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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140586
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F02D19/08 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051780
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】上田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小暮 涼介
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB05
3G092AB08
3G092AB14
3G092AB19
3G092BB01
3G092BB20
3G092EA02
3G092EC09
3G092FA15
3G092GA11
3G092HB01Z
3G092HC01Z
3G092HD04Z
3G092HE01Z
3G092HE06Z
3G092HF08Z
(57)【要約】
【課題】内燃機関の制御装置および方法において、燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過することを抑制する。
【解決手段】所定の着火性を有する第1燃料と前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関において、内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出部と、運転状態検出部が検出した内燃機関の運転状態に基づいて燃焼室に供給する第1燃料と第2燃料の供給量を制御する制御部と、を備え、制御部は、運転状態検出部が内燃機関の過渡運転状態を検出すると、燃焼室に供給する第2燃料の供給量を減少させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の着火性を有する第1燃料と前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関において、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出部と、
前記運転状態検出部が検出した前記内燃機関の運転状態に基づいて前記燃焼室に供給する前記第1燃料と前記第2燃料の供給量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記運転状態検出部が前記内燃機関の過渡運転状態を検出すると、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させる、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記運転状態検出部が前記内燃機関の過渡運転状態を検出すると、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させると共に、前記燃焼室に供給する前記第1燃料の供給量を増加させる、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記運転状態検出部が前記内燃機関の過渡運転状態を検出し、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させると共に、前記燃焼室に供給する前記第1燃料の供給量を増加させるとき、前記過渡運転状態に応じて設定された燃料の熱量を維持する、
請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関の回転数に応じて前記第2燃料の混焼率が設定される混焼率マップが設定され、前記制御部は、前記運転状態検出部が前記内燃機関の定常運転状態を検出すると、混焼率マップに基づいて前記燃焼室に供給する前記第1燃料の供給量と前記第2燃料の供給量を設定し、前記運転状態検出部が前記内燃機関の過渡運転状態を検出すると、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を0とする、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記運転状態検出部は、空気過剰率を検出し、前記制御部は、前記空気過剰率が予め設定された適正範囲以下になると、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させる、
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
所定の着火性を有する第1燃料と前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関において、
前記内燃機関の運転状態を検出するステップと、
前記内燃機関の運転状態に基づいて燃焼室に供給する前記第1燃料と前記第2燃料の供給量を制御するステップと、
前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態になると前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させるステップと、
を有する内燃機関の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、燃焼室の高圧空気に燃料を噴射することで燃焼し、発生した燃焼エネルギにより駆動する。近年、内燃機関に適用される燃料として、有害物質(例えば、二酸化炭素など)の発生量が少ないカーボンフリーの燃料を使用することが考えられている。ところが、カーボンフリーの燃料には、着火性や燃焼性が悪いものがあり、着火性や燃焼性の良い燃料と併用することが提案されている。複数種類の燃料を使用する内燃機関として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載されたディーゼルエンジンは、燃焼室に燃料油とアンモニアを供給可能とし、空気過剰率を燃料油のみによる運転時より低くするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-188574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、軽油などの第1燃料と、第1燃料より着火性や燃焼性が悪いアンモニアなどの第2燃料を使用する内燃機関は、定常運転時に燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過しないように、アンモニア予混合気の空気過剰率が適正値になるように設計されていたり、制御したりしている。ところが、内燃機関の高負荷運転時に、例えば、過給機の回転数が追従せずに空気量が減少すると、第2燃料の噴射割合が多くなって空気過剰率が低くなり、筒内圧が超過してしまうおそれがある。また、空気過剰率が低くなると、排気通路に設けられた触媒における酸素量が不足し、未燃のアンモニアを処理することが困難となるおそれもある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過することを抑制する内燃機関の制御装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の内燃機関の制御装置は、所定の着火性を有する第1燃料と前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関において、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出部と、前記運転状態検出部が検出した前記内燃機関の運転状態に基づいて前記燃焼室に供給する前記第1燃料と前記第2燃料の供給量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記運転状態検出部が前記内燃機関の過渡運転状態を検出すると、前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させる。
【0008】
また、本開示の内燃機関の制御方法は、所定の着火性を有する第1燃料と前記第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関において、前記内燃機関の運転状態を検出するステップと、前記内燃機関の運転状態に基づいて燃焼室に供給する前記第1燃料と前記第2燃料の供給量を制御するステップと、前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態になると前記燃焼室に供給する前記第2燃料の供給量を減少させるステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の内燃機関の制御装置および方法によれば、燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の内燃機関の制御装置を表すブロック構成図である。
図2図2は、内燃機関の燃焼室を表す断面図である。
図3図3は、第2燃料の混焼率を表す制御マップである。
図4図4は、本実施形態の内燃機関の制御方法を表すフローチャートである。
図5図5は、従来の燃料供給制御と本実施形態の燃料供給制御とを比較するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
<内燃機関>
図1は、第1実施形態の内燃機関の制御装置を表すブロック構成図である。
【0013】
図1に示すように、内燃機関10は、内燃機関本体11と、吸気経路12と、排気経路13と、第1燃料供給装置14と、第2燃料供給装置15と、過給機16と、制御装置17とを備える。
【0014】
内燃機関本体11は、多気筒式エンジンである。内燃機関本体11は、複数(本実施形態では、6個)の燃焼室21を有し、各燃焼室21の各吸気ポート12aに吸気経路12が接続され、各燃焼室21の各排気ポート13aに排気経路13が接続される。吸気経路12は、外部から吸入した空気を各吸気ポート12aから各燃焼室21に供給する。排気経路13は、各燃焼室21で燃焼した燃焼ガス、つまり、排ガスを各排気ポート13aから排出される。
【0015】
第1燃料供給装置14は、第1燃料を燃焼室21に供給する。第1燃料供給装置14は、第1燃料タンク31と、第1燃料ポンプ32と、第1燃料噴射弁33と、第1燃料供給経路34とを有する。第1燃料タンク31は、第1燃料を貯留する。第1燃料噴射弁33は、内燃機関本体11に各燃焼室21に対応して設けられ、各燃焼室21に第1燃料を噴射可能である。第1燃料供給経路34は、第1燃料タンク31と各第1燃料噴射弁33とを接続する。第1燃料ポンプ32は、第1燃料供給経路34に設けられ、第1燃料を所定の噴射圧力まで加圧する。
【0016】
第2燃料供給装置15は、第2燃料を燃焼室21に供給する。第2燃料供給装置15は、第2燃料タンク36と、第2燃料ポンプ37と、第2燃料噴射弁38と、第2燃料供給経路39とを有する。第2燃料タンク36は、第2燃料を貯留する。第2燃料噴射弁38は、内燃機関本体11に各吸気ポート12aに対応して設けられ、各吸気ポート12aに第2燃料を噴射可能である。第2燃料供給経路39は、第2燃料タンク36と各第2燃料噴射弁38とを接続する。第2燃料ポンプ37は、第2燃料供給経路39に設けられ、第2燃料を所定の噴射圧力まで加圧する。
【0017】
ここで、第1燃料は、所定の着火性(燃焼性)を有するものである。第2燃料は、第1燃料より着火性(燃焼性)の低いものである。本実施形態にて、第1燃料は、例えば、軽油であり、第2燃料は、例えば、アンモニアである。アンモニアは、炭化水素燃料に比べて、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量が少ないカーボンフリー燃料である。但し、第1燃料と第2燃料は、軽油とアンモニアに限定されるものではない。第2燃料は、メタノールや天然ガスなどであってもよい。
【0018】
図2は、内燃機関の燃焼室を表す断面図である。
【0019】
図2に示すように、内燃機関本体11は、燃焼室21が設けられ、燃焼室21に吸気経路12が接続されると共に、排気経路13が接続される。燃焼室21は、円柱形状をなす空間部であり、円柱形状をなすピストン22が移動自在に支持される。内燃機関本体11は、図示しないが、下部にクランクシャフトが回転自在に支持され、ピストン22とクランクシャフトがコネクティングロッドを介して連結される。
【0020】
燃焼室21は、内燃機関本体11とピストン22とより区画された空間である。燃焼室21は、吸気ポート12aを介して吸気経路12に連通すると共に、排気ポート13aを介して排気経路13に連通する。吸気ポート12aは、吸気弁23の下端部が配置され、排気ポート13aは、排気弁24の下端部が配置される。吸気弁23および排気弁24は、内燃機関本体11に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、付勢部材(図示略)により吸気ポート12aおよび排気ポート13aを閉止する方向に付勢される。吸気弁23および排気弁27は、図示しない吸気カムおよび排気カムが作用することで、吸気ポート12aおよび排気ポート13aを開閉する。
【0021】
内燃機関本体11は、燃焼室21の上方に第1燃料噴射弁33が配置される。第1燃料噴射弁33は、所定のタイミングで燃焼室21に高圧の第1燃料を噴射する。また、内燃機関本体11は、吸気ポート12aの近傍に第2燃料噴射弁38が配置される。第2燃料噴射弁38は、所定のタイミングで吸気ポート12aに高圧の第2燃料を噴射する。
【0022】
図1に戻り、過給機16は、コンプレッサ41とタービン42とが回転軸43により一体に回転するように連結されて構成される。コンプレッサ41は、吸気経路12に配置され、タービン42は、排気経路13に配置される。過給機16は、排気経路13を流れる排ガスによりタービン42が回転し、タービン42の回転が回転軸43によりコンプレッサ41に伝達されて回転し、コンプレッサ41が空気を圧縮して吸気経路12に供給する。
【0023】
本実施形態にて、内燃機関10は、過給機16を有するものとして構成したが、過給機16がなくてもよい。また、排気経路13は、排気バイパス装置が設けられていてもよい。排気バイパス装置は、タービン42を迂回するバイパス通路にウエストゲートバルブが設けられて構成される。排気バイパス装置は、吸気通路における吸気圧に応じてバイパス通路を開閉し、タービン42に供給する排ガス量を調整する。
【0024】
また、吸気経路12は、インタークーラ46が装着される。さらに、排気経路13は、SCR触媒(選択触媒還元脱硝装置)47と、ASC触媒(アンモニアスリップ触媒)48が設けられる。SCR触媒47は、排ガス中の酸化窒素(NOx)などを除去する。ASC触媒48は、排ガス中のアンモニア(NH3)などを除去する。
【0025】
図1および図2に示すように、内燃機関10は、吸気経路12から燃焼室21に空気が供給されると、ピストン22の上昇により空気が圧縮される。また、第1燃料供給装置14により第1燃料が燃焼室21に供給され、第2燃料供給装置15により第2燃料が吸気ポート12aに供給される。燃焼室21にて、第1燃料と第2燃料に点火されると、燃料と空気が燃焼し、ピストン22を作動させる。燃焼室21で発生した燃焼ガスは、排ガスとして排気経路13に排出される。また、燃焼室21から排気経路13に排出された排ガスは、過給機16におけるタービン42を回転させることで、回転軸43を介してコンプレッサ41を回転して空気を圧縮し、吸気経路12により燃焼室21に対して過給を行う。
【0026】
<内燃機関の制御装置>
図1に示すように、制御装置17は、内燃機関本体11を制御する。具体的に、制御装置17は、燃料噴射弁33,38の開閉時期、燃料噴射弁33,38による燃料噴射量(燃料噴射弁の開放期間)、吸気弁23および排気弁24による吸気ポート12aおよび排気ポート13aの開閉時期などを制御する。
【0027】
制御装置17は、制御部51と、運転状態検出部52と、記憶部53とを有する。制御部51は、第1燃料噴射弁33および第2燃料噴射弁38に接続される。制御部51は、運転状態検出部52と記憶部53とが接続される。また、吸気経路12は、インタークーラ46より下流側に吸気圧センサ54が設けられる。吸気圧センサ54は、制御部51に接続される。
【0028】
運転状態検出部52は、内燃機関本体11の運転状態を検出し、検出した内燃機関本体11の運転状態を制御部51に出力する。記憶部53は、内燃機関本体11を制御するために必要なプログラムが記憶される。吸気圧センサ54は、吸気経路12を流れる空気の圧力を検出し、検出した空気の圧力を制御部51に出力する。
【0029】
ここで、制御部51は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部53に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0030】
制御部51は、運転状態検出部52が検出した内燃機関本体11の運転状態に基づいて燃焼室21に供給する第1燃料と第2燃料の供給量を制御する。すなわち、制御部51は、運転状態検出部52が検出した内燃機関本体11の運転状態に基づいて、第1燃料噴射弁33を制御して燃焼室21に供給する第1燃料の供給量を調整すると共に、第2燃料噴射弁38を制御して燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を調整する。
【0031】
また、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させる。具体的に、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させると共に、燃焼室21に供給する第1燃料の供給量を増加させる。
【0032】
制御部51は、内燃機関本体11の運転状態(運転負荷)に基づいて燃料噴射量、つまり、熱量が設定され、第1燃料の噴射量と第2燃料の噴射量が設定される。このとき、内燃機関本体11が過渡運転状態であると、燃料の熱量を維持したままで、第2燃料の噴射量を減少させ、第1燃料の噴射量を増加させる。
【0033】
図3は、第2燃料の混焼率を表す制御マップである。
【0034】
図3に示すように、燃料の混焼率を表す制御マップは、内燃機関本体11の回転数と要求燃料量に対する第2燃料の混焼率であり、第2燃料の混焼率とは、燃焼室21に供給する燃料の全量に対する第2燃料の割合である。第2燃料の混焼率は、内燃機関本体11の回転数が上昇するのに伴って高くなるように設定される。なお、図3に示す制御マップの混焼率は、第1燃料および第2燃料における熱量換算の混焼率である。
【0035】
図1に示すように、第2燃料の混焼率を表す制御マップ(混焼率マップ)は、記憶部53に記憶される。制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の定常運転状態を検出すると、混焼率マップに基づいて燃焼室21に供給する第1燃料の供給量と第2燃料の供給量を設定する。また、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、混焼率マップを使用せずに、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量(混焼率)を0とする。
【0036】
なお、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量(混焼率)を0としたが、この構成に限定されるものではない。例えば、図3に示す燃料の混焼率を表す制御マップに対して、第2燃料の混焼率を所定割合だけ減少させた第2混焼率マップを設定し、第2混焼率マップを記憶部53に記憶させ、制御部51が記憶部53の第2混焼率マップに基づいて燃焼室21に供給する第2燃料の供給量(混焼率)を設定してもよい。
【0037】
また、上述した過渡運転状態とは、内燃機関本体11が通常より高い負荷で運転されている状態である。運転状態検出部52は、内燃機関本体11の負荷が予め設定された判定値より高いとき、内燃機関本体11が高負荷運転状態、つまり、過渡運転状態であると判定する。具体的に、運転状態検出部52は、実際の内燃機関本体11の負荷状態や負荷の指示値に基づいて判定する。ここで、負荷は、アクセル開度、回転数、燃料噴射量、出力、筒内圧などの実測値や指示値であり、負荷変動は、これらの変化率である。また、負荷変動は、環境条件変化であってもよい。
【0038】
また、内燃機関本体11の負荷は、空気過剰率であってもよい。すなわち、運転状態検出部52は、内燃機関本体11の空気過剰率を検出するセンサであり、制御部51は、空気過剰率が予め設定された適正範囲以下になると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させるようにしてもよい。
【0039】
<内燃機関の制御方法>
図4は、本実施形態の内燃機関の制御方法を表すフローチャートである。
【0040】
図1および図4に示すように、ステップS11にて、制御部51は、運転状態検出部52の検出結果に基づいて内燃機関本体11が過渡運転状態であるか否かを判定する。ここで、制御部51は、内燃機関本体11が過渡運転状態ではないと判定(No)すると、ステップS12に移行し、内燃機関本体11が過渡運転状態であると判定(Yes)すると、ステップS16に移行する。
【0041】
内燃機関本体11が過渡運転状態ではないとき、ステップS12にて、制御部51は、混焼率マップ(図3参照)を用いて第2燃料の混焼率を設定する。一方、内燃機関本体11が過渡運転状態であるとき、ステップS16にて、制御部51は、第2燃料の混焼率を0に設定する。但し、内燃機関本体11が過渡運転状態であるとき、前述したように、第2混焼率マップを用いて第2燃料の噴射量が低減するように混焼率を設定してもよい。
【0042】
ステップS13にて、制御部51は、ステップS12,S16の処理結果に基づいて熱量換算での実効混焼率を設定する。ステップS14にて、制御部51は、実効混焼率に応じて全体の燃料噴射量を算出する。ステップS15にて、制御部51は、だ1燃料噴射量と第2燃料噴射量を算出する。
【0043】
図5は、従来の燃料供給制御と本実施形態の燃料供給制御とを比較するための説明図である。図5にて、従来の燃料供給制御を点線で表し、本実施形態の燃料供給制御を実線で表す。
【0044】
図1および図5に示すように、時間t1にて、第1燃料と第2燃料を合計した燃料噴射量が上昇すると、内燃機関本体11は、過渡運転状態になる。このとき、従来の燃料供給制御では、吸入空気量が減少して第2燃料の空気過剰率が低下する。そして、時間の経過と共に吸入空気量が増加してくることから、空気過剰率が増加して適正値に復帰する。その後、時間t2にて、内燃機関本体11は、定常運転状態になる。
【0045】
一方、本実施形態の燃料供給制御では、時間t1にて、内燃機関本体11が過渡運転状態になると、第2燃料の燃料噴射量を減少させると共に、第1燃料の燃料噴射量を増加させる。そのため、空気過剰率の低下が抑制される。その後、時間t2にて、内燃機関本体11は、定常運転状態になる。そのため、第2燃料の空気過剰率の低下による燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧の超過が抑制される。
【0046】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る内燃機関の制御装置は、所定の着火性を有する第1燃料と第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室21に供給する内燃機関10において、内燃機関本体11の運転状態を検出する運転状態検出部52と、運転状態検出部52が検出した内燃機関本体11の運転状態に基づいて燃焼室21に供給する第1燃料と第2燃料の供給量を制御する制御部51とを備え、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させる。
【0047】
第1の態様に係る内燃機関の制御装置によれば、内燃機関本体11が過渡運転状態になり、吸入空気量が減少すると、第2燃料の空気過剰率が低くなって筒内圧が超過してしまうおそれがある。しかし、制御部51は、内燃機関本体11が渡運転状態になると、第2燃料の供給量を減少させることから、第2燃料の空気過剰率の低下が抑制される。その結果、内燃機関本体11における燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過することを抑制することができる。また、空気過剰率の低下が抑制されることから、排気経路13に設けられたSCR触媒47やASC触媒48における酸素量不足が抑制され、有害物質の排出を適切に抑制することができる。
【0048】
第2の態様に係る内燃機関の制御装置は、第1の態様に係る内燃機関の制御装置であって、さらに、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させると共に、燃焼室21に供給する第1燃料の供給量を増加させる。これにより、燃第2燃料の供給量の減少に対して第1燃料の供給量が増加するため、内燃機関本体11の出力の低下を抑制することができる。
【0049】
第3の態様に係る内燃機関の制御装置は、第2の態様に係る内燃機関の制御装置であって、さらに、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出し、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させると共に、燃焼室21に供給する第1燃料の供給量を増加させるとき、過渡運転状態に応じて設定された燃料の熱量を維持する。これにより、内燃機関本体11における出力の変動を抑制することができる。
【0050】
第4の態様に係る内燃機関の制御装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る内燃機関の制御装置であって、さらに、内燃機関本体11の回転数に応じて第2燃料の混焼率が設定される混焼率マップが設定され、制御部51は、運転状態検出部52が内燃機関本体11の定常運転状態を検出すると、混焼率マップに基づいて燃焼室21に供給する第1燃料の供給量と第2燃料の供給量を設定し、運転状態検出部52が内燃機関本体11の過渡運転状態を検出すると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を0とする。これにより、制御の簡素化を図ることができる。
【0051】
第5の態様に係る内燃機関の制御装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る内燃機関の制御装置であって、さらに、運転状態検出部52は、空気過剰率を検出し、制御部51は、空気過剰率が予め設定された適正範囲以下になると、燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させる。これにより、制御部51が空気過剰率を直接検出することで、内燃機関本体11における燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過を適切に抑制することができる。
【0052】
第6の態様に係る内燃機関の制御方法は、所定の着火性を有する第1燃料と第1燃料より着火性の低い第2燃料を燃焼室に供給する内燃機関10において、内燃機関本体11の運転状態を検出するステップと、内燃機関本体11の運転状態に基づいて燃焼室21に供給する第1燃料と第2燃料の供給量を制御するステップと、内燃機関本体11の運転状態が過渡運転状態になると燃焼室21に供給する第2燃料の供給量を減少させるステップとを有する。これにより、空気過剰率の低下が抑制され、内燃機関本体11における燃焼速度の急上昇や過早着火により筒内圧が超過することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 内燃機関
11 内燃機関本体
12 吸気経路
13 排気経路
14 第1燃料供給装置
15 第2燃料供給装置
16 過給機
17 制御装置
21 燃焼室
31 第1燃料タンク
32 第1燃料ポンプ
33 第1燃料噴射弁
34 第1燃料供給経路
36 第2燃料タンク
37 第2燃料ポンプ
38 第2燃料噴射弁
39 第2燃料供給経路
51 制御部
52 運転状態検出部
53 記憶部
54 吸気圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5