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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140500
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20241003BHJP
   F01P 5/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 E
F01P5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051662
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】除村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】儘田 知憲
(72)【発明者】
【氏名】東 祐司
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AB09
3D038AC02
3D038AC03
3D038AC12
3D038AC14
3D038AC20
3D038AC25
(57)【要約】
【課題】 上部旋回体が旋回動作するときに発生するジャイロモーメントを抑えることにより、ファン装置の軸体の耐久性を向上させる。
【解決手段】 油圧ショベル1は、操作装置11Lを操作して上部旋回体4が旋回するときの旋回角速度ωを測定する角速度測定装置15と、電動モータ13C,14Cの回転数を測定する回転数測定装置16と、冷却対象の流体の温度を測定する流体温度測定装置17と、外気の温度を測定する外気温度測定装置18と、を備えている。制御装置19は、冷却水、作動油の温度が所定の値よりも低く、外気の温度が所定の値よりも低く、モータ回転数Nが所定の値以上の状態において、旋回角速度ωが所定の値以上になったときに、モータ回転数Nを所定の値よりも低いモータ回転数N2にすることにより、軸体13B,14Bに作用するジャイロモーメントを抑制する制御を行う。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回可能な上部旋回体を有し、
前記上部旋回体には、熱交換器に対して冷却風を送風させる冷却ファンと、前記冷却ファンを回転させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、が設けられた建設機械において、
前記制御装置は、前記電動モータが所定の回転数以上で駆動している状態で、前記上部旋回体の旋回角速度が所定の旋回角速度以上となった場合には、前記電動モータの回転数を前記所定の回転数よりも低くした回転数で前記電動モータを駆動させることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記熱交換器による冷却対象の流体の温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記温度センサにより検出された前記流体の温度に基づいて前記電動モータの回転数を設定して駆動させることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記上部旋回体の旋回動作を指示する操作装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記操作装置の操作量から前記上部旋回体の旋回角速度を推定することを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記上部旋回体の旋回角速度の変化に応じて、前記電動モータの回転数を変化させることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2に記載の建設機械において、
前記制御装置は、前記電動モータが所定の回転数以上で駆動している状態で、前記上部旋回体の旋回角速度が所定の旋回角速度以上となった場合であっても、前記温度センサにより検出された前記流体の温度が所定温度未満のときには、前記電動モータの回転数を前記所定の回転数で制御させることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱交換器に冷却風を供給するファン装置を旋回可能な上部旋回体に備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、を備えている。
【0003】
上部旋回体は、旋回フレームと、旋回フレームの前側に設けられ、オペレータが搭乗するキャブと、キャブ内に設けられ、操作されることにより作業装置を回動させたり、上部旋回体を旋回させたりする操作装置と、旋回フレームに設けられ、原動機の冷却水、作動油等の流体を冷却する熱交換器と、熱交換器に冷却風を供給する冷却ファンと、を備えている。
【0004】
冷却ファンは、エンジン等の原動機の出力軸にベルトやビスカスクラッチを介して連結されることで、原動機によって駆動される。また、冷却ファンは、油圧モータによって駆動される。しかし、原動機によって冷却ファンを駆動する構造では、原動機の負荷が増大する。また、油圧モータによって冷却ファンを駆動する場合でも、原動機によって駆動される油圧ポンプからの作動油を利用するので、原動機の負荷が増大する。
【0005】
そこで、油圧ショベルには、原動機の負荷が増大しないように、電動式のファン装置を備えたものがある。ファン装置は、熱交換器に対面した冷却ファンと、冷却ファンの回転中心に接続された軸体と、軸体を回転駆動する電動モータと、により構成されている(特許文献1)。電動式のファン装置は、例えば、冷却水の熱交換器、作動油の熱交換器等に対し、それぞれ専用に設けられている。また、ファン装置を備えた油圧ショベルは、ファン装置の電動モータを制御する制御装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-198135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のように、冷却水の熱交換器、作動油の熱交換器等に対し、それぞれ専用のファン装置が設けられる構成では、1個の熱交換器だけに冷却風を供給できればよいから、ファン装置が小型化する。
【0008】
ここで、上部旋回体は、下部走行体上で旋回動作し、ファン装置は、電動モータによって冷却ファンを高速で回転させている。従って、電動モータによって冷却ファンを高速で回転させている状態で、上部旋回体が旋回動作すると、ジャイロモーメントが発生する場合がある。ジャイロモーメントは、回転している物体に外部から自転軸を回すようにモーメントが加えられるとき、モーメント軸および自転軸の両方と直交する軸方向に作用する力(モーメント)である。
【0009】
特許文献1では、ファン装置を小型化したことにより、電動モータと冷却ファンとを接続する軸体も小径になるから、軸体がジャイロモーメントを受けることで耐久性が低下する虞があるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、ファン装置の耐久性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、旋回可能な上部旋回体を有し、前記上部旋回体には、熱交換器に対して冷却風を送風させる冷却ファンと、前記冷却ファンを回転させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御装置と、が設けられた建設機械において、前記制御装置は、前記電動モータが所定の回転数以上で駆動している状態で、前記上部旋回体の旋回角速度が所定の旋回角速度以上となった場合には、前記電動モータの回転数を前記所定の回転数よりも低くした回転数で前記電動モータを駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建設機械は、ファン装置の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの左側面図である。
図2】上部旋回体を簡略化して示す平面図である。
図3】ジャイロモーメントの発生状況を示す説明図である。
図4】冷却ファンの制御システムを示す構成図である。
図5】冷却ファンの制御装置の処理を示すフローチャートである。
図6】旋回角速度とモータ回転数との関係を示す特性線図である。
図7】本発明の第2の実施形態による冷却ファンの制御システムを示す構成図である。
図8】第2の実施形態による冷却ファンの制御装置の処理を示すフローチャートである。
図9】変形例による旋回角速度とモータ回転数との関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0015】
図1ないし図6は第1の実施形態を示している。図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に回動可能に設けられた作業装置5と、により構成されている。作業装置5は、回動することで土砂の掘削作業等を行う。
【0016】
下部走行体2は、トラックフレーム2Aの左右両側に駆動輪、遊動輪および履帯からなる走行装置2B(左側のみ図示)を備えている。走行装置2Bは、駆動輪を走行油圧モータで回転させることによって履帯を周回動作させて前進走行、後進走行する。また、左右の走行装置2Bに速度差を持たせたり、履帯の周回方向を逆にしたりすることにより、左右に曲がったり、その場で旋回したりすることができる。
【0017】
旋回装置3は、中心点O1(旋回軸線O1-O1)を中心にして下部走行体2上で上部旋回体4を矢示A方向または矢示B方向(図2参照)に旋回させる。旋回装置3は、下部走行体2のトラックフレーム2Aと上部旋回体4の旋回フレーム6との間に設けられ、中心点O1(旋回軸線O1-O1)を中心とする円環状の軸受からなる旋回輪3Aと、旋回輪3Aの内輪に噛合して上部旋回体4を旋回させる旋回油圧モータ(図示せず)と、を備えている。
【0018】
上部旋回体4は、旋回フレーム6と、旋回フレーム6の左前側に搭載され、内部に運転室を形成するキャブ7と、旋回フレーム6の後部に取付けられ、作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト8と、キャブ7とカウンタウエイト8との間に位置して旋回フレーム6に搭載されたエンジンと、エンジンによって駆動され、油圧アクチュエータに圧油(作動油)を供給する油圧ポンプ(いずれも図示せず)と、流体を冷却する熱交換器9と、後述のファン装置13,14、制御装置19と、を含んで構成されている。なお、エンジンに代えて、電動モータやエンジンと電動モータとを組み合わせたハイブリッドエンジンを用いることもできる。
【0019】
キャブ7内には、オペレータが座る運転席10が設けられている。また、運転席10の前側には、下部走行体2を走行させる走行用の操作装置(図示せず)が設けられている。運転席10の左右には、レバーを前後、左右に傾転させることにより、作業装置5を回動させたり、上部旋回体4を旋回させたりする作業用の操作装置11L,11Rが設けられている。
【0020】
熱交換器9は、エンジン、電動モータ等の原動機を冷やす流体としての冷却水を冷却するラジエータ、流体としての作動油を冷却するオイルクーラ、エンジンに設けられた過給機(図示せず)で圧縮された流体としての空気(吸気)を冷却するインタクーラ、空調装置に用いる流体としての冷媒を冷却するコンデンサ、エンジンに供給する流体としての燃料を冷却する燃料クーラ等がある。例えば、本実施形態では、ラジエータ9Aとオイルクーラ9Bとを前後方向に並んで配置した場合を例示している。そして、前側のラジエータ9Aには、ファン装置13が配置され、後側のオイルクーラ9Bには、ファン装置14が配置されている。
【0021】
センタジョイント12は、下部走行体2のトラックフレーム2Aと上部旋回体4の旋回フレーム6との間に設けられている。センタジョイント12は、旋回装置3の旋回輪3Aの中心点O1(旋回軸線O1-O1)に配置されている。センタジョイント12は、上部旋回体4の旋回動作を許しつつ、下部走行体2と上部旋回体4との間で作動油や電気を流通させる。
【0022】
前側のファン装置13は、ラジエータ9Aに対面した軸流式の冷却ファン13Aと、冷却ファン13Aの回転中心に接続された軸体13Bと、軸体13Bを回転駆動する電動モータ13Cと、により構成されている。ファン装置13は、電動モータ13Cによって軸体13Bの中心を通る軸線O2-O2を中心にして軸体13Bと一緒に冷却ファン13Aを回転することにより、冷却ファン13Aで発生した冷却風をラジエータ9Aに供給する。ファン装置13は、制御装置19によって電動モータ13C(冷却ファン13A)の回転数が制御される。
【0023】
後側のファン装置14は、オイルクーラ9Bに対面した軸流式の冷却ファン14Aと、冷却ファン14Aの回転中心に接続された軸体14Bと、軸体14Bを回転駆動する電動モータ14Cと、により構成されている。ファン装置14は、電動モータ14Cによって軸体14Bの中心を通る軸線O3-O3を中心にして軸体14Bと一緒に冷却ファン14Aを回転することにより、冷却ファン14Aで発生した冷却風をオイルクーラ9Bに供給する。ファン装置14は、制御装置19によって電動モータ14C(冷却ファン14A)の回転数が制御される。
【0024】
角速度測定装置15は、旋回装置3または旋回装置3の近傍に設けられている(図2参照)。角速度測定装置15は、操作装置11Lのレバーまたは操作装置11Rのレバーを操作して上部旋回体4が矢示A方向または矢示B方向に旋回するときの旋回角速度を測定する。図4に示すように、角速度測定装置15は、制御装置19に電気的に接続されている。そして、角速度測定装置15が測定したデータは、制御装置19に出力される。
【0025】
回転数測定装置16は、ファン装置13,14にそれぞれ設けられている。回転数測定装置16は、電動モータ13C,14Cの回転数(冷却ファン13A,14Aの回転数)を測定する。そして、回転数測定装置16が測定したデータは、制御装置19に出力され、フィードバック制御に利用される。
【0026】
流体温度測定装置17は、熱交換器9による冷却対象の流体の温度を測定する温度センサである。具体的には、流体温度測定装置17は、ラジエータ9A内を流れる冷却水の温度、オイルクーラ9B内を流れる作動油の温度を測定する。そして、流体温度測定装置17が測定した温度のデータは、制御装置19に出力される。流体温度測定装置17が測定した流体の温度は、ファン装置13,14の電動モータ13C,14Cの目標回転数の決定に利用される他、オーバヒートになるか否かの判断に利用される。
【0027】
外気温度測定装置18は、外気の温度を測定する。そして、外気温度測定装置18が測定した温度のデータは、制御装置19に出力される。外気温度測定装置18が測定した外気の温度は、ファン装置13,14の電動モータ13C,14Cの目標回転数の決定に利用される他、オーバヒートになるか否かの判断に利用される。なお、外気温度測定装置18は、省略することもできる。
【0028】
制御装置19は、上部旋回体4に設けられている。制御装置19は、ファン装置13,14の電動モータ13C,14Cを制御する。制御装置19の入力側には、角速度測定装置15、回転数測定装置16、流体温度測定装置17、外気温度測定装置18が接続されている。制御装置19の出力側には、ファン装置13,14の電動モータ13C,14Cが接続されている。
【0029】
制御装置19は、冷却対象の流体、例えば、エンジンの冷却水の温度が所定の値よりも低く、電動モータ13Cのモータ回転数N1が所定のモータ回転数よりも高い状態において、上部旋回体4の旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1よりも高くなったときに、電動モータ13Cのモータ回転数N1をモータ回転数N2まで低くする。この制御を行うことにより、上部旋回体4の旋回動作時に軸体13Bに作用するジャイロモーメントを抑制することができる。
【0030】
図3に示すように、ファン装置13の冷却ファン13Aが矢示C方向に回転した状態で、上部旋回体4が軸線O1-O1を中心にして矢示A方向に旋回動作したときに、電動モータ13Cのモータ回転数Nが所定のモータ回転数よりも高く、旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1よりも高くなっていると、回転しているファン装置13の軸体13Bには、矢示D方向にジャイロモーメントが作用する。
【0031】
なお、本実施形態では、電動モータ13Cのモータ回転数Nの制御に用いる所定のモータ回転数には、幅を持たせている。
【0032】
次に、ファン装置13の冷却ファン13Aを回転させつつ、上部旋回体4を旋回動作させたときに軸体13Bに作用するジャイロモーメントを抑制する制御装置19の処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、図5のフローチャートでは、処理の流れを示すステップを「S」と表示している。ファン装置14の制御に関する処理は、ファン装置13と同様であるために省略する。
【0033】
図5のステップ1では、流体温度測定装置17によって測定した冷却水の温度T1を取得し、外気温度測定装置18によって測定した外気の温度T2を取得する。続いて、ステップ2では、ステップ1で取得した冷却水の温度T1、外気の温度T2に基づいて、冷却ファン13A(電動モータ13C)のモータ回転数N1を算出する。本実施形態では、制御装置19は、例えば予め定められたデータテーブル(MAP)を用いて、モータ回転数N1を算出する。
【0034】
ステップ3では、角速度測定装置15が測定した上部旋回体4が旋回動作したときの旋回角速度ωを取得する。続くステップ4では、上部旋回体4が旋回動作したときの旋回角速度ωが図6に示す所定の旋回角速度ω1以上か否かを判定する。このステップ4で、上部旋回体4の旋回角速度ωが旋回角速度ω1に満たない、即ち、NOと判定されたら、上部旋回体4を旋回動作させたときにジャイロモーメントが発生する虞がない。従って、ステップ5に移って、電動モータ13C(冷却ファン13A)をモータ回転数N1で制御する。
【0035】
一方、ステップ4で、上部旋回体4の旋回角速度ωが旋回角速度ω1以上、即ち、YESと判定されたら、上部旋回体4を旋回動作させたときにジャイロモーメントが発生する虞があるからステップ6に移る。
【0036】
ステップ6では、冷却水の温度T1が所定の流体温度Ta未満か否かを判定する。この所定の流体温度Taは、以降のステップで電動モータ13Cをモータ回転数N1よりも低いモータ回転数で制御したとしても、オーバヒートが発生しない(発生したとしても軽度で済む)温度である。そして、ステップ6で、冷却水の温度T1が所定の流体温度Ta未満ではない、即ち、NOと判定されたら、電動モータ13Cをモータ回転数N1よりも低いモータ回転数で制御した場合、オーバヒートが発生する虞がある。従って、ステップ5に移って、電動モータ13C(冷却ファン13A)をモータ回転数N1で制御する。
【0037】
一方、ステップ6で、冷却水の温度T1が所定の流体温度Ta未満、即ち、YESと判定されたら、電動モータ13Cをモータ回転数N1よりも低いモータ回転数で制御しても、オーバヒートが発生しない、または発生したとしても軽度で済むことからステップ7に移る。
【0038】
ステップ7では、旋回角速度ωに応じ、電動モータ13Cのモータ回転数N1よりも低いモータ回転数N2を算出する。続いて、ステップ8に移って、電動モータ13C(冷却ファン13A)をモータ回転数N2で制御する。本実施形態では、制御装置19は、例えば予め定められたデータテーブル(MAP)を用いて、モータ回転数N2を算出する。
【0039】
本実施形態に適用された油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0040】
オペレータは、キャブ7に搭乗して運転席10に座り、走行用の操作装置のレバーを操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。また、作業用の操作装置11L,11Rのレバーを操作することにより、旋回装置3で上部旋回体4を旋回させたり、作業装置5を回動させたりして土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0041】
かくして、本実施形態によれば、電動モータ13C,14Cを制御する制御装置19は、電動モータ13C,14Cが所定の回転数以上で駆動している状態で、上部旋回体4の旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1以上となった場合には、電動モータ13C,14Cの回転数を所定の回転数よりも低くした回転数N1で電動モータ13C,14Cを駆動させる制御を行う。
【0042】
従って、上部旋回体4が旋回動作するときに発生するジャイロモーメントを抑えることができる。この結果、ファン装置13,14の小型化によって軸体13B,14Bが小径になった場合でも、軸体13B,14Bの耐久性を向上することができる。
【0043】
また、実施形態では、ラジエータ9A内を流れる冷却水の温度、オイルクーラ9B内を流れる作動油の温度を測定する温度センサとしての流体温度測定装置17をさらに備えている。制御装置19は、流体温度測定装置17により検出された冷却水、作動油の温度に基づいて電動モータ13C,14Cの回転数を設定して駆動させることができる。
【0044】
次に、図7および図8は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、操作装置を操作したときの操作量を測定する操作量測定装置を備えることにより、操作装置を操作したときの操作量から上部旋回体の旋回角速度を予測して制御を行うことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0045】
図7において、第1の実施形態の角速度測定装置15に代えて設けられた操作量測定装置21は、操作装置11L,11Rのうち、上部旋回体4の旋回操作を行う操作装置、例えば、左側の操作装置11Lに設けられている。操作量測定装置21は、操作装置11Lのレバーを操作したときの操作量を測定する。そして、操作量測定装置21が測定したデータは、制御装置22に出力される。
【0046】
この場合、操作装置11Lのレバーは、大きく傾転させるほど、上部旋回体4の旋回角速度ωが高くなるから、操作量測定装置21が測定した操作装置11Lの操作量は、ファン装置13,14の制御に利用することができる。なお、右側の操作装置11Rによって旋回操作が行われる場合には、操作量測定装置21は、操作装置11Rに設けられる。
【0047】
第2の実施形態による制御装置22は、第1の実施形態の制御装置19と同様に、上部旋回体4に設けられ、ファン装置13,14の電動モータ13C,14Cを制御する。制御装置22の入力側には、角速度測定装置15に代えて操作量測定装置21が接続されている。
【0048】
制御装置22は、操作量測定装置21からレバーを操作したときの操作量が入力されると、この操作量から上部旋回体4の旋回角速度ωを予測する。そして、予測した旋回角速度ωを所定の旋回角速度ω1と比較する。この制御でも、上部旋回体4の旋回動作時に軸体13Bに作用するジャイロモーメントを抑制することができる。
【0049】
次に、制御装置22の処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、図8のフローチャートは、ステップ11~18で構成されるが、ステップ11,12,15~18は、図5のフローチャートのステップ1,2,5~8と同様であるために、説明を省略する。また、処理の流れを示すステップを「S」と表示している。ファン装置14の制御に関する処理は、ファン装置13と同様であるために省略する。
【0050】
図8のステップ13では、操作量測定装置21が測定した操作装置11Lのレバーの操作量(例えば、レバーの傾転角度)から上部旋回体4が旋回動作するときの旋回角速度ωを予測する。続くステップ14では、ステップ13で予測した旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1以上か否かを判定する。このステップ14で、予測した上部旋回体4の旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1以上、即ち、YESと判定されたら、上部旋回体4を旋回動作させたときにジャイロモーメントが発生する虞があるからステップ15に移る。
【0051】
一方、ステップ14で、予測した上部旋回体4の旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1に満たない、即ち、NOと判定されたら、上部旋回体4を旋回動作させたときにジャイロモーメントが発生する虞がない。従って、ステップ16に移る。
【0052】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施形態では、操作量測定装置21が測定した操作装置11Lの操作量から制御装置22で上部旋回体4の旋回角速度ωを予測し、この予測した旋回角速度ωを電動モータ13C,14Cの制御に利用している。
【0053】
この場合、冷却ファン13A,14Aは、回転数を急激に増減できるものではない。これに対し、制御装置22は、上部旋回体4の旋回動作を予測することにより、電動モータ13C,14Cのモータ回転数Nの制御タイミングを上部旋回体4の旋回動作に合わせることができる。
【0054】
なお、第1の実施形態では、図6に示したように、制御装置19は、上部旋回体4の旋回角速度ωが所定の旋回角速度ω1以上になったときに、電動モータ13C,14Cのモータ回転数N1をモータ回転数N2に減速させる制御を行った場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、図9に示す特性線図のように制御してもよい。具体的には、制御装置は、上部旋回体4の旋回角速度ωの変化に応じて、電動モータ13C,14Cのモータ回転数Nを変化させるように制御してもよい。換言すると、上部旋回体4の旋回角速度ωが高くなるに従って電動モータ13C,14Cのモータ回転数Nを徐々に低くするように制御してもよい。この制御方法でも、ジャイロモーメントの発生を抑制することができる。この制御方法は、第2の実施形態にも同様に適用することができる。
【0055】
第1の実施形態では、角速度測定装置15によって測定した上部旋回体4の旋回角速度ωを制御に用い、第2の実施形態では、操作量測定装置21によって測定した操作装置11Lの操作量から上部旋回体4の旋回角速度ωを予測し、予測した旋回角速度ωを制御に用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、角速度測定装置15で測定した旋回角速度ωと予測した旋回角速度ωとを組み合せて制御するようにしてもよい。
【0056】
各実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、建設機械としてホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等の旋回機構を備えた建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 旋回装置
4 上部旋回体
6 旋回フレーム
7 キャブ
9 熱交換器
9A ラジエータ
9B オイルクーラ
11L,11R 操作装置
13,14 ファン装置
13A,14A 冷却ファン
13B,14B 軸体
13C,14C 電動モータ
15 角速度測定装置
16 回転数測定装置
17 流体温度測定装置(温度センサ)
18 外気温度測定装置
19,22 制御装置
21 操作量測定装置
N(N1,N2) モータ回転数
ω 旋回角速度
ω1 所定の旋回角速度
T1 流体の温度
T2 外気の温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9