(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140589
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/12 20060101AFI20241003BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65H5/12 B
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 125
B65H5/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051787
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】記村 和芳
【テーマコード(参考)】
2C056
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB46
2C056EC12
2C056EC14
2C056EC33
2C056EC40
2C056FA13
2C056FA14
2C056HA29
2C056HA30
2C056HA46
2C056HA47
3F049AA01
3F049FB05
3F049LA06
3F049LB01
3F101CA14
3F101CE01
3F101CE29
3F101LA06
3F101LB01
(57)【要約】
【課題】記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図る。
【解決手段】インクジェット記録装置1Aは、印刷胴10、記録媒体Sを前記印刷胴に供給する供給部、インクジェットヘッド、ガイド部100および吸着機構を備える。印刷胴10は、外周面11上に記録媒体Sが載置された状態で回転して記録媒体Sを搬送する。ガイド部100は、記録媒体Sの搬送経路上における、供給部から記録媒体Sが供給される位置と、インクジェットヘッドからインクが吐出される位置との間に位置し、かつ外周面11に距離をもって対向配置され、外周面11から浮き上がった記録媒体Sが当接することで、記録媒体Sを外周面11に密着させる。吸着機構は、記録媒体Sがガイド部100を通過した後の位置で記録媒体Sの吸着保持を開始する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する印刷胴と、
記録媒体を前記印刷胴に供給する供給部と、
前記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備え、
前記印刷胴は、前記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で前記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を前記印刷胴の回転方向に向けて搬送し、
前記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、前記供給部から記録媒体が供給される位置と、前記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、前記外周面に距離をもって対向配置され、前記外周面から浮き上がった記録媒体が当接することにより、当該記録媒体を前記外周面に密着させるためのガイド部と、
前記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備え、
前記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、前記搬送経路上において記録媒体が前記ガイド部を通過した後の位置において開始する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記外周面に接近および離間する第1方向に沿って移動可能に構成され、
前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量および厚みのうちの少なくともいずれかを検知するための検知部と、
前記ガイド部の前記第1方向に沿った移動を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部が、前記検知部によって検知された検知情報に基づいて、前記ガイド部の前記第1方向における位置を制御する、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知部によって検知された検知情報に基づいて、前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が第1所定値未満であるか、または、記録媒体の厚みが第2所定値未満であると判断した場合に、前記ガイド部を第1位置に配置された状態とし、前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が前記第1所定値以上であるか、または、記録媒体の厚みが前記第2所定値以上であると判断した場合に、前記ガイド部を、前記第1方向において前記第1位置よりも前記外周面から離間した位置である第2位置に配置された状態とする、請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記第1位置は、前記インクジェットヘッドと前記外周面との間の距離の1/2だけ前記外周面から離間した位置である、請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ガイド部は、ローラであり、
前記ローラは、軸方向における中央部の外径が両端部の外径よりも大きい、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記ローラが、前記搬送経路上における記録媒体の搬送方向に沿って、前記印刷胴の回転速度と略同一速度で回転している、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記吸着機構は、記録媒体を吸着保持するにあたり、前記ローラの前記中央部に対向配置される部分の記録媒体から吸着を開始した後に、前記ローラの前記両端部に対向配置される部分の記録媒体に向けて順次吸着領域を拡大するように構成されている、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記供給部は、前記記録媒体を加熱するとともに当該記録媒体を前記印刷胴に繰り出す加熱胴を含み、
前記ガイド部の表面温度が、前記加熱胴の表面温度と略同一に維持される、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
記録媒体を搬送する印刷胴と、
記録媒体を前記印刷胴に供給する供給部と、
前記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備え、
前記印刷胴は、前記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で前記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を前記印刷胴の回転方向に向けて搬送し、
前記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、前記供給部から記録媒体が供給される位置と、前記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、前記外周面に距離をもって対向配置され、前記外周面から浮き上がった記録媒体に向けて気流を吹き付けることにより、当該記録媒体を前記外周面に密着させるための気流吹き付け機構と、
前記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備え、
前記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、前記搬送経路上において記録媒体が前記気流吹き付け機構を通過した後の位置において開始する、インクジェット記録装置。
【請求項10】
前記気流吹き付け機構は、前記印刷胴による記録媒体の搬送方向における下流側から上流側に向けて記録媒体に気流を吹き付ける、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記気流吹き付け機構は、記録媒体への気流の吹き付けを行なう吹き付け状態と、記録媒体への気流の吹き付けを行なわない非吹き付け状態とに切り換え可能に構成され、
前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量および厚みのうちの少なくともいずれかを検知するための検知部と、
前記気流吹き付け機構の前記吹き付け状態および前記非吹き付け状態の切り換えを制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部が、前記検知部によって検知された検知情報に基づいて、前記気流吹き付け機構の前記吹き付け状態および前記非吹き付け状態の切り換えを制御する、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記検知部によって検知された検知情報に基づいて、前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が第1所定値未満であるか、または、記録媒体の厚みが第2所定値未満であると判断した場合に、前記気流吹き付け機構を前記吹き付け状態とし、前記供給部から前記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が前記第1所定値以上であるか、または、記録媒体の厚みが前記第2所定値以上であると判断した場合に、前記気流吹き付け機構を前記非吹き付け状態とする、請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記気流吹き付け機構は、記録媒体が載置されている部分の前記外周面の法線方向および前記回転方向のいずれにも直交する方向において、記録媒体の中央部に吹き付けられる気流の風量が両端部に吹き付けられる気流の風量よりも大きくなるように、記録媒体に気流を吹き付ける、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記吸着機構は、記録媒体を吸着保持するにあたり、記録媒体の中央部から吸着を開始した後に、記録媒体の両端部に向けて順次吸着領域を拡大するように構成されている、請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記供給部は、前記記録媒体を加熱するとともに当該記録媒体を前記印刷胴に繰り出す加熱胴を含み、
前記気流吹き付け機構によって記録媒体に吹き付けられる気流の温度が、前記加熱胴の表面温度と略同一である、請求項9に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙等の記録媒体にインクを吐出して記録媒体に印刷を行なうインクジェット記録装置が知られている。この種のインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送するための印刷胴を備えており、記録媒体への印刷は、印刷胴によって搬送される記録媒体に向けてインクジェットヘッドがインクを吐出し、その後にインク固化装置がこのインクを固化することで行なわれる。
【0003】
また、この種のインクジェット記録装置は、印刷胴に記録媒体を供給する供給部を備えている。供給部は、印刷胴によって搬送される記録媒体を予め加熱しておくための加熱胴を含んでいる。加熱胴は、給紙機構から給紙された記録媒体を加熱し、その後にこれを印刷胴に繰り出す。印刷胴の外周面には、複数の貫通孔が設けられている。印刷胴は、その内部に向けて真空引きを行なうことにより、加熱胴から繰り出された記録媒体を吸着保持する。
【0004】
ここで、皺が生じている状態の記録媒体に印刷が施された場合には、印刷画質が劣化するという問題が生じる。このような皺は、記録媒体が加熱胴や印刷胴によって加熱されることで当該記録媒体において熱膨張が継続的に進行したり、記録媒体の局部において熱膨張のばらつきが生じたりすることにより、記録媒体に生じる場合がある。また、このような皺は、加熱胴から印刷胴への記録媒体の移載等の際に、わずかに移載のタイミングがずれることによっても生じる場合がある。
【0005】
この点、たとえば特開2013-241272号公報(特許文献1)に開示されたインクジェット記録装置にあっては、印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、加熱胴による印刷胴の繰り出しが行なわれる位置の下流側の位置に、押し当てローラが設けられている。押し当てローラは、当該位置において印刷胴に対向配置されており、記録媒体を印刷胴の外周面に向けて押し当てることで記録媒体を当該外周面と押し当てローラとの間に挟み込むことにより、記録媒体に生じている皺を延ばすものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたインクジェット記録装置の押し当てローラを用いた場合においては、記録媒体に生じた皺を十分に延ばせないばかりでなく、却って、当該押し当てローラによる押し当てによって記録媒体に皺の折れ跡が残ることがある。
【0008】
したがって、本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に基づくインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する印刷胴と、記録媒体を前記印刷胴に供給する供給部と、上記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備えている。上記印刷胴は、上記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で上記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を上記印刷胴の回転方向に向けて搬送する。上記本発明の第1の局面に基づくインクジェット記録装置は、ガイド部と、上記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備えている。上記ガイド部は、上記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、上記供給部から記録媒体が供給される位置と、上記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、上記外周面に距離をもって対向配置され、上記外周面から浮き上がった記録媒体が当接することにより、当該記録媒体を上記外周面に密着させるためのものである。上記本発明の第1の局面に基づくインクジェット記録装置にあっては、上記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、上記搬送経路上において記録媒体が上記ガイド部を通過した後の位置において開始する。
【0010】
本発明の第2の局面に基づくインクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する印刷胴と、記録媒体を前記印刷胴に供給する供給部と、上記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備えている。上記印刷胴は、上記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で上記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を上記印刷胴の回転方向に向けて搬送する。上記本発明の第2の局面に基づくインクジェット記録装置は、気流吹き付け機構と、上記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備えている。上記気流吹き付け機構は、上記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、上記供給部から記録媒体が供給される位置と、上記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、上記外周面に距離をもって対向配置され、上記外周面から浮き上がった記録媒体に向けて気流を吹き付けることにより、当該記録媒体を上記外周面に密着させるためのものである。上記本発明の第2の局面に基づくインクジェット記録装置にあっては、上記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、上記搬送経路上において記録媒体が上記気流吹き付け機構を通過した後の位置において開始する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット記録装置の機能ブロックの構成を示す図である。
【
図3】ガイド部を通過する前の記録媒体を示す模式図である。
【
図4】制御部で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【
図5】
図3に示す記録媒体をその搬送方向と直交する方向から見た模式図である。
【
図6】
図3に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た模式図である。
【
図7】ガイド部を通過中の記録媒体を示す模式図である。
【
図8】
図7に示す記録媒体をその搬送方向と直交する方向から見た模式図である。
【
図9】
図7に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た模式図である。
【
図10】ガイド部を通過後の記録媒体を示す模式図である。
【
図11】
図10に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た模式図である。
【
図12】実施の形態2に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。
【
図13】気流吹き付け機構による記録媒体への気流の吹き付けの様子を示す模式図である。
【
図14】第1変形例に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
(実施の形態1)
<A.実施の形態1に係るインクジェット記録装置の概略的な構成>
図1は、実施の形態1に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。
図2は、
図1に示すインクジェット記録装置の機能ブロックの構成を示す図である。まず、
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aの概略的な構成について説明する。
【0015】
図1および
図2に示すように、インクジェット記録装置1Aは、印刷胴10と、複数のインクジェットヘッド20と、複数の搬送胴40と、供給部50と、排出部60と、第1ヒータ71と、第2ヒータ72と、制御部90とを備えている。
【0016】
印刷胴10は、略円筒形状を有している。印刷胴10は、その外周面11上に記録媒体Sが載置された状態で軸線回りに回転する。これにより、印刷胴10は、その回転方向に向けて記録媒体Sを搬送する。印刷胴10は、図示しないモータ等の回転駆動部によって回転駆動する。記録媒体Sとしては、たとえばPETフィルム、PPフィルム、PEフィルム等の樹脂フィルム、普通紙等が用いられる。
【0017】
印刷胴10は、その大部分が金属製の部材からなる。印刷胴10の外周面11には、貫通孔が複数設けられている。この貫通孔の孔径は、たとえば1mmとされる。
【0018】
印刷胴10の外周面11には、金属製シートが宛がわれている。金属製シートには、貫通孔が複数設けられている。貫通孔の孔径は、たとえば0.2mmとされる。金属製シートは、たとえばステンレス鋼等の金属からなり、その厚みは、好適には0.1mmとされる。
【0019】
金属製シートには、複数の非金属製シートが宛がわれている。非金属製シートは、断熱材として用いられるものである。複数の非金属製シートは、金属製シートの周方向における所定領域に宛がわれている。本実施の形態においては、同一形状の3つの非金属製シートが、印刷胴10の軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。記録媒体Sは、非金属製シート上に載置された状態で印刷胴10によって搬送される。
【0020】
非金属製シートには、貫通孔が複数設けられている。この貫通孔の孔径は、0.2mm以上1mm以下であることが好ましく、より好適には、0.3mm以上0.9mm以下とされる。非金属製シートは、たとえばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等の樹脂製のゴムからなる。非金属製シートの厚みは、0.07mm以上0.5mm以下であることが好ましく、より好適には、0.1mm以上0.3mm以下とされる。
【0021】
金属製シートと非金属製シートとが宛がわれている部分の印刷胴10の外周面11は、非金属製シートによって規定されている。金属製シートのみが宛がわれている部分の外周面11は、金属製シートによって規定されている。
【0022】
金属製シートに断熱材としての非金属製シートを宛がうことにより、第1ヒータ71等による加熱、および、真空引きすることで生じる対流による冷却等に起因して外周面11に温度のムラが生じることが抑制される。これにより、印刷画質の向上を図ることができる。
【0023】
印刷胴10の外周面11には、爪形状を有する複数の摘まみ部12が設けられている。摘まみ部12は、後述する加熱胴53から印刷胴10に繰り出された記録媒体Sの先端を摘まむものである。印刷胴10は、摘まみ部12によって記録媒体Sの先端を摘まむことにより、記録媒体Sを印刷胴10の回転方向に向けて搬送することができる。本実施の形態においては、3つの摘まみ部12が、印刷胴10の軸方向に沿って見た場合に120°の回転対称位置に配置されている。
【0024】
印刷胴10は、その内部空間に設けられた吸着機構13を有している。本実施の形態においては、吸着機構13として真空装置が用いられている。
【0025】
このように構成された印刷胴10にあっては、吸着機構13を作動させて印刷胴10の内部に向けて真空引きを行なうことにより、印刷胴10の外周面11上に載置された記録媒体Sを外周面11において吸引保持することが可能になる。
【0026】
複数のインクジェットヘッド20は、印刷胴10によって搬送された記録媒体Sにインクを吐出することで記録媒体Sに印刷を施すものである。複数のインクジェットヘッド20は、印刷胴10に対向配置されている。本実施の形態においては、4つのインクジェットヘッド20が、印刷胴10の回転方向に沿って互いに並んで位置している。4つのインクジェットヘッド20は、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)およびK(ブラック)のインクを吐出する。
【0027】
複数の搬送胴40は、印刷胴10と共に記録媒体Sを搬送するものである。本実施の形態においては、5つの搬送胴40が所定の位置に配置されている。5つの搬送胴40は、それぞれ軸線回りに回転している。記録媒体Sは、印刷胴10、後述する加熱胴53および5つの搬送胴40がそれぞれ回転することによって規定される搬送経路に沿って搬送される。
【0028】
供給部50は、搬送経路を規定する印刷胴10等に記録媒体Sを供給するものである。供給部50は、給紙トレイ51と、搬送ベルト52と、搬送ローラ(不図示)およびこれを駆動するモータ(不図示)と、加熱胴53と、検知部54とを有している。
【0029】
加熱胴53は、搬送ベルト52から給紙される記録媒体Sを加熱するとともにこれを印刷胴10に繰り出すものである。
【0030】
加熱胴53は、略円筒形状のものである。加熱胴53は、その軸線回りに回転することで記録媒体Sを印刷胴10に繰り出す。
【0031】
加熱胴53は、加熱手段を有している。これにより、加熱胴53の表面は相当程度に加熱されている。加熱手段としては、たとえば、ハロゲンランプ等が用いられる。
【0032】
このように構成された加熱胴53は、その外周面に載置された記録媒体Sを所定の温度にまで加熱することができる。加熱胴53を用いて記録媒体Sの温度を適切に管理することにより、インクジェットヘッド20による印刷画質の向上が図られている。
【0033】
検知部54は、記録媒体Sの坪量および厚みのうちの少なくともいずれかを検知するためのものである。検知部54は、これらの記録媒体Sに関する情報を、インクジェット記録装置1Aに設けられた操作パネルを通じて使用者によって入力させたり、記録媒体Sの寸法および重量等を測定したりすることによって検知する。検知部54によって検知された検知情報は、制御部90に出力される。本実施の形態においては、検知部54は、記録媒体Sの坪量を検知する。
【0034】
排出部60は、印刷が施された記録媒体Sを排紙するものである。排出部60は、排紙トレイ61と、搬送ベルト62と、搬送ローラ(不図示)およびこれを駆動するモータ(不図示)等とを有している。
【0035】
第1ヒータ71は、印刷が施された記録媒体Sに向けて赤外線あるいは紫外線等を照射することで記録媒体Sとインクとを加熱することにより、インクを固化させるものである。第1ヒータ71は、印刷胴10に対向配置されている。第1ヒータ71は、記録媒体Sの搬送経路におけるインクジェットヘッド20が配置された位置の下流側に位置している。
【0036】
第2ヒータ72は、印刷胴10に向けて赤外線等を照射することにより、印刷胴10を所定の温度にまで加熱するものである。第2ヒータ72は、印刷胴10に対向配置されている。第2ヒータ72は、記録媒体Sの搬送経路における第1ヒータ71が配置された位置の下流側に位置している。第2ヒータ72と上述した加熱胴53とを用いて記録媒体Sおよび印刷胴10の温度を適切に管理することにより、インクジェットヘッド20による印刷画質の向上が図られている。
【0037】
制御部90は、後において詳述するガイド部100の移動を制御するものである。制御部90は、主たる構成要素として、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)/RAM(Random Access Memory)と、検知部54から入力された情報に基づいて各種の演算を行なう演算部等とを有している。ROM/RAMには、データを不揮発的に格納するROMと、CPUによるプログラムの実行によって生成されたデータを揮発的に格納するRAMとが含まれる。制御部90の各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。
【0038】
CPUにおける処理は、各ハードウェアおよびCPUにより実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、ROM/RAMに予め記憶されている。制御部90には、図示しない内部電源または図示しない外部電源によって電力が供給される。外部電源との接続には、たとえば図示しないACアダプタ等が用いられる。
【0039】
制御部90は、検知部54による検知情報に基づいてガイド部100の移動を制御するが、この点については後において詳述することとする。
【0040】
<B.ガイド部の構成>
図3は、ガイド部を通過する前の記録媒体を示す模式図である。次に、
図3と前述の
図1とを参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aのガイド部100について説明する。
【0041】
図1および
図3に示すように、インクジェット記録装置1Aは、ガイド部100をさらに備えている。後において詳述するように、ガイド部100は、記録媒体Sに生じている皺を延ばすためのものである。
【0042】
本実施の形態においては、ガイド部100は、略長尺円筒形状のローラである。ガイド部100としてのローラは、その軸方向における中央部の外径が両端部の外径よりも大きく構成されている、いわゆるクラウンローラである。(後述する
図6等参照)。
【0043】
ガイド部100は、印刷胴10による記録媒体Sの搬送経路上における、加熱胴53から記録媒体Sが繰り出される位置と、インクジェットヘッド20によって記録媒体Sに向けてインクが吐出される位置との間に位置している。
【0044】
ガイド部100は、外周面11に距離をもって対向配置されている。一例として、本実施の形態においては、ガイド部100は、インクジェットヘッド20と印刷胴10の外周面11との間の距離の1/2だけ外周面11から離間した位置である第1位置に配置されている。
【0045】
ガイド部100は、その軸線回りに回転する。より詳細には、ガイド部100は、印刷胴10による搬送経路上における記録媒体Sの搬送方向に沿って、印刷胴10の回転速度と略同一速度で回転している(
図3中の矢印等参照)。
【0046】
ガイド部100は、その内部に加熱手段を有している。これにより、ガイド部100の表面温度は、加熱胴53の表面温度と略同一に維持されるように加熱されている。加熱手段としては、たとえば、ハロゲンランプ等が用いられる。
【0047】
ガイド部100は、印刷胴10の外周面11に接近および離間する第1方向(
図3中の矢印AR1参照)に沿って移動可能に構成されている。より詳細には、ガイド部100は、これが移動することにより、上記第1位置に配置された状態と、上記第1方向において第1位置よりも外周面11から離間した位置である第2位置に配置された状態とに切り換え可能に構成されている。このガイド部100の第1方向に沿った移動は、制御部90によって制御される。
【0048】
<C.制御部によるガイド部の移動の制御>
図4は、制御部で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。次に、
図4を参照して、本実施の形態における、制御部90によるガイド部100の移動の制御方法について説明する。
【0049】
まず、ステップS1において、制御部90は、記録媒体Sの坪量に関する検知情報を検知部54から取得する。
【0050】
次に、制御部90は、ステップS2において、記録媒体Sの坪量が、予め設定された第1所定値未満であるかを判断する。本実施の形態においては、第1所定値を128g/m2に設定している。坪量が128g/m2未満の記録媒体Sにおいて皺が発生しやすい傾向があるためである。なお、第1所定値は、特にこれに制限されるものではなく、記録媒体Sに皺が発生しやすいと考えられる坪量の範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
記録媒体Sの坪量が第1所定値未満であると判断した場合(ステップS2においてYESの場合)には、制御部90は、以下において説明するステップS3に移行する。記録媒体Sの坪量が第1所定値以上であると判断した場合(ステップS2においてNOの場合)には、制御部90は、後において説明するステップS4に移行する。
【0052】
ステップS2において記録媒体Sの坪量が第1所定値未満であると判断した場合には、制御部90は、ステップS3に移行して、ガイド部100を上述した第1位置(すなわち、
図3において実線で示す位置)に移動させる。なお、ステップS3における制御部90による処理の実行前の時点でガイド部100が既に第1位置に配置されている場合には、制御部90は、ガイド部100を第1位置から移動させない。
【0053】
ステップS2において記録媒体Sの坪量が第1所定値以上であると判断した場合には、制御部90は、ステップS4に移行して、ガイド部100を上述した第2位置(すなわち、
図3において破線で示す位置)に移動させる。なお、ステップS4における制御部90による処理の実行前の時点でガイド部100が既に第2位置に配置されている場合には、制御部90は、ガイド部100を第2位置から移動させない。
【0054】
以上において説明したステップS1~S3、あるいはステップS1,S2,S4を経ることにより、皺が発生しやすい記録媒体Sが加熱胴53から印刷胴10に繰り出される場合においてのみ、ガイド部100を、後において詳述するように記録媒体Sに当接させることが可能になる。
【0055】
<D.ガイド部と記録媒体との関係>
図5は、
図3に示す記録媒体をその搬送方向と直交する方向から見た(すなわち、
図3中の矢印V方向から見た)模式図である。
図6は、
図3に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た(すなわち、
図3中の矢印VI方向から見た)模式図である。
図7は、ガイド部を通過中の記録媒体を示す模式図である。
図8は、
図7に示す記録媒体をその搬送方向と直交する方向から見た(すなわち、
図7中の矢印VIII方向から見た)模式図である。
図9は、
図7に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た(すなわち、
図7中の矢印IX方向から見た)模式図である。
図10は、ガイド部を通過後の記録媒体を示す模式図である。
図11は、
図10に示す記録媒体をその搬送方向とは反対方向に沿った方向から見た(すなわち、
図10中の矢印XI方向から見た)模式図である。次に、
図5ないし
図11と前述の
図3とを参照して、本実施の形態におけるガイド部100と記録媒体Sとの関係について説明する。
【0056】
なお、
図6および
図11においては、記録媒体Sの搬送方向における下流側に位置する端面の形状を示している。また、
図8においては、理解を容易とするために、吸着機構13による記録媒体Sの吸着領域Aに模様を付している。さらに、
図9においては、ガイド部100の直下に位置する部分の記録媒体Sの形状を示している。
図6、
図9および
図11においては、摘まみ部12の図示を省略している。さらに、
図5および
図8においては、記録媒体Sの搬送方向を矢印Dにて示している。
【0057】
ここで、以下においては、皺が発生しやすい(すなわち、本実施の形態においては、坪量が128g/m2未満である)記録媒体Sが、加熱胴53から印刷胴10に繰り出される場合におけるガイド部100と記録媒体Sとの関係について説明する。この場合においては、ガイド部100は、第1位置に配置された状態である。
【0058】
図3、
図5および
図6に示すように、加熱胴53から印刷胴10に繰り出された記録媒体Sは、先端を摘まみ部12によって摘ままれた状態で印刷胴10によって搬送される。
【0059】
この状態の記録媒体Sには、供給部50の搬送ベルト52によって搬送される工程や、搬送ベルト52から加熱胴53へ移載される工程等を経ることで皺が発生している。皺が発生している部分の記録媒体Sは、外周面11から相当程度に浮き上がっている。
【0060】
なお、この時点の記録媒体Sに対しては、吸着機構13による吸着保持は行なわれていない。
【0061】
次に、
図7ないし
図9に示すように、記録媒体Sが、ガイド部100と外周面11との間を通過する。
【0062】
ここで、ガイド部100は、上述したように、外周面11に距離をもって対向配置されている。これにより、ガイド部100は、記録媒体Sのうちの、皺が発生していることで外周面11から浮き上がっている部分にのみ当接することになる。このように構成することにより、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分は、外周面11に密着するように延ばされ、結果として記録媒体Sに生じる皺が低減されることになる。
【0063】
吸着機構13は、記録媒体Sの吸着保持を、搬送経路上において記録媒体Sがガイド部100を通過した後の位置において開始する(
図7中の矢印AR2参照)。これにより、記録媒体Sを、ガイド部100によって皺が延ばされた状態で外周面11において吸引保持することができる。
【0064】
ここで、
図8に示すように、吸着機構13は、記録媒体Sを吸着保持するにあたり、ガイド部100の中央部に対向配置される部分の記録媒体Sから吸着を開始する。次に、ガイド部100の両端部に対向配置される部分の記録媒体Sに向けて順次吸着領域Aを拡大する。
【0065】
図10および
図11に示すように、記録媒体Sの全体がガイド部100と外周面11との間を通過することにより、記録媒体Sは、その全体において皺が延ばされた状態で外周面11において吸引保持される。
【0066】
<E.小括>
本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、印刷胴10による記録媒体Sの搬送経路上における、加熱胴53から記録媒体Sが繰り出される位置と、インクジェットヘッド20によって記録媒体Sに向けてインクが吐出される位置との間にガイド部100が位置している。また、ガイド部100は、外周面11に距離をもって対向配置されている。これにより、記録媒体Sのうちの、皺が発生していることで外周面11から浮き上がっている部分にのみ当接することになる。
【0067】
このように構成することにより、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分が外周面11に密着するように延ばされ、結果として記録媒体Sに生じる皺を低減することができる。
【0068】
また、ガイド部100が外周面11に距離をもって対向配置されていることにより、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分は、ガイド部100と外周面11とに同時には当接しない。このように構成することにより、当該皺が発生している部分がガイド部100と外周面11とに同時に当接することでこれらに挟み込まれて押し潰されることによって記録媒体Sに皺の折れ跡が生じてしまうことを、未然に防止することができる。
【0069】
さらに、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、吸着機構13が、記録媒体Sの吸着保持を、搬送経路上において記録媒体Sがガイド部100を通過した後の位置において開始する。このように構成することにより、記録媒体Sを、上述の如くガイド部100によって皺が延ばされた状態で外周面11において吸引保持することができる。
【0070】
したがって、このように構成することにより、記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図ることが可能になる。
【0071】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、ガイド部100としてのローラが、その軸方向における中央部の外径が両端部の外径よりも大きく構成されている。
【0072】
このように構成することにより、ガイド部100は、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分を、ガイド部100の中央部側から両端部側に向けて逃がすように延ばしつつ外周面11に密着させることができる(
図9中の矢印AR3参照)。
【0073】
その結果、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分がガイド部100に当接した際に、皺の逃げ場がないことに起因してガイド部100の通過後において当該皺が残存してしまうこともまた未然に防止できる。
【0074】
さらに、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、吸着機構13が、記録媒体Sを吸着保持するにあたり、ガイド部100の中央部に対向配置される部分の記録媒体Sから吸着を開始した後に、ガイド部100の両端部に対向配置される部分の記録媒体Sに向けて順次吸着領域Aを拡大するように構成されている(
図8参照)。
【0075】
このように構成された吸着機構13をガイド部100と共に用いることにより、記録媒体Sの皺を、中央部側から両端部側に向けてより効率的に逃がすことが可能になる。
【0076】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、ガイド部100が、印刷胴10による搬送経路上における記録媒体Sの搬送方向に沿って、印刷胴10の回転速度と略同一速度で回転している。
【0077】
このように構成することにより、記録媒体Sとガイド部100とが擦れることで記録媒体Sに擦れ跡や傷が生じることを効果的に抑制できる。これによっても印刷画質の向上を図ることが可能になる。
【0078】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、上述したように、ガイド部100の表面温度が、加熱胴53の表面温度と略同一に維持されるように加熱されている。
【0079】
このように構成することにより、記録媒体Sの温度を適切に管理することができるため、印刷画質の向上を図ることができる。
【0080】
なお、上述した本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、検知部54が記録媒体Sの坪量を検知する場合を例示して説明を行なったが、検知部54は、記録媒体Sの厚みを検知してもよい。
【0081】
この場合には、制御部90は、検知部54から取得する記録媒体Sの厚みが、予め設定された第2所定値未満であるかを判断する。記録媒体Sの厚みが第2所定値未満であると判断した場合には、制御部90は、ガイド部100を第1位置に移動させる。記録媒体Sの厚みが第2所定値以上であると判断した場合には、制御部90は、ガイド部100を第2位置に移動させる。
【0082】
なお、第2所定値としては、たとえば0.15mmに設定できる。厚みが0.15mm未満の記録媒体Sにおいて皺が発生しやすい傾向があるためである。
【0083】
また、上述した本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、ガイド部100が回転している場合を例示して説明を行なったが、ガイド部100は、必ずしもこれが回転している必要はなく、静止していてもよい。
【0084】
さらに、上述した本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Aにおいては、ガイド部100が、その軸方向における中央部の外径が両端部の外径よりも大きく構成された、いわゆるクラウンローラである場合を例示して説明を行なったが、ガイド部100は、たとえば、その軸方向における外径が均一である、いわゆるストレートローラであってもよい。
【0085】
(実施の形態2)
<F.実施の形態2に係るインクジェット記録装置の構成>
図12は、実施の形態2に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。
図13は、気流吹き付け機構による記録媒体への気流の吹き付けの様子を示す模式図である。以下、
図12および
図13を参照して、実施の形態2に係るインクジェット記録装置1Bについて説明する。
【0086】
図12および
図13に示すように、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Bは、上述した実施の形態1に係るインクジェット記録装置1Aと比較した場合に、ガイド部100に代えて気流吹き付け機構110が用いられている点のみが相違している。
【0087】
気流吹き付け機構110は、記録媒体Sに気流Fを吹き付けることにより、記録媒体Sに生じている皺を延ばすものである。気流吹き付け機構110は、印刷胴10による記録媒体Sの搬送経路上における、加熱胴53から記録媒体Sが繰り出される位置と、インクジェットヘッド20によって記録媒体Sに向けてインクが吐出される位置との間に位置している。気流吹き付け機構110は、外周面11に距離をもって対向配置されている。
【0088】
気流吹き付け機構110は、その内部に加熱手段を有している。これにより、気流吹き付け機構110によって記録媒体Sに吹き付けられる気流Fの温度は、加熱胴53の表面温度と略同一とされている。これにより、記録媒体Sの温度を適切に管理することができるため、印刷画質の向上を図ることができる。加熱手段としては、たとえば、ニクロム線等の電熱線等が用いられる。
【0089】
気流吹き付け機構110は、記録媒体Sへの気流Fの吹き付けを行なう吹き付け状態と、記録媒体Sへの気流Fの吹き付けを行なわない非吹き付け状態とに切り換え可能に構成されている。気流吹き付け機構110の吹き付け状態および非吹き付け状態の切り換えは、制御部90によって制御される。
【0090】
制御部90による気流吹き付け機構110の吹き付け状態および非吹き付け状態の切り換えに関する制御方法は、上述した実施の形態1における制御部90によるガイド部100の移動の制御方法と基本的に同様である。すなわち、制御部90は、検知部54から取得する記録媒体Sの坪量が、予め設定された第1所定値未満であるかを判断する。記録媒体Sの坪量が第1所定値未満であると判断した場合には、制御部90は、気流吹き付け機構110を吹き付け状態にする。記録媒体Sの坪量が第1所定値以上であると判断した場合には、制御部90は、気流吹き付け機構110を非吹き付け状態にする。
【0091】
気流吹き付け機構110は、印刷胴10による記録媒体Sの搬送方向における下流側から上流側に向けて記録媒体Sの主面に気流Fを吹き付ける。記録媒体Sのうちの、皺が発生していることで外周面11から浮き上がっている部分は、気流Fを吹き付けられることによって外周面11に密着するように延ばされる。
【0092】
吸着機構13は、記録媒体Sの吸着保持を、搬送経路上において記録媒体Sが気流吹き付け機構110を通過した後の位置において開始する。これにより、記録媒体Sを、気流吹き付け機構110によって皺が延ばされた状態で外周面11において吸引保持でき、ひいては、記録媒体Sに生じる皺を低減することができる。
【0093】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果に準じた効果が得られることになり、記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図ることが可能になる。
【0094】
また、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Bにおいては、
図13に示すように、気流吹き付け機構110が、記録媒体Sが載置されている部分の外周面11の法線方向および回転方向のいずれにも直交する方向において、記録媒体Sの中央部に吹き付けられる気流Fの風量が両端部に吹き付けられる気流Fの風量よりも大きくなるように、記録媒体Sに気流Fを吹き付ける。
【0095】
このように構成することにより、気流吹き付け機構110は、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分を、上記中央部側から上記両端部側に向けて逃がすように延ばしつつ外周面11に密着させることができる(
図13中の矢印AR4参照)。
【0096】
その結果、記録媒体Sのうちの皺が発生している部分が気流吹き付け機構110に当接した際に、皺の逃げ場がないことに起因して気流吹き付け機構110の通過後において当該皺が残存してしまうことを未然に防止できる。
【0097】
さらに、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1Bにおいても、吸着機構13が、記録媒体Sを吸着保持するにあたり、記録媒体Sの中央部から吸着を開始した後に、記録媒体Sの両端部に向けて順次吸着領域Aを拡大するように構成されている(
図8参照)。
【0098】
このように構成された吸着機構13を気流吹き付け機構110と共に用いることにより、記録媒体Sの皺を、中央部側から両端部側に向けてより効率的に逃がすことが可能になる。
【0099】
(第1変形例)
<G.第1変形例に係るインクジェット記録装置の構成>
図14は、第1変形例に係るインクジェット記録装置の内部構造を示す概略図である。以下、
図14を参照して、上述した実施の形態2に基づいた第1変形例に係るインクジェット記録装置1B1について説明する。
【0100】
図14に示すように、第1変形例に係るインクジェット記録装置1B1は、上述した実施の形態2に係るインクジェット記録装置1Bと比較した場合に、気流吹き付け機構110B1による記録媒体Sに対する気流Fの吹き付け方向が相違している点、および、印刷胴10の外周面11に摘まみ部12が用いられていない点が相違している。
【0101】
より詳細には、インクジェット記録装置1B1においては、気流吹き付け機構110B1が、印刷胴10による記録媒体Sの搬送方向における上流側から下流側に向けて記録媒体Sの主面に気流Fを吹き付ける。
【0102】
記録媒体Sのうちの、皺が発生していることで外周面11から浮き上がっている部分は、気流Fが吹き付けられることによって外周面11に密着するように延ばされる。また、気流Fを上記吹き付け方向に向けて記録媒体Sに吹き付けることにより、摘まみ部12によって記録媒体Sの先端を摘まむことなく、加熱胴53から繰り出された記録媒体Sに対する吸着機構13による吸着保持が開始されるまでの間、記録媒体Sを印刷胴10の回転方向に向けて搬送することができる。
【0103】
なお、本変形例においては、上記搬送経路におけるインクジェットヘッド20が配置された位置の上流側に、遮蔽板120が配置されることが好ましい。遮蔽板120は、気流吹き付け機構110B1の気流Fがインクジェットヘッド20による記録媒体Sへのインクの吐出が行なわれる領域に流れ込まないように当該気流Fを遮蔽するためのものである。これにより、気流Fが原因となって印刷画質が損なわれることを防止できる。
【0104】
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1,2において説明した効果に準じた効果が得られることになり、記録媒体を搬送する印刷胴を備えてなるインクジェット記録装置において、記録媒体に生じる皺を低減することで印刷画質の向上を図ることが可能になる。
【0105】
<H.付記>
上述した実施の形態およびその変形例において開示したインクジェット記録装置の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0106】
[付記1]
記録媒体を搬送する印刷胴と、
記録媒体を上記印刷胴に供給する供給部と、
上記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備え、
上記印刷胴は、上記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で上記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を上記印刷胴の回転方向に向けて搬送し、
上記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、上記供給部から記録媒体が供給される位置と、上記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、上記外周面に距離をもって対向配置され、上記外周面から浮き上がった記録媒体が当接することにより、当該記録媒体を上記外周面に密着させるためのガイド部と、
上記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備え、
上記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、上記搬送経路上において記録媒体が上記ガイド部を通過した後の位置において開始する、インクジェット記録装置。
【0107】
[付記2]
上記ガイド部は、上記外周面に接近および離間する第1方向に沿って移動可能に構成され、
上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量および厚みのうちの少なくともいずれかを検知するための検知部と、
上記ガイド部の上記第1方向に沿った移動を制御する制御部とをさらに備え、
上記制御部が、上記検知部によって検知された検知情報に基づいて、上記ガイド部の上記第1方向における位置を制御する、付記1に記載のインクジェット記録装置。
【0108】
[付記3]
上記制御部は、上記検知部によって検知された検知情報に基づいて、上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が第1所定値未満であるか、または、記録媒体の厚みが第2所定値未満であると判断した場合に、上記ガイド部を第1位置に配置された状態とし、上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が上記第1所定値以上であるか、または、記録媒体の厚みが上記第2所定値以上であると判断した場合に、上記ガイド部を、上記第1方向において上記第1位置よりも上記外周面から離間した位置である第2位置に配置された状態とする、付記2に記載のインクジェット記録装置。
【0109】
[付記4]
上記第1位置は、上記インクジェットヘッドと上記外周面との間の距離の1/2だけ上記外周面から離間した位置である、付記3に記載のインクジェット記録装置。
【0110】
[付記5]
上記ガイド部は、ローラであり、
上記ローラは、軸方向における中央部の外径が両端部の外径よりも大きい、付記1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【0111】
[付記6]
上記ローラが、上記搬送経路上における記録媒体の搬送方向に沿って、上記印刷胴の回転速度と略同一速度で回転している、付記5に記載のインクジェット記録装置。
【0112】
[付記7]
上記吸着機構は、記録媒体を吸着保持するにあたり、上記ローラの上記中央部に対向配置される部分の記録媒体から吸着を開始した後に、上記ローラの上記両端部に対向配置される部分の記録媒体に向けて順次吸着領域を拡大するように構成されている、付記5または6に記載のインクジェット記録装置。
【0113】
[付記8]
上記供給部は、上記記録媒体を加熱するとともに当該記録媒体を上記印刷胴に繰り出す加熱胴を含み、
上記ガイド部の表面温度が、上記加熱胴の表面温度と略同一に維持される、付記1から7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【0114】
[付記9]
記録媒体を搬送する印刷胴と、
記録媒体を上記印刷胴に供給する供給部と、
上記印刷胴に対向配置され、記録媒体に向けてインクを吐出するインクジェットヘッドとを備え、
上記印刷胴は、上記印刷胴の外周面上に記録媒体が載置された状態で上記印刷胴の軸線回りに回転することにより、記録媒体を上記印刷胴の回転方向に向けて搬送し、
上記印刷胴による記録媒体の搬送経路上における、上記供給部から記録媒体が供給される位置と、上記インクジェットヘッドによって記録媒体に向けてインクが吐出される位置との間に位置し、かつ、上記外周面に距離をもって対向配置され、上記外周面から浮き上がった記録媒体に向けて気流を吹き付けることにより、当該記録媒体を上記外周面に密着させるための気流吹き付け機構と、
上記外周面に載置された記録媒体を吸着保持する吸着機構とをさらに備え、
上記吸着機構が、記録媒体の吸着保持を、上記搬送経路上において記録媒体が上記気流吹き付け機構を通過した後の位置において開始する、インクジェット記録装置。
【0115】
[付記10]
上記気流吹き付け機構は、上記印刷胴による記録媒体の搬送方向における下流側から上流側に向けて記録媒体に気流を吹き付ける、付記9に記載のインクジェット記録装置。
【0116】
[付記11]
上記気流吹き付け機構は、記録媒体への気流の吹き付けを行なう吹き付け状態と、記録媒体への気流の吹き付けを行なわない非吹き付け状態とに切り換え可能に構成され、
上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量および厚みのうちの少なくともいずれかを検知するための検知部と、
上記気流吹き付け機構の上記吹き付け状態および上記非吹き付け状態の切り換えを制御する制御部とをさらに備え、
上記制御部が、上記検知部によって検知された検知情報に基づいて、上記気流吹き付け機構の上記吹き付け状態および上記非吹き付け状態の切り換えを制御する、付記9または10に記載のインクジェット記録装置。
【0117】
[付記12]
上記制御部は、上記検知部によって検知された検知情報に基づいて、上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が第1所定値未満であるか、または、記録媒体の厚みが第2所定値未満であると判断した場合に、上記気流吹き付け機構を上記吹き付け状態とし、上記供給部から上記印刷胴に供給される記録媒体の坪量が上記第1所定値以上であるか、または、記録媒体の厚みが上記第2所定値以上であると判断した場合に、上記気流吹き付け機構を上記非吹き付け状態とする、付記11に記載のインクジェット記録装置。
【0118】
[付記13]
上記気流吹き付け機構は、記録媒体が載置されている部分の上記外周面の法線方向および上記回転方向のいずれにも直交する方向において、記録媒体の中央部に吹き付けられる気流の風量が両端部に吹き付けられる気流の風量よりも大きくなるように、記録媒体に気流を吹き付ける、付記9から12のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【0119】
[付記14]
上記吸着機構は、記録媒体を吸着保持するにあたり、記録媒体の中央部から吸着を開始した後に、記録媒体の両端部に向けて順次吸着領域を拡大するように構成されている、付記13に記載のインクジェット記録装置。
【0120】
[付記15]
上記供給部は、上記記録媒体を加熱するとともに当該記録媒体を上記印刷胴に繰り出す加熱胴を含み、
上記気流吹き付け機構によって記録媒体に吹き付けられる気流の温度が、上記加熱胴の表面温度と略同一である、付記9から14のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【0121】
<I.その他の形態等>
上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した各部の形状や構成、大きさ、数、材質等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
【0122】
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当然に相互に組み合わせることができる。
【0123】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0124】
1A,1B,1B1 インクジェット記録装置、10 印刷胴、11 外周面、12 摘まみ部、13 吸着機構、20 インクジェットヘッド、40 搬送胴、50 供給部、51 給紙トレイ、52 搬送ベルト、53 加熱胴、54 検知部、60 排出部、61 排紙トレイ、62 搬送ベルト、71 第1ヒータ、72 第2ヒータ、90 制御部、100 ガイド部、110,110B1 気流吹き付け機構、120 遮蔽板、A 吸着領域、F 気流、S 記録媒体。