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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140562
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電気接続端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20241003BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051749
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 昇
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AC04
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB39
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB08
5E223DB13
(57)【要約】
【課題】両端に電気接続部を有する電気接続端子であって、電気接続を形成する際の操作に対して妨げとならないようにしながら、外力の影響を緩和することができる機構を備えた電気接続端子を提供する。
【解決手段】中心軸Cに沿って延在する軸部2と、前記軸部2の一端に設けられ、第一の相手方接続部材と電気的に接続される第一の接続部3と、前記軸部2の他端に設けられ、第二の相手方接続部材と電気的に接続される第二の接続部4とを一体に有し、前記軸部2は、前記中心軸Cに沿って中途部に、周面21,22が前記中心軸Cに向かって窪んだ構造61,62として、外力吸収部6を有する、電気接続端子1とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延在する軸部と、
前記軸部の一端に設けられ、第一の相手方接続部材と電気的に接続される第一の接続部と、
前記軸部の他端に設けられ、第二の相手方接続部材と電気的に接続される第二の接続部とを一体に有し、
前記軸部は、前記中心軸に沿って中途部に、周面が前記中心軸に向かって窪んだ構造として、外力吸収部を有する、電気接続端子。
【請求項2】
前記軸部は、幅方向の寸法が、前記幅方向に直交する厚さ方向の寸法以上となった板状部材として構成されており、
前記外力吸収部は、前記軸部において、
前記幅方向両側に位置する2つの周面の少なくとも一方が前記中心軸に向かって窪んだ幅方向凹部、および
前記厚さ方向両側に位置する2つ周面のうち少なくとも一方が中心軸に向かって窪んだ厚さ方向凹部、
の少なくとも一方を含んでいる、請求項1に記載の電気接続端子。
【請求項3】
前記外力吸収部は、少なくとも前記厚さ方向凹部を含んでいる、請求項2に記載の電気接続端子。
【請求項4】
前記外力吸収部は、前記幅方向凹部と前記厚さ方向凹部をともに含んでいる、請求項3に記載の電気接続端子。
【請求項5】
前記外力吸収部が前記幅方向凹部を有する場合に、該幅方向凹部は、前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に設けられており、
前記外力吸収部が前記厚さ方向凹部を有する場合に、該厚さ方向凹部は、前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に設けられている、請求項2に記載の電気接続端子。
【請求項6】
前記外力吸収部が前記幅方向凹部を有する場合に、該幅方向凹部は、前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に、前記中心軸を挟んで相互に対向する位置に設けられており、
前記外力吸収部が前記厚さ方向凹部を有する場合に、該厚さ方向凹部は、前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に、前記中心軸を挟んで相互に対向する位置に設けられている、請求項5に記載の電気接続端子。
【請求項7】
前記外力吸収部は、
前記幅方向凹部を前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に有するとともに、
前記厚さ方向凹部を前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に有しており、
2つの前記幅方向凹部および2つの前記厚さ方向凹部はいずれも、前記中心軸に沿って同じ位置に設けられている、請求項6に記載の電気接続端子。
【請求項8】
前記電気接続端子はプレスフィット端子として構成され、
前記第一の接続部は、前記幅方向に張り出した1対の弾性接触片を有し、前記第一の相手方接続部材としての回路基板のスルーホールに圧入接続される基板接続部であり、
前記第二の接続部は、前記第二の相手方接続部材としての相手方接続端子と嵌合接続される端子接続部である、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の電気接続端子。
【請求項9】
前記外力吸収部は、前記基板接続部よりも前記端子接続部に近い位置に設けられている、請求項8に記載の電気接続端子。
【請求項10】
前記電気接続端子はさらに、前記軸部の中途部に、前記軸部の前記中心軸に交差する方向に突出したショルダ部を有し、
前記外力吸収部は、前記ショルダ部よりも前記端子接続部側に設けられている、請求項8に記載の電気接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスフィット端子をはじめとして、細長い形状の両端にそれぞれ電気接続部が設けられる形態の電気接続端子において、両端をそれぞれ別の相手方接続部材に接続する必要性から、一方または両方の電気接続部に、外力による負荷が印加される場合がある。例えば、図3A,3Bにそれぞれ正面図および側面図を示すように、プレスフィット端子9は、一端に基板接続部3を有し、他端に端子接続部4を有する。基板接続部3は、プレスフィット構造として構成され、回路基板BのスルーホールHに圧入接続される。端子接続部4は、オス型嵌合構造として構成され、メス型嵌合端子として構成された相手方接続端子Tと嵌合接続される。図3A,3Bに示すとおり、正規の接続状態においては、プレスフィット端子9の中心軸CをスルーホールHの軸に揃えて、スルーホールHに対してまっすぐに基板接続部3が挿入される。そして、プレスフィット端子9の中心軸Cに対してまっすぐに軸を揃えて、相手方接続端子Tが、端子接続部4と嵌合する。
【0003】
しかし、図3C,3Dに示すように、プレスフィット端子9が、中心軸CをスルーホールHの軸に対して傾けた状態で、基板接続部3がスルーホールHに挿入される場合がある。その状態で相手方接続端子Tが、正規の接続状態における方向、つまりスルーホールHの中心軸に平行な方向に沿って、端子接続部4と嵌合すると、プレスフィット端子9に外力F1,F2が発生する。図3Cでは、プレスフィット端子9の幅方向(y方向)に中心軸Cが傾斜しており、外力F1もプレスフィット端子9を幅方向に回転させる方向に働く。図3Dでは、プレスフィット端子9の厚さ方向(z方向)に中心軸が傾斜しており、外力F2もプレスフィット端子9を厚さ方向に回転させる方向に働く。
【0004】
プレスフィット端子9に、上記のように、外力F1,F2が働くと、スルーホールHに圧入された基板接続部3に、こじりが発生する。つまり、スルーホールHに対して傾斜して挿入された基板接続部3と、スルーホールHの内壁面との間に、力が不均等に印加される。こじりが発生すると、スルーホールHの損傷、基板接続部3とスルーホールHの内壁面との間の接触面積が小さくなることによる接触抵抗の上昇、めっきの凝着剥離によるスルーホールHに対する基板接続部3の保持力(スルーホールHの中に基板接続部3を留める力)の低下等の影響が生じうる。
【0005】
このように、両端に電気接続部を有する電気接続端子において、中心軸に交差する方向の外力が印加されると、少なくとも一方の電気接続部における接続箇所に、好ましくない影響が生じる可能性があり、それら外力の印加による影響を軽減することが望まれる。例えば特許文献1に、プレスフィット端子において、スルーホールに挿入される弾性部(基板接続部)に繋がる脚部(軸部)の少なくとも一部に、少なくとも一つの屈曲形状を備えた屈曲部を形成することが記載されている。ここでは、屈曲部を設けることで、軸方向反力が小さくなり、スルーホールとの芯ズレを追従することができるとされている。屈曲部は、プレスフィット端子の幅方向に屈曲した形状として形成されている。この屈曲部は、プレスフィット端子に対して幅方向に印加される外力を緩和するのにも、効果を示す可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-4239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されているような屈曲部を、プレスフィット端子等、両端に電気接続部を有する電気接続端子に設ければ、両端の電気接続部を相手方接続部材と接続した際に、電気接続端子に傾斜が生じても、その傾斜に伴って発生する外力を吸収できる可能性がある。すると、外力によって両端の電気接続箇所に生じる影響を低減できる。しかし、屈曲部は、電気接続端子の軸が、中途部で幅方向両側に交互に突出した構造をとり、幅方向に大きな領域を占めるものとなる。すると、電気接続端子において、電気接続を形成する際に、屈曲部が、電気接続の形成のための操作の妨げとなる可能性がある。具体的には、手指や治具を用いて、電気接続端子の端部の電気接続部を相手方接続部材と接続する際に、幅方向に突出した屈曲部に対して、それら手指や治具が、接触や干渉を起こしてしまう可能性がある。
【0008】
例えば、プレスフィット端子においては、図3A,3Bに示すように、基板接続部3と端子接続部4を連結する軸部2のうち、基板接続部3に近い位置に、ショルダ部5が設けられる場合があり、治具でそのショルダ部5を押すことで、基板接続部3を回路基板BのスルーホールHに挿入する。ここで、特許文献1に示されるように、ショルダ部5よりも端子接続部4側の位置に、屈曲部を設けるとすれば、治具をショルダ部5に接触させる際に、屈曲部との接触や干渉を避けながら治具をショルダ部5に近づける必要があり、所定の位置への治具の配置を簡便に行えない可能性がある。
【0009】
そこで、両端に電気接続部を有する電気接続端子であって、電気接続を形成する際の操作に対して妨げとならないようにしながら、外力の影響を緩和することができる機構を備えた電気接続端子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の電気接続端子は、中心軸に沿って延在する軸部と、前記軸部の一端に設けられ、第一の相手方接続部材と電気的に接続される第一の接続部と、前記軸部の他端に設けられ、第二の相手方接続部材と電気的に接続される第二の接続部とを一体に有し、前記軸部は、前記中心軸に沿って中途部に、周面が前記中心軸に向かって窪んだ構造として、外力吸収部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかる電気接続端子は、両端に電気接続部を有する電気接続端子であって、電気接続を形成する際の操作に対して妨げとならないようにしながら、外力の影響を緩和することができる機構を備えた電気接続端子となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aおよび図1Bは、本開示の一実施形態にかかる電気接続端子の一例としてのプレスフィット端子を示す図である。図1Aは正面図、図1Bは側面図である。
図2図2A図2Dは、上記プレスフィット端子について、基板接続部をスルーホールに挿入して、端子接続部を相手方接続端子と嵌合させる状態を示す模式図である。図2A図2Bはプレスフィット端子が幅方向に傾いた状態を示す正面図であり、図2Aは嵌合前の状態、図2Bは嵌合後の状態を示している。図2C図2Dはプレスフィット端子が厚さ方向に傾いた状態を示す側面図であり、図2Cは嵌合前の状態、図2Dは嵌合後の状態を示している。
図3図3A図3Dは、従来一般のプレスフィット端子について、基板接続部をスルーホールに挿入して、端子接続部を相手方接続端子と嵌合させる状態を示す模式図である。図3Aおよび図3Bは、正規の接続状態を示す、それぞれ正面図および側面図である。図3Cはプレスフィット端子が幅方向に傾いた状態を示す正面図であり、図3Dはプレスフィット端子が厚さ方向に傾いた状態を示す側面図である。
図4図4A図4Dは、外力吸収部の有無と、外力の影響との関係を解析するための解析モデルを示す図である。図4A図4Bはそれぞれ、外力吸収部がない場合、および外力吸収部がある場合について、正規の挿入状態を示している。図4C図4Dは、外力吸収部がない場合について、モデル端子をそれぞれ幅方向に変位させた状態、および厚さ方向に変位させた場合を示している。
図5図5A図5Dは、解析の結果を示す図であり、図5A図5Bはそれぞれ、幅方向の変位に伴う先端の変位量および接触面積の変化を示している。図5C図5Dはそれぞれ、厚さ方向の変位に伴う先端の変位量および接触面積の変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を説明する。
【0014】
[1]本開示の電気接続端子は、中心軸に沿って延在する軸部と、前記軸部の一端に設けられ、第一の相手方接続部材と電気的に接続される第一の接続部と、前記軸部の他端に設けられ、第二の相手方接続部材と電気的に接続される第二の接続部とを一体に有し、前記軸部は、前記中心軸に沿って中途部に、周面が前記中心軸に向かって窪んだ構造として、外力吸収部を有する。
【0015】
上記電気接続端子においては、軸部の中途部に、周面が中心軸に向かって窪んだ構造として、外力吸収部が設けられている。この外力吸収部の箇所においては、周面に窪みが設けられていることで、中心軸に直交する断面の断面積が、他の箇所に比べて小さくなる。そのため、電気接続端子に対して、中心軸に交差する方向の力が印加された際に、外力吸収部の箇所が変形を起こし、その変形によって、外力の少なくとも一部を吸収することができる。よって、電気接続端子の両端に設けられた第一の接続部と第二の接続部のうち一方が、電気接続端子の軸をまっすぐにした正規の接続状態からずれた角度で、相手方接続部材と接続されることで、一方あるいは両方の接続部の接続箇所に外力が印加されても、外力吸収部の箇所で軸部が変形を起こすことで、その外力が緩和され、プレスフィット端子とスルーホールとの接続箇所におけるこじりに代表されるように、相手方接続部材との接続箇所において外力の影響が生じるのを、抑制することができる。ここで、外力吸収部は、軸部の周面が窪んだ構造として構成されており、軸部の外側に突出するものではないので、第一の接続部および第二の接続部をそれぞれ相手方接続部材に対して接続する際に、外力吸収部が、手指や治具との間に接触や干渉を起こすことで、接続操作を妨げるものとはなりにくい。
【0016】
[2]上記[1]の態様において、前記軸部は、幅方向の寸法が、前記幅方向に直交する厚さ方向の寸法以上となった板状部材として構成されており、前記外力吸収部は、前記軸部において、前記幅方向両側に位置する2つの周面の少なくとも一方が前記中心軸に向かって窪んだ幅方向凹部、および前記厚さ方向両側に位置する2つ周面のうち少なくとも一方が中心軸に向かって窪んだ厚さ方向凹部、の少なくとも一方を含んでいるとよい。この場合に、幅方向凹部は、電気接続端子に対して幅方向に作用する外力が印加された際に、その外力を緩和するのに効果を有する。一方、厚さ方向凹部は、電気接続端子に対して厚さ方向に作用する外力が印加された際に、その外力を緩和するのに効果を有する。
【0017】
[3]上記[2]の態様において、前記外力吸収部は、少なくとも前記厚さ方向凹部を含んでいるとよい。電気接続端子において、幅方向に作用する外力の影響を緩和することができる外力吸収構造としては、例えば特許文献1に示されているよりも屈曲部の突出幅を小さくした屈曲構造等、電気接続を形成する際の操作への影響を小さく抑えながら外力の緩和を達成できる構造を、比較的設けやすい。一方で、厚さ方向に作用する外力の影響を緩和することができる外力吸収構造としては、とりうる選択肢が限られており、厚さ方向凹部を有する外力吸収部を設けることの意義が大きい。
【0018】
[4]上記[3]の態様において、前記外力吸収部は、前記幅方向凹部と前記厚さ方向凹部をともに含んでいるとよい。この場合には、幅方向凹部による幅方向に印加される外力に対する緩和効果と、厚さ方向凹部による厚さ方向に印加される外力に対する緩和効果を、両方とも利用することができる。そのため、幅方向と厚さ方向のいずれの方向に外力が印加された場合でも、さらに幅方向の成分と厚さ方向の成分の両方を有する複雑な外力が印加された場合も、それらの外力による影響を、外力吸収部によって効果的に緩和することができる。
【0019】
[5]上記[2]から[4]のいずれか1つの態様において、前記外力吸収部が前記幅方向凹部を有する場合に、該幅方向凹部は、前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に設けられており、前記外力吸収部が前記厚さ方向凹部を有する場合に、該厚さ方向凹部は、前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に設けられているとよい。幅方向凹部を幅方向両側の周面に設けることで、幅方向凹部が少なくとも2つ設けられることになるため、電気接続端子に対して幅方向に印加される外力を緩和する効果を大きく得ることができる。また、幅方向に沿った2方向のいずれの方向に印加される外力も、効果的に緩和することができる。同様に、厚さ方向凹部を厚さ方向両側の周面に設けることで、厚さ方向凹部が少なくとも2つ設けられることになるため、電気接続端子に対して厚さ方向に印加される外力を緩和する効果を大きく得ることができる。また、厚さ方向に沿った2方向のいずれの方向に印加される外力も、効果的に緩和することができる。
【0020】
[6]上記[5]の態様において、前記外力吸収部が前記幅方向凹部を有する場合に、該幅方向凹部は、前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に、前記中心軸を挟んで相互に対向する位置に設けられており、前記外力吸収部が前記厚さ方向凹部を有する場合に、該厚さ方向凹部は、前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に、前記中心軸を挟んで相互に対向する位置に設けられているとよい。この場合には、2つの幅方向凹部、また2つの厚さ方向凹部が、中心軸に沿って相互に同じ位置に設けられ、同じ位置で軸部の断面積を狭めるものとなる。よって、軸部の断面積が小さくなった箇所を設けることで外力を緩和する効果が、大きく得られる。また、外力吸収部を有する軸部の構造が単純になり、電気接続端子の製造性が高くなる。
【0021】
[7]上記[6]の態様において、前記外力吸収部は、前記幅方向凹部を前記幅方向両側に位置する2つの周面の両方に有するとともに、前記厚さ方向凹部を前記厚さ方向両側に位置する2つの周面の両方に有しており、2つの前記幅方向凹部および2つの前記厚さ方向凹部はいずれも、前記中心軸に沿って同じ位置に設けられているとよい。この場合には、幅方向凹部が2つ、厚さ方向凹部が2つ設けられることで、電気接続端子において、幅方向に沿った2方向、および厚さ方向に沿った2方向の各方向に印加される外力、さらに幅方向と厚さ方向の成分を有する複雑な外力が印加されることがあっても、それらの外力の影響を、外力吸収部によって効果的に緩和することができる。また、外力吸収部を有する軸部の構造が単純になり、電気接続端子の製造性が高くなる。
【0022】
[8]上記[2]から[7]のいずれか1つの態様において、前記電気接続端子はプレスフィット端子として構成され、前記第一の接続部は、前記幅方向に張り出した1対の弾性接触片を有し、前記第一の相手方接続部材としての回路基板のスルーホールに圧入接続される基板接続部であり、前記第二の接続部は、前記第二の相手方接続部材としての相手方接続端子と嵌合接続される端子接続部であるとよい。プレスフィット端子においては、弾性接触片を有する基板接続部を回路基板のスルーホールに圧入すると、弾性接触片によってスルーホールの内壁面を押圧する力が印加されるため、プレスフィット端子をスルーホールの軸に対して傾斜させて、基板接続部をスルーホールに挿入した状態で、反対側の端子接続部を相手方接続端子と嵌合させようとすると、外力の影響により、端子接続部とスルーホールの間の接続箇所に、こじりが発生しやすい。こじりが発生すると、スルーホールの損傷、保持力の低下、スルーホールの内壁面の損傷等の影響が生じる可能性がある。しかし、プレスフィット端子が本開示の実施形態にかかる電気接続端子として構成され、軸部に外力吸収部が設けられていることで、プレスフィット端子を傾斜させて、スルーホールに基板接続部を挿入した状態で、端子接続部における嵌合接続を形成したとしても、プレスフィット端子の傾斜によって嵌合接続時に生じる外力の少なくとも一部が、外力吸収部によって吸収される。そのため、基板接続部とスルーホールの間の接続箇所において、外力に起因するこじり、またそれに伴う各種影響を小さく抑えることができる。また、外力吸収部が、軸部の周面が窪んだ構造として形成されていることで、基板接続部をスルーホールに挿入する際に、外力吸収部が操作の妨げとはなりにくい。
【0023】
[9]上記[8]の態様において、前記外力吸収部は、前記基板接続部よりも前記端子接続部に近い位置に設けられているとよい。基板接続部をスルーホールに挿入する操作を行う際には、圧入を要するため、プレスフィット端子に大きな力が印加されやすい。しかし、外力吸収部が基板接続部から離れた位置に設けられることで、スルーホールへの基板接続部の挿入の操作に伴って印加される力によって、断面積が小さくなった外力吸収部の箇所で軸部が変形する事態が、生じにくい。
【0024】
[10]上記[8]または[9]の態様において、前記電気接続端子はさらに、前記軸部の中途部に、前記軸部の前記中心軸に交差する方向に突出したショルダ部を有し、前記外力吸収部は、前記ショルダ部よりも前記端子接続部側に設けられているとよい。ショルダ部は、治具を押し当てて基板接続部を回路基板のスルーホールに挿入するのに利用されるが、そのショルダ部よりも基板接続部から離れた位置に外力吸収部を設けておくことで、基板接続部の挿入の際に印加される力が、外力吸収部に及びにくく、挿入に伴って軸部が外力吸収部の箇所で変形する事態を避けやすくなる。また、ショルダ部に対して治具が配置される方向に外力吸収部が設けられることになるが、外力吸収部は、軸部の外に突出した構造を有するものではないので、ショルダ部への治具の接近を妨げるものとはなりにくい。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態にかかる電気接続端子ついて、図面を用いて詳細に説明する。本明細書において、「同じ」、「直線状」等、形状や配置に関する語には、幾何的に厳密な概念のみならず、電気接続端子において通常許容される範囲の誤差を有する形態も含むものとする。誤差の範囲は、例えば、長さおよび角度にして±10%程度である。
【0026】
本開示の実施形態にかかる電気接続端子は、軸部の両端にそれぞれ電気接続部を有する端子である。そのかぎりにおいて、電気接続端子の種類を特に限定されるものではない。以下では、両端に電気接続部を有する電気接続端子の一例として、プレスフィット端子を中心に説明を行う。
【0027】
<プレスフィット端子の構造>
図1A,1Bに、本開示の実施形態にかかる電気接続端子の一例として、プレスフィット端子1の構造を示す。図1Aは平面図であり、図1Bは側面図である。プレスフィット端子1は、金属の板材を打ち抜いて形成されており、全体として細長い形状を有している。プレスフィット端子1を構成する金属の種類は特に限定されるものではないが、導電性等の観点から、銅または銅合金の板材、あるいはその表面にスズ層等の金属層を形成した板材を好適に用いることができる。
【0028】
プレスフィット端子1は、中心軸Cに沿って延在する軸部2と、軸部2の一端に設けられた第一の接続部としての基板接続部3と、軸部2の他端に設けられた第二の接続部としての端子接続部4とを、一体に有している。プレスフィット端子1において、軸部2の中心軸Cに沿った方向を軸方向(x方向)とする。また、板材の厚みに沿った方向を厚さ方向(z方向)とし、軸方向および厚さ方向に直交する方向を幅方向(y方向)とする。図1Aの正面図はx-y平面、図1Bの側面図はx-z平面においてプレスフィット端子1の構造を示すものである。
【0029】
軸部2は、中心軸Cに沿って直線状に延びた部位であり、基板接続部3と端子接続部4を連結している。軸部2においては、少なくとも、後に説明する外力吸収部6以外の箇所で、幅方向の寸法が、厚さ方向の寸法以上となっている。軸部2の幅方向の寸法は、軸方向の全域で一様であっても、軸方向に沿って変化していてもよい。図示した形態では、後に説明するショルダ部5を境界として軸部2の幅方向の寸法が異なっており、ショルダ部5よりも端子接続部4側の領域において、ショルダ部5よりも基板接続部3側の領域と比べて、幅方向の寸法が大きくなっている。
【0030】
基板接続部3は、プレスフィット構造として構成されており、軸方向に沿って、第一の相手方接続部材としての回路基板BのスルーホールHに圧入接続され、スルーホールHの内壁面との間に電気接続を形成することができる。図示した形態においては、基板接続部3は、ニードルアイ型のプレスフィット構造として設けられており、それぞれ幅方向外側に張り出した1対の弾性接触片31を有している。1対の弾性接触片31は、中心軸Cに対して相互に対称となっており、1対の弾性接触片31の間に、孔状の開口部が設けられている。
【0031】
端子接続部4は、嵌合型の端子構造として構成されており、軸方向に沿って、第二の相手方接続部材としての相手方接続端子Tと嵌合接続され、相手方接続端子Tとの間に電気接続を形成することができる。端子接続部4は、オス型の嵌合端子の構造を有しており、板状のタブとして構成されている。メス型の嵌合端子として構成された相手方接続端子Tの開口に端子接続部4を挿入することで、端子接続部4が、厚さ方向両側の面において、相手方接続端子Tの弾性接触片T1と内壁面の間に挟まれて保持されることで、端子接続部4と相手方接続端子Tの間に電気接続が形成される。なお、図示した形態においては、端子接続部4と軸部2の間には、明確な境界は設けられていないが、おおむね、相手方接続端子Tと嵌合する領域が端子接続部4となる。
【0032】
さらに、プレスフィット端子1においては、任意ではあるが、基板接続部3の近傍、つまり、軸方向に沿って、プレスフィット端子1の中央よりも基板接続部3側の位置に、ショルダ部5が設けられていることが好ましい。ショルダ部5は、軸方向に交差する方向、具体的には幅方向両側に向かって、軸部2から張り出した部位として構成されている。基板接続部3を回路基板BのスルーホールHに挿入する際に、ショルダ部5に、端子接続部4が設けられた方向から治具を押し当てることで、プレスフィット端子1をスルーホールHの奥へ向かって移動させ、スルーホールHへの基板接続部3の挿入を簡便に行うことができる。
【0033】
軸部2の中途部には、外力吸収部6が設けられている。外力吸収部6は、軸部2の周面(側面)が中心軸Cに向かって窪んだ構造として形成されている。図示した形態においては、外力吸収部6は、軸部2において、ショルダ部5よりも端子接続部4側に設けられ、幅方向凹部61と、厚さ方向凹部62とから構成されている。幅方向凹部61は、軸部2の幅方向両側に位置する周面(x-z平面に平行な面)である幅方向周面21の少なくとも一方が、中心軸Cに向かって窪んだ構造として構成される。ここでは、対向する2つの幅方向周面21の両方に、中心軸Cを挟んで相互に対向して、幅方向凹部61が設けられている。厚さ方向凹部62は、軸部2の厚さ方向両側に位置する周面(x-y平面に平行な面)である厚さ方向周面22の少なくとも一方が、中心軸Cに向かって窪んだ構造として構成される。ここでは、対向する2つの厚さ方向周面22の両方に、中心軸Cを挟んで相互に対向して、厚さ方向凹部62が設けられている。図示した形態では、2つの幅方向凹部61と2つの厚さ方向凹部62が、軸方向に沿って同じ位置(同じx座標の位置)に設けられており、軸部2が、外力吸収部6の箇所で、4方向からくびれた形状となっている。
【0034】
本実施形態にかかるプレスフィット端子1においては、軸方向に直交する軸部2の断面の断面積が、外力吸収部6が形成された位置で、他の箇所よりも小さくなっている。そのため、プレスフィット端子1に対して、軸方向に交差する方向の外力が印加された際に、外力吸収部6の箇所に応力が集中することで、外力吸収部6が、印加された外力の少なくとも一部を吸収し、外力を緩和する。外力吸収部6によって外力が緩和されることで、プレスフィット端子1のうち、外力吸収部6以外の箇所に外力の影響が及びにくくなる。
【0035】
プレスフィット端子1に外力が印加される例として、基板接続部3が設けられた一端側と、端子接続部4が設けられた他端側で、異なる方向に力が作用し、プレスフィット端子1を回転させる方向に外力が印加される場合が挙げられる。その際、外力吸収部6が変形を起こすことで、その外力の少なくとも一部を吸収し、基板接続部3の箇所および端子接続部4の箇所に印加される力を緩和することができる。そのように、外力吸収部6によって、外力の影響の緩和が効果的に行われる状況の具体例として、回路基板BのスルーホールHに対して基板接続部3が傾斜して挿入された状態で、端子接続部4における嵌合接続を行う場合を挙げることができる。
【0036】
基板接続部3が回路基板BのスルーホールHに挿入される際に、プレスフィット端子1の中心軸CがスルーホールHの軸に対して傾いた状態で、基板接続部3がスルーホールHに挿入されてしまう場合がある。プレスフィット端子1の傾斜としては、図2Aに示すように、幅方向の傾斜がありうる。また、図2Cに示すように、厚さ方向の傾斜がありうる。
【0037】
図2Aに示すように、プレスフィット端子1の中心軸Cを幅方向に傾斜させて、基板接続部3がスルーホールHに挿入された状態で、正規の接続方向、つまり、図中に破線で表示するように、スルーホールHに対して正面の方向から、相手方接続端子Tを端子接続部4と嵌合させようとすると、プレスフィット端子1に、中心軸Cを幅方向に回転させる方向の外力F1が作用する。しかし、その外力F1の印加によって、図2Bのように、外力吸収部6の箇所でプレスフィット端子1が幅方向に曲がる変形を起こすことで、端子接続部4側におけるプレスフィット端子1の傾斜が矯正され、相手方接続端子Tに対して、端子接続部4が軸をまっすぐにした状態で嵌合する。そして、このプレスフィット端子1の曲がりにより、外力F1が緩和される。
【0038】
同様に、図2Cに示すように、プレスフィット端子1の中心軸Cを厚さ方向に傾斜させて、基板接続部3がスルーホールHに挿入された状態で、正規の接続方向、つまり、図中に破線で表示するように、スルーホールHに対して正面から、相手方接続端子Tを端子接続部4と嵌合させようとすると、プレスフィット端子1に、中心軸Cを厚さ方向に回転させる方向の外力F2が作用する。しかし、その外力F2の印加によって、図2Dのように、外力吸収部6の箇所でプレスフィット端子1が厚さ方向に曲がる変形を起こすことで、端子接続部4側におけるプレスフィット端子1の傾斜が矯正され、相手方接続端子Tに対して、端子接続部4が軸をまっすぐにした状態で嵌合する。そして、このプレスフィット端子1の曲がりにより、外力F2が緩和される。
【0039】
このように、スルーホールHの軸に対して、幅方向および/または厚さ方向に対してプレスフィット端子1の中心軸が傾斜した状態で、基板接続部3をスルーホールHに圧入し、さらに端子接続部4を相手方接続端子Tと嵌合接続させる際に生じる外力F1,F2が、外力吸収部6によって緩和される。外力吸収部6の箇所で軸部2が曲がるのに伴って、図示したとおり、相手方接続端子Tの軸に対する端子接続部4の傾斜が矯正され、端子接続部4と相手方接続端子Tが相互にまっすぐな姿勢で嵌合接続される。一方で、スルーホールHの軸に対する基板接続部3の傾斜角は、外力吸収部6の箇所での軸部2の変形に伴って、若干小さくなる場合もあるが、基板接続部3が弾性的にスルーホールHの内壁面に押し付けられており、スルーホールHと基板接続部3の間に大きな保持力が生じているため、多くの場合、基板接続部3の傾斜は完全には矯正されず、スルーホールHに対して基板接続部3が傾斜して挿入された状態が維持される。しかし、傾斜した基板接続部3とスルーホールHの間の接触箇所に、外力によって不均等に印加される力は、外力吸収部6の箇所での軸部2の変形によって小さくなるため、外力によるその接続箇所への影響は緩和される。
【0040】
図3C,3Dに示す形態のように、プレスフィット端子1に外力吸収部6が設けられておらず、外力吸収部6による外力F1,F2の吸収を利用できないとすれば、傾斜した基板接続部3とスルーホールHの間の接続箇所にその外力が不均等に印加され、つまり基板接続部3の接続箇所にこじりが生じ、基板接続部3および/またはスルーホールHの状態に対して影響を及ぼすことになる。外力によるこじりの影響としては、スルーホールHの損傷、基板接続部3とスルーホールHの内壁面の間の接触面積の低下、およびそれによる接触抵抗の上昇、スルーホールHの内壁面と基板接続部3の表面の間でのめっきの凝着剥離による保持力の低下を例示することができる。しかし、本実施形態にかかるプレスフィット端子1においては、外力吸収部6が設けられており、上記のとおり、外力吸収部6によって、基板接続部3とスルーホールHの間の接続箇所に印加される力が緩和されるため、それら外力の印加に伴うこじりの影響を小さく抑えることができる。
【0041】
以上のように、プレスフィット端子1において、外力吸収部6によって断面積が小さくなった箇所が軸部2に設けられることで、プレスフィット端子1に印加される外力を緩和することができる。特に、幅方向凹部61が、プレスフィット端子1に幅方向に印加される外力F1を緩和するのに高い効果を示し、厚さ方向凹部62が、プレスフィット端子1に厚さ方向に印加される外力F2を緩和するのに高い効果を示す。本実施形態にかかるプレスフィット端子1においては、対向する2つの幅方向周面21の両方に幅方向凹部61が設けられていることで、幅方向に沿って両側に働く外力をともに、効果的に緩和することができる。また、対向する2つの厚さ方向周面22の両方に厚さ方向凹部62が設けられていることで、厚さ方向に沿って両側に働く外力をともに、効果的に緩和することができる。そして、外力吸収部6が、それら幅方向凹部61と厚さ方向凹部62の両方を含んでいることで、幅方向に印加される外力も、厚さ方向に印加される外力も、ともに効果的に緩和することができる。さらに、幅方向の成分と厚さ方向の成分を両方有する複雑な外力がプレスフィット端子1に印加された場合にも、その外力の緩和に高い効果が得られる。
【0042】
本実施形態のプレスフィット端子1においては、外力吸収部6が、軸部2の周面21,22が窪んだ凹構造として設けられている。そのため、特許文献1の屈曲部のように、突出構造を有して外力吸収構造を設ける場合とは異なり、両端の電気接続部3,4において電気接続を形成するための操作等、プレスフィット端子1に対する操作において、外力吸収部6が物理的な妨げとなりにくい。特に、ショルダ部5に治具を押し当てて基板接続部3をスルーホールHに挿入する際に、外力吸収部6が治具との間に接触や干渉を生じることは、起こりにくい。
【0043】
外力吸収部6において、幅方向凹部61および厚さ方向凹部62の具体的な形状は特に限定されるものではないが、図示した形態においては、幅方向凹部61は、外力吸収部6の全域において、幅方向周面21が幅方向内側に入り込んだ(退避した)構造として形成されている。2つの幅方向凹部61は、中心軸Cを挟んで相互に対称な形状を有している。厚さ方向凹部62は、外力吸収部6の全域において、厚さ方向周面22が厚さ方向内側に入り込んだ構造として形成されている。2つの厚さ方向凹部62は、中心軸Cを挟んで相互に対称な形状を有している。図示した形態では、幅方向凹部61は、内に凸に滑らかに湾曲した曲面状の構造(湾曲構造)を有している。一方、厚さ方向凹部62は、平面的に内側に落ち込む端面を軸方向両側に有するとともに、それら端面の間を軸方向に沿って平面的につなぐ底面を有しており、両端面と底面に間に、角部が形成されている(角状構造)。しかし、幅方向凹部61、厚さ方向凹部62とも、これらの形状に限られるものではなく、2つの幅方向凹部61および2つの厚さ方向凹部62がそれぞれ、上記湾曲構造または角状構造、あるいはさらに他の形状の凹構造を、任意にとることができる。各周面21,22における各凹部61,62の大きさも、特に限定されるものではない
【0044】
軸部2において、外力吸収部6を設ける具体的な位置も特に限定されるものではないが、本実施形態においては、ショルダ部5よりも端子接続部4側に外力吸収部6が設けられていることで、スルーホールHに基板接続部3を挿入する操作を行う際にプレスフィット端子1に印加される力が、外力吸収部6に及びにくい。そのため、基板接続部3の挿入操作に伴って、軸部2が外力吸収部6の箇所で変形する事態が起こりにくい。プレスフィット端子1にショルダ部5が設けられない場合にも、外力吸収部6を、基板接続部3よりも端子接続部4に近い位置、つまり軸方向に沿ってプレスフィット端子1の中央よりも端子接続部4側に設けるとよい。
【0045】
<その他の形態>
以上においては、電気接続端子がプレスフィット端子1として構成される形態を例として説明を行ったが、本開示の実施形態にかかる電気接続端子は、プレスフィット端子に限られない。中心軸Cに沿って延在する軸部2の一端に、第一の相手方接続部材と電気的に接続される第一の接続部を、他端に第二の相手方接続部材と電気的に接続される第二の接続部を、一体に有するものであれば、電気接続端子の種類は問わず、軸部2の中途部に外力吸収部6を有していればよい。プレスフィット端子以外の電気接続端子としては、軸部2の両端にそれぞれ、嵌合型の端子接続部、またはねじ締結により他の電気接続部材との間に電気接続を形成する締結部等の電気接続部を有する、バスバー端子を挙げることができる。
【0046】
また、上記で説明した形態においては、外力吸収部6が、2つの幅方向凹部61と2つの厚さ方向凹部62を、軸方向に沿って同じ位置に有していたが、外力吸収部6は、そのような形態に限られない。軸部2の周面21,22が中心軸Cに向かって窪んだ構造として、外力吸収部6を設ければよい。上記のプレスフィット端子1のように、軸部2が、2つの幅方向周面21と2つの厚さ方向周面22を有し、断面四角形となっている場合には、それら4つの周面21,22の少なくとも1つが窪んだ構造として、外力吸収部6を設けることができる。軸部2が、丸棒状等、幅方向周面21や厚さ方向周面22を明確に有さない場合でも、周面のどこか少なくとも1箇所に窪みを設け、外力吸収部6とすればよい。
【0047】
軸部2が幅方向周面21と厚さ方向周面22を有する場合に、幅方向凹部61と厚さ方向凹部62は、いずれか少なくとも一方を設ければよい。上記のように、幅方向凹部61は幅方向に加えられる外力の緩和に、厚さ方向凹部62は厚さ方向に加えられる外力の緩和に、高い効果を示す。中でも、厚さ方向への外力を緩和する外力吸収構造として、厚さ方向凹部62を形成することの意義が大きい。軸部2において、幅方向の寸法は比較的大きいため、幅方向の外力の影響を緩和することができる外力吸収構造としては、例えば特許文献1よりも屈曲部の突出幅を小さくした屈曲構造等、電気接続を形成する際の操作への妨害を小さく抑えながら、外力の緩和を達成できる構造を、幅方向凹部61以外の形態でも形成できる可能性があるのに対し、厚さ方向の寸法の小ささに鑑みると、厚さ方向に作用する外力の影響を緩和することができる外力吸収構造としては、厚さ方向凹部62以外にとりうる形態は、限られているからである。一方で、軸部2において、幅方向の寸法の方が厚さ方向の寸法よりも大きい場合に、外力の印加によって、両端の電気接続部と相手方接続部材との間により大きな力が印加されやすいのは、厚さ方向よりも幅方向である(例えば図2Aで基板接続部3とスルーホールHの内壁面の間の接触箇所)。その力の影響を効果的に軽減する観点からは、外力吸収部6が、少なくとも幅方向凹部61を有しているとよいと言える。幅方向と厚さ方向のいずれの外力に対しても、またそれら両方向の成分を含む外力に対しても、高い緩和効果を得る観点から、外力吸収部6は、幅方向凹部61と厚さ方向凹部62の両方を備えるものであるとよい。
【0048】
外力吸収部6を構成する幅方向凹部61の数、および厚さ方向凹部62の数も、特に限定されるものではなく、幅方向凹部61を設ける場合には、対向する2つの幅方向周面21の少なくとも一方に、少なくとも1つの幅方向凹部61を設ければよい。また、厚さ方向凹部62を設ける場合には、対向する2つの厚さ方向周面22の少なくとも一方に、少なくとも1つの厚さ方向凹部62を設ければよい。しかし、2つの幅方向周面21の両方に幅方向凹部61を設けることで、幅方向に沿って両方向に働く外力に対して(図2Aの左右両方向に働く外力に対して)、高い緩和効果が得られる。また、2つの厚さ方向周面22の両方に厚さ方向凹部62を設けることで、厚さ方向に沿って両方向に働く外力に対して(図2Cの左右両方向に働く外力に対して)、高い緩和効果が得られる。
【0049】
2つの幅方向周面21の両方に幅方向凹部61を設ける場合、また2つの厚さ方向周面22の両方に厚さ方向凹部62を設ける場合に、それら2つの幅方向凹部61の軸方向に沿った位置、また2つの厚さ方向凹部62の軸方向に沿った位置は、2つの間でずれていてもよいが、上記で説明した形態のように、相互に中心軸Cを挟んで対向する位置、つまり軸方向に沿って同じ位置に、2つの凹部が設けられていることが好ましい。対向する凹部によって軸部2の断面積が狭くなる位置が揃っていることで、その位置において軸部2の断面積の減少量が大きくなり、応力を集中させて外力を緩和する効果が高くなるからである。また、電気接続端子1の構造が単純なものとなることで、電気接続端子1を打ち抜きによって製造する際の金型の構造が簡素になるなど、電気接続端子1の製造性を高め、製造コストを抑えやすいからである。同様の理由で、外力吸収部6に幅方向凹部61と厚さ方向凹部62の両方を設ける場合に、上記で説明した形態のように、幅方向凹部61と厚さ方向凹部62を、軸方向に沿って同じ位置に設けることが好ましい。2つの幅方向周面21のそれぞれに設ける幅方向凹部61の数、および2つの厚さ方向周面22のそれぞれに設ける厚さ方向凹部62の数は特に限定されず、複数であってもよいが、上記で説明した形態のように、それぞれ1つずつ設ければ、外力の緩和には十分である。
【実施例0050】
以下に実施例を示す。ここでは、コンピュータシミュレーションを利用して、外力吸収部の有無と、外力の影響との関係を解析した。
【0051】
<解析方法>
解析対象として、図4A,4Bに示すように、プレスフィット端子の基板接続部3を、スルーホールHに挿通したモデル構造を作成した。図4Aは、プレスフィット端子に外力吸収部を設けない形態を示している。図4Bは、外力吸収部6として、2つの幅方向凹部と2つの厚さ方向凹部が同じ軸方向位置に形成されたくびれ状の構造を、プレスフィット端子に設けた形態を示している。モデルにおいては、プレスフィット端子がスルーホールの内壁面と接触する接触部のそれぞれについて、軸方向に沿った長さを1.0mmとし、板厚方向に沿った長さを0.5mmとした。プレスフィット端子の軸部は、幅を0.9mm、厚さを0.6mmとし、外力吸収部を構成する各凹部の窪み率(幅方向凹部および厚さ方向凹部のそれぞれについて、周面が最も内側に窪んでいる底の箇所における窪みの深さを、対向する凹部で合計したものを、軸部の幅および厚さのそれぞれに対する割合として表したもの)は、それぞれ50%とした。プレスフィット端子の構成材料としては、銅合金を想定した。
【0052】
各モデル端子を基板接続部3の先端3aから2mmにわたってスルーホールHに挿入した状態で、端子接続部の先端に相当する基端4aを、幅方向または厚さ方向に変位させた。外力吸収部を有さないモデル端子について、幅方向に基端を変位させた状態を図4Cに、厚さ方向に基端を変位させた状態を図4Dに、それぞれ例示している。それぞれ、基端の変位に伴って、端子接続部の先端も変位するが、その先端の変位量を、基端の変位量に対して記録した。合わせて、端子接続部とスルーホール内面との間の接触面積も記録した。解析は、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)を用いた有限要素法による弾塑性解析によって行った。
【0053】
<解析結果>
図5A~5Dに解析結果を示す。図5A図5Bはそれぞれ、幅方向への基端の変位に伴う先端の変位量および接触面積の変化を示している。図5C図5Dはそれぞれ、厚さ方向への基端の変位に伴う先端の変位量および接触面積の変化を示している。それぞれ、横軸に基端の変位量をとり、縦軸に、先端の変位量または接触面積を表示している。また、各図において、外力吸収部を有さない場合をグレー線で、外力吸収部を有する場合を黒線で表示している。
【0054】
まず、先端の変位量の評価結果を見ると、図5Aの幅方向の変位、図5Cの厚さ方向の変位とも、基端の変位に伴って、先端も、基端と逆方向に変位している。しかし、外力吸収部を設けることで、外力吸収部を設けない場合と比較して、基端の変位量の全領域において、先端の変位量が小さく抑えられている。このことは、外力吸収部によって、基端の変位に伴って基板接続部に加えられる外力の一部が吸収されていることを示している。基端の変位量が0.5mmの位置で比較すると、外力吸収部を設けることで、外力吸収部を設けない場合と比較して、先端の変位量が、幅方向の変位について25%、厚さ方向の変位について9%小さくなっている。幅方向の変位の方で、外力吸収部を設けることによる先端の変位量の低減率が大きいのは、弾性接触片の寸法が、幅方向において、厚さ方向よりも大きくなっており、基端を変位させた際に、弾性接触片とスルーホールの内壁面との間の接触箇所に印加される力が、幅方向において、厚さ方向よりも大きく、その力を緩和する効果も大きくなるためであると考えられる。
【0055】
さらに、基板接続部とスルーホールの間の接触面積の評価結果を見ると、図5Bの幅方向の変位を基端に加えた場合に、基端の変位に伴って、接触面積が減少している。基端の変位に伴って、基板接続部がスルーホールの軸に対して傾斜することで、弾性接触片とスルーホールの内壁面との間の接触面積が小さくなるためである。しかし、外力吸収部を設けることで、外力吸収部を設けない場合と比較して、少なくとも基端の変位量が比較的小さい領域において、基端の変位に伴う接触面積の低下量が小さく抑えられている。基端の変位量が0.5mmの位置において、変位量0mmの点を基準とした接触面積の低下率が、外力吸収部を設けない場合で43%、外力吸収部を設けた場合で32%となっている。つまり、外力吸収部を設けた場合に、外力吸収部を設けない場合と比較して、接触面積の低下率が、11ポイント小さく抑えられている。この結果から、外力吸収部によって、基端の変位に伴って基板接続部に加えられる外力の一部が吸収されることで、先端の変位に加え、接触面積の低下が小さく抑えられることが示される。
【0056】
図5Dの厚さ方向の変位を基端に加えた場合の接触面積の評価結果においては、外力吸収部を設けた場合と設けない場合で、ほぼ差が生じていない。その理由の1つは、図5A図5Cの比較で見られたように、外力吸収部によって先端の変位量を低減する効果が、幅方向の変位を加える場合に比べて、厚さ方向の変位を加える場合に低い水準に留まることによると考えられる。先端の変位量の低減により、スルーホールの軸に対する基板接続部の傾斜角も低減されるが、厚さ方向においては、変位量の低減率が小さいことで、傾斜角の低減量も小さくなり、傾斜角の低減に伴う接触面積の増加が、顕著には起こっていないものと解釈される。もう1つの理由として、幅方向に基板接続部が傾斜する場合には、傾斜の両側で、端子接続部とスルーホール壁面との間の接触状態に大きな差が生じやすいのに対し、厚さ方向に基板接続部が傾斜する場合には、傾斜の両側で、スルーホールとの間の接触箇所がバランスをとって形成されやすい点が挙げられる。つまり、厚さ方向の傾斜の一方側で接触面積が増加すると、他方側で接触面積が減少する状況が生じやすく、この場合には、外力の緩和によって傾斜角が変化しても、傾斜の両側における合計としての接触面積には、大きな変化は生じないことになる。
【0057】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,9 プレスフィット端子(電気接続端子)
2 軸部
21 幅方向周面
22 厚さ方向周面
3 基板接続部(第一の接続部)
31 弾性接触片
3a 先端
4 端子接続部(第二の接続部)
4a 基端
5 ショルダ部
6 外力吸収部
61 幅方向凹部
62 厚さ方向凹部
B 回路基板
C 中心軸
F1 幅方向に作用する外力
F2 厚さ方向に作用する外力
H スルーホール(第一の相手方接続部材)
T 相手方接続端子(第二の相手方接続部材)
T1 弾性接触片
x 軸方向
y 幅方向
z 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5