(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140585
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】シートクッション
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20241003BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20241003BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
A47C31/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051779
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸一
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JC01
3B087DE03
3B087DE08
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】センサ装置の断線を抑制したシートクッションを提供すること。
【解決手段】本開示のシートクッションは、表面の幅方向中央部に前後方向に延びる吊り溝が形成されたクッションパッドと、クッションパッドの表面の吊り溝に対して右側と左側にそれぞれ配設される右側及び左側検知部と、クッションパッドの裏面側に配設されるコネクタと、右側及び左側検知部とコネクタとを接続する配線部とを含むセンサ装置と、クッションパッドの表面を覆うと共に少なくとも一部が吊り溝内で支持される表皮と、を含むものであって、配線部は、一端側に右側検知部が配設されると共に右側貫通穴に挿通される右側配線部と、一端側に左側検知部が配設されると共に左側貫通穴に挿通される左側配線部と、右側配線部の他端と左側配線部の他端とにその一端側が接続され、他端がコネクタに接続される合流配線部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の幅方向中央部に前後方向に延びる吊り溝が形成されたクッションパッドと、
前記クッションパッドの表面の前記吊り溝に対して右側と左側にそれぞれ配設される右側検知部及び左側検知部と、前記クッションパッドの裏面側に配設されるコネクタと、前記右側検知部及び左側検知部と前記コネクタとを接続する配線部とを備えるセンサ装置と、
前記クッションパッドの表面を覆うと共に少なくとも一部が前記吊り溝内で支持される表皮と、を備えるシートクッションであって、
前記配線部は、
一端側に前記右側検知部が配設されると共に、前記クッションパッドの前記吊り溝に対して右側の表面から前記クッションパッドの裏面側に貫通する右側貫通穴に挿通される右側配線部と、
一端側に前記左側検知部が配設されると共に、前記クッションパッドの前記吊り溝に対して左側の表面から前記クッションパッドの裏面側に貫通する左側貫通穴に挿通される左側配線部と、
前記右側配線部の他端と前記左側配線部の他端とにその一端側が接続され、他端が前記コネクタに接続される合流配線部と、を備える、
シートクッション。
【請求項2】
前記右側配線部の先端及び前記左側配線部の先端に設けられる補強部材をさらに備える、
請求項1に記載のシートクッション。
【請求項3】
前記センサ装置を前記クッションパッドに取り付けるために前記合流配線部の前記コネクタに近接した位置に形成された固定部をさらに備える、
請求項1に記載のシートクッション。
【請求項4】
前記配線部は帯状の配線で構成され、前記右側貫通穴及び前記左側貫通穴はスリット状の穴で構成される、
請求項1に記載のシートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートベルトやエアバッグ、シートヒータといった各種装置の性能を維持するために、シートクッション部分に着座乗員からの荷重に基づいてシートへの着座を検知する着座センサを設けたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートには、乗員が座るだけでなく、荷物が置かれることもある。したがって、乗員と荷物とを区別するために、着座センサの検知部は着座乗員の臀部に当たる部分に2つ配置するとよい。他方、シートクッションの表面には、表皮を固定するために吊り込み溝(「吊り溝」ともいう)が設けられる。吊り込み溝の配置はシートの意匠に影響を与えるため様々な配置が提案されており、例えばシートクッションの中心部分に前後方向に延びる吊り込み溝を配置したものもある。ここで、シートクッションの中心部分に前後方向に延びる吊り込み溝が配置されている場合に、着座センサの検知部を着座乗員の臀部に当たる部分に2つ配置しようとすると、着座センサの配線が吊り込み溝を横断することになる。しかし、配線の吊り込み溝を横断する部分には、着座乗員からの応力(負荷)が作用しやすく、場合によっては当該応力によって断線が生じる恐れがある。
【0005】
上記特許文献1には、着座センサの配線のうち、吊り込み溝を横断する部分に可撓性を有する電線を用いることで、断線を抑制することが記載されている。しかし、可撓性を有する電線を該当箇所に設置する必要があるため、製造工数が増加し、それに伴ってコストの上昇を招き得る。
【0006】
本開示は上記の点に鑑み、センサ装置の断線を抑制したシートクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るシートクッションは、表面の幅方向中央部に前後方向に延びる吊り溝が形成されたクッションパッドと、前記クッションパッドの表面の前記吊り溝に対して右側と左側にそれぞれ配設される右側検知部及び左側検知部と、前記クッションパッドの裏面側に配設されるコネクタと、前記右側検知部及び左側検知部と前記コネクタとを接続する配線部とを備えるセンサ装置と、前記クッションパッドの表面を覆うと共に少なくとも一部が前記吊り溝内で支持される表皮と、を含むものであって、前記配線部は、一端側に前記右側検知部が配設されると共に、前記クッションパッドの前記吊り溝に対して右側の表面から前記クッションパッドの裏面側に貫通する右側貫通穴に挿通される右側配線部と、一端側に前記左側検知部が配設されると共に、前記クッションパッドの前記吊り溝に対して左側の表面から前記クッションパッドの裏面側に貫通する左側貫通穴に挿通される左側配線部と、前記右側配線部の他端と前記左側配線部の他端とにその一端側が接続され、他端が前記コネクタに接続される合流配線部と、を含む。
【0008】
このようなシートクッションにおいては、配線部が吊り溝を横断することなく配索できるため、乗員が着座した際の応力が配線部の特定箇所に集中することにより断線することが抑制される。加えて、検知部はシートクッションの左右に配置できるため、乗員の着座を安定的に検出できる。さらに、左右の配線部はシートクッションの裏面側にて合流されているため、乗員が着座した際等には、配線部のうちのシートクッションの裏面側に位置する部分を撓ませることができ、断線をより効果的に抑制することができる。
【0009】
本開示の第2の態様に係るシートクッションは、上記本開示の第1の態様に係るシートクッションにおいて、前記右側配線部の先端及び前記左側配線部の先端に設けられる補強部材をさらに含む、請求項1に記載のシートクッション。
【0010】
このようなシートクッションにおいては、右側配線部及び左側配線部を右側貫通穴及び左側貫通穴に挿入する際、各配線部が撓みにくくなり、挿入作業が容易になる。
【0011】
本開示の第3の態様に係るシートクッションは、上記本開示の第1又は2の態様に係るシートクッションにおいて、前記センサ装置を前記クッションパッドに取り付けるために前記合流配線部の前記コネクタに近接した位置に形成された固定部をさらに含む、請求項1に記載のシートクッション。
【0012】
このようなシートクッションにおいては、センサ装置をクッションパッドに安定して固定できる。また、固定部が検知部から離れた位置に設定されているため、乗員が着座した際の応力が固定部に作用し難くなり、固定部による固定状態が意図せず解除されることを抑制できる。
【0013】
本開示の第4の態様に係るシートクッションは、上記本開示の第1乃至3のいずれかの態様に係るシートクッションにおいて、前記配線部は帯状の配線で構成され、前記右側貫通穴及び前記左側貫通穴はスリット状の穴で構成される、請求項1に記載のシートクッション。
【0014】
このようなシートクッションにおいては、貫通穴のサイズをコンパクトにできるため、シートクッションをその表面側から触れたときに貫通穴が認識されにくくなり、乗員の指等によって貫通穴が押されることによるシワ等の発生を少なくできる。
【発明の効果】
【0015】
本開示のシートクッションによれば、センサ装置の断線を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るシートクッションの一例を示した概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すシートクッションの表皮を取り付ける前の状態を示した概略斜視図である。
【
図4】
図1のA-A線で切断した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本開示を実施するための実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0018】
図1は、本開示の一実施の形態に係るシートクッションの一例を示した概略斜視図である。本実施の形態に係るシートクッション1は、車両用シートに適用可能なものである。なお、
図1において、矢印FRはシート前方側を示し、矢印UPはシート上方側を示し、矢印Wはシート幅方向を示している。また、ここでは、シート前方側を向いたときの右手方向を「シート右側」、左手方向を「シート左側」と定義する。
【0019】
シートクッション1は、着座乗員の臀部及び大腿部を支持するものである。このシートクッション1は、
図1に示すように、柔軟な材料で構成されたクッションパッド2と、クッションパッドの表面の少なくとも一部を覆う表皮3と、センサ装置の一例としての着座センサ10と、を含む。
【0020】
図2は、
図1に示すシートクッションの表皮を取り付ける前の状態を示した概略斜視図である。クッションパッド2は、発泡ポリウレタン等の弾性を有する材料で構成することができる。クッションパッド2の内部には、図示しないクッションフレームが配設されていてよく、クッションパッド2は、このクッションフレームが車両のフロアに取り付けられることで車両内に設置されるものであってよい。
【0021】
このクッションパッド2は、
図2に示すように、表面に複数の吊り溝4が形成されていてよい。具体的には、クッションパッド2には、少なくともその表面の幅方向中央部に、シートの前後方向に延びる中央吊り溝41が形成されている。加えて、本実施の形態に係るクッションパッド2には、その表面のシート幅方向の左右の端部に隣接する位置にシートの前後方向に延びる右側吊り溝42及び左側吊り溝43と、その表面の後方に、シート場は方向に沿って延びる後方吊り溝44とが設けられていてよい。なお、本開示のシートクッションは、少なくとも中央吊り溝41が形成されていればよく、他の吊り溝の形状や本数等は特に限定されない。また、中央吊り溝41の配置は、クッションパッド2のシート幅方向における中央部分であれば良く、僅かに左右に偏った位置に配置しているものを含む。また、中央吊り溝41の延在方向についても上述の形状には限定されず、例えばシートの前後方向に対して所定角度傾いていてもよい。
【0022】
上述した吊り溝4は、表皮3を固定するために形成されたものであり、表皮3が挿入可能な幅を備えた有底の溝で構成することができる。また、吊り溝4の底部には表皮3を支持するための部材、例えばワイヤやクリップ等が配設されていてよい。
【0023】
クッションパッド2には、上述した吊り溝4に加えて、着座センサ10の一部が挿入可能な、クッションパッド2を上下方向に貫通する貫通穴が形成されていてよい。この貫通穴は、中央吊り溝41に対して右側に配設された右側貫通穴5と、同じく中央吊り溝41に対して左側に配設された左側貫通穴6とで構成されていてよい。上述した右側及び左側貫通穴5、6の具体的な形状については後述する。
【0024】
表皮3は、クッションパッド2の表面の少なくとも一部を覆うものであって、布や皮革等で構成されるものである。表皮3は、その端部がクッションパッド2の下面等に固定されるだけでなく、クッションパッド2に形成された吊り溝4内に挿入されて固定されることで、クッションパッド2に取り付けられるものである。表皮3の固定には、フックやホグリング、クリップ等を用いることができる。
【0025】
図3は、
図2に示す着座センサの一例を示す図であって、
図3(A)は平面図であり、
図3(B)は側面図である。着座センサ10は、
図1乃至
図3に示すように、シートクッション1に乗員が着座したことを検知するためのセンサである。この着座センサ10は、クッションパッド2の表面側に配設される右側検知部11及び左側検知部12と、クッションパッド2の裏面側に配設されるコネクタ20と、右側検知部11及び左側検知部12とコネクタ20とを接続する配線部13とを含むものである。
【0026】
右側検知部11は、物体の有無を検出可能な圧力センサ(例えば、機械式の感圧スイッチや静電容量式の近接センサ)で構成することができる。本実施の形態では、右側検知部11を、クッションパッド2の表面の中央吊り溝41に対して右側に、着座乗員の臀部に当たる部分に前後に間隔を空けて2つ配設されたものを例示している。
【0027】
左側検知部12は、右側検知部11とその配置を除いて同一のもので構成することができる。すなわち、本実施の形態の左側検知部12は、クッションパッド2の表面の中央吊り溝41に対して左側に、着座乗員の臀部に当たる部分に前後に間隔を空けて2つ配設された圧力センサで構成することができる。
【0028】
コネクタ20は、プラグ又はジャックといった周知の電気コネクタで構成することができる。このコネクタ20が車両内の他のコネクタ30(
図4参照)に接続されることで、右側検知部11及び左側検知部12からの電気信号を図示しない車両内のECU(Electronic Control Unit)等に送ることができる。
【0029】
配線部13は、右側及び左側検知部11、12とコネクタ20との間を電気的に接続する部分であって、例えば柔軟性を有する帯状の配線板で構成することができる。この配線部13としては、メンブレン、FPC(Flexible Printed Circuit)あるいはFFC(Flexible Flat Cable)を採用することができる。本実施の形態に係る配線部13は、一対のフィルム材の間に電線及び絶縁スペーサが挟持されたメンブレンで形成されたものとする。
【0030】
また、配線部13は、
図3に示すように、一端側に右側検知部11が配設される右側配線部14と、一端側に左側検知部12が配設される左側配線部15と、右側配線部14の他端と左側配線部15の他端とをコネクタ20に接続する合流配線部16と、を含む。
【0031】
図4は、
図1のA-A線で切断した概略断面図である。左側配線部15は、一端部側に左側検知部12が配設されると共に、クッションパッド2の中央吊り溝41に対して左側の表面からクッションパッド2の裏面側に貫通する左側貫通穴6に挿通されるものである。
【0032】
クッションパッド2に形成された左側貫通穴6は、
図4に示すように、クッションパッド2の表面側の開口形状がシート幅方向に長いスリット状の穴であってよい。また、この左側貫通穴6のクッションパッド2の裏面側の開口は、クッションパッド2の表面側の開口に比べて少なくともその前後方向の長さが長くなっていると好ましい。左側貫通穴6を上述のように形成することで、左側配線部15の挿入が容易となるだけでなく、クッションパッド2の表面側の開口を例えば左側配線部15の外径と同程度にしても挿入時の作業性が低下しない。したがって、クッションパッド2の表面側の開口を小さくすることができ、シートクッション1の表面に触れた際に左側貫通穴6が認識されにくくなる。なお、左側配線部15は、クッションパッド2の裏面側から表面側へ向かって挿入されるものである。
【0033】
左側配線部15の挿入操作をより容易にするために、左側配線部の一面、例えば左側検知部12が設けられた面とは反対側の面に、補強部材の一例としての補強テープ18が貼付されているとよい。補強テープ18には、左側配線部15の剛性よりも高い剛性を有するもの、例えばポリプロピレン製のテープを用いることができる。補強テープ18を採用することにより、左側配線部15の先端が撓みにくくなり、左側貫通穴6への左側配線部15の挿入作業がよりスムーズに実施できるようになる。なお、この補強テープ18は、後述する右側配線部14にも同様に貼付されていてよい。また、上述した補強テープ18を貼付することに代えて、左側検知部12の1つを左側配線部15の先端に配置することで、左側配線部15の撓みを抑制するようにしてもよい。
【0034】
右側配線部14は、一端部側に右側検知部11が配設されると共に、クッションパッド2の中央吊り溝41に対して右側の表面からクッションパッド2の裏面側に貫通する右側貫通穴5に挿通されるものである。この右側配線部14の具体的な構成は、上述した左側配線部15と概ね同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0035】
クッションパッド2に形成された右側貫通穴5は、左側貫通穴6と同様の構造を有していてよい。すなわち、クッションパッド2の表面側の開口形状がシート幅方向に長いスリットであって、クッションパッド2の裏面側の開口形状がクッションパッド2の表面側の開口に比べて少なくともその前後方向の長さが長くなっていてよい。
【0036】
合流配線部16は、右側配線部14の他端と左側配線部15の他端とにその一端側が接続され、他端がコネクタ20に接続されるものである。また、本実施の形態においては、合流配線部16として、一端部側がシート幅方向に延在し、その中間部で屈曲して、他端部側はシート前後方向に延在しているものを例示しているが、合流配線部16の配索形状は上記のものに限定されない。例えば、他のコネクタ30の位置に合わせて適宜調整することができる。
【0037】
また、合流配線部16のコネクタ20に接続される他端に近接する位置には、着座センサ10をクッションパッド2の裏面に取り付けるための固定部17が形成されているとよい。本実施の形態に係る固定部17は、合流配線部16の幅方向の中央部に設けられた貫通穴で構成されたものを例示している。この貫通穴からなる固定部17には、クリップCを挿入することができ、クリップCの端部をクッションパッド2の裏面に固定することにより、着座センサ10をクッションパッド2の裏面に安定して固定することができる。なお、固定部17の構造は上述のものに限定されない。同様にクリップCは固定部17の構造に合わせて適宜他の固定手段に変更することができる。
【0038】
加えて、固定部17がコネクタ20に近接する位置に配設されることにより、固定部17をヒップポイントから離れた位置とすることができる。これにより、シートクッション1に乗員が着座した際に作用する応力に基づいて配線部13が撓んだ場合にも、当該撓みに起因する応力が固定部17に作用し難くすることができる。
【0039】
上述の構成を備える着座センサ10をクッションパッド2に取り付ける方法の一例を以下に説明する。先ず、右側貫通穴5及び左側貫通穴6が形成されたクッションパッド2を準備する。次に、このクッションパッド2の右側貫通穴5及び左側貫通穴6へ、その裏面側から、着座センサ10の右側配線部14及び左側配線部15の先端を挿入する。そして、当該挿入によってクッションパッド2の表面側に導出された右側配線部14及び左側配線部15の一方の面に形成された右側検知部11及び左側検知部12を、検知ポイントに配置する。さらに、右側検知部11及び左側検知部12が検知ポイントに配置された状態で、右側配線部14及び左側配線部15をクッションパッド2の表面に固定する。
【0040】
次に、クッションパッド2の裏面側に残った合流配線部16をクッションパッド2に固定する。具体的には、合流配線部16の表面をクッションパッド2の裏面に当接させた後、固定部17にクリップCを挿入して固定することで、合流配線部16を固定すればよい。最後に、コネクタ20にECU等に接続される配線31の端部に設けられた他のコネクタ30を接続させて、着座センサ10とECUとを電気的に接続する。
【0041】
上述のように取り付けられた着座センサ10を含むシートクッション1に乗員が着座した場合には、検知ポイントに大きな負荷F1が作用する。負荷F1は、クッションパッド2と共に着座センサ10の特に右側配線部14及び左側配線部15に作用する。このとき、着座センサ10は、主に右側配線部14の右側貫通穴5内に位置する部分と、左側配線部15の左側貫通穴6内に位置する部分が下方に押し下げられる(
図4中の矢印M1参照)ように動作する。ここで、右側配線部14及び左側配線部15の他端部と、合流配線部16の一端側とは、いずれもクッションパッド2には固定されていない部分であるため、下方に撓むことができる。また、前述した撓みは各配線部の平坦面に沿って撓むことになるため、電線の断線等が起きにくい。したがって、耐久性の高い着座センサ10を提供することができる。
【0042】
以上説明した通り、本実施の形態に係るシートクッション1によれば、クッションパッド2に中央吊り溝41が形成されている場合であっても、着座センサ10の配線部13を、中央吊り溝41を横断させることなく、配索させることができる。したがって、配線部13の断線を抑制することができる。また、着座センサ10の検知部を臀部に合わせて左右に二つずつ配置できるため、乗員の着座を精度良く検知することができる。
【0043】
また、右側配線部14と左側配線部15とを、クッションパッド2の裏面側で合流させる構造としたことで、乗員からの応力によって配線部13に局所的な負荷が発生することがなく、配線部の断線をより効果的に抑制することができる。
【0044】
さらに、右側貫通穴5及び左側貫通穴6のクッションパッド2の表面側の開口形状がスリット状となっているため、乗員がシートクッション1の表面から触れた際に右側貫通穴5及び左側貫通穴6の存在に気付きにくい。したがって、右側及び左側貫通穴5、6が乗員の指等で故意に押されることで表皮3にシワ等が発生することを少なくすることができる。
【0045】
さらにまた、
図2及び
図4に示すクッションパッド2の表面は概ね平坦なものが例示されているが、着座センサ10の右側配線部14及び左側配線部15が設置される位置に凹部を設けてもよい。当該凹部を設けると、クッションパッド2の表面と右側配線部14及び左側配線部15の表面とが滑らかに連続する面とすることができ、乗員がシートクッション1の表面から触れた際に着座センサ10の存在に気付きにくくなる。したがって、着座センサ10が故意に押されるあるいは引っ張られるといったことを少なくすることができる。
【0046】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 シートクッション
2 クッションパッド
3 表皮
4 吊り溝
41 中央吊り溝
5 右側貫通穴
6 左側貫通穴
10 着座センサ(センサ装置の一例)
11 右側検知部
12 左側検知部
13 配線部
14 右側配線部
15 左側配線部
16 合流配線部
17 固定部
18 補強テープ(補強部材の一例)
20 コネクタ
C クリップ