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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140506
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】掃除機
(51)【国際特許分類】
   A47L 7/00 20060101AFI20241003BHJP
   A47L 11/202 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A47L7/00 A
A47L11/202
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051669
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】井上 幹允
(72)【発明者】
【氏名】藤田 孝一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 理基
(72)【発明者】
【氏名】裏 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 紘明
(72)【発明者】
【氏名】重藤 元暢
(72)【発明者】
【氏名】土屋 武士
(57)【要約】
【課題】小型の装置でミストを発生することができる掃除機を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、水を貯留する貯液部と、貯液部内の水をミストにしてノズルケースの周囲に放出するミスト生成部と、備えている。ミスト生成部は、開口部を塞ぐように設けられた振動膜と、貯液部内の水を流動させるように振動膜を振動させる振動発生部と、を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、
前記吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、
液体を貯留する貯液部と、
前記貯液部内の液体から前記ノズルケースの周囲に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備え、
前記ミスト生成部は、前記貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、前記貯液部内の液体を流動させるように前記振動膜を振動させる振動発生部と、を有しており、
前記振動膜には、前記振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、前記振動膜が振動しているときに前記貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、前記複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら前記貯液部の外に放出される、掃除機。
【請求項2】
前記吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるように前記ノズルケースに保持されたブラシローラを、更に備え、
前記貯液部には、液体として水が貯留され、
前記ブラシローラは、前記ノズルケースに回転可能に保持されたローラ本体と、前記ローラ本体の外周面から突出して床面に接触する親水性のブラシと、を有している、請求項1に記載の掃除機。
【請求項3】
前記貯液部は、前記ノズルケースに配置されている、請求項1又は2に記載の掃除機。
【請求項4】
前記吸引源の吸引力により前記吸込空間に吸い込まれた塵埃が流入するように前記吸込空間の後側で前記ノズルケースに接続された吸引管を更に備え、
前記ノズルケースには、前記吸引管内の流路と前記吸込空間とを連通させるように、前記吸引管の先端から前方に延設されて前記吸込空間に向けて開口した連通路が形成されており、
前記ブラシローラは、前記ノズルケースを床面から浮いた状態で支持するように構成されており、
前記ミスト生成部は、前記ノズルケースの前側にミストが落下するように前記ノズルケースに設けられており、
前記振動膜は、前記連通路の開口の前側の位置に放出されるミストが前記連通路の前記開口に対して左斜め前側又は右斜め前側の位置に放出されるミストよりも少なくなるように設けられている、請求項2に記載の掃除機。
【請求項5】
前記振動膜は、前記連通路の前記開口に対して左側又は右側の位置に配置されている、請求項4に記載の掃除機。
【請求項6】
前記振動膜は、前記連通路の前記開口に対して前側又は左側において、前記複数の放出孔から左斜め前にミストが放出される向きで配置されている、請求項4に記載の掃除機。
【請求項7】
前記振動膜は、前記連通路の前記開口に対して前側又は右側において、前記複数の放出孔から右斜め前にミストが放出される向きで配置されている、請求項4に記載の掃除機。
【請求項8】
前記複数の放出孔は、前記振動膜の内面から下向き又は斜め下向きに貫通している、請求項1又は2に記載の掃除機。
【請求項9】
前記振動膜は、前記ノズルケースの前端よりも後側に配置されており、
前記複数の放出孔は、ミストが前記ノズルケースの前側に落下するように、前記振動膜の内面から前向きに貫通している、請求項8に記載の掃除機。
【請求項10】
前記複数の放出孔を通じて前記振動膜から放出されるミストに対して可視光を照射することにより、ミストが放出されていることを使用者に知らせる放出通知部を更に備えている、請求項1又は2に記載の掃除機。
【請求項11】
塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、
前記吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、前記吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるように前記ノズルケースに保持されたブラシローラと、を有している吸込ノズルと、
液体を貯留する貯液部と、
前記貯液部内の液体から前記吸込空間内に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備え、
前記ミスト生成部は、前記貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、前記貯液部内の液体を流動させるように前記振動膜を振動させる振動発生部と、を有しており、
前記振動膜には、前記振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、前記振動膜が振動しているときに前記貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、前記複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら前記貯液部の外に放出される、掃除機。
【請求項12】
前記貯液部には、液体として水が貯留され、
前記ブラシローラは、前記ノズルケースによって回転可能に保持されたローラ本体と、前記ローラ本体の外周面から突出した親水性のブラシと、を有している、請求項11に記載の掃除機。
【請求項13】
前記振動膜は、前記振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されている、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【請求項14】
前記貯液部には、前記開口に対して左側又は右側において液体の流出を許容する他の開口が形成されており、
前記ミスト生成部は、前記他の開口を塞ぐように設けられた他の振動膜を有しており、
前記振動発生部は、前記振動膜と前記他の振動膜とを振動させることにより前記貯液部内の液体に圧力変動を生じさせるように構成されており、
前記他の振動膜には、前記他の振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有している一方で、前記他の振動膜が振動しているときに前記貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、前記複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら前記貯液部の外に放出される、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【請求項15】
前記開口は、前記貯液部の底部に形成されている、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【請求項16】
前記振動発生部は、交流電圧の印加により伸縮する圧電素子と、前記圧電素子に交流電圧を印加する電圧印加部と、を有しており、
前記圧電素子は、前記圧電素子の伸縮により前記振動膜が振動するように前記振動膜に接続されている、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【請求項17】
前記貯液部内の液体の温度を検出する温度センサと、
前記貯液部内の液体を加熱するヒータと、
前記温度センサが検出する温度が所定の目標値に近づくように前記ヒータを制御する加熱制御部と、を更に備えている、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【請求項18】
前記ノズルケースが床面から持ち上げられた状態になっているか否かを検出する離床検出部と、
前記振動発生部を制御する振動制御部と、を更に備え、
前記振動制御部は、前記ノズルケースが床面から持ち上げられた状態になっていることを前記離床検出部が検出すると前記振動発生部を停止させるように構成されている、請求項1、2、11又は12に記載の掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストを放出しながら塵埃を吸引する掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図20に示す掃除機300が開示されている。この掃除機300は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源311を内蔵した掃除機本体310と、掃除機本体310から延設された吸引管320と、吸引管320の先端に取り付けられて床面上を移動する吸込ノズル330と、を備えている。吸込ノズル330は、吸引源311の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成している。吸込ノズル330の上面には、ミストを発生するミスト発生部340が搭載されている。
【0003】
ミスト発生部340は、図21に示すように、水を貯留する貯水部341と、貯水部341内に収容された超音波発生器342と、を有している。貯水部341は、超音波発生器342が水中内に完全に沈んだ状態が得られるとともに、超音波発生器342上で水柱を形成可能な空間を得ることが可能な容積を有している。また、貯水部341には、この空間を貯水部341の外に連通させる放出口343が形成されている。
【0004】
超音波発生器342が超音波を発生させると、超音波発生器342の上側の空間に水柱が立つ。この水柱から微細な水滴(ミスト)が放出され、この水滴は、貯水部341の放出口343を通じて、貯水部341の外に出る。放出口343を通じて外部に放出された微細な水滴は、重力作用により、吸込ノズル330の周囲に落下する。水滴が床面に落下するまでの間、空中で浮遊している塵埃は水滴に付着し、水滴とともに床面に落下する。また、床面に落下した水滴によって、床面が濡れ、床面から舞い上がる塵埃が減る。この結果、掃除機300によって吸引可能な塵埃が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5239730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波発生器342がミストの生成に利用される場合、超音波発生器342は、水中に完全に沈められた状態で貯水部341内に配置される必要がある。このため、貯水部341の容積は、超音波発生器342の体積分だけ減る。言い換えると、貯水部341に貯留することができる水量が減る。また、超音波発生器342によるミストの発生技術では、水柱を立てる空間を形成する必要があるので、貯水部341は、高さ方向に大きくなる。
【0007】
本開示は、超音波発生器を用いることなく、ミストを発生することができる掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体からノズルケースの周囲に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備えている。ミスト生成部は、貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、貯液部内の液体を流動させるように振動膜を振動させる振動発生部と、を有している。振動膜には、振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、振動膜が振動しているときに貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。
【0009】
本開示における他の掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるようにノズルケースに保持されたブラシローラと、を有している吸込ノズルと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体から吸込空間内に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備えている。ミスト生成部は、貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、貯液部内の液体を流動させるように振動膜を振動させる振動発生部と、を有している。振動膜には、振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、振動膜が振動しているときに貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。
【発明の効果】
【0010】
上述の掃除機は、小型の装置でミストを発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】掃除機の概略的な斜視図(第1実施形態)
図2】掃除機の吸込ノズルの斜視図
図3】吸込ノズルの断面図
図4】吸込ノズルの展開斜視図
図5】吸込ノズルに搭載される貯液部の断面図
図6】貯液部に取り付けられる振動膜及び圧電素子の正面図
図7】吸込ノズルの斜視図
図8】振動膜を通じて放出されたミストを可視化する放出通知部を有している吸込ノズルの展開斜視図
図9】ヒータを内部に設けた貯液部の断面図
図10】吸込ノズルの斜視図(第2実施形態)
図11】圧電素子に交流電圧を印加するための回路構成図
図12】吸込ノズルの斜視図
図13】左斜め前方及び右斜め前方にミストを放出するように振動膜が取り付けられた吸込ノズルの斜視図
図14】追加的な貯液部が吸引管に取り付けられた掃除機の斜視図
図15】吸込ノズルの内部の吸込空間にミストを放出可能に構成された貯液部の斜視図(第3実施形態)
図16】吸込ノズルの斜視図
図17】吸込ノズルの底面図
図18】掃除機の吸込ノズルの斜視図(第4実施形態)
図19】掃除機の吸込ノズルの斜視図
図20】従来の掃除機の断面図
図21】従来の掃除機に取り付けられた貯液部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、掃除機の実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、スティック型の掃除機100の斜視図である。図1を参照して、掃除機100を説明する。
【0014】
掃除機100は、掃除機本体110と、掃除機本体110の下側に設けられて塵埃を貯留する貯塵部120と、貯塵部120に隣接して掃除機本体110の下面から下方に延設された吸引管130と、を備えている。また、掃除機本体110の上面からは、使用者が握持可能な太さを有している棒状の握持部140が延設されており、握持部140の外周面には、使用者によって操作される操作部141が設けられている。
【0015】
掃除機本体110は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源111を内蔵している。吸引源111は、掃除機本体110の下側に設けられた貯塵部120から空気を吸い出すように構成されている。吸引源111は、使用者が操作部141を操作することによって、作動したり、停止したりする。
【0016】
貯塵部120は、塵埃を貯留するための円筒形状の容器であり、貯塵部120の上部には、フィルタが設けられている(図示せず)。このフィルタは、空気の通過を許容する一方で、この空気に含まれている塵埃を捕捉するように構成されている。このため、貯塵部120内の空気が吸引源111によって吸い出されても、貯塵部120内の塵埃が掃除機本体110に流入することが防止される。
【0017】
貯塵部120の周壁部には、吸引管130内の流路と貯塵部120の内部空間とを連通させる流入口が形成されている(図示せず)。流入口は、吸引管130から貯塵部120に流入した空気が貯塵部120の周壁部の内面に沿って流れて旋回流になるように形成されている。吸引管130から貯塵部120に流入した空気に含まれる塵埃は、貯塵部120内の旋回流によって遠心分離されて、貯塵部120内に貯留される。
【0018】
吸引管130の先端には、吸込ノズル150が接続されており、使用者は、吸込ノズル150を、床面上で前進又は後進させることができる。吸込ノズル150は、図2に示すように、吸引管130よりも幅広のノズルケース151と、ノズルケース151内に配置されたブラシローラ161,162と、を有している。ノズルケース151は、左右方向に長い箱形状の後ケース部153と、後ケース部153の左端から前方に突出した左ケース部154と、後ケース部153の右端から前方に突出した右ケース部155と、を有している。また、ノズルケース151は、図1に示すように、後ケース部153の前側で左右方向に延設された前ケース部156と、前ケース部156の前端の下側の空間を閉じるケースカバー152と、を更に有している。前ケース部156は、左ケース部154及び右ケース部155の上部に接続されている。
【0019】
後ケース部153は、左右方向における中央部分において吸引管130と接続可能に構成されている。後ケース部153の内部には、図3に示すように、吸引管130の先端から前方に延びる連通路157が形成されている。
【0020】
後ケース部153の前側には、後ケース部153、左ケース部154、右ケース部155、前ケース部156及びケースカバー152によって区画された吸込空間158が形成されている。吸込空間158の後部において連通路157の前端が前向きに開口しており、吸込空間158は、連通路157を通じて、吸引管130内の流路と連通している。このため、吸引源111の吸引力は、貯塵部120、吸引管130及び連通路157を通じて吸込空間158に作用する。吸込空間158は、図2に示すように、下向きに開口しており、吸引源111の吸引力が吸込空間158に作用すると、吸込空間158の下側にある塵埃は、吸込空間158に吸い込まれる。その後、塵埃は、連通路157及び吸引管130を流れて、貯塵部120に流入する。
【0021】
吸込空間158内において、ブラシローラ161,162が左右に配置されている。左側のブラシローラ161は、左ケース部154によって回転可能に片持ち支持されている。また、右側のブラシローラ162は、右ケース部155によって回転可能に片持ち支持されている。なお、これらのブラシローラ161,162を回転駆動するための2つの駆動モータが後ケース部153に内蔵されており、これらの駆動モータは、使用者が操作部141を操作することによって、作動したり、停止したりする。
【0022】
ブラシローラ161,162は、それぞれ、先端に向けて細くなるローラ本体163と、ローラ本体163の外周面から突出して床面に接触するブラシ164と、を有している。ブラシ164は、ローラ本体163の外周面上で複数の螺旋帯を形成するように設けられた親水性の繊維材料(たとえば、ナイロン系の樹脂繊維(PA6又はPA66)又はポリエチレンテレフタレート(PET))により構成されている。ブラシローラ161,162が回転駆動されると、ブラシ164は、床面に擦れ、床面上の塵埃がブラシ164によって掻き取られる。
【0023】
ブラシ164は、ノズルケース151の前側部分を床面から浮いた状態で支持することができる硬さを有している。ノズルケース151の後側部分を床面から浮いた状態で支持するとともに、ノズルケース151が前後方向に床面上を移動することを補助するために、後ケース部153の底部には、ローラ165,166が設けられている。ノズルケース151は、ブラシローラ161,162及びローラ165,166によって床面から浮いた状態で支持されているので、ノズルケース151自体が床面に擦れることはない。
【0024】
左右方向における後ケース部153の略中央には、図4に示すように、後ケース部153の上面から凹設された収容凹部171が形成されている。収容凹部171は、図3に示すように、連通路157の上側に位置している。収容凹部171の前端は、前ケース部156によって区画されている。左右方向における前ケース部156の略中央には、放出洞172が形成されている。放出洞172は、収容凹部171から斜め下向きに開口している。放出洞172の開口面積は、吸込ノズル150の前端に近づくにつれて大きくなっている。
【0025】
収容凹部171には、水を貯留する略矩形箱状の貯液部180が収容される。貯液部180が収容凹部171に収容されると、貯液部180の上面は、図1に示すように、後ケース部153の上面と略面一になる。貯液部180は、後ケース部153に形成された収容凹部171に収容されるので、前ケース部156及びケースカバー152によって形成される吸込ノズル150の前端よりは後側に配置されている。
【0026】
貯液部180の前壁には、図5に示すように、貯液部180内の水の流出を許容する開口181が形成されている。この前壁の前面からは係合リング183が突出しており、この係合リング183は、図3に示すように、前ケース部156の放出洞172の後端に嵌め込まれる。開口181は、係合リング183から貯液部180の内方(すなわち、後方)に向けて斜め上方に延設されている。
【0027】
貯液部180内の水をミストにして吸込ノズル150の前側に放出するために、吸込ノズル150には、ミスト生成部190が設けられている。ミスト生成部190は、貯液部180の開口181を塞ぐように設けられた振動膜191と、振動膜191を周方向に囲んで振動膜191に接続されたリング状の圧電素子192を有している振動発生部193と、を有している。振動膜191は、開口181の傾斜に合わせて前傾姿勢になっており、振動膜191の内面は、斜め上向きになっている。
【0028】
圧電素子192は、交流電圧が印加されると、径方向に伸縮するように構成されている。振動膜191は、開口181の軸方向(すなわち、図5の矢印A及び矢印Bの方向)に振動可能に構成されている。
【0029】
振動膜191には、図6に示すように、多数の放出孔194が形成されている。振動膜191は、前傾姿勢になっているので、これらの放出孔194は、振動膜191の内面(貯液部180の内部空間に臨む面)から前方に向けて斜め下向きに振動膜191を貫通している。なお、放出孔194は、振動膜191が静止している状態では、貯液部180内の水が通過することを許容しない大きさを有している。
【0030】
振動膜191の振動により、以下のように、ミストが生成されると考えられる。すなわち、振動膜191が図5の矢印Bの方向(貯液部180の外方)に変位すると、振動膜191の内面の近傍において圧力が下がる。この圧力降下に応じて、振動膜191の内面の近傍の水は、外方に変位した振動膜191に向けて流れる。その後、振動膜191が逆向き(貯液部180の内方)に変位すると、振動膜191の変位の向きは、振動膜191の内面の近傍における水の流れ方向とは逆向きになる。この結果、水は、振動膜191の内面に強く当たり、振動膜191の複数の放出孔194を通過する。これらの放出孔194を通過した水は、ミストになって、放射状に広がりながら前ケース部156の放出洞172内を移動し、放出洞172の前端から吸込ノズル150の前側の領域に放出される。
【0031】
圧電素子192に交流電圧を印加するために、圧電素子192には、図6に示すように、一対の電極195,196が取り付けられており、これらの電極195,196からは、電力線197,198が延設されている。電力線197,198の端部は、図4に示すように貯液部180の前壁に取り付けられた電極211,212に接続されている。
【0032】
これらの電極211,212に交流電圧を印加するために、前ケース部156において収容凹部171の前端を区画している面には、図7に示すように、電極213,214が設けられている。電極213,214は、収容凹部171に貯液部180が収容されたときに、貯液部180側の電極211,212に接触する位置に配置されている。また、これらの電極213,214に交流電圧を印加する電圧印加部215が、後ケース部153内に配置されている。
【0033】
電圧印加部215は、吸引源111を起動するための操作部141が操作されると、振動膜191の共振周波数に近い又は等しい周波数の交流電圧を電極213,214に印加するように構成されている。電極213、214は、貯液部180が収容凹部171に収容されている状態では、電極211,212に接続されているので、交流電圧は、電極211,212、電力線197,198及び電極195,196を通じて圧電素子192に印加される。
【0034】
(掃除機の動作の説明)
使用者が操作部141を操作すると、吸引源111は、吸引力を発生させて、貯塵部120内の空気を吸い出す。吸引源111の吸引力は、貯塵部120、吸引管130及び吸込ノズル150の連通路157を通じて吸込空間158に作用する。このとき、吸込空間158内のブラシローラ161,162は、操作部141に対する操作に応じて回転駆動されているので、床面の塵埃を掻き取っている。ブラシローラ161,162によって掻き取られた塵埃は、吸引源111の吸引力によって、吸込空間158から吸い出され、連通路157及び吸引管130を通じて、貯塵部120に流入する。貯塵部120内では、塵埃とともに吸い込まれた空気によって旋回流が生成されているので、貯塵部120に流入した塵埃は、旋回流によって遠心分離され、貯塵部120に貯留される。
【0035】
上述のように塵埃が吸引源111の吸引力によって吸引されている間、貯液部180内の水は、ミストになって吸込ノズル150の前側の領域に放出される。すなわち、操作部141に対する操作に応じて、電圧印加部215は、交流電圧を電極213,214に印加する。この交流電圧は、電極213,214、電力線197,198及び電極195,196を通じて圧電素子192に印加される。
【0036】
圧電素子192は、交流電圧の印加に応じて、径方向に伸縮する。交流電圧の周波数は、振動膜191の共振周波数に近い又は等しいので、圧電素子192の伸縮動作の周波数も、振動膜191の共振周波数に近い又は等しい値になっている。この状態では、振動膜191は、以下に述べるように、矢印A及び矢印Bの方向に大きく振動する(すなわち、振動膜191は、共振状態になる)。
【0037】
圧電素子192が径方向に縮めば、振動膜191は、図5の矢印Bの方向に撓んだ状態になり得る。そして、圧電素子192が径方向に拡がると、振動膜191は、図5の矢印Aの方向に変位し、矢印Aの方向に撓み得る。圧電素子192の伸縮動作の周波数が振動膜191の共振周波数に近い又は等しい値になっているとき、振動膜191が矢印Aの方向に変位している間、圧電素子192は、縮径変形する。この結果、振動膜191は、圧電素子192に邪魔されることなく、矢印Aの方向に変位し、同方向に撓み得る。
【0038】
その後、振動膜191は、振動膜191自身の復元作用により、矢印Bの方向に戻ろうとするが、圧電素子192の伸縮動作の周波数が振動膜191の共振周波数に近い又は等しい値になっていると、このタイミングで、圧電素子192は、拡径変形する。この結果、振動膜191自身の復元作用に圧電素子192の拡径作用が加重されて、振動膜191は、図5の矢印Bの方向に変位し、矢印Bの方向に大きく撓む。振動膜191が矢印Bの方向に変位している間、圧電素子192は、縮径変形し、振動膜191が自身の復元作用により矢印Aの方向に戻ろうとするタイミングで、圧電素子192は、拡径変形する。この結果、振動膜191は、矢印Aの方向にも大きく撓む。このように、圧電素子192が振動膜191の共振周波数に近い又は等しい周波数で伸縮することにより、振動膜191は、矢印A及び矢印Bの方向に大きく振動する。このような振動膜191の振動により、上述の如く、ミストが生成される。このミストは、放射状に広がりながら、放出洞172を経由して、吸込ノズル150の前側の領域に放出される。
【0039】
放出洞172は、振動膜191から離れるにつれて大きくなる開口面積を有しているので、ミストが放射状に広がりながら放出洞172を通過しても、放出洞172の内壁面へのミストの付着は抑制される。放出洞172の前端から噴射されてから床面に付着するまでの間、ミストは、空中で浮遊している微細な塵埃を捕捉しながら落下する。そして、床面に付着した後には、ミストは、床面からの塵埃の舞い上がりを抑制する。このため、ミストが付着した領域を吸込ノズル150が通過すると、ミストの放出がない場合と比べて多くの塵埃が吸い込まれ得る。
【0040】
ミストの放出により、床面は濡れた状態になるが、ブラシローラ161,162のブラシ164は、親水性であるので、床面に付着したミストは、ブラシ164によって吸い取られ得る。このため、床面は、清掃後において早期に乾燥した状態になり得る。
【0041】
ミストの放出により、床面上の皮脂の除去率は、以下に述べるように改善される。
【0042】
床面上の皮脂の除去率に対するミストの放出の効果を確認するために、発明者は、以下の表1に示す組成の人工油脂液を作成した。
【0043】
【表1】
【0044】
発明者は、上述の人工油脂液をエタノールで5倍に希釈し、床面に80μlを塗布した。そして、発明者は、この人工油脂液が塗布された部分の反射率を測定し、測定された反射率を用いて、皮脂の除去率を以下の数式で示すように評価した。
【0045】
【数1】
【0046】
使用者は、ミストの放出がある条件(約1ml/min)と、ミストの放出がない条件と、で、希釈液が塗布された領域上で吸込ノズル150を1往復乃至3往復させた。そして、上述の数式中の「清掃作業前後での反射率」のデータを取得して、以下の表2に示す実験結果を得た。なお、以下の実験結果において、吸込ノズル150の往復時における掃除機100の動作条件は、ミストの放出の有無のみが相違しており、掃除機100の移動速度及びブラシローラ161,162の回転速度といった条件は同一である。
【0047】
【表2】
【0048】
上記の表2に示すように、ミストが放出されると、希釈液の除去率は、10%以上改善される。言い換えると、ミストの放出により、床面上の皮脂の除去率が改善される。
【0049】
上述の実施形態では、ミストは、振動膜191の振動によって生成される。振動膜191は、貯液部180の前壁に設けられた開口181に設けられているので、振動膜191は、貯液部180の容積を低減しない。したがって、貯液部180の容積は、水を貯留するために有効に利用される。
【0050】
仮に、ミストが超音波発生器によって生成される場合、超音波発生器は、貯液部180内の水中に沈められる必要がある。このため、貯液部180の容積は、超音波発生器によって低減される。一方、振動膜191がミストの発生に利用される場合、貯液部180の容積の低減は、生じない。
【0051】
また、超音波発生器によってミストが生成される場合、貯液部180内の水面上に水柱を立てる必要がある。このため、貯液部180は、水柱を立てるための空間が必要になり、高さ方向に大きくなり得る。一方、振動膜191の振動によりミストを生成する場合には、水柱を立てるための空間を貯液部180に設ける必要はない。したがって、貯液部180は、薄型化され得る。このため、貯液部180を収容するための収容凹部171を浅くすることができ、吸込ノズル150の厚さ(高さ)の増加は抑制される。
【0052】
貯液部180が収容凹部171に収容されると、貯液部180の上面は、吸込ノズル150の上面と略面一になっている。このため、使用者が高さ方向に狭い空間に吸込ノズル150を差し込むときに、この空間の周囲にある家具に貯液部180が引っ掛かることはない。
【0053】
上述の実施形態では、ミスト生成部190は、床面上を移動する吸込ノズル150に設けられているので、ミストは、床面の近くで放出される。このため、吸込ノズル150から大きく離れた位置にミストが放出されることが防止される。とくに、振動膜191は、前傾姿勢になっており、且つ、放出洞172は、前方に向けて斜め下方に延設されているので、ミストは、斜め下向きに放出される。このため、ミストは、吸込ノズル150の近くで床面に付着し得る。
【0054】
また、貯液部180が収容される収容凹部171は、ノズルケース151の前端を形成している前ケース部156の後側の後ケース部153に形成されている。このため、貯液部180に取り付けられた振動膜191は、吸込ノズル150の前端よりも後側に配置されている。この場合、ミストは、吸込ノズル150から前側に大きく離れた位置に落下せず、吸込ノズル150のすぐ前側に落下し得る。このため、ミストが付着したところを吸込ノズル150が通過する前に乾燥するミストも少なくなる。すなわち、振動膜191を吸込ノズル150の前端(又は、吸込空間158の前端)よりも後側に配置することによって、ミストによる塵埃の舞い上がりの抑制効果の低下を抑制することができる。
【0055】
ミストは、振動膜191から放射状に広がりながら前方に噴射されるので、床面に付着する前にある程度左右方向に拡がっている。このため、左右方向に広い領域に亘って、ミストを床面に付着させることが可能になる。
【0056】
ミストは、放出洞172を通過して、吸込ノズル150の前側の領域に放出される。放出洞172の開口面積は、振動膜191から前方に離れるにつれて大きくなっているので、ミストが振動膜191から放射状に広がりながら前方に放出されても、放出洞172の内壁面に付着するミストは少なくなる。
【0057】
ミストが振動膜191を通じて放出されると、振動膜191の放出孔194を通じて空気が貯液部180内に入り込むことが考えられる。しかし、振動膜191の内面が斜め上向きになっているので、貯液部180内に入り込んだ空気は、浮力により振動膜191から離れ、空気は、振動膜191の内面と貯液部180内の液体との間に介在しにくくなる。このため、振動膜191の内面は、貯液部180内の水と接触した状態を維持することができ、貯液部180内に入り込んだ空気がミストの生成を妨げることは生じにくい。
【0058】
貯液部180内の水が少なくなると、振動膜191が振動しても、ミストが生成されなくなる。このため、吸込ノズル150には、図8に示すように、ミストが放出されているか否かを使用者に知らせるための放出通知部216が設けられていてもよい。たとえば、放出通知部216は、振動膜191から放出されて放出洞172の前端から出るミストに向けて可視光を出射する複数の発光ダイオード217により構成され得る。
【0059】
図8の吸込ノズル150の前ケース部156には、放出洞172の前端の開口部分の左側に3つの発光ダイオード217が設けられており、これらの発光ダイオード217は、右斜め前方に可視光を出射する。また、放出洞172の前端の開口部分の右側に3つの発光ダイオード217が設けられており、これらの発光ダイオード217は、左斜め前方に可視光を出射する。放出洞172を通じてミストが噴射されると、発光ダイオード217から出射された光は、ミストによって反射される。この結果、使用者は、ミストからの反射光を視認することができる。一方、ミストが生成されていない場合、ミストからの反射光は生じない。このため、使用者は、ミストが発生していないことを知ることができる。これにより、貯液部180への給水を使用者に促すことができる。
【0060】
貯液部180内の水の粘度が上がると、水は、振動膜191の放出孔194に入り込みにくくなり、振動膜191からのミストの放出量は低下し得る。ミストの放出量の低下を抑制するために、貯液部180内には、図9に示すように、貯液部180内の水を加熱するヒータ221と、貯液部180内の水の温度を検出する温度センサ222と、が設けられてもよい。ヒータ221及び温度センサ222は、温度センサ222が検出した温度に基づいてヒータ221を制御する加熱制御部223に電気的に接続されている。加熱制御部223は、温度センサ222が検出する温度が所定の目標値に近づくようにヒータ221をフィードバック制御するように構成されている。
【0061】
このフィードバック制御の結果、貯液部180内の水の温度、ひいては、水の粘度は、略一定に保たれる。このため、振動膜191の放出孔194へ入り込むことができる水の量が安定化され、ミストの放出量は、略一定に保たれ得る。
【0062】
上述の実施形態では、ブラシローラ161,162の親水性のブラシ164によって、床面に付着したミストが除去される。代替的に、吸込ノズル150の底面に吸水性の布材を設けて、この布材によって、ミストが除去されてもよい。この場合、吸込ノズル150は、ブラシローラ161,162を有さなくてもよい。
【0063】
<第2実施形態>
吸込ノズル150は、左右方向に大きいので、ミストが放射状に広がりながら放出されたとしても、ミストの散布領域は、吸込ノズル150の横幅に比して、左右方向に十分に広くならないことが考えられる。このため、図10に示すように、振動膜191と同じ構造を有している追加的な振動膜224が用いられてもよい。なお、図10において、前ケース部156及びケースカバー152は示されていない。
【0064】
貯液部180には、振動膜191が取り付けられた開口181の右側に追加的な開口225が形成されており、振動膜224は、この開口225を塞ぐように設けられている。したがって、振動膜224,191は、左右方向に並んで配置されている。
【0065】
貯液部180には、開口181,225の前側において、左右方向に長い開口226が形成されている。なお、図10には示されていないが、前ケース部156の放出洞172は、この開口226から前方に向けて更に左右方向に拡がる空間を形成している。
【0066】
振動膜224は、図11に示すように、リング状の圧電素子227によって周方向に囲まれており、圧電素子227は、振動膜191が取り付けられた圧電素子192と同様に、交流電圧が印加されると、径方向に伸縮する。圧電素子227が径方向に伸縮すると、振動膜224は、振動膜191と同様に振動する。
【0067】
圧電素子227に交流電圧を印加するために、圧電素子227には、一対の電極228,229が取り付けられている。これらの電極228,229は、電力線231,232によって、貯液部180の前壁に取り付けられた電極211,212に接続されている。電極211,212は、第1実施形態と同様に、貯液部180が収容凹部171に収容されると、ノズルケース151の前ケース部156に取り付けられた電極213,214に接触する。このため、貯液部180が収容凹部171に収容された状態で電圧印加部215が交流電圧を電極213,214に出力すると、この交流電圧は、電極211,212、電力線231,232及び電極228,229を通じて圧電素子227に印加される。このとき、この交流電圧は、第1実施形態と同様に、電極211,212、電力線197,198及び電極195,196を通じて、圧電素子192にも印加される。
【0068】
圧電素子192,227に交流電圧が印加されると、これらの圧電素子192,227は、径方向に伸縮する。圧電素子192,227の伸縮に伴って、振動膜191,224が振動し、ミストがこれらの振動膜191,224から放出される。振動膜191,224は、左右方向に並べられているので、ミストは、左右方向に広い領域に散布され得る。
【0069】
振動膜191,224の左右方向の間隔が広ければ広いほど、ミストの散布領域は、左右方向に拡がる。このため、振動膜191,224は、図12に示すように連通路157の開口の前側の前領域に対して左側及び右側に設けられていてもよい。振動膜191,224がこのように配置されれば、前領域中に散布されるミストよりも前領域の左側の左領域(連通路157の開口に対して左斜め前の領域)又は右側の右領域(連通路157の開口に対して右斜め前の領域)に散布されるミストが多くなり得る。前領域中に散布されるミストを相対的に少なくすることは、以下の点で有利である。
【0070】
すなわち、ノズルケース151は、ノズルケース151自体が床面と擦れないように、ブラシローラ161,162及びローラ165,166によって床面から浮いた状態で支持されている。このため、ノズルケース151の前端を形成しているケースカバー152の下端と床面との間には空隙が形成される。したがって、吸込空間158に作用している吸引力は、ケースカバー152と床面との間の空隙を通じて、ノズルケース151の前側の領域にも作用する。ノズルケース151の前側の領域に作用する吸引力は、前方に開口した連通路157の前側(すなわち、前領域)において特に強くなる。前領域に散布されるミストが多ければ多いほど、床面に付着する前に、ケースカバー152と床面との間の空隙を通じて吸込空間158内に吸い込まれるミストが多くなる。この場合、ミストが床面に付着することにより得られる塵埃の舞い上がりを防止する効果が低下する虞がある。
【0071】
一方、振動膜191,224の左右の間隔を大きくして、前領域中に散布されるミストを相対的に少なくすれば、床面に付着する前に、ケースカバー152と床面との間の空隙を通じて吸込空間158内に吸い込まれるミストは少なくなる。一方、左領域及び右領域に散布されるミストが増え、これらの領域に作用する吸引力は比較的小さいので、多くのミストが吸込空間158に吸い込まれることなく、床面に付着し得る。この結果、ミストにより、塵埃の舞い上がりを抑制する効果が高くなる。
【0072】
振動膜191,224の左右の間隔を大きくすることに伴って、貯液部180の横幅が大きくなることが考えられる。このような貯液部180の大型化を避けるために、図13に示すように、振動膜191,224の向きが改善されてもよい。左側の振動膜191は、左斜め前方にミストを放出する向きになっている。右側の振動膜224は、右斜め前方にミストを放出する向きになっている。このように、ミストが左斜め前方及び右斜め前方に放出される向きになるように振動膜191,224が貯液部180に取り付けられれば、振動膜191,224の左右の間隔を過度に大きくしなくてもよい。
【0073】
第2実施形態においても、吸込ノズル150に放出通知部216を取り付けて、ミストが放出されているか否かを使用者に視認可能に吸込ノズル150が構成されてもよい。また、ヒータ221、温度センサ222及び加熱制御部223を用いて貯液部180内の水温を略一定にする制御が行われてもよい。
【0074】
第1実施形態及び第2実施形態では、ミストは、吸込ノズル150の前側の領域に放出されている。しかし、ミストが放出される位置は、吸込ノズル150の周囲であればよく、吸込ノズル150の前側の領域に限定されない。たとえば、図14に示すように、追加的な貯液部230が吸込ノズル150の近くにおいて吸引管130に取り付けられてもよい。
【0075】
貯液部230の底部には、貯液部230内の水の流出を許容する開口251が形成されている。掃除機100の使用時において、吸引管130は、図14に示すように後傾姿勢になる。このとき、貯液部230の開口251は、下斜め後方に向く。
【0076】
貯液部230の開口251からは、振動膜233及び圧電素子234を保持するための保持筒235が延設されており、振動膜233及び圧電素子234は、保持筒235の先端部分に取り付けられている。振動膜233及び圧電素子234は、図6に示す振動膜191及び圧電素子192と同じ構造を有している。また、電圧印加部215と圧電素子234との間の配線は、吸引管130の先端部分に沿って構成され得る。
【0077】
図14の掃除機100では、貯液部230内の水は、ミストになって、保持筒235及び振動膜233を通じて、吸込ノズル150の後側に放出される。このため、ミストは、吸込ノズル150の後側で浮遊している塵埃を捕捉しながら落下し、吸込ノズル150の後側で床面に付着する。この結果、吸込ノズル150の後側での塵埃の舞い上がりが防止される。そして、使用者が吸込ノズル150を後進させると、塵埃が吸い取られる。
【0078】
図14の掃除機100において、保持筒235からミストが放出されているか否かを視認できるように放出通知部216が構成されてもよい。また、ヒータ221、温度センサ222及び加熱制御部223を用いて貯液部230内の水温を略一定にする制御が行われてもよい。
【0079】
図14の掃除機100において、貯液部180等が吸込ノズル150に搭載されている。しかし、貯液部230等が吸引管130に設けられている場合、貯液部180等は省略可能である。
【0080】
<第3実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、ミストは、吸込ノズル150の周囲に放出されている。代替的に、ミストは、吸込ノズル150の内部に形成された吸込空間158内に放出されてもよい。この場合、貯液部180は、図15に示すように構成され得る。
【0081】
図15に示す貯液部180は、図14に示す貯液部230に似た構造を有しており、開口181,225は、貯液部180の底部に形成されている。また、貯液部230は、開口181,225から下向きに突出した2つの保持筒241,242を有している。これらの開口181,225は、保持筒241,242の内方に向けて下向きに開口している。
【0082】
貯液部180は、図16に示す吸込ノズル150の収容凹部171に収容される。収容凹部171の底部には、貯液部180の保持筒241,242が差し込まれる貫通穴243,244が形成されている。保持筒241,242及び貫通穴243,244は、貯液部180が収容凹部171に収容されたときに、図17に示すように、吸込空間158の内部のブラシローラ161,162の上側に位置するように構成されている。
【0083】
保持筒241,242の先端部分は、吸込空間158内で露出しており、この先端部分において、振動膜191,224及び圧電素子192,227が保持されている。このとき、振動膜191,224の放出孔194は、振動膜191,224の内面から下向きに貫通しており、ミストは、下向きに放出される。また、振動膜191,224の内面は、上向きになっており、放出孔194を通じて貯液部180に入り込んだ空気は、浮力により振動膜191,224の内面から離れ、貯液部180の上部に溜まるようになっている。
【0084】
振動膜191,224の下側には、ブラシローラ161,162が配置されており、振動膜191,224を通じて放出されたミストは、ブラシローラ161,162に付着する。このため、ブラシローラ161,162のブラシ164は、湿った状態になる。ブラシローラ161,162が回転すると、湿ったブラシ164が床面に擦れるので、床面上の塵埃がブラシ164に付着し得る。このブラシ164は、親水性であるので、ブラシ164に付着したミストが床面に乗り移ることが抑制される。したがって、床面は、清掃後において早期に乾いた状態になり得る。
【0085】
保持筒241,242は、開口181,225から下方に突出しており、振動膜191,224は、振動膜191の内面が上向きになる姿勢で保持筒241,242内に保持されている。このため、振動膜191,224は、貯液部180内の水を支持する状態になっている。したがって、貯液部180内の水がある程度消費されても、振動膜191,224の内面は、貯液部180内の水と接触した状態を維持することができる。このため、ミストは、長期間に亘って生成され得る。
【0086】
第3実施形態では、振動膜191,224は、真下にミストを放出するように配置されている。しかし、振動膜191,224は、ミストをブラシローラ161,162に向けて放出できればよい。たとえば、振動膜191,224がブラシローラ161、162の斜め上方に配置されている場合には、振動膜191,224は、斜め下方にミストを放出するように設けられていてもよい。
【0087】
なお、第3実施形態においても、ヒータ221、温度センサ222及び加熱制御部223を用いて貯液部230内の水温を略一定にする制御が行われてもよい。
【0088】
<第4実施形態>
清掃作業時において床面上の障害物を避けるために、使用者が吸込ノズル150を持ち上げるような離床操作をすることが想定される。このような離床操作の間、ミストが放出され続ければ、使用者が意図していない位置において床面がミストによって濡れた状態になり得る。このような事態を避けるために、掃除機100は、上述の離床操作の間、ミストの放出が停止されるように構成されてもよい。たとえば、掃除機100は、図18に示すように、吸込ノズル150が床面から離れていることを検出可能に構成された離床検出部173を備えていてもよい。
【0089】
離床検出部173をノズルケース151に設けるために、図18に示す後ケース部153の底部には、ローラ収容部174が上向きに凹設されている。ローラ収容部174は、後ケース部153の下向きに開口している。離床検出部173は、ローラ収容部174内に配置された検出ローラ175及びローラ保持部176を有している。ローラ保持部176は、吸込ノズル150が床面上に置かれた接地状態では、検出ローラ175の下端部分のみがローラ収容部174から下方に突出した状態で検出ローラ175を回転可能に保持するように構成されている。この状態で使用者が吸込ノズル150を前進又は後進させると、検出ローラ175は、床面上で転動する。このため、床面が離床検出部173によって傷つけられることが防止される。ローラ保持部176は、図19に示すように、吸込ノズル150が持ち上げられて床面から離されると、ローラ保持部176及び検出ローラ175の自重により下方に突出するように構成されている。
【0090】
離床検出部173は、ローラ保持部176の姿勢が図18及び図19に示す姿勢のいずれであるかを検出可能に構成された姿勢検出部177を更に有している。姿勢検出部177は、後ケース部153内に配置されており、後ケース部153によって保護されている。
【0091】
後ケース部153内には、電圧印加部215を制御可能に構成された振動制御部178が更に配置されている。振動制御部178は、ローラ保持部176が図19に示す姿勢になっていることが姿勢検出部177によって検出されると、電圧印加部215からの電圧印加を停止させるように構成されている。一方、ローラ保持部176が図18に示す姿勢になっていることが姿勢検出部177によって検出されると、振動制御部178は、電圧印加部215からの電圧印加を許容する。
【0092】
振動制御部178及び離床検出部173が設けられることにより、使用者が吸込ノズル150を持ち上げて床面から離れている状態になっているときには、電圧印加部215からの電圧印加が停止される。この結果、振動発生部193が停止し、ミストの放出が中断される。一方、使用者が吸込ノズル150を床面上で前進又は後進させているときには、電圧印加部215からの電圧印加が実行され、振動発生部193は、振動膜191を振動させる。この結果、ミストが振動膜191から放出される。
【0093】
振動制御部178及び離床検出部173は、第1実施形態乃至第3実施形態の掃除機100に適用可能である。
【0094】
第1実施形態乃至第4実施形態では、貯液部180は、吸込ノズル150から分離可能になっている。代替的に、貯液部180は、吸込ノズル150と一体的に形成されていてもよい。
【0095】
第1実施形態乃至第4実施形態では、貯液部180内には、水が貯留されている。代替的に、床面上の塵埃の除去に寄与する他の液体が貯液部180内に貯留されていてもよい。たとえば、界面活性剤を含んだ液体が貯液部180内に貯留されていてもよい。この場合、床面上の油分の除去が界面活性剤により促進され得る。
【0096】
第1実施形態乃至第4実施形態では、吸込ノズル150は、一対のブラシローラ161,162を有している。代替的に、吸込ノズル150は、単一のブラシローラのみを有していてもよい。
【0097】
第1実施形態乃至第4実施形態では、掃除機100は、スティック型である。代替的に、掃除機100は、自走式の掃除機(いわゆる、ロボット掃除機)又はキャニスタ型の掃除機であってもよい。
【0098】
(効果等)
上述の実施形態に係る掃除機100は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。
【0099】
上述の実施形態に係る一の局面に係る掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体からノズルケースの周囲に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備えている。ミスト生成部は、貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、貯液部内の液体に圧力変動が生じるように振動膜を振動させる振動発生部と、を有している。振動膜には、振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、振動膜が振動しているときに貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。
【0100】
上述の構成では、ミスト生成部がノズルケースの周囲にミストを放出すれば、ミストは、重力によって落下し床面に付着する。ミストが落下している間、空中で浮遊している塵埃は、ミストに付着し、ミストとともに床面に落下する。また、ミストによって床面が濡れるので、床面から舞い上がる塵埃が減る。この結果、ノズルケースが床面上を移動したとき、吸引源の吸引力によって吸込空間を通じて吸い込まれる塵埃が増える。
【0101】
ミスト生成部は、振動発生部と振動膜とを有しており、振動発生部が振動膜を振動させると、貯液部内の液体が以下のように流動する。すなわち、振動膜が外方に変位すると、振動膜の内面の近傍における圧力が降下し、この圧力降下により、貯液部内の液体は、外方に変位した振動膜に向けて流れる。その後、振動膜が逆向きに変位すると、振動膜の内面の近傍における液体の流れ方向と振動膜の変位方向とが互いに逆向きになり、振動膜の内面の近傍の液体は、振動膜の内面に衝突し、振動膜の複数の放出孔を通過する。そして、これらの放出孔を通過した液体は、ミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。ミストは、放射状に広がるので、広い領域に亘って床面を濡らすことができる。なお、振動膜の複数の放出孔は、振動膜が振動しているときには液体の通過を許容するが、振動膜が静止していれば、貯液部内に液体を通過させないので、振動膜を通じた不必要な漏液は生じない。このようなミスト生成技術では、超音波発生器は、必要とされない。
【0102】
上述の構成において、掃除機は、吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるようにノズルケースに保持されたブラシローラを、更に備えていてもよい。貯液部には、液体として水が貯留されていてもよい。ブラシローラは、ノズルケースに回転可能に保持されたローラ本体と、ローラ本体の外周面から突出して床面に接触する親水性のブラシと、を有していてもよい。
【0103】
上述の構成では、ローラ本体が吸込空間内で回転すると、ローラ本体の外周面から突出したブラシは、床面に擦れ、床面上の塵埃を掻き取ることができる。とくに、床面に付着した皮脂等の汚れは、ミストにより床面から除去しやすくなっており、この状態の汚れにブラシが擦れることにより、床面に付着した汚れの除去が促進される。このブラシは、親水性であるので、ミストの放出により床面に付着した水を吸い取ることもできる。
【0104】
上述の構成において、貯液部は、ノズルケースに配置されていてもよい。
【0105】
上述の構成では、床面上を移動可能に構成されたノズルケースに貯液部が配置されているので、貯液部の開口を塞ぐように設けられた振動膜は、床面の近くに位置する。このため、ミストは、振動膜を通じて、床面の近くで放出される。したがって、ミストは、不必要に広範囲に拡散されることなく床面に濡らすことができる。
【0106】
上述の構成において、掃除機は、吸引源の吸引力により吸込空間に吸い込まれた塵埃が流入するように吸込空間の後側でノズルケースに接続された吸引管を更に備えていてもよい。ノズルケースには、吸引管内の流路と吸込空間とを連通させるように、吸引管の先端から前方に延設されて吸込空間に向けて開口した連通路が形成されていてもよい。ブラシローラは、ノズルケースを床面から浮いた状態で支持するように構成されていてもよい。ミスト生成部は、ノズルケースの前側にミストが落下するようにノズルケースに設けられていてもよい。振動膜は、連通路の開口の前側の位置に放出されるミストが連通路の開口に対して左斜め前側又は右斜め前側の位置に放出されるミストよりも少なくなるように設けられていてもよい。
【0107】
上述の構成では、ブラシローラは、ノズルケースが床面から浮いた状態でノズルケースを支持するので、ノズルケースは、床面を傷つけにくくなっている。
【0108】
ノズルケースは、吸引空間の後側において吸引管に接続されているので、吸引管の流路と吸込空間とを連通させるために、吸引管の先端から前方に延設されて吸込空間に向けて開口した連通路がノズルケースに形成されている。この結果、吸引源の吸引力は、吸引管と連通部とを通じて吸込空間に作用する。しかし、吸込空間を形成しているノズルケースは、ブラシローラにより、床面から浮いた状態になっているので、ノズルケースと床面との間に隙間が形成され得、この隙間を通じて、ノズルケースの前側にも吸引力が作用し得る。この吸引力は、連通路の開口の前側において特に強くなる。仮に、連通路の開口の前側に放出されるミストが多ければ、放出されたミストの多くは、床面に付着する前にノズルケースと床面との間の隙間を通じて吸込空間内に吸い込まれ得る。この場合、床面は、あまり濡れず、床面から舞い上がる塵埃をあまり低減することができない。このような事態を避けるために、振動膜は、連通路の開口の前側の位置に放出されるミストが連通路の開口に対して左斜め前側又は右斜め前側の位置に放出されるミストよりも少なくなるように設けられている。
【0109】
上述の構成において、振動膜は、連通路の開口に対して左側又は右側の位置に配置されていてもよい。
【0110】
上述の構成では、振動膜は、連通路の開口に対して左側又は右側の位置に配置されているので、連通路の開口の前側の位置よりも連通路の開口に対して左斜め側又は右斜め側の位置に放出されるミストが多くなり得る。このため、床面に付着する前にノズルケースと床面との間の隙間を通じて吸込空間内に吸い込まれるミストが少なくなり得る。
【0111】
上述の構成において、振動膜は、連通路の開口に対して前側又は左側において、複数の放出孔から左斜め前にミストが放出される向きで配置されていてもよい。
【0112】
上述の構成において、振動膜は、連通路の開口に対して前側又は右側において、複数の放出孔から右斜め前にミストが放出される向きで配置されていてもよい。
【0113】
上述の構成では、振動膜が連通路の開口に対して前側に配置されていても、ミストが左斜め前又は右斜め前に放出されれば、連通路の開口の前側の位置よりも連通路の開口に対して左斜め側又は右斜め側の位置に放出されるミストが多くなる。すなわち、ミストが左斜め前に放出される向きに振動膜が配置されている場合において、振動膜が連通路の開口に対して左側に配置されていれば、連通路の開口の前側の位置に放出されるミストを更に低減することができる。同様に、ミストが右斜め前に放出される向きに振動膜が配置されている場合において、振動膜が連通路の開口に対して右側に配置されていれば、連通路の開口の前側の位置に放出されるミストを更に低減することができる。このため、床面に付着する前にノズルケースと床面との間の隙間を通じて吸込空間内に吸い込まれるミストが少なくなり得る。
【0114】
上述の構成において、複数の放出孔は、振動膜の内面から下向き又は斜め下向きに貫通していてもよい。
【0115】
上述の構成では、放出孔は、振動膜の内面から下向き又は斜め下向きに貫通しているので、ミストは、床面に向けて放出され得る。このため、ミストは、不必要に広範囲に拡散されず、塵埃の吸引に有効に利用され得る。
【0116】
上述の構成において、振動膜は、ノズルケースの前端よりも後側に配置されていてもよい。複数の放出孔は、ミストがノズルケースの前側に落下するように、振動膜の内面から前向きに貫通していてもよい。
【0117】
上述の構成では、複数の放出孔は、振動膜の内面から前向きに貫通しているので、ミストは、前方に放出されて、ノズルケースの前側に落下する。振動膜は、ノズルケースの前端よりも後側に配置されているので、ミストは、ノズルケースから前方に大きく離れた位置に落下しにくくなっている。このため、ノズルケースが通過する前に乾燥してしまうミストは少なくなる。
【0118】
上述の構成において、掃除機は、複数の放出孔を通じて振動膜から放出されるミストに対して可視光を照射することにより、ミストが放出されていることを使用者に知らせる放出通知部を更に備えていてもよい。
【0119】
上述の構成では、振動膜から放出されるミストに対して可視光が照射されると、この可視光は、ミストによって反射される。この反射光により、使用者は、ミストが放出されているか否かを視覚的に認識することができる。
【0120】
上述の実施形態に係る他の局面に係る掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるようにノズルケースに保持されたブラシローラと、を有している吸込ノズルと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体から吸込空間内に放出可能なミストを生成するミスト生成部と、備えている。ミスト生成部は、貯液部に設けられた開口を塞ぐように設けられた振動膜と、貯液部内の液体に圧力変動が生じるように振動膜を振動させる振動発生部と、を有している。振動膜には、振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、振動膜が振動しているときに貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。
【0121】
上述の構成では、ミストは、ミスト生成部によって放射状に広がりながら吸込空間内に放出される。この結果、吸込空間内のブラシローラは、広い領域に亘って湿った状態になる。湿ったブラシローラが床面に接触しながら回転すると、床面上の塵埃がブラシローラに付着し、床面に対して湿式の清掃がなされる。とくに、床面に付着した皮脂等の汚れは、乾いた状態のブラシローラよりも湿った状態のブラシローラで擦られる方が除去されやすい。このため、ミストにより、ブラシローラを湿らせることにより、皮脂等の汚れの除去が促進される。
【0122】
上述の構成において、貯液部には、液体として水が貯留されていてもよい。ブラシローラは、ノズルケースによって回転可能に保持されたローラ本体と、ローラ本体の外周面から突出した親水性のブラシと、を有していてもよい。
【0123】
上述の構成では、ローラ本体の外周面から突出したブラシは、親水性であるので、ミスト生成部から放出されてブラシに付着したミストは、床面に接触しても、ブラシに付着した状態を維持しやすくなる。このため、ブラシは、湿った状態を維持しやすくなるとともに、過度に多くの水が床面に乗り移ることが防止される。
【0124】
上述の構成において、振動膜は、振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されていてもよい。
【0125】
上述の構成では、振動膜の振動により、振動膜の複数の放出孔から液体が放出されると、これらの放出孔を通じて空気が貯液部内に入り込み得る。仮に、この空気が振動膜の内面と貯液部内の液体との間に介在した状態を維持すれば、ミストの生成がこの空気によって邪魔され得る。振動膜の内面と貯液部内の液体との間における空気の介在を防止するために、振動膜は、振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されている。振動膜がこのように配置されれば、貯液部内に入り込んだ空気は、浮力により振動膜から離れ、振動膜の内面と貯液部内の液体との間に介在する空気は低減される。
【0126】
上述の構成において、貯液部には、開口に対して左側又は右側において液体の流出を許容する他の開口が形成されていてもよい。ミスト生成部は、他の開口を塞ぐように設けられた他の振動膜を有していてもよい。振動発生部は、振動膜と他の振動膜とを振動させることにより貯液部内の液体に圧力変動を生じさせるように構成されていてもよい。他の振動膜には、他の振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有している一方で、他の振動膜が振動しているときに貯液部内の液体の通過を許容する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。
【0127】
上述の構成では、他の振動膜は、開口に対して左側又は右側に形成された他の開口を塞ぐように設けられているので、振動膜及び他の振動膜が振動発生器によって振動されると、ミストは、左右方向に広い領域に供給され得る。
【0128】
上述の構成において、開口は、貯液部の底部に形成されていてもよい。
【0129】
上述の構成では、開口が貯液部の底部に形成されている場合、貯液部内の液体がある程度減っても、この開口を塞ぐように設けられた振動膜の上側に液体が存在している状態が得られる。言い換えると、貯液部内の液体がある程度減っても、振動膜の内面が液体に接触した状態が得られる。したがって、貯液部内の液体がある程度少なくなっても、ミスト発生部は、ミストを発生することができる。
【0130】
上述の構成において、振動発生部は、交流電圧の印加により伸縮する圧電素子と、圧電素子に交流電圧を印加する電圧印加部と、を有していてもよい。圧電素子は、圧電素子の伸縮により振動膜が振動するように振動膜に接続されていてもよい。
【0131】
上述の構成では、電圧印加部が圧電素子に交流電圧を印加すると、圧電素子が伸縮する。このとき、振動膜は、振動し、振動膜の放出孔を通じてミストが放出される。
【0132】
上述の構成において、掃除機は、貯液部内の液体の温度を検出する温度センサと、貯液部内の液体を加熱するヒータと、温度センサが検出する温度が所定の目標値に近づくようにヒータを制御する加熱制御部と、を更に備えていてもよい。
【0133】
貯液部内の液温が低ければ、液体の粘度が上がり、複数の放出孔を通過する液量、すなわち、ミストの放出量が下がる。逆に、貯液部内の液温が高ければ、ミストの放出量が上がる。このように、ミストの放出量は、貯液部内の液温の影響を受けるので、この影響を抑制するために、上述の構成では、加熱制御部がヒータを制御することにより、貯液部内の液体の温度を所定の目標値に近づけている。この結果、貯液部内の液体の粘度が略一定に保たれ、ミストの放出量が略一定になる。
【0134】
上述の構成において、掃除機は、ノズルケースが床面から持ち上げられた状態になっているか否かを検出する離床検出部と、振動発生部を制御する振動制御部と、を更に備えていてもよい。振動制御部は、ノズルケースが床面から持ち上げられた状態になっていることを離床検出部が検出すると振動発生部を停止させるように構成されていてもよい。
【0135】
清掃作業中に障害物を避けるために、使用者が床面からノズルケースを持ち上げることが想定される。ノズルケースが床面から持ち上げられた状態において、仮に、振動発生部が振動膜の振動を継続させていれば、ミストは、不必要に放出される。このような事態を回避するために、上述の構成では、振動制御部は、ノズルケースが床面から持ち上げられた状態になっていることを離床検出部が検出すると振動発生部を停止させるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0136】
上述の実施形態の掃除機は、清掃作業に用いられる装置に好適に利用される。
【符号の説明】
【0137】
100・・・・・・・・・・・・・掃除機
111・・・・・・・・・・・・・吸引源
130・・・・・・・・・・・・・吸引管
150・・・・・・・・・・・・・吸込ノズル
151・・・・・・・・・・・・・ノズルケース
157・・・・・・・・・・・・・連通路
158・・・・・・・・・・・・・吸込空間
161,162・・・・・・・・・ブラシローラ
163・・・・・・・・・・・・・ローラ本体
164・・・・・・・・・・・・・ブラシ
173・・・・・・・・・・・・・離床検出部
178・・・・・・・・・・・・・振動制御部
180,230・・・・・・・・・貯液部
181,225,251・・・・・開口
190・・・・・・・・・・・・・ミスト生成部
191,224,233・・・・・振動膜
192・・・・・・・・・・・・・圧電素子
193・・・・・・・・・・・・・振動発生部
194・・・・・・・・・・・・・放出孔
215・・・・・・・・・・・・・電圧印加部
216・・・・・・・・・・・・・放出通知部
221・・・・・・・・・・・・・ヒータ
222・・・・・・・・・・・・・温度センサ
223・・・・・・・・・・・・・加熱制御部
226,227,234・・・・・圧電素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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