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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140496
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】紫外線照射モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20241003BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20241003BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J19/12 C
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051657
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】北脇 裕平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 博
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
4G075
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058EE26
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4G075AA02
4G075AA51
4G075BA04
4G075BB10
4G075CA34
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB21
4G075EB31
4G075FA01
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】 流体に紫外線を照射する紫外線発光素子への結露の発生を防止する。
【解決手段】 本発明は、注入部と排出部とが設けられ、前記注入部から前記排出部まで流体が流れる流路が形成された筒状体と、前記筒状体に結合された封止部と、前記封止部の内部に形成された第1の空間に、前記流路内の前記流体に紫外線を照射可能に収容された紫外線発光素子と、前記紫外線発光素子と前記流路との間に設けられ透光部材と、前記透光部材の第1面に前記封止部材に対して圧着して設けられた少なくとも1つの第1のシール部材と、前記透光部材の前記第1の面の反対側の第2面に前記筒状体に対して圧着して設けられた複数の第2のシール部材とを備える紫外線照射モジュールである。前記複数の第2のシール部材は、同心円状に設けられ、互いに隣接する前記第2のシール部材どうしで第2の空間を形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入部と排出部とが設けられ、前記注入部から前記排出部まで流体が流れる流路が形成された筒状体と、
前記筒状体に結合された封止部と、
前記封止部の内部に形成された第1の空間に、前記流路内の前記流体に紫外線を照射可能に収容された紫外線発光素子と、
前記紫外線発光素子と前記流路との間に設けられた透光部材と、
前記透光部材の第1面に前記封止部に対して圧着して設けられた少なくとも1つの第1のシール部材と、
前記透光部材の前記第1面の反対側の第2面に前記筒状体に対して圧着して設けられた複数の第2のシール部材と、を備え、
前記複数の第2のシール部材は、同心円状に設けられ、互いに隣接する前記第2のシール部材どうしで第2の空間を形成する、
紫外線照射モジュール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のシール部材は、前記紫外線発光素子の周囲を囲むように、前記紫外線発光素子を収容する前記第1の空間を形成する、
請求項1に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項3】
前記第1の空間の体積は、前記紫外線発光素子の端部と前記第1のシール部材との間の第1の距離と前記紫外線発光素子から前記透光部材までの第2の距離との関係によって規定され、前記第1の距離は、前記第2の距離の2倍以上7倍以下になるように規定される、
請求項1に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項4】
前記第1の距離は、好ましくは前記第2の距離の2倍以上6倍以下になるように規定される、
請求項3に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項5】
前記第1の距離は、より好ましくは前記第2の距離の2倍以上5倍以下になるように規定される、
請求項4に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項6】
前記第2の空間の体積は、前記第2のシール部材の断面直径の0.5倍以上4.5倍下になるように規定される、
請求項1に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項7】
前記第2の空間の体積は、好ましくは前記断面直径の1倍以上4.5倍以下になるように規定される、
請求項6に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項8】
前記第2の空間の体積は、より好ましくは前記断面直径の1.5倍以上4.5倍以下になるように規定される、
請求項7に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項9】
前記封止部内に形成された第3の空間に収容された、前記紫外線発光素子の駆動を制御する回路基板を更に備え、
前記回路基板は、前記第3の空間の底面から離隔して設けられている、
請求項1に記載の紫外線照射モジュール。
【請求項10】
前記封止部は、前記第3の空間と前記透光部材の前記第1面とを連通する連通孔を含む、
請求項9に記載の紫外線照射モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射モジュールに関し、特に、流体に対して紫外線発光素子により紫外線を照射する紫外線照射モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、水等の流体中の病原性のウィルスや菌等を不活化し殺菌するために、流路内を流れる流体に紫外線を照射する技術を用いた製品が知られている(本開示では、ウィルスや菌等を「ウィルス等」と総称するものとし、ウィルス等を不活化し又は殺菌することを「ウィルス等を不活化する」と称するものとする。)。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、LED素子から照射した紫外光で被処理水を紫外線処理する技術を開示している。具体的には、特許文献1は、被処理水が流れる流路と、透明部材からなる窓部を介して流路の外側に配置されたLED素子収容室と、LED素子収容室内に配置された複数のLED素子とを備える水処理装置を開示している。LED素子収容は、乾燥気体の流入口及び流出口を有し、LED素子は、発光面がLED素子収容室内の空間に露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-069144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されているような水処理装置においては、長時間の使用とともに流路を流れる被処理水がシール部材を通ってLED素子収容室内に僅かながら少しずつ侵入し、その結果、結露が生じてLED素子の故障を招く恐れがある。実際、流体から気化した気体成分(いわゆる水分)が分子レベルでシール部材を通過して収容室に抜け出て、そこで徐々に蓄積することで結露を発生させてしまう現象が知られている。かかる事情から、LED素子収容室内の結露を防止するために、特許文献1に開示された水処理装置は、乾燥気体を流す構造を採用している。
【0006】
しかしながら、このような乾燥空気を流す構造は、装置が大型であることが必要とされるため、比較的小型の装置に設けることが困難であり、仮に装置の大きさに合わせて設けたとしても十分な換気効果を期待できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、流路内を流れる流体に紫外線を照射する紫外線発光素子への結露の発生を防止し得る小型の紫外線照射モジュールを提供することを目的としている。
【0008】
より具体的には、本発明は、流路内を流れる流体からの気体成分が、紫外線発光素子を収容する収容室内に流入することにより結露の発生を抑え、結露による紫外線発光素子の損傷を防止する紫外線照射モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0010】
ある観点に従う本発明は、流路内の流体に対して紫外線を照射する紫外線照射モジュールである。前記紫外線照射モジュールは、注入部と排出部とが設けられ、前記注入部から前記排出部まで流体が流れる流路が形成された筒状体と、前記筒状体に結合された封止部と、前記封止部の内部に形成された第1の空間に、前記流路内の前記流体に紫外線を照射可能に収容された紫外線発光素子と、前記紫外線発光素子と前記流路との間に設けられた透光部材と、前記透光部材の第1面に前記封止部に対して圧着して設けられた少なくとも1つの第1のシール部材と、前記透光部材の前記第1面の反対側の第2面に前記筒状体に対して圧着して設けられた複数の第2のシール部材と、を備える。そして、前記複数の第2のシール部材は、同心円状に設けられ、互いに隣接する前記第2のシール部材どうしで第2の空間を形成する。
【0011】
また、前記少なくとも1つの第1のシール部材は、前記紫外線発光素子の周囲を囲むように、前記紫外線発光素子を収容する前記第1の空間を形成する。
【0012】
ここで、前記第1の空間の体積は、前記紫外線発光素子の端部と前記第1のシール部材との間の距離(第1の距離)と前記紫外線発光素子から前記透光部材までの距離(第2の距離)との関係によって規定され、前記第1の距離は、前記第2の距離の2倍以上7倍以下になるように規定される。また、前記第1の距離は、好ましくは前記第2の距離の2倍以上6倍以下になるように規定される。更に、前記第1の距離は、より好ましくは前記第2の距離の2倍以上5倍以下になるように規定される。
【0013】
また、前記第2の空間の体積は、前記第2のシール部材の断面直径の0.5倍以上4.5倍以下になるように規定される。また、前記第2の空間の体積は、好ましくは前記断面直径の1倍以上4.5倍以下になるように規定される。更に、前記第2の空間の体積は、より好ましくは前記断面直径の1.5倍以上4.5倍以下になるように規定される。
【0014】
また、前記封止部内に形成された第3の空間に収容された、前記紫外線発光素子の駆動を制御する回路基板を更に備える。前記回路基板は、前記第3の空間の底面から隔離して設けられている。
【0015】
また、前記封止部は、前記第3の空間と前記透光部材の前記第1面とを連通する連通孔を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置の小型性を損なわずに、流路内を流れる流体に紫外線を照射する紫外線発光素子収容室内での結露の発生を防止し、これにより、紫外線発光素子21の劣化を効果的に防止することができるようになる。
【0017】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールの外観を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールの要部を示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールにおける漏洩量、漏洩開始時間及び累積漏洩量を説明するためのグラフである。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールの要部を示す断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールの要部を示す断面図である。
図6図6は、紫外線発光素子の端部と第1のシール部材との間の距離と紫外線発光素子による第1のシール部材への照射量との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図7図7は、第1のシール部材どうしの間隔と封止部材の伝熱量との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る紫外線照射モジュールの外観の一例を示す斜視図である。同図に示すように、紫外線照射モジュール1は、筒状体11と、封止部12とを備える。筒状体11には、注入部13と、排出部14とが設けられている。紫外線照射モジュール1は、これらの部材によってその外観が略規定されている。また、後述するように、紫外線照射モジュール1は、紫外線照射処理の対象となる流体に紫外線を照射するための紫外線発光素子21等を含み構成される(図2等参照)。以下では、便宜上、紫外線照射モジュール1の高さ方向(長手方向)をZ軸方向として定義し、Z軸方向に直交する軸方向をそれぞれX及びY方向と定義する。なお、本例では、紫外線照射モジュール1は、長手方向に立直するように設置される。
【0021】
筒状体11は、注入部13から流入された流体が排出部14から排出されるまでの流路を含み構成される有底の筒状部材である。典型的には、筒状体11は、その内部に、流路の一部となる内側筒状体11’が設けられた二重構造を有する。内側筒状体11’の内空間には、紫外線発光素子21から出射された紫外線が照射される。内側筒状体11’の内空間は、紫外線反射率の高い材質で構成されることが好ましい。紫外線反射率の高い材質として挙げられる材料としては、例えば、アルミニウムやポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)樹脂材料、硫酸バリウム(BaSO)等からなる紫外線反射材料を含み構成され得る。
【0022】
封止部12は、内部に収容する紫外線発光素子21を筒状体11内の流路から気密的に遮断しつつ、筒状体11の開口端部を封止するための部材である。封止部12は、その結合部が筒状体11の開口端部の外周部に例えば螺合することにより、筒状体11に密着結合する。また、本例では、封止部12の上端部には、回路基板22に電力を供給するための端子電極15(本例では3つの端子)が設けられている。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る紫外線照射モジュールの上端部を示す断面図である。具体的には、同図は、図1に示した封止部12及びその近傍の部分断面を示している。
【0024】
同図に示すように、封止部12は、その内部に、例えば、紫外線発光素子21と、これを駆動制御するための回路基板22と、透光部材23とを収容する。また、封止部12は、紫外線発光素子21の出射面の前方に対向して設けられる透光部材23と、複数のシール部材24と、環状部材25とを含む。
【0025】
紫外線発光素子21は、封止部12内部に形成された第1の空間S1に収容され、透光部材23を介して、内側筒状体11’の内部空間(流路)に向けて所定波長の紫外線を出射する。例えば、紫外線発光素子21が発する紫外線の波長は、10nm以上400nm以下であり得る。発光素子が発する紫外線の波長における波長ピークは、除菌・殺菌、カビやウィルス等の不活化等の観点から、好ましくは210nm以上300nm以下の範囲にあり、より好ましくは250nm以上290nm以下の範囲である。本例では、1つの紫外線発光素子21が設けられた構成であるが、これに限られず、2以上の紫外線発光素子21が設けられた構成であっても良い。また、波長の異なるいくつかの紫外線発光素子21が設けられた構成であっても良い。紫外線発光素子21は、封止部12内に設けられた回路基板22に電気的に接続され、回路基板22により発光が制御される。
【0026】
回路基板22は、端子電極15を介して外部からの電力を受けて、紫外線発光素子21の駆動を制御する。本例では、回路基板22は、封止部12内部に形成された第3の空間S3の底面から離間して(上端面又は側面等)に設けられている。この場合、例えば回路基板22は、支柱等により指示されても良い。つまり、上端面に設けられた場合には、紫外線照射モジュール1がZ方向に立直するように設けられた場合に、回路基板22が下を向くように設けられる。また、側面に設けられた場合には、紫外線照射モジュール1がZ方向に立直するように設けられた場合に、回路基板22がZ方向に立直するように設けられる。これにより、長期間の使用であっても、水滴が回路基板22上に滞留することを防止することができる。典型的には、第3の空間S3は、第1の空間S1及び後述する第2の空間S2に比べて大きな体積を有している。
【0027】
透光部材23は、紫外線透過率の高い材質で形成することが好ましく、例えば石英ガラスやサファイア等からなるが、これに限られず、紫外線を透光可能な材料(例えば透光性樹脂材料)であっても良い。透光部材23は、筒状体11の内周端部に沿って例えば円板形状を有する。
【0028】
シール部材24は、例えば、断面直径φのいわゆる弾性Oリングである。本例では、シール部材24は、透光部材23の両面のうち、紫外線発光素子21側の第1面に設けられた少なくとも1つ以上の第1のシール部材24aと、筒状体11側の第2面(すなわち、第1の面の反対側の面)に設けられた複数の第2のシール部材24bとを含み構成される。つまり、第1のシール部材24aは、紫外線発光素子21の周囲を囲むように、透光部材23と封止部12と間の段差部の一部との間で圧着して設けられる一方、第2のシール部材24bは、透光部材23と環状部材25を介した筒状体11との間で圧着して設けられる。本例では、第1のシール部材24aは、その内周側で、封止部12及び透光部材23と相俟って紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1を形成している。一方、第2のシール部材24bは、2つの弾性Oリングが互いに同心円状に設けられ、透光部材23及び環状部材25と相俟って、隣接する第2のシール部材24bどうしで、空気で満たされた第2の空間S2を形成している。
【0029】
環状部材25は、例えばアルミニウム、ニッケル、銅、SUS(Steel Use Stainless)鋼といった金属等からなり、筒状体11及び内側筒状体11’のそれぞれの上端部に当接する。透光部材23と環状部材25との間に他のシール部材24が設けられても良い。
【0030】
このような封止部12が筒状体11の上端部に螺合して結合すると、筒状体11bの内壁面と内側筒状体11’の外壁面との間に形成される空間及び内側筒状体11’の内部空間が封止され、水密の状態に保たれた流路を形成する。
【0031】
シール部材24により筒状体11の内部を流れる流体が紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1に漏洩することを防止するが、紫外線照射モジュール1は、長期間の使用により、流体の気体成分(水分)が分子レベルでシール部材24を通過して漏洩してしまう現象が発生し得る。今、時間当たりにシール部材24を透過して漏洩する水分の量を漏洩量とし、漏洩量が最大値(飽和時の値)の95%に到達するまでの時間を漏洩開始時間として、累積漏洩量を以下のように定義する。
累積漏洩量=漏洩量×時間
【0032】
つまり、図3に示すように、紫外線照射モジュール1において、長期間の使用により、シール部材24を通過して漏洩する累積漏洩量を最少にすることが要求される。したがって、本開示では、累積漏洩量が最少になるようにシール部材24の数及び位置が決定される。
【0033】
上述したように、本実施形態では、シール部材24は、透光部材23を挟んで、紫外線発光素子21側に設けられた1つの第1のシール部材24aと筒状体11側に同心円状に設けられた2つの第2のシール部材24bとの合計3つのシール部材24で構成されている。したがって、例えば、1つのシール部材24を用いた構成と比較して、シール部材24の個数nに応じて累積漏洩量を1/nに減らすことができる。
【0034】
また、紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1の体積は、第1のシール部材24aの内周半径と封止部12の凹部の深さ(第1の空間S1の高さ)とに基づいて算出される。ここで、紫外線発光素子21の端部と第1のシール部材24aとの間の距離(第1の距離)は、紫外線発光素子21から透光部材23までの距離(第2の距離)との関係で規定される。これにより、第1のシール部材24aにより形成される紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1の大きさ(体積)が規定されることになる。このように第1のシール部材24aにより形成される紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1の体積が紫外線発光素子21と第1のシール部材24aとの間の第1の距離と紫外線発光素子21から透光部材23までの第2の距離との関係で規定されることにより、水分を含み得る体積が小さくなるため、第2のシール部材24bを通過して透光部材23の周縁を伝って侵入してくる累積漏洩量を少なくすることができる。
【0035】
シミュレーションの結果、紫外線発光素子21の端部と第1のシール部材24aとの間の距離d1が紫外線発光素子21から透光部材23までの距離d2の約6倍以下である第1の空間S1の体積の場合、約7倍である第1の空間S1に比較して、累積漏洩量を少なくとも約75%以下にすることができた。また、約5倍以下である第1の空間S1の場合、約7倍とした第1の空間S1に比較して、累積漏洩量を少なくとも約50%以下にすることができた。このように、紫外線発光素子21の中心と第1のシール部材24aとの間の距離は、紫外線発光素子21から透光部材23までの距離のとの関係で規定することで、第1の空間S1への水分の漏洩を効果的に防止する構成を得ることができる。
【0036】
紫外線発光素子21から透光部材23までの距離d2を一定で、紫外線発光素子21の端部と第1のシール部材24aとの間の距離d1を変化させたときの紫外線発光素子21による第1のシール部材24aへの照射量を、光学的にシミュレーションより計算する。すなわち、d1=d2×bの関係があるとして、係数bの値を1から7まで変化させることにより、例えば図6に示されるようなグラフが得られる。一般に、本発明に係る紫外線照射モジュール1のような製品に要求される寿命から、許容される照射量は10mw/cm程度であり、同図を参照して、かかる許容照射以下となるのは、b=2以上となる。また、製品寿命の観点から、紫外線発光素子21の端部と第1のシール部材24aとの間の距離d1が紫外線発光素子21から透光部材23までの距離d2の約2倍以上約7倍以下であればよく、好ましくは、約2倍以上約6倍以下であれば良い。
【0037】
また、同心円状に設けられた第2のシール部材24bにより形成される第2の空間S2の体積は、第2のシール部材24bどうしの半径の内外周の差と、透光部材23と筒状体11(環状部材25)との間の距離とに基づいて算出される。ここで、第2の空間S2の体積は、第2のシール部材24bの断面直径zの0.5倍以上4.5倍以下、好ましくは、1倍以上4.5倍以下、より好ましくは、1.5倍以上4.5倍以下になるように規定される。このように同心円状に設けられた第2のシール部材24bにより第2の空間S2を形成することができるため、気体で満たされた第2の空間S2がバッファとなって、漏洩開始時間を遅らせることができる。
【0038】
すなわち、第2のシール部材24bどうしの間隔xが広いと、熱伝導を担う封止部12の部分が小さくなると、紫外線発光素子21が発する熱を十分に放熱することができなくなる。したがって、第1のシール部材24aどうしの間隔xに対する封止部材12の伝熱量の計算を行うことにより、例えば図7に示されるようなグラフが得られる。紫外線発光素子21の発熱量から確保すべき伝熱量は、20W程度であることから、同図に示すグラフより、第2のシール部材24bどうしの間隔xは、第2のシール部材24bの断面直径zのa=4.5倍以下であることが好ましい。
【0039】
シミュレーションの結果、第2の空間S2の体積が第2のシール部材24bの断面直径φの約1倍以上の場合には、約0.5倍の場合と比較して、漏洩開始時間を少なくとも約4倍以上遅らせることができた。また、約1.5倍以上の場合には、約0.5倍の場合と比較して、漏洩開始時間を少なくとも約10倍以上遅らせることができた。このように、同心円状に設けられた第2のシール部材24bにより形成される第2の空間S2の体積を第2のシール部材24bの直径φの値との関係で規定することで、水分の漏洩を効果的に防止する構成を得ることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態によれば、流体が流れる流路と紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1との間を複数のシール部材24で気密的に遮断しているので、紫外線発光素子21近傍における結露の発生を防止することができ、紫外線発光素子21の損傷を抑制できる。とりわけ、本実施形態によれば、同心円状に設けた第2のシール部材24bにより所定の体積の第2の空間S2を形成しているので、第2の空間S2が漏洩する水分を溜めるバッファとなり、第1の空間S1まで侵入する水分の累積漏洩量を効果的に減らし、かつ、漏洩開始時間を遅らせることができるようになる。
【0041】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る紫外線照射モジュールの要部を示す断面図である。本実施形態は、封止部12内の第1のシール部材24aが複数個設けられた点以外は、第1の実施形態と同様にして紫外線照射モジュールを得た。
【0042】
すなわち、同図に示すように、本例では、2つの第1のシール部材24aが、同心円状に、透光部材23と封止部12の段差部の一部との間で圧着して設けられている。また、本例では、紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1は、第1のシール部材24aにより形成されるのではなく、封止部12内部の凹部の隔壁Wにより形成されている。なお、隔壁Wにより形成される第1の空間S1は、第1の実施形態と同様の観点で、紫外線発光素子21の中心と隔壁との間の距離の関係で規定される。
【0043】
以上のように、本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の利点ないしは効果を奏するとともに、第1の空間S1への水分の累積漏洩量を更に効果的に減らす構成を得ることができる。また、第1のシール部材24aは、隔壁Wにより紫外線発光素子21から出射される紫外線に曝露しないため、紫外線照射による劣化が防止される。
【0044】
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態に係る紫外線照射モジュールの要部を示す断面図である。本実施形態は、封止部12内の回路基板22を収容する第3の空間S3が透光部材23の上面まで連通した構造となっている点で、上記の実施形態と異なっている。
【0045】
すなわち、同図に示すように、封止部12は、その内部に、回路基板22を収容する第3の空間S3と透光部材23の上面(第1面)とを連通する連通孔51が形成されている。連通孔51は、第1のシール部材24aの周囲に沿って複数設けられても良い。本例では、連通孔51は、同心円状の第1のシール部材24a,24a’の間に設けられている。連通孔51は、第2のシール部材24bを通過して透光部材23の周縁を伝ってくる水分が第3の空間S3に侵入するように誘導し、これにより、紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1に侵入することを防止する。つまり、第3の空間S3は、空間S1よりも十分に大きな体積を有するため、仮に、水分が連通孔51を介して第3の空間S3に侵入してきたとしても、結露が発生するまでの時間を十分にとることができる。また、水分は連通孔51に誘導され第1の空間S1に侵入し難くなっているため、第1の空間S1での漏洩開始時間を大幅に遅らすことができるようになる。
【0046】
以上のように、本実施形態によっても、上記の実施形態と同様の利点ないしは効果を奏するとともに、第1の空間S1への水分の累積漏洩量を更に効果的に減らす構成を得ることができる。とりわけ、本実施形態によれば、封止部12内の回路基板22を収容する第3の空間S3が透光部材23の上面まで連通した構造となっているので、第2のシール部材24bを通過して透光部材23の周縁を伝ってくる水分が第3の空間S3に侵入するように誘導し、紫外線発光素子21を収容する第1の空間S1に侵入することを防止することができる。
【0047】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0048】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0049】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…紫外線照射モジュール
11…筒状体
11’…内側筒状体
12…封止部
13…注入部
14…排出部
15…端子電極
21…紫外線発光素子
22…回路基板
23…透光部材
24…シール部材
24a,24a’…第1のシール部材
24b,24b’…第2のシール部材
25…環状部材
51…連通孔
S1,S2,S3…空間
W…隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7