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  • 特開-電極触媒層、及び、膜電極接合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140554
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電極触媒層、及び、膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/056 20210101AFI20241003BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20241003BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241003BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
C25B11/056
C25B9/00 A
C25B13/08 301
C25B9/23
C25B11/052
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051737
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 弘幸
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011BA07
4K011BA08
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
(57)【要約】
【課題】電極触媒層におけるクラックの発生を抑制することができ、水の電解性能を向上させた水電解装置に適する電極触媒層及び膜電極接合体を提供する。
【解決手段】電極触媒層は、触媒粒子と、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質と、被覆繊維と、を備える。被覆繊維14は、繊維コア14Aと、繊維コア14Aの外周面を被覆する外周被覆層14Cとを有し、外周被覆層14Cは、ルイス酸性官能基を含む高分子を含有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒粒子と、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質と、被覆繊維と、を備え、
前記被覆繊維は、繊維コアと、前記繊維コアの外周面を被覆する外周被覆層とを有し、
前記外周被覆層は、ルイス酸性官能基を含む高分子を含有する、電極触媒層。
【請求項2】
前記被覆繊維は、前記繊維コアと前記外周被覆層との間に中間被覆層とを有し、
前記中間被覆層は、ルイス塩基性官能基を有する高分子化合物を含有する、請求項1記載の電極触媒層。
【請求項3】
前記中間被覆層の前記高分子化合物は、アゾール構造を有する、請求項2に記載の電極触媒層。
【請求項4】
前記中間被覆層の前記高分子化合物は、ポリベンゾイミダゾールである、請求項2に記載の電極触媒層。
【請求項5】
前記繊維コアは導電性繊維である、請求項1又は2に記載の電極触媒層。
【請求項6】
前記導電性繊維は、炭素繊維である、請求項5に記載の電極触媒層。
【請求項7】
前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)である、請求項6に記載の電極触媒層。
【請求項8】
前記被覆繊維の平均繊維径が50nm~1μmの範囲内である、請求項1又は2に記載の電極触媒層。
【請求項9】
アニオン交換膜水電解セル用である、請求項1又は2に記載の電極触媒層。
【請求項10】
カソード側電極触媒層である、請求項9に記載の電極触媒層。
【請求項11】
高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟持するアノード側電極触媒層及びカソード側電極触媒層と、を備え、
前記カソード側電極触媒層は、請求項1又は2に記載の電極触媒層である、膜電極接合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アニオン交換膜水電解セルに適する電極触媒層および膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンニュートラルの達成に向けて様々な資源から生成できるCOフリーなエネルギーとしての水素を主要なエネルギーとして利用する動きが加速している。このような水素を製造する方法として、再生可能エネルギーを用いて水の電解を行う手法が有望視されている。水の電解を行う手法としては一般に、アルカリ水電解及びプロトン交換膜(PEM:Proton Exchange Membrane)水電解が知られている。アルカリ水電解は大型化が容易であるが変動対応性に劣り、PEM水電解は変動対応性に優れるが高コストな貴金属材料を使用するデメリットがある。そこで、PEM水電解が有する変動対応性を維持しながら、材料コストの低減が期待できるアニオン交換膜(AEM:Anion Exchange Membrane)水電解が注目されている。
【0003】
AEM水電解セルは一般に、一対の主電極と、一対の主電極の間に設けられる膜電極接合体とを備えており、膜電極接合体は、水酸化物イオンが伝導する固体高分子電解質膜の一面上にアノード側電極触媒層を設けてなる積層体と、アノード側電極触媒層とともに固体高分子電解質膜を挟むように設けられるカソード側電極触媒層とを有する。
【0004】
外部の電力をアノード側電極触媒層とカソード側電極触媒層に印加すると、それぞれの電極触媒層内の触媒上で水の電気分解反応が進み、アノードで酸素を、カソードで水素を生じる。
【0005】
上記膜電極接合体は、固体高分子電解質膜の一面に、例えば塗布法を用いて電極触媒層を形成することにより得られる(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/159820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の膜電極接合体は、電極触媒層にクラックが発生する場合があり、クラックの発生抑制の点で改善の余地を有していた。クラックの発生は、触媒に対する水酸化物イオンと電子の移動を阻害し、水の電解性能を低下させる場合がある。
【0008】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電極触媒層におけるクラックの発生を抑制することができ、水の電解性能を向上させた水電解セルに適する電極触媒層及び膜電極接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]触媒粒子と、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質と、被覆繊維と、を備え、
前記被覆繊維は、繊維コアと、前記繊維コアの外周面を被覆する外周被覆層とを有し、
前記外周被覆層は、ルイス酸性官能基を含む高分子を含有する、電極触媒層。
[2]前記被覆繊維は、前記繊維コアと前記外周被覆層との間に中間被覆層とを有し、
前記中間被覆層は、ルイス塩基性官能基を有する高分子化合物を含有する、請求項[1]又は[2]に記載の電極触媒層。
[3]前記中間被覆層の前記高分子化合物は、アゾール構造を有する、[2]に記載の電極触媒層。
[4]前記中間被覆層の前記高分子化合物は、ポリベンゾイミダゾールである、[3]に記載の電極触媒層。
[5]前記繊維コアは導電性繊維である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の電極触媒層。
[6]前記導電性繊維は、炭素繊維である、[5]に記載の電極触媒層。
[7]前記炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)である、[6]に記載の電極触媒層。
[8]前記被覆繊維の平均繊維径が0.1~1μmの範囲内である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の電極触媒層。
[9]アニオン交換膜水電解セル用である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の電極触媒層。
[10]カソード側電極触媒層である、[9]に記載の電極触媒層。
[11]高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟持するアノード側電極触媒層及びカソード側電極触媒層と、を備え、
前記カソード側電極触媒層は、[1]~[10]のいずれか一項に記載の電極触媒層である、膜電極接合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様の電極触媒層及び膜電極接合体によれば、簡便な手法を用いて十分な機械的強度を有し、水の電解性能を向上させた水電解セル用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る水電解セル用の電極触媒層を有する膜電極接合体を模式的に示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るカソード側電極触媒層2及びアノード側電極触媒層3の断面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る被覆繊維の軸に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
〔膜電極接合体〕
本実施形態の膜電極接合体11は、図1に示すように、高分子電解質膜1と、高分子電解質膜1を高分子電解質膜1の上下各面から狭持するアノード側電極触媒層3(図1中、上側に示す)、及び、カソード側電極触媒層2(図1中、下側に示す)とを備える。
【0014】
(カソード側電極触媒層2)
図2に示すように、カソード側電極触媒層2は、触媒粒子12と、高分子電解質13と、被覆繊維14と、を含む。
【0015】
(触媒粒子)
触媒粒子12は、粒子状である。触媒粒子の活性の向上を要求される場合、触媒粒子の平均粒径は、20nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。触媒粒子の活性の安定化を要求される場合、触媒粒子の平均粒径は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。
【0016】
カソード側電極触媒層の触媒粒子は、還元反応を行うための触媒である。触媒粒子の構成材料としては、白金族元素、金属、その金属の合金や酸化物、複酸化物等を用いることができる。白金族元素としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムがあり、金属としては、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウムもしくはアルミニウム等が例示できる。なお、ここでいう複酸化物とは2種類の金属からなる酸化物である。
【0017】
カソード側電極触媒層の触媒粒子は、担体15に担持されていてもよい。担体は導電性を有し、かつ触媒物質に浸食されない粒子である。担体の一例は、炭素粒子である。電子の伝導路の拡張を要求される場合、担体の粒径は、10nm以上であることが好ましい。電極触媒層の抵抗値の低下を要求される場合、また触媒粒子の担持量の増大を要求される場合、担体の粒径は、1000nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
担体の構成材料の一例は、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、およびフラーレンからなる群から選択される少なくとも一種である。カーボンブラックは、アセチレンブラック、ファーネスブラック、および、ケッチェンブラックからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0018】
(高分子電解質)
高分子電解質13は、水酸化物イオンの伝導性を有した高分子の電解質であり、いわゆるアニオン交換膜である。高分子電解質は、水酸化物イオンを伝導するものであれば特に限定するものではない。例えば、フッ素系アニオン交換電解質や炭化水素系アニオン交換電解質がある。フッ素系の電解質としてはパーフルオロカーボン系電解質、炭化水素系の電解質としてはスチレン系電解質やアクリル系電解質などが挙げられる。
【0019】
(被覆繊維14)
図3に示すように、被覆繊維14は、繊維コア14Aと、繊維コア14Aの外周面を被覆する外周被覆層14Cと、を有する。なお、繊維コア14Aと外周被覆層14Cとの間に中間被覆層14Bを有することが好ましい。
【0020】
(繊維コア14A)
繊維コア14Aに特段の限定はなく、非導電性繊維でもよいが、導電性繊維であることが好ましい。非導電性繊維の例は、電界紡糸で得られた高分子繊維や、セルロースナノファイバーである。導電性繊維の例は、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素繊維、および、導電性高分子ナノファイバーである。すなわち、繊維コアは、中実でも中空でもよい。
【0021】
導電性繊維コアの中でも、繊維コア14Aは、カーボン繊維であることが好ましく、特に、気相成長炭素繊維(VGCF)であることが好適である。
繊維コアの平均繊維径は45nm~0.8μmであってよい。繊維コアの平均繊維径は、被覆繊維の平均繊維径と同様に測定することが出来る。
【0022】
(外周被覆層14C)
外周被覆層14Cは、分子構造中にルイス酸性官能基を含む高分子を含有する。
ルイス酸性官能基とは、電子対を受容しうる官能基をいう。ルイス酸性官能基は、プロトンを供与しうる官能基であってよい。ルイス酸性官能基の例は、-SOH、-COOHである。ルイス酸性官能基を含む高分子の例は、プロトンの伝導性を有したカチオン交換電解質である。フッ素系カチオン交換電解質の一例は、Nafion((登録商標)デュポン(株)製)、Flemion((登録商標)旭硝子(株)製)、Aciplex((登録商標)旭化成(株)製)、Gore-Select((登録商標)日本ゴア合同会社製)からなる群から選択される少なくとも一種である。炭化水素系カチオン交換電解質の一例は、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、およびスルホン化ポリフェニレンからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0023】
外周被覆層14Cが、分子構造中にルイス酸性官能基を含む高分子を含有すると、ルイス酸性の官能基を有する高分子(外周被覆層)に、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質が吸着するため、電極触媒層におけるクラックの発生が抑制されるなど、電極触媒層の機械特性の向上により耐久性の改善が得られる。また、機械特性の向上と共に、被覆繊維14上に水酸化物イオンの導電性を有する高分子電解質が吸着することで水酸化物イオンの伝導パスが形成され、高い電解性能が得られる。いいかえると、繊維コア14Aに水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質を直接吸着させるよりも、ルイス酸性官能基を含む高分子を含有する外周被覆層14Cを介することで水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質を被覆繊維14に強く吸着させることができる。
【0024】
一方、ルイス酸性官能基を含む高分子を含有する外周被覆層14Cを使用しない場合は、電極触媒層の機械特性が不十分で、クラックの発生を抑制することが困難で、耐久性を改善することができないと推定される。また、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質が分散されることから、水酸化物イオンの伝導パスの形成が阻害され、電解性能を改善することができないと推定される。
【0025】
外周被覆層14Cは、ルイス酸性官能基を含む高分子を主成分として含むことが好適である。主成分とは、50質量%以上を占めることを言う。外周被覆層14Cにおけるルイス酸性官能基を含む高分子の質量割合は、70質量%でも80質量%でも、90質量%でもよい。
【0026】
外周被覆層14Cの厚みに特に限定はないが、たとえば、20~100nm程度であってよい。
【0027】
(中間被覆層14B)
中間被覆層14Bは、分子構造中にルイス塩基性官能基を含む高分子を含有する。ルイス塩気性官能基とは、電子対を供与しうる官能基をいう。ルイス塩基性官能基の例は、イミド構造、及び/又は、アゾール構造である。イミド構造を有する高分子の例は芳香族ポリイミドなどのポリイミドである。アゾール構造の例は、ベンゾアゾール構造であり、ベンゾアゾール構造の例は、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾチアゾール構造である。これらの高分子としては、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリエンゾチアゾールが例示できる。
【0028】
ポリベンゾイミダゾールは、その分子構造に、外周被覆層14Cが含有するルイス酸性官能基を含む高分子(外周被覆層)との相互作用を示す塩基性の部位と、繊維コア14Aのカーボンとの相互作用を示すベンゼン環の部位とを有するため、炭素繊維を被覆するのに適した重合体の一つである。すなわち、炭素繊維である繊維コア14Aと外周被覆層14Cとの間に中間被覆層14Bを有することで、炭素繊維である繊維コア14Aと中間被覆層14Bとの密着性が向上する。また、ルイス塩基性官能基を有する高分子を含む中間被覆層14Bの上にルイス酸性官能基を含む高分子を含有する外周被覆層14Cが設けられるので中間被覆層14Bと外周被覆層14Cとの密着性も向上する。
その結果、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質を被覆繊維14に強く吸着させることができる。
【0029】
中間被覆層14Bは、ルイス塩基性官能基を含む高分子を主成分として含むことが好適である。主成分とは、50質量%以上を占めることを言う。中間被覆層14Bにおけるルイス塩基性官能基を含む高分子の質量割合は、70質量%でも80質量%でも、90質量%でもよい。
【0030】
中間被覆層14Bは、ポリベンゾイミダゾールを主成分とすることが好適である。主成分とは、50質量%以上を占めることを言う。ポリベンゾイミダゾールの質量割合は、70質量%でも80質量%でも、90質量%でもよい。
【0031】
ポリベンゾイミダゾールは、繰り返し単位中にベンゾイミダゾール構造を含んでいれば特に限定はない。
【0032】
中間被覆層14Bの厚みに特に限定はないが、たとえば、1~5nm程度であってよい。
【0033】
(作用機序)
本願発明者は、以上の構成からなる電極触媒層が高い機械特性を有し、また、高い電解性能を示すことを確認した。なお、詳細なメカニズムは、以下のように推測されるが、本発明は下記メカニズムに何ら拘束されるものではない。
【0034】
被覆繊維14において、外周被覆層14C中のルイス酸性の官能基を有する高分子に水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質が吸着するため、電極触媒層中のクラックの発生が抑制されるなど、電極触媒層の機械特性が向上して耐久性の改善が得られる。また、機械特性の向上と共に、被覆繊維14上に水酸化物イオンの伝導性を有する側高分子電解質が吸着することで水酸化物イオンの伝導パスが形成され、高い電解性能が得られる。
【0035】
一方、ルイス酸性の官能基を有する高分子を外周被覆層14Cに使用しない場合は、電極触媒層の機械特性が不十分で、クラックの発生を抑制することが困難で、耐久性を改善することができないと推定される。また、水酸化物イオンの伝導性を有する高分子電解質が分散されることから、水酸化物イオンの伝導パスの形成が阻害され、電解性能を改善することができないと推定される。
【0036】
被覆繊維14において、繊維コア14Aと外周被覆層14Cとの間に中間被覆層14Bを有することで、中間被覆層14B中のルイス塩基性官能基を含む高分子に、外周被覆層14Cが含有するルイス酸性官能基を含む高分子が吸着するため、外周被覆層14Cの密着性が向上して耐久性のさらなる改善が得られる。また、中間被覆層14Bにポリベンゾイミダゾールを主成分とする高分子を使用することで、繊維コア14Aのカーボン繊維と外周被覆層14Cの密着性が向上して耐久性のさらなる改善が得られる。
【0037】
また、被覆繊維14の繊維コア14Aが気相成長炭素繊維(VGCF)であると、炭素面が同心円筒状に積層した年輪構造を取りやすく、中間被覆層14Bとの親和性が高くなりやすいと推定される。
【0038】
被覆繊維14の平均繊維径は、特に制限されるものではないが、好ましくは50nm~1μmであり、より好ましくは0.1~0.4μmである。この場合、電極触媒層にクラックが生じることがより抑制されやすい。また、高分子電解質膜と電極触媒層との密着性を向上させることもできる。このため、高分子電解質膜と電極触媒層との剥離による空隙の発生を抑制でき、この空隙に起因する膜電極接合体の抵抗の増大をより抑制できる。被覆繊維の平均繊維径が50nmに満たない場合は、機械特性が改善されにくい場合があると推定される。また、被覆繊維の平均繊維径が1μmを超える場合は、インクとして分散できない場合があると推定される。
【0039】
平均繊維径とは、電極触媒層の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した際に、露出している被覆繊維の断面について測長される直径の平均値をいう。被覆繊維がその長軸に対して斜めに切断された場合には楕円形の断面が得られるが、その場合は、直径とは、楕円の短軸に沿ってフィッティングした真円の直径をいう。また、電極触媒層の断面を、SEMを用いて観察する場合、被覆繊維の断面ではなく被覆繊維の表面が露出することがある。その場合には、直径とは、露出した被覆繊維の長軸と直交する繊維の幅をいう。被覆繊維の平均繊維径は、少なくとも20カ所の観察点において同様に計測して得られる繊維径の算術平均値をいう。
【0040】
電極触媒層の断面を露出させる方法としては、例えば、イオンミリング、ウルトラミクロトーム等の公知の方法を用いることができる。
【0041】
被覆繊維の平均繊維長は、特に制限されるものではないが、好ましくは500nm以上であり、より好ましくは1μm以上である。この場合、被覆繊維が絡み合い、電極触媒層内で適切さ大きさの空孔を形成するとともに、電極触媒層の機械的特性を向上させることができる。但し、被覆繊維の平均繊維長は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは40μm以下である。
【0042】
被覆繊維の平均繊維長は、少なくとも10本の被覆繊維を測長して得られる繊維長の算術平均値をいうものとする。電極触媒層内の被覆繊維の平均繊維長は、電極触媒層を溶媒に溶かした溶液を用いて粒度分布測定を行うことで求めることができる。具体的には、電子顕微鏡で求めた平均繊維長と、粒度分布測定におけるピーク位置との間の相関関係を予め把握しておき、この相関関係と、粒度分布測定により求めたピーク位置に基づいて電極触媒層内の被覆繊維の平均繊維長が求められる。
【0043】
カソード側電極触媒層2の組成に特に限定はないが、触媒粒子の質量を1として、高分子電解質(固形分)の質量を0.1~0.4、被覆繊維の質量を0.025~0.25とすることができる。
【0044】
(アノード側電極触媒層3)
アノード側電極触媒層3は、図2に示すように、触媒粒子22と、高分子電解質23と、を含む。なお、アノード側電極触媒層3が、カソード側電極触媒層2と同様に被覆繊維14を含むことで、電極触媒層の機械特性が向上して耐久性の改善が得られる。また、機械特性の向上と共に、被覆繊維14上に水酸化物イオンの伝導性を有した高分子電解質が吸着することで水酸化物イオンの伝導パスが形成され、高い電解性能が得られる。
【0045】
(触媒粒子)
触媒粒子22は、粒子状である。触媒粒子の活性の向上を要求される場合、触媒粒子の平均粒径は、20nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。触媒粒子の活性の安定化を要求される場合、触媒粒子の平均粒径は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることがより好ましい。
【0046】
アノード側電極触媒層の触媒粒子は、酸化反応を行うための触媒である。触媒粒子の構成材料としては、白金族に含まれる金属、白金族以外の金属、またはこれらの合金、酸化物、複酸化物、炭化物を用いることができる。中でも、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、およびこれらの少なくとも1つを含む合金は触媒活性が高く好適である。なお、触媒粒子は上記例の1種のみであっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0047】
アノード側電極触媒層の触媒粒子は、担体25に担持されていてもよい。担体は導電性を有し、かつ酸化雰囲気下で浸食されない粒子である。担体の一例は、チタンまたはスズ、ジルコニウムを含む酸化物の粒子である。電子の伝導路の拡張を要求される場合、担体の粒径は、10nm以上であることが好ましい。電極触媒層の抵抗値の低下を要求される場合、また触媒粒子の担持量の増大を要求される場合、担体の粒径は、1000nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0048】
(アノード側高分子電解質)
高分子電解質23は、カソード側電極触媒層の高分子電解質と同様の水酸化物イオンの伝導性を有した高分子電解質23を使用することができる。
【0049】
(高分子電解質膜1)
高分子電解質膜1の一例は、水酸化物イオンの伝導性を有した高分子の電解質膜であり、いわゆる、アニオン交換樹脂膜である。高分子電解質膜は、水酸化物イオンを伝導するものであれば特に限定するものではない。例えば、フッ素系アニオン交換電解質膜や炭化水素系アニオン交換電解質膜がある。フッ素系の電解質膜としてはパーフルオロカーボン系電解質膜、炭化水素系の電解質膜としてはスチレン系電解質膜やアクリル系電解質膜などが挙げられる。
【0050】
電極触媒層と高分子電解質膜との密着性を高めることを要求される場合、電極触媒層の高分子電解質の構成材料がフッ素系高分子電解質であれば、高分子電解質膜の構成材料もまたフッ素系高分子電解質であることが好ましい。また、電極触媒層の高分子電解質の構成材料が炭化水素系高分子電解質であれば、高分子電解質膜の構成材料もまた炭化水素系高分子電解質であることが好ましい。さらに、高分子電解質膜の構成材料は、電極触媒層の高分子電解質の構成材料と同じであることが好ましい。
【0051】
〔膜電極接合体の製造方法〕
次に、上記構成の膜電極接合体の製造方法の一例を説明する。
【0052】
膜電極接合体は、下記の第一工程から第三工程を含む方法で製造される。
【0053】
第一工程は、ポリベンゾイミダゾールなどのルイス塩基性官能基を含む高分子(中間被覆層)を気相成長炭素繊維(VGCF)などの表面に形成する工程である。
【0054】
第二工程は、第一工程で得られた中間被覆層を被覆した導電性繊維コアの表面に、ルイス酸性官能基を含む高分子(外周被覆層)で被覆し、被覆繊維を形成する工程である。
【0055】
第三工程は、触媒粒子、高分子電解質、第二工程で得られた被覆繊維、及び溶媒を含むカソード側触媒インクを製造する工程と、触媒粒子、高分子電解質、及び溶媒を含むアノード側触媒インクを製造する工程である。
【0056】
第四工程は、第三工程で得られたアノード側触媒インクとカソード側触媒インクを高分子電解質膜上に塗布して溶媒を乾燥させることで、高分子電解質膜の両面にアノード側電極触媒層とカソード側電極触媒層を形成する工程である。
【0057】
〔詳細説明〕
(第1工程)
ポリベンズイミダゾールなどのルイス塩基性官能基を含む高分子を、溶媒に溶解または分散させ、高分子分散液/溶液を調製する。溶媒の例は、ジメチルアセトアミドである。この高分子分散液/溶液に、繊維コアを加え、必要に応じて超音波分散処理を行う。その後、ろ過により固形分を回収し、乾燥を行うことで、繊維コアの表面に中間被覆層を形成することが出来る。
【0058】
(第2工程)
カチオン交換電解質などのルイス塩基性官能基を含む高分子を、溶媒に溶解または分散させ、高分子分散液/溶液を調製する。溶媒の例は、アルコール類である。この高分子分散液/溶液に、第1工程で得られた中間被覆層を被覆した導電性繊維コアを加え、必要に応じて超音波分散処理を行う。その後、ろ過により固形分を回収し、乾燥を行うことで、中間被覆層の表面に外周被覆層を形成することが出来る。
【0059】
(第3工程)
触媒インクを構成する溶媒は、触媒粒子、高分子電解質、および被覆繊維を浸食せず、かつ高分子電解質を溶解、あるいは微細ゲルとして分散する。触媒インクを構成する溶媒の一例は、アルコール類、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、極性溶剤からなる群から選択される少なくとも一種である。アルコール類の一例は、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、イソブチルアルコール、tert‐ブチルアルコール、ペンタノールからなる群から選択される少なくとも一種である。ケトン系溶剤の一例、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトンからなる群から選択される少なくとも一種である。エーテル系溶剤の一例は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種である。極性溶剤の一例は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N‐メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1‐メトキシ‐2‐プロパノールからなる群から選択される少なくとも一種である。触媒インクを構成する溶媒は、高分子電解質と高い親和性を有する水を含有してもよい。
【0060】
触媒粒子の分散性の向上を要求される場合、触媒インクは分散剤を含有することが好ましい。分散剤の一例は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤である。触媒インクにおける分散性の向上を要求される場合、触媒インクの製造において分散処理を行うことが好ましい。分散処理の一例は、ボールミルおよびロールミルによる攪拌、せん断ミルによる攪拌、湿式ミルによる攪拌、超音波の印加による攪拌、ホモジナイザーによる攪拌である。
【0061】
電極触媒層の表面におけるクラックの発生抑制を要求される場合、触媒インクにおける固形分含有量は、50質量%以下であることが好ましい。電極触媒層の成膜レートの向上を要求される場合、触媒インクにおける固形分含有量は、1質量%以上であることが好ましい。
【0062】
(第4工程)
触媒インクを基材上に塗布する方法の一例は、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、あるいはロールコーティング法である。触媒インクを塗布される基材は、転写シートである。転写シートの構成材料の一例は、フッ素系樹脂、あるいはフッ素系樹脂以外の有機高分子化合物である。フッ素系樹脂の一例は、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。有機高分子化合物の一例は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレートである。
【0063】
なお、上記実施形態では、被覆繊維はカソード側の電極触媒層に設けたが、アノード側の電極触媒層に設けても実施は可能である。
【0064】
以下に、本実施形態における水電解装置用の電極触媒層及び膜電極接合体について具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態は下記の実施例及び比較例によって制限されるものではない。
【0065】
<効果その他>
本実施形態によれば、複雑な工程を用いることなく、電極触媒層の機械特性が高く、電解性能及び耐久性に優れた水電解装置用膜電極接合体を製造することが可能である。
【0066】
<実施例1>
〔被覆繊維の製造〕
下式のポリベンゾイミダゾールをジメチルアセトアミドに溶解させ、ポリベンズイミダゾール分散液を調整した。次に、このポリベンズイミダゾール分散液に、平均繊維径0.15μmのカーボン繊維(VGCF-H(登録商標)、昭和電工社製:気相成長炭素繊維)を加え、超音波分散処理を行った。その後、ろ過と乾燥を行うことで、ポリベンゾイミダゾール被覆カーボン繊維を得た。ポリベンゾイミダゾール被覆層の厚みは数nm程度と薄く、得られたポリベンゾイミダゾール被覆カーボン繊維の平均繊維径は、コア繊維と実質的に同一であった。
【化1】
【0067】
カチオン交換電解質としてフッ素系高分子電解質(Nafion(登録商標)分散液)を超純水と1-プロパノールとの混合溶媒に溶解させ、フッ素系高分子電解質分散液を調整した。超純水と1-プロパノールとの体積比は、1:1とした。分散液における固形分含有量が1質量%になるように調整した。次に、このフッ素系高分子電解質分散液に、ポリベンゾイミダゾール被覆カーボン繊維を加え、超音波分散処理を行った。その後、ろ過と乾燥を行うことで、導電性繊維コアとしてカーボン繊維、中間被覆層としてポリベンゾイミダゾール、外周被覆層としてフッ素系高分子電解質となる被覆繊維を得た。得られた被覆繊維の平均繊維径は約0.25μmであった。
【0068】
〔アノード側触媒インクの製造〕
以下に示す触媒粒子、および高分子電解質を溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで30分間の分散処理を行い、触媒インクを作製した。触媒インクの溶媒は、超純水と1-プロパノールとの混合溶媒を用いた。超純水と1-プロパノールとの体積比は、1:1とした。触媒インクにおける固形分含有量が10質量%になるように触媒インクを調整した。
・触媒粒子:イリジウム酸化物
・高分子電解質:炭化水素系アニオン交換電解質
・配合比率:触媒インクは、触媒粒子の質量を1として、高分子電解質(固形分)の質量を0.2とした。
【0069】
〔カソード側触媒インクの製造〕
以下に示す触媒粒子、高分子電解質、および被覆繊維を溶媒中で混合し、遊星型ボールミルで30分間の分散処理を行い、触媒インクを作製した。触媒インクの溶媒は、超純水と1-プロパノールとの混合溶媒を用いた。超純水と1-プロパノールとの体積比は、1:1とした。触媒インクにおける固形分含有量が10質量%になるように触媒インクを調整した。
・触媒粒子:Pt担持カーボン粒子
・イオノマー:炭化水素系アニオン交換電解質
・配合比率:触媒インクは、触媒粒子の質量を1として、高分子電解質(固形分)の質量を0.3として、被覆繊維の質量を0.05とした。
【0070】
〔膜電極接合体の作製〕
ダイコーターを用いて、高分子電解質膜(炭化水素系アニオン交換電解質膜)の片面に対して、調整したカソード側触媒インクを塗布することにより、縦50mm×横50mmの四角形状の塗膜を形成した。カソード側触媒インクの塗布量は、触媒量が0.5mg/cm2となる量とした。そして、60℃のオーブンを用いた乾燥処理を実施し、塗膜に含まれる分散媒を揮発させることにより、カソード側電極触媒層を形成した。
次に、高分子電解質膜におけるカソード側電極触媒層が形成された面の反対の面に対して、調整したアノード側触媒インクを塗布することにより、縦50mm×横50mmの四角形状の塗膜を形成した。アノード側触媒インクの塗布量は、触媒が0.5mg/cm2となる量とした。そして、60℃のオーブンを用いた乾燥処理を実施し、塗膜に含まれる分散媒を揮発させてアノード側電極触媒層を形成することにより膜電極接合体を得た。実施例1の両方の電極触媒層はクラックがなく、高分子電解質膜からの剥離はなかった。
【0071】
<実施例2>
被覆繊維における繊維コアとして平均繊維径0.8μmのカーボン繊維を用いた点以外は、実施例1と同様の手順で実施例2の膜電極接合体を得た。実施例2の両方の電極触媒層はクラックがなく、高分子電解質膜からの剥離はなかった。
【0072】
<比較例1>
被覆繊維の代わりに平均繊維径0.15μmのカーボン繊維(VGCF-H(登録商標)、昭和電工社製:気相成長炭素繊維)を被覆せずに使用した点以外は、実施例1と同様の手順で比較例1の膜電極接合体を得た。
【0073】
比較例1のカソード側電極触媒層の形成時はクラックがなく、高分子電解質膜からの剥離はなかったが、アノード側電極触媒層の形成時にカソード側電極触媒層にクラックが生じ、高分子電解質膜からの部分的な剥離が見られた。
【0074】
<比較例2>
被覆繊維を使用しなかった点以外は、実施例1と同様の手順で比較例2の膜電極接合体を得た。
比較例2のカソード側電極触媒層の形成時に顕著なクラックが生じ、また、高分子電解質膜からの顕著な剥離が見られた。そのため、アノード側触媒インクを塗布することができなかった。
【0075】
実施例1~2、および比較例1~2で得られた各膜電極接合体を水に浸漬させた結果、実施例1~2の両方の電極触媒層は高分子電解質膜から剥離しなかったが、比較例1のカソード側電極触媒層は高分子電解質膜から剥離した。また、各膜電極接合体を用いて水の電解性能を評価した結果、実施例1~2で得られた膜電極接合体では良好な電解性能を示したが、比較例1で得られた膜電極接合体では、電解を繰り返すことで電解性能が著しく低下した。実施例で作製した膜電極接合体と比較例で作製した膜電極接合体との電解性能の結果から、実施例で作製した膜電極接合体ではカソード側電極触媒層と電解質膜の間の密着強度が十分で、良好な電解性能が得られたことを確認した。
【0076】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1…高分子電解質膜、2…カソード側電極触媒層、3…アノード側電極触媒層、11…膜電極接合体。

図1
図2
図3