(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140544
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】燃料電池式の建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241003BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20241003BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241003BHJP
B60L 50/71 20190101ALI20241003BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20241003BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F9/00 Z
B60L50/60
B60L50/71
H01M8/04029
H01M8/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051725
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2D003
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AB06
2D003DA02
2D003DA04
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD07
5H125BD12
5H125CD06
5H125FF04
5H125FF09
5H125FF26
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA46
5H127BB26
5H127CC07
5H127EE02
5H127EE04
5H127EE13
5H127EE15
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】水素タンクに安全にアクセス可能とすることにより、オペレータの安全を確保することができる燃料電池式の建設機械を提供する。
【解決手段】燃料電池式の建設機械(1)は、車体と、水素が貯留される水素タンク(42)と、水素タンク(42)から供給される水素により発電する燃料電池(44)と、水素タンク(42)及び燃料電池(44)が格納される燃料電池室(70)と、燃料電池室(70)に配置され、冷却風を生成するとともに燃料電池室(70)の内部を換気するファン装置(52)と、燃料電池(44)を冷却した冷却水をファン装置(52)により生成された冷却風と熱交換させる熱交換器(50)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
水素が貯留される水素タンクと、
前記水素タンクから供給される前記水素により発電する燃料電池と、
前記水素タンク及び前記燃料電池が格納される燃料電池室と、
前記燃料電池室に配置され、冷却風を生成するとともに前記燃料電池室の内部を換気するファン装置と、
前記燃料電池を冷却した冷却水を前記ファン装置により生成された前記冷却水と熱交換させる熱交換器と
を備える、ことを特徴とする燃料電池式の建設機械。
【請求項2】
前記燃料電池室には、前記燃料電池が発電した電気を蓄電するバッテリが格納される、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池式の建設機械。
【請求項3】
前記燃料電池により発電した電気により駆動される電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吸入する作動油が貯留される作動油タンクと、
前記油圧ポンプが吐出する前記作動油が供給される油圧バルブと、
オペレータが搭乗する運転室と、
前記水素タンク、前記燃料電池、前記バッテリ、前記電動モータ、前記熱交換器、及び前記ファン装置が配置されるとともに、前記燃料電池室を構成する高電圧領域と、
前記油圧ポンプ、前記作動油タンク、及び前記油圧バルブが配置されるとともに、前記運転室が配置される非高電圧領域と、
前記高電圧領域と前記非高電圧領域とを仕切るとともに前記燃料電池室を画定する隔壁と
を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池式の建設機械。
【請求項4】
前記高電圧領域は、前記車体の前後方向において前記運転室よりも後側の後部領域に形成され、
前記非高電圧領域は、前記車体の前後方向において前記運転室を含む前部領域に形成され、
前記燃料電池室を構成する前記高電圧領域の前記車体の前後方向における後端部には、前記ファン装置による換気に伴い前記燃料電池室の内気を排出させる排気口が形成される、ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池式の建設機械。
【請求項5】
前記排気口は、前記車体の前後方向及び前記車体の幅方向における前記運転室の平面視対角線上に配置される、ことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池式の建設機械。
【請求項6】
前記隔壁は、前記車体の幅方向において直線状をなす、ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池式の建設機械。
【請求項7】
前記作動油タンクは、前記油圧ポンプの上側に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池式の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池式の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池式の建設機械としての油圧ショベルが開示されている。油圧ショベルは、水素を貯蔵する水素タンクと、水素タンクから供給される水素により発電する燃料電池とを収納した上部本体装置(上部旋回体)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素は可燃性ガスであるため、オペレータがメンテナンス時に水素タンクにアクセスする際には安全に十分に配慮する必要がある。しかしながら、特許文献1の建設機械においてはオペレータの安全確保について格別な配慮がなされていないため、水素タンクに安全にアクセスすることができない。従って、オペレータの安全を確保することができる燃料電池式の建設機械が求められている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、オペレータの安全を確保することができる燃料電池式の建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するべく、本発明の燃料電池式の建設機械は、車体と、水素が貯留される水素タンクと、水素タンクから供給される水素により発電する燃料電池と、水素タンク及び燃料電池が格納される燃料電池室と、燃料電池室に配置され、冷却風を生成するとともに燃料電池室の内部を換気するファン装置と、燃料電池室を冷却した冷却水をファン装置により生成された冷却風と熱交換させる熱交換器とを備える、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
従って、本発明によれば、オペレータの安全を確保することができる燃料電池式の建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る上部旋回体を上側から見た模式図である。
【
図3】
図2の上部旋回体を右側から見た模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る上部旋回体を上側から見た模式図である。
【
図5】
図4の上部旋回体を右側から見た模式図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る上部旋回体を上側から見た模式図である。
【
図7】
図6の上部旋回体を右側から見た模式図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る上部旋回体を上側から見た模式図である。
【
図9】
図8の上部旋回体を右側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る建設機械について図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、建設機械としての油圧ショベル1の進行方向を基準に、油圧ショベル1の運転室8に搭乗するオペレータから見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は油圧ショベル1の車体の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は油圧ショベル1の車体の左右(車幅)方向を示し、矢印「上」及び「下」は油圧ショベル1の車体の上下方向を示す。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係る油圧ショベル1の側面図を示す。油圧ショベル1は、燃料電池式の建設機械であって、下部走行体10と、下部走行体10に旋回可能に取り付けられた上部旋回体(本体部)20と、上部旋回体20に揺動可能に取り付けられたフロント作業機30とを備えている。下部走行体10は、前輪2A、後輪2B、センタフレーム12、及びセンタジョイント14(
図2参照)等を備えている。
【0011】
下部走行体10は、前輪2A及び後輪2Bにより走行するホイール式の走行装置であり、油圧ショベル1を走行可能とする。センタフレーム12は、上部旋回体20を旋回可能に支持する支持構造体である。センタジョイント14は、センタフレーム12に設けられ、上部旋回体20の旋回中心に位置付けられた回転継手であり、センタジョイント14を介して下部走行体10と上部旋回体20との間に作動油が流通される。
【0012】
フロント作業機30は、上部旋回体20に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う機体であり、ブーム32、アーム34、及びバケット36を備えている。ブーム32は、上部旋回体20のフレーム(図示せず)に上下方向(即ち車幅方向軸線周り)で回動可能に取り付けられ、ブームシリンダ32aにより駆動される。アーム34は、ブーム32の先端に上下方向で回動可能に取り付けられ、アームシリンダ34aにより駆動される。バケット36は、アーム34の先端に上下方向で回動可能に取り付けられ、バケットシリンダ36aにより駆動される。
【0013】
上部旋回体20は、旋回フレーム22、キャブ24、カウンタウェイト4、旋回装置26(
図2参照)、及び機械室6等を備えている。旋回フレーム22は、上部旋回体20のベースとなる支持構造体である。キャブ24は、旋回フレーム22の前側且つ左側に形成され、オペレータが油圧ショベル1を運転操作するために搭乗する運転室8が形成されている。運転室8内に設けられた複数の操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体10の走行、上部旋回体20の旋回、及びフロント作業機30による掘削等の各種動作が可能となる。
【0014】
カウンタウェイト4は、旋回フレーム22の後端部に取り付けられ、油圧ショベル1の重量バランスを確保する。旋回装置26は、図示しないモータ及び減速機によって構成され、旋回装置26が作動することにより、上部旋回体20がセンタジョイント14を旋回中心として下部走行体10の上で左旋回又は右旋回する。機械室6は、旋回フレーム22のキャブ24とカウンタウェイト4との間及びキャブ24の右側に形成され、右側方カバー6a、左側方カバー6b(
図2参照)、上方カバー6c、下側の旋回フレーム22、前方カバー6d、及び後側のカウンタウェイト4で上部旋回体20に区画されている。
【0015】
<第1実施形態>
図2は第1実施形態に係る上部旋回体20を上側から見た模式図を示し、
図3は
図2の上部旋回体20を右側から見た模式図を示す。上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8よりも後側に形成される後部領域40には、水素タンク42、燃料電池44、バッテリ46、電動モータ48、熱交換器50、及びファン装置52等が配置されている。
【0016】
詳しくは、水素タンク42は燃料電池44及びバッテリ46の上側に配置されており、
図3においては、燃料電池44は電動モータ48に隠れて一部のみが図示され、バッテリ46は図示されていない。一方、上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8を含む前部領域60には、油圧ポンプ62、作動油タンク64、及び油圧バルブ66等が配置されている。本実施形態において、油圧ポンプ62、作動油タンク64、及び油圧バルブ66は車体の前後方向に並んで配置されている。
【0017】
水素タンク42には気体燃料としての水素が貯留され、燃料電池44は、水素タンク42から供給される水素により発電する。バッテリ46は、燃料電池44が発電した電気を蓄電する。電動モータ48は、バッテリ46から給電され、燃料電池44により発電した電気により駆動される。バッテリ46において蓄電した電気は、電動モータ48の他、前述した旋回装置26や下部走行体10の走行装置等に設けられた各種モータを駆動する電力や燃料電池44を駆動するための電力として用いても良い。
【0018】
熱交換器50は、燃料電池に向けて冷却水を供給して燃料電池44を冷却するとともに、冷却後の冷却水を冷却風と熱交換させて冷却して燃料電池44に向けて還流させる。ファン装置52は、熱交換器50に向けて冷却風を送風して冷却風と冷却水とを熱交換させる。油圧ポンプ62は、電動モータ48により駆動される。作動油タンク64は、油圧ポンプ62が吸入する作動油が貯留される。油圧バルブ66は、油圧ポンプ62が吐出する作動油が供給され、図示しない油圧装置を構成する。
【0019】
油圧バルブ66を経由した作動油は、フロント作業機30のブームシリンダ32a、アームシリンダ34a、及びバケットシリンダ36aに供給され、油圧バルブ66において作動油の供給量を制御することにより、ブーム32、アーム34、及びバケット36がそれぞれ個別に駆動制御される。なお、油圧ポンプ62を含む油圧装置から供給した作動油により前述した旋回装置26や下部走行体10の走行装置を駆動させても良い。
【0020】
ここで、上部旋回体20には、水素タンク42及び燃料電池44が格納される燃料電池室70が形成されている。燃料電池室70には、前述したファン装置52が配置され、ファン装置52は、熱交換器50に冷却風を送風する熱交換機能に加えて、燃料電池室70の内部を吸排気することにより換気する換気機能をも備えている。ファン装置52による燃料電池室70の換気は、油圧ショベル1の起動の有無に関わらず常時行われるのが好ましい。また、燃料電池室70にはバッテリ46も格納されている。
【0021】
さらに、燃料電池室70には、前述した熱交換器50及び電動モータ48も格納されている。即ち、燃料電池室70は上部旋回体20の後部領域40と同一の領域であり、後部領域40と前部領域60とを区画する隔壁72は、機械室6において燃料電池室70を画定する。さらに、上部旋回体20は、機械室6において高電圧機器が配置される高電圧領域80と、機械室6において非高電圧電圧機器が配置される非高電圧領域90とを有し、前述した隔壁72は高電圧領域80と非高電圧領域90とをも仕切るものである。
【0022】
詳しくは、高電圧領域80は、後部領域40及び燃料電池室70と同一の領域であり、水素タンク42、燃料電池44、バッテリ46、電動モータ48、熱交換器50、及びファン装置52が配置される。一方、非高電圧領域90は、前部領域60と同一の領域であり、油圧ポンプ62、作動油タンク64、及び油圧バルブ66が配置され、運転室8が形成される。換言すると、高電圧領域80は、上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8よりも後側の後部領域40(燃料電池室70と同一領域)に形成され、非高電圧領域90は、上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8を含む前部領域60に形成される。
【0023】
また、燃料電池室70を構成する高電圧領域80の車体の前後方向における後端部、即ちカウンタウェイト4には、ファン装置52による換気に伴い燃料電池室70の内気を排出させる排気口74が形成されている。排気口74は、例えば車体の前後方向において熱交換器50を挟んでファン装置52と対向する位置に配置され、また、運転室8の車体の前後方向及び車体の幅方向における平面視対角線上に配置される。また、
図2に示すように、燃料電池室70を区画する左側方カバー6bには、ファン装置52による換気に伴い燃料電池室70に外気を流入させる吸気口76が形成されている。
【0024】
また、本実施形態の場合、旋回フレーム22に搭載する各機器のレイアウトを優先した結果、隔壁は72、第1壁部72a、第2壁部72b、及び接続壁部72cとから段差を有する上面視屈曲形状に形成されている。詳しくは、第1壁部72aは、水素タンク42とキャブ24とを車体の幅方向に沿って直線状に仕切る。また、第2壁部72bは、車体の前後方向おいて第1壁部72aよりも後側にずれた位置で、電動モータ48と油圧ポンプ62とを車体の幅方向に沿って直線状に仕切る。また、接続壁部72cは、第1壁部72aと第2壁部72bとを車体の前後方向に沿って接続する。
【0025】
以上のように、本実施形態の燃料電池式の油圧ショベル1は、機械室6に水素タンク42及び燃料電池44が格納される燃料電池室70が区画され、燃料電池室70には、冷却風を生成するとともに燃料電池室70の内部を換気するファン装置52と、燃料電池44を冷却した冷却水をファン装置52により生成された冷却風と熱交換させる熱交換器50とが配置されている。これにより、何らかの理由で燃料電池室70に水素が滞留したとしても、水素は燃料電池室70の外部に排出される。従って、水素タンク42に安全にアクセス可能となるため、メンテナンス時のオペレータの安全を確保することができる。
【0026】
また、燃料電池室70にバッテリ46が格納されることにより、何らかの理由で燃料電池室70にバッテリ液が揮発した可燃性ガスや有害ガスが滞留したとしても、これらのガスはファン装置52により燃料電池室70の外部に排出される。従って、バッテリ46に安全にアクセス可能となるため、メンテナンス時のオペレータの安全を確保することができる。
【0027】
また、ファン装置52は、燃料電池室70の内部を吸排気することにより換気する換気機能と、熱交換器50に冷却風を送風する熱交換機能とを備えている。ここで、油圧ショベル1の燃料電池システムを構成する水素タンク42、燃料電池44、バッテリ46、及び電動モータ48は、従来の建設機械のエンジンに置き換えられるものである。
【0028】
従って、燃料電池式の建設機械は従来の建設機械に比べて搭載機器が多いため、機械室6のスペースが狭小となり、搭載機器のレイアウトが制約を受け易い。本実施形態のように、既存のいわゆるラジエータファンを換気用のファン装置52として兼用することにより、油圧ショベル1の搭載機器数を低減し、機械室6における搭載機器のレイアウト自由度を高めることができる。
【0029】
また、上部旋回体20には、水素タンク42、燃料電池44、バッテリ46、電動モータ48、熱交換器50、及びファン装置52が配置されるとともに燃料電池室70を構成する高電圧領域80と、油圧ポンプ62、作動油タンク64、及び油圧バルブ66が配置されるとともに運転室8が形成される非高電圧領域90とが隔壁72により区画される。また、隔壁72は高電圧領域80と非高電圧領域90とを仕切るとともに燃料電池室70を画定する。これにより、燃料電池室70の画定に併せて、高電圧機器が配置された高電圧領域80と、非高電圧機器が配置され運転室8が形成された非高電圧領域90とを区画することができる。従って、運転室8に搭乗するオペレータを高電圧機器から隔離することができるため、オペレータの安全性を向上することができる。
【0030】
また、高電圧領域80は、上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8よりも後側の後部領域40に形成され、非高電圧領域90は、上部旋回体20の車体の前後方向において運転室8を含む前部領域60に形成される。そして、燃料電池室70を構成する高電圧領域80の車体の前後方向における後端部、即ち本実施形態の場合のカウンタウェイト4には、ファン装置52による換気に伴い燃料電池室70の内気を排出させる排気口74が形成される。これにより、燃料電池室70に滞留する水素、或いはその他の可燃性ガスや有毒ガスは、運転室8からの遠隔位置にて排気される。従って、運転室8に搭乗するオペレータの安全性をさらに向上することができる。
【0031】
また、排気口74は、車体の前後方向及び車体の幅方向における運転室8の平面視対角線上に配置される。これにより、燃料電池室70から排気される水素、或いはその他の可燃性ガスや有毒ガスは運転室8からの最遠隔位置にて排気可能となる。従って、運転室8に搭乗するオペレータの安全性をより一層向上することができる。
【0032】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態に係る上部旋回体20を上側から見た模式図を示し、
図5は
図4の上部旋回体20を右側から見た模式図を示す。なお、以降の新たな実施形態の説明においては、主として既に説明した実施形態と異なる特徴を説明し、既に説明した実施形態と同様の特徴については図面に同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
第2実施形態においては、第1実施形態の場合と異なり、隔壁72が車体の幅方向に沿って直線状に形成されている。詳しくは、第1実施形態において水素タンク42とキャブ24とを車体の幅方向に沿って直線状に仕切る第1壁部72aが、そのまま車体の幅方向に沿って電動モータ48と油圧ポンプ62とを仕切る位置まで延長される。これにより、接続壁部72cが排除された段差のない隔壁72が形成され、隔壁72の段差を形成する隅部周辺の空間に燃料電池室70の内気が滞留することが抑制される。従って、ファン装置52による燃料電池室70の換気効率が向上することにより、オペレータの安全性をさらに向上することができる。
【0034】
<第3実施形態>
図6は第3実施形態に係る上部旋回体20を上側から見た模式図を示し、
図7は
図6の上部旋回体20を右側から見た模式図を示す。第3実施形態においては、第2実施形態の場合と同様に、隔壁72が車体の幅方向に沿って直線状に形成されている。
【0035】
詳しくは、第1実施形態において電動モータ48と油圧ポンプ62とを車体の幅方向に沿って直線状に仕切る第2壁部72bがそのまま車体の幅方向に沿って水素タンク42とキャブ24とを仕切る位置まで延長される。これにより、第2実施形態の場合と同様に、段差に起因した燃料電池室70の内気の滞留が抑制され、ファン装置52による燃料電池室70の換気効率が向上することにより、オペレータの安全性をさらに向上することができる。
【0036】
さらに、第3実施形態においては、第2壁部72bを基準に隔壁72を直線状に形成したことにより、第2実施形態の第1壁部72aを基準に隔壁72を直線状に形成したときのように非高電圧領域90(前部領域60)の右側方カバー6a側の機械室6が前側に出っ張ることはない。これにより、上部旋回体20の右旋回時における運転室8からのオペレータの視界を第1実施形態の場合と同様に確保することができる。従って、油圧ショベル1を操作する際のオペレータの視認性を損なうことなく、オペレータの安全性を向上することができる。
【0037】
<第4実施形態>
図8は第4実施形態に係る上部旋回体20を上側から見た模式図を示し、
図9は
図8の上部旋回体を右側から見た模式図を示す。第4実施形態においては、第2実施形態及び第3実施形態の場合と同様に、隔壁72が車体の幅方向に沿って直線状に形成されている。
【0038】
詳しくは、第2実施形態の場合と同様に、水素タンク42とキャブ24とを車体の幅方向に沿って直線状に仕切る第1壁部72aが、そのまま車体の幅方向に沿って電動モータ48と油圧ポンプ62とを仕切る位置まで延長される。これにより、第2実施形態及び第3実施形態の場合と同様に、燃料電池室70の内気の滞留が抑制されることにより、ファン装置52による燃料電池室70の換気効率が向上し、オペレータの安全性をさらに向上することができる。
【0039】
さらに、第4実施形態においては、作動油タンク64は、油圧ポンプ62の上側に配置されている。これにより、機械室6の前方カバー6dと隔壁72との間の車体の前後方向の幅を小さくすることができる。従って、第2実施形態のときのように非高電圧領域90(前部領域60)の右側方カバー6a側の機械室6が前側に出っ張ることはない。これにより、上部旋回体20の右旋回時における運転室8からのオペレータの視界を第1実施形態及び第3実施形態の場合と同様に確保することができる。従って、油圧ショベル1を操作する際のオペレータの視認性を損なうことなく、オペレータの安全性を向上することができる。
【0040】
さらに、第4実施形態においては、第1壁部72aを基準に隔壁72を直線状に形成しているため、第3実施形態の第2壁部72bを基準に隔壁72を直線状に形成したときのように高電圧領域80(後部領域40)、即ち燃料電池室70が後側に出っ張ることはない。これにより、カウンタウェイト4が後側に出っ張ることはなく、センタジョイント14を旋回中心とした上部旋回体20の旋回半径を第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様に小さく維持することができる。従って、油圧ショベル1を操作する際のオペレータの操作性を損なうことなく、オペレータの安全性を向上することができる。
【0041】
さらに、作動油タンク64を油圧ポンプ62の上側に配置することにより、作動油タンク64を油圧ポンプ62に対し水平に並べて配置した場合に比べて、作動油タンク64の作動油を油圧ポンプ62により一層円滑に吸入させることができる。これにより、油圧装置における作動油の圧損及びキャビテーションの発生を効果的に抑制することができる。従って、油圧装置、ひいてはフロント作業機30の作動効率を向上しつつ、オペレータの安全性を向上することができる。
【0042】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。例えば、第2実施形態から第4実施形態において、隔壁72は車体の幅方向に沿って直線状に形成されているが、これに限らず、車体の幅方向において直線状に形成されていれば良い。即ち、隔壁72は直線状であれば車体の幅方向に対して傾斜していても良い。この場合であっても、燃料電池室70の内気の滞留が抑制されるため、ファン装置52による燃料電池室70の換気効率が向上する。
【0043】
また、第4実施形態において、作動油タンク64が油圧ポンプ62の上側に配置されるが、カウンタウェイト4が後側に出っ張ることを防止可能であれば、上下に配置する搭載機器の組み合わせはこの限りではなく、種々のパターンが想定可能である。また、排気口74の形成位置は、車体の後端部であれば良く、必ずしもカウンタウェイト4に形成することに限定されない。
【0044】
また、各実施形態においては建設機械として油圧ショベル1を一例として説明したが、本発明は、油圧ショベル1に限らず種々の燃料電池式の建設機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 カウンタウェイト(後端部)
8 運転室
40 後部領域
42 水素タンク
44 燃料電池
46 バッテリ
48 電動モータ
50 熱交換器
52 ファン装置
60 前部領域
62 油圧ポンプ
64 作動油タンク
66 油圧バルブ
70 燃料電池室
72 隔壁
74 排気口
80 高電圧領域
90 非高電圧領域