特開 2024-140507 掃除機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024140507

(43)【公開日】2024-10-10

(54)【発明の名称】掃除機

(51)【国際特許分類】

   A47L 9/04 20060101AFI20241003BHJP

   A47L 11/202 20060101ALI20241003BHJP

   A47L 7/00 20060101ALI20241003BHJP

【ＦＩ】

A47L9/04 A

A47L11/202

A47L7/00 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】17

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023051670

(22)【出願日】2023-03-28

(71)【出願人】

【識別番号】314012076

【氏名又は名称】パナソニックＩＰマネジメント株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100115381

【弁理士】

【氏名又は名称】小谷 昌崇

(74)【代理人】

【識別番号】100157808

【弁理士】

【氏名又は名称】渡邉 耕平

(72)【発明者】

【氏名】井上 幹允

(72)【発明者】

【氏名】藤田 孝一

(72)【発明者】

【氏名】古賀 理基

(72)【発明者】

【氏名】裏 敏彦

(72)【発明者】

【氏名】岸本 紘明

(72)【発明者】

【氏名】重藤 元暢

(72)【発明者】

【氏名】土屋 武士

【テーマコード（参考）】

3B061

【Ｆターム（参考）】

3B061AA04

3B061AA06

(57)【要約】

【課題】液体の補充作業を容易にする構造を有している掃除機を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体からミストを生成するとともに貯液部外に放出するミスト生成部と、を有しているミストカートリッジと、ミストカートリッジを取り外し可能に保持する保持部と、を備えている。貯液部には、貯液部内に給液するための給液口と、給液口を開閉する蓋部と、が設けられている。
【選択図】図３

【特許請求の範囲】

【請求項1】

塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、
前記吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、
液体を貯留する貯液部と、前記貯液部内の液体からミストを生成するとともに前記貯液部外に放出するミスト生成部と、を有しているミストカートリッジと、
前記ミストカートリッジを取り外し可能に保持する保持部と、を備え、
前記貯液部には、前記貯液部内に給液するための給液口と、前記給液口を開閉する蓋部と、が設けられている、掃除機。

【請求項2】

前記保持部は、前記ノズルケースに設けられており、
前記ミストカートリッジは、前記保持部に保持された状態で前記ノズルケースの周囲にミストを放出するように構成されている、請求項１に記載の掃除機。

【請求項3】

前記吸込空間内に配置されて前記ノズルケースに回転可能に保持されたローラ本体と、
前記ローラ本体の外周面から突出して床面に接触する親水性のブラシと、を更に備え、
前記貯液部には、液体として水が貯留される、請求項１又は２に記載の掃除機。

【請求項4】

前記吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるように前記ノズルケースに保持されたブラシローラを更に備え、
前記保持部は、前記ミストカートリッジから前記吸込空間内にミストが放出されるように、前記ミストカートリッジを保持する、請求項１に記載の掃除機。

【請求項5】

前記貯液部には、液体として水が貯留され、
前記ブラシローラは、前記ノズルケースによって回転可能に保持されたローラ本体と、前記ローラ本体の外周面から突出した親水性のブラシと、を有している、請求項４に記載の掃除機。

【請求項6】

前記保持部に設けられた一対の第１端子と、
前記一対の第１端子に電力を出力する電力出力部と、を更に備え、
前記ミストカートリッジは、前記保持部に取り付けられたときに、前記一対の第１端子に接触する一対の第２端子を有しており、
前記ミスト生成部は、前記貯液部内の液体内に沈められるように配置される超音波発生器を含んでおり、
前記一対の第２端子は、前記超音波発生器に電気的に接続されており、
前記超音波発生器は、前記一対の第１端子と前記一対の第２端子とが接触した状態で前記電力出力部が前記一対の第１端子に出力した電力により振動して、前記貯液部内の液体を振動させてミストを生じさせるように構成されている、請求項１に記載の掃除機。

【請求項7】

前記保持部に設けられた一対の第１端子と、
前記一対の第１端子に電力を出力する電力出力部と、を更に備え、
前記ミストカートリッジは、前記保持部に取り付けられたときに、前記一対の第１端子に接触する一対の第２端子を有しており、
前記ミスト生成部は、
前記一対の第２端子に電気的に接続されているとともに、前記一対の第２端子が前記一対の第１端子に接触した状態で前記電力出力部から前記一対の第１端子に印加された交流電圧により伸縮する圧電素子と、
前記貯液部に形成された開口を塞ぐように設けられているとともに前記圧電素子に取り付けられた振動膜と、を有しており、
前記振動膜は、前記圧電素子の伸縮に応じて振動することにより、前記貯液部内の液を流動させるように構成されており、
前記振動膜には、前記振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、前記振動膜が振動しているときに前記貯液部内の液体を通過させてミストを生成する複数の放出孔が形成されており、前記複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら前記貯液部の外に放出される、請求項１に記載の掃除機。

【請求項8】

前記開口は、前記貯液部の底部に対して立設した前記貯液部の周壁に設けられており、
前記保持部は、前記開口に近づくほど液体深さが大きくなる姿勢で前記ミストカートリッジを保持するように構成されている、請求項７に記載の掃除機。

【請求項9】

前記振動膜は、前記振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されている、請求項７に記載の掃除機。

【請求項10】

前記ノズルケースは、前記吸込空間に加えて、前記吸込空間から仕切られているとともに前記電力出力部を収容した収容空間を形成している、請求項６乃至９のいずれか１項に記載の掃除機。

【請求項11】

前記保持部は、前記ミストカートリッジを収容可能に前記ノズルケースに凹設されている、請求項１に記載の掃除機。

【請求項12】

前記保持部は、前記ノズルケースの上面において上向きに開口している、請求項１１に記載の掃除機。

【請求項13】

前記給液口は、前記保持部の開口を通じて露出しない位置に形成されている、請求項１２に記載の掃除機。

【請求項14】

前記ミストカートリッジは、前記貯液部の外周面から突出した係合凸部を有しており、
前記保持部には、前記係合凸部が嵌まり込んで前記係合凸部と係合する係合穴部が形成されている、請求項１２に記載の掃除機。

【請求項15】

前記ミストカートリッジは、前記貯液部に揺動可能に取り付けられて使用者によって操作される操作片と、前記保持部に係合可能に構成された係合部と、前記係合部が前記保持部に係合した状態を保つように前記操作片を付勢する付勢部材と、を有しており、
前記係合部は、前記操作片が前記付勢部材の付勢力に抗して揺動操作されることにより前記係合部と前記保持部との係合が解除されるように構成されている、請求項１に記載の掃除機。

【請求項16】

前記保持部と前記ミストカートリッジとを互いに引き付ける磁気的な吸着力を生じさせる磁気吸着部を更に備えている、請求項１に記載の掃除機。

【請求項17】

前記ミストカートリッジは、前記ノズルケースの前端よりも後側で前記保持部によって保持されている、請求項２又は４に記載の掃除機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ミストを放出しながら塵埃を吸引する掃除機に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、図１９に示す掃除機３００が開示されている。この掃除機３００は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源３１１を内蔵した掃除機本体３１０と、掃除機本体３１０から延設された吸引管３２０と、吸引管３２０の先端に取り付けられて床面上を移動する吸込ノズル３３０と、を備えている。吸込ノズル３３０は、吸引源３１１の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成している。吸込ノズル３３０の上面には、ミストを発生するミスト発生部３４０が搭載されている。

【0003】

ミスト発生部３４０は、図２０に示すように、水を貯留する貯水部３４１と、貯水部３４１内に収容された超音波発生器３４２と、を有している。貯水部３４１は、超音波発生器３４２が水中内に完全に沈んだ状態が得られるとともに、超音波発生器３４２上で水柱を形成可能な空間を得ることが可能な容積を有している。また、貯水部３４１には、この空間を貯水部３４１の外に連通させる放出口３４３が形成されている。

【0004】

超音波発生器３４２が超音波を発生させると、超音波発生器３４２の上側の空間に水柱が立つ。この水柱から微細な水滴（ミスト）が放出され、この水滴は、貯水部３４１の放出口３４３を通じて、貯水部３４１の外に出る。放出口３４３を通じて外部に放出された微細な水滴は、重力作用により、吸込ノズル３３０の周囲に落下する。水滴が床面に落下するまでの間、空中で浮遊している塵埃は水滴に付着し、水滴とともに床面に落下する。また、床面に落下した水滴によって、床面が濡れ、床面から舞い上がる塵埃が減る。この結果、掃除機３００によって吸引可能な塵埃が増加する。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特許第５２３９７３０号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

貯水部３４１の水は、ミストとして放出されるので、ミストの発生とともに徐々に少なくなる。このため、貯水部３４１への水の補給が必要となる。たとえば、水を貯水部３４１へ補給するために、使用者は、給水用の容器を用意し、放出口３４３を通じて貯水部３４１に水を注ぎこむことが考えられる。あるいは、使用者は、吸込ノズル３３０を吸引管３２０から外して、吸込ノズル３３０ごと水源に持っていき、水源から放出口３４３を通じて貯水部３４１に注ぎ込み得る。しかしながら、使用者は、これらの補給作業を煩わしいと感じ得る。

【0007】

本開示は、液体の補充作業を容易にする構造を有している掃除機を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本開示における掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体からミストを生成するとともに貯液部外に放出するミスト生成部と、を有しているミストカートリッジと、ミストカートリッジを取り外し可能に保持する保持部と、を備えている。貯液部には、貯液部内に給液するための給液口と、給液口を開閉する蓋部と、が設けられている。

【発明の効果】

【0009】

上述の掃除機は、使用者が貯液部に液体を供給するための補充作業を容易にする。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】掃除機の概略的な斜視図（第１実施形態）

【図2】掃除機の吸込ノズルの斜視図

【図3】吸込ノズルの断面図

【図4】吸込ノズルの展開斜視図

【図5】吸込ノズルに搭載されるミストカートリッジの断面図

【図6】ミストカートリッジの振動膜及び圧電素子の正面図

【図7】吸込ノズルの斜視図

【図8】ミストカートリッジの斜視図

【図9】吸込ノズルの断面図

【図10】ミストカートリッジの断面図

【図11】ミストカートリッジの底面図

【図12】吸込ノズルの斜視図

【図13】ミストカートリッジの断面図

【図14】追加的な貯液部が吸引管に取り付けられた掃除機の斜視図

【図15】追加的な貯液部を保持する保持部の斜視図

【図16】吸込ノズルの内部の吸込空間にミストを放出可能に構成された貯液部の斜視図（第２実施形態）

【図17】吸込ノズルの斜視図

【図18】吸込ノズルの底面図

【図19】従来の掃除機の断面図

【図20】従来の掃除機に取り付けられた貯液部の断面図

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、図面を参照しながら、掃除機の実施形態を詳細に説明するが、当業者の理解を容易にするために、例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。

【0012】

＜第１実施形態＞
図１は、スティック型の掃除機１００の斜視図である。図１を参照して、掃除機１００を説明する。

【0013】

掃除機１００は、掃除機本体１１０と、掃除機本体１１０の下側に設けられて塵埃を貯留する貯塵部１２０と、貯塵部１２０に隣接して掃除機本体１１０の下面から下方に延設された吸引管１３０と、を備えている。また、掃除機本体１１０の上面からは、使用者が握持可能な太さを有している棒状の握持部１４０が延設されており、握持部１４０の外周面には、使用者によって操作される操作部１４１が設けられている。

【0014】

掃除機本体１１０は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源１１１を内蔵している。吸引源１１１は、掃除機本体１１０の下側に設けられた貯塵部１２０から空気を吸い出すように構成されている。吸引源１１１は、使用者が操作部１４１を操作することによって、作動したり、停止したりする。

【0015】

貯塵部１２０は、塵埃を貯留するための円筒形状の容器であり、貯塵部１２０の上部には、フィルタが設けられている（図示せず）。このフィルタは、空気の通過を許容する一方で、この空気に含まれている塵埃を捕捉するように構成されている。このため、貯塵部１２０内の空気が吸引源１１１によって吸い出されても、貯塵部１２０内の塵埃が掃除機本体１１０に流入することが防止される。

【0016】

貯塵部１２０の周壁部には、吸引管１３０内の流路と貯塵部１２０の内部空間とを連通させる流入口が形成されている（図示せず）。流入口は、吸引管１３０から貯塵部１２０に流入した空気が貯塵部１２０の周壁部の内面に沿って流れて旋回流になるように形成されている。吸引管１３０から貯塵部１２０に流入した空気に含まれる塵埃は、貯塵部１２０内の旋回流によって遠心分離されて、貯塵部１２０内に貯留される。

【0017】

吸引管１３０の先端には、吸込ノズル１５０が接続されており、使用者は、吸込ノズル１５０を、床面上で前進又は後進させることができる。吸込ノズル１５０は、図２に示すように、吸引管１３０よりも幅広のノズルケース１５１と、ノズルケース１５１内に配置されたブラシローラ１６１，１６２と、を有している。ノズルケース１５１は、左右方向に長い箱形状の後ケース部１５３と、後ケース部１５３の左端から前方に突出した左ケース部１５４と、後ケース部１５３の右端から前方に突出した右ケース部１５５と、を有している。また、ノズルケース１５１は、図１に示すように、後ケース部１５３の前側で左右方向に延設された前ケース部１５６と、前ケース部１５６の前端の下側の空間を閉じるケースカバー１５２と、を更に有している。前ケース部１５６は、左ケース部１５４及び右ケース部１５５の上部に接続されている。

【0018】

後ケース部１５３は、左右方向における中央部分において吸引管１３０と接続可能に構成されている。後ケース部１５３の内部には、図３に示すように、吸引管１３０の先端から前方に延びる連通路１５７が形成されている。連通路１５７の左側及び右側における後ケース部１５３の内部空間は、ブラシローラ１６１，１６２をそれぞれ駆動するための駆動モータ（図示せず）を収容するための収容空間になっている。これらの駆動モータは、使用者が操作部１４１を操作することによって、作動したり、停止したりする。

【0019】

後ケース部１５３の前側には、後ケース部１５３、左ケース部１５４、右ケース部１５５、前ケース部１５６及びケースカバー１５２によって区画された吸込空間１５８が形成されている。後ケース部１５３内の収容空間は、吸込空間１５８から後ケース部１５３の前壁により仕切られている。

【0020】

吸込空間１５８の後部において連通路１５７の前端が前向きに開口しており、吸込空間１５８は、連通路１５７を通じて、吸引管１３０内の流路と連通している。このため、吸引源１１１の吸引力は、貯塵部１２０、吸引管１３０及び連通路１５７を通じて吸込空間１５８に作用する。吸込空間１５８は、図２に示すように、下向きに開口しており、吸引源１１１の吸引力が吸込空間１５８に作用すると、吸込空間１５８の下側にある塵埃は、吸込空間１５８に吸い込まれる。その後、塵埃は、連通路１５７及び吸引管１３０を流れて、貯塵部１２０に流入する。なお、塵埃は、吸込空間１５８を流れるが、後ケース部１５３内の収容空間は、後ケース部１５３の前壁により吸込空間１５８から仕切られているので、収容空間内に塵埃が入り込みにくくなっている。

【0021】

吸込空間１５８内において、ブラシローラ１６１，１６２が左右に配置されている。ブラシローラ１６１，１６２は、それぞれ、先端に向けて細くなるローラ本体１６３と、ローラ本体１６３の外周面から突出して床面に接触するブラシ１６４と、を有している。左側のブラシローラ１６１のローラ本体１６３は、左ケース部１５４によって回転可能に片持ち支持されている。また、右側のブラシローラ１６２のローラ本体１６３は、右ケース部１５５によって回転可能に片持ち支持されている。ブラシ１６４は、ローラ本体１６３の外周面上で複数の螺旋帯を形成するように設けられた親水性の繊維材料（たとえば、ナイロン系の樹脂繊維（ＰＡ６又はＰＡ６６）又はポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ））により構成されている。ブラシローラ１６１，１６２が回転駆動されると、ブラシ１６４は、床面に擦れ、床面上の塵埃がブラシ１６４によって掻き取られる。

【0022】

ブラシ１６４は、ノズルケース１５１の前側部分を床面から浮いた状態で支持することができる硬さを有している。ノズルケース１５１の後側部分を床面から浮いた状態で支持するとともに、ノズルケース１５１が前後方向に床面上を移動することを補助するために、後ケース部１５３の底部には、ローラ１６５，１６６が設けられている。ノズルケース１５１は、ブラシローラ１６１，１６２及びローラ１６５，１６６によって床面から浮いた状態で支持されているので、ノズルケース１５１自体が床面に擦れることはない。

【0023】

左右方向における後ケース部１５３の略中央には、図４に示すように、後ケース部１５３の上面から凹設された保持部１７１が設けられている。保持部１７１は、図３に示すように、連通路１５７の上側に位置しており、上向きに開口している。保持部１７１の前端は、前ケース部１５６によって区画されている。左右方向における前ケース部１５６の略中央には、係合穴部１７２が形成されている。係合穴部１７２は、保持部１７１から斜め下向きに延設され、前ケース部１５６を貫通している。係合穴部１７２の開口面積は、吸込ノズル１５０の前端に近づくにつれて大きくなっている。

【0024】

保持部１７１には、ノズルケース１５１の周囲にミストを放出するためのミストカートリッジ２００が収容される。ミストカートリッジ２００は、水を貯留する略矩形箱状の貯液部１８０を有しており、保持部１７１は、貯液部１８０と略相補的な形状を有している。貯液部１８０は、上側から保持部１７１に嵌め込まれる。

【0025】

貯液部１８０が保持部１７１に収容されると、保持部１７１は、図３に示すように、貯液部１８０の底部が前方に向けて下方に傾斜する姿勢で貯液部１８０を保持する。このとき、貯液部１８０の上面は、後ケース部１５３の上面と略面一になる。貯液部１８０は、後ケース部１５３に形成された保持部１７１に収容されるので、前ケース部１５６及びケースカバー１５２によって形成される吸込ノズル１５０の前端よりは後側に配置されている。

【0026】

貯液部１８０は、貯液部１８０の底部から立設された周壁を有している。この周壁の前壁には、図５に示すように、貯液部１８０内の水の流出を許容する開口１８１が形成されている。この前壁の前面からは環状の係合凸部１８３が突出しており、この係合凸部１８３は、図３に示すように、前ケース部１５６の係合穴部１７２の後端に嵌め込まれて前ケース部１５６と係合される。開口１８１は、係合凸部１８３から貯液部１８０の内方（すなわち、後方）に向けて斜め上方に延設されている。

【0027】

貯液部１８０内の水をミストにして吸込ノズル１５０の前側に放出するために、吸込ノズル１５０には、ミスト生成部１９０が設けられている。ミスト生成部１９０は、貯液部１８０の開口１８１を塞ぐように設けられた振動膜１９１と、振動膜１９１を周方向に囲んで振動膜１９１に接続されたリング状の圧電素子１９２と、を有している。振動膜１９１は、開口１８１の傾斜に合わせて前傾姿勢になっており、振動膜１９１の内面は、斜め上向きになっている。

【0028】

圧電素子１９２は、交流電圧が印加されると、径方向に伸縮するように構成されている。振動膜１９１は、開口１８１の軸方向（すなわち、図５の矢印Ａ及び矢印Ｂの方向）に振動可能に構成されている。

【0029】

振動膜１９１には、図６に示すように、多数の放出孔１９４が形成されている。振動膜１９１は、前傾姿勢になっているので、これらの放出孔１９４は、振動膜１９１の内面（貯液部１８０の内部空間に臨む面）から前方に向けて斜め下向きに振動膜１９１を貫通している。なお、放出孔１９４は、振動膜１９１が静止している状態では、貯液部１８０内の水が通過することを許容しない大きさを有している。

【0030】

振動膜１９１の振動により、以下のように、ミストが生成されると考えられる。すなわち、振動膜１９１の中央部分が図５の矢印Ｂの方向（貯液部１８０の外方）に変位すると、振動膜１９１の内面の近傍において圧力が下がる。この圧力降下に応じて、振動膜１９１の内面の近傍の水は、外方に変位した振動膜１９１に向けて流れる。その後、振動膜１９１の中央部分が逆向き（貯液部１８０の内方）に変位すると、振動膜１９１の変位の向きは、振動膜１９１の内面の近傍における水の流れ方向とは逆向きになる。この結果、水は、振動膜１９１の内面に強く当たり、振動膜１９１の複数の放出孔１９４を通過する。これらの放出孔１９４を通過した水は、ミストになって、放射状に広がりながら前ケース部１５６の係合穴部１７２内を移動し、係合穴部１７２の前端から吸込ノズル１５０の前側の領域に放出される。

【0031】

圧電素子１９２に交流電圧を印加するために、圧電素子１９２には、図６に示すように、一対の電極１９５，１９６が取り付けられており、これらの電極１９５，１９６からは、電力線１９７，１９８が延設されている。電力線１９７，１９８の端部は、図４に示すように貯液部１８０の前壁に取り付けられた第２端子２１１，２１２に接続されている。

【0032】

これらの第２端子２１１，２１２に交流電圧を印加するために、前ケース部１５６において保持部１７１の前端を区画している面には、図７に示すように、第１端子２１３，２１４が設けられている。第１端子２１３，２１４は、保持部１７１に貯液部１８０が収容されたときに、貯液部１８０側の第２端子２１１，２１２に接触する位置に配置されている。また、これらの第１端子２１３，２１４に交流電圧を印加する電力出力部２１５が、後ケース部１５３内の収容空間に配置されている。

【0033】

電力出力部２１５は、吸引源１１１を起動するための操作部１４１が操作されると、振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しい周波数の交流電圧を第１端子２１３，２１４に印加するように構成されている。第１端子２１３、２１４は、貯液部１８０が保持部１７１に収容されている状態では、第２端子２１１，２１２に接続されているので、交流電圧は、第２端子２１１，２１２、電力線１９７，１９８及び電極１９５，１９６を通じて圧電素子１９２に印加される。

【0034】

貯液部１８０の底部では、図８に示すように、貯液部１８０への給水に利用される給液口２０１が開口している。給液口２０１には、給液口２０１を閉じる蓋部２０２が取り付けられる。ミストカートリッジ２００が保持部１７１に嵌め込まれたとき、給液口２０１及び蓋部２０２は、図１に示すように、保持部１７１の上端の開口領域から露出していない。このため、使用者が吸込ノズル１５０を移動させているときに、吸込ノズル１５０の周囲の家具が蓋部２０２に衝突することはない。

【0035】

（掃除機の動作の説明）
使用者が操作部１４１を操作すると、吸引源１１１は、吸引力を発生させて、貯塵部１２０内の空気を吸い出す。吸引源１１１の吸引力は、貯塵部１２０、吸引管１３０及び吸込ノズル１５０の連通路１５７を通じて吸込空間１５８に作用する。このとき、吸込空間１５８内のブラシローラ１６１，１６２は、操作部１４１に対する操作に応じて回転駆動されているので、床面の塵埃を掻き取っている。ブラシローラ１６１，１６２によって掻き取られた塵埃は、吸引源１１１の吸引力によって、吸込空間１５８から吸い出され、連通路１５７及び吸引管１３０を通じて、貯塵部１２０に流入する。貯塵部１２０内では、塵埃とともに吸い込まれた空気によって旋回流が生成されているので、貯塵部１２０に流入した塵埃は、旋回流によって遠心分離され、貯塵部１２０に貯留される。

【0036】

上述のように塵埃が吸引源１１１の吸引力によって吸引されている間、貯液部１８０内の水は、ミストになって吸込ノズル１５０の前側の領域に放出される。すなわち、操作部１４１に対する操作に応じて、電力出力部２１５は、交流電圧を第１端子２１３，２１４に印加する。電力出力部２１５は、塵埃が流れる吸込空間１５８から仕切られた後ケース部１５３の収容空間内に配置されているので、電力出力部２１５からの交流電圧の出力が塵埃によって妨げられること（たとえば、塵埃による短絡）は防止されている。電力出力部２１５が出力した交流電圧は、第１端子２１３，２１４、電力線１９７，１９８及び電極１９５，１９６を通じて圧電素子１９２に印加される。

【0037】

圧電素子１９２は、交流電圧の印加に応じて、径方向に伸縮する。交流電圧の周波数は、振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しいので、圧電素子１９２の伸縮動作の周波数も、振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しい値になっている。この状態では、振動膜１９１の中央部分は、以下に述べるように、矢印Ａ及び矢印Ｂの方向に大きく振動する（すなわち、振動膜１９１は、共振状態になる）。

【0038】

圧電素子１９２が径方向に縮めば、振動膜１９１の中央部分は、図５の矢印Ｂの方向に撓んだ状態になり得る。そして、圧電素子１９２が径方向に拡がると、振動膜１９１の中央部分は、図５の矢印Ａの方向に変位するとともに撓み得る。圧電素子１９２の伸縮動作の周波数が振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しい値になっているとき、振動膜１９１が矢印Ａの方向に変位している間、圧電素子１９２は、縮径変形する。この結果、振動膜１９１の中央部分は、圧電素子１９２に邪魔されることなく、矢印Ａの方向に変位するとともに撓み得る。

【0039】

その後、振動膜１９１は、振動膜１９１自身の復元作用により、矢印Ｂの方向に戻ろうとするが、圧電素子１９２の伸縮動作の周波数が振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しい値になっていると、このタイミングで、圧電素子１９２は、拡径変形する。この結果、振動膜１９１自身の復元作用に圧電素子１９２の拡径作用が加重されて、振動膜１９１の中央部分は、図５の矢印Ｂの方向に変位するとともに大きく撓む。振動膜１９１が矢印Ｂの方向に変位している間、圧電素子１９２は、縮径変形し、振動膜１９１が自身の復元作用により矢印Ａの方向に戻ろうとするタイミングで、圧電素子１９２は、拡径変形する。この結果、振動膜１９１の中央部分は、矢印Ａの方向にも大きく撓む。このように、圧電素子１９２が振動膜１９１の共振周波数に近い又は等しい周波数で伸縮することにより、振動膜１９１は、矢印Ａ及び矢印Ｂの方向に大きく振動する。このような振動膜１９１の振動により、上述の如く、ミストが生成される。このミストは、放射状に広がりながら、係合穴部１７２を経由して、吸込ノズル１５０の前側の領域に放出される。

【0040】

係合穴部１７２は、振動膜１９１から離れるにつれて大きくなる開口面積を有しているので、ミストが放射状に広がりながら係合穴部１７２を通過しても、係合穴部１７２の内壁面へのミストの付着は抑制される。係合穴部１７２の前端から噴射されてから床面に付着するまでの間、ミストは、空中で浮遊している微細な塵埃を捕捉しながら落下する。そして、床面に付着した後には、ミストは、床面からの塵埃の舞い上がりを抑制する。このため、ミストが付着した領域を吸込ノズル１５０が通過すると、ミストの放出がない場合と比べて多くの塵埃が吸い込まれ得る。

【0041】

ミストの放出により、床面は濡れた状態になるが、ブラシローラ１６１，１６２のブラシ１６４は、親水性であるので、床面に付着したミストは、ブラシ１６４によって吸い取られ得る。このため、床面は、清掃後において早期に乾燥した状態になり得る。

【0042】

ミストの放出により、貯液部１８０内の水が減る。貯液部１８０に水を補充するために、使用者は、ミストカートリッジ２００を保持部１７１から上向きに取り外すことができる。このため、使用者は、吸込ノズル１５０を吸引管１３０から取り外して、吸込ノズル１５０ごと水源に持っていかなくてもよい。すなわち、使用者は、保持部１７１から取り外されたミストカートリッジ２００だけを水源に持っていき、貯液部１８０への給水作業を行うことができる。給水作業において、使用者は、蓋部２０２を給液口２０１から取り外すことにより給液口２０１を開いて、貯液部１８０内に水を供給することができる。貯液部１８０への水の補給が終わると、使用者は、蓋部２０２で給液口２０１を閉じる。

【0043】

上述の如く、貯液部１８０に水を補充した後、使用者は、ミストカートリッジ２００を保持部１７１に上側から嵌め込む。このとき、ミストカートリッジ２００の第２端子２１１，２１２に対応する位置において第１端子２１３，２１４が保持部１７１に設けられている。したがって、使用者がミストカートリッジ２００を保持部１７１に嵌め込むだけで、電力出力部２１５から圧電素子１９２への電力供給経路が形成される。

【0044】

貯液部１８０への給水作業において使用者が蓋部２０２を給液口２０１に適切に取り付けないまま、ミストカートリッジ２００を保持部１７１に嵌め込むことが想定される。この場合、給液口２０１からの漏水が発生し得るが、給液口２０１から漏れ出た水は、ある程度、保持部１７１内に留まり得る。このため、給液口２０１から漏れ出た水が床面を濡らすことが抑制される。

【0045】

ミストカートリッジ２００が保持部１７１に嵌め込まれると、保持部１７１は、図３に示すように、貯液部１８０の底部が前方に向けて下がる傾斜姿勢をとるように、ミストカートリッジ２００を保持する。したがって、貯液部１８０内の水深は、貯液部１８０の前壁に形成された開口１８１に近くなるにつれて大きくなる。このため、開口１８１に取り付けられたミスト生成部１９０の振動膜１９１は、貯液部１８０内の水がある程度消費された後においても、貯液部１８０内の水に接触した状態を維持することができる。

【0046】

振動膜１９１が貯液部１８０内の水に接触した状態がミストの生成時に維持されやすくなるように、振動膜１９１の内面は、図３に示すように、斜め上向きになっている。すなわち、振動膜１９１が振動してミストが生成されているとき、振動膜１９１の放出孔１９４を通じて貯液部１８０内に空気が入り込み得る。しかし、振動膜１９１の内面が斜め上向きになっているので、貯液部１８０内に入り込んだ空気は、自身の浮力により、振動膜１９１の内面から離れ得る。言い換えると、貯液部１８０内に入り込んだ空気は、振動膜１９１の内面と貯液部１８０内の水との間に介在しにくくなっている。このため、振動膜１９１は、貯液部１８０内に入り込んだ空気に妨げられることなく、ミストを生成することができる。

【0047】

使用者が吸込ノズル１５０を前進させているとき、吸込ノズル１５０が前方の家具に衝突することが想定される。このとき、ミストカートリッジ２００は、吸込ノズル１５０の前端よりも後側に配置されているので、この家具に直接的には接触しない。したがって、ミストカートリッジ２００の破損の虞が低減されている。

【0048】

使用者が吸込ノズル１５０を持ち上げた後、床面に落とすような誤操作をした場合、ミストカートリッジ２００には、上向きの外力が作用し得る。この場合において、ミストカートリッジ２００の係合凸部１８３は、前ケース部１５６の係合穴部１７２に差し込まれているので、この外力によって、ミストカートリッジ２００が保持部１７１から飛び出すことが防止されている。

【0049】

保持部１７１からのミストカートリッジ２００の意図しない離脱を防止する効果を高めるために、掃除機１００は、図９に示すように、改良されてもよい。この掃除機１００は、保持部１７１とミストカートリッジ２００とを互いに引き付ける磁気的な吸着力を生じさせる磁気吸着部２０３を更に有している。磁気吸着部２０３は、保持部１７１側に固定された板材２０４と、ミストカートリッジ２００側に固定された板材２０５と、を有しており、これらの板材２０４，２０５のうち一方は、磁石により構成されている。また、これらの板材２０４，２０５のうち他方は、この磁石によって吸着される磁性材により構成されている。板材２０４，２０５間の磁気的な吸着力によって、保持部１７１からのミストカートリッジ２００の意図しない離脱が防止され得る。なお、これらの板材２０４，２０５間の吸着力が十分に高ければ、係合凸部１８３は、設けられなくてもよい。

【0050】

保持部１７１からのミストカートリッジ２００の意図しない離脱を防止するための他の構造が掃除機１００に採用されてもよい。たとえば、ミストカートリッジ２００は、図１０に示すように、貯液部１８０から後方に離れた位置において、貯液部１８０に対して揺動可能に取り付けられた操作片２０６を有していてもよい。この操作片２０６は、図１１に示すように、貯液部１８０の左壁及び右壁から後方に延出された支持壁２０７，２０８に回動軸部２６１，２６２を用いて取り付けられている。

【0051】

貯液部１８０と操作片２０６との間には、付勢部材２６３（コイルバネ）が配置されている。付勢部材２６３は、操作片２０６が図１０に示す姿勢になるように操作片２０６を付勢している。使用者は、操作片２０６の後端に指を引っ掛けて、操作片２０６を図１０に示す位置から回動軸部２６１，２６２回りに上向きに回動させることができる。そして、使用者が操作片２０６から指を離すと、付勢部材２６３の付勢力によって、操作片２０６は、図１０に示す姿勢に戻る。

【0052】

付勢部材２６３は、左右方向における操作片２０６の略中央に設けられている。付勢部材２６３の左側及び右側では、図１１に示すように、係合部２６４，２６５が操作片２０６から前方に突出している。

【0053】

保持部１７１は、図１２に示すように、これらの係合部２６４，２６５と係合可能に構成されている。すなわち、保持部１７１の底部には、これらの係合部２６４，２６５に係合可能に形成された係合片２６６，２６７が設けられている。係合片２６６，２６７は、保持部１７１の底部から上向きに突出した略立方体形状の小片部分であり、後向きに開口している。ミストカートリッジ２００が保持部１７１に嵌め込まれて、操作片２０６に設けられた係合部２６４，２６５が係合片２６６，２６７の開口に差し込まれると、ミストカートリッジ２００は、保持部１７１に対してロックされた状態になる。

【0054】

使用者が、操作片２０６の後端に指を引っ掛け、付勢部材２６３の付勢力に抗して回動軸部２６１，２６２回りに上向きに操作片２０６を回動させると、係合部２６４，２６５は、後方に変位し、係合片２６６，２６７から抜け出ることができる。この状態では、使用者は、ミストカートリッジ２００を保持部１７１から上向きに取り出すことができる。

【0055】

図１乃至図１２のミストカートリッジ２００のミスト生成部１９０は、振動膜１９１を振動させることにより、ミストを生成している。代替的に、ミスト生成部１９０は、図１３に示すように、貯液部１８０内の水中に沈められた状態でミストを生成する超音波発生器により構成されていてもよい。この場合、ミスト生成部１９０の上側に開口１８１が形成される。

【0056】

図１３に示すミストカートリッジ２００は、図４に示すミストカートリッジ２００と同様に、貯液部１８０の前壁に第２端子２１１，２１２が設けられており、ミスト生成部１９０は、これらの第２端子２１１，２１２と電気的に接続されている。このため、ミストカートリッジ２００が保持部１７１に嵌め込まれると、ミスト生成部１９０は、図１乃至図１２のミストカートリッジ２００のミスト生成部１９０と同様に、電力出力部２１５が出力した電力を受け取ることができる。

【0057】

ミスト生成部１９０は、電力出力部２１５から電力を受け取ると、貯液部１８０内の水中に沈められた状態で超音波を発生させるように振動する。この振動により、ミスト生成部１９０の上側の液面上には水柱が立つ。この水柱から飛び出た微細な水滴がミストになって開口１８１から放出される。

【0058】

図１乃至図１３の掃除機１００は、吸込ノズル１５０に取り付けられたミストカートリッジ２００を有している。追加的に又は代替的に、掃除機１００は、図１４に示すように、吸引管１３０に取り付けられたミストカートリッジ２７０を有していてもよい。

【0059】

貯液部２３０の底部には、貯液部２３０内の水の流出を許容する開口２５１が形成されている。掃除機１００の使用時において、吸引管１３０は、図１４に示すように後傾姿勢になる。このとき、貯液部２３０の開口２５１は、下斜め後方に向く。

【0060】

貯液部２３０の開口２５１からは、振動膜２３３及び圧電素子２３４を保持するための保持筒２３５が延設されており、振動膜２３３及び圧電素子２３４は、保持筒２３５の先端部分に取り付けられている。振動膜２３３及び圧電素子２３４は、図６に示す振動膜１９１及び圧電素子１９２と同じ構造を有している。

【0061】

ミストカートリッジ２７０は、板状の保持部２７１を介して吸引管１３０に取り付けられている。保持部２７１の下面には、図１５に示すように、溝部２７２が形成されており、貯液部２３０において保持部２７１に対向する面には、溝部２７２と相補的な突条が設けられている（図示せず）。この突条が溝部２７２に差し込まれることにより、ミストカートリッジ２７０は、保持部２７１によって保持される。

【0062】

保持部２７１においてミストカートリッジ２７０に対向する面には、第１端子２７３，２７４が設けられている。これらの第１端子２７３，２７４は、吸込ノズル１５０内の電力出力部２１５に電気的に接続されている。第１端子２７３，２７４と電力出力部２１５との間の配線は、吸引管１３０の先端部分に沿ってなされている。貯液部２３０において保持部２７１に対向する面には、ミストカートリッジ２７０が保持部２７１に取り付けられたときに、これらの第１端子２７３，２７４と接触する位置に一対の第２端子が設けられている（図示せず）。これらの第２端子は、圧電素子２３４に電気的に接続されている。

【0063】

図１４の掃除機１００では、貯液部２３０内の水は、ミストになって、保持筒２３５及び振動膜２３３を通じて、吸込ノズル１５０の後側に放出される。このため、ミストは、吸込ノズル１５０の後側で浮遊している塵埃を捕捉しながら落下し、吸込ノズル１５０の後側で床面に付着する。この結果、吸込ノズル１５０の後側での塵埃の舞い上がりが防止される。そして、使用者が吸込ノズル１５０を後進させると、塵埃が吸い取られる。

【0064】

＜第２実施形態＞
第１実施形態では、ミストは、吸込ノズル１５０の周囲に放出されている。代替的に、ミストは、吸込ノズル１５０の内部に形成された吸込空間１５８内に放出されてもよい。この場合、ミストカートリッジ２００は、図１６に示すように構成され得る。なお、図１６に示すミストカートリッジ２００と電力出力部２１５との間の電気的な接続構造は、図１乃至図７を参照して説明したものと同じである。また、図１６に示すミストカートリッジ２００への給水のための構造（すなわち、給液口２０１及び蓋部２０２）も、図１乃至図７を参照して説明したものと同じである。

【0065】

図１６に示すミストカートリッジ２００は、図１４に示すミストカートリッジ２００に似た構造を有しており、開口１８１，２２５が貯液部１８０の底部に形成されている。また、ミストカートリッジ２００は、開口１８１，２２５から下向きに突出した２つの保持筒２４１，２４２を有している。これらの開口１８１，２２５は、保持筒２４１，２４２の内方に向けて下向きに開口している。

【0066】

ミストカートリッジ２００は、図１７に示す吸込ノズル１５０の保持部１７１に収容される。保持部１７１の底部には、ミストカートリッジ２００の保持筒２４１，２４２が差し込まれる貫通穴２４３，２４４が形成されている。保持筒２４１，２４２及び貫通穴２４３，２４４は、ミストカートリッジ２００が保持部１７１に収容されたときに、図１８に示すように、吸込空間１５８の内部のブラシローラ１６１，１６２の上側に位置するように構成されている。

【0067】

保持筒２４１，２４２の先端部分は、吸込空間１５８内で露出しており、この先端部分において、振動膜１９１，２２４及び圧電素子１９２，２２７が保持されている。このとき、振動膜１９１，２２４の放出孔１９４は、振動膜１９１，２２４の内面から下向きに貫通しており、ミストは、下向きに放出される。また、振動膜１９１，２２４の内面は、上向きになっており、放出孔１９４を通じて貯液部１８０に入り込んだ空気は、浮力により振動膜１９１，２２４の内面から離れ、貯液部１８０の上部に溜まるようになっている。

【0068】

振動膜１９１，２２４の下側には、ブラシローラ１６１，１６２が配置されており、振動膜１９１，２２４を通じて放出されたミストは、ブラシローラ１６１，１６２に付着する。このため、ブラシローラ１６１，１６２のブラシ１６４は、湿った状態になる。ブラシローラ１６１，１６２が回転すると、湿ったブラシ１６４が床面に擦れるので、床面上の塵埃がブラシ１６４に付着し得る。このブラシ１６４は、親水性であるので、ブラシ１６４に付着したミストが床面に乗り移ることが抑制される。したがって、床面は、清掃後において早期に乾いた状態になり得る。

【0069】

保持筒２４１，２４２は、開口１８１，２２５から下方に突出しており、振動膜１９１，２２４は、振動膜１９１の内面が上向きになる姿勢で保持筒２４１，２４２内に保持されている。このため、振動膜１９１，２２４は、貯液部１８０内の水を支持する状態になっている。したがって、貯液部１８０内の水がある程度消費されても、振動膜１９１，２２４の内面は、貯液部１８０内の水と接触した状態を維持することができる。このため、ミストは、長期間に亘って生成され得る。

【0070】

第２実施形態では、振動膜１９１，２２４は、真下にミストを放出するように配置されている。しかし、振動膜１９１，２２４は、ミストをブラシローラ１６１，１６２に向けて放出できればよい。たとえば、振動膜１９１，２２４がブラシローラ１６１、１６２の斜め上方に配置されている場合には、振動膜１９１，２２４は、斜め下方にミストを放出するように設けられていてもよい。

【0071】

第２実施形態において、ミストカートリッジ２００及び保持部１７１は、図９の磁気吸着部２０３により互いに吸着可能に構成されていてもよい。

【0072】

第２実施形態において、ミストカートリッジ２００の後部に操作片２０６が設けられていてもよい。そして、操作片２０６に設けられた係合部２６４，２６５と、保持部１７１に設けられた係合片２６６，２６７と、により、ミストカートリッジ２００は、保持部１７１にロックされていてもよい。

【0073】

第１実施形態乃至第２実施形態では、貯液部１８０内には、水が貯留されている。代替的に、床面上の塵埃の除去に寄与する他の液体が貯液部１８０内に貯留されていてもよい。たとえば、界面活性剤を含んだ液体が貯液部１８０内に貯留されていてもよい。この場合、床面上の油分の除去が界面活性剤により促進され得る。

【0074】

第１実施形態乃至第２実施形態では、吸込ノズル１５０は、一対のブラシローラ１６１，１６２を有している。代替的に、吸込ノズル１５０は、単一のブラシローラのみを有していてもよい。更に代替的に、吸込ノズル１５０は、ブラシローラを有していなくてもよい。

【0075】

第１実施形態乃至第２実施形態では、掃除機１００は、スティック型である。代替的に、掃除機１００は、自走式の掃除機（いわゆる、ロボット掃除機）又はキャニスタ型の掃除機であってもよい。

【0076】

（効果等）
上述の実施形態に係る掃除機１００は、以下の特徴を有しているとともに、以下の効果を奏する。

【0077】

上述の実施形態に係る一の局面に係る掃除機は、塵埃を吸引する吸引力を発生する吸引源と、吸引源の吸引力により塵埃が吸い込まれるように開口した吸込空間を形成しているとともに床面上を移動可能に構成されたノズルケースと、液体を貯留する貯液部と、貯液部内の液体からミストを生成するとともに貯液部外に放出するミスト生成部と、を有しているミストカートリッジと、ミストカートリッジを取り外し可能に保持する保持部と、を備えている。貯液部には、貯液部内に給液するための給液口と、給液口を開閉する蓋部と、が設けられている。

【0078】

上述の構成では、ミスト生成部が貯液部内の液体を利用してミストを生成し、このミストを貯液部外に放出するので、ミストを利用した湿式の清掃が可能になる。しかし、貯液部からのミストの放出に伴って、貯液部内の液体が減る。減った液体を補給するために、貯液部には、給液口が設けられている。使用者は、貯液部に液体を補給するときには、ミストカートリッジを保持部から取り外して、ミストカートリッジを給液源に持っていけばよい。その後、使用者は、蓋部を開いて、給液口を通じて、液体を貯液部内に補給することができる。貯液部への液体の補給後、使用者は、蓋部で貯液部の給液口を閉じて、補給された液体を貯液部に閉じ込めることができる。このように、使用者は、貯液部へ液体を補給するための容器を別途用意してこの容器を掃除機に運ぶ必要はない。したがって、ミスト発生用の液体の補給作業が容易になる。

【0079】

上述の構成において、保持部は、ノズルケースに設けられていてもよい。ミストカートリッジは、保持部に保持された状態でノズルケースの周囲にミストを放出するように構成されていてもよい。

【0080】

上述の構成では、保持部は、床面上を移動可能に構成されたノズルケースに設けられているので、ミストカートリッジは、床面の近くで保持され得る。この場合、ミストは、床面の近くでノズルケースの周囲に放出される。したがって、ミストは、不必要に広範囲に拡散されることなく床面を濡らすことができる。

【0081】

上述の構成において、掃除機は、吸込空間内に配置されてノズルケースに回転可能に保持されたローラ本体と、ローラ本体の外周面から突出して床面に接触する親水性のブラシと、を更に備えていてもよい。貯液部には、液体として水が貯留されてもよい。

【0082】

上述の構成では、ローラ本体が吸込空間内で回転すると、ローラ本体の外周面から突出したブラシは、床面に擦れ、床面上の塵埃を掻き取ることができる。このブラシは、親水性であるので、ミストの放出により床面に付着した水を吸い取ることもできる。

【0083】

上述の構成において、掃除機は、吸込空間内に配置されて床面に接触しながら回転できるようにノズルケースに保持されたブラシローラを更に備えていてもよい。保持部は、ミストカートリッジから吸込空間内にミストが放出されるように、ミストカートリッジを保持してもよい。

【0084】

上述の構成では、ノズルケースによって形成された吸込空間内にミストカートリッジからミストが放出される。吸込空間内にミストが放出されると、吸込空間内に配置されたブラシローラは、ミストによって湿る。湿ったブラシローラが床面に接触しながら回転すると、床面上の塵埃がブラシローラに付着し、床面に対して湿式の清掃がなされる。

【0085】

上述の構成において、貯液部には、液体として水が貯留されていてもよい。ブラシローラは、ノズルケースによって回転可能に保持されたローラ本体と、ローラ本体の外周面から突出した親水性のブラシと、を有していてもよい。

【0086】

上述の構成では、ローラ本体の外周面から突出したブラシは、親水性であるので、ミスト放出部から放出されてブラシに付着したミストは、床面に接触しても、ブラシに付着した状態を維持しやすくなる。このため、ブラシは、湿った状態を維持しやすくなるとともに、過度に多くの水が床面に乗り移ることが防止される。

【0087】

上述の構成において、掃除機は、保持部に設けられた一対の第１端子と、一対の第１端子に電力を出力する電力出力部と、を更に備えていてもよい。ミストカートリッジは、保持部に取り付けられたときに、一対の第１端子に接触する一対の第２端子を有していてもよい。ミスト生成部は、貯液部内の液体内に沈められるように配置される超音波発生器を含んでいてもよい。一対の第２端子は、超音波発生器に電気的に接続されていてもよい。超音波発生器は、一対の第１端子と一対の第２端子とが接触した状態で電力出力部が一対の第１端子に出力した電力により振動して、貯液部内の液体を振動させてミストを生じさせるように構成されていてもよい。

【0088】

上述の構成では、ミストカートリッジが保持部に取り付けられると、ミストカートリッジに設けられた一対の第２端子は、保持部に設けられた一対の第１端子に接触する。この状態で、電力出力部が一対の第１端子に電力を出力すると、この電力は、一対の第２端子に入力される。これらの第２端子は、貯液部内の液体内に沈められた超音波発生器に電気的に接続されているので、電力出力部が出力した電力は、超音波発生器に伝達される。超音波発生器は、この電力により貯液部内の液体内で振動してミストを発生させる。

【0089】

上述の構成において、掃除機は、保持部に設けられた一対の第１端子と、一対の第１端子に電力を出力する電力出力部と、を更に備えていてもよい。ミストカートリッジは、保持部に取り付けられたときに、一対の第１端子に接触する一対の第２端子を有していてもよい。ミスト生成部は、一対の第２端子に電気的に接続されているとともに、一対の第２端子が一対の第１端子に接触した状態で電力出力部から一対の第１端子に印加された交流電圧により伸縮する圧電素子と、貯液部に形成された開口を塞ぐように設けられているとともに圧電素子に取り付けられた振動膜と、を有していてもよい。振動膜は、圧電素子の伸縮に応じて振動することにより、貯液部内の液を流動させるように構成されていてもよい。振動膜には、振動膜が静止しているときに液体を通過させない大きさを有する一方で、振動膜が振動しているときに貯液部内の液体を通過させてミストを生成する複数の放出孔が形成されており、複数の放出孔を通過した液体がミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出されてもよい。

【0090】

上述の構成では、一対の第１端子を通じて一対の第２端子に交流電圧が印加されると、圧電素子に交流電圧が印加される。圧電素子への交流電圧の印加により、圧電素子が伸縮する。圧電素子の伸縮に伴って、振動膜は振動し、貯液部内の液体が以下のように流動する。すなわち、振動膜が外方に変位すると、振動膜の内面の近傍における圧力が降下し、この圧力降下により、貯液部内の液体は、外方に変位した振動膜に向けて流れる。その後、振動膜が逆向きに変位すると、振動膜の内面の近傍における液体の流れ方向と振動膜の変位方向とが互いに逆向きになり、振動膜の内面の近傍の液体は、振動膜の内面に衝突し、振動膜の複数の放出孔を通過する。そして、これらの放出孔を通過した液体は、ミストになって放射状に広がりながら貯液部の外に放出される。ミストは、放射状に広がるので、広い領域に亘って床面を濡らすことができる。なお、振動膜の複数の放出孔は、振動膜が振動しているときには液体の通過を許容するが、振動膜が静止していれば、貯液部内に液体を通過させないので、振動膜を通じた不必要な漏液は生じない。このようなミスト生成技術では、超音波発生器は、必要とされない。

【0091】

上述の構成において、開口は、貯液部の底部に対して立設した貯液部の周壁に設けられていてもよい。保持部は、開口に近づくほど液体深さが大きくなる姿勢でミストカートリッジを保持するように構成されていてもよい。

【0092】

上述の構成では、貯液部内の液体が少なくなっても、開口側では、ある程度大きな液体深さが得られる。このため、貯液部の開口を塞ぐように設けられた振動膜は、液体に接触した状態を保ち、振動膜の振動により貯液部内の液体に圧力変動を生じさせることができる。したがって、貯液部内の液体がある程度少なくなっても、ミスト生成部は、ミストを発生することができる。

【0093】

上述の構成において、振動膜は、振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されていてもよい。

【0094】

上述の構成では、振動膜の振動により、振動膜の複数の放出孔から液体が放出されると、これらの放出孔を通じて空気が貯液部内に入り込み得る。仮に、この空気が振動膜の内面と貯液部内の液体との間に介在した状態を維持すれば、ミストの生成がこの空気によって邪魔され得る。振動膜の内面と貯液部内の液体との間における空気の介在を防止するために、振動膜は、振動膜の内面が上向き又は斜め上向きになるように配置されている。振動膜がこのように配置されれば、貯液部内に入り込んだ空気は、浮力により振動膜から離れ、振動膜の内面と貯液部内の液体との間に介在する空気は低減される。

【0095】

上述の構成において、ノズルケースは、吸込空間に加えて、吸込空間から仕切られているとともに電力出力部を収容した収容空間を形成していてもよい。

【0096】

上述の構成では、吸込空間に塵埃が吸い込まれるが、収容空間が吸込空間から仕切られているので、収容空間への塵埃の流入が抑制される。このため、収容空間に電力出力部を収容することにより、電力出力部を塵埃から保護することができる。

【0097】

上述の構成において、保持部は、ミストカートリッジを収容可能にノズルケースに凹設されていてもよい。

【0098】

上述の構成では、ミストカートリッジは、ノズルケースに凹設された保持部に収容されるので、ミストカートリッジがノズルケースから突出することが抑制される。このため、使用者は、ミストカートリッジに邪魔されることなく、狭い空間にノズルケースを差し込み得る。

【0099】

上述の構成において、保持部は、ノズルケースの上面において上向きに開口していてもよい。

【0100】

上述の構成では、保持部は、ノズルケースの上面において上向きに開口しているので、使用者は、保持部に収容されたミストカートリッジにノズルケースの上側からアクセスし、ミストカートリッジを上向きに取り出すことができる。

【0101】

上述の構成において、給液口は、保持部の開口を通じて露出しない位置に形成されていてもよい。

【0102】

蓋部が給液口を完全に閉じていない状態で、使用者がミストカートリッジを保持部に収容するという誤った操作がなされることが想定される。このような誤操作がなされた場合には、給液口を通じて、液体がミストカートリッジから漏れ出る。上述の構成では、給液口は、保持部の開口を通じて露出していないので、仮に、給液口から液体が漏れ出たとしても、吸込ノズルの周囲に液体が飛び散りにくくなっている。言い換えると、仮に、液体が給液口を通じて漏れ出たとしても、保持部内に液体が留められ得る。

【0103】

上述の構成において、ミストカートリッジは、貯液部の外周面から突出した係合凸部を有していてもよい。保持部には、係合凸部が嵌まり込んで係合凸部と係合する係合穴部が形成されていてもよい。

【0104】

保持部が、吸込ノズルの上面において上向きに開口している場合、例えば、ノズルケースが衝撃を受けたときに、ミストカートリッジは、保持部から上向きに飛び出し得る。ノズルケースが衝撃を受けても、ミストカートリッジが保持部から飛び出さないように、上述の構成では、係合凸部を貯液部の外周面から突出させるとともに、保持部に係合穴部を形成している。係合凸部が保持部の係合穴部に嵌まり込むことにより、係合凸部は、係合穴部に引っ掛かり、ミストカートリッジに上向きの衝撃力が加わっても、ミストカートリッジは、保持部から飛び出しにくくなっている。

【0105】

上述の構成において、ミストカートリッジは、貯液部に揺動可能に取り付けられて使用者によって操作される操作片と、保持部に係合可能に構成された係合部と、係合部が保持部に係合した状態を保つように操作片を付勢する付勢部材と、を有していてもよい。係合部は、操作片が付勢部材の付勢力に抗して揺動操作されることにより係合部と保持部との係合が解除されるように構成されていてもよい。

【0106】

上述の構成では、付勢部材が操作片を付勢することにより係合部が保持部に係合した状態が保たれるので、ミストカートリッジが意図せず保持部から離脱することが抑制される。一方、使用者が付勢部材の付勢力に抗して操作部を揺動操作すれば、係合部と保持部との係合が解除される。この状態では、使用者は、ミストカートリッジを保持部から取り出すことができる。

【0107】

上述の構成において、掃除機は、保持部とミストカートリッジとを互いに引き付ける磁気的な吸着力を生じさせる磁気吸着部を更に備えていてもよい。

【0108】

上述の構成では、磁気吸着部の吸着力により、ミストカートリッジは、保持部に磁気的に吸着されるので、保持部からミストカートリッジが意図せず取り外されることが防止される。

【0109】

上述の構成において、ミストカートリッジは、ノズルケースの前端よりも後側で保持部によって保持されていてもよい。

【0110】

上述の構成では、ミストカートリッジは、吸込ノズルの前端よりも後側で保持部によって保持されているので、吸込ノズルの前端が家具などの障害物に衝突しても、ミストカートリッジは、障害物に衝突しない。このため、ミストカートリッジの破損が抑制される。

【産業上の利用可能性】

【0111】

上述の実施形態の掃除機は、清掃作業に用いられる装置に好適に利用される。

【符号の説明】

【0112】

１００・・・・・・・・・・・・・・・・・掃除機
１１１・・・・・・・・・・・・・・・・・吸引源
１５０・・・・・・・・・・・・・・・・・吸込ノズル
１５１・・・・・・・・・・・・・・・・・ノズルケース
１５８・・・・・・・・・・・・・・・・・吸込空間
１６１，１６２・・・・・・・・・・・・・ブラシローラ
１６３・・・・・・・・・・・・・・・・・ローラ本体
１６４・・・・・・・・・・・・・・・・・ブラシ
１６５，１６６・・・・・・・・・・・・・ローラ
１７１，２７１・・・・・・・・・・・・・保持部
１７２・・・・・・・・・・・・・・・・・係合穴部
１８０，２３０・・・・・・・・・・・・・貯液部
１８１，２２５，２５１・・・・・・・・・開口
１８３・・・・・・・・・・・・・・・・・係合凸部
１９０・・・・・・・・・・・・・・・・・ミスト生成部
１９１，２２４，２３３・・・・・・・・・振動膜
１９２，２２７，２３４・・・・・・・・・圧電素子
１９４・・・・・・・・・・・・・・・・・放出孔
２００，２７０・・・・・・・・・・・・・ミストカートリッジ
２０１・・・・・・・・・・・・・・・・・給液口
２０２・・・・・・・・・・・・・・・・・蓋部
２０３・・・・・・・・・・・・・・・・・磁気吸着部
２０６・・・・・・・・・・・・・・・・・操作片
２１１，２１２・・・・・・・・・・・・・第２端子
２１３，２１４，２７３，２７４・・・・・第１端子
２１５・・・・・・・・・・・・・・・・・電力出力部
２６３・・・・・・・・・・・・・・・・・付勢部材
２６４，２６５・・・・・・・・・・・・・係合部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】