LAa)に対する有効径と、を変化させるものであればよく、実施例1の構成に限定されない。例えば、有効径変更部は、受光光学系70にメカニカルな絞り機構を設けるものとしてもよい。このメカニカルな絞り機構は、開口の径寸法の物理的に変更が可能とされおり、主制御部81の制御下または手動により径寸法が変化されるものにできる。また、有効径変更部は、対物レンズ71とは別体とされたダイクロイックフィルタとされていてもよい。
【0048】
また、実施例1では、スリット投影光学系60からの測定光LMを850nmの波長帯域の赤外光とするとともに、視標投影光学系90からのアライメント光LAを770nmの波長帯域の赤外光とし、ダイクロイックフィルタ膜75を略820nmよりも大きな波長を透過するロングパスフィルタとしている。しかしながら、上記のようにアライメント光LAの反射光への有効径を小さくしつつ測定光LMの反射光への有効径を大きくするものであれば、それぞれの波長帯域やダイクロイックフィルタ膜75(別体のダイクロイックフィルタでも同様)の光学特性は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。例えば、測定光LMの波長帯域をアライメント光LAの波長帯域よりも小さくするとともに、ダイクロイックフィルタ膜75(ダイクロイックフィルタ)をそれらの中間の波長帯域よりも小さな波長の光を透過するショートパスフィルタとしてもよい。また、ダイクロイックフィルタ膜75(ダイクロイックフィルタ)は、アライメント光LAの波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルタとしてもよい。
1 眼科装置 4 装置本体 60 (測定光投影系の一例としての)スリット投影光学系 70 受光光学系 71 対物レンズ 71a 入射面 73 有効径変更部 75 ダイクロイックフィルタ膜 90 (アライメント光投影系の一例としての)視標投影光学系 E 被検眼 LA アライメント光 LM 測定光