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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140495
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電池監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051656
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】朝長 幸拓
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB02
5G503DB02
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】電池モジュールの消費電力を極力平準化しながら異常の有無を監視できるようにした電池監視システムを提供する。
【解決手段】電池監視システム1は、複数の監視回路41~43、マイコン10、及び通信ブリッジ20を備える。複数の監視回路41~43は、それぞれ絶縁通信経路50を通じて直列接続されると共に割り当てられた担当の電池モジュール36~38の電力を使用し当該電池モジュールに関するデータを取得する。通信ブリッジ20は、電池モジュール36~38とは異なる電源を用いてマイコン10とは自律して低消費電力モードから起動し、電池35に関するデータの取得を監視回路41~43へ指示し通信によりデータを取得する。通信ブリッジ20は取得したデータに基づいて電池35の状態が異常か否かを判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池モジュールを備える電池(35)を監視する電池監視システムであって、
それぞれ通信経路(50)を介して直列接続されると共にそれぞれ割り当てられた担当の電池モジュール(36~38)の電力を使用し当該電池モジュールに関するデータを取得する複数の監視回路(41~43)と、
通常動作時には前記電池の状態を監視するマイコン(10)と、
前記複数の監視回路のうち少なくとも一つの監視回路と前記通信経路を介して接続される回路であり前記マイコンがスリープ中には前記通常時よりも低消費電力の低消費電力モードに移行するように構成される通信ブリッジ(20)と、を備え、
前記通信ブリッジは、前記電池モジュールとは異なる電源を用いて前記マイコンとは自律して前記低消費電力モードから起動し、
前記電池に関する前記データの取得を指示する指示部(20a)と、
前記複数の監視回路から通信により前記データを取得する取得部(20b)と、
前記取得した前記データに基づいて前記電池の状態が異常か否かを判定する判定部(20c)と、
を備える電池監視システム。
【請求項2】
前記マイコンが前記スリープ中には前記複数の監視回路は低消費電力モードに移行しており、
前記通信ブリッジは、前記通信経路を通じて前記低消費電力モードにある前記監視回路を起動させる請求項1記載の電池監視システム。
【請求項3】
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を異常と判定した場合、前記マイコンを起動するための起動信号を前記マイコンへ通知する請求項1記載の電池監視システム。
【請求項4】
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を異常と判定した場合、前記マイコンに電源を供給する電源回路(5)を起動させるための起動信号を前記電源回路に送信し、前記電源回路を起動させることで前記マイコンを起動させる請求項1記載の電池監視システム。
【請求項5】
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を正常と判定した場合、前記通信ブリッジは自身で前記低消費電力モードへ移行する請求項1記載の電池監視システム。
【請求項6】
前記通信ブリッジは、取得した前記データをメモリ(21)に記憶させる請求項1記載の電池監視システム。
【請求項7】
前記マイコンは前記スリープからウェイクアップした後に、前記メモリに記憶された前記データを読み出し、前記電池の状態判定に使用する請求項6記載の電池監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車(EV)などの車両は、例えばリチウムイオン電池など車両走行用の組電池を搭載している。組電池は、電池モジュールを組合わせた構成であり、一般に、監視回路を搭載した監視モニタが各電池モジュールの状態を監視し、監視回路が電池の状態に異常があるか否かを判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来技術によれば、電池監視システムの回路構成が低消費電力モードで動作している場合、マイコンがスリープ中には当該マイコンに対してリング状に絶縁接続された監視回路のうちトップに位置する監視回路がマスタとして機能する。そしてマスタとなる監視回路が、スレーブとなる監視回路を一つだけウェイクアップさせる。そしてウェイクアップした監視回路が電池モジュールに異常の有無があるか否かを監視し、その結果を次のスレーブの監視回路に送信する。複数の監視回路は、このようなウェイクアップ及び監視シーケンスを順に繰り返すことで各電池モジュールに関する異常の有無を判定している。
【0004】
この技術では、電池監視システムの回路構成が低消費電力モードで動作している場合、任意の監視回路がマスタに指定され、それ以外の監視ICはスレーブとなる。マスタは規定時間に到達すると起動する必要があるため、スリープ中にカウントアップ動作する必要がある。よってカウントアップ動作分消費電流が増加してしまう。
【0005】
他方、スレーブ側では、カウントアップする必要がないためマスタとスレーブの動作が異なり、監視する電池スタックごとに消費電流の差が発生する。このため、マスタとなる監視回路の消費電力が増大しやすくなる。電池モジュールは消費電力を平準化することが求められているが、電池モジュールの消費電力の平準化することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第11340975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、電池モジュールの消費電力を極力平準化しながら異常の有無を監視できるようにした電池監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の電池監視システムは、複数の監視回路、マイコン、及び通信ブリッジを備える。複数の監視回路は、それぞれ通信経路を介して直列接続されると共に割り当てられた担当の電池モジュールの電力を使用し当該電池モジュールに関するデータを取得する。マイコンは、通常時には複数の監視回路に電池の監視を指示し電池の状態の監視を行う。通信ブリッジは、複数の監視回路のうち少なくとも一つの監視回路と通信経路を介して接続されておりデータの取得を指示する回路であり、マイコンがスリープ中には通常時よりも低消費電力の低消費電力モードの状態に移行する。
【0009】
通信ブリッジは、電池モジュールとは異なる電源を用いてマイコンとは自律して低消費電力モードから起動し、電池に関するデータの取得を監視回路へ指示し、複数の監視回路から通信によりデータを取得する。そして、通信ブリッジは取得したデータに基づいて電池の状態が異常か否かを判定する。
【0010】
したがって監視回路は、低消費電力モードから起動しデータの取得を行うものの電池の異常の有無を判定することはなく検出のみ実行することになる。通信ブリッジは、低消費電力モードから起動すると、複数の監視回路から通信によりデータを取得し、電池の状態が異常か否かを判定する。
【0011】
通信ブリッジが、複数の監視回路から取得されたデータに基づいて異常か否かを判定することから、マイコンを起動することなく異常判定できる。電池モジュールの電力を消費するそれぞれ監視回路の起動時間を平準化でき、電池モジュールの消費電流のばらつきを最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の電池監視システムを概略的に示す電気的構成図
図2】通信ブリッジ及び監視回路の内部構成を概略的に示す電気的構成図
図3】動作を概略的に説明するフローチャート
図4】正常時における信号の送受信シーケンスの説明図
図5】異常時における信号の送受信シーケンスの説明図
図6】異常通知方法の説明図その1
図7】異常通知方法の説明図その2
図8】電池データの読み出し方法の説明図その1
図9】電池データの読み出し方法の説明図その2
図10】比較例における通信ブリッジ及び監視回路の内部構成を概略的に示す電気的構成図
図11】第2実施形態を示す通信接続態様の構成例その1
図12】通信接続態様の構成例その2
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。複数の実施形態について同一又は類似の構成部分には同一又は類似符号を付して説明を省略することがある。
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1から図10を参照しながら説明する。電池監視システム1は、マイコン10、通信ブリッジ20、記憶デバイス21、電池35、複数の監視回路41~43、及び、絶縁通信経路50を備える。電池35は、組電池とも称されている。電池35は、電池モジュール36~38を直列接続して構成されている。電池モジュール36~38を直並列接続してもよい。電池モジュール36~38は電池スタックとも称される。
【0015】
電池モジュール36~38には、監視回路41~43がそれぞれ予め割り当てられており、監視回路41~43は、それぞれ電池モジュール36~38の電力を使用して動作する。監視回路41~43はそれぞれ割り当てられた担当の電池モジュール36~38に関するデータを取得する。
【0016】
絶縁通信経路50が、通信ブリッジ20-監視回路41間、監視回路41-監視回路42間、監視回路42-監視回路43間にそれぞれ構成されている。例えば、通信ブリッジ20と監視回路41~43との間は、デイジーチェーン接続されている。これにより、通信ブリッジ20と複数の監視回路41~43の間は互いに絶縁通信可能になる。
【0017】
絶縁通信経路50は、絶縁素子としてコンデンサC1~C4を用いて絶縁経路を構成している。絶縁素子は、コンデンサC1~C4により構成される形態を示しているが、コンデンサC1~C4に代えてトランスを用いてもよい。通信ブリッジ20は、マイコン10と複数の監視回路41~43との間の通信方式を変換する回路である。通信ブリッジ20は、マイコン10からデータの取得指示を受け付けると、複数の監視回路41~43へデータの取得を指示する。
【0018】
複数の監視回路41~43は、互いに直列接続されている。監視回路41~43は、各電池モジュール36~38を構成する電池セルの電圧を検出できるようにそれぞれ接続されている。監視回路41~43には、それぞれ監視する対象の電池モジュール36~38が割り当てられている。
【0019】
複数の監視回路41~43は、それぞれ、電池監視ICを主体として構成されている。ここでは、監視回路41~43は、IC化されている形態を示すがその限りではない。監視回路41~43は同様の構成であるため、監視回路41の機能的構成を説明する。
【0020】
監視回路41は、図2に例示したように、電池データ取得回路47、通信I/F48、及び49を備える。電池データ取得回路47は、それぞれ電池モジュール36~38のうち予め割り当てられた担当の電池モジュール36に関するデータ(以下、電池データと称す)を取得する。電池データは、対応する電池モジュール36~38を構成する各電池セルの電圧データ、その配置位置情報、監視回路41~43の識別情報(ID情報)、取得した時刻を判別する情報、電池35から放出されるガスの検知データなどを示す。監視回路41の通信I/F48、49は、他の監視回路42、43や通信ブリッジ20との間で通信するためのインタフェースであり、通信バッファを内蔵している。
【0021】
監視回路41~43は、電池モジュール36~38の各電池セルの電圧を検出する機能と共に、その他、電池モジュール36~38の各電池セルの電圧を均等化するための均等化機能、電池モジュール36~38の温度を検出する機能を備えている。監視回路41~43は、それぞれこれらの少なくとも何れか一つ以上を備えていればよい。
【0022】
<マイコン10の機能説明>
マイコン10は、電池35とは異なるバッテリ4(「電源」相当:補機電池)から電源回路5を通じて電源供給を受けて動作する。マイコン10は、通常動作時において通信ブリッジ20を通じて複数の監視回路41~43に電池35に関するデータ取得指示を行う。マイコン10は、通常動作時において複数の監視回路41~43から電池35に関するデータを取得すると共に、電池35の通電電流を検出し、セル電圧及びセル電流に基づいて電池35の電池セルのSOC、SOHを推定する。
【0023】
SOHはStates Of Healthの略であり、電池35の劣化状態を表す指標である。SOCはState Of Chargeの略であり、電池35の充電状態を表す指標である。またマイコン10は、たとえば、電池35の各電池セルの開放電圧を互いに比較し、一定範囲内になっているか否かを判定することで電池セルの異常を検出できる。
【0024】
例えば上位のECU(図示せず)がイグニッションスイッチオフを検知するとマイコン10に指令することで、マイコン10をスリープモードに移行させる。マイコン10をスリープへ移行させる場合、マイコン10へ電源供給する電源回路5の動作そのものをシャットダウンするようにしてもよいし、マイコン10へ指示することでスリープモードへ移行させるようにしてもよい。これにより、マイコン10の消費電力を抑制でき低消費電力化できる。
【0025】
<通信ブリッジ20の機能説明>
通信ブリッジ20は、複数の監視回路41~43に直列接続、縦続接続されている。通信ブリッジ20は、電池35とは異なるバッテリ4から電源供給を受けて動作する。通信ブリッジ20は通信用ICにより構成されており、記憶デバイス21に接続されている。ここでは、通信ブリッジ20はIC化されている形態を示すが、その限りではない。通信ブリッジ20は、図2に例示したように、判定部20cとしての異常判定回路22、監視回路制御部23、電池データ保持回路24、異常判定閾値保持回路25、タイマ26、通信方式変換部27、通信I/F28、29、及びI/F31を備える。
【0026】
通信I/F29は、接続された監視回路41との間の通信インタフェースを示し、絶縁通信方式にしたがって監視回路41とデータ通信する。通信I/F28は、接続されたマイコン10との間の通信インタフェースを示し、定められた通信方式にしたがってマイコン10とデータ通信する。
【0027】
通信方式変換部27は、通信I/F28と通信I/F29との間で通信方式を変換するブロックを示す。通信方式変換部27は、マイコン10との間の通信方式を監視回路41との間の絶縁通信に適した通信方式に変換する。また逆に、通信方式変換部27は、監視回路41との間の絶縁通信に適した通信方式をマイコン10との間の通信に適した通信方式に変換する。
【0028】
タイマ26は、通信ブリッジ20が低消費電力モードに移行すると時間をカウントし、所定の時間を経過するとモニタ開始信号を監視回路制御部23に出力する。監視回路制御部23は、モニタ開始信号をタイマ26から入力すると、通信I/F29を通じて監視回路41~43に起動信号を出力したり、データの取得を指示する指示信号を出力したりする。
【0029】
電池データ保持回路24は、所謂バッファメモリにより構成されており、通信I/F29を通じて監視回路41~43から取得した電池35に関する電池データを保持する。ここでの電池データは、電池モジュール36~38を構成する各電池セルの電圧データとその位置情報、取得した対象となる監視回路41~43の識別情報(ID情報)などを挙げることができる。また電池データは、電池モジュール36~38の温度データ、それらの取得時間、電池35から放出されるガスの検知データ、などを挙げることができる。電池データ保持回路24は、通信I/F30を通じて記憶デバイス21に対して不揮発的に電池データを書き込む。
【0030】
記憶デバイス21は、EEPROMなどの不揮発性メモリICにより構成されている。記憶デバイス21はEEPROMにより構成されている形態を示すが、その限りではなく、不揮発性メモリを備えていれば、どのようなメモリであってもよい。
【0031】
異常判定閾値保持回路25は、異常判定用の閾値を保持するもので、例えば電池セルの電圧の閾値を保持したり、電池モジュール36~38の温度の閾値を保持したりする。異常判定回路22は、電池データ保持回路24の保持データと、異常判定閾値保持回路25が保持する異常判定用の閾値とを比較し異常の有無を判定する。例えば、電池モジュール36~38の各電池セルの電圧の閾値と比較することで、ある所定の範囲に電圧が収まっているか否かを判定することで異常の有無を判定する。
【0032】
異常判定回路22は、異常ありと判定するとI/F31を通じてマイコン10又は電源回路5に異常通知可能になっている。通信ブリッジ20がマイコン10へ送信するデータは、記憶デバイス21に記憶された電池データに基づく時系列データなどである。具体的には、電池モジュール36~38の温度データ、各電池セルの電圧データなどに基づく、時間経過に対する温度の変化、電池セルの電圧変化のデータ、及び電池35から放出されるガスの検知データの時系列データなどを挙げることができる。
【0033】
通信ブリッジ20は、前述の図2に示したようにブロック構成されているが、機能的には図1に示したように、指示部20a、取得部20b、判定部20cとしての機能を備えると言い表すことができる。指示部20aは、マイコン10とは自律して低消費電力モードから起動し電池35に関するデータの取得を監視回路41~43へ指示する機能である。取得部20bは、監視回路41~43から通信によりデータを取得する機能である。判定部20cは、取得したデータに基づいて電池35の状態が異常か否かを判定する機能である。
【0034】
前述の構成について、マイコン10のスリープ中の動作を主に説明する。前述したように、通常動作時においてマイコン10は電池35の状態を取得すると電池35の状態を詳細に監視できる。マイコン10は消費電力の抑制のためスリープすると、通信ブリッジ20及び複数の監視回路41~43もまた通常より消費電力の低い低消費電力モード状態に移行する。通信ブリッジ20及び複数の監視回路41~43もまた低消費電力モード状態に移行すれば、電池監視システム1の全体の消費電力を抑制でき低消費電力化できる。
【0035】
<マイコン10のスリープ中における正常時の監視動作>
図3に示す監視回路41~43の処理内容と共に、正常時(図4)及び異常時(図5)の動作を説明する。図4のS101に示すように、低消費電力モードにおいて、通信ブリッジ20は、タイマ26のカウントを実行することで所定時間が到来すると自律して起動する(図3のS1、図4及び図5のS102)。
【0036】
通信ブリッジ20は、絶縁通信経路50を通じて複数の監視回路41~43に対して起動信号を送信することで低消費電力モードにある監視回路41~43をそれぞれ起動させる(図3のS2、図4及び図5のS103)。
【0037】
通信ブリッジ20は、絶縁通信経路50を通じて複数の監視回路41~43に対してデータ取得コマンドを送信する。複数の監視回路41~43は、それぞれデータ取得コマンドを受信する(図4及び図5のS104)。複数の監視回路41~43は、データ取得コマンドに応じて電池データを取得する(図3のS3、図4及び図5のS105)。
【0038】
続いて、通信ブリッジ20はデータリードコマンドを送信する。複数の監視回路41~43は、それぞれデータリードコマンドを受信する(図4及び図5のS106)。複数の監視回路41~43は、データリードコマンドに応じて取得した電池データを通信ブリッジ20に送信する(図3のS4、図4及び図5のS107)。なお、電池データの送信方法の具体例については、第2実施形態でまとめて説明する。通信ブリッジ20は、複数の監視回路41~43から電池データを受信、取得する(図3のS4)。通信ブリッジ20は、電池データ保持回路24に電池データを保持する。
【0039】
続いて、通信ブリッジ20は、低消費電力モードへの移行コマンドを複数の監視回路41~43へ送信する。複数の監視回路41~43は、それぞれ低消費電力モード移行コマンドを受信する(図4及び図5のS108)。すると複数の監視回路41~43は、低消費電力モードに移行する(図4及び図5のS109)。
【0040】
通信ブリッジ20は、記憶デバイス21に電池データを送信して記録させる(図4のS110、図5のS110a)。通信ブリッジ20は、電池データが電池35の異常を示しているか否かを判定する(図3のS5、図4のS111、図5のS111a)。具体的には、通信ブリッジ20の異常判定回路22は、電池データ保持回路24に保持された電池データと、異常判定閾値保持回路25に保持された閾値とを比較して閾値を上回っているか否かを判定する。
【0041】
通信ブリッジ20の異常判定回路22が、電池35の異常を示しておらず正常と判定すると、通信ブリッジ20が自身で低消費電力モードへ移行する(図3のS7、図4のS112)。
【0042】
逆に、通信ブリッジ20の異常判定回路22が、電池35の状態を異常と判定すると、マイコン10を起動させる(図3のS6、図5のS111a)。通信ブリッジ20は、異常判定回路22により電池35の状態を異常と判定した場合、図6に示すように、マイコン10に電源を供給する電源回路5を起動させるための起動信号を電源回路5に送信する。そして通信ブリッジ20は、電源回路5を起動させることでマイコン10を起動させるとよい。このとき、通信ブリッジ20が異常通知トリガをマイコン10及び電源回路5へ送信することで電源回路5からマイコン10へ電源供給を開始するように指示するとよい。
【0043】
また図7に示すように、通信ブリッジ20は、異常判定回路22により電池35の状態を異常と判定した場合、マイコン10を起動するための起動信号をマイコン10へ通知し、マイコン10を起動させるようにしてもよい。このとき電源回路5はマイコン10へ電源供給し続けるようにするとよい。
【0044】
通信ブリッジ20は、電池35に異常を生じている旨をマイコン10へ通知する(図3のS8)。マイコン10は、電池35に異常を生じている旨が通知されると異常に基づく処置を実施する。
【0045】
このとき、マイコン10はスリープからウェイクアップした後に、記憶デバイス21に記憶されたデータを読み出し、電池35の状態判定(SOH等)に使用する。マイコン10は、各監視回路41~43から電池35の電池データの詳細を取得できるため、電池35にどのように異常を生じたか詳細に判断できる。
【0046】
また図9に示すように、通信ブリッジ20が記憶デバイス21に電池データを書き込み、マイコン10が記憶デバイス21に書き込まれた電池データを読み出してもよい。通信ブリッジ20には記憶デバイス21が外付けされている。このため、たとえ通信ブリッジ20が、電池データを記憶デバイス21に書き込んだ後、低消費電力モードに移行した場合であっても、マイコン10が通信ブリッジ20の外付けの記憶デバイス21を簡単に参照できる。これにより、マイコン10は、電池35に関する詳細な測定(例えば、SOH測定)に役立たせることができる。なお、記憶デバイス21は通信ブリッジ20に内蔵されていてもよい。
【0047】
<本実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、通信ブリッジ20は、マイコン10とは自律して低消費電力モードから起動し、電池35に関するデータの取得を監視回路41~43へ指示する(指示部20aの機能)。通信ブリッジ20は、複数の監視回路41~43から通信により電池データを取得する(取得部20bの機能)。通信ブリッジ20は読み出した電池データに基づいて異常判定回路22により電池35の状態が異常か否かを判定する(判定部20cの機能)。
【0048】
したがって、監視回路41~43は、低消費電力モードから起動しデータの取得を行うものの電池35の電池モジュール36~38の異常の有無を判定することはなく検出のみ実行することになる。通信ブリッジ20は、バッテリ4の電力を使用して低消費電力モードから起動すると、複数の監視回路41~43から通信によりデータを取得し、電池35の状態が異常か否かを判定する。通信ブリッジ20が、複数の監視回路41~43から取得されたデータに基づいて異常か否かを判定することから、マイコン10を起動することなく異常判定できる。
【0049】
通信ブリッジ20がマスタとして機能すると共に監視回路41~43がスレーブとして機能する。このため、電池モジュール36~38の電力を消費する監視回路41~43の起動時間を平準化でき、電池モジュール36~38の消費電流のばらつきを最小限に抑制できる。
【0050】
また通信ブリッジ20は、マイコン10に依存することなく自律的に測定し、異常を生じたときだけマイコン10をウェイクアップさせることができる。通信ブリッジ20は、全ての監視回路41~43の電池データを集めることができるため、電池35の全体の電池データを把握できる。特許文献1記載の技術では、異常検出対象の電池セルは監視回路がモニタする電池セル、監視回路の直近の電池セルにとどまるが、本実施形態では電池35の全体の温度偏差異常や電圧偏差異常を検出可能になる。通信ブリッジ20は、システムあたり1個で済むが、監視回路41~43は複数個必要となる。よって本実施形態では、システムあたりのメモリ個数を低減でき、コストダウン及び小型化に貢献できる。
【0051】
<比較例>
図10に比較例の構成を示している。この比較例の構成によれば、監視回路41~43が、前述説明した異常判定回路22、異常判定閾値保持回路25、タイマ26を備えている。監視回路41~43は、低消費電力モードにおいてそれぞれタイマ26により所定時間の経過を計測するとモニタ開始信号を発生して電池データ取得回路47が電池モジュール36~38の各電池セルの電圧データ(電池データ)を取得するようにしている。
【0052】
そして異常判定回路22は、取得した電池データを異常判定閾値保持回路25の閾値と比較して異常の有無を判定する。異常があれば、複数の監視回路41~43が通信I/F48、29を通じて通信ブリッジ20の異常判定回路122に送信することとなる。他方、通信ブリッジ20は、低消費電力モードにて監視回路41~43から起動信号が与えられることで起動する。この際、異常判定回路122が監視回路41~43から異常である旨を受信すると、マイコン10に通知する。また、通信ブリッジ20は、ウォッチドッグタイマ126により規定時間を計測し、監視回路41~43からこの規定時間内に通知を受信しない場合に絶縁通信経路50の異常と判断し、マイコン10へ通知する。
【0053】
このような構成によれば、例えば、複数の監視回路41~43が低消費電力モードにある場合、複数の監視回路41~43が、それぞれ個別に設けられたタイマ26により起動し、異常を生じた場合、それぞれ起動したタイミングで通信ブリッジ20に対し異常を生じた旨を通知することとなる。
【0054】
複数の監視回路41~43が同時に異常を生じた旨を通知すると、一経路の絶縁通信経路50に複数の異常信号が同時に存在することになる。このとき、どの監視回路の異常信号を優先するか調停機能を必要とすることから通信プロトコルの複雑化を招くこととなり好ましくない。
【0055】
また、その他の比較例として、複数の監視回路41~43の間で通信により順に起動した後に、電池35の状態を検出する方式を採用すると、電池モジュール36~38の状態の監視タイミングに時間差を生じやすい。電池モジュール36~38は電池セルを直列接続又は直並列接続して構成されているため、マイコン10などが電池セルの電圧データを詳細なSOHなどの判断に用いるためには、各電池モジュール36~38の監視タイミングを極力合わせることが望ましい。
【0056】
本実施形態によれば、通信ブリッジ20が複数の監視回路41~43を先に起動しておき、その後に電池監視制御用の各種コマンドを送信している。このため、調停機能を別途設ける必要がなくなる。しかも、電池モジュール36~38を構成する電池セルの互いの電圧監視タイミングの時間差を少なくできる。
【0057】
また従来技術では、イグニッションスイッチオフ時における電池データの情報が無い場合もあった。このような場合、マイコン10は走行中のみの電池データの情報に基づいてSOHを推定していた。しかし、車両の停車中の温度環境や電池電圧によっても電池35の劣化具合が変わる。このため、停車中の電池データの情報があれば、マイコン10はより高精度にSOHを推定可能となる。本実施形態では、イグニッションスイッチオフ中の電池データの情報を記憶デバイス21に保持することで、マイコン10が高精度にSOHを推定できるようになる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態について図11及び図12を参照しながら説明する。前述実施形態において、監視回路41~43は、データリードコマンドを受信するとこのコマンドに応じて電池データを通信ブリッジ20に送信することを説明したが、この送信方法は図11又は図12に示すように送信することが望ましい。
【0059】
通信ブリッジ20が、データリードコマンドを監視回路41~43に送信した場合について説明する。データリードコマンドは、複数の監視回路41~43が前述の通信I/F48、49を通じて順に受信できる。例えば、図11に示すように、通信ブリッジ20と複数の監視回路41~43との間がリング状に絶縁通信経路50により接続されている場合、監視回路41、42、43が順に電池データを渡しながら最終的に通信ブリッジ20が全ての電池データを受信してもよい。
【0060】
この場合、まず監視回路41が、担当の電池モジュール36の電池データを取得して絶縁通信経路50を通じて監視回路42に電池データを送信する。監視回路42は監視回路41から電池データを受信すると、担当の電池モジュール37の電池データを取得する。監視回路42は、絶縁通信経路50を通じて監視回路43に電池モジュール36、37の電池データを送信する。
【0061】
監視回路43は、監視回路42から電池データを受信すると、担当の電池モジュール38の電池データを取得して絶縁通信経路50を通じて通信ブリッジ20に電池モジュール36~38の電池データを送信する。これにより、通信ブリッジ20は、全ての電池モジュール36~38の電池データを受信できる。
【0062】
また例えば、図12に矢印で示すように、通信ブリッジ20と複数の監視回路41~43との間が絶縁通信経路50により直列接続されており、リング接続されていない場合には、リバース式に通信するようにしてもよい。
【0063】
例えば、通信ブリッジ20がデータリードコマンドを監視回路41~43に送信した場合、監視回路41が担当の電池モジュール36から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて監視回路42に送信する。監視回路42が担当の電池モジュール37から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて電池モジュール36、37の電池データを監視回路43に送信する。監視回路43が担当の電池モジュール38から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて電池モジュール36~38の電池データを監視回路42、41を通じて通信ブリッジ20に送信する。これにより、通信ブリッジ20が全ての電池モジュール36~38の電池データを取得できる。
【0064】
またその他の方法として、まず監視回路43が担当の電池モジュール38から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて通信ブリッジ20に送信する。監視回路42が担当の電池モジュール37から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて電池モジュール38、37の電池データを通信ブリッジ20に送信する。
【0065】
監視回路41が担当の電池モジュール36から電池データを取得し、絶縁通信経路50を通じて電池モジュール36の電池データを通信ブリッジ20に送信する。これにより、通信ブリッジ20が全ての電池モジュール36~38の電池データを取得できる。何れの方法であっても、通信ブリッジ20は電池35を構成する全ての電池モジュール36~38の電池データを取得できる。これにより、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0066】
(他の実施形態)
前述実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
本開示に記載の手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0067】
もしくは、本開示に記載の手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0068】
本開示は、特許請求の範囲の記載に加え、以下の発明も含む。
[1]
複数の電池モジュールを備える電池(35)を監視する電池監視システムであって、それぞれ通信経路(50)を介して直列接続されると共にそれぞれ割り当てられた担当の電池モジュール(36~38)の電力を使用し当該電池モジュールに関するデータを取得する複数の監視回路(41~43)と、通常動作時には前記電池の状態を監視するマイコン(10)と、前記複数の監視回路のうち少なくとも一つの監視回路と前記通信経路を介して接続される回路であり前記マイコンがスリープ中には前記通常時よりも低消費電力の低消費電力モードに移行するように構成される通信ブリッジ(20)と、を備え、前記通信ブリッジは、前記電池モジュールとは異なる電源を用いて前記マイコンとは自律して前記低消費電力モードから起動し、前記電池に関する前記データの取得を指示する指示部(20a)と、前記複数の監視回路から通信により前記データを取得する取得部(20b)と、前記取得した前記データに基づいて前記電池の状態が異常か否かを判定する判定部(20c)と、を備える電池監視システム。
【0069】
[2]
前記マイコンが前記スリープ中には前記複数の監視回路は低消費電力モードに移行しており、前記通信ブリッジは、前記通信経路を通じて前記低消費電力モードにある前記監視回路を起動させる[1]記載の電池監視システム。
【0070】
[3]
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を異常と判定した場合、前記マイコンを起動するための起動信号を前記マイコンへ通知する[1]又は[2]記載の電池監視システム。
【0071】
[4]
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を異常と判定した場合、前記マイコンに電源を供給する電源回路(5)を起動させるための起動信号を前記電源回路に送信し、前記電源回路を起動させることで前記マイコンを起動させる[1]から[3]の何れかに記載の電池監視システム。
【0072】
[5]
前記通信ブリッジは、前記判定部により前記電池の状態を正常と判定した場合、前記通信ブリッジは自身で前記低消費電力モードへ移行する[1]から[4]の何れかに記載の電池監視システム。
【0073】
[6]
前記通信ブリッジは、取得した前記データをメモリ(21)に記憶させる[1]から[5]の何れかに記載の電池監視システム。
【0074】
[7]
前記マイコンは前記スリープからウェイクアップした後に、前記メモリに記憶された前記データを読み出し、前記電池の状態判定に使用する[6]記載の電池監視システム。
【0075】
本開示は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本開示は当該実施形態や実施形態に記載された構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0076】
図面中、4はバッテリ(電源)、5は電源回路、10はマイコン、20aは指示部、20bは取得部、20cは判定部、21は記憶デバイス(メモリ)、22は異常判定回路(判定部)、35は電池、36~38は電池モジュール、41~43は監視回路、50は絶縁通信経路(通信経路)、を示す。
図1
図2
図3
図4
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