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特開2024-140572伸縮シュートの巻上装置および巻上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140572
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】伸縮シュートの巻上装置および巻上方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 11/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B65G11/14 C
B65G11/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051760
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】村井 康夫
(72)【発明者】
【氏名】小枝 慎太朗
【テーマコード(参考)】
3F011
【Fターム(参考)】
3F011BA02
3F011BB01
3F011BB02
3F011BC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伸縮シュートの縮小時の不具合を効率的に回避できる巻上装置および巻上方法を提供する。
【解決手段】異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュート12と、伸縮シュート12の上方に配置したドラム14と、伸縮シュート12の平面視で伸縮シュート12を間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブ20と、一端をドラム14の長手方向の一端に固定し、他端をドラム14の長手方向の他端に固定して中間を複数のロープシーブ20に環状に掛け渡してドラム14と伸縮シュート12を連結する1本のワイヤーロープ16を備えた伸縮シュートの巻上装置10において、ワイヤーロープ16の中間を固定又は解放してワイヤーロープ16にワイヤー張力を均等に付与しない状態と均等に付与する状態に切り替えるワイヤーロック部30を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュートと、
前記伸縮シュートの上方に配置したドラムと、
前記伸縮シュートの平面視で前記伸縮シュートを間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブと、
一端を前記ドラムの長手方向の一端に固定し、他端を前記ドラムの長手方向の他端に固定して、中間を複数の前記ロープシーブに環状に掛け渡して前記ドラムと前記伸縮シュートを連結する1本のワイヤーロープを備えた伸縮シュートの巻上装置において、
前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放して前記ワイヤーロープにワイヤー張力を均等に付与しない状態と均等に付与する状態に切り替えるワイヤーロック部を備えたことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置。
【請求項2】
請求項1に記載された伸縮シュートの巻上装置であって、
前記ワイヤーロック部は、前記伸縮シュートの縮小時に傾きが発生したときに前記ワイヤーロープを固定から解放して前記ワイヤー張力を均等に付与する状態に切り替えて前記伸縮シュートの左右の前記ワイヤーロープの長さの差をなくすことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伸縮シュートの巻上装置であって、
前記ワイヤーロック部は、前記ワイヤーロープを間に挟む一対の把持ブロックと、前記一対の把持ブロックを進退移動して前記ワイヤーロープを固定又は解放させる駆動部と、前記駆動部の動作切替えを遠隔操作する操作部を備えたことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置。
【請求項4】
異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュートと、前記伸縮シュートの上方に配置したドラムと、前記伸縮シュートの平面視で前記伸縮シュートを間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブと、一端を前記ドラムの長手方向の一端に固定し、他端を前記ドラムの長手方向の他端に固定して、中間を複数の前記ロープシーブに環状に掛け渡して前記ドラムと前記伸縮シュートを連結する1本のワイヤーロープを備えた伸縮シュートの巻上方法において、
ワイヤーロック部により前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放して前記ワイヤーロープにワイヤー張力を均等に付与しない状態又は均等に付与する状態に切り替え可能とし、前記伸縮シュートの縮小時に傾きが発生したときに前記ワイヤーロープを固定から解放して前記ワイヤー張力を均等に付与する状態に切り替えて前記伸縮シュートの左右の前記ワイヤーロープの長さの差をなくすことを特徴とする伸縮シュートの巻上方法。
【請求項5】
請求項4に記載の伸縮シュートの巻上方法において、
前記ワイヤーロック部を遠隔操作で前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放することを特徴とする伸縮シュートの巻上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送コンベヤなどの輸送装置で搬送してきた搬送物を、車両やタンクに落下させて払い出す伸縮シュートの巻上装置および巻上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、砂、砕石、石炭、バイオマス、化学品などの搬送物を、車両やタンク等に積み込む際に伸縮自在に伸び縮みする伸縮シュートが利用されている。
一例として特許文献1に開示のホッパの払い出し装置は、払い出し口と車両とを接続する伸縮自在なシュートと、水平方向に配置したカウンタウェイトと、カウンタウェイトとシュートを連結した2本のロープからなり、ロープはカウンタウェイトの水平方向の各端と、シュートの水平方向の各端を連結している。
【0003】
この他にも従来、図5に示すような伸縮シュートの巻上装置がある。巻上装置1は、ドラム14と、複数のロープシーブ20、ワイヤーロープ16からなる。
伸縮シュート12は直径の異なる複数の筒体を嵌合して、重なり合った筒が伸び縮みする構造である。
ドラム14は、ワイヤーロープ16を巻き回した円筒部材であり、一端が減速機に接続し、他端が軸受に回転自在に軸支されている。ドラム14は伸縮シュート12の上方に配置している。
ロープシーブ20は、ドラム14のワイヤーロープ16を繰り出し又は巻き取りを直にガイドする第1ガイドシーブ21a,bと、伸縮シュート12の上端に取り付ける上部シーブ22a,b,23a,bと、伸縮シュート12の下端に取り付ける下部シーブ24a,bと、第2ガイドシーブ25a,bを備えている。
ワイヤーロープ16は1本であり、両端をそれぞれドラム14の長手方向の両端に固定し、複数のロープシーブ20に環状に巻き回している。
【0004】
このような構成の従来の巻上装置1は、1本のワイヤーロープ16で伸縮シュート12の両側面(左右側面)を支持する構成であり、巻き上げ時に伸縮シュート12の左右側面のワイヤーロープ16に左右それぞれ均等にドラム14側からの張力が作用している。図6は従来の伸縮シュートの巻上装置の傾きの説明図である。搬送コンベヤから落下した搬送物が複数の筒体の縁に付着するなどして(A参照)、この状態で巻き上げると(B参照)、上下の筒体間で重なるときに搬送物が目詰まりして縮小できなくなり、目詰まりを起こしていない箇所の巻き上げが進行して、通常、筒体の開口面が水平面上に配置されている状態から縁に搬送物が付着していない側に傾きが発生して(C参照)摺動抵抗が増加するという悪循環を誘発する傾向があった。その結果、伸縮シュート12のスムーズな伸縮が阻害されてしまう。これにより伸縮シュート12の伸縮時に異音の発生や、局部的な摩耗が発生するなどの不具合が生じていた。
【0005】
また特許文献1のような2本のワイヤーロープで伸縮シュートの左右側面を別々に支持している場合には、図5に示す1本のワイヤーロープ16のように、ワイヤーロープ16の張力が伸縮シュート12の左右相互に均等に作用することがない。このため前述のように搬送物が複数の筒体の縁に付着するような場合、左右のワイヤーロープの巻き上げの差によって、巻上用の2本のワイヤーロープの左右の長さが同一ではなくなる場合がある。ワイヤーロープの長さが左右で異なると伸縮シュート等が傾く原因になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-5607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、伸縮シュートの縮小時に傾く不具合を効率的に回避できる伸縮シュートの巻上装置および巻上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュートと、
前記伸縮シュートの上方に配置したドラムと、
前記伸縮シュートの平面視で前記伸縮シュートを間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブと、
一端を前記ドラムの長手方向の一端に固定し、他端を前記ドラムの長手方向の他端に固定して、中間を複数の前記ロープシーブに環状に掛け渡して前記ドラムと前記伸縮シュートを連結する1本のワイヤーロープを備えた伸縮シュートの巻上装置において、
前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放して前記ワイヤーロープにワイヤー張力を均等に付与しない状態又は均等に付与する状態に切り替えるワイヤーロック部を備えたことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、伸縮シュートを常時又は非常時を問わず最適な巻き上げ又は繰り出し状態に維持することができる。また伸縮シュートの巻き上げ時に傾きが発生しても、容易に解消することができ、シュートの摩耗又は異音の発生を防止できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、 前記ワイヤーロック部は、前記伸縮シュートの縮小時に傾きが発生したときに前記ワイヤーロープを固定から解放して前記ワイヤー張力を均等に付与する状態に切り替えて前記伸縮シュートの左右の前記ワイヤーロープの長さの差をなくすことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、シュートの巻き上げ時に傾きが生じたときに、ワイヤー張力が均等に付与する状態に切り替えることにより、左右のワイヤーロープの長さの差をなくし(左右のワイヤーロープの差を均等に均して)、発生した傾きを解消することができる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記ワイヤーロック部は、前記ワイヤーロープを間に挟む一対の把持ブロックと、前記一対の把持ブロックを進退移動して前記ワイヤーロープを固定又は解放させる駆動部と、前記駆動部の動作切替えを遠隔操作する操作部を備えたことを特徴とする伸縮シュートの巻上装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、シュートの傾きが発生したときに現場にいなくとも遠隔でワイヤー張力を均等に付与する状態と均等に付与しない状態を切り換えることができ、切り替え作業の作業者負担を軽減できる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュートと、前記伸縮シュートの上方に配置したドラムと、前記伸縮シュートの平面視で前記伸縮シュートを間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブと、一端を前記ドラムの長手方向の一端に固定し、他端を前記ドラムの長手方向の他端に固定して、中間を複数の前記ロープシーブに環状に掛け渡して前記ドラムと前記伸縮シュートを連結する1本のワイヤーロープを備えた伸縮シュートの巻上方法において、
ワイヤーロック部により前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放して前記ワイヤーロープにワイヤー張力を均等に付与しない状態又は均等に付与する状態に切り替え可能とし、前記伸縮シュートの縮小時に傾きが発生したときに前記ワイヤーロープを固定から解放して前記ワイヤー張力を均等に付与する状態に切り替えて前記伸縮シュートの左右の前記ワイヤーロープの長さの差をなくすことを特徴とする伸縮シュートの巻上方法を提供することにある。
上記第4の手段によれば、伸縮シュートの巻き上げ時に傾きが発生しても、容易に解消することができ、シュートの摩耗又は異音の発生を防止できる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第4の手段において、前記ワイヤーロック部を遠隔操作で前記ワイヤーロープの中間を固定又は解放することを特徴とする伸縮シュートの巻上方法を提供することにある。
上記第5の手段によれば、シュートの傾きが発生したときに現場にいなくとも遠隔でワイヤー張力を均等に付与する状態と均等に付与しない状態を切り換えることができ、切り替え作業の作業者負担を軽減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤーロープの張力を左右で均等に付与する状態のときに伸縮シュートの片側に搬送物が詰まったり堆積したりすることで摺動抵抗が中心から逸れると、ワイヤー巻上時に伸縮シュートが曲がったり、摩耗・異音の原因となるといった問題や、ワイヤーロープの左右で均等に付与しない状態のときに、ワイヤーの長さが異なることにより伸縮シュート等が傾く原因になることがある、といった問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の伸縮シュートの巻上装置の構成概略図である。
図2】ワイヤーロック部の説明図である。
図3】変形例のワイヤーロック部の説明図である。
図4】本発明の伸縮シュートの巻上方法の説明図である。
図5】従来の伸縮シュートの巻上装置の説明図である。
図6】従来の伸縮シュートの巻上装置の傾きの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の伸縮シュートの巻上装置および巻上方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0016】
[伸縮シュートの巻上装置10]
図1は本発明の伸縮シュートの巻上装置の構成概略図である。図示のように本発明の伸縮シュートの巻上装置10(以下単に巻上装置10ということあり)は、異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合した伸縮シュート12と、伸縮シュート12の上方に配置したドラム14と、伸縮シュート12の平面視で伸縮シュート12を間に挟むように左右側面側に接続する複数のロープシーブ20と、一端をドラム14の長手方向の一端に固定し、他端をドラム14の長手方向の他端に固定して、中間を複数のロープシーブ20に環状に掛け渡してドラム14と伸縮シュート12を連結する1本のワイヤーロープ16と、ワイヤーロープ16の中間を固定又は解放してワイヤーロープ16にワイヤー張力を均等に付与しない状態と均等に付与する状態に切り替えるワイヤーロック部30を備えている。
なお、本発明で上下方向とは伸縮シュート12が伸長する方向(垂直方向)を示し、左右方向とは、上下方向と直交し、ワイヤーロック部30からドラム14側をみた正面視で水平方向を示す。
【0017】
伸縮シュート12は、異径の複数の筒体を上下複数段に伸縮自在に嵌合してあり、砂、砕石、石炭、バイオマス、化学品などの搬送物を車両やタンクに払い出す際に用いられる。筒体は下から上へ順に外径が小さくなるように設定され、上下の筒体は嵌合して伸長したときに外れないように形成している。伸縮シュート12は一例として旋回ビーム11の端部に取り付けている。旋回ビーム11には搬送コンベヤが配置されており、コンベヤから搬送物が伸縮シュート12に供給されて下方の車両又はタンクに払い出される。
【0018】
伸縮シュート12上方の旋回ビーム11には円柱状のドラム14が設置されている。ドラム14はワイヤーロープ16が固定されている。より具体的には1本のワイヤーロープ16の両端がそれぞれドラム14の長手方向の両端側に所定間隔を開けて固定されている。このようなドラム14の構成によりワイヤーロープ16は環状に巻き上げ又は繰り出しが行われる。
環状のワイヤーロープ16は、複数のロープシーブ20によって支持されている。第1ガイドシーブ21a,bはドラム14の直近に設置されてワイヤーロープ16の繰り出し又は巻き上げを支持している。上部シーブ22a,b、23a,bは伸縮シュート12の上方の旋回ビーム11に取り付けている。下部シーブ24a,bは上部シーブ22a,b、23a,bの下方であって、伸縮シュート12先端の筒体に取り付けている。下部シーブ24a,bは伸縮シュート12の左右側面から間の筒体を挟むように設置している。この構成により伸縮シュート12の水平状態を保ちながら上下移動できる。第2ガイドシーブ25a,bはワイヤーロープ16の中間部を支持するように旋回ビーム11上に取り付けている。
【0019】
(ワイヤーロック部30)
図2はワイヤーロック部の説明図であり、(A)は分解斜視図、(B)は側面図を示している。ワイヤーロック部30は、ワイヤーロープ16を間に挟む一対の把持ブロックと、締結ボルト36を有している。一対の把持ブロックは、ワイヤーホルダー32とワイヤークランプ34からなる。ワイヤーホルダー32は略矩形の部材であり、上面にワイヤーロープ16の軸方向に沿ってワイヤーロープ16が嵌る断面視で半円状の凹部を備え、ベース33上に固定している。ワイヤークランプ34はワイヤーホルダー32上に配置する略矩形の部材であり、ワイヤーホルダー32上面と対向する下面にワイヤーロープ16の軸方向に沿ってワイヤーロープ16が嵌る断面視で半円状の凹部を備えている。ワイヤークランプ34とワイヤーホルダー32は重ねたときにワイヤークランプ34の上面から下方のワイヤーホルダー32へ向けて延びる締結孔を形成している。締結孔には螺合する締結ボルト36を配置している。
このような構成のワイヤーロック部30は、締結ボルト36を締めると、ワイヤーロープ16がワイヤークランプ34とワイヤーホルダー32間に挟まれて把持し固定できる。一方、締結ボルト36を緩めるとワイヤーロープ16はワイヤークランプ34とワイヤーホルダー32間の凹部内で締め付けが解除されてワイヤーロープ16の軸心に沿って左右方向に自由に摺動できる。本実施形態の締結ボルト36の締結作業は手動で行う。
【0020】
(変形例のワイヤーロック部30A)
図3は変形例のワイヤーロック部の説明図である。
変形例のワイヤーロック部30Aは、ワイヤーロープ16を間に挟む一対の把持ブロックと、一対の把持ブロックを進退移動させる駆動部40と、前記駆動部40を遠隔操作する操作部50と、位置センサー52を備えている。
一対の把持ブロックは、ワイヤーホルダー32とワイヤークランプ34Aからなる。ワイヤーホルダー32は略矩形の部材であり、上面にワイヤーロープ16の軸方向に沿ってロープが嵌る断面視で半円状の凹部と備え、ベース33A上に固定している。ワイヤークランプ34Aはワイヤーホルダー32上に配置する略矩形の部材であり、一端が軸受37に軸支されている。ワイヤークランプ34Aの他端はバネ部材38が接続している。バネ部材38はベース33Aの上面を覆うケーシング39の天井に接続し、ワイヤークランプ34Aがワイヤーホルダー32に接近する方向に付勢している。
【0021】
駆動部40は、ロッド42及びシリンダー44からなり、電動又は流体(空気又は油)を駆動源46としている。ロッド42の先端はワイヤークランプ34Aに接続し、シリンダー44側はケーシング39の天井に取り付けている。ロッド42は通常、シリンダー44から伸長した状態で取り付けられているため、ワイヤーロープ16をロックした状態(伸縮シュート12の左右のワイヤーロープ16の張力を均等に付与しない状態)にしている。
位置センサー52は、一対の把持ブロックによるワイヤーロープ16の固定又は解放を検出するセンサーであり、例えば接触又は非接触式の変位センサーを適用することができる。この他にも位置センサーは、レーザセンサー等を適用することもできる。
【0022】
操作部50は、駆動部40と有線又は無線回線を通じて電気的に接続し、駆動部40を作動又は停止の切り換えを行う切替スイッチである。また操作部50は、位置センサー52の検出値を表示可能とし、例えば、ワイヤーロープ16の固定又は解放状態を示す表示ランプを設ける構成としても良い。
このような構成の変形例のワイヤーロック部30Aは、通常、バネ部材38によりワイヤークランプ34Aとワイヤーホルダー32が接近する方向に付勢しているため、ワイヤーロープ16が把持固定されており、伸縮シュート12の左右のワイヤーロープ16に互いに均等なワイヤー張力が作用していない。操作部50によりロッド42を縮小させるとワイヤーロープ16が一対の把持ブロックから解放されて、伸縮シュート12の左右のワイヤーロープ16に互いに均等なワイヤー張力が作用する状態となる。
【0023】
[伸縮シュートの巻上方法]
上記構成による本発明の伸縮シュートの巻上方法について以下説明する。
図4は本発明の伸縮シュートの巻上方法の説明図である。
同図(A)に示すように、定常の運転時は、ワイヤーロック部30はワイヤーロープ16を把持固定しており、伸縮シュート12を支持する左右のワイヤーロープ16にはドラム14からのワイヤー張力が均等に作用しない状態である。なお始動前や巻上装置10が休止している間に、ワイヤーロック部30を解放する。これは、ワイヤーロープ16を固定したまま長時間巻き上げを行うと経年変化により左右でワイヤーロープ16の伸び量に差が生じて左右の長さが異なることによるトラブルを予防するためである。
同図(B)に示すように、ドラム14によるワイヤーロープ16の巻き上げ時には伸縮シュート12を支持する左右のワイヤーロープ16にはドラム14からのワイヤー張力が均等に作用しておらず、左右の巻き上げ量は等しい状態となる。左右のワイヤーロープ16は同一の長さであり、伸縮シュート12が水平状態を維持したまま傾くことなく縮小させることができる。
同図(C)に示すように、搬送コンベヤから落下した搬送物が複数の筒体の縁に付着するなどした状態(左側)で巻き上げると、伸縮シュート12の摺動抵抗が伸縮シュート12の軸心から逸れ、搬送物が縁に付着していない右側のワイヤーロープ16の巻き取りが進み、ワイヤーロープ16にかかる張力は左右で異なり、左右のワイヤーロープ16の長さが同一でなくなり傾く可能性がある。この場合、ワイヤーロック部30によりワイヤーロープ16を解放して、ワイヤー張力が左右均等に作用する状態にする。そして、ドラム14によりワイヤーロープ16を繰り出して左右のワイヤーロープ16の長さの差をなくす(左右のワイヤーロープの差を均等に均す)(同図(D)参照)。
左右のワイヤーロープ16の長さや張力が同じ、すなわち伸縮シュート12の傾きが解消したら、ワイヤーロック部30によるワイヤーロープ16の把持固定を行い定常の運転状態に戻す(同図(B)参照)。
【0024】
このような本発明によれば、従来構成のワイヤー張力が均等に作用する状態でシュートの片側に搬送物が詰まったり堆積したりすることで摺動抵抗が中心から逸れると、ワイヤー巻上時にシュートが曲がったり、摩耗・異音の原因となるといった問題が発生していたが、本発明では左右のワイヤー長さが異なった場合に、ワイヤーロープを把持固定した状態から解放して、左右のワイヤーロープの長さの差をなくして左右のワイヤーロープの巻き上げ量を同一にすることができる。これによりワイヤー巻上時にシュートが曲がった状態を解消できるので、シュートの摩耗や異音が発生することがない。
また従来の先行技術のワイヤー張力を均等に使用しない2本のワイヤーロープでシュートの片側に搬送物が詰まったり堆積したりした場合に、ワイヤーの長さが異なることにより伸縮シュート等が傾く問題については、ワイヤー張力が均等に作用する状態と均等に作用しない状態を切り換える構成により伸縮シュートが傾いても解消できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0025】
1,10 伸縮シュートの巻上装置
11 旋回ビーム
12 伸縮シュート
14 ドラム
16 ワイヤーロープ
20 ロープシーブ
21a,b 第1ガイドシーブ
22a,b、23a,b 上部シーブ
24a,b 下部シーブ
25a,b 第2ガイドシーブ
30,30A ワイヤーロック部
32 ワイヤーホルダー
33,33A ベース
34,34A ワイヤークランプ
36 締結ボルト
37 軸受
38 バネ部材
39 ケーシング
40 駆動部
42 ロッド
44 シリンダー
46 駆動源
50 操作部
52 位置センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6