(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140592
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ワークの製造方法及び保持具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01L21/68 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051793
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛志
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 剛
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA13
5F131CA32
5F131EA02
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】 ワークの端部に微細な面取り加工を容易に行うことが可能なワークの製造方法を提供する。また、基板等の被保持部材を確実に保持することが可能な保持具を提供することを目的とする。
【解決手段】 側面と当該側面と接続された端面とを有する凸部12を備えたワーク10の製造方法であって、凸部12の前記側面の少なくとも一部に隣接してマスク20を配置するマスク配置工程と、マスク20が凸部12に隣接して配置された状態でワーク10をエッチング液31に浸漬し、マスク20を前記端面と水平な方向に揺動して前記側面と前記端面とを接続する端部を面取りするエッチング工程と、を備えるワーク10の製造方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面と当該側面と接続された端面とを有する凸部を備えたワークの製造方法であって、
前記凸部の前記側面の少なくとも一部に隣接してマスクを配置するマスク配置工程と、
前記マスクが前記凸部に隣接して配置された状態で前記ワークをエッチング液に浸漬し、前記マスクを前記端面と水平な方向に揺動して前記側面と前記端面とを接続する端部を面取りするエッチング工程と、
を備えることを特徴とするワークの製造方法。
【請求項2】
前記マスクは、前記凸部の前記側面と前記マスクとの間隔が4mm以下となるよう配置されることを特徴とする請求項1に記載のワークの製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、当該マスクの上面と前記端面とが面一、または前記マスクの上面から前記端面との間隔が0~2mmの範囲で前記端面が窪んで配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のワークの製造方法。
【請求項4】
前記マスク配置工程において、前記凸部は、前記マスクが隣接配置される前記側面と、前記マスクが隣接配置されない前記側面とを有することを特徴とする請求項1に記載のワークの製造方法。
【請求項5】
基板の一方の面に形成された凸部により被保持部材を保持する保持具であって、
前記凸部は前記基板上に閉領域を形成するように形成された環状凸部であり、
前記凸部の端面と外周側側面とを接続する外周側端部、及び前記凸部の端面と内周側側面とを接続する内周側端部は面取り部を備え、
前記外周側側面の前記面取り部と前記内周側側面の前記面取り部とは異なる面取り量であることを特徴とする保持具。
【請求項6】
前記凸部の端面と前記基板の前記一方の面と対向する他方の面を挿通し、真空圧源に接続された貫通孔を備えることを特徴とする請求項5に記載の保持具。
【請求項7】
前記外周側端部面の前記面取り部の面取り量は5μmであり、前記内周側側面の前記面取り部の面取り量は20μmであることを特徴とする請求項5または6に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの端部を面取り加工するワークの製造方法、及び基板等を保持するための保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子の製造に用いられる投影露光装置では、被加工材である基板を保持固定し、かつ基板の反りを矯正し平面を保つ機能をもつ、真空吸着力を利用したウエハチャックが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ウエハチャックは、ウエハチャックの基材の外周に形成された縁堤型凸部、縁堤型凸部に囲われた基材の表面に形成された頂部が平坦な複数のピン型凸部を備え、縁型凸部及びピン型凸部の頂部においてウエハを支持するように構成されている。また、基材には真空圧源に連通された真空吸引穴が形成されており、この真空吸引穴を通して排気を行い、ウエハチャックにウエハを保持固定している。特許文献1には、ウエハチャックのピン型凸部のエッジをラウンド加工することで、ピン型凸部エッジにおいて発生していた異物の付着や食い込みを回避してクリーニング性を向上し、もってデフォーカスに起因したチップ不良の発生を低減できることが記載されている。ラウンド加工は、例えばブラシ研磨加工によって行い、エッジはR5μm~30μm程度のラウンド加工が施された形状となっている。なお、加工機上で研磨材の自転、公転運動、そしてブラシカップの自転、揺動運動等、複雑な動きを与えることでラウンド加工量の均一化を図ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハチャックにおけるピン型凸部の端部(エッジ)のラウンド加工では、例えば端部が過度に加工されてしまうことで、ピン型凸部の高さや平坦面を所定の大きさに確保できないことがある。ウエハチャックにおいては、凸部の上面とその上面と対向する基板の下面を挿通した真空吸着穴を設けることも行われており、この場合、凸部上面に真空吸着穴の開口が位置することとなり、ラウンド加工にはより高い精度が求められる。
【0006】
しかし、ラウンド加工の加工量を高精度に行うことは、前述の通り、従来ではウエハチャックや加工具に複雑な動きを与える等が必要であり、その制御は困難であった。また、ラウンド加工のような端部の面取り量を制御することは、ウエハチャックに限らず様々な製品において高い要求がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決しようとするもので、ワークの端部に微細な面取り加工を容易に行うことが可能なワークの製造方法を提供する。また、基板等の被保持部材を確実に保持することが可能な保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
側面と当該側面と接続された端面とを有する凸部を備えたワークの製造方法であって、前記凸部の前記側面の少なくとも一部に隣接してマスクを配置するマスク配置工程と、前記マスクが前記凸部に隣接して配置された状態で前記ワークをエッチング液に浸漬し、前記マスクを前記端面と水平な方向に揺動して前記側面と前記端面とを接続する端部を面取りするエッチング工程と、を備えるワークの製造方法とする。
前記マスクは、前記凸部の前記側面と前記マスクとの間隔が3mm以下となるよう配置するとよい。
また、前記マスクは、当該マスクの上面と前記端面とが面一、または前記マスクの上面から前記端面との間隔が0~2mmの範囲で前記端面が窪んで配置してもよい。
さらに、前記マスク配置工程において、前記凸部は、前記マスクが隣接配置される前記側面と、前記マスクが隣接配置されない前記側面とを有していてもよい。
また、基板の一方の面に形成された凸部により被保持部材を保持する保持具であって、前記凸部は前記基板上に閉領域を形成するように形成された環状凸部であり、前記凸部の端面と外周側側面とを接続する外周側端部、及び前記凸部の端面と内周側側面とを接続する内周側端部は面取り部を備え、前記外周側側面の前記面取り部と前記内周側側面の前記面取り部とは異なる面取り量である保持具とする。
前記凸部の端面と前記基板の前記一方の面と対向する他方の面を挿通し、真空圧源に接続された貫通孔を備えていてもよい。
また、前記外周側端部面の前記面取り部の面取り量は5μmであり、前記内周側側面の前記面取り部の面取り量は20μmである保持具としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のワークの製造方法によれば、微細な面取り加工を容易に行うことができる。また、本発明の保持具により被保持部材の確実な保持が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るワークの製造方法を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保持具を示す図である。
【
図3】凸部の外周と凹部の内壁との間隔とエッチング液の流速の関係を示す図である。
【
図4】凸部の上面とマスクの上面との間隔とエッチング液の流速の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明のワークの製造方法及び保持具について図面を用いて説明する。図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態に係る保持具を示す図であり、(a)は平面図、(b)はA-A断面における正面断面図である。保持具10は、ウエハ等の被保持部材を吸着保持するための保持具であり、基板11と、基板11の外周縁に立設された環状の凸部12と、基板11と凸部12とに囲われた凹部13を備える。基板11は、直径6インチ(150mm)、厚み1.05mmのシリコン基板であり、凹部13は、基板11の一方の面をエッチング加工することで形成され、基板11の一方の面の面内中心と凹部13の中心が一致した半径71.5mmの円形、凹部13の深さ(凸部12の上面(端面)から凹部13の底面までの距離)は0.2mmである。また、凸部12は、凹部13の底面からの高さが0.2mm、幅3.5mmであり、基板11の凹部13が形成された一方の面と対向する表面(基板11の裏面)からの高さは1.05mmである。なお、基板11の裏面、凹部13の底面、及び凸部12の上面は平行な平坦面、凸部12の側面は凸部12の上面と垂直な面である。そして、凸部12の上面と側面とが接続される端部には面取り加工が施されている。凸部12の上面と、凸部12の内周側の側面である内周側側面(凹部13の側面を形成する面)とが接続される内周側端部にはR面取りが施され、そのR面の曲率半径は20μmである。また、凸部12の上面と、凹部13の内周側側面と対向する外周側側面とが接続される外周側端部にも、R面取りが施され、そのR面の曲率半径は5μmである。本実施の形態では、凸部12の内周側端部と外周側端部の面取り量は異なるよう設定され、外周側端部の面取り量は内周側端部の面取り量より小さい。
【0013】
さらに、保持具10には、凸部12の上面と基板11の裏面とを挿通する貫通孔14が、基板11の周方向に複数個、等間隔に配置されている。本実施の形態では、保持用具1に貫通孔14を、基板11の中心から半径73mmの位置に8個備え、その大きさはφ1.2mmである。貫通孔14は、不図示の真空圧源に接続される。
【0014】
保持具10への被保持部材の保持は、保持用具10の凸部12上面に被保持部材を載置し、被保持部材が凸部12上面に載置された状態で、貫通孔14に接続された真空圧源より排気を行い、被保持部材を真空吸着することで行われる。本実施の形態の保持具10では、凸部12上面の端部が面取り加工されていることで、端部の食い込み等によって被保持部材を傷つけることなく被保持部材を保持することができる。さらに、凸部12の内周側端部と外周側端部の面取り量が異なり、一方の端部を他方の端部の面取り量より小さく設定することで、面取り加工の際、いずれか一方または両方の端部の面取り量にばらつきが生じたとしても、凸部12上面の平坦部がなくなるまで加工される不具合が低下し、被保持部材の安定した保持が可能となる。さらに、後述する本発明のワークの製造方法によって保持具10を製造することで、高い精度で微細な面取り加工を行うことができ、被保持部材のより安定した保持が可能な保持具10となる。
【0015】
次に、本発明のワークの製造方法を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るワークの製造方法を示す模式図である。ここでは、ワークとして保持具10を製造する方法を説明する。
【0016】
[基板加工工程:
図1(a)]
まず、
図1(a)に示すように、シリコン基板からなる基板11を準備して、公知のフォトリソグラフィー技術を用いて基板11の一方の面をエッチング加工して凹部13を形成する。基板11上には、凹部13を形成すると同時に、凹部13の側面、及び基板11の外周面を側面とする凸部12が形成される。次に、公知のレーザ加工技術を用いて、凸部12に凸部12の上面から基板11の裏面を挿通する貫通孔14を形成する。
【0017】
[マスク配置工程:
図1(b)]
次に、基板11が収容される凹部21を備えたマスク20を準備し、マスク20の凹部21内へ、基板加工工程において凸部12及び凹部13が形成された基板11を収容する。マスク20は、直径8インチ(200mm)、厚み1.8mmであり、基板11を構成するシリコンのエッチング液31に対して耐食性のある金属や樹脂材料等によって構成され、本実施の形態ではガラスエポキシ板によって構成されている。マスク20の凹部21は、基板11の外周よりわずかに大きく設定され、本実施の形態における凹部21の直径はφ151mmである。基板11を凹部21へ収容した際、凹部21の内壁と基板11に形成された凸部12の外周との間の間隔D1は約0.5mmであり、マスク20は凸部12の外周に隣接して配置されることとなる。また、凹部21の深さは、基板11の高さと同じ1.05mmであり、基板11が凹部21へ収容された際、マスク20の上面(凹部21が形成された側のマスク20の表面)と基板11における凸部12の上面との間隔D2は零であり、マスク20の上面と凸部12の上面とは面一である。
【0018】
[エッチング工程:
図1(c)]
次に、基板11が収容されたマスク20を、マスク20が十分に浸漬する大きさの容器30に入れられたエッチング液31に浸漬させ、マスク20の上面に水平な方向へ基板11が収容されたマスク20を揺動させることで、基板11のエッチングを行う。本実施の形態では、エッチング液31としてアルカリ水溶液であるフッ酸、酢酸、硝酸の混合水溶液を用い、エッチング液31中のマスク20の揺動速度は50mm/s、エッチング液31の温度25℃、浸漬時間は30分である。この工程によって、凸部12の内周側端部、外周側端部の面取り加工を行う。なお、基板11は全体がエッチング液31に浸漬されるため、凸部12の端部やマスク20と接する基板11の裏面以外、例えば貫通孔14の縁部や凹部13の底面、凸部12の上面等もエッチングされるが、予めそのエッチング量を考慮して基板加工工程において凹部13等を形成しておく。
【0019】
ここで、エッチングの加工速度(エッチングレート)はエッチング液31の流速によって変化することがわかっている。エッチングは、エッチング液31の流速、つまりエッチング液31中の被加工材の揺動速度を速くするほどエッチング液31の循環が促され、エッチングレートが増加する。したがって、エッチングによる微細加工を安定的に行うためには、加工量を制御しやすい、エッチング液31の流速が遅い速度でエッチングを行うことが好ましい。ところで、湿式エッチングにおいては、エッチング液31と被加工材が反応することによって反応ガスが発生する。この反応ガスによっても被加工材はエッチングされ、この反応ガスによるエッチングはエッチング液31によるエッチングよりもエッチングレートが高い。したがって、エッチング加工の安定化のためには、反応ガスが被加工材の表面から速やかに除去されることが好ましいが、エッチング液31の流速が遅すぎると反応ガス(気泡)は被加工材の表面に留まってしまう。また、エッチング液31の流速が遅い、低いエッチングレートでの加工は量産性に欠ける。そこで、本実施形態の揺動速度は、気泡が基板11表面から速やかに離脱し、量産性をそこまで損なうことのない実用的な速度として50mm/sとしている。
【0020】
次に、基板11とマスク20の位置とエッチング液31の流速の関係について説明する。
図3は、基板11が収容されたマスク20のエッチング液31中の揺動速度を50mm/s、マスク20の上面(凹部21が形成されたマスク20の表面)と基板11における凸部12の上面との間隔D2を零としたときにおける、凸部12の外周と凹部21の内壁との間隔D1と、エッチング液31の流速の関係を示す図である。
図3において、横軸は間隔D1の大きさ、縦軸は凸部12の外周側端部の直上におけるエッチング液31の流速を示す。
図3に示すように、凸部12の外周に沿って凹部21の内壁を配置することで、凸部12の外周側端部の直上におけるエッチング液31の流速は変化する。間隔D1が3mmのとき流速が最も速く、3mmより小さくなるほど流速は遅くなる。したがって、基板11を微細加工するためには、間隔D1を3mm以下とするのが好ましく、より好ましくは2mm以下である。また、間隔D1が3mmより大きくなると流速は遅くなっていきある流速で収束するが、例えば間隔D1が4mmより大きいと凸部12の外周側端部や凹部21の端部において発生する乱流の影響を受けることとなり、安定的な加工が難しくなる。
【0021】
図4は、基板11が収容されたマスク20のエッチング液31中の揺動速度を50mm/s、間隔D1を1mmとしたときにおける、凸部12の上面とマスク20の上面との間隔D2とエッチング液31の流速の関係を示す図である。
図4において、横軸は間隔D2の大きさ、縦軸は凸部12の外周側端部の直上におけるエッチング液31の流速を示し、距離D1が負の値は凸部12の上面がマスク20の上面より突出しており、正の値は凸部12の上面がマスク20の上面より窪んでいる状態を示す。
図4に示すように、凸部12の上面がマスク20の上面より突出しているほどエッチング液31の流速が速い。したがって、基板11を微細加工するためには、マスク20の上面から凸部12の上面を突出させない方がよく、間隔D2を零(マスク20の上面と凸部12の上面とが面一)か、マスク20の上面より凸部12の上面を窪むようマスク20を設定しておくことが好ましい。
【0022】
本実施形態では、前述したようにマスク配置工程において、凸部12の外周と凹部21の内壁との間隔D1は0.5mmと凸部12の外周と凹部21の内壁は隣接して配置されており、凸部12の内周の近傍にはマスク20などが配置されていない。このような状態のとき、エッチング液31は凸部12の外周側端部におけるエッチング液31の流速より、凸部12の内周側端部におけるエッチング液31の流速の方が速い。したがって、凸部12の外周側端部は内周側端部よりエッチング加工が進まず、内周側端部より面取り量が小さくなり、凸部12の外周側端部と内周側端部とで面取り加工量を異ならせることができる。また、凸部12の外周側端部のエッチング速度が遅いことで、外周側端部に微細加工を精度よく行うことができる。なお、凸部12の外周と凹部21の内壁との間隔D1は0.5mmに限定されるものではなく、面取り加工の大きさによって適宜設定すればよい。面取り量を10μm以下としたい場合は、凸部12とマスク20との間の間隔D1を面取り量の100倍である1mm以下、好ましくは0.5mm以下とするとよい。なお、本実施の形態におけるエッチング液31は、フッ酸、酢酸、硝酸の混合水溶液であり、シリコンから構成される基板11は等方性エッチングされるため、内周側端部と外周側端部の面取りはR面取りとなる。
【0023】
また、本実施形態では、凸部12の上面とマスク20の上面とを面一としている。凸部12の上面とマスク20の上面とを面一とすることで、凸部12の外周側端部の直上におけるエッチング液31の流速を抑えることができ、さらに、凸部12の上面とマスク20の上面の高さの差によっていずれかの端部に生じる乱流の影響を抑制できる。なお、凸部12の上面とマスク20の上面とは面一とすることに限定されるものではなく、面取り加工量に応じて適宜変更してもよい。特に微細加工を行う場合、凸部12の上面とマスク20の上面との面一(間隔D2が零)から、マスク20の上面より凸部12の上面が窪む量が2mm(間隔D2が2mm)の範囲に設定するとよい。ここで窪み量を2mmとしたのは、
図4に示す通り、間隔D2が2mmでエッチング液31の流速が十分に小さいためであり、2mmを超えると凸部12の上面とマスク20の上面の高さの差によって端部に生じる乱流の影響が生じるためである。
【0024】
[洗浄工程]
最後に、エッチング加工が終わった基板11をエッチング液31から引き上げ、洗浄、乾燥することにより保持具10が完成する。
【0025】
本実施形態におけるワークの製造方法では、面取り加工を施す被加工部材の凸部における側面にマスクを隣接配置してエッチング加工を行うことで、凸部における端部の面取り量を制御することが可能であり、微細な面取りや一度のエッチング加工において、部位ごとに選択的に異なる面取り量で加工することが可能となる。
【0026】
なお、本実施形態では、凸部12の内周側側面にもマスク20を配置してもよく、その場合、本実施形態のマスク20とは別の板状マスクを用意し、凹部13の底面上であり凸部12の内周側側面に隣接して板状マスクを配置すればよい。また、その場合、マスク20や板状マスクの凸部12との間隔を任意に調整することで、凸部12の外周側端部、内周側端部の面取り加工量をそれぞれ調整することができる。
【0027】
以上、本発明のワークの製造方法、保持具について、実施形態に基づき説明してきたが、本発明の範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、基板の基板はシリコンとしたが、シリコンに限定されずセラミック等の他の材料を用いても構わない。基板は円形基板に限定されず矩形基板でも構わない。また、アルカリ水溶液であるフッ酸、酢酸、硝酸の混合水溶液としたが、フッ酸、酢酸、硝酸の混合水溶液に限定されず、同じアルカリ水溶液である水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などを用いても構わない。なお、水酸化カリウム(KOH)は、シリコンに対して異方性エッチングであり、この場合、端部の面取りは略C面取りとなる。
【符号の説明】
【0028】
10 保持具
11 基板
12 凸部
13 凹部
14 貫通孔
20 マスク
21 凹部
30 容器
31 エッチング液