(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140499
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】燃料電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20241003BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241003BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04029
H01M8/0432
H01M8/04746
B60K15/03 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051661
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】糸賀 健太郎
【テーマコード(参考)】
3D038
5H127
【Fターム(参考)】
3D038CA09
3D038CC18
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA60
5H127CC07
5H127DB06
5H127DB74
5H127DC02
5H127DC04
5H127DC08
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性を向上させるとともにライフサイクルコストを抑制することが可能な燃料電池冷却システムを提供する。
【解決手段】燃料電池2と、燃料電池2の燃料を貯留する燃料タンク1と、冷却水を循環させて燃料電池2を冷却する冷却回路8とを備えた燃料電池冷却システム100において、燃料タンク1から供給される燃料を流通させる燃料流路10と、冷却回路8を循環する冷却水と燃料流路10を流通する燃料との間で熱交換させることにより、冷却回路8を循環する冷却水を冷却する熱交換器6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池の燃料を貯留する燃料タンクと、
冷却水を循環させて前記燃料電池を冷却する冷却回路とを備えた燃料電池冷却システムにおいて、
前記燃料タンクから供給される燃料を流通させる燃料流路と、
前記冷却回路を循環する冷却水と前記燃料流路を流通する燃料との間で熱交換させることにより、前記冷却回路を循環する冷却水を冷却する熱交換器とを備える
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記冷却回路を循環する冷却水の熱を放熱する放熱器と、
前記放熱器に送風する冷却ファンと、
前記冷却回路を循環する冷却水の温度を検出する第1温度センサと、
前記第1温度センサで検出された冷却水の温度に応じて前記冷却ファンを制御するコントローラとを備える
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記燃料タンクから前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給管を備え、
前記燃料流路の上流側端部および下流側端部は、前記燃料供給管に接続されている
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記燃料供給管に設けられたレギュレータを備え、
前記上流側端部は、前記燃料供給管において前記レギュレータよりも下流側に配置され、
前記下流側端部は、前記燃料供給管において前記上流側端部よりも下流側に配置されている
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項5】
請求項3に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記燃料流路の前記熱交換器よりも上流側に設けられ、燃料を減圧させる膨張弁と、
前記燃料流路の前記熱交換器よりも下流側に設けられ、前記膨張弁により減圧させた燃料を圧縮させる圧縮機と、
前記燃料供給管を流通する燃料の温度を検出する第2温度センサと、
前記第2温度センサで検出された燃料の温度に応じて前記圧縮機を制御するコントローラとを備える
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項6】
請求項1に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記冷却回路を循環する冷却水の温度を検出する第1温度センサと、
前記燃料流路の前記熱交換器よりも上流側に設けられ、前記燃料流路を連通または遮断する切換弁と、
前記第1温度センサで検出された冷却水の温度に応じて前記切換弁を制御するコントローラとを備える
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【請求項7】
請求項1に記載の燃料電池冷却システムにおいて、
前記冷却回路を循環する冷却水の温度を検出する第1温度センサと、
前記燃料流路の前記熱交換器よりも上流側に設けられ、前記燃料流路を流通する燃料の流量を制御する流量制御弁と、
前記第1温度センサで検出された冷却水の温度に応じて前記流量制御弁を制御するコントローラとを備える
ことを特徴とする燃料電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の車両に搭載される燃料電池冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力源として燃料電池を搭載したものがある。燃料電池はエンジン同様に冷却が必要となるが、要求される放熱量がエンジンの数倍とされるため、燃料電池の冷却システムにはエンジンの冷却システムよりも高い冷却性能が求められる。
【0003】
燃料電池の冷却システムの先行技術を開示する文献として特許文献1がある。特許文献1には、2つの冷却回路(第1冷媒回路および第2冷媒回路)を設けることにより、燃料電池の冷却性能を向上させることができる燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の燃料電池システムは、2つの冷却回路を備えているため、機器レイアウトに制約が生じる。さらに、2つの冷却回路に冷却水を充填させる必要があるため、メンテナンス性の悪化につながる。また、メンテナンス時に交換する冷却水の量が増えるため、ライフサイクルコストが増大する。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、メンテナンス性を向上させるとともにライフサイクルコストを抑制することが可能な燃料電池冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料電池と、前記燃料電池の燃料を貯留する燃料タンクと、冷却水を循環させて前記燃料電池を冷却する冷却回路とを備えた燃料電池冷却システムにおいて、前記燃料タンクから供給される燃料を流通させる燃料流路と、前記冷却回路を循環する冷却水と前記燃料流路を流通する燃料との間で熱交換させることにより、前記冷却回路を循環する冷却水を冷却する熱交換器とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、燃料電池に供給される燃料の一部を冷媒として、冷却回路を循環する冷却水を冷却することができるため、冷却回路の冷却性能を向上させることが可能となる。その結果、冷却回路を短縮して冷却水の量を低減することにより、冷却回路のメンテナンス性を向上させるとともにライフサイクルコストを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施例における燃料電池冷却システムの構成図
【
図2】本発明の第1の実施例におけるコントローラの冷却ファンの制御に関わる処理を示すフローチャート
【
図3】本発明の第1の実施例におけるコントローラの圧縮機の制御に関わる処理を示すフローチャート
【
図4】本発明の第2の実施例における燃料電池冷却システムの構成図
【
図5】本発明の第3の実施例における燃料電池冷却システムの構成図
【
図6】本発明の第3の実施例におけるコントローラの切換弁の制御に関わる処理を示すフローチャート
【
図7】本発明の第4の実施例における燃料電池冷却システムの構成図
【
図8】本発明の第4の実施例におけるコントローラの流量制御弁の制御に関わる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0011】
図1は、本発明の第1の実施例における燃料電池冷却システム100の構成図である。燃料電池冷却システム100は、燃料タンク1と、燃料電池2と、燃料供給管9と、レギュレータ20と、冷却回路8と、冷却水ポンプ21と、放熱器3と、冷却ファン4と、電動モータ11と、燃料流路10と、膨張弁5と、圧縮機7と、熱交換器6と、温度センサ16,17と、コントローラ18とを備えている。
【0012】
燃料タンク1には、燃料電池2の燃料(水素等)が貯留される。燃料電池2は、燃料供給管9を介して燃料タンク1に接続されている。燃料供給管9には、レギュレータ20が設けられている。燃料タンク1内の燃料は高圧に保たれており、レギュレータ20で減圧されて燃料電池2に供給される。
【0013】
燃料電池2は、冷却回路8によって冷却される。冷却水ポンプ21は、冷却回路8内で冷却水を循環させる。冷却水ポンプ21は、コントローラ18を介して燃料電池2から電力供給を受けることにより駆動される。放熱器3は、冷却回路8の一部を内包しており、冷却ファン4からの送風を受けて、燃料電池2を冷却して高温となった冷却水の熱を放熱する。冷却ファン4は電動モータ11によって駆動される。電動モータ11は、コントローラ18を介して燃料電池2から電力供給を受けることにより駆動される。
【0014】
燃料流路10の上流側端部10aは、燃料供給管9においてレギュレータ20よりも下流側に接続されている。燃料流路10の下流側端部10bは、燃料供給管9において燃料流路10の上流側端部10aよりも下流側に接続されている。これにより、燃料流路10に流入する燃料の温度をより低下させることが可能となる。熱交換器6は、冷却回路8の放熱器3よりも上流側の一部と燃料流路10の一部とを内包している。燃料流路10の熱交換器6よりも上流側には膨張弁5が設けられている。膨張弁5は、燃料供給管9から分配される燃料を減圧することで熱交換器6に流入する燃料の温度を低下させる。燃料流路10の熱交換器6よりも下流側には、圧縮機7が設けられている。圧縮機7は、コントローラ18を介して燃料電池2から電力供給を受けることにより駆動される。圧縮機7は、熱交換器6を通過した低温の燃料を圧縮することにより、燃料流路10から燃料供給管9に合流する燃料の温度を上昇させる。
【0015】
燃料電池2を通過した冷却水は、熱交換器6に流入し、膨張弁5を通過して低温となった燃料と熱交換されることで冷却される。熱交換器6を通過した冷却水は放熱器3に流入し、冷却ファン4の送風を受けて放熱することにより更に冷却される。このように、燃料電池2に供給される燃料の一部を冷媒として、冷却回路8を循環する冷却水を冷却することにより、冷却回路8の冷却性能を向上させることができる。
【0016】
冷却回路8には、冷却回路8を循環する冷却水の温度Tcを検出する温度センサ16が設けられている。燃料供給管9には、燃料電池2に供給される燃料の温度Tfを検出する温度センサ17が設けられている。コントローラ18は、温度センサ16で検出した冷却水の温度Tcに応じて電動モータ11を制御し、温度センサ17で検出した燃料の温度Tfに応じて圧縮機7を制御する。なお、本実施例では、燃料電池2を冷却した直後の冷却水の温度を検出するように燃料電池2の直下流位置に温度センサ17を配置しているが、燃料電池2を冷却する直前の冷却水の温度を検出するように燃料電池2の直上流位置に配置しても良い。
【0017】
図2は、コントローラ18の冷却ファン4の制御に関わる処理を示すフローチャートである。コントローラ18は、燃料電池2を通過した冷却水の温度Tc(温度センサ17の検出値)を取得し(ステップS101)、冷却水の温度Tcが所定の閾値Tcth未満であるか否かを判定する(ステップS102)。ステップS102の判定結果がYESである場合は、冷却ファン4の駆動を開始、または回転数を上げ(ステップS103)、当該フローを終了する。ステップS102の判定結果がNOである場合は、冷却ファン4の駆動を停止し、または回転数を下げ(ステップS104)、当該フローを終了する。これにより、冷却回路8による燃料電池2の冷却効率を向上させるとともに、冷却回路8を循環する冷却水の温度Tcを適温に維持することが可能となる。
【0018】
図3は、コントローラ18の圧縮機7の制御に関わる処理を示すフローチャートである。コントローラ18は、燃料電池2に供給される燃料の温度Tf(温度センサ17の検出値)を取得し(ステップS201)、燃料の温度Tfが所定の閾値Tfth未満であるか否かを判定する(ステップS202)。ステップS202の判定結果がYESである場合は、圧縮機7の駆動を開始し、または回転数を上げ(ステップS203)、当該フローを終了する。ステップS202の判定結果がNOである場合は、圧縮機7の駆動を停止し、または回転数を下げ(ステップS204)、当該フローを終了する。これにより、燃料供給管9を通過する燃料の温度Tfが適温に維持されるため、燃料電池2内で燃料が凍結することを防止することが可能となる。
【0019】
(まとめ)
第1の実施例では、燃料電池2と、燃料電池2の燃料を貯留する燃料タンク1と、冷却水を循環させて燃料電池2を冷却する冷却回路8とを備えた燃料電池冷却システム100において、燃料タンク1から供給される燃料を流通させる燃料流路10と、冷却回路8を循環する冷却水と燃料流路10を流通する燃料との間で熱交換させることにより、冷却回路8を循環する冷却水を冷却する熱交換器6とを備える。
【0020】
以上のように構成した第1の実施例によれば、燃料電池2に供給される燃料の一部を冷媒として、冷却回路8を循環する冷却水を冷却することができるため、冷却回路8の冷却性能を向上させることが可能となる。その結果、冷却回路8を短縮して冷却水の量を低減することにより、冷却回路8のメンテナンス性を向上させるとともにライフサイクルコストを抑制することが可能となる。なお、燃料流路10を通過した燃料は燃料電池2で消費され、燃料流路10内に長時間滞留することはないため、燃料流路10のメンテナンスは不要である。
【0021】
また、第1の実施例における燃料電池冷却システム100は、冷却回路8を循環する冷却水の熱を放熱する放熱器3と、放熱器3に送風する冷却ファン4と、冷却回路8を循環する冷却水の温度を検出する第1温度センサ16と、第1温度センサ16で検出した冷却水の温度Tcに応じて冷却ファン4を制御するコントローラ18とを備える。これにより、冷却回路8による燃料電池2の冷却性能を向上させるとともに、冷却回路8を循環する冷却水の温度Tcを適温に維持することが可能となる。
【0022】
また、第1の実施例における燃料電池冷却システム100は、燃料タンク1から燃料電池2に燃料を供給する燃料供給管9を備え、燃料流路10の上流側端部10aおよび下流側端部10bは、燃料供給管9に接続されている。これにより、燃料タンク1に加工を施すことなく燃料流路10を設けることが可能となる。
【0023】
また、第1の実施例における燃料電池冷却システム100は、燃料供給管9に設けられたレギュレータ20を備え、燃料流路10の上流側端部10aは、燃料供給管9においてレギュレータ20よりも下流側に配置され、燃料流路10の下流側端部10bは、燃料供給管9において上流側端部10aよりも下流側に配置されている。これにより、燃料流路10に流入する燃料の温度をより低下させることが可能となる。
【0024】
また、第1の実施例における燃料電池冷却システム100は、燃料流路10の熱交換器6よりも上流側に設けられ、燃料を減圧させる膨張弁5と、燃料流路10の熱交換器6よりも下流側に設けられ、膨張弁5により減圧させた燃料を圧縮させる圧縮機7と、燃料供給管9を流通する燃料の温度Tfを検出する第2温度センサ17と、第2温度センサ17で検出された燃料の温度Tfに応じて圧縮機7を制御するコントローラ18とを備える。これにより、燃料電池2に供給される燃料の温度Tfが適温に維持されるため、燃料電池2内で燃料が凍結することを防止することが可能となる。
以上のように構成した第2の実施例によれば、第1の実施例と同様に、冷却回路8による燃料電池2の冷却性能を向上させるとともに、冷却回路8を循環する冷却水の温度Tcを適温に維持することが可能となる。