(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140489
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】吸音パネル
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20241003BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E01F8/00
E04B1/86 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051645
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】雪上 義生
(72)【発明者】
【氏名】萩原 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
【テーマコード(参考)】
2D001
2E001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA02
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB02
2D001CC02
2D001CD01
2E001DF04
2E001GA12
2E001GA42
2E001HB04
(57)【要約】
【課題】パネル全体が高い剛性を備える吸音パネルを提供する。
【解決手段】前面板と背面板との間に吸音材を配置した吸音パネルにおいて、前記背面板の幅方向の端部に接続部を形成し、この接続部に前記前面板を当接して固定しており、前記接続部を第一板部と、この第一板部に接続して略180度屈曲する折曲部と、この折曲部から延設して前記第一板部に重なる第二板部とを備えるはぜ折り状に形成し、前記第一板部及び第二板部のいずれか一方の外面に前記前面板の当接部を当接して固定する。
背面板の幅方向の端部に、はぜ折り状に形成した接続部を形成するので、背面板の剛性が向上し、吸音パネル全体の剛性が向上する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開口を有する前面板と、遮音板として機能する背面板との間に吸音材を配置した吸音パネルであって、
前記背面板は幅方向の端部に接続部が形成され、該接続部に前記前面板が当接されて固定されており、
前記接続部は、第一板部と、該第一板部に接続して略180度屈曲する折曲部と、該折曲部から延設されて前記第一板部に重なるように配置される第二板部とを備えるはぜ折り状に形成され、
前記第一板部及び第二板部のいずれか一方の外面に前記前面板の当接部が当接して固定されていることを特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記背面板は、前記吸音パネルの後面を構成する基板部と、該基板部の幅方向の端部から前方側へ屈曲して延設される側板部と、該側板部から幅方向内側へ屈曲して延設される前端部を備え、前記側板部の幅方向内側に配置される前記前端部に前記接続部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記前面板は、はぜ折り状に形成された背面板の前記第一板部、前記第二板部、及び前記当接部を全て貫通する締結部材によって前記背面板に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い剛性を備える吸音パネルを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
防音壁などを構成する吸音パネルについては、箱状に形成した本体の内部に吸音材を内装する構成が従来から利用されており、種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、騒音吸収用の複数の孔口を有し上縁部隊横方向に段部が形成されている前面板に後方へ下り勾配の天板を一体に設け、背面板には前方へ天板の勾配と同様の上り勾配で前面側縁部で下方へ屈曲した鍔のある底板を連設し、これらを結合して平行四辺形状の縦断面形状で前面の下縁部に顎をまた上縁部にこの顎と同様の顎に適合する段部を有する筐体を形成し、該筐体内の前面板帯りに吸音材を固定配置して吸音材と背面板内面との間に間隙を形成し、上記筐体の両側部を側板により閉鎖してなることを特徴とする防音壁体の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、ほぼ平行に配置した背面板5と前面板1との間に吸音材9を配置し、この背面板5の下端に一体成形した底板7の前面側縁部7bで下方へ屈曲して顎7cを形成すると共に、前面板1の下縁部を折り曲げて前記顎7cを包み込み両者をハゼ折り接合で結合する構成が
図1等に記載されている。
【0006】
本発明は、これとは異なる構成により高い剛性を備える吸音パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る吸音パネルは、多数の開口を有する前面板と、遮音板として機能する背面板との間に吸音材を配置した吸音パネルであって、前記背面板は幅方向の端部に接続部が形成され、該接続部に前記前面板が当接されて固定されており、前記接続部は、第一板部と、該第一板部に接続して略180度屈曲する折曲部と、該折曲部から延設されて前記第一板部に重なるように配置される第二板部とを備えるはぜ折り状に形成され、前記第一板部及び第二板部のいずれか一方の外面に前記前面板の当接部が当接して固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る吸音パネルによれば、背面板の幅方向の端部に、第一板部と、この第一板部に接続して略180度屈曲する折曲部と、この折曲部から延設して前記第一板部に重なるように配置する第二板部とを備えるはぜ折り状に形成した接続部を形成するので、背面板の剛性が向上する。また、前記接続部を遮音板として機能する背面板に形成し、前記第一板部及び第二板部のいずれか一方の外面に前記前面板の当接部を当接して固定するので、吸音パネル全体の剛性が向上する。
【0009】
また、前記背面板に、吸音パネルの後面を構成する基板部と、この基板部の幅方向の端部から前方側へ屈曲して延設する側板部と、この側板部から屈曲して延設させる前端部を備えさせ、この前端部に前記接続部を形成すれば、吸音パネルの前部に配置した接続部に前面板を容易に当接させて固定できるので、好ましい。また、前記接続部を形成する前端部を前記側板部から幅方向内側へ屈曲して延設すれば、前面板を当接させて固定する接続部が吸音パネルの幅方向の端より内側に配置されるので、隣接する吸音パネルや他の部材に前記接続部が接触しにくくなされ、接触による損傷などを抑制できるので、好ましい。
【0010】
また、はぜ折り状に形成した背面板の前記第一板部、前記第二板部、及び前記当接部を全て貫通する締結部材によって前記前面板を前記背面板に固定すれば、前記締結部材をより強固に背面板へ固定することができるので、好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸音パネルによれば、吸音パネル全体に高い剛性を備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る吸音パネルの実施の一形態を示す正面図である。
【
図5】
図1の吸音パネルの長手方向の端部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は本発明に係る吸音パネル1の実施の一形態を示す正面図であり、
図2は
図1の底面図であり、
図3は
図1のA-A断面図である。
吸音パネル1は略矩形箱形に形成しており、内側に収納する吸音材10によって騒音等を低減するように設けている。
以下の説明において、
図1の左右方向を長手方向とし、長手方向に対して垂直な
図1の上下方向を幅方向とし、長手方向と幅方向に垂直な方向を前後方向とする。
【0014】
図1~3に示す吸音パネル1は、前面板4と背面板5を備えている。
前面板4の基板部41と背面板5の基板部51は、それぞれ吸音パネル1の前面と後面を構成し、基板部41と基板部51との間に前記吸音材10を配置している。吸音材10は、後方のスペーサー11によって基板部41側寄りに配置しており、吸音材10と基板部51との間に隙間が形成されるように設けている。
前面板4は、基板部41に丸孔形状の貫通孔41aを略全面に亘って形成しており、吸音パネル1の前方側からの騒音が貫通孔41aを通じて内側へ至り、吸音材10によって低減されるように設けている。前記前面板4は平板状の金属板で形成しており、具体的にはアルミニウムの平板材で形成している。
尚、
図1や後述する
図5では、貫通孔41aを一部のみ図示しており、図面を簡略化している。
【0015】
背面板5は、平板状の金属板で形成しており、具体的にはめっき鋼板で形成して、前記基板部51が遮音板として機能するように設けている。
背面板5は、基板部51の幅方向の端から屈曲して前方へ延設する側板部52を形成している。
側板部52は基板部51の幅方向の両側にそれぞれ設けており、各側板部52が吸音パネル1の幅方向側の側面を構成する。
各側板部52には、外面が幅方向内側へ窪む溝52aを形成しており、各溝52aは側板部52の長手方向の全長に亘って形成している。吸音パネル1は幅方向両側の各溝52aのうち一方にパッキンPを取り付けており、吸音パネル1を幅方向に複数並設させたときに、前記パッキンPが隣接する吸音パネル1の溝52a内へ係合するように挿入されて、各吸音パネル1の間の隙間を効果的に塞ぐように設けている。
【0016】
前記各側板部52には、その前方側の端から屈曲して幅方向内側へ延設する前端部53をそれぞれ形成している。
前記前面板4は、基板部41の幅方向両側の端部を当接部41bとして前記前端部53の外面へ当接させ、当接部41bと前端部53を貫通するブラインドリベットからなる締結部材9によって背面板5へ固定している。背面板5の前記各前端部53は前面板4の当接部が当接して固定される接続部として機能する。
【0017】
図4は
図3の図中上側の端部を拡大した図である。
図4や、後述する
図6においては、前面板4の前記貫通孔41aの図示を省略して、図面を簡略化している。
前面板4は、基板部41の各当接部41bの端から屈曲して後方へ延設する側板部42を形成している。各側板部42は前面板4の略全長に亘って形成しており、前記背面板4の各側板部52の外面に沿うように形成している。
【0018】
背面板5の前記各前端部53は、所謂はぜ折り形状に形成している。
具体的には、各前端部53は、前記側板部52の端から幅方向内側へ向けて延設する第一板部55を有し、この第一板部55の端から折り返されるように略180度屈曲する折曲部57と、この折曲部57から延設して前記第一板部55に重なるように配置する第二板部56を備えている。
背面板5は、幅方向両側の端にそれぞれ形成した前端部53を上記のようにはぜ折り状に設けることで剛性が向上している。吸音パネル1は背面板5の剛性が向上することで、吸音パネル1全体の曲がりやねじれ等の変形が生じにくくなされている。
【0019】
前記前面板4は、背面板5の前端部53の前面を構成する第一板部55の外面へ当接部41bを当接させ、この当接部41bと第一板部5と前記第二板部56を貫通する前記締結部材9によって、背面板5へ固定している。
前端部53をはぜ折り状に形成することで剛性を向上させているため、吸音パネル1が強風を受けたり走行車両に起因する振動が伝達される等して外力を受けた時においても前記前端部53の変形や破損が抑制される。即ち、前端部53のはぜ折り状に形成した部位に貫通させて前記締結部材9を取り付けることで、吸音パネル1が外力を受けた場合でも締結部材9の脱離が抑制され、前面板4と背面板5との固定を良好に維持できる。
【0020】
前記背面板5は前記前面板4よりも単位面積当たりの重量が大きい金属板で形成している。
また、
図3、4に示すように、背面板5の前端部53をはぜ折り状に形成することで、背面板5を形成する金属板の端である第二板部56の端部が、吸音パネル1の内側において前記側板部52の近傍に配置される。このように前端部53を形成することで、吸音材10が前記第二板部56の端部へ接触しにくくなされるので、吸音材10が損傷しにくくなされる。
【0021】
吸音パネル1は、長手方向両側の端部に端部材2をそれぞれ固定している。
図5は
図1の吸音パネル1の長手方向の端部を拡大した図であり、
図6は
図5のA-A断面図である。
端部材2は、めっき鋼板からなる金属板を曲げ加工して断面略コの字形状に形成しており、矩形板状の基板部21と、その前方側の端から屈曲して長手方向外側へ突出する矩形板状の接合部24と、基板部21の後方側の端から屈曲して長手方向外側へ突出する矩形板状の接合部25を備えている。
【0022】
端部材2は、接合部24の板面を前記基板部41に沿うように配置し、両部材を貫通するブラインドリベットからなる締結部材8によって前面板4へ固定している。前記接合部24と基板具21との間には、前記背面板5の前端部53の前後方向の大きさに対応する厚みを有する平板状のスペーサー(図示せず)を配置しており、前記接合部24の板面が前記スペーサーと前記第二板部56とに当接するように設けている。
また端部材2は、接合部25の板面を前記基板部51へ当接させ、両部材を貫通する締結部材8によって背面板5へ固定している。
各端部材2は、前記前面板4と背面板5とで構成される断面略矩形の筒体の長手方向両側の開口を前記基板部21で塞ぐように固定している。換言すると、吸音パネル1は、前面板4と背面板5と各端部材2によって矩形箱状に形成しており、前記吸音材10をその中空内に内装している。
【0023】
前記各端部材2は、前面板4の端から長手方向外方へ突出する設置部20を形成している。設置部20は、前記接合部24の端部で形成しており、矩形平板状の突出片に形成している。また、各設置部20には、前後方向に貫通する貫通孔20aを形成している。
吸音パネル1は、各設置部20を設置場所の支持部材へ当接させ、各貫通孔20aへ挿通するボルト等の締結部材によって前記支持部材へ固定し設置するように設けている。
また、支持部材へ当接させる各設置部20の後面には平板状のパッキンP2を取り付けている。
吸音パネル1は、長手方向を横方向へ向け、横方向へ間隔をあけて設置させた鉛直方向へ延びる各支持部材に架設させて設置するように設けているが、長手方向を上下へ向けて支持部材へ固定することもできる。
【0024】
尚、本発明に係る吸音パネル1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 吸音パネル
10 吸音材
11 スペーサー
2 端部材
20 設置部
21 基板部
24 接合部
25 接合部
4 前面板
41 基板部
41b 当接部
42 側板部
5 背面板
51 基板部
52 側板部
53 前端部
55 第一板部
56 第二板部
57 折曲部