(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140606
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】チップ部品
(51)【国際特許分類】
H01C 1/14 20060101AFI20241003BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01C1/14 F
H01C7/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051812
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下市 拓真
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博行
(72)【発明者】
【氏名】金森 アヌーシュ
【テーマコード(参考)】
5E028
5E033
【Fターム(参考)】
5E028AA02
5E028BB01
5E028CA01
5E033BB02
5E033BD11
5E033BH02
(57)【要約】
【課題】抵抗体間の寄生容量を抑制し、インピーダンス値の変動を低減できるチップ部品を提供する。
【解決手段】主面を有する基板と、主面に形成され、互いに離れた第1外部端子および第2外部端子と、主面に形成され、第1外部端子および第2外部端子に電気的に接続された抵抗回路部8とを含み、抵抗回路部8は、基板上に間隔を空けて配列された複数の抵抗単位rA~rGと、複数の抵抗単位rA~rGの少なくとも1つと第1外部端子とを切り離し可能に接続する第1ヒューズF1と、複数の抵抗単位rA~rGの少なくとも1つと第2外部端子とを切り離し可能に接続する第2ヒューズF2とを含む、チップ部品を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基板と、
前記主面に形成され、互いに離れた第1外部端子および第2外部端子と、
前記主面に形成され、前記第1外部端子および前記第2外部端子に電気的に接続された抵抗回路部とを含み、
前記抵抗回路部は、
前記基板上に間隔を空けて配列された複数の抵抗単位と、
前記複数の抵抗単位の少なくとも1つと前記第1外部端子とを切り離し可能に接続する第1ヒューズと、
前記複数の抵抗単位の少なくとも1つと前記第2外部端子とを切り離し可能に接続する第2ヒューズとを含む、チップ部品。
【請求項2】
前記複数の抵抗単位は、第1方向において互いに間隔を空けて配列されており、
前記第1ヒューズは、前記第1方向に交差する第2方向における前記複数の抵抗単位の一方側周縁において、前記第1方向に沿って直線状に配列され、
前記第2ヒューズは、前記第2方向における前記複数の抵抗単位の他方側周縁において、前記第1方向に沿って直線状に配列されている、請求項1に記載のチップ部品。
【請求項3】
前記複数の抵抗単位は、前記第1ヒューズおよび前記第2ヒューズを介さずに前記第1外部端子および前記第2外部端子に常時接続され、前記複数の抵抗単位の基準抵抗を提供する第1抵抗単位と、前記第1ヒューズおよび前記第2ヒューズに接続されたトリミング対象の複数の第2抵抗単位とを含み、
前記複数の第2抵抗単位における前記第1ヒューズのトリミング数と、前記第2ヒューズのトリミング数とが互いに異なっている、請求項2に記載のチップ部品。
【請求項4】
前記複数の第2抵抗単位の少なくとも1つの第2抵抗単位における前記第1ヒューズが全てトリミングされ、前記少なくとも1つの第2抵抗単位における前記第2ヒューズがトリミングされずに残っている、請求項3に記載のチップ部品。
【請求項5】
前記第1抵抗単位の前記第1方向における長さが、40μm以上300μm以下である、請求項3に記載のチップ部品。
【請求項6】
前記第1抵抗単位の前記第2方向における長さが、300μm以下である、請求項3に記載のチップ部品。
【請求項7】
前記基板上に形成された抵抗膜と、前記抵抗膜上に形成された第1導電膜とを含む積層膜を含み、
前記第1導電膜は、前記第1外部端子に電気的に接続された第1配線膜と、前記第1配線膜とは物理的に分離されて形成され、前記第2外部端子に電気的に接続された第2配線膜とを含み、
前記抵抗単位は、前記第1配線膜と前記第2配線膜との間の領域において、前記第1導電膜が積層されていない前記抵抗膜の部分により形成されている、請求項2~6のいずれか一項に記載のチップ部品。
【請求項8】
前記基板は、シリコン基板である、請求項1~6のいずれか一項に記載のチップ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1は、チップ抵抗器を開示している。チップ抵抗器は、基板と、基板上に形成された抵抗回路網とを含む。抵抗回路網は、マトリクス状に配列された等しい抵抗値を有する多数個の抵抗体を含む。抵抗体の1個または複数個が電気的に接続されて、複数種類の抵抗単位体とされている。複数種類の抵抗単位体は、接続用導体膜およびヒューズ膜を用いて所定の態様で接続されている。ヒューズ膜を選択的に溶断することにより、抵抗単位体が抵抗回路網に電気的に組み込まれたり、抵抗回路網から電気的に分離でき、抵抗回路網の抵抗値を要求される抵抗値にしたりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態は、抵抗体間の寄生容量を抑制し、インピーダンス値の変動を低減できるチップ部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係るチップ部品は、主面を有する基板と、前記主面に形成され、互いに離れた第1外部端子および第2外部端子と、前記主面に形成され、前記第1外部端子および前記第2外部端子に電気的に接続された抵抗回路部とを含み、前記抵抗回路部は、前記基板上に間隔を空けて配列された複数の抵抗単位と、前記複数の抵抗単位の少なくとも1つと前記第1外部端子とを切り離し可能に接続する第1ヒューズと、前記複数の抵抗単位の少なくとも1つと前記第2外部端子とを切り離し可能に接続する第2ヒューズとを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態に係るチップ部品によれば、抵抗体間の寄生容量を抑制でき、インピーダンス値の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るチップ部品の回路図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るチップ部品の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るチップ部品が回路基板に搭載された状態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係るチップ部品の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係るチップ部品の模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、
図5の抵抗回路部を拡大して示す平面図である。
【
図7】
図7は、ヒューズの溶断状態を示すチップ部品の模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、ヒューズの溶断後の抵抗回路部(第1形態)の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、ヒューズの溶断後の抵抗回路部(第2形態)の状態を示す図である。
【
図11】
図11は、電気信号の周波数と抵抗回路部のインピーダンスとの関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、電気信号の周波数と抵抗回路部のインピーダンスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、本開示の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態に係るチップ部品1の回路図である。
【0010】
チップ部品1は、抵抗素子Rを基板4(
図2および
図3参照)上に有するチップ部品である。この形態では、チップ部品1は、第1外部端子2と第2外部端子3との間に接続された抵抗素子Rを1つ備える構成であるが、たとえば、直列もしくは並列に接続された複数の抵抗素子Rを備えていてもよい。チップ部品1は、必要により、抵抗素子Rに加えて、抵抗素子Rに電気的に接続されたインダクタンスL、キャパシタC、ダイオードDi、トランジスタTr等を基板4上に備えていてもよい。
【0011】
図2は、本開示の一実施形態に係るチップ部品1の模式的な斜視図である。
図3は、本開示の一実施形態に係るチップ部品1が回路基板9に搭載された状態を示す側面図である。
【0012】
図2を参照して、チップ部品1は、直方体形状を有している。チップ部品1の平面形状は、長方形および正方形のどちらでもよい。この形態では、チップ部品1の平面形状は、長方形状である。
【0013】
チップ部品1は、基板4を有している。基板4は、略直方体形状(チップ形状)を有している。
図2における基板4の上面は、素子形成面5である。素子形成面5は、基板4において回路素子(この形態では、抵抗素子R)が形成された表面である。素子形成面5は、第1主面と称されてもよい。基板4の厚さ方向において素子形成面5とは反対側の面は、裏面6である。素子形成面5と裏面6とは、略同寸法かつ同形状であり、互いに平行である。裏面6は、第2主面と称されてもよい。
【0014】
基板4は、シリコン基板に代表される半導体基板であってもよいし、ガラス基板やセラミック基板等の絶縁性基板であってもよいし、樹脂フィルムであってもよい。この形態では、基板4は、ノンドープのシリコン基板である。
【0015】
基板4は、素子形成面5および裏面6以外の表面として、複数の側面7A~7Dを有している。当該複数の側面7A~7Dは、素子形成面5および裏面6のそれぞれに交差して延び、素子形成面5および裏面6の間を繋いでいる。この形態では、基板4の4つの側面7A~7Dは、基板4の一方の短辺を含む側面から時計回りに順に、第1側面7A、第2側面7B、第3側面7Cおよび第4側面7Dであってもよい。
【0016】
チップ部品1は、基板4上に形成された第1外部端子2と、第2外部端子3と、抵抗回路部8とを備えている。
【0017】
基板4上において、第1外部端子2は基板4の一方の短辺側に形成され、第2外部端子3は、基板4上の他方の短辺側に形成されている。抵抗回路部8は、基板4上の第1外部端子2と第2外部端子3とで挟まれた中央領域に設けられている。そして、抵抗回路部8の一端側は第1外部端子2に電気的に接続されており、抵抗回路部8の他端側は第2外部端子3に電気的に接続されている。
【0018】
第1外部端子2および第2外部端子3は、それぞれ、外部接続電極として機能する。チップ部品1が回路基板9に搭載された状態においては、
図3に示すように、第1外部端子2および第2外部端子3が、それぞれ、回路基板9の回路(図示せず)と半田10により電気的かつ機械的に接続される。なお、外部接続電極として機能する第1外部端子2および第2外部端子3は、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または表面に金メッキを施すことが望ましい。
【0019】
図4は、本開示の一実施形態に係るチップ部品1の模式的な断面図である。
【0020】
図4を参照して、チップ部品1は、基板4と、基板絶縁層11と、素子積層部12と、表面絶縁層13と、保護層14とを含む。
【0021】
基板絶縁層11は、基板4と素子積層部12との間を電気的に分離する。基板4が絶縁性基板(たとえば、ガラス基板、セラミック基板等)や樹脂フィルムの場合には、基板絶縁層11が省略され、素子積層部12が基板4上に直接的に形成されてもよい。基板絶縁層11は、基板絶縁膜と称されてもよい。
【0022】
基板絶縁層11は、基板4の素子形成面5の全体に形成されている。基板絶縁層11の外周縁は、基板4の4つの側面7A~7Dに面一である。これにより、基板4の4つの側面7A~7Dは、基板絶縁層11に被覆されておらず側方に露出している。
図4では、第1側面7Aおよび第3側面7Cのみが示されている。
【0023】
基板絶縁層11は、たとえば、酸化シリコン膜(SiO2)、窒化シリコン膜(SiN)等により形成されている。この形態では、基板絶縁層11は、酸化シリコン膜である。基板絶縁層11の厚さは、たとえば、1μm以上5μm以下であってもよい。
【0024】
素子積層部12は、複数の導電膜および絶縁膜の積層構造により形成されていてもよい。この形態では、素子積層部12は、基板4に近い側から順に、抵抗膜15、第1導電膜16および第2導電膜17を含む。抵抗膜15、第1導電膜16および第2導電膜17の平面パターンは、特に制限されず、チップ部品1に搭載される抵抗素子Rの設計パターンに倣って適宜変更できる。
【0025】
抵抗膜15は、素子積層部12の最下層である。この形態では、抵抗膜15は、基板絶縁層11上に形成されている。抵抗膜15は、たとえば、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)、TiSiON等であってもよい。抵抗膜15の厚さは、たとえば、100Å以上1000Å以下であってもよい。
【0026】
第1導電膜16は、抵抗膜15上に形成されている。第1導電膜16は、たとえば、Al(アルミニウム)、AlとCu(銅)との合金(AlCu合金)等であってもよい。第1導電膜16の厚さは、たとえば、6000Å以上10000Å以下であってもよい。第1導電膜16は、抵抗膜15上に、所定スペースSを空けて積層されていて、抵抗膜15に接している。
【0027】
抵抗膜15における所定スペースSを有する領域が、一定の抵抗値を有する抵抗素子Rを形成している。一方、抵抗膜15において第1導電膜16が積層された領域では、抵抗膜15よりも低抵抗な第1導電膜16が抵抗膜15に接しており、抵抗膜15に比べて優先的に電流が流れる配線層18が第1導電膜16により形成されている。
【0028】
第1導電膜16は、抵抗素子Rに関連する配線層18として、たとえば、第1外部端子2に電気的に接続された第1配線膜19と、第1配線膜19とは物理的に分離されて形成され、第2外部端子3に電気的に接続された第2配線膜20とを含んでいてもよい。したがって、抵抗素子Rは、第1配線膜19と第2配線膜20との間の領域において、第1導電膜16が積層されていない抵抗膜15の部分により形成されている。
【0029】
第2導電膜17は、第1導電膜16上に形成されている。第2導電膜17は、たとえば、Al(アルミニウム)、AlとCu(銅)との合金(AlCu合金)等であってもよい。第2導電膜17の厚さは、たとえば、6000Å以上10000Å以下であってもよい。第2導電膜17の一部は、図示しない絶縁膜を介して第1導電膜16に接続されていてもよい。
【0030】
表面絶縁層13は、基板4の素子形成面5の全体および側面7A~7Dの全体に形成されている。表面絶縁層13は、素子積層部12上に形成され、素子積層部12を被覆している。表面絶縁層13は、たとえば、窒化シリコン膜(SiN)膜等により形成されている。表面絶縁層13の厚さは、たとえば、10000Å以上15000Å以下であってもよい。
【0031】
保護層14は、基板4の素子形成面5の全体に形成されている。保護層14の外周縁は、基板4の4つの側面7A~7Dにほぼ面一である。保護層14では、平面視で4つの側面7A~7Dと一致する部分が、側方(外側)に張り出した円弧状の張出部となっている。保護層14は、表面絶縁層13上に形成されている。保護層14は、たとえば、ポリイミド等の樹脂により形成されている。保護層14の厚さは、たとえば、3μm以上10μm以下であってもよい。
【0032】
保護層14には、第2導電膜17の一部を第1パッド21および第2パッド22として露出させる第1開口23および第2開口24が形成されている。
【0033】
第1外部端子2および第2外部端子3は、それぞれ、第1開口23および第2開口24に配置されている。第1外部端子2は、第1開口23内で第1パッド21に接続され、第1パッド21を介して第1配線膜19に電気的に接続されている。第2外部端子3は、第2開口24内で第2パッド22に接続され、第2パッド22を介して第2配線膜20に電気的に接続されている。
【0034】
第1外部端子2および第2外部端子3は、基板4の素子形成面5上に形成されていて、保護層14から部分的に露出されている。第1外部端子2および第2外部端子3のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面5上に積層することによって構成されている。図示は省略されるが、第1外部端子2および第2外部端子3は、たとえば、Cuピラー、半田バンプ等の形態で形成されていてもよい。
【0035】
図5は、本開示の一実施形態に係るチップ部品1の模式的な平面図である。
図6は、
図5の抵抗回路部8を拡大して示す平面図である。
図5および
図6において、基板4の短辺方向が第1方向Xであり、基板4の長辺方向が第2方向Yであってもよい。第2方向Yは、第1外部端子2と第2外部端子3との対向方向であってもよい。
【0036】
図5を参照して、抵抗回路部8は、第1外部端子2と第2外部端子3との間に形成されている。
【0037】
図6を参照して、抵抗回路部8は、抵抗膜15および第1導電膜16の積層構造により形成されている。
図6において、斜めハッチングで示された領域は、抵抗膜15が選択的に残ることにより形成された抵抗素子Rである。
図6において、白抜きの領域は、第1導電膜16が露出した配線層18(第1配線膜19および第2配線膜20)である。
図6において、グレーで塗りつぶされた領域は、素子積層部12が完全に除去されて基板絶縁層11が露出した抵抗分離ライン25である。
【0038】
抵抗素子Rは、抵抗回路部8において第1導電膜16が選択的に取り除かれて抵抗膜15が露出した部分により形成されている。抵抗素子Rは、複数の抵抗単位rに分離されている。この形態では、第2方向Yに沿って抵抗素子Rを横切る複数の抵抗分離ライン25により、抵抗素子Rがストライプ状に分断され、複数の抵抗単位rに分離されている。複数の抵抗単位rは、第1方向Xに沿って互いに間隔を空けて配列されている。
【0039】
抵抗素子Rの第2方向Yの両側には第1ヒューズ群26および第2ヒューズ群27が形成されている。第1ヒューズ群26は、抵抗素子Rの第1配線膜19側に配置され、抵抗素子Rの近傍において第1方向Xに沿って形成されている。第2ヒューズ群27は、抵抗素子Rの第2配線膜20側に配置され、抵抗素子Rの近傍において第1方向Xに沿って形成されている。
【0040】
より具体的には、抵抗素子Rの複数の抵抗単位rは、基準抵抗単位rA、抵抗単位rB、抵抗単位rC、抵抗単位rD、抵抗単位rE、抵抗単位rFおよび抵抗単位rGを含む。複数の抵抗単位rA~rGは、第1方向Xに沿って配列されている。隣り合う抵抗単位rA~rGの間を抵抗分離ライン25が第2方向Yに沿って横切り、隣り合う抵抗単位rA~rGを電気的に分離している。
【0041】
各抵抗単位rA~rGは、
図4に示したように、第1導電膜16が除去された抵抗膜15における所定スペースSを有する領域により形成されている。各抵抗単位rA~rGは、この形態では、平面視で単一抵抗体により形成されている。単一抵抗体は、第1配線膜19および第2配線膜20の間において、第1導電膜16の除去により露出した抵抗膜15の領域が単一領域であると定義されてもよい。各抵抗単位rA~rGは、独立して露出した単一の抵抗膜15のみにより構成されていてもよい。この形態では、各抵抗単位rA~rGは、平面視四角形状の単一抵抗体により構成されている。
【0042】
むろん、各抵抗単位rA~rGは、第1配線膜19および第2配線膜20の間において、抵抗膜15に複数の所定スペースSが間隔を空けて複数配列されることにより、互いに直列的に接続された複数の抵抗体により形成されていてもよい。
【0043】
複数の抵抗単位rA~rGは、たとえば、基準抵抗単位rA、抵抗単位rB、抵抗単位rC、抵抗単位rD、抵抗単位rE、抵抗単位rFおよび抵抗単位rGの順に、等比数列的に抵抗値が増加するパターンに設定されていてもよい。たとえば、基準抵抗単位rA、抵抗単位rB、抵抗単位rC、抵抗単位rD、抵抗単位rE、抵抗単位rFおよび抵抗単位rGの順に単一抵抗体の面積が小さくなるパターンが設定されていてもよい。
【0044】
この形態では、基準抵抗単位rAの抵抗値が40Ω(等比数列の初項)であり、抵抗単位rB、抵抗単位rC、抵抗単位rD、抵抗単位rE、抵抗単位rFおよび抵抗単位rGの抵抗値が、公比=2の等比数列で設定されてもよい。具体的には、抵抗単位rBの抵抗値が80Ωであり、抵抗単位rCの抵抗値が160Ωであり、抵抗単位rDの抵抗値が320Ωであり、抵抗単位rEの抵抗値が640Ωであり、抵抗単位rFの抵抗値が1280Ωであり、抵抗単位rGの抵抗値が2560Ωであってもよい。上記の数値はあくまでも複数の抵抗単位rA~rGの抵抗値の一例にすぎず、複数の抵抗単位rA~rGの抵抗値は、チップ部品1の仕様に応じて適宜変更することができる。
【0045】
なお、チップ部品1に搭載される複数の抵抗単位は、複数の抵抗単位rA~rGの7個に限らない。たとえば、スペースに余裕があれば、抵抗単位rH、抵抗単位rI、抵抗単位rJ・・・と追加することにより、複数の抵抗単位の総数を8個、9個、10個・・・と増加することができる。抵抗単位の増加により、抵抗値の精度を向上させることができる。
【0046】
基準抵抗単位rAは、後述する第1ヒューズF1および第2ヒューズF2を介さずに第1配線膜19および第2配線膜20に接続されている。これにより、基準抵抗単位rAは、第1外部端子2および第2外部端子3(いずれも
図5参照)に常時接続されており、抵抗素子Rの基準抵抗を提供している。基準抵抗単位rAが第1配線膜19および第2配線膜20に挟まれた領域に配置されているため、第1ヒューズF1および第2ヒューズF2の溶断の有無に関わらず、第1配線膜19と第2配線膜20とを常時最短距離で接続することができる。
【0047】
基準抵抗単位rAの第1方向Xにおける幅Wは、たとえば、40μm以上300μm以下であってもよい。また、基準抵抗単位rAの第2方向Yにおける長さLは、たとえば、300μm以下であってもよい。
【0048】
複数の抵抗単位rB~rGの第2方向Yの両側には、第1ヒューズ群26および第2ヒューズ群27が設けられている。
【0049】
第1ヒューズ群26は、複数の第1ヒューズF1を含む。複数の第1ヒューズF1は、複数の抵抗単位rB~rGを第1配線膜19から電気的に分離するために溶断可能(トリミング可能)な配線膜である。各第1ヒューズF1は、抵抗膜15および第1導電膜16(
図4参照)の積層構造により形成されている。各第1ヒューズF1は、配線層18と同様に第1導電膜16が再表面に露出した配線である。したがって、第1ヒューズF1が溶断されていない状態では、複数の抵抗単位rB~rGは、第1ヒューズF1を介して第1配線膜19に短絡された状態となっている。
【0050】
複数の第1ヒューズF1は、複数の抵抗単位rB~rGの第2方向Yにおける一方側周縁(第1配線膜19側の周縁)に沿って直線状に間隔を空けて配列されている。複数の第1ヒューズF1は、基準抵抗単位rA以外の複数の抵抗単位rB~rGに対してそれぞれ、並列的に接続されている。各第1ヒューズF1により、複数の抵抗単位rB~rGは互いに短絡された状態となっている。各第1ヒューズF1は、第1方向Xにおける複数の抵抗分離ライン25の間において、複数の抵抗単位rB~rGと第1配線膜19とを繋ぐように第2方向Yに沿う直線形状に形成されている。
【0051】
第2ヒューズ群27は、複数の第2ヒューズF2を含む。複数の第2ヒューズF2は、複数の抵抗単位rB~rGを第2配線膜20から電気的に分離するために溶断可能な配線膜である。各第2ヒューズF2は、抵抗膜15および第1導電膜16(
図4参照)の積層構造により形成されている。各第2ヒューズF2は、配線層18と同様に第1導電膜16が再表面に露出した配線である。したがって、第2ヒューズF2が溶断されていない状態では、複数の抵抗単位rB~rGは、第2ヒューズF2を介して第2配線膜20に短絡された状態となっている。
【0052】
複数の第2ヒューズF2は、複数の抵抗単位rB~rGの第2方向Yにおける他方側周縁(複数の第1ヒューズF1の反対側の周縁)に沿って直線状に間隔を空けて配列されている。複数の第2ヒューズF2は、基準抵抗単位rA以外の複数の抵抗単位rB~rGに対してそれぞれ、並列的に接続されている。各第2ヒューズF2により、複数の抵抗単位rB~rGは互いに短絡された状態となっている。各第2ヒューズF2は、第1方向Xにおける複数の抵抗分離ライン25の間において、複数の抵抗単位rB~rGと第2配線膜20とを繋ぐように第2方向Yに沿う直線形状に形成されている。
【0053】
図7を参照して、チップ部品1では、第1ヒューズF1および第2ヒューズF2をレーザ光28で選択的に溶断することにより、抵抗回路部8全体の抵抗値を、小さな抵抗値から大きな抵抗値まで広範囲の間で任意の抵抗値に設定することができる。
【0054】
たとえば、
図8では、抵抗単位rC~rGに接続された第1ヒューズF1および第2ヒューズF2の全てが溶断され、抵抗単位rC~rGが抵抗回路部8から電気的に分離されている。一方、抵抗単位rBに接続された第1ヒューズF1および第2ヒューズF2はいずれも溶断されていない。これにより、抵抗回路部8では、第1配線膜19と第2配線膜20との間に、基準抵抗単位rAおよび抵抗単位rBが並列的に接続された回路が形成される。第1ヒューズF1および第2ヒューズF2の溶断により電気的に分離された抵抗単位rC~rGの第2方向Yにおける両側には、容量C1が形成される。溶断により生じたスペースを挟んで、抵抗単位rC~rGと、第1配線膜19および第2配線膜20が対向するためである。
【0055】
一方、抵抗単位rC~rGが抵抗回路部8から電気的に分離されている他の形態として、
図9の形態が採用されてもよい。
図9では、抵抗単位rC~rGにおける第1ヒューズF1のトリミング数と、第2ヒューズF2のトリミング数とが互いに異なっている。この形態では、抵抗単位rC~rGに接続された全ての第1ヒューズF1が溶断されており、抵抗単位rC~rGに接続された第2ヒューズF2の一部が溶断されずに残っている。
図9の形態であっても、抵抗単位rC~rGが第2配線膜20から分離されているので、抵抗単位rC~rGが抵抗回路部8から電気的に分離されているという点では、
図8の形態と同じである。一方、抵抗単位rC~rGは第2ヒューズF2を介して第2配線膜20に導通しているので、容量C1は、抵抗単位rC~rGの第1配線膜19側のみに選択的に形成されている。
【0056】
次に、
図10を参照して、抵抗回路部8の全体的な回路構成を説明する。
図10は、
図6の抵抗回路部8の回路構成を説明するための図である。
【0057】
図10において、容量C1は、前述の通り、ヒューズF1,F2の溶断により、抵抗単位rB~rGと端子2,3(
図8および
図9では、第2配線膜20および第1配線膜19)との間に形成される容量である。
【0058】
寄生容量C2は、たとえば、抵抗膜15の下地絶縁膜(この形態では、基板絶縁層11)を介して抵抗膜15と基板4との間に生じる寄生容量や、表面絶縁層13を介して抵抗膜15と第2導電膜17との間に生じる寄生容量を含む。
【0059】
寄生容量C3は、たとえば、抵抗膜15の下地絶縁膜(この形態では、基板絶縁層11)および表面絶縁層13を介して、複数の抵抗単位rA~rG間に生じる寄生容量を含む。
【0060】
抵抗Rsは基板4の抵抗を含み、インダクタンスL1は、複数の抵抗単位rA~rGの幅や長さに依存する寄生インダクタンスを含む。たとえば基準抵抗単位rAの場合、
図6の幅Wおよび長さLを調節することにより、当該寄生インダクタンスL1を増減させることができる。たとえば、幅Wを増加させれば寄生インダクタンスL1を減少でき、長さLを増加させれば寄生インダクタンスL1を増加することができる。
【0061】
チップ部品1は、たとえば、高周波デバイスに搭載されてもよい。高周波デバイスにチップ部品1が搭載される場合、チップ部品1に高周波の電気信号が流れる。そのため、高周波帯域でもチップ部品1のインピーダンスの変動幅を小さく抑える必要がある。
【0062】
そこで、チップ部品1によれば、抵抗単位rB~rGの両側にヒューズF1,F2が設けられているため、ヒューズF1,F2の溶断により抵抗回路部8に生じる容量C1の寄生容量C0は、1/C0=1/C1+1/C1の式に基づき、C0=C1/2となる。これに対し、ヒューズF1,F2のいずれか一方のみが溶断される場合、抵抗回路部8に生じる容量C1の寄生容量C0は、C0=C1となる。つまり、両側のヒューズF1,F2の溶断により、寄生容量C0を半減することができる。その結果、チップ部品1のインピーダンスを高くすることができる。
【0063】
図11および
図12は、電気信号の周波数と抵抗回路部8のインピーダンスとの関係を示すグラフである。
図11および
図12において、横軸は、チップ部品1に流れる電気信号の周波数[Hz]を示し、縦軸は、チップ部品1のインピーダンス[Ω]を示している。
【0064】
図11および
図12において、実線がテストパターン1(TEG1)の結果であり、破線がテストパターン2(TEG2)の結果であり、一点鎖線がテストパターン3(TEG3)の結果である。TEG1でのトリミング対象は抵抗単位rC~rGのヒューズF1,F2であり、TEG2でのトリミング対象は抵抗単位rD~rFのヒューズF1,F2であり、TEG3でのトリミング対象は抵抗単位rB,rEのヒューズF1,F2である。
【0065】
図11と
図12の違いは、
図11がTEG1~3の両側のヒューズF1,F2を溶断した条件での結果を示し、
図12が、TEG1~3の第2ヒューズF2を溶断し、第1ヒューズF1を残す条件での結果を示す。
【0066】
図11および
図12を参照して、TEG1~3のいずれにおいても、両側のヒューズF1,F2を溶断した条件の方が、周波数が高い帯域においても高いインピーダンスを維持できることが分かる。
【0067】
図11の結果により、高周波帯域におけるインピーダンスの変動を低減できているが、さらに対策を施すことにより、インピーダンスのさらなる安定化を図ることができる。たとえば、
図9に示したように、抵抗単位rB~rGに接続された第2ヒューズF2の一部を残す対策を採用できる。これにより、寄生容量C0を若干増加させることができるので、
図11に矢印29で示したように、インピーダンスを全体的に低くシフトさせることができる。したがって、チップ部品1は、高周波電気信号が流れる光トランシーバの構成部品として好適に使用することができる。したがって、チップ部品1は、高周波電気信号が流れる回路等の構成部品として好適に使用することができる。
【0068】
本開示の実施形態について説明したが、本開示は他の形態で実施することもできる。
【0069】
以上、本開示の実施形態は、すべての点において例示であり限定的に解釈されるべきではなく、すべての点において変更が含まれることが意図される。
【0070】
この明細書および図面の記載から以下に付記する特徴が抽出され得る。以下、括弧内の英数字は前述の実施形態における対応構成要素等を表すが、各付記(Clause)の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。
【0071】
[付記1-1]
主面(5)を有する基板(4)と、
前記主面(5)に形成され、互いに離れた第1外部端子(2)および第2外部端子(3)と、
前記主面(5)に形成され、前記第1外部端子(2)および前記第2外部端子(3)に電気的に接続された抵抗回路部(8)とを含み、
前記抵抗回路部(8)は、
前記基板(4)上に間隔を空けて配列された複数の抵抗単位(rA~rG)と、
前記複数の抵抗単位(rB~rG)の少なくとも1つと前記第1外部端子(2)とを切り離し可能に接続する第1ヒューズ(F1)と、
前記複数の抵抗単位(rB~rG)の少なくとも1つと前記第2外部端子(3)とを切り離し可能に接続する第2ヒューズ(F2)とを含む、チップ部品(1)。
【0072】
[付記1-2]
前記複数の抵抗単位(rA~rG)は、第1方向(X)において互いに間隔を空けて配列されており、
前記第1ヒューズ(F1)は、前記第1方向(X)に交差する第2方向(Y)における前記複数の抵抗単位(rB~rG)の一方側周縁において、前記第1方向(X)に沿って直線状に配列され、
前記第2ヒューズ(F2)は、前記第2方向(Y)における前記複数の抵抗単位(rB~rG)の他方側周縁において、前記第1方向(X)に沿って直線状に配列されている、付記1-1に記載のチップ部品(1)。
【0073】
[付記1-3]
前記複数の抵抗単位(rA~rG)は、前記第1ヒューズ(F1)および前記第2ヒューズ(F2)を介さずに前記第1外部端子(2)および前記第2外部端子(3)に常時接続され、前記複数の抵抗単位(rA~rG)の基準抵抗を提供する第1抵抗単位(rA)と、前記第1ヒューズ(F1)および前記第2ヒューズ(F2)に接続されたトリミング対象の複数の第2抵抗単位(rB~rG)とを含み、
前記複数の第2抵抗単位(rB~rG)における前記第1ヒューズ(F1)のトリミング数と、前記第2ヒューズ(F2)のトリミング数とが互いに異なっている、付記1-2に記載のチップ部品(1)。
【0074】
[付記1-4]
前記複数の第2抵抗単位(rB~rG)の少なくとも1つの第2抵抗単位(rB~rG)における前記第1ヒューズ(F1)が全てトリミングされ、前記少なくとも1つの第2抵抗単位(rB~rG)における前記第2ヒューズ(F2)がトリミングされずに残っている、付記1-3に記載のチップ部品(1)。
【0075】
[付記1-5]
前記第1抵抗単位(rA)の前記第1方向(X)における長さ(W)が、40μm以上300μm以下である、付記1-3または付記1-4に記載のチップ部品(1)。
【0076】
[付記1-6]
前記第1抵抗単位(rA)の前記第2方向(Y)における長さ(L)が、300μm以下である、付記1-3~付記1-5のいずれか一項に記載のチップ部品(1)。
【0077】
[付記1-7]
前記基板(4)上に形成された抵抗膜(15)と、前記抵抗膜(15)上に形成された第1導電膜(16)とを含む積層膜(12)を含み、
前記第1導電膜(16)は、前記第1外部端子(2)に電気的に接続された第1配線膜(19)と、前記第1配線膜(19)とは物理的に分離されて形成され、前記第2外部端子(3)に電気的に接続された第2配線膜(20)とを含み、
前記抵抗単位(rA~rG)は、前記第1配線膜(19)と前記第2配線膜(20)との間の領域において、前記第1導電膜(16)が積層されていない前記抵抗膜(15)の部分(S)により形成されている、付記1-2~付記1-6のいずれか一項に記載のチップ部品(1)。
【0078】
[付記1-8]
前記基板(4)は、シリコン基板(4)である、付記1-1~付記1-7のいずれか一項に記載のチップ部品(1)。
【符号の説明】
【0079】
1 :チップ部品
2 :第1外部端子
3 :第2外部端子
4 :基板
5 :素子形成面
6 :裏面
7A :第1側面
7B :第2側面
7C :第3側面
7D :第4側面
8 :抵抗回路部
9 :回路基板
10 :半田
11 :基板絶縁層
12 :素子積層部
13 :表面絶縁層
14 :保護層
15 :抵抗膜
16 :第1導電膜
17 :第2導電膜
18 :配線層
19 :第1配線膜
20 :第2配線膜
21 :第1パッド
22 :第2パッド
23 :第1開口
24 :第2開口
25 :抵抗分離ライン
26 :第1ヒューズ群
27 :第2ヒューズ群
28 :レーザ光
29 :矢印
F1 :第1ヒューズ
F2 :第2ヒューズ
S :所定スペース
X :第1方向
Y :第2方向
r :抵抗単位
rA :基準抵抗単位
rB :抵抗単位
rC :抵抗単位
rD :抵抗単位
rE :抵抗単位
rF :抵抗単位
rG :抵抗単位