(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140597
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051800
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼岡 咲美
(72)【発明者】
【氏名】小島 理
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08Z
2H149FA12Y
2H149FA13Y
2H149FA24Y
2H149FA26Y
(57)【要約】
【課題】画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る光学フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学フィルムは、偏光部材または位相差部材の少なくとも一つを含む光学フィルムであって、端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径50μmを超え150μm以下の異物の量は10個以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光部材または位相差部材の少なくとも一つを含む光学フィルムであって、
端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径50μmを超え150μm以下の異物の量は10個以下である、
光学フィルム。
【請求項2】
前記端面の単厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径150μmを超える異物の量は3個以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径100μmを超え150μm以下の異物の量は3個以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径15μmを超え50μm以下の異物の量は60個以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径5μmを超え15μm以下の異物の量は30個以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記異物は、前記光学フィルムに含まれる部材由来の成分を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されており、高精細化等の視認性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VRゴーグルでは、レンズを介して画像を視認することから、VRゴーグル内に存在する微小な異物は視認されやすい傾向にある。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る光学フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.本発明の実施形態による光学フィルムは、偏光部材または位相差部材の少なくとも一つを含む光学フィルムであって、端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径50μmを超え150μm以下の異物の量は10個以下である。
2.上記1に記載の光学フィルムにおいて、上記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径150μmを超える異物の量は3個以下であってもよい。
3.上記1または2に記載の光学フィルムにおいて、上記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径100μmを超え150μm以下の異物の量は3個以下であってもよい。
4.上記1から3のいずれかに記載の光学フィルムにおいて、上記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径15μmを超え50μm以下の異物の量は60個以下であってもよい。
5.上記1から4のいずれかに記載の光学フィルムにおいて、上記端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径5μmを超え15μm以下の異物の量は30個以下であってもよい。
6.上記1から5のいずれかに記載の光学フィルムにおいて、上記異物は、上記光学フィルムに含まれる部材由来の成分を含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、画像表示装置の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る光学フィルムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】切削加工の一例を説明するための模式的な斜視図である。
【
図3】VRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図である。
【
図4】光学フィルムの詳細の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0012】
図1は本発明の1つの実施形態に係る光学フィルムを模式的に示す斜視図であり、複数の光学フィルムが重ねられた状態を示す図である。光学フィルム2は、代表的には、光学フィルム本体の外周面を所望の平面視形状に切削することにより得ることができる。光学フィルム2の端面2aは、切削加工を施した加工面である。切削は、例えば、製造効率の観点から、複数の光学フィルム本体に対して同時に行うことができる。具体的には、切削は、複数の光学フィルム本体を重ねて集合体(ワークともいう)を形成し、重ねた状態の複数の光学フィルム本体に対して行うことができる。なお、
図1は、ワークに切削加工を施した後の状態を示している。
【0013】
上記切削加工は、代表的には、切削刃による加工である。
図2は、切削加工の一例を説明するための模式的な斜視図である。光学フィルム本体3を複数重ねて、ワーク4が形成される。ワーク4の形成に際し、各光学フィルム本体3は、予め、目的に応じた任意の適切な形状に切断されている。
図2に示す例では、光学フィルム本体3は矩形に切断されているが、他の形状(例えば、円形)に切断されていてもよい。ワーク4を形成する光学フィルム本体3の枚数は、特に限定されないが、例えば10枚~200枚であってもよく、10枚~100枚であってもよい。ワーク4の厚みは、例えば、5mm~50mmである。
【0014】
図2に示す例では、切削工具の切削部6により、ワーク4の外周面4aを切削する。具体的には、切削部6に設けられた切削刃8をワーク4の外周面4aに当て、ワーク4の外周面4aを切削する。
図2に示す例では、切削工具であるエンドミルの切削部6を自転させながら、ワーク4の外周面4aに沿ってエンドミルを移動させて切削する。切削部6の回転数は、例えば1000rpm~60000rpmである。切削部6の送り速度は、例えば500mm/分~10000mm/分である。切削加工は、ワーク4の外周面4aの全周にわたって施してもよいし、所定の部位に選択的に施してもよい。なお、切削時には、ワーク4は図示しない固定具により固定され得る。
【0015】
光学フィルム2の加工面である端面2aは、切削加工により生じるケバが除去されていることが好ましい。ケバの具体例としては、切削不良または削り残しが挙げられる。例えば、ケバは、その一部が光学フィルムの端面につながるひげ状の突起物であり得る。ケバは、光学フィルムに含まれる部材由来の成分を含み得る。
【0016】
光学フィルム2の端面2aの厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径150μmを超える異物の量は、3個以下であることが好ましく、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個以下であり、特に好ましくは0個である。光学フィルム2の端面2aの厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径50μmを超え150μm以下の異物の量は、10個以下であることが好ましく、より好ましくは5個以下であり、さらに好ましくは3個以下であり、特に好ましくは1個以下である。光学フィルム2の端面2aの厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径100μmを超え150μm以下の異物の量は、3個以下であることが好ましく、より好ましくは2個以下であり、さらに好ましくは1個以下であり、特に好ましくは0個以下である。光学フィルム2の端面2aの厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径50μmを超え100μm以下の異物の量は、10個以下であることが好ましく、より好ましくは5個以下であり、さらに好ましくは3個以下であり、特に好ましくは1個以下である。ここで、長径とは、断面図形における任意の2点間の直線距離のうち最大となる距離をいう。
【0017】
光学フィルムは、代表的には、画像表示装置に適用され得る。画像表示装置において、光学フィルムから生じる異物が視認性に影響を及ぼす場合がある。具体的には、光学フィルムから生じる異物は欠点として視認される場合がある。切削加工により生じるケバを除去することにより、画像表示装置の視認性の向上に寄与し得る。具体的には、切削加工により生じるケバを除去することにより、画像表示装置または画像表示パネルの製造工程において、光学フィルムから生じる異物を減少させて、欠点の発生を抑制し得る。VRゴーグルにおいては、異物は拡大され得、欠点として視認されやすい傾向にある。したがって、切削加工により生じるケバが除去されていることにより、視認性の向上に大きく寄与し得る。
【0018】
光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの異物の量(数)は、粘着フィルムを用いることにより求めることができる。具体的には、粘着フィルムを光学フィルムの端面に貼り付けて剥がしたときの粘着フィルム粘着面に付着した異物の数をカウントすることにより、単位長さ当たりの異物の量を求めることができる。1つの実施形態においては、
図1に示すように、複数の光学フィルムを互いの端面が面一となるように揃えて重ね、形成された面一の面に所定のサイズの粘着フィルムFを貼り付けて剥がした後、粘着フィルムFの粘着面に付着した所定の範囲内の異物の数をカウントし、カウントした数を所定の範囲内に存在する光学フィルムの枚数で除することにより求めることができる。複数の光学フィルム本体を重ねた状態で切削した場合は、切削後に光学フィルムを揃えることなく、上記面一の面が形成され得る。上記カウントは、例えば、インテクノス・ジャパン社製のPartSensを用いて行うことができる。
【0019】
上記異物の量をカウントする際に用いられる粘着フィルムFの剥離力(例えば、ガラス板に対する剥離力)は、3.5N/25mm程度であり得る。
【0020】
光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径15μmを超え50μm以下の異物の量は、好ましくは80個以下であり、より好ましくは60個以下であり、さらに好ましくは40個以下である。光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径15μmを超え50μm以下の異物の量は、例えば、20個以上であってもよく、30個以上であってもよい。
【0021】
光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径5μmを超え15μm以下の異物の量は、好ましくは30個以下であり、より好ましくは20個以下であり、さらに好ましくは10個以下である。光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの長径5μmを超え15μm以下の異物の量は、例えば、1個以上であってもよく、10個以上であってもよい。
【0022】
上記ケバの除去の方法としては、上記異物の量を達成し得る任意の適切な方法が採用され得る。1つの実施形態においては、テープを用いてケバを除去する。テープを用いることにより効率的にケバを除去し得る。テープによる除去は複数回行うことが好ましい。具体的には、切削加工面にテープを貼り付けて剥がす操作を複数回行うことにより除去することが好ましい。
【0023】
除去に用いられる上記テープの剥離力は、好ましくは2N/25mm以上であり、より好ましくは3N/25mm以上である。このような剥離力によれば、ケバが良好に除去され得る。一方、テープの剥離力は、好ましくは10N/25mm以下であり、より好ましくは5N/25mm以下である。このような剥離力によれば、光学フィルムにおいて、層間剥離、浮き等の不具合の発生を抑制し得る。
【0024】
別の実施形態においては、切削加工面に気体(例えば、エア)を吹き付けてケバを除去する。好ましくは、加圧気体を吹き付けてケバを除去する。
【0025】
本発明の実施形態による光学フィルムは、代表的には、偏光部材、位相差部材等の光学部材を含む。上記光学フィルムは、任意の適切な画像表示装置に用いられ得る。上記光学フィルムは、例えば、VRゴーグルに好適に用いられ得る。
【0026】
図3はVRゴーグルの表示システムの一例の概略の構成を示す模式図であり、表示システムの各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム10は、表示素子12と、反射型偏光部材14と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第1のλ/4部材20と、第2のλ/4部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材14は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材14との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第1のλ/4部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第2のλ/4部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材14との間の光路上に配置されている。
【0027】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0028】
第1のλ/4部材20は、第1のλ/4部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得る。第1のλ/4部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0029】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材14で反射された光を反射型偏光部材14に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0030】
第2のλ/4部材22は、反射型偏光部材14およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材14を透過させ得る。第2のλ/4部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられてもよい。
【0031】
第1のλ/4部材20から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材22から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材14で反射される。
【0032】
反射型偏光部材14で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材22により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材22から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。このとき、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材14の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材14に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材14を透過する。
【0033】
反射型偏光部材14を透過した光は、第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。
【0034】
表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材14の反射軸とは互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第1のλ/4部材20の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第2のλ/4部材22の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。
【0035】
第1のλ/4部材20の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第1のλ/4部材20は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第1のλ/4部材20のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0036】
第2のλ/4部材22の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。第2のλ/4部材22は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第2のλ/4部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上1未満であり、0.8以上0.95以下であってもよい。
【0037】
図示しないが、表示システム10は、反射型偏光部材14の前方に配置される吸収型偏光部材を備えていてもよい。反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得る。
【0038】
本発明の実施形態による光学フィルムは、例えば、上記表示システムに備えられる部材を含むことができる。具体的には、光学フィルムは、反射型偏光部材、吸収型偏光部材等の偏光部材を含むことができる。また、光学フィルムは、λ/4部材等の位相差部材を含むことができる。さらに、光学フィルムは、保護部材、隣り合う部材を一体化するための接着層、表面保護フィルム、はく離ライナー等の他の部材を含むことができる。光学フィルムの厚みは、例えば、含まれる部材の種類、数により異なるが、例えば200μm~400μmである。
【0039】
図4は、光学フィルムの詳細の一例を示す模式的な断面図である。
図4は、切削加工前の光学フィルム本体の詳細の一例を示す模式的な断面図でもあり得る。光学フィルム2は、第1のλ/4部材20と、第1のλ/4部材20の片側に配置される偏光部材12bと、第1のλ/4部材20のもう片側に配置される保護部材30と、を含んでいる。偏光部材12bは、上記表示素子(表示素子12)に含まれ得る偏光部材に対応し得る。偏光部材12b側には接着層(例えば、粘着剤層)40が設けられ、その表面には、はく離ライナー50が貼り合わされている。また、保護部材30の表面には、表面保護フィルム60が貼り合わされている。
【0040】
第1のλ/4部材20は、好ましくは、屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、ny<nzとなる場合があり得る。第1のλ/4部材20のNz係数は、好ましくは0.9~3であり、より好ましくは0.9~2.5であり、さらに好ましくは0.9~1.5であり、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0041】
第1のλ/4部材20は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第1のλ/4部材20は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0042】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。組み合わせる方法としては、例えば、ブレンド、共重合が挙げられる。第1のλ/4部材20が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0043】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第1のλ/4部材20に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第1のλ/4部材20の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0044】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第1のλ/4部材20の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μmであり、より好ましくは20μm~60μmである。
【0045】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第1のλ/4部材20においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第1のλ/4部材20の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0046】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0047】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0048】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0049】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0050】
液晶配向固化層で構成される第1のλ/4部材20の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~6μmであり、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0051】
偏光部材12bとしては、例えば、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光膜と称する場合がある)を含み得る。吸収型偏光膜の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0052】
上記吸収型偏光膜は、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0053】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光膜を得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光膜が好ましい。
【0054】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0055】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光膜は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光膜とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光膜の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光膜の保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光膜の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光膜の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0056】
偏光部材(吸収型偏光膜)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。偏光部材(吸収型偏光膜)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。偏光部材(吸収型偏光膜)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0057】
上記直交透過率、単体透過率および偏光度は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。偏光度Pは、紫外可視分光光度計を用いて、単体透過率Ts、平行透過率Tpおよび直交透過率Tcを測定し、得られたTpおよびTcから、下記式により求めることができる。なお、Ts、TpおよびTcは、JIS Z 8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。
偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0058】
保護部材30は、代表的には、基材を含む。基材は、任意の適切なフィルムで構成され得る。基材を構成するフィルムの主成分となる材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の樹脂が挙げられる。基材の厚みは、好ましくは5μm~80μmであり、より好ましくは10μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。
【0059】
保護部材30は、好ましくは、基材に加え、基材上に形成される表面処理層を有していてもよい。表面処理層を有する保護部材は、その基材が第1のλ/4部材20側に位置するように配置され得る。表面処理層は、任意の適切な機能を有し得る。表面処理層は、例えば、反射防止機能を有することが好ましい。表面処理層の厚みは、好ましくは1μm~20μmであり、より好ましくは2μm~15μmであり、さらに好ましくは3μm~10μmである。
【0060】
図示しないが、光学フィルム2(例えば、第1のλ/4部材20と保護部材30との間)には、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示し得る部材(いわゆる、ポジティブCプレート)が設けられていてもよい。ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-50nm~-300nmであり、より好ましくは-70nm~-250nmであり、さらに好ましくは-90nm~-200nmであり、特に好ましくは-100nm~-180nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は、例えば10nm未満である。
【0061】
ポジティブCプレートは、任意の適切な材料で形成され得るが、ポジティブCプレートは、好ましくは、ホメオトロピック配向に固定された液晶材料を含むフィルムから構成される。ホメオトロピック配向させることができる液晶材料(液晶化合物)は、液晶モノマーであってもよいし、液晶ポリマーであってもよい。このような液晶化合物およびポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の液晶化合物および当該位相差層の形成方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~5μmである。
【0062】
はく離ライナー50は、任意の適切な樹脂フィルムで形成される。当該樹脂フィルムの主成分となる材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。樹脂フィルムの材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0063】
はく離ライナー50における接着層40との接触面には、離型処理層が設けられていてもよい。離型処理層を形成する離型処理剤としては、例えば、シリコーン系離型処理剤、フッ素系離型処理剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。これらは、単独でまたは組み合わせて使用できる。離型処理層の厚みは、代表的には50nm以上400nm以下である。はく離ライナーの厚みは、例えば5μm以上60μm以下であり、好ましくは20μm以上45μm以下である。なお、離型処理層が施されている場合、はく離ライナーの厚みは、離型処理層の厚みを含めた厚みである。
【0064】
表面保護フィルム60としては、代表的には、基材フィルムと粘着剤層との積層物が用いられる。基材フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。基材フィルムの厚みは、例えば5μm以上200μm以下であり、好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0065】
上記積層物の粘着剤層としては、任意の適切な構成が採用され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂は、好ましくはアクリル樹脂である(具体的には、粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される)。粘着剤層の厚みは、例えば5μm~15μmである。
【0066】
図示しないが、光学フィルムに含まれる各部材は、接着層を介して一体化されていることが好ましい。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは3μm~20μmであり、さらに好ましくは5μm~15μmである。
【実施例0067】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚み、位相差値および剥離力は下記の測定方法により測定した値である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<位相差値>
ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrics社製、製品名「Axoscan」)を用いて、23℃における各波長での位相差値を測定した。
<剥離力>
剥離力は、幅25mm、長さ150mmのサイズに切り出したサンプルをガラス板に貼り合わせた後、サンプルを万能引張試験機にて剥離速度300mm/分、剥離角度90°で長さ方向に剥離したときの剥離力(N/25mm)を、23℃、50%RHの環境下で測定した。なお、同じサンプルに対し5回測定を行い、平均値を算出した。
【0068】
[実施例1]
(λ/4部材の作製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60質量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21質量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28質量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77質量部(0.298mol)及び触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2質量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
【0069】
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み135μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度143℃、延伸倍率2.8倍で延伸し、厚み47μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムのRe(550)は143nmであり、Re(450)/Re(550)は0.86であり、Nz係数は1.12であった。
【0070】
(ポジティブCプレートの形成)
下記化学式(1)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、垂直配向処理を施したPET基材に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、厚みが4μm、Rth(550)が-100nmのポジティブCプレートを基材上に形成した。
【化1】
【0071】
(保護部材の作製)
ラクトン環構造を有するアクリルフィルム(厚み40μm)に、下記のハードコート層形成材料を塗布して90℃で1分間加熱し、加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚み4μmのハードコート層が形成されたアクリルフィルム(厚み44μm)を作製した。
次いで、上記ハードコート層上に、下記の反射防止層形成用塗工液Aをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み140nmの反射防止層Aを形成した。
続いて、反射防止層A上に、下記の反射防止層形成用塗工液Bをワイヤーバーで塗工し、塗工した塗工液を80℃で1分間加熱し、乾燥させて塗膜を形成した。乾燥後の塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み105nmの反射防止層Bを形成した。
こうして、保護部材(厚み44μm)を得た。
【0072】
(ハードコート層形成材料)
ウレタンアクリルオリゴマー(新中村化学社製、「NKオリゴ UA-53H」)50部、ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート#300」)30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)20部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)1部および光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、「イルガキュア907」)3部を混合し、固形分濃度が50%になるようにメチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成材料を調製した。
【0073】
(反射防止層形成用塗工液A)
多官能アクリレート(荒川化学工業株式会社製、商品名「オプスターKZ6728」、固形分20重量%)100重量部、レベリング剤(DIC社製、「GRANDIC PC4100」)3重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒として酢酸ブチルを用いて固形分が12重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Aを調製した。
【0074】
(反射防止層形成用塗工液B)
ペンタエリストールトリアクリレートを主成分とする多官能アクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」、固形分100重量%)100重量部、中空ナノシリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア5320」、固形分20重量%、重量平均粒子径75nm)150重量部、中実ナノシリカ粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「MEK-2140Z-AC」、固形分30重量%、重量平均粒子径10nm)50重量部、フッ素元素含有添加剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KY-1203」、固形分20重量%)12重量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」、固形分100重量%)3重量部を混合した。その混合物に、希釈溶媒としてTBA(ターシャリーブチルアルコール)、MIBK(メチルイソブチルケトン)およびPMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を60:25:15重量比で混合した混合溶媒を添加して全体の固形分が4重量%となるようにし、攪拌して反射防止層形成用塗工液Bを調製した。
【0075】
(偏光部材の作製)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(三菱ケミカル社製、商品名「ゴーセネックスZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる吸収型偏光膜の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの吸収型偏光膜を形成した。
得られた吸収型偏光膜の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、保護層としてのシクロオレフィン系樹脂フィルム(厚み:25μm)を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが約1μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線をシクロオレフィン系樹脂フィルム側から照射して接着剤を硬化させた。次いで、樹脂基材を剥離した。
これによって、シクロオレフィン系樹脂フィルム/吸収型偏光膜の構成を有する偏光部材を得た。偏光部材の単体透過率(Ts)は43.4%であり、偏光度は99.993%であった。
【0076】
(粘着剤層の形成)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100重量部に対して、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキシド0.3重量部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入してフラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃に保って7時間重合反応を行った。次いで、得られた反応液に酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%に調整し、重量平均分子量(Mw)220万のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(商品名:コロネートL、東ソー社製)0.6重量部と、シランカップリング剤(商品名:KBM403、信越化学工業社製)0.075重量部を配合して、アクリル系粘着剤を調製した。
得られたアクリル系粘着剤組成物を基材フィルムに塗工して乾燥し、厚みが12μmの粘着剤層および厚みが15μmの粘着剤層を形成した。
【0077】
(製造例1A:表面保護フィルムAの作製)
<アクリルポリマーA>
温度計、攪拌機、冷却器および窒素ガス導入管を備える反応容器内に、モノマー成分として、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)96.2質量部、およびヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.8質量部、ならびに重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を酢酸エチル150質量部とともに仕込み、23℃で緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換を行った。その後、液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリルポリマーAの溶液(濃度40質量%)を調製した。アクリルポリマーAの重量平均分子量は54万であった。
【0078】
<粘着剤組成物A>
アクリルポリマーAの溶液に酢酸エチルを加えて濃度20質量%に希釈した。この溶液500質量部(固形分100質量部)に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製「コロネートHX」)4質量部、および架橋触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)を加えて攪拌し、粘着剤組成物Aを調製した。
【0079】
<表面保護フィルムA>
基材(PETフィルム、KOLON社製「CE905-38」、厚み38μm)の片面に、粘着剤組成物Aを塗布し、その後乾燥させて粘着剤層(厚み15μm)を形成した。次いで、粘着剤層の基材と反対側の表面に、はく離ライナー(東洋紡社製、品番TG704)を貼り付けた。これにより表面保護フィルムAを得た。
【0080】
(製造例1C:表面保護フィルムCの作製)
基材としてPETフィルム(三菱ケミカル社製「品番T100C38」、厚み38μm)を用い、そのコロナ処理面に粘着剤組成物Aを塗布して厚み5μmの粘着剤層を形成したこと以外は製造例1Aと同様にして表面保護フィルムCを得た。
【0081】
(積層フィルムの作製)
上記λ/4部材(延伸フィルム)に紫外線硬化型接着剤(硬化後の厚み1μm)を介して上記ポジティブCプレートを貼り合わせて、位相差部材を得た。
得られた位相差部材のポジティブCプレート側に、上記粘着剤層(厚み:12μm)を介して上記保護部材(ハードコート層および反射防止層が形成されたアクリルフィルム)を貼り合わせた。ここで、保護部材のアクリルフィルムがポジティブCプレート側に位置するように貼り合わせた。そして、保護部材の反射防止層側に、上記表面保護フィルムAおよび表面保護フィルムCを、それぞれはく離ライナーを剥がして、この順に貼り合わせた。
次いで、位相差部材のλ/4部材側に、上記粘着剤層(厚み:12μm)を介して、上記偏光部材を貼り合わせた。ここで、λ/4部材の遅相軸と吸収型偏光膜の吸収軸とのなす角度が45°となるように貼り合わせた。また、偏光部材の吸収型偏光膜がλ/4部材側に位置するように貼り合わせた。そして、偏光部材のシクロオレフィン系樹脂フィルム側に、上記粘着剤層(厚み:15μm)を貼り合わせ、はく離ライナー(東洋紡社製、品番TG704)を貼り合わせた。
こうして厚み330μmの積層フィルムを得た。
【0082】
得られた積層フィルムから、縦50mm×横60mmサイズの光学フィルム本体を20枚打ち抜き、これらを重ねて
図2に示すようなワークを形成した。得られたワークをクランプで固定し、
図2に示すように、ワークの外周面にエンドミル加工を施した。エンドミルの送り速度は1200mm/分であり、回転数は4500rpmであった。
【0083】
切削後、ワークの切削加工面に、剥離力3.5N/25mmのテープ(基材付きアクリル系粘着テープ)を貼り付けて剥がし、切削により発生したケバが目視で確認されなくなるまで、この操作を続けた。
こうして光学フィルムを得た。
【0084】
[実施例2]
切削において、エンドミルの回転数を3000rpmとしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0085】
[実施例3]
切削において、エンドミルの回転数を6000rpmとしたこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0086】
[比較例1]
切削後、テープを用いてケバを除去しなかったこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
【0087】
[比較例2]
切削後、テープを用いてケバを除去しなかったこと以外は実施例2と同様にして、光学フィルムを得た。
【0088】
[比較例3]
切削後、テープを用いてケバを除去しなかったこと以外は実施例3と同様にして、光学フィルムを得た。
【0089】
実施例および比較例の光学フィルムの端面に、剥離力が3.5N/25mmで、縦30mm×横30mmのサイズの粘着フィルムを貼り合わせた。具体的には、20枚重ねた状態のまま、ワークの切削加工面に粘着フィルムを貼り合わせた。その後、光学フィルムの端面から粘着フィルムを剥がし、この粘着フィルムの粘着面に付着した異物の数を、表面清浄度パーティクルモニタ(インテクノス・ジャパン社製のPartSens)を用いてカウントした。ここで、粘着フィルム内の縦(重ねた方向)7mm×横5mmの範囲の異物の数をカウントし、カウントした個数を縦(重ねた方向)7mm×横5mmの範囲内に存在する光学フィルムの枚数で除して、光学フィルムの端面の厚み方向と直交する方向の単位長さ10mm当たりの異物の量に換算した。その結果を表1にまとめる。
【0090】
【0091】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。