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特開2024-140602車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140602
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20241003BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051805
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 健太
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB49
2F129BB53
2F129CC15
2F129CC16
2F129CC17
2F129DD13
2F129DD14
2F129DD15
2F129DD21
2F129DD53
2F129DD58
2F129EE75
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE80
2F129EE95
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF36
2F129GG17
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】利用する地図の切り替えに伴う運転計画の策定を適切なタイミングで実行することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置は、第1の地図に表された車両10が走行中の道路に関する情報と、第2の地図に表されたその道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出する乖離区間検出部31と、車両10の現在位置から乖離区間の開始地点またはその手前側に設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1及び第2の地図の一方に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、車両10が制御切替地点に到達するよりも前に、制御切替地点以遠の乖離区間を含む第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうちの他方に基づいて第2の運転計画を策定する運転計画策定部32と、第1の区間について第1の運転計画に従い、かつ、第2の区間について第2の運転計画に従うように車両10を制御する制御部34とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に関する情報を表す第1の地図及び第2の地図を記憶する記憶部と、
車両の進行方向において前記第1の地図に表された前記道路に関する情報と前記第2の地図に表された前記道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出する乖離区間検出部と、
前記車両の現在位置から前記乖離区間の前記車両側の開始地点または当該開始地点よりも前記車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、前記車両が前記制御切替地点に到達するよりも前に、前記制御切替地点以遠の前記乖離区間を含む第2の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうち、前記第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定する運転計画策定部と、
前記第1の区間について前記第1の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御し、前記第2の区間について前記第2の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御する制御部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記運転計画策定部は、前記第1の地図に基づいて前記第1の運転計画を策定し、かつ、前記第2の地図に基づいて前記第2の運転計画を策定し、
前記第1の地図に表された前記道路に関する情報の精度は前記第2の地図に表された前記道路に関する情報の精度よりも高く、前記第2の地図の更新頻度は前記第1の地図の更新頻度よりも高い、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記乖離区間検出部は、前記第1の地図に表された前記道路上または前記道路の周囲の所定の地物の位置と前記第2の地図に表された前記所定の地物の位置との距離が所定の閾値以上となるか、前記所定の地物の有無が前記第1の地図と前記第2の地図とで異なる地点を含むように前記乖離区間を検出する、請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両の進行方向において第1の地図に表された道路に関する情報と第2の地図に表された前記道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出し、
前記車両の現在位置から前記乖離区間の前記車両側の開始地点または当該開始地点よりも前記車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、
前記車両が前記制御切替地点に到達するよりも前に、前記制御切替地点以遠の前記乖離区間を含む第2の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうち、前記第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定し、
前記第1の区間について前記第1の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御し、
前記第2の区間について前記第2の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御する、
ことを含む車両制御方法。
【請求項5】
車両の進行方向において第1の地図に表された道路に関する情報と第2の地図に表された前記道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出し、
前記車両の現在位置から前記乖離区間の前記車両側の開始地点または当該開始地点よりも前記車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、
前記車両が前記制御切替地点に到達するよりも前に、前記制御切替地点以遠の前記乖離区間を含む第2の区間について、前記第1の地図及び前記第2の地図のうち、前記第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定し、
前記第1の区間について前記第1の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御し、
前記第2の区間について前記第2の運転計画に従って前記車両が走行するように前記車両を制御する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させるための車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図情報を参照して、車両の自動運転制御を実行する技術が研究されている。しかし、車両が地図情報の精度が低いエリアを走行することがある。そこで、地図情報の精度が低いエリアを走行する場合でも自動運転の継続を実現する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された運転制御方法は、走行レーンの識別情報を含む第1地図と、走行レーンの識別情報を含まない第2地図とを有する地図情報を参照し、車両の現在位置から目的地に至る経路を算出する。さらに、この運転制御方法は、その経路のうち第1地図に属する第1経路を走行するときには第1運転制御を設定し、その経路のうち第2地図に属する第2経路を走行するときには第1運転制御よりも実行可能な制御の数が少ない第2運転制御を設定し、設定した運転制御の内容で車両にその経路を走行させる運転計画を立案する。そしてこの運転制御方法は、第1運転制御と第2運転制御とが切り替わる制御変更地点を含む運転計画を、その運転計画の実行開始前に車両の乗員に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6721118号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一の道路区間において走行計画の策定に複数の地図を利用可能なことがある。このような場合に、それら地図のうちの走行計画の策定に利用される地図を切り替える地点を適切に決定することが求められる。また、利用する地図の切り替えが生じる場合、運転計画の策定のタイミングを適切に設定することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、利用する地図の切り替えに伴う運転計画の策定を適切なタイミングで実行することが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、道路に関する情報を表す第1の地図及び第2の地図を記憶する記憶部と、車両の進行方向において第1の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報と第2の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出する乖離区間検出部と、車両の現在位置から乖離区間の車両側の開始地点またはその開始地点よりも車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1の地図及び第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、車両が制御切替地点に到達するよりも前に、制御切替地点以遠の乖離区間を含む第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち、第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定する運転計画策定部と、第1の区間について第1の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御し、第2の区間について第2の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御する制御部とを有する。
【0008】
この車両制御装置において、運転計画策定部は、第1の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、第2の地図に基づいて前記第2の運転計画を策定し、第1の地図に表された道路に関する情報の精度は第2の地図に表された道路に関する情報の精度よりも高く、第2の地図の更新頻度は第1の地図の更新頻度よりも高いことが好ましい。
【0009】
また、この車両制御装置において、乖離区間検出部は、第1の地図に表された道路上またはその道路の周囲の所定の地物の位置と第2の地図に表された対応する所定の地物の位置との距離が所定の閾値以上となるか、所定の地物の有無が第1の地図と第2の地図とで異なる地点を含むように乖離区間を検出することが好ましい。
【0010】
他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、車両の進行方向において第1の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報と第2の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出し、車両の現在位置から乖離区間の車両側の開始地点またはその開始地点よりも車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1の地図及び第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、車両が制御切替地点に到達するよりも前に、制御切替地点以遠の乖離区間を含む第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち、第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定し、第1の区間について第1の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御し、第2の区間について第2の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御する、ことを含む。
【0011】
さらに他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、車両の進行方向において第1の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報と第2の地図に表された車両が走行中の道路に関する情報とが互いに乖離する乖離区間を検出し、車両の現在位置から乖離区間の車両側の開始地点またはその開始地点よりも車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1の地図及び第2の地図のうちの一方の地図に基づいて第1の運転計画を策定し、かつ、車両が制御切替地点に到達するよりも前に、制御切替地点以遠の乖離区間を含む第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち、第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定し、第1の区間について第1の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御し、第2の区間について第2の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両制御装置は、利用する地図の切り替えに伴う運転計画の策定を適切なタイミングで実行することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】(a)及び(b)は、二つの地図の乖離度と乖離区間の関係の一例を示す概念図である。
図5】変形例による乖離区間の検出の一例を示す概念図である。
図6】乖離区間と策定される個々の運転計画及びその表示タイミングの概要を説明する図である。
図7】車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置及び車両制御装置上で実行される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、二つの地図の何れかを利用して走行計画を策定し、策定した走行計画に従って車両を走行させる。より具体的に、この車両制御装置は、車両の進行方向において車両の現在位置から所定距離先までの区間において、二つの地図のそれぞれに表された、車両が走行中の道路に関する情報が互いに乖離する乖離区間を検出する。この車両制御装置は、車両の現在位置から乖離区間の車両側の開始地点またはその開始地点よりも車両の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち一方に基づいて第1の運転計画を策定する。さらに、この車両制御装置は、乖離区間を含む、制御切替地点以遠の第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち、第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定する。そしてこの車両制御装置は、第1の区間について第1の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御し、第2の区間について第2の運転計画に従って車両が走行するように車両を制御する。
【0015】
なお、本実施形態において、運転計画とは、将来における車両または車両制御装置が取るべき行動を定めた計画をいう。例えば、運転計画には、車両の目的地へ向かう道路が、車両が現在走行中の道路から分岐している場合、その道路の分岐点までに実施する1回以上の車線変更が含まれる。同様に、目的地へ向かうために、所定距離先の交差点において車両が右折または左折する予定である場合には、運転計画には、その交差点までに実施する1回以上の車線変更が含まれる。さらに、運転計画には、車両が走行中の道路の構造または制限車速に応じた車速の制御が含まれてもよい。さらにまた、運転計画には、車両が走行中の道路において、車両の現在位置から所定距離先の地点における、自動運転制御の終了(すなわち、ドライバへの運転交代)が含まれてもよい。
【0016】
本実施形態では、二つの地図のそれぞれには、道路に関する情報として、車線区画線などの道路標示、縁石、道路標識、道路沿いの看板などの地物の種類を表す情報及びそれらの地物の位置を表す情報といった運転計画の策定に利用される情報が含まれる。これら二つの地図の更新タイミングは互いに異なるものであることが好ましい。本実施形態における、地図の更新のタイミングとは、地図に表される道路に関する情報が更新されたタイミングのことをいう。例えば、地図を管理し、あるいは車両に地図を配信する地図サーバが何れかの地図の所定の道路区間についての情報を第1の日時に更新した場合、その第1の日時がその地図についての更新のタイミングとなる。
【0017】
また、二つの地図のうち、それらの地図に表される道路に関する情報の精度が高い方の地図が標準的に利用される地図(以下、第1の地図と呼ぶ)に設定されることが好ましい。これにより、適切な運転計画が策定される可能性が高くなる。なお、地図に表される道路またはその道路の周囲に設けられた地物の位置の誤差が少ないほど、あるいは、その地物の種類及び有無が確かであるほど、地図に表される道路に関する情報の精度は高いものとする。したがって、第1の地図と他方の地図(以下、第2の地図と呼ぶ)のそれぞれが最後に更新された後に何ら変更が無い道路区間について、その道路区間の地物の位置の精度及び地物の種類及び有無の確からしさは、第2の地図よりも第1の地図の方が高いことが好ましい。ただし、二つの地図のそれぞれの道路の情報の精度は同じでもよい。
【0018】
一方、第2の地図の更新頻度は、第1の地図の更新頻度よりも高いことが好ましい。これにより、例えば、第1の地図が最後に更新された後に所定の道路区間について何らかの工事が行われたために第1の地図がその所定の道路区間について正確な情報を表していない場合でも、その所定の道路区間の工事が行われたときよりも第2の地図が最後に更新されたタイミングが後であることがある。そのため、所定の道路区間について、第2の地図が正確な情報を表していることがある。そこで、車両制御装置は、第1及び第2の地図を場合に応じて使い分けることで、適切な運転計画を策定することができる。
【0019】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、カメラ2と、GPS受信機3と、無線通信端末4と、ストレージ装置5と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)6とを有する。カメラ2、GPS受信機3、無線通信端末4及びストレージ装置5とECU6とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。また、車両制御システム1は、目的地までのルートを検索するためのナビゲーション装置(図示せず)をさらに有していてもよい。
【0020】
カメラ2は、車両10の周囲を表すセンサ信号を生成するセンサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ2は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ2により得られた画像は、センサ信号の一例である。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0021】
カメラ2は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。
【0022】
GPS受信機3は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機3は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。なお、車両10は、GPS受信機の代わりに、他の衛星測位システムによる衛星からの測位信号を受信して車両10の自己位置を測位する受信機を有していてもよい。
【0023】
無線通信端末4は、所定の移動通信規格に準拠して、無線基地局との間で無線通信する。無線通信端末4は、地図サーバから、無線基地局を介して、第1の地図または第2の地図を表す地図情報、または、第1の地図あるいは第2の地図の更新情報を受信する。そして無線通信端末4は、受信した地図情報または更新情報を、車内ネットワークを介してストレージ装置5へ出力する。
【0024】
ストレージ装置5は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置5は、第1の地図及び第2の地図と、第1の地図及び第2の地図のそれぞれについて、その地図に表される個々の道路区間についての情報が最後に更新された日時を表す更新情報を記憶する。
【0025】
さらに、ストレージ装置5は、第1の地図または第2の地図の更新処理、及び、ECU6からの地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有する。ストレージ装置5は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末4を介して地図サーバへ、第1の地図及び第2の地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信する。そしてストレージ装置5は、地図サーバから無線通信端末4を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての第1の地図及び第2の地図を含む地図情報を受信し、受信した地図情報に含まれる第1の地図及び第2の地図を保存する。また、ストレージ装置5は、無線通信端末4を介して第1の地図または第2の地図の更新情報を受信すると、その更新情報を保存する。さらに、ストレージ装置5は、ECU6からの地図の読出し要求を受信すると、記憶している第1の地図及び第2の地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU6へ出力する。
【0026】
ECU6は、車両10を自動運転制御する。本実施形態では、ECU6は、第1の地図または第2の地図に基づいて運転計画を策定し、策定した運転計画にしたがって車両10を走行させるよう、車両10を自動運転制御する。
【0027】
図2に示されるように、ECU6は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0028】
通信インターフェース21は、ECU6を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、カメラ2から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機3から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ストレージ装置5から読み込んだ第1及び第2の地図と更新情報とをプロセッサ23へわたす。
【0029】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、プロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、カメラ2から受けとった車両10の周囲の画像、GPS受信機3から受け取った車両10の測位情報、ストレージ装置5から読み込んだ第1及び第2の地図と更新情報とを記憶する。さらに、メモリ22は、カメラ2の焦点距離、撮影方向及び取り付け位置などのパラメータ、及び、地物などの検出に利用される、物体検出用の識別器を特定するための各種パラメータを記憶する。さらにまた、メモリ22は、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0030】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、所定の周期ごとに、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0031】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、乖離区間検出部31と、運転計画策定部32と、提示処理部33と、制御部34とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0032】
乖離区間検出部31は、車両10の進行方向において車両10の現在位置から所定距離先までの区間において、第1の地図に表された、車両10が走行中の道路に関する情報と第2の地図に表されたその情報とが乖離する乖離区間を検出する。
【0033】
そのために、乖離区間検出部31は、最新の測位情報で示される車両10の位置を、車両10の現在位置とする。また、乖離区間検出部31は、直近の複数回の測位情報で示される車両10の位置の変化に基づいて、あるいは、車両10に搭載された方位センサ(図示せず)からECU6が受信した、車両10の方位を示すセンサ信号に基づいて、車両10の進行方向を特定する。さらに、乖離区間検出部31は、第1の地図及び第2の地図のうち、現時点において運転計画の策定に利用している地図を参照して、車両10の現在位置を含む道路を、車両10が走行中の道路として特定する。
【0034】
乖離区間検出部31は、車両10の現在位置から車両10の進行方向に沿って所定距離先までの区間において、第1の間隔(例えば、数100m~1km)ごとにサンプリング地点を設定する。そして乖離区間検出部31は、個々のサンプリング地点ごとに、そのサンプリング地点において第1の地図に表されている車両10が走行中の道路またはその周囲の地物(例えば、車線区画線、縁石、ガードレールあるいは道路標識)の位置と、第2の地図に表されている対応する地物の位置との距離を乖離度として算出する。なお、上記の例における車線区画線のように道路に沿って連続する地物を乖離度の算出に使用する場合には、乖離区間検出部31は、着目するサンプリング地点における第1の地図に表された地物の位置に対して、第2の地図に表された対応する地物の最も近い位置までの距離を乖離度として算出すればよい。なお、乖離区間検出部31は、着目するサンプリング地点における第1の地図に表された複数の地物のそれぞれの位置と、第2の地図に表された対応する地物の位置との距離の平均値を乖離度として算出してもよい。
【0035】
乖離区間検出部31は、個々のサンプリング地点について算出した乖離度を所定の閾値と比較する。そして乖離区間検出部31は、乖離度が所定の閾値以上となるサンプリング地点を特定する。乖離区間検出部31は、乖離度が所定の閾値以上となるサンプリング地点の前後において、第1の間隔よりも狭い第2の間隔(例えば、数10m~100m)ごとに、サンプリング地点を再設定する。そして乖離区間検出部31は、上記と同様に、再設定した個々のサンプリング地点について、第1の地図と第2の地図との乖離度を算出する。乖離区間検出部31は、再設定した個々のサンプリング地点のうち、乖離度が所定の閾値以上となるサンプリング地点を特定する。そして乖離区間検出部31は、乖離度が所定の閾値以上となるサンプリング地点のうち、車両10に最も近いサンプリング地点の一つ手前側のサンプリング地点から、乖離度が所定の閾値以上となるサンプリング地点のうち、車両10から最も離れた含むサンプリング地点の一つ先のサンプリング地点までの区間を、乖離区間として検出する。なお、乖離区間検出部31は、上記の処理を繰り返すことで複数の乖離区間を検出してもよい。
【0036】
図4(a)及び図4(b)は、二つの地図の乖離度と乖離区間の関係の一例を示す概念図である。なお、図4(a)において、車両10は誇張して表示されている。図4(a)に示されるように、車両10が走行中の道路において、車両10の現在位置Pから第1の間隔ごとにサンプリング地点Si(i=1,2,...,m)が設定される。そしてサンプリング地点Siごとに、第1の地図に表される車線区画線401と第2の地図に表される対応する車線区画線402間の乖離度Diが算出される。この例では、サンプリング地点SBにおいて、乖離度DBが所定の閾値Th以上となっている。
【0037】
そこで、図4(b)に示されるように、サンプリング地点SBの前後において、第2の間隔ごとにサンプリング地点Sj(j=B-n,B-(n-1),..,B-1,B,B+1,...,B+n)が再設定される。そしてサンプリング地点Sjごとに、第1の地図に表される車線区画線401と第2の地図に表される対応する車線区画線402間の乖離度Djが算出される。この例では、サンプリング地点SB-aからサンプリング地点SB+bの区間において、乖離度Djが所定の閾値Th以上となっている。そこで、サンプリング地点SB-aの一つ手前側のサンプリング地点SB-a-1からサンプリング地点SB+bの一つ先のサンプリング地点SB+b+1までの区間が乖離区間Aとして特定される。
【0038】
なお、乖離区間検出部31は、第1の地図と第2の地図とで、車線の数、あるいは車線区画線の数が異なるサンプリング地点について、所定の閾値以上の乖離度を設定してもよい。また、乖離区間検出部31は、第1の地図と第2の地図とで、車線区画線の種類が異なるサンプリング地点についても、所定の閾値以上の乖離度を設定してもよい。さらに、乖離区間検出部31は、第1の地図と第2の地図とで、道路標識あるいはガードレールといった所定の地物の有無が異なる地点を、所定の閾値以上の乖離度を持つサンプリング地点として設定してもよい。
【0039】
変形例によれば、乖離区間検出部31は、車両10の進行方向に沿って車両10の現在位置に近い方から順に、所定の間隔(例えば、数10m~100m)の地点ごとに上記の実施形態と同様に乖離度を算出してもよい。そして乖離区間検出部31は、最初に乖離度が第1の閾値(例えば、上記の所定の閾値と同じ閾値)以上となった地点を、乖離区間の車両10側の端点である開始地点とする。乖離区間検出部31は、乖離区間の開始地点よりも車両10から離れた地点のうち、最初に乖離度が第2の閾値未満となる地点を、乖離区間の車両10から遠い方の端点である終了地点とする。なお、乖離区間の開始地点を特定するための上記の第1の閾値よりも、乖離区間の終了地点を特定するための第2の閾値は低く設定されてもよい。これにより、頻繁に乖離区間とその他の区間とが切り替わるように乖離区間が設定されること、あるいは、乖離区間の終了地点が誤検出されることが抑制される。なお、上記の各閾値は、第1及び第2の地図に表される個々の地物の位置の誤差の平均値、中央値あるいは最頻値よりも大きい値に設定されることが好ましい。これにより、第1の地図が表す道路に関する情報と第2の地図が表す道路に関する情報とに実質的に相違が無い地点が乖離区間に誤って含まれることが防止される。
【0040】
また、連続する二つの乖離区間の間の距離が所定の距離閾値(例えば、数100m~1km)未満である場合、乖離区間検出部31は、それら二つの乖離区間を含む連続する一つの区間を、改めて一つの乖離区間として設定してもよい。同様に、三つ以上の乖離区間について、それらの乖離区間のうちの連続する二つの乖離区間のそれぞれの距離が距離閾値未満であれば、乖離区間検出部31は、それら三つ以上の乖離区間を含む連続する一つの区間を、改めて一つの乖離区間として設定してもよい。これにより、走行計画の生成に利用される地図が頻繁に切り替わることが防止されるので、走行計画が頻繁に切り替わることが防止される。その結果として、車両10が不自然な挙動を示すことが防止されるので、ドライバに無用な不安感を与えることが防止される。
【0041】
図5は、この変形例による乖離区間の検出の一例を示す概念図である。図5に示される例では、車両10が走行中の道路上の個々の地点における乖離度に基づいて、5個の乖離区間501~505が検出されている。ただし、乖離区間501と乖離区間502間の距離d12は所定の距離閾値Thd未満となっている。同様に、乖離区間502と乖離区間503間の距離d23、及び、乖離区間503と乖離区間504間の距離d34も、所定の距離閾値Thd未満となっている。一方、乖離区間504と乖離区間505間の距離d45は、所定の距離閾値Thd以上である。そこで、乖離区間501の開始地点から乖離区間504の終了地点までの区間510が改めて乖離区間として検出される。ただし、乖離区間505は、乖離区間510とは別個の乖離区間としてそのまま維持される。
【0042】
乖離区間検出部31は、検出した乖離区間の開始地点及び終了地点を、運転計画策定部32へ通知する。
【0043】
運転計画策定部32は、第1の地図または第2の地図に基づいて、車両10の現在位置から所定距離先までの運転計画を生成する。本実施形態では、運転計画策定部32は、車両10の現在位置から乖離区間の開始地点またはその開始地点よりも車両10の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、第1の地図及び第2の地図の一方に基づいて第1の運転計画を策定する。制御切替地点は、例えば、乖離区間の開始地点よりも制御切替オフセット距離だけ車両10の現在位置に近い位置に設定される。制御切替オフセット距離は、例えば、0m~数100m程度に設定される。特に、制御切替オフセット距離が0でない距離、例えば、100m~数100m程度に設定されることで、開始地点の近傍に車両10の挙動を変更させる必要がある地点が存在しても、運転計画が急に変更されることが防止される。また、第1の運転計画の策定に利用される、上記の一方の地図は、第1の地図及び第2の地図のうち、車両10の現在位置において車両10が従う運転計画の策定に利用された方の地図とすることができる。
【0044】
また、運転計画策定部32は、車両10が制御切替地点に到達するよりも前に、制御切替地点以遠の第2の区間について、第1の地図及び第2の地図のうち、第1の区間について利用された方の地図と異なる方の地図に基づいて第2の運転計画を策定する。第2の区間は、乖離区間を含むよう、制御切替地点から乖離区間の車両10から遠い方の端点である終了地点またはその近傍の地点までの区間として設定される。
【0045】
上記のように、道路に関する情報について、第1の地図の精度が第2の地図の精度よりも高い場合、運転計画策定部32は、第1の地図に表された情報と第2の地図に表された情報とが乖離していない第1の区間については、第1の地図に基づいて運転計画を策定することが好ましい。また、第1の地図の更新頻度よりも第2の地図の更新頻度の方が高い場合、運転計画策定部32は、乖離区間を含む、制御切替地点以遠の第2の区間について第2の地図に基づいて運転計画を策定することが好ましい。ただし、この例に限られず、道路に関する情報について、第1の地図の精度と第2の地図の精度との間に実質的な差異が無ければ、運転計画策定部32は、第1の区間について、第2の地図に基づいて運転計画を策定してもよい。また、第2の区間について、最後に道路に関する情報が更新されてからの経過時間が、第2の地図よりも第1の地図の方が短い場合、運転計画策定部32は、制御切替地点以遠の第2の区間について第1の地図に基づいて運転計画を策定することが好ましい。以下では、説明の便宜上、第1の区間について運転計画の策定に利用される地図を現地図と呼ぶことがある。また、第2の区間について運転計画の策定に利用される地図を代替地図と呼ぶことがある。
【0046】
運転計画策定部32は、現地図を参照して、第1の区間において、車両10が取るべき行動のトリガとなる地点を検出する。例えば、運転計画策定部32は、ナビゲーション装置(図示せず)からECU6が受信した、車両10の目的地までの走行ルートと現地図とを参照して、第1の区間内に、車両10が現在走行中の道路から目的へ向かう車線が分岐する分岐点が存在するか否か判定する。そのような分岐点が存在する場合、運転計画策定部32は、車両10が現在走行中の車線(以下、自車線)と目的地へ向かう車線とが異なるか否か判定する。そして運転計画策定部32は、自車線と目的地へ向かう車線とが異なる場合、目的地へ向かう車線を目標車線とする、1回以上の車線変更を実行する運転計画を策定する。
【0047】
自車線と目標車線とが異なるか否かを判定するために、運転計画策定部32は、自車線を検出する。そのために、運転計画策定部32は、カメラ2により生成された、車両10の周囲を表す画像(以下、単に画像と呼ぶことが有る)と現地図とを照合することで自車線を検出する。例えば、運転計画策定部32は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された道路上または道路周囲の地物を現地図上に投影するか、あるいは、現地図に表された車両10の周囲の道路上または道路周囲の地物を画像上に投影する。なお、道路上または道路周囲の地物は、例えば、車線区画線あるいは停止線といった道路標示、あるいは縁石とすることができる。そして運転計画策定部32は、画像から検出された地物と現地図上に表された地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の実際の自己位置として推定し、現地図上でその自己位置を含む車線を自車線として検出する。
【0048】
運転計画策定部32は、仮定される車両10の位置及び姿勢の初期値と、焦点距離、設置高さ、及び、撮影方向といった、カメラ2のパラメータとを用いて、現地図上または画像上で地物が投影される位置を決定すればよい。なお、車両10の位置及び姿勢の初期値として、GPS受信機3により測位された車両10の最新の位置、あるいは、前回の自車線検出時に推定された車両10の位置及び姿勢を、オドメトリ情報を用いて補正した位置が利用される。そして運転計画策定部32は、画像から検出された道路上または道路周囲の地物と現地図上に表された対応する地物との一致度合(例えば、対応する地物同士の距離の2乗和の逆数)を算出する。
【0049】
運転計画策定部32は、仮定される車両10の位置及び姿勢を変更しながら上記の処理を繰り返す。そして運転計画策定部32は、一致度合が最大となるときの仮定された位置及び姿勢を、車両10の実際の自己位置として推定すればよい。そして運転計画策定部32は、現地図を参照して、車両10の自己位置が含まれる車線を自車線として特定すればよい。
【0050】
なお、運転計画策定部32は、例えば、検出対象となる地物を画像から検出するように予め学習された識別器に画像を入力することで、その地物を検出すればよい。運転計画策定部32は、そのような識別器として、Single Shot MultiBox Detector、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、運転計画策定部32は、そのような識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。
【0051】
さらに、運転計画策定部32は、現地図と走行ルートとを参照することで、目標車線を特定する。そして運転計画策定部32は、現地図を参照して、自車線と目標車線とが同一の車線かを判定する。自車線と目標車線とが同一の車線でなければ、運転計画策定部32は、自車線と目標車線とが異なっていると判定する。さらに、自車線と目標車線とが異なっている場合、運転計画策定部32は、現地図を参照して、自車線から目標車線までの車線の数をカウントし、その車線の数だけ車線変更を実行する運転計画を策定する。
【0052】
同様に、運転計画策定部32は、車両10の目的地までの走行ルートと現地図とを参照して、第1の区間内に、車両10が現在走行中の道路から目的へ向かうために右折または左折する交差点が存在するか否か判定する。そのような交差点が存在する場合、運転計画策定部32は、自車線と右折または左折可能な車線とが異なるか否か判定する。そして運転計画策定部32は、自車線と右折または左折可能な車線とが異なる場合、右折または左折可能な車線を目標車線とする、1回以上の車線変更を実行する運転計画を策定する。
【0053】
また、運転計画策定部32は、第1の区間内に、車両10の現在位置における制限速度と異なる制限速度が設定される区間が存在するか否か判定する。そのような区間が存在する場合、運転計画策定部32は、車両10の目標速度を、その区間に進入したときに、その区間についての制限速度に変更する運転計画を策定する。
【0054】
さらにまた、運転計画策定部32は、第1の区間内に、自動運転制御の終了となる地点(例えば、自動車専用道の出入口)が存在するか否か判定する。そのような地点が存在する場合、運転計画策定部32は、その地点までにドライバに対して運転制御を移譲する運転計画を策定する。
【0055】
また、第1の区間内に、車両10が取るべき行動のトリガとなる地点が存在しない場合、運転計画策定部32は、車両10が自車線の走行を継続する運転計画を策定する。
【0056】
運転計画策定部32は、第1の区間についての運転計画と同様に、制御切替地点以遠の第2の区間についての運転計画を策定すればよい。ただし、第1の区間と異なり、第2の区間については、運転計画策定部32は、代替地図を参照して、車両10が取るべき行動のトリガとなる地点を検出すればよい。また、自車線と目標車線とが異なるか否かの判定についても、運転計画策定部32は、代替地図を参照して実行すればよい。このように、車両10が乖離区間に到達するよりも前に、乖離区間についての運転計画が策定される。これにより、運転計画の策定に利用される地図が切り替わる場合でも、運転計画が急に変更されることが防止される。そのため、運転計画の変更によりドライバが違和感を覚えることが防止される。なお、以下では、説明の便宜上、第1の区間についての運転計画を第1の運転計画と呼び、第2の区間についての運転計画を第2の運転計画と呼ぶ。
【0057】
なお、運転計画策定部32は、乖離区間の終了地点以遠の区間について、現地図を再度参照して運転計画を策定してもよい。
【0058】
運転計画策定部32は、策定した第1及び第2の運転計画を提示処理部33及び制御部34へ通知する。
【0059】
提示処理部33は、策定した第1及び第2の運転計画を、車内に設けられる通知機器(図示せず)を介してドライバに通知する。本実施形態では、乖離区間よりも表示切替オフセット距離だけ車両10の現在位置に近い位置に設定される表示切替地点に車両10が到達するまでは、提示処理部33は、第1の運転計画を、通知機器を介してドライバに提示する。一方、車両10が表示切替地点に到達すると、提示処理部33は、通知機器を介してドライバに提示する運転計画を、第1の運転計画から第2の運転計画に切り替える。なお、提示処理部33は、GPS受信機3より測位された最新の車両10の位置に基づいて、車両10が表示切替地点に到達したか否かを判定すればよい。また、表示切替オフセット距離は、上述した制御切替オフセット距離よりも大きい値、例えば、数100m~1km程度に設定される。すなわち、表示切替地点は、制御切替地点よりも車両10の現在位置の近くに設定される。
【0060】
このように、提示処理部33は、実際に車両10の制御が切り替えられる地点に車両10が到達するよりも前に、ドライバに提示する運転計画を第1の運転計画から第2の運転計画に切り替える。これにより、車両10の挙動が変化する直前で提示される運転計画が切り替わることが防止されるので、提示処理部33は、提示する運転計画及び車両10の挙動に対してドライバが不安を感じ、あるいは違和感を覚えることを抑制できる。
【0061】
図6は、乖離区間と策定される個々の運転計画及びその表示タイミングの概要を説明する図である。図6では、車両10が走行中の道路600について、第1の地図で表される車線に関する情報は実線で示され、第2の地図で表される車線に関する情報は点線で示されている。図示のように、地点P1よりも車両10から離れた区間601において第1の地図に表された道路600に関する情報と第2の地図に表された道路600に関する情報とが乖離している。すなわち、区間601が乖離区間となっている。そして乖離区間601内で目的地へ向かう車線が道路600から分岐していることが第1及び第2の地図に示されている。また、乖離区間601について、第2の地図の更新タイミングは第1の地図の更新タイミングよりも後であり、第2の地図には、乖離区間601について最新の情報が表されているとする。
【0062】
本実施形態では、乖離区間601が開始する地点P1よりも制御切替オフセット距離だけ手前側に位置する制御切替地点Pcよりも車両10の現在位置側の第1の区間602については、現地図である第1の地図に基づいて第1の運転計画が策定される。この例では、第1の区間602には、車両10が取るべき行動のトリガとなるような地点が存在しない。そのため、第1の運転計画では、車両10が現在走行中の自車線に沿って走行することが計画される。一方、乖離区間601を含む、制御切替地点Pc以遠の第2の区間603については、代替地図である第2の地図に基づいて第2の運転計画が策定される。特に、この例では、現地図である第1の地図では自車線から目的地へ向かう車線が分岐していることが示されているが、代替地図である第2の地図では、自車線に隣接する車線から目的地へ向かう車線が分岐していることが示されている。そのため、第2の運転計画では、自車線から目的地へ向かう車線への1回以上の車線変更が計画される。このように、第2の区間603について代替地図が運転計画の策定に用いられることで、適切な運転計画が策定される。
【0063】
第1の区間602では、第1の運転計画にしたがって車両10が制御され、一方、第2の区間603では、第2の運転計画にしたがって車両10が制御される。さらに、地点P1よりも表示切替オフセット距離だけ手前側に位置する表示切替地点Pdに車両10が到達するまでは、第1の運転計画がドライバに提示される。一方、車両10が表示切替地点Pdを通過した以降、第2の運転計画がドライバに提示される。
【0064】
例えば、提示される運転計画において1回以上の車線変更が計画される場合には、提示処理部33は、その1回以上の車線変更を表す画像またはアイコンを、通知機器の一例である表示装置に表示させる。あるいは、提示処理部33は、その1回以上の車線変更を表す音声信号を、通知機器の他の一例であるスピーカから出力させてもよい。同様に、提示される運転計画において所定の交差点で車両10が右折または左折することが計画される場合には、提示処理部33は、所定の交差点及びその交差点で右折または左折することを表す画像またはアイコンを、表示装置に表示させる。あるいは、提示処理部33は、所定の交差点及びその交差点で右折または左折することを表す音声信号を、スピーカから出力させてもよい。さらに、提示される運転計画においてドライバへの運転制御の移譲が計画される場合には、提示処理部33は、自動運転制御が終了する地点に車両10が到達する前に、運転交代要求を表す画像またはアイコンを、表示装置に表示させる。あるいは、提示処理部33は、運転交代要求を表す音声信号を、スピーカから出力させてもよい。この場合、提示処理部33は、2種類以上の通知機器を介して、ドライバに運転交代要求を通知してもよい。
【0065】
制御部34は、運転計画策定部32から受け取った第1及び第2の運転計画にしたがって車両10を走行させるよう、車両10の各部を制御する。本実施形態では、制御部34は、車両10が第1の区間を走行している間、すなわち、制御切替地点に車両10が到達するまでは、第1の運転計画にしたがって車両10が走行するように車両10を制御する。また、制御部34は、車両10が制御切替地点以遠の第2の区間を走行している間、第2の運転計画にしたがって車両10が走行するように車両10を制御する。なお、制御部34は、GPS受信機3より測位された最新の車両10の位置に基づいて、車両10が制御切替地点に到達したか否かを判定すればよい。
【0066】
制御部34は、第1及び第2の運転計画のうち、車両10が走行中の区間において車両10の制御に利用される運転計画にしたがって、車両10が走行する予定となる経路(以下、単に走行予定経路と呼ぶ)を生成する。例えば、制御部34は、車両10の制御に利用される運転計画に目標車線へ車両10が移動するための1以上の車線変更が含まれている場合、自車線から目標車線まで移動する走行予定経路を生成する。また、車両10の制御に利用される運転計画に車線変更が含まれていない場合、制御部34は、自車線の中心を通る線を走行予定経路として生成する。なお、制御部34は、車両10が制御切替地点に到達するまでは、現地図を参照し、車両10が制御切替地点に到達した以降については、代替地図を参照して、走行予定経路を生成すればよい。
【0067】
制御部34は、所定の周期ごとに車両10の位置を測定し、測定した車両10の位置と、車両10が走行中の区間について作成された運転計画にしたがって生成された走行予定経路とを比較する。なお、制御部34は、運転計画策定部32において説明したのと同様に、カメラ2により得られた画像と、走行予定経路の生成に利用する地図とを照合することで、車両10の正確な位置を測定すればよい。そして制御部34は、測定した車両10の位置が走行予定経路上であれば、走行予定経路に沿って車両10が進むように車両10の操舵角を決定し、決定した操舵角となるよう、車両10のステアリングを制御する。また、測定した車両10の位置が走行予定経路から離れていれば、制御部34は、車両10が走行予定経路に近付くように車両10の操舵角を決定し、決定した操舵角となるよう、車両10のステアリングを制御する。また、制御部34は、車両10の速度が目標速度に近付くように、アクセル及びブレーキを制御する。さらに、運転計画に、特定の地点において車両10が停車することが含まれている場合には、制御部34は、その特定の地点において車両10が停車するように、アクセル及びブレーキを制御する。
【0068】
また、制御部34は、車両10とその前方を走行する他の車両との車間距離が一定の距離以上に保たれるように、車両10の加減速度を設定する。そのために、制御部34は、カメラ2により得られた画像、あるいは、測距センサ(図示せず)により得られた測距信号を、他の車両を検出するように予め学習された識別器に入力することで、他の車両を検出する。そして制御部34は、画像上での他の車両のサイズ、あるいは、他の車両が表された領域の下端の位置に基づいて、あるいは、検出された他の車両への方位における、測距信号に示される距離に基づいて、車両10と他の車両との距離を推定する。車両10と他の車両間の車間距離が所定の距離閾値未満になると、制御部34は、車両10を減速させるよう、車両10の加減速度を設定する。一方、車両10と他の車両間の車間距離が所定の距離閾値以上であれば、制御部34は、車両10の速度を一定に保ち、あるいは、車両10が走行中の道路の制限速度またはドライバにより設定された目標速度に近付くように、車両10の加減速度を設定する。そして制御部34は、設定した加減速度に従ってアクセル開度またはブレーキ量を設定する。制御部34は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部34は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。あるいはまた、制御部34は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0069】
図7は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、車両10が所定距離だけ走行する度に、あるいは、所定の時間が経過する度に、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。
【0070】
プロセッサ23の乖離区間検出部31は、車両10の進行方向において車両10の現在位置から所定距離先までの区間において、第1の地図に表された、車両10が走行中の道路に関する情報と第2の地図に表されたその情報とが乖離する乖離区間を検出する(ステップS101)。また、プロセッサ23の運転計画策定部32は、車両10の現在位置から乖離区間の開始地点またはそれより車両10の近くに設定される制御切替地点までの第1の区間について、現地図を参照して第1の走行計画を策定する(ステップS102)。さらに、運転計画策定部32は、乖離区間を含む、制御切替地点以遠の第2の区間について、代替地図を参照して第2の走行計画を策定する(ステップS103)。
【0071】
プロセッサ23の提示処理部33は、車両10が表示切替地点に到達したか否か判定する(ステップS104)。車両10が表示切替地点に到達していなければ(ステップS104-No)、提示処理部33は、通知機器を介して第1の運転計画をドライバに提示する(ステップS105)。一方、車両10が表示切替地点に到達していれば(ステップS104-Yes)、提示処理部33は、通知機器を介して第2の運転計画をドライバに提示する(ステップS106)。
【0072】
プロセッサ23の制御部34は、車両10が制御切替地点に到達したか否か判定する(ステップS107)。車両10が制御切替地点に到達していなければ(ステップS107-No)、制御部34は、第1の運転計画にしたがって車両10が走行するように車両10を制御する(ステップS108)。一方、車両10が制御切替地点に到達していれば(ステップS107-Yes)、制御部34は、第2の運転計画にしたがって車両10が走行するように車両10を制御する(ステップS109)。ステップS108またはステップS109の後、プロセッサ23は、車両制御処理を終了する。
【0073】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、二つの地図のそれぞれに表された、車両が走行中の道路に関する情報が互いに乖離する乖離区間を検出する。そしてこの車両制御装置は、乖離区間の開始地点または開始地点よりも車両の近くに設定される制御切替地点に車両10が到達するよりも前の時点で、乖離区間を含む、制御切替移転以遠の区間についての運転計画も策定する。そのため、この車両制御装置は、車両の前方に乖離区間が存在する場合でも、運転計画が急に変更されることがないように運転計画を適切なタイミングで設定することができる。したがって、この車両制御装置は、運転計画の急な変更によるドライバの違和感を無くすことができる。
【0074】
変形例によれば、地図サーバが乖離区間検出部31による処理と同様の処理を実行することで、乖離区間を検出してもよい。この場合、地図サーバは、車両10へ第1の地図及び第2の地図を配信する際に、第1の地図及び第2の地図に表される領域内に含まれる乖離区間を特定する乖離区間情報も配信すればよい。この場合、ストレージ装置5は、無線通信端末4を介して受信した乖離区間情報も記憶する。そして乖離区間検出部31は、乖離区間情報を参照することで、車両10の現在位置から車両10の進行方向に沿って所定距離以内に存在する乖離区間を特定すればよい。この変形例によれば、ECU6のプロセッサ23の演算負荷が軽減される。
【0075】
上記の実施形態または変形例による、ECU6のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0076】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両制御システム
10 車両
2 カメラ
3 GPS受信機
4 無線通信端末
5 ストレージ装置
6 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 乖離区間検出部
32 運転計画策定部
33 提示処理部
34 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7