(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140595
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】制御装置、ガスエンジン、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F02M21/02 301A
F02M21/02 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051798
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 俊
(72)【発明者】
【氏名】白石 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】古川 雄太
(72)【発明者】
【氏名】朝生 洋
(57)【要約】
【課題】ガスエンジンの負荷が急減した際に余剰燃料によって回転数が跳ね上がることを抑制する制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置は、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御装置であって、前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得する信号取得部と、前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開く制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御装置であって、
前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得する信号取得部と、
前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開く制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ベントバルブを開いた後に、前記負荷が安定すると、前記ベントバルブを閉じる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ベントバルブを開いた後に、前記ガスエンジンの回転数の一時的な上昇が低下に転じると、前記ベントバルブを閉じる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられた燃料制御弁と、
前記燃料供給ラインにおける前記燃料制御弁よりも下流側において一端が接続された排気ラインと、
前記排気ラインに設けられたベントバルブと、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の制御装置と、
を備えるガスエンジン。
【請求項5】
前記ガスエンジンへ空気を供給する空気供給ラインをさらに備え、
前記排気ラインの他端は、前記空気供給ラインに接続される、
請求項4に記載のガスエンジン。
【請求項6】
前記排気ラインの他端は、前記燃料供給ラインにおける前記燃料制御弁よりも上流側に接続される、
請求項4に記載のガスエンジン。
【請求項7】
前記排気ラインの他端が、接続されていない、
請求項4に記載のガスエンジン。
【請求項8】
前記排気ラインの一端は、前記一端が接続される位置から前記燃料制御弁までの距離よりも、前記一端が接続される位置から前記ガスエンジンまでの距離のほうが短くなる位置で前記燃料供給ラインに接続されている、
請求項4に記載のガスエンジン。
【請求項9】
ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御方法であって、
前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、
前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開くステップと、
を有する制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、
ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、
前記信号を取得すると、前記ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブを開くステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、ガスエンジン、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンでは、燃料制御弁を通過した燃料ガスは全てエンジン内のシリンダーへ投入され、燃焼されることで回転エネルギーとして寄与するように構成されている。したがって、エンジンの負荷が急減された場合には、瞬時に燃料制御弁で燃料ガスを絞り、余剰の燃料ガスによりエンジンの回転数が跳ね上がるのを防ぐ必要がある。しかしながら、瞬時に燃料制御弁で燃料ガスを絞っても、燃料制御弁を通過したあとの配管中に残留した燃料ガスがエンジン内のシリンダーに供給され、余剰燃料として燃焼し、エンジンの回転数の過度な上昇を引き起こしてしまう場合がある。このとき、一定以上にエンジンの回転数が上昇すると、警報トリップによる重故障停止を招いてしまう可能性がある。
【0003】
特許文献1には、負荷投入や負荷遮断等の過渡運転時にガスエンジンの応答性を向上させる制御について開示があるが、上記の課題を解決する手段については開示が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスエンジンの負荷が急減した場合に、エンジンの回転数が過度に上昇することを抑制する技術が必要とされている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決することができる制御装置、ガスエンジン、制御方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の制御装置は、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御装置であって、前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得する信号取得部と、前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開く制御部と、を備える。
【0008】
本開示のガスエンジンは、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインに設けられた燃料制御弁と、前記燃料供給ラインにおける前記燃料制御弁よりも下流側において一端が接続された排気ラインと、前記排気ラインに設けられたベントバルブと、上記の制御装置と、を備える。
【0009】
本開示の制御方法は、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御方法であって、前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開くステップと、を有する。
【0010】
本開示のプログラムは、コンピュータに、ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、前記信号を取得すると、前記ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブを開くステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の制御装置、ガスエンジン、制御方法及びプログラムによれば、ガスエンジンの負荷が急減した際にエンジンの回転数が過度に上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るガスエンジンの要部の概略図である。
【
図2】実施形態に係るベントバルブ開閉制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係るベントバルブ開閉制御の効果について説明する図である。
【
図4A】実施形態に係る排気ラインの接続先の他の例を示す第1図である。
【
図4B】実施形態に係る排気ラインの接続先の他の例を示す第2図である。
【
図5】実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、本開示のガスエンジン1の構成およびその制御について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に、ガスエンジン1のうち本実施形態に関係する部分の概略を示す。ガスエンジン1は、エアクリーナー2と、エアクリーナーボックス3と、空気供給ライン4と、燃料制御弁5と、燃料供給ライン6と、排気ライン7と、ベントバルブ8と、エンジン9と、制御装置10と、を含む。空気供給ライン4、燃料供給ライン6及び排気ライン7は配管で構成される。空気を供給する空気供給ライン4は、エンジン9に接続され、エンジン9内のシリンダーへ空気を供給する。空気供給ライン4には、給気中のごみや異物を除去するエアクリーナー2と、エアクリーナーボックス3と、が設けられている。燃料を供給する燃料供給ライン6は、エンジン9に接続され、エンジン9内の副室へ燃料ガスを供給する。エンジン9は、例えば、レシプロエンジンで、供給された空気と燃料ガスの燃焼により、不図示の発電機を回転駆動する。燃料供給ライン6には、燃料ガスの供給量を制御するための燃料制御弁5が設けられている。燃料供給ライン6における燃料流れ方向の燃料制御弁5よりも下流側には排気ライン7の一端が接続されていて、排気ライン7の他端は、エアクリーナーボックス3に接続されている。排気ライン7には、ベントバルブ8が設けられている。通常時には、ベントバルブ8は閉とされていて、ベントバルブ8を開とすることにより、燃料供給ライン6を流れる燃料ガスを、排気ライン7を通じてエアクリーナーボックス3へ導くことができる。排気ライン7の一端は、燃料供給ライン6における、燃料制御弁5よりもエンジン9に近い位置に接続される。例えば、燃料制御弁5からエンジン9までの燃料供給ライン6の長さが数メートル(2~3m)ならば、排気ライン7の一端は、エンジン9から1m以下の位置に接続される。これは、負荷が急減した際に、燃料制御弁5の下流側に残存する燃料ガス(燃料制御弁5を通過した後の配管中に残留した燃料ガス)を効果的に排出するためである。
【0014】
従来のガスエンジンには、排気ライン7およびベントバルブ8が設けられていない。すると、ガスエンジンの負荷急減時に、その負荷に応じて、燃料制御弁5が絞られたとしても、既に燃料制御弁5の下流側の配管内に存在する燃料ガスがそのままエンジン内シリンダーに供給され、エンジンの回転数が過度に上昇してしまう可能性がある。これを防ぐために、本実施形態では、排気ライン7およびベントバルブ8を設け、ガスエンジン1の負荷急減時に、ベントバルブ8を開とし、燃料制御弁5の下流側に存在する余剰の燃料ガスを燃料供給ライン6の外部へ逃す。これにより、負荷急減時にエンジン9へ供給される燃料ガスを減らし、エンジン9の回転数の過度な上昇を抑制する。なお、排気ライン7を通じてエアクリーナーボックス3へ導かれた燃料ガスは、大量の空気と混ざりエンジン9へ供給されるが、その量は空気と比べ、ごく僅かであり、回転数上昇への影響は無視することができる。また、燃料ガスをエアクリーナーボックス3へ導くことで、燃料ガスをエンジン9や不図示の発電機の周囲に開放することが無いので安全性を保つことができ、大量の空気と共に空気供給ライン4を通じて、エンジン9へ供給することになるので燃費の向上に貢献することができる。
【0015】
制御装置10は、ベントバルブ8の開閉を制御する。制御装置10は、信号取得部11と、制御部12と、を備える。
信号取得部11は、ガスエンジン1の負荷の急減を示す負荷急減信号を取得する。信号取得部11は、負荷急減信号に加え、ガスエンジン1の時々刻々の負荷の大きさを示す負荷信号、エンジン9の時々刻々の回転数を示す回転数信号を取得してもよい。これらの信号は、不図示の上位制御装置や回転数を検出するセンサなどから送信される。例えば、ガスエンジン1の負荷が、一定の時間内に所定値以上低下すると、不図示の上位制御装置は、負荷急減信号を生成し、制御装置10へ出力する。また、負荷の急減が終了すると、不図示の上位制御装置は、負荷急減信号の出力を停止する。また、例えば、不図示の上位制御装置は、所定の制御周期で負荷信号や回転数信号を制御装置10へ出力する。信号取得部11は、これらの信号を取得し、取得した信号を制御部12へ出力する。
【0016】
制御部12は、ベントバルブ8の開閉を制御する。例えば、信号取得部11が負荷急減信号を取得すると、制御部12は、ベントバルブ8を開く。その後、信号取得部11が負荷急減信号を取得しなくなると、制御部12は、ベントバルブ8を閉じる。あるいは、信号取得部11が取得する負荷信号が示すガスエンジン1の負荷が、負荷急減後に安定(負荷の大きさが所定の範囲内に収まる)すると、制御部12は、ベントバルブ8を閉としてもよい。また、制御部12は、信号取得部11が取得する回転信号が示すエンジン9の回転数が、負荷急減後に上昇し、その後、低下し始めると、ベントバルブ8を閉としてもよい。なお、燃料制御弁5の開度は、ガスエンジン1の負荷に応じて、不図示の上位制御装置によって制御される。例えば、負荷急減時には、燃料制御弁5の開度は、瞬時に所定の開度まで絞られる。
【0017】
(動作)
次にベントバルブ8の制御について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係るベントバルブ制御の一例を示すフローチャートである。
ベントバルブ8は、通常の運転時には、閉とされている。制御部12は、負荷急減信号が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。信号取得部11が、負荷急減信号を取得しない間は、制御部12は、負荷急減信号が入力されていないと判定し(ステップS1;No)、ステップS5の処理へ進む。
【0018】
信号取得部11が、負荷急減信号を取得すると、制御部12は、負荷急減信号が入力されたと判定し(ステップS1;Yes)、ベントバルブ8を開とする(ステップS2)。これにより、燃料制御弁5を通過した後の燃料供給ライン6に残留した余剰の燃料ガスの一部が排気ライン7を通じて、エアクリーナーボックス3へ排出され、従来よりも、エンジン9へ供給される燃料ガスの量を低減することができる。
【0019】
ベントバルブ8を開とすると、次に制御部12は、ベントバルブ8を閉とする条件が成立するか否かを判定する(ステップS3)。ベントバルブ8を閉とする条件とは、例えば、以下のようなものである。
(1)負荷急減信号の入力がなくなる。制御部12は、信号取得部11が、負荷急減信号を取得しなくなると、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したと判定する。
(2)急減した負荷が安定する。制御部12は、信号取得部11によって取得された負荷信号が示すガスエンジン1の負荷の大きさが急減後に一定になると、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したと判定する。
(3)跳ね上がった回転数が低下に転じる。制御部12は、信号取得部11によって取得された回転数信号が示すエンジン9の回転数が、負荷急減後、跳ね上がり、低下し始めると、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したと判定する。
図3に負荷急減時のエンジン9の回転数の一例を示す。図示するように、時刻T1に負荷が急減し、燃料制御弁5が絞られると、一時的にエンジン9の回転数が跳ね上がる。跳ね上がった回転数が低下し始めると、制御部12は、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したと判定する。
(4)所定の時間が経過する。制御部12は、信号取得部11が、負荷急減信号を取得してから所定の時間が経過すると、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したと判定する。
制御部12は、上記の(1)~(4)の何れかの条件に基づいて、ベントバルブ8を閉とする条件が成立したかどうかを判定する。(1)~(4)の何れの条件に基づいて判定するかについては、ユーザが任意に設定することができてもよい。条件が成立した場合(ステップS3;Yes)、制御部12は、ベントバルブ8を閉とする(ステップS4)。条件が成立しない場合(ステップS3;No)、制御部12は、ステップS3の判定を繰り返し行う。
【0020】
次に制御部12は、ベントバルブ8の開閉制御を終了するかどうかを判定する(ステップS5)。例えば、ユーザにより、ガスエンジン1の停止指示が入力されると、制御部12は、開閉制御を終了すると判定し(ステップS5;Yes)、
図2のフローチャートの処理を終了する。開閉制御を終了しない場合(ステップS5;No)、ステップS1からの処理が繰り返し実行される。
【0021】
(効果)
図3に、本実施形態のベントバルブ8の開閉制御を適用した場合とそうでない場合の、負荷急減時におけるエンジン回転数の挙動の一例を示す。
図3の縦軸は回転数、横軸は時間を示している。グラフ31、32は、従来制御におけるエンジン回転数の推移を示し、グラフ33は、ベントバルブ8の開閉制御を適用した場合のエンジン回転数の推移を示す。また、何れの場合も時刻T1に負荷急減が生じている。従来制御によるグラフ31を参照すると、負荷急減後の回転数の跳ね上がりが大きく、閾値Th1を超過している。グラフ32においても、負荷急減後の回転数は、閾値Th1に迫る勢いで上昇している。このように従来技術では、閾値Th1に対して全く余裕がなく、場合によっては閾値Th1を超過する場合がある。これに対し、本実施形態に係るグラフ33を参照すると、グラフ31、32に比べ負荷急減後の回転数の跳ね上がりを低く抑えられていることが分かる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来、燃料制御弁5を通過した燃料ガスが全てエンジン9に投入されることに対して、燃料制御弁5の下流側のエンジン9の近傍に燃料ガスを放出するための排気ライン7およびベントバルブ8を設ける。そして、ガスエンジン1の負荷が急減された際には、瞬時に燃料制御弁5を絞るとともにベントバルブ8を開くことで燃料制御弁5の下流側の配管に残留する余剰燃料ガスを排出し、エンジン9内への流入を防ぐ。これにより、従来は、ガスエンジンの負荷が急減した際に余剰燃料によって回転数が跳ね上がりオーバーシュートしていたのに対して、回転数の跳ね上がりを抑制することができる(
図3)。
【0023】
また、排出した燃料ガスは安全性と燃費の観点から大気開放とせずに、エンジン9の吸入空気系(例えば、エアクリーナーボックス3)へ戻す配管構造とする。これにより、発電機の周辺に可燃物を放出せず安全性を保つことができ、またエンジン9の燃料として再使用可能なことから燃費向上に貢献することができる。
【0024】
(他の構成例)
なお、
図1の構成例では、排気ライン7の他端をエアクリーナーボックス3へ接続することとしたが、エアクリーナーボックス3に限らず、空気供給ライン4の他の位置に接続するようにしてもよい。また、排気ライン7の他端を、空気供給ライン4へ接続するのではなく、燃料ガスを大気解放させたり、燃料供給ライン6へ循環させるように構成してもよい。
図4A、
図4Bに、排気ライン7の他の構成例を示す。
図4Aに例示するように排気ライン7の他端はどこにも接続せず、燃料ガスを大気解放してもよい。この場合、発電機の周辺に可燃物を放出することがないよう排気ライン7によって燃料ガスを安全な位置まで導いて大気へ解放するようにする。
図4Bに例示するように排気ライン7の他端を燃料供給ライン6に接続し、燃料ガスを燃料供給ライン6へ戻すようにしてもよい。例えば、燃料供給ライン6における燃料制御弁5よりも上流側へ接続するようにしてもよい。これにより、安全性を担保するとともに、燃費向上に貢献することができる。また、排気ライン7の他端を、空気供給ライン4へ接続するか、燃料供給ライン6へ接続するか、何処にも接続しないかを切り替えられるように構成してもよい。
【0025】
図5は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。上述の制御装置10は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0026】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路もプロセッサの一例に含まれる。
【0027】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0028】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0029】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0030】
<付記>
各実施形態に記載の制御装置、ガスエンジン、制御方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0031】
(1)第1の態様に係るガスエンジンは、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御装置であって、前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得する信号取得部と、前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開く制御部と、を備える。
これにより、ガスエンジンの負荷が急減した際に余剰燃料によって回転数が跳ね上がることを抑制することができる。
【0032】
(2)第2の態様に係るガスエンジンは、(1)のガスエンジンであって、前記制御部は、前記ベントバルブを開いた後に、前記負荷が安定すると、前記ベントバルブを閉じる。
これにより、必要に応じてベントバルブを開閉し、燃料ガスを無駄に放出するようなことがなくなる。
【0033】
(3)第3の態様に係るガスエンジンは、(1)~(2)のガスエンジンであって、前記制御部は、前記ベントバルブを開いた後に、前記ガスエンジンの回転数の上昇が低下に転じると、前記ベントバルブを閉じる。
これにより、必要に応じてベントバルブを開閉し、燃料ガスを無駄に放出するようなことがなくなる。
【0034】
(4)第4の態様に係るガスエンジンは、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインに設けられた燃料制御弁と、燃料供給ラインにおける前記燃料制御弁よりも下流側において一端が接続された前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインと、前記排気ラインに設けられたベントバルブと、(1)~(3)に記載の制御装置と、を備える。
これにより、負荷急減時に燃料制御弁よりも下流側の燃料供給ラインに存在する燃料ガスを排出することができ、エンジン回転数の過度の上昇、その結果のトリップを回避することができる。
【0035】
(5)第5の態様に係るガスエンジンは、(4)のガスエンジンであって、前記ガスエンジンへ空気を供給する空気供給ラインをさらに備え、前記排気ラインの他端は、前記空気供給ラインに接続される。
これにより、負荷急減時に燃料制御弁よりも下流側の燃料供給ラインに存在する燃料ガスを排出することができる。また、安全性を担保し燃費を節約することができる。
【0036】
(6)第6の態様に係るガスエンジンは、(4)のガスエンジンであって、前記排気ラインの他端は、前記燃料供給ラインにおける前記燃料制御弁よりも上流側に接続される。
これにより、負荷急減時に燃料制御弁よりも下流側の燃料供給ラインに存在する燃料ガスを排出することができる。また、安全性を担保し燃費を節約することができる。
【0037】
(7)第7の態様に係るガスエンジンは、(4)のガスエンジンであって、前記排気ラインの他端が、接続されていない(
図4A)。
これにより、負荷急減時に燃料制御弁よりも下流側の燃料供給ラインに存在する燃料ガスを排出することができる。
【0038】
(8)第8の態様に係るガスエンジンは、(4)~(7)のガスエンジンであって、前記排気ラインの一端は、前記一端が接続される位置から前記燃料制御弁までの距離よりも、前記一端が接続される位置から前記ガスエンジンまでの距離のほうが短くなる位置で前記燃料供給ラインに接続されている。
これにより、負荷急減時に燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側に存在する燃料ガスを効果的に逃がすことができる。
【0039】
(9)第9の態様に係る制御方法は、ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブの制御方法であって、前記ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、前記信号を取得すると、前記ベントバルブを開くステップと、を有する制御方法である。
【0040】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータに、ガスエンジンの負荷の急減を示す信号を取得するステップと、前記信号を取得すると、前記ガスエンジンへ燃料を供給する燃料供給ラインの燃料制御弁よりも下流側において接続された、前記燃料を前記燃料供給ラインの外部へ導く排気ラインに設けられたベントバルブを開くステップと、を実行させるプログラムである。
【符号の説明】
【0041】
1・・・ガスエンジン
2・・・エアクリーナー
3・・・エアクリーナーボックス
4・・・空気供給ライン
5・・・燃料制御弁
6・・・燃料供給ライン
7・・・排気ライン
8・・・ベントバルブ
9・・・エンジン
10・・・制御装置
11・・・信号取得部
12・・・制御部
31,32,33・・・グラフ
90・・・コンピュータ
91・・・プロセッサ
92・・・メインメモリ
93・・・ストレージ
94・・・インタフェース