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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140537
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】副燃焼室付き内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/18 20060101AFI20241003BHJP
   F02B 23/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02B19/18 B
F02B23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051715
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 喜鋒
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣也
(72)【発明者】
【氏名】林 伸治
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AB03
3G023AC05
3G023AD03
3G023AD09
3G023AD14
3G023AD25
3G023AD28
3G023AF03
3G023AG03
(57)【要約】
【課題】副燃焼室へとより確実に燃料を導入可能な副燃焼室付き内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関は、主燃焼室と、主燃焼室内で区隔壁42により区画され、主燃焼室と連通する複数の連通路60が設けられた副燃焼室と、主燃焼室内に設けられ、副燃焼室に向けて燃料を噴射するインジェクタ4とを備え、区隔壁42の主燃焼室41側の面42sには、複数の凹部70が形成されている。この構成により、凹部70の近傍に微小な渦を発生させることによって、燃料流れが下流側に向かうにつれて乱れた流れとなり、燃料流れの区隔壁42からの剥離点をより下流側とすることができる。その結果、副燃焼室43近傍に燃料が滞留する時間を長くして、副燃焼室43へとより確実に燃料を導入可能となる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃焼室と、
前記主燃焼室内で区隔壁により区画され、前記主燃焼室と連通する複数の連通路が設けられた副燃焼室と、
前記主燃焼室内に設けられ、前記副燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射装置と
を備え、
前記区隔壁の前記主燃焼室側の面には、複数の凹部が形成されている
副燃焼室付き内燃機関。
【請求項2】
前記凹部の開口幅は、前記連通路の開口幅よりも大きく、互いに隣り合う前記連通路同士の距離よりも小さい請求項1に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項3】
前記連通路と隣り合う前記凹部と前記連通路との間の距離は、前記凹部の開口幅よりも小さく、前記連通路の開口幅の二分の一よりも大きい請求項1に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項4】
互いに隣り合う前記連通路同士の間には、複数の凹部が形成される請求項1に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項5】
複数の前記凹部は、少なくとも、前記燃料噴射装置から前記副燃焼室に向けて噴射される燃料が前記区隔壁に当たる範囲に形成される請求項1に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項6】
複数の前記凹部は、前記区隔壁の前記燃料噴射装置側の第1半部および前記燃料噴射装置とは反対側の第2半部の双方に形成される請求項1に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項7】
複数の前記凹部の配置密度は、前記第1半部の方が前記第2半部よりも大きい請求項6に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【請求項8】
前記連通路と隣り合う前記凹部のうち、前記燃料噴射装置側に配置される前記凹部は、前記燃料噴射装置とは反対側に配置される前記凹部よりも開口幅が大きい請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の副燃焼室付き内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は副燃焼室付き内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃焼室(主燃焼室)内に、副燃焼室を備えた内燃機関に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、主燃焼室に臨むシリンダヘッドに空洞部を設け、この空洞部に噴孔が貫通された口金を嵌入することにより渦流室(副燃焼室)を形成し、渦流室内に燃料噴射ノズルを配置したディーゼルエンジンが記載されている。このディーゼルエンジンでは、渦流室の壁面に凸部を多数均一に設けることで、壁面付近に微小流れを発生させ、壁面に付着した燃料を剥がして空気と燃料の混合性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-147238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、副燃焼室付き内燃機関では、主燃焼室内に設けられた燃料噴射装置から副燃焼室に向けて燃料を噴射し、副燃焼室に形成された連通路を介して、その内部へと燃料を供給することがある。しかしながら、燃料噴射装置から噴射された燃料が副燃焼室近傍に滞留する時間が短いと、副燃焼室への燃料導入量が減少して燃焼が不安定になるという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、副燃焼室へとより確実に燃料を導入可能な副燃焼室付き内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の副燃焼室付き内燃機関は、主燃焼室と、前記主燃焼室内で区隔壁により区画され、前記主燃焼室と連通する複数の連通路が設けられた副燃焼室と、前記主燃焼室内に設けられ、前記副燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射装置とを備え、前記区隔壁の前記主燃焼室側の面には、複数の凹部が形成されている。
【0007】
この構成により、凹部の近傍に微小な渦を発生させることによって、燃料流れが下流側に向かうにつれて乱れた流れとなり、燃料流れの区隔壁からの剥離点をより下流側とすることができる。その結果、副燃焼室近傍に燃料が滞留する時間を長くすることができる。したがって、本発明の副燃焼室付き内燃機関によれば、副燃焼室へとより確実に燃料を導入可能となる。
【0008】
また、前記凹部の開口幅は、前記連通路の開口幅よりも大きく、互いに隣り合う前記連通路同士の距離よりも小さいことが好ましい。この構成により、凹部と連通路との干渉を避けつつ、連通路に対して凹部で発生する渦の相対的な大きさを確保することができる。その結果、燃料流れが連通路を通過する前後で乱れが途切れたり、区隔壁から剥離したりすることを抑制することができる。
【0009】
また、前記連通路と隣り合う前記凹部と前記連通路との間の距離は、前記凹部の開口幅よりも小さく、前記連通路の開口幅の二分の一よりも大きいことが好ましい。この構成により、凹部と隣り合う連通路との間の隙間に対して凹部で発生する渦の相対的な大きさを確保し、燃料流れが凹部と第1連通路との間を通過する前後で乱れが途切れたり、区隔壁から剥離したりすることを抑制することができる。また、連通路と凹部とを近づけすぎないようにして、連通路から噴射される火炎の燃焼に影響が生じることを抑制することができる。
【0010】
また、互いに隣り合う前記連通路同士の間には、複数の凹部が形成されることが好ましい。この構成により、連通路同士の間に複数の渦を発生させ、燃料流れの乱れを区隔壁に沿って発展させることができる。
【0011】
また、複数の前記凹部は、少なくとも、前記燃料噴射装置から前記副燃焼室に向けて噴射される燃料が前記区隔壁に当たる範囲に形成されることが好ましい。この構成により、燃料噴射装置から噴射された燃料を副燃焼室近傍に良好に滞留させることができる。
【0012】
また、複数の前記凹部は、前記区隔壁の前記燃料噴射装置側の第1半部および前記燃料噴射装置とは反対側の第2半部の双方に形成されることが好ましい。この構成により、燃料流れの剥離点を十分に下流側に位置付け、燃料を副燃焼室近傍に良好に滞留させることができる。
【0013】
また、複数の前記凹部の配置密度は、前記第1半部の方が前記第2半部よりも大きいことが好ましい。この構成により、比較的に燃料が導入されやすい第1半部近傍において、燃料を良好に滞留させることができる。一方、比較的に燃料が導入されづらい第2半部に複数の凹部を必要以上に形成しないようにして、区隔壁の表面積の増加を抑制し、熱損失の増加を抑制することができる。
【0014】
また、前記連通路と隣り合う前記凹部のうち、前記燃料噴射装置側に配置される前記凹部は、前記燃料噴射装置とは反対側に配置される前記凹部よりも開口幅が大きいことが好ましい。この構成により、燃料流れの上流側で連通路と隣り合う凹部で発生する渦の当該連通路に対する大きさを十分に確保することができる。その結果、燃料流れが当該連通路を通過する前後で乱れが途切れたり、区隔壁から剥離したりすることを抑制することができる。また、燃料流れの下流側で連通路と隣り合う凹部を大きくしすぎないようにして、当該凹部から下流側へ向けて燃料流れの乱れを徐々に発展させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の副燃焼室付き内燃機関によれば、凹部の近傍に微小な渦を発生させることによって、燃料流れの区隔壁からの剥離点をより下流側とし、副燃焼室近傍に燃料が滞留する時間を長くして、副燃焼室へとより確実に燃料を導入可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の内燃機関の給排気系を示す概略構成図である。
図2】気筒を模式的に示す上面図である。
図3】燃料噴射時の気筒内の様子を断面図である。
図4】圧縮工程における気筒内の様子を断面図である。
図5】点火時の気筒内の様子を断面図である。
図6】区隔壁を模式的に示す側面図である。
図7図6のA-A線に沿った区隔壁の断面図である。
図8】区隔壁近傍の燃料流れを模式的に示す説明図である。
図9】他の例の凹部が形成された区隔壁を模式的に示す側面図である。
図10図9のB-B線に沿った区隔壁の断面図である。
図11】さらに他の例の凹部が形成された区隔壁を模式的に示す側面図である。
図12図11のC-C線に沿った区隔壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。図1は、実施形態の内燃機関の給排気系を示す概略構成図である。図1に示す内燃機関1(副燃焼室付内燃機関)は、燃焼室内に燃料であるガソリンを噴射するインジェクタ4(燃料噴射装置)を有する直噴式のガソリンエンジンである。
【0018】
内燃機関1の吸気通路5には、吸気の流れに沿って、エアクリーナー6、インタークーラー7、スロットルバルブ8が各気筒30の吸気ポート2の上流に設けられている。内燃機関1の排気通路11には、排気ポート3から排気の流れに沿って、上流側排気浄化触媒12および下流側排気浄化触媒13が設けられている。また、内燃機関1には、過給機(ターボチャージャ)15、EGRシステム16が設けられている。EGRシステム16は、排気通路11と吸気通路5とを連通するEGR通路20と、EGR通路20の流路面積を変更するEGRバルブ21と、EGR通路20を通過する排気を冷却するEGRクーラー22とを含む。
【0019】
内燃機関1は、コントロールユニット50(制御部)によって作動制御される。コントロールユニット50は、出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAMなど)、中央演算処理装置(CPU)などから構成されている。コントロールユニット50は、クランク角、吸気量、排気温度、EGRガス量などを取得し、スロットルバルブ8、EGRバルブ21、インジェクタ4、後述する点火プラグ35などを作動制御する。
【0020】
次に、内燃機関1の各気筒30の構成について説明する。内燃機関1の各気筒30の構成について説明する。図2は、気筒30を模式的に示す上面図である。図3は、燃料噴射時の気筒30内の様子を断面図である。図4は、圧縮工程における気筒30内の様子を断面図である。図5は、点火時の気筒30内の様子を断面図である。以下の説明では、気筒30の軸方向、径方向、周方向を単に「軸方向」、「径方向」、「周方向」と称する。
【0021】
図2に示すように、内燃機関1の各気筒30のシリンダヘッド34(図1参照)には、その中央部を挟んで一方側に2個の吸気ポート2が並んで配置され、他方側に2個の排気ポート3が並んで配置されている。各吸気ポート2には、吸気バルブ32が設けられ、各排気ポート3には、排気バルブ33が設けられる。
【0022】
気筒30には、図3に示すように、シリンダブロック36、シリンダヘッド34およびピストン37に囲まれた略円柱状の空間である主燃焼室41が設けられている。本実施形態の内燃機関1では、燃料噴射装置としてのインジェクタ4が主燃焼室41内へと燃料を噴射可能に設けられている。インジェクタ4は、主燃焼室41の上部(ピストン37とは反対側の端部)近傍に配置される。また、インジェクタ4は、図2に示すように、2個の吸気ポート2の間に配置される。より詳細には、インジェクタ4は、軸方向から視て副燃焼室43の中心43oを通過する直線L2(後述する直線L1と直交する直線)に沿って配置される。
【0023】
主燃焼室41には、副燃焼室43が設けられている。副燃焼室43は、図3に示すように、主燃焼室41の上部中心部(ピストン37とは反対側の端部かつ径方向における中心部)に配置される。シリンダヘッド34には、点火プラグ35の中心電極を囲むように区隔壁42が設けられており、この区隔壁42に囲まれた空間が副燃焼室43となる。区隔壁42は、主燃焼室41の端部からピストン37側に突出したドーム形状を呈し、ドーム形状の側面部421と側面部421のピストン37側の一端を塞ぐ頂部422とを含む。
【0024】
また、区隔壁42には、主燃焼室41と副燃焼室43とを連通させる複数の連通路60が形成されている。複数の連通路60は、複数(本実施形態では、8個)の第1連通路61と、第2連通路62とを含む。複数の第1連通路61は、図2に示すように、側面部421に概ね径方向に沿って延びるように形成され、周方向に沿って互いに等間隔を空けて設けられている。複数の第1連通路61は、区隔壁42のうち、軸方向から視て副燃焼室43の中心43oを通る直線L1を挟んでインジェクタ4側に位置する第1半部42Aと、インジェクタ4とは反対側に位置する第2半部42Bとの双方に形成されている。また、第2連通路62は、図3に示すように、頂部422に概ね軸方向に沿って延びるように形成される。
【0025】
以上のように構成された内燃機関1では、図3に示すように、インジェクタ4から主燃焼室41内へと燃料を噴射して、主燃焼室41内で空気との混合気を生成する。そして、図4の白抜き矢印に示すように、主燃焼室41を圧縮する方向にピストン37が移動することで、複数の連通路60を介して混合気が副燃焼室43内に流入する。本実施形態の内燃機関1では、この圧縮工程においてインジェクタ4から副燃焼室43側に向けて燃料をさらに噴射することで、副燃焼室43内へと流入する燃料を増加させている。
【0026】
その後、図5に示すように、点火プラグ35によって副燃焼室43内の混合気に点火することで、副燃焼室43内で着火した火炎が複数の連通路60を介して主燃焼室41に噴射され、主燃焼室41内の混合気が燃焼する。これにより、主燃焼室41内の混合気の着火性を向上させて内燃機関1の出力を向上させることができ、また、主燃焼室41内の燃料濃度を低くして燃費を向上させることができる。
【0027】
ここで、上記圧縮工程において、インジェクタ4から副燃焼室43へと噴射された燃料が副燃焼室43近傍に滞留する時間が短いと、副燃焼室43内へと導入される燃料が狙いより減少してしまう可能性がある。また、図5の実線矢印に示すように、気筒30内には吸気による燃料や混合気の筒内流動としてタンブル流が発生する。この副燃焼室43近傍に吸気バルブ32から排気バルブ33に向かって発生するタンブル流の影響により、燃料が副燃焼室43近傍に滞留する時間がより短くなりやすい。そこで、本実施形態の内燃機関1は、圧縮工程において副燃焼室43へと導入される燃料を十分に確保するために、以下の構成を備えている。
【0028】
図6は、区隔壁42を模式的に示す側面図であり、図7は、図6のA-A線に沿った区隔壁42の断面図である。図示するように、副燃焼室43を構成する区隔壁42の主燃焼室41側の面42sには、略半球状に窪む複数の凹部70(図中の灰色を付した箇所)が形成されている。複数の凹部70は、複数の第1連通路61の周囲に点在するように、互いに等間隔を空けて配列されている。
【0029】
より詳細には、複数の凹部70は、区隔壁42の第1半部42Aと第2半部42Bとの双方に形成される。すなわち、複数の凹部70は、区隔壁42の全周にわたって形成される。また、複数の凹部70は、図6に示すように、径方向から視て、少なくともインジェクタ4から副燃焼室43に向けて噴射される燃料が第1半部42Aに当たる範囲A1に点在するように、区隔壁42に形成される。複数の凹部70は、範囲A1よりも広い範囲に形成されることがより好ましい。範囲A1は、周知の数値解析手法によって演算されるインジェクタ4のコーン状噴射の噴射範囲に基づいて定めることができる。
【0030】
また、各凹部70の開口幅a(図7参照)は、各第1連通路61の開口幅(直径)d(図7参照)よりも大きく形成される。ただし、各凹部70の開口幅aは、凹部70と第1連通路61との干渉を避けるように、互いに隣り合う第1連通路61の周方向における距離L(図7参照)よりも小さく設定される。なお、凹部70は、第1連通路61同士の間に複数形成されることが好ましく、本実施形態では、第1連通路61同士の間に3個形成されている。また、周方向において第1連通路61と隣り合う凹部70(以下、適宜「凹部71」と称する)と、当該第1連通路61との間の距離(直線距離)s(図7参照)は、各凹部70の開口幅aよりも小さく、第1連通路61の開口幅dの二分の一よりも大きく設定される。
【0031】
図8は、区隔壁42近傍の燃料流れを模式的に示す説明図である。図中の実線矢印で示すように、インジェクタ4から噴射された燃料は、副燃焼室43の周囲を区隔壁42に沿って上流側(インジェクタ4側。吸気側)から下流側(インジェクタ4と反対側。排気側)へと流れる。このとき、区隔壁42に複数の凹部70が形成されていることで、凹部70の近傍に微小な渦が発生する。なお、図中の円弧状矢印は、渦が発生することを模式的に示すものであり、発生する渦の形状や大きさを厳密に表すものではない。このように、区隔壁42近傍の渦度を高めることによって、燃料流れが下流側に向かうにつれて乱れた流れとなり、燃料流れの区隔壁42からの剥離点がより下流側となる。その結果、副燃焼室43近傍に燃料が滞留する時間が長くなり、副燃焼室43への燃料導入量が確保される。
【0032】
以上説明したように、実施形態の内燃機関1は、主燃焼室41と、主燃焼室41内で区隔壁42により区画され、主燃焼室41と連通する複数の連通路60が設けられた副燃焼室43と、主燃焼室41内に設けられ、副燃焼室43に向けて燃料を噴射するインジェクタ4(燃料噴射装置)とを備え、区隔壁42の主燃焼室41側の面42sには、複数の凹部70が形成されている。
【0033】
この構成により、上述したように、凹部70の近傍に微小な渦を発生させることによって、燃料流れの区隔壁42からの剥離点をより下流側とし、副燃焼室43近傍に燃料が滞留する時間を長くして、副燃焼室43へとより確実に燃料を導入可能となる。
【0034】
また、凹部70の開口幅aは、第1連通路61(連通路)の開口幅dよりも大きく、互いに隣り合う第1連通路61同士の距離Lよりも小さい。すなわち、区隔壁42の面42sのうち第1連通路61が形成された箇所周辺は、凹部70が存在しないために渦度が低下しやすく、燃料流れの乱れが途切れたり区隔壁42からの剥離点となったりする可能性がある。また、各凹部70で発生する渦の大きさは、凹部70の開口幅aが大きい方が大きくなりやすい。そこで、各凹部70の開口幅aを第1連通路61の開口幅dよりも大きく、上記距離Lよりも小さくすることで、凹部70と第1連通路61との干渉を避けつつ、各凹部70で発生する渦の第1連通路61に対する相対的な大きさを確保することができる。その結果、燃料流れが第1連通路61を通過する前後で乱れが途切れたり区隔壁42から剥離したりすることを抑制することができる。
【0035】
また、第1連通路61と隣り合う凹部71と当該第1連通路61との間の距離sは、凹部70の開口幅aよりも小さく、第1連通路61の開口幅dの二分の一よりも大きい。この構成により、凹部70と隣り合う第1連通路61との間の隙間に対して凹部70で発生する渦の相対的な大きさを確保し、燃料流れが凹部71と第1連通路61との間を通過する前後で乱れが途切れたり、区隔壁42から剥離したりすることを抑制することができる。また、上記距離sを第1連通路61の開口幅dの二分の一よりも大きくすることで、第1連通路61と凹部71とを近づけすぎないようにして、第1連通路61から噴射される火炎の燃焼に影響が生じることを抑制することができる。
【0036】
また、互いに隣り合う第1連通路61同士の間には、複数の凹部70が形成される。この構成により、第1連通路61同士の間に複数の渦を発生させ、燃料流れの乱れを区隔壁42に沿って発展させることができる。
【0037】
また、複数の凹部70は、少なくとも、インジェクタ4から副燃焼室43に向けて噴射される燃料が区隔壁42に当たる範囲A1に形成される。この構成により、インジェクタ4から噴射された燃料を副燃焼室近傍に良好に滞留させることができる。
【0038】
また、複数の凹部70は、区隔壁42のインジェクタ4側の第1半部42Aおよびインジェクタ4とは反対側の第2半部42Bの双方に形成される。この構成により、燃料流れの剥離点を十分に下流側に位置付け、燃料を副燃焼室43近傍に良好に滞留させることができる。
【0039】
次に、実施形態の複数の凹部70の他の構成例について説明する。図9は、他の例の凹部70Bが形成された区隔壁42を模式的に示す側面図であり、図10は、図9のB-B線に沿った区隔壁42の断面図である。図9および図10に示す複数の凹部70Bは、上記複数の凹部70とは形成位置が異なっている。より詳細には、複数の凹部70Bの配置密度は、第1半部42Aの方が第2半部42Bよりも大きい。すなわち、第2半部42Bでは、第1半部42Aに比べて複数の凹部70Bの数が間引きされている。
【0040】
この構成により、比較的に燃料が導入されやすい第1半部42A近傍において、燃料を良好に滞留させることができる。一方、比較的に燃料が導入されづらい第2半部42Bに複数の凹部70Bを必要以上に形成しないようにして、区隔壁42の表面積の増加を抑制し、熱損失の増加を抑制することができる。
【0041】
図11は、さらに他の例の凹部70Cが形成された区隔壁42を模式的に示す側面図であり、図12は、図11のC-C線に沿った区隔壁42の断面図である。図11および図12に示す複数の凹部70Cは、その開口幅aが不均一とされている。より詳細には、第1連通路61と隣り合う凹部70Cのうち、インジェクタ4側(上流側)に配置される各凹部72C(黒色を付した箇所)は、他の凹部70Cよりも開口幅aが大きい。つまり、各凹部72Cは、第1連通路61と隣り合う凹部70Cのうちインジェクタ4とは反対側(下流側)に配置される各凹部73Cよりも開口幅aが大きい。
【0042】
この構成により、図12に示すように、燃料流れの上流側で第1連通路61と隣り合う凹部72Cで発生する渦の当該第1連通路61に対する大きさを十分に確保することができる。その結果、燃料流れが当該第1連通路61近傍を通過する前後で乱れが途切れたり、区隔壁42から剥離したりすることを抑制することができる。また、燃料流れの下流側で第1連通路61と隣り合う凹部73Cを大きくしすぎないようにして、当該凹部73Cから下流側へ向けて燃料流れの乱れを徐々に発展させることができる。
【0043】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、各連通路60の位置や詳細な形状、各凹部70、70B、70Cの位置や開口幅a、隣り合う第1連通路61との距離sについては適宜変更されてもよい。また、複数の凹部70、70B、70Cは、適宜組み合わせて設けられてもよい。
【0044】
また、副燃焼室43は主燃焼室41の上部中心部に設けられる必要はない。また、内燃機関1は、少なくとも圧縮工程において副燃焼室43へと燃料を噴射する燃料噴射装置が主燃焼室41に設けられるものであればよく、副燃焼室43内に燃料を噴射する燃料噴射装置を別に備えるものであってもよい。また、本実施形態では、主燃焼室41に燃料を供給する手段として、副燃焼室43に向けて燃料を供給するインジェクタ4を用いたが、別のインジェクタを設けてもよく、さらに、当該インジェクタの設置場所は、気筒内だけでなく吸気ポート2内であってもよい。すなわち、本実施形態の構成は、吸気ポート噴射方式の構成と併用されてもよい。
【0045】
また、内燃機関1は、自動車の走行駆動用等の各種内燃機関に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 内燃機関
4 インジェクタ
30 気筒
41 主燃焼室
42 区隔壁
42a 主燃焼室側の面
42A 第1半部
42B 第2半部
43 副燃焼室
60 複数の連通路
61 第1連通路
62 第2連通路
70、70B、70C、71、72C、73C 凹部
a、d 開口幅
A1 範囲
L、s 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12