(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140607
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電動車制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/14 20060101AFI20241003BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241003BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20241003BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20241003BHJP
B60L 7/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60L7/14
B60L50/60
B60L50/70
B60L15/20 K
B60L7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051813
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】北風 博久
(72)【発明者】
【氏名】波間 惇
(72)【発明者】
【氏名】川口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 優輝
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD10
5H125BE05
5H125CB02
5H125CB03
5H125EE08
5H125EE09
(57)【要約】
【課題】搭載スペース及びコストの増加を抑制しつつ、モータの過回転及びバッテリの過充電を抑制可能な電動車制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置7は、制御部70を有する。制御部70は、回生時であってモータ2の回転数が閾値以上となるとき、モータ2の回生トルクを増大させる第1処理を実行する第1処理部71と、第1処理の後に、変速機5によるシフトアップ変速を行う第2処理を実行する第2処理部72と、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、電力消費デバイス4を作動させる第3処理を実行する第3処理部73と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機及び発電機として機能するモータと、前記モータによって生成された回生電力により充電されるバッテリと、前記モータによって生成された回生電力を消費するための電力消費デバイスと、前記モータと駆動輪との間に介在された変速機と、を備える電動車の制御を行う電動車制御装置であって、
前記モータ、前記電力消費デバイス、及び前記変速機を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
回生時であって前記モータの回転数が閾値以上となるとき、前記モータの回生トルクを増大させる第1処理を実行する第1処理部と、
前記第1処理の後に、前記変速機によるシフトアップ変速を行う第2処理を実行する第2処理部と、
少なくとも前記第2処理での前記シフトアップ変速の前に、前記電力消費デバイスを作動させる第3処理を実行する第3処理部と、
を有する、
電動車制御装置。
【請求項2】
前記第1処理部は、前記第1処理において、前記モータの回生トルクを最大とする、
請求項1に記載の電動車制御装置。
【請求項3】
前記電動車は、発電を行うと共に当該発電により生成された電力を前記モータ及び前記バッテリに供給する燃料電池を備え、
前記制御部は、少なくとも前記第2処理での前記シフトアップ変速の前に、前記燃料電池での発電を停止する第4処理を実行する第4処理部を有する、
請求項1に記載の電動車制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
少なくとも前記第1処理及び前記第2処理の後に、前記モータの前記回生トルクを減少させて前記変速機によるシフトダウン変速を行う第5処理を実行する第5処理部と、
前記第5処理において前記モータの前記回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで前記電力消費デバイスによる前記回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する第6処理部と、
を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動車制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハイブリッド車両の制御装置が記載されている。この制御装置では、電動機の回転軸に連結された入力軸を有する変速機を備えたハイブリット車両において、予め定められた車速と変速段との関係に基づいて、現在の車速で取り得る最低変速段を算出する。また、車両の走行状態に基づいて当該最低変速段への変速において回転数合わせに要する時間を算出する。そして、現在の入力軸と出力軸との回転数差及び回転数合わせに要する時間から最低変速段への変速のために電動機に必要な変速用電力量を算出し、蓄電器の残容量として当該変速用電力量を余剰電力量として常に余らせた状態で電動機による車両の駆動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載のハイブリッド車両のような電動車では、例えば長い下り坂で車両の自重で加速する場合、モータが過回転となるおそれがある。モータの過回転を抑制するためには、多段変速機を採用したり、高回転まで使用可能なモータを採用したりする等の方法が考えられるが、その場合、搭載スペースの確保やコストアップが問題となる。
【0005】
これに対して、モータの回生トルクを最大に発揮することにより、減速力を大きくして増速を抑制し、モータの過回転を抑制することが考えられる。同時に、回生トルクの制御のみでは増速抑制が困難な場合には、シフトアップ変速によりモータの回転数を下げることが考えられる。これらの場合には、回生トルクの増大に伴ってバッテリへの過充電を回避することが望ましいが、バッテリの容量を大きくすると、上記の場合と同様に、搭載スペースの確保やコストアップが問題となる。
【0006】
そこで、本開示は、搭載スペース及びコストの増加を抑制しつつ、モータの過回転及びバッテリの過充電を抑制可能な電動車制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電動車制御装置は、(1)「電動機及び発電機として機能するモータと、前記モータによって生成された回生電力により充電されるバッテリと、前記モータによって生成された回生電力を消費するための電力消費デバイスと、前記モータと駆動輪との間に介在された変速機と、を備える電動車の制御を行う電動車制御装置であって、前記モータ、前記電力消費デバイス、及び前記変速機を制御する制御部を備え、前記制御部は、回生時であって前記モータの回転数が閾値以上となるとき、前記モータの回生トルクを増大させる第1処理を実行する第1処理部と、前記第1処理の後に、前記変速機によるシフトアップ変速を行う第2処理を実行する第2処理部と、少なくとも前記第2処理での前記シフトアップ変速の前に、前記電力消費デバイスを作動させる第3処理を実行する第3処理部と、を有する、電動車制御装置」である。
【0008】
この装置では、回生時であってモータの回転数が閾値以上となるとき、モータの回生トルクを増大させる第1処理が実行される。また、第1処理の後に、変速機によるシフトアップ変速を行う第2処理が実行される。よって、モータの過回転が確実に抑制され、多段変速機を採用したり高回転まで使用可能なモータを採用したりする必要がない。さらに、この装置では、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、電力消費デバイスを作動させる第3処理を実行することにより、モータで生成される回生電力を消費する。よって、バッテリの過充電が抑制され、バッテリの大容量化が避けられる。以上のように、この装置によれば、搭載スペース及びコストの増加を抑制しつつ、モータの過回転及びバッテリの過充電を抑制可能である。
【0009】
本開示に係る電動車制御装置は、(2)「前記第1処理部は、前記第1処理において、前記モータの回生トルクを最大とする、上記[1]に記載の電動車制御装置」であってもよい。この場合、モータの過回転がより確実に抑制される。
【0010】
本開示に係る電動車制御装置は、(3)「前記電動車は、発電を行うと共に当該発電により生成された電力を前記モータ及び前記バッテリに供給する燃料電池を備え、前記制御部は、少なくとも前記第2処理での前記シフトアップ変速の前に、前記燃料電池での発電を停止する第4処理を実行する第4処理部を有する、上記[1]又は[2]に記載の電動車制御装置」であってもよい。この場合、バッテリの過充電がより確実に抑制される。
【0011】
本開示に係る電動車制御装置は、(4)「前記制御部は、少なくとも前記第1処理及び前記第2処理の後に、前記モータの前記回生トルクを減少させて前記変速機によるシフトダウン変速を行う第5処理を実行する第5処理部と、前記第5処理において前記モータの前記回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで前記電力消費デバイスによる前記回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する第6処理部と、を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の電動車制御装置」であってもよい。この場合、モータの過回転を抑制するためにシフトアップされた状態からシフトダウン変速を行うときに、電力消費デバイスによるバッテリの電力の消費、及び、バッテリの過充電が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、搭載スペース及びコストの増加を抑制しつつ、モータの過回転及びバッテリの過充電を抑制可能な電動車制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電動車の一部を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、電動車の車速とモータの回生トルクとの関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、シフトアップ変速時の各部の比較例としての動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、シフトアップ変速時の各部の本実施形態での動作を示すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、シフトダウン変速時の各部の本実施形態での動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0015】
図1は、一実施形態に係る電動車の一部を示す模式図である。
図1に示されるように、電動車1は、モータ2を駆動源とする。電動車1としては、例えば、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)等がある。
【0016】
電動車1は、モータ2、バッテリ3、電力消費デバイス4、変速機5、燃料電池6、及び、制御装置7(電動車制御装置)を備えている。モータ2、バッテリ3、電力消費デバイス4、変速機5、及び燃料電池6は、インバータA1を介して互いに電気的に接続されている。
【0017】
モータ2は、電動機及び発電機として機能する電動発電機(モータジェネレータ)である。モータ2は、正側のトルクである力行トルクを発生することで電動機として機能し、電動車1を駆動する。また、モータ2は、負側のトルクである回生トルクを発生することで、発電機として機能してバッテリ3を充電する。
【0018】
バッテリ3は、モータ2によって生成された回生電力により充電される。また、バッテリ3は、燃料電池6において生成された電力により充電され得る。バッテリ3は、バッテリ充電許容量等を含む充電状態を示す情報を制御装置7に出力することができる。
【0019】
電力消費デバイス4は、モータ2によって生成された回生電力を消費する。電力消費デバイス4は、一例としてブレーキレジスタであるが、電動エアコンやヒータ、24Vバッテリを充電するDCDCコンバータ等であってもよい。
【0020】
変速機5は、モータ2と駆動輪A2との間に介在されている。一例として、モータ2の出力軸が変速機5を介して駆動輪A2に機械的に接続されている。変速機5は、例えば、常用車速域で使用される第1のギア段と、常用車速域よりも高い車速域で使用される第2のギア段とを有している。第2のギア段における変速比は、第1のギア段における変速比よりも小さい。
【0021】
燃料電池6は、燃料の化学反応により電力を生成する。燃料電池6は、発電を行うと共に当該発電により生成された電力をモータ2及びバッテリ3に供給し得る。すなわち、モータ2は、バッテリ3及び燃料電池6からの電力により駆動され得る。
【0022】
図2は、
図1に示された制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、制御装置7は、少なくとも、以上のモータ2、バッテリ3、電力消費デバイス4、変速機5、及び、燃料電池6から各種の情報の入力を受けると共に、当該情報に基づいてそれらの制御を行う制御部70を備える。ただし、一実施形態に係る電動車制御装置は、制御部70に加えて、上記の他の任意の要素を有してもよい。
【0023】
制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)である。制御部70では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、各種の制御を実行する。制御装置7は、単一の電子制御ユニットにより構成されてもよいし、複数の電子制御ユニットにより構成されてもよい。
【0024】
制御部70は、第1処理部71、第2処理部72、第3処理部73、第4処理部74、第5処理部75、及び、第6処理部76を含む。第1処理部71は、回生時であって、モータ2の回転数が閾値以上となるとき、モータ2の回生トルクを増大させる第1処理を実行する。
【0025】
より具体的には、第1処理部71は、
図3に示されるように、例えば電動車1の車速を示す情報を取得し、電動車1の車速が常用車速の上限車速である第1車速V1以上となるとき、モータ2の回転数が閾値以上となるとして、モータ2に発生させる回生トルクを増大させる。このとき、モータ2の回転数の閾値としては、変速機5のギア段が第1のギア段であり、且つ、電動車1の車速が第1車速V1であるときの回転数である。
【0026】
本実施形態では、第1処理部71は、電動車1の車速が第1車速V1に達してからモータ2の過回転閾値に対応する第2車速V1+αに向かうにつれて、モータ2の回生トルクを漸増させる。ここでは、第1処理部71は、電動車1の車速が第1車速V1と第2車速V1+αとの間の第3車速V1+βに達するときに最大となるように、モータ2の回生トルクを増大させる。すなわち、第1処理部71は、第1処理では、モータ2の回転数が閾値以上となるときにモータ2の回生トルクを最大とする。これにより、モータ2の過回転の抑制が図られる。
【0027】
第2処理部72は、第1処理の後に、変速機5によるシフトアップ変速を行う第2処理を実行する。一例として、第2処理部72は、例えば電動車1の車速を示す情報を取得し、第1処理を行っても電動車1の増速(モータ2の回転数の増加)が抑制されないときに、変速機5のギア段を第1のギア段から変速比のより小さい第2のギア段に変速するシフトアップ変速を行うことができる。これにより、モータ2の過回転の確実な抑制が図られる。
【0028】
図4は、シフトアップ変速時の各部の比較例としての動作を示すタイミングチャートである。
図4に示されるように、回生時であって、モータ2の回生トルクが増大された(発生させられた)状態において、第2処理部72により時刻t1においてシフトアップ変速が開始される。時刻t1に至るまでの間には、第1処理により一定の回生トルクTmが発生させられており、それに応じてモータ2で回生電力が生成されてバッテリ3の充電が行われている。また、ここでは、電力消費デバイス4(図示の例ではブレーキレジスタ)が作動しておらず、且つ、燃料電池6での発電が停止されている。
【0029】
時刻t1においてシフトアップ変速が開始されると、モータ2の回生トルクが漸減され、時刻t2でモータ2の回生トルクが0[Nm]とされる。これにより、モータ2での回生電力の生成及びバッテリ3の充電が停止される。そして、時刻t2から時刻t3にかけてギア抜きが行われると共に、時刻t3から時刻t4にかけてモータ2の回転数が低下させられ、インプット回転数(モータ回転数)とアウトプット回転数との回転合わせが行われる。
【0030】
続いて、時刻t4から時刻t5にかけてギア入れが行われ、時刻t5においてシフトアップ変速が完了させられる。その後、時刻t5から時刻t6にかけてモータ2の回転トルクが漸増させられ、再びモータ2での回生電力の生成及びバッテリ3の充電が開始される。そして、時刻t6においてトルク復帰が完了させられる。
【0031】
ここで、時刻t3から時刻t4にわたる回転合わせの際に、モータ2に回生トルクをかけることでモータ2の回転数を迅速に低下させることができる。一方で、これに応じて、一時的にモータ2において大きな回生電力が発生する。この結果、時刻t3から時刻t4の間の時間trにおいて、バッテリ3の充電電力が充電許容量P0を超過して過充電が発生するおそれがある。
【0032】
これに対して、本実施形態では、
図5に示されるように、第3処理部73が、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、電力消費デバイス4を作動させる第3処理を実行する。
図5の例では、時刻t1よりも前に第3処理が実行されて電力消費デバイス4(図示の例ではブレーキレジスタ)が作動させられている。一例として、ここでは電力消費デバイス4の電力消費量が最大とされる。これにより、電力消費デバイス4によってモータ2で生成された回生電力が消費させられ、時間trにおいてもバッテリ3の過充電が生じることが抑制される。
【0033】
さらに、本実施形態では、第4処理部74が、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、燃料電池6での発電を停止する第4処理を実行する。これにより、燃料電池6からバッテリ3への電力供給を抑制し、バッテリ3の過充電の抑制を確実に図ることができる。なお、
図5の例では、時刻t1よりも前に、第3処理部73が電力消費デバイス4を作動させる共に、第4処理部74が燃料電池6での発電を停止している。
【0034】
ここで、
図6は、シフトダウン変速時の各部の本実施形態での動作を示すタイミングチャートである。
図6に示されるように、ここでは、変速機5のギア段が第2のギア段とされている状態において、時刻t11においてシフトダウン変速が開始される。時刻t11に至るまでの間には、一定の回生トルクTmが発生させられており、それに応じてモータ2で回生電力が生成されてバッテリ3の充電が行われている。また、ここでは、電力消費デバイス4(図示の例ではブレーキレジスタ)が作動しており、且つ、燃料電池6での発電が停止されている。一例として、ここでは電力消費デバイス4の電力消費量が最大とされる。
【0035】
時刻t11においてシフトアップ変速が開始されると、モータ2の回生トルクが一定のレートで漸減され、時刻t12でモータ2の回生トルクが0Nmとされる。これにより、モータ2での回生電力の生成及びバッテリ3の充電が停止される。そして、時刻t12から時刻t13にかけてギア抜きが行われると共に、時刻t13から時刻t14にかけてモータ2の回転数が上昇させられ、インプット回転数(モータ回転数)とアウトプット回転数との回転合わせが行われる。
【0036】
続いて、時刻t14から時刻t15にかけてギア入れが行われ、時刻t15においてシフトダウン変速が完了させられる。その後、時刻t15から時刻t16にかけてモータ2の回転トルクが一定のトルクレートで漸増させられ、再びモータ2での回生電力の生成及びバッテリ3の充電が開始される。そして、時刻t16においてトルク復帰が完了させられる。
【0037】
このように、本実施形態では、第5処理部75が、少なくとも第1処理及び第2処理の後に、モータ2の回生トルクを減少させて変速機によるシフトダウン変速を行う第5処理を実行する。このとき、時刻t13から時刻t14にかけてモータ2に力行トルクをかけることでモータ2の回転数を迅速に上昇させようとすると、一時的にモータ2において大きな電力消費が発生するため、バッテリ3の出力が放電許容量P1を超過するおそれがある。
【0038】
これに対して、本実施形態では、モータ2の回転数の上昇に先立って、電力消費デバイス4での電力の消費量が減少させられている(ここでは0[kW]とされている)。これにより、バッテリ3での放電許容量P1の超過が抑制される。
【0039】
一方で、モータ2において回生トルクの減少(すなわち、モータ2で生成される回生電力の減少)と無関係に電力消費デバイス4での電力消費量が減少させられると、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、電力消費デバイス4での電力消費量がモータ2での回生電力の生成量を上回った場合には、電力消費デバイス4での電力消費量の不足分がバッテリ3から消費されるおそれがある。また、電力消費デバイス4での電力消費量がモータ2での回生電力の生成量を下回った場合には、回生電力の余剰分がバッテリ3に供給され、バッテリ3の充電許容量P0を超過するおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、第6処理部76が、第5処理においてモータ2の回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで電力消費デバイス4による回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する。ここでは、第6処理部76は、時刻t11から時刻t12にかけて、モータ2の回生トルクが一定のレートで漸減させられるのに合わせて、同等のレートで電力消費デバイス4での回生電力の消費量を0[kW]まで減少させる。
【0041】
これにより、第5処理におけるモータ2の回生トルクの減少の際に、電力消費デバイス4での電力消費量がモータ2での回生電力の生成量を上回ったり、電力消費デバイス4での電力消費量がモータ2での回生電力の生成量を下回ったりした場合の上記のような問題の発生が抑制される。
【0042】
なお、本実施形態に係る制御装置7では、第6処理部76は、第5処理でのシフダウン変速の後に、時刻t15でのシフトダウン変速の完了から時刻t16でのトルク復帰完了までの間のモータ2の回生トルクの増加に合わせて、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで電力消費デバイス4による回生電力の消費量を増加させる第7処理を実行してもよい。一例として、第7処理では、電力消費デバイス4の電力消費量が最大とされてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置7では、回生時であってモータ2の回転数が閾値以上となるとき、モータ2の回生トルクを増大させる第1処理が実行される。また、第1処理の後に、変速機5によるシフトアップ変速を行う第2処理が実行される。よって、モータ2の過回転が確実に抑制され、多段変速機を採用したり高回転まで使用可能なモータを採用したりする必要がない。さらに、制御装置7では、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、電力消費デバイス4を作動させる第3処理を実行することにより、モータ2で生成される回生電力を消費する。よって、バッテリ3の過充電が抑制され、バッテリの大容量化が避けられる。以上のように、制御装置7によれば、搭載スペース及びコストの増加を抑制しつつ、モータ2の過回転及びバッテリ3の過充電を抑制可能である。
【0044】
また、本実施形態に係る制御装置7では、第1処理部71が、第1処理において、モータ2の回生トルクを最大とする。このため、モータ2の過回転がより確実に抑制される。
【0045】
また、本実施形態に係る制御装置7は、少なくとも第2処理でのシフトアップ変速の前に、燃料電池6での発電を停止する第4処理を実行する第4処理部74を有する。このため、バッテリの過充電がより確実に抑制される。
【0046】
さらに、本実施形態に係る制御装置7は、少なくとも第1処理及び第2処理の後に、モータ2の回生トルクを減少させて変速機5によるシフトダウン変速を行う第5処理を実行する第5処理部75と、第5処理においてモータ2の回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで電力消費デバイス4による回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する第6処理部76と、を有する。このため、モータの過回転を抑制するためにシフトアップされた状態からシフトダウン変速を行うときに、電力消費デバイス4によるバッテリ3の電力の消費、及びバッテリ3過充電が抑制される。
【0047】
以上の実施形態は、本発明の一態様について説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、任意に変形され得る。
【0048】
例えば、上記実施形態では、シフトダウン変速に係る第5処理及び第6処理(さらには第7処理(以下同様))が、シフトアップ変速に係る第1処理、第2処理、第3処理、及び第4処理の後に続いて行われる場合について説明した。しかし、第5処理及び第6処理は、第1処理、第2処理、第3処理、及び第4処理と独立して実行されてもよい。
【0049】
すなわち、本開示に係る電動車制御装置においては、制御部70が、第5処理を実行する第5処理部、及び、第6処理を実行する第6処理部(さらには第7処理を実行する第7処理部(不図示))のみを備えることができる。この場合の電動車制御装置の構成について、以下に付記する。
【0050】
第1付記に係る電動車制御装置は、「電動機及び発電機として機能するモータと、前記モータによって生成された回生電力により充電されるバッテリと、前記モータによって生成された回生電力を消費するための電力消費デバイスと、前記モータと駆動輪との間に介在された変速機と、を備える電動車の制御を行う電動車制御装置であって、前記モータ、前記電力消費デバイス、及び前記変速機を制御する制御部を備え、前記制御部は、回生時であって前記変速機のギア段が第1のギア段及び前記第1のギア段よりも変速比の小さい第2のギア段のうちの前記第2のギア段であるとき、前記モータの前記回生トルクを減少させて前記変速機によるシフトダウン変速を行う第5処理を実行する第5処理部と、前記第5処理において前記モータの前記回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで前記電力消費デバイスによる前記回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する第6処理部と、を有する、電動車制御装置」であってもよい。
【0051】
この第1付記に係る電動車制御装置では、第6処理部が、第5処理においてモータの回生トルクを減少させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで電力消費デバイスによる回生電力の消費量を減少せる第6処理を実行する。これにより、第5処理におけるモータの回生トルクの減少の際に、電力消費デバイスでの電力消費量がモータでの回生電力の生成量を上回ったり、電力消費デバイスでの電力消費量がモータでの回生電力の生成量を下回ったりした場合の上記問題の発生が抑制される。
【0052】
第2付記に係る電動車制御装置は、「前記第5処理での前記シフトダウン変速の後に、前記モータの回生トルクを増大させるときに、当該回生トルクの変化レートに応じたレートで電力消費デバイスによる回生電力の消費量を増加させる第7処理を実行する第7処理部をさらに有する、上記第1付記に記載の電動車制御装置」であってもよい。
【0053】
この場合、シフトダウン変速が完了した後にモータの回生トルクを増大させる際においても、電力消費デバイスでの電力消費量がモータでの回生電力の生成量を上回ったり、電力消費デバイスでの電力消費量がモータでの回生電力の生成量を下回ったりした場合の上記問題の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0054】
1…電動車、2…モータ、3…バッテリ、4…電力消費デバイス、5…変速機、6…燃料電池、7…制御装置(電動車制御装置)、70…制御部、71…第1処理部、72…第2処理部、73…第3処理部、74…第4処理部、75…第5処理部、76…第6処理部。