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  • 特開-ドリル加工装置 図1
  • 特開-ドリル加工装置 図2
  • 特開-ドリル加工装置 図3
  • 特開-ドリル加工装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140542
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ドリル加工装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/16 20060101AFI20241003BHJP
   B23B 47/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B26F1/16
B23B47/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051722
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高光 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】張 瑞良
(72)【発明者】
【氏名】山地 拓也
(72)【発明者】
【氏名】永井 達士
【テーマコード(参考)】
3C036
3C060
【Fターム(参考)】
3C036CC07
3C036GG00
3C036GG01
3C060AA11
3C060BA05
3C060BD01
3C060BE08
3C060BG01
3C060BG15
3C060BG20
3C060BH01
(57)【要約】
【課題】穴あけ精度の高いドリル加工装置を提供することができる。
【解決手段】ドリル加工装置は、ワークを載置するテーブルと、スピンドルと、プレッシャフットと、プレッシャフットをスピンドルに対して相対移動可能に支持するエアシリンダと、を備えている。エアシリンダは、圧縮空気が供給されるシリンダ61と、プレッシャフットに連結されると共に前記シリンダ内で摺動するピストン71と、シリンダ内の圧力を減圧する減圧手段64,78,77と、を有している。減圧手段は、エアシリンダが所定量、ストロークしたことに基づいてシリンダ内の圧力を減圧するように構成されており、所定量は、プレッシャフットがワークに当接した後、ドリルがワークに突入するまでのスピンドルの下降量以上である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するテーブルと、
ドリルを高速回転可能に保持するスピンドルと、
前記スピンドルの下方側に位置し、前記ワークを前記テーブルに押し付けるプレッシャフットと、
前記プレッシャフットを前記スピンドルに対して相対移動可能に支持するエアシリンダと、を備え、
前記エアシリンダは、圧縮空気が供給されるシリンダと、前記プレッシャフットに連結されると共に前記シリンダ内で摺動するピストンと、前記シリンダ内の圧力を減圧する減圧手段と、を有し、
前記減圧手段は、前記エアシリンダが所定量、ストロークしたことに基づいて前記シリンダ内の圧力を減圧するように構成されており、前記所定量は、前記プレッシャフットが前記ワークに当接した後、前記ドリルが前記ワークに突入するまでの前記スピンドルの下降量以上である、
ことを特徴とするドリル加工装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記シリンダ及び前記ピストンに形成されたエア抜き穴であり、
前記シリンダが最大押出し位置の際に、前記シリンダのエア抜き穴は前記ピストンによって閉塞されており、前記ピストンが前記最大押出し位置から前記所定量、押し込まれると、前記シリンダのエア抜き穴が前記ピストンのエア抜き穴を介して前記シリンダ内と連通し、前記シリンダ内の圧力が減圧される、
ことを特徴とする請求項1記載のドリル加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルによりワークに加工を行うドリル加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気軸受けを設けたスピンドルによりドリルを高速回転させ、プレッシャフットで基板を押さえつつ、この高速回転したドリルにて穴あけ加工を行うドリル加工装置が案出されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-040055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、プレッシャフットにて基板を押さえつつ穴あけ加工を行うと、穴あけ時の基板の浮き上がりや位置ずれなどを抑えることができ、穴あけ加工の品質を向上することができる。しかしながら、従来、プレッシャフットは、ドリルの基板への突入時と同じ圧力で穴あけが終わるまで基板を押さえ続けるため、基板が伸びて加工序盤と加工終盤とで穴位置精度に差が生じてしまうことがあった。
【0005】
そこで本発明は、穴あけ精度の高いドリル加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ワークを載置するテーブルと、ドリルを高速回転可能に保持するスピンドルと、前記スピンドルの下方側に位置し、前記ワークを前記テーブルに押し付けるプレッシャフットと、前記プレッシャフットを前記スピンドルに対して相対移動可能に支持するエアシリンダと、を備え、前記エアシリンダは、圧縮空気が供給されるシリンダと、前記プレッシャフットに連結されると共に前記シリンダ内で摺動するピストンと、前記シリンダ内の圧力を減圧する減圧手段と、を有し、前記減圧手段は、前記エアシリンダが所定量、ストロークしたことに基づいて前記シリンダ内の圧力を減圧するように構成されており、前記所定量は、前記プレッシャフットが前記ワークに当接した後、前記ドリルが前記ワークに突入するまでの前記スピンドルの下降量以上である、ことを特徴とするドリル加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、穴あけ精度の高いドリル加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板突入前のドリル加工装置を示す模式図である。
図2】基板突入後のドリル加工装置を示す模式図である。
図3図1の際のエアシリンダの状態を示す模式図である。
図4図2の際のエアシリンダの状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係るドリル加工装置について図を用いて説明をする。なお、以下の説明において、X軸方向、Y軸方向とは、加工対象を平面視で視た際の状態を基準として互いに直交する方向であり、Z軸方向とは、これらX軸方向及びY軸方向と直交する方向である。例えば、図1において、X軸方向は図面の左右方向であり、Y軸方向は図面の手前奥方向であり、Z軸方向は図面の上下方向である。
【0010】
[ドリル加工装置の概略構成]
まず、ドリル加工装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、本実施の形態に係るドリル加工装置1は、不図示の装置基台上にX軸に移動可能に設けられたテーブル2と、スピンドルユニット3と、プレッシャフット5と、を備えており、テーブル2上には、穴あけ加工を行う被加工物としてのワーク(本実施の形態ではプリント基板)Wが載置されている。
【0011】
スピンドルユニット3は、ドリル4を回転自在に保持するスピンドル3aと、スピンドル3aを保持するホルダ3bと、を備えており、不図示のクロススライド及びサドルを介してY軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持されている。より詳しくは、スピンドル3aは、先端にドリル4を取り付けるコレットチャックを有するロータシャフトと、ロータシャフトを回転自在に支持する空気軸受と、ロータシャフトを回転させるモータと、を備えている。空気軸受は、ラジアル空気軸受によりロータシャフトを径方向に支持し、スラスト空気軸受により軸方向に支持している。モータは、ロータシャフトに形成されたロータと、ロータに対向する位置に配置されたステータと、により構成されている。そして、スピンドル3は、これらロータシャフト、空気軸受、モータによってドリル4を高速回転可能に保持している。
【0012】
また、スピンドル3aの下方側には、穴あけ加工時にワークWを押さえるためのプレッシャフット5が係合している。プレッシャフット5は、左右一対のエアシリンダ6,6によってスピンドル3aと相対移動可能に支持されており、このエアシリンダ6,6は、ホルダ3bのブラケット部31bに支持されている。このため、スピンドルユニット3がZ軸方向に下降すると、プレッシャフット5もスピンドルユニット3と共にZ軸方向に下降し、スピンドルユニット3が所定高さ位置まで下降すると、図1に示すように、スピンドル3aが支持しているドリル4に先立って、ワークWの表面に接触する。
【0013】
エアシリンダ6,6には、エア供給手段としてのコンプレッサー7からは常時一定の圧力の圧縮空気が供給されており、プレッシャフット5を下方に押圧している。そして、プレッシャフット5の下面がワークWの表面に接触して押さえた状態で、更にスピンドルユニット3が下降をすると、エアシリンダ6,6がストロークし、プレッシャフット5の位置は変わらずに、スピンドルユニット3のみが下降する。すると、図2に示すように、スピンドル3aに支持されたドリル4がワークWへと突入し、ワークWに穴あけが行われる。穴あけが終了し、スピンドルユニット3が上昇すると、ある位置からプレッシャフット5もスピンドルユニット3と共に上昇する。
【0014】
[エアシリンダの構成]
ついで、エアシリンダ6,6の構成について、詳しく説明をする。図3は、図1の際のドリル加工装置1のエアシリンダ6の状態を示す図である。図3に示すように、エアシリンダ6は、シリンダ61と、シリンダ内で摺動するピストン71とを備えて構成されている。上記エアシリンダ6は、シリンダ61の内周面62とピストン71の外周面72との間がシールされており、ピストン71のロッド部73とは反対側にシリンダ室63が形成されている。シリンダ室63には、圧縮空気の供給用及び排気用のポートが形成されており、コンプレッサー7からシリンダ室63に圧縮空気が供給されることによって、シリンダ室63の内圧が高まり、ピストン71に下方への押圧力が生じるようになっている。
【0015】
また、本実施の形態では、ピストン71は、上述したプレッシャフット5と連結するロッド部73と、シリンダ61内にて摺動するピストン部74と、を備えている。ピストン部74は中空状の円筒形をしており、ロッド部73が取り付けられる底部75と、シリンダ61の内周面62と摺動する外周面を形成する周壁部76と、を備え、底部75とは軸方向(摺動方向)反対側にてシリンダ室63に開口して形成されている。また、上記周壁部76には、ピストン部74の内部空間77の内外を連通させる開口部78が設けられている。
【0016】
更に、上記シリンダ61の内周面62を形成するシリンダボディ65の周壁部の所定高さ位置には、シリンダ61の内外を連通する開口部64が形成されており、これらシリンダ61の開口部64及びピストン71の開口部78は、エアシリンダ6内を減圧してプレッシャフット5の押圧力を低減させる減圧手段を構成している。より詳しくは、上記シリンダ61の開口部64とピストン71の開口部78とは、周方向において、互いに対応した位置に設けられており、図3のピストン71の最大押出し位置において、開口部64はピストン71の外周面によって閉塞され、開口部78はシリンダ61の内周面によって閉塞され、これら開口部64と開口部78とが連通しないように構成されている。この状態では、コンプレッサー7から供給された圧縮空気は、開口部78,64を介して外部へと逃げることがないため、シリンダ室63の内圧は開口部78,64を介して減圧されず、ピストン71の最大押出し位置においてエアシリンダ6の押圧力は最大となっている。そして、エアシリンダ6は、プレッシャフット5がワークWと接触するまで、この最大押出し位置の状態で、スピンドルユニット3と共に下降する。
【0017】
また、この最大押出し位置において、ピストン71の開口部78の上端位置とシリンダ61の開口部64の下端位置との間に所定の距離tが設けられており、この距離tのストローク分、上記シリンダ61の開口部64とピストン71の開口部78とは連通せず、エアシリンダ6の押圧力は最大値に保持される。本実施の形態では、この距離tは少なくともプレッシャフット5がワークWと接触してから、ドリル4の先端がワークWに突入するまでのスピンドル3aの下降距離以上に設定されており、このため、少なくともワークWにドリル4が突入する際は、最大押圧力でプレッシャフット5によってワークWが押さえられるようになっている。
【0018】
また、ドリル4がワークWに突入して穴あけが進み、上述した図2のような状態となると、ピストン71のストローク量が上記距離t以上となり、図4に示すように、シリンダ61の開口部64とピストン71の開口部78とが連通する。これらシリンダ61の開口部64とピストン71の開口部78とが連通すると、開口部78,64を介してシリンダ室内の圧縮空気CAがシリンダ外へと逃げることによって減圧され、プレッシャフット5によるワークWの押圧力は小さくなる。
【0019】
このように、本実施の形態では、シリンダ61の開口部64と、ピストン71の開口部78及び内部空間77と、が、それぞれエア抜き穴となっており、これらエア抜き穴によって、エアシリンダ6が所定量t、ストロークしたことに基づいてシリンダ内の圧力を減圧する減圧手段が構成されている。上記所定量tは、プレッシャフット5がワークWに当接した後、ドリル4がワークWに突入するまでのスピンドル3aの下降量以上となっているため、エアシリンダ6によるプレッシャフット5を介したワークの押圧力は、少なくともドリル4がワークWに突入するまでは最大押圧力が維持される。これにより、最もワークが暴れやすいドリル4の突入時にプレッシャフット5によって確実にワークWを押さえることができる。また、ドリル4の突入時から穴あけが進展し、スピンドル3aの下降量が大きくなると、上述したエア抜き穴が連通してエアシリンダ6が減圧され、プレッシャフット5によるワークWの押圧力が小さくなる。これにより、穴あけ時、常に最大押圧力でワークWが押圧され、例えばプリント基板のようなワークが延びてしまうことによって、加工の序盤と終盤とで穴あけ位置精度に差が生じてしまうことを防止することができる。
【0020】
本実施の形態に係るドリル加工装置1では、上述したようにドリル4のワークWへの突入時は最大押圧力によりプレッシャフット5によりワークWを押さえ、その後は、ワークWの押圧力を低減してプリント基板のようなワークが延びてしまうことを防止することによって、精度良くワークに穴あけを行うことが可能となっている。
【符号の説明】
【0021】
1:ドリル加工装置、2:テーブル、3a:スピンドル、4:ドリル、5:プレッシャフット、6:エアシリンダ、61:シリンダ、71:ピストン、64,77,78:減圧手段、t:所定量、W:ワーク
図1
図2
図3
図4