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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140610
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20241003BHJP
   B01J 35/56 20240101ALI20241003BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20241003BHJP
   C04B 35/195 20060101ALI20241003BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
B01J35/04 301C
B01J35/04 301E
B01J35/04 ZAB
B01J35/10 301F
C04B35/195
C04B38/00 303Z
B01D39/20 D
B01D46/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051824
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】増田 沙智子
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA37
4D058JA38
4D058JB06
4D058SA08
4D058TA06
4G019FA12
4G019FA13
4G169AA01
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA27
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB14Y
4G169EB15Y
4G169EB16X
4G169EB16Y
4G169EB17X
4G169EB17Y
4G169EB18Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC17X
4G169EC17Y
4G169EC18X
4G169EC18Y
(57)【要約】
【課題】機械的強度が高く、且つ排ガス浄化用の触媒を担持して使用した際の圧力損失の上昇を有効に抑制することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム構造体4と、それぞれのセル2の第一端面11側又は第二端面12側の開口部に配設された目封止部5と、を備え、隔壁1の厚さが、203~254μmであり、水銀圧入法によって測定された隔壁1の気孔率が、55~70%であり、水銀圧入法によって測定された隔壁1の平均細孔径が、20~25μmであり、隔壁1は、当該隔壁1を構成する多孔質基材の実体部分が局所的に細くなる基材ネック部の平均基材ネック径が、11~18μmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、
前記セルの前記第一端面側の端部又は前記第二端面側の端部のいずれか一方に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁の厚さが、203~254μmであり、
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の気孔率が、55~70%であり、
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の平均細孔径が、20~25μmであり、
前記隔壁は、当該隔壁を構成する多孔質基材の実体部分が局所的に細くなる基材ネック部の平均基材ネック径が、11~18μmである、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率が、0.1~3.0%である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記ハニカム構造体のセル密度が、43.4~49.6個/cmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記隔壁が、コージェライトを主成分として含む材料から構成されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の細孔径分布において、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10が、16~19μmである、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、機械的強度が高く、且つ排ガス浄化用の触媒を担持して使用した際の圧力損失の上昇を有効に抑制することが可能なハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタや、CO,HC,NOxなどの有毒なガス成分を浄化する装置として、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている(特許文献1参照)。ハニカム構造体は、コージェライトなどの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。即ち、ハニカムフィルタは、流入端面側が開口し且つ流出端面側が目封止された流入セルと、流入端面側が目封止され且つ流出端面側が開口した流出セルとが、隔壁を挟んで交互に配置された構造となっている。そして、ハニカムフィルタにおいては、多孔質の隔壁が、排ガス中の粒子状物質(例えば、スス)を捕集するフィルタの役目を果たしている。以下、排ガスに含まれる粒子状物質を、「PM」ということがある。「PM」は、「particulate matter」の略である。
【0003】
排ガス中のPMを捕集するためのハニカムフィルタは、その圧力損失を低減するために種々の検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-219319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハニカムフィルタの圧力損失を低減するための対策として、隔壁の気孔率を高くする方法や、隔壁の厚さを薄くする方法などが種々検討されている。
【0006】
しかしながら、ハニカムフィルタの圧力損失を低減するために隔壁の気孔率を高くすると、隔壁の材料強度の確保が難しくなるという問題があった。以下、上記した「隔壁の気孔率を高くする」ことを「隔壁の高気孔率化」ということがある。例えば、隔壁の高気孔率化の一例として、隔壁の厚さを216μmとし、セル密度を46.5個/cmとした場合、隔壁の気孔率を63%以下にしないと、ハニカムフィルタの機械的強度についての指針の1つであるアイソスタティック強度(Isostatic strength)を1MPa以上にすることが困難となることがある。
【0007】
また、隔壁の厚さを薄くすることにより一定の圧力損失の低減効果は得られるものの、上述した隔壁の高気孔率化と同様に、隔壁の材料強度の確保が難しくなるという問題があった。以下、上記した「隔壁の厚さを薄くする」ことを「隔壁の薄壁化」ということがある。また、隔壁の高気孔率化と薄壁化の併用を行う場合には、ハニカムフィルタのアイソスタティック強度等の機械的強度の確保が更に困難となってしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明によれば、機械的強度が高く、且つ排ガス浄化用の触媒を担持して使用した際の圧力損失の上昇を有効に抑制することが可能なハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0010】
[1] 第一端面から第二端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム構造体と、
前記セルの前記第一端面側の端部又は前記第二端面側の端部のいずれか一方に配設された目封止部と、を備え、
前記隔壁の厚さが、203~254μmであり、
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の気孔率が、55~70%であり、
水銀圧入法によって測定された前記隔壁の平均細孔径が、20~25μmであり、
前記隔壁は、当該隔壁を構成する多孔質基材の実体部分が局所的に細くなる基材ネック部の平均基材ネック径が、11~18μmである、ハニカムフィルタ。
【0011】
[2] 水銀圧入法によって測定された前記隔壁の全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率が、0.1~3.0%である、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0012】
[3] 前記ハニカム構造体のセル密度が、43.4~49.6個/cmである、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0013】
[4] 前記隔壁が、コージェライトを主成分として含む材料から構成されている、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0014】
[5] 水銀圧入法によって測定された前記隔壁の細孔径分布において、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10が、16~19μmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカムフィルタは、機械的強度が高く、且つ排ガス浄化用の触媒を担持して使用した際の圧力損失の上昇を有効に抑制することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、第一端面側からみた斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの第一端面側からみた平面図である。
図3図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
(1)ハニカムフィルタ:
図1図3に示すように、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態は、ハニカム構造体4と、目封止部5と、を備えた、ハニカムフィルタ100である。ハニカム構造体4は、第一端面11から第二端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。ハニカムフィルタ100において、ハニカム構造体4は、柱状を呈し、その外周側面に、外周壁3を更に有している。即ち、外周壁3は、格子状に配設された隔壁1を囲繞するように配設されている。
【0019】
図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す、第一端面側(例えば、流入端面側)からみた斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの第一端面側(例えば、流入端面側)からみた平面図である。図3は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0020】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム構造体4を構成する隔壁1の構成において、特に主要な特性を有している。即ち、ハニカム構造体4を構成する隔壁1は、当該隔壁1の厚さが、203~254μmである。また、水銀圧入法によって測定された隔壁1の気孔率が、55~70%であり、水銀圧入法によって測定された隔壁1の平均細孔径が、20~25μmである。更に、隔壁1は、当該隔壁1を構成する多孔質基材の実体部分が局所的に細くなる基材ネック部の平均基材ネック径が、11~18μmである。このように構成されたハニカムフィルタ100は、機械的強度が高く、且つ排ガス浄化用の触媒を担持して使用した際の圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。特に、本実施形態のハニカムフィルタ100は、隔壁1の厚さが203~254μmであり、隔壁1の気孔率が55~70%であり、多孔質の隔壁1は、比較的に高気孔率で且つ薄壁であるにも関わらず、優れた機械的強度を実現することができる。その理由として、隔壁1の平均細孔径が20~25μmであるとともに、上述した基材ネック部の平均基材ネック径が11~18μmであることが挙げられる。即ち、本実施形態のハニカムフィルタ100における隔壁1は、隔壁1を構成する多孔質基材における基材ネック部が、従来の多孔質基材における基材ネック部よりも太くなるように構成され、多孔質基材の平均基材ネック径が11~18μmとなっている。このため、隔壁1を構成する多孔質基材の材料強度が高く、優れた機械的強度(例えば、アイソスタティック強度)を実現することができる。以下、ハニカム構造体4を構成する隔壁1について、更に詳細に説明する。
【0021】
隔壁1の厚さは203~254μmである。隔壁1の厚さ以外のその他の構成(例えば、上述した気孔率や平均細孔径などの数値範囲)を満たしつつ、隔壁1の厚さが203μm未満であると、隔壁1の機械的強度が低下してしまう。一方で、隔壁1の厚さが254μmを超えると、隔壁1に排ガス浄化用の触媒を担持した際に、ハニカムフィルタ100の圧力損失が高くなることがある。隔壁1の厚さは203~254μmであればよいが、例えば、216~241μmであることが好ましく、224~236μmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。
【0022】
隔壁1の気孔率は55~70%である。隔壁1の気孔率は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の気孔率の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。気孔率の測定は、ハニカムフィルタ100から隔壁1の一部を切り出して試験片とし、このようにして得られた試験片を用いて行うことができる。隔壁1の気孔率が55%未満であると、隔壁1に排ガス浄化用の触媒を担持した際に、ハニカムフィルタ100の圧力損失が高くなることがある。また、隔壁1の気孔率が70%を超えると、ハニカムフィルタ100の機械的強度が低くなることがある。隔壁1の気孔率は55~70%であればよいが、例えば、58~67%であることが好ましく、60~65%であることが更に好ましい。
【0023】
隔壁1の平均細孔径は20~25μmである。隔壁1の平均細孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の平均細孔径の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。平均細孔径の測定は、上述した気孔率の測定に用いられる試験片を用いて行うことができる。隔壁1の平均細孔径が20μm未満であると、隔壁1に排ガス浄化用の触媒を担持した際に、ハニカムフィルタ100の圧力損失が高くなることがある。また、隔壁1の平均細孔径が25μmを超えると、ハニカムフィルタ100の捕集効率が低くなることがある。隔壁1の平均細孔径は20~25μmであればよいが、例えば、23~25μmであることが好ましく、24~25μmであることが更に好ましい。
【0024】
更に、本実施形態のハニカムフィルタ100における隔壁1は、当該隔壁1を構成する多孔質基材の実体部分が局所的に細くなる基材ネック部の平均基材ネック径が、11~18μmである。これまでに説明した気孔率や平均細孔径などの隔壁1に関するその他の構成を満たしつつ、基材ネック部の平均基材ネック径を11~18μmとすることで、隔壁1を構成する多孔質基材の小細孔が減少し、且つ、当該多孔質基材の基材ネック径が太くなっている。このため、本実施形態のハニカムフィルタ100は、機械的強度の低下を抑制しつつ、特に隔壁1に排ガス浄化用の触媒を担持した際に、ハニカムフィルタ100の圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。
【0025】
基材ネック部の平均基材ネック径は11~18μmであればよいが、例えば、13~18μmであることが好ましく、15~18μmであることが更に好ましい。なお、平均基材ネック径が11μm未満であると、気孔率や平均細孔径などの隔壁1に関するその他の構成を満たした場合に、機械的強度が低くなることがある。また、気孔率や平均細孔径などのその他の構成を調節することで機械的強度の改善を図ろうとすると、隔壁1に排ガス浄化用の触媒を担持した際に、ハニカムフィルタ100の圧力損失が高くることがある。一方で、平均基材ネック径が18μmを超えると、平均細孔径が相対的に大きくなり、ハニカムフィルタ100の捕集効率が低くなることがある。
【0026】
隔壁1を構成する多孔質基材の基材ネック部の平均基材ネック径は、以下のようにして測定することができる。まず、隔壁1を構成する多孔質基材の多孔質体データは、3次元スキャンに基づいて得られる。3次元スキャンに用いる装置は、例えば、Zeiss社製のXradia520Versa(商品名)を挙げることができる。X,Y,Zの各方向の解像度はそれぞれ1.2μmであり、これにより得られる1辺が1.2μmの立方体がボクセルとなる。3次元CTスキャンによって得られるデータは、例えばX,Y,Zの座標毎の輝度データである。このような輝度データを所定の閾値で二値化して空間ボクセルか物体ボクセルかを座標毎に求めることにより3次元の多孔質体データ(以下、「多孔質体3次元データ」ともいう)を得ることができる。閾値は、例えば輝度データの輝度分布から、大津の二値化で決める。例えば、隔壁1の多孔質体データを得る範囲については特に制限はない。隔壁1の多孔質体データを得る範囲としては、3次元スキャンに用いる装置に応じて適宜決定することができ、例えば、480μm×480μm×隔壁1の厚さ(μm)の範囲を挙げることができる。
【0027】
次に、得られた多孔質体3次元データに対し、WaterShed法にて、くびれ部分で基材を分割する。SNOWアルゴリズムをプログラムに実装し、WaterShed法での分割を実施している。
【0028】
そして、くびれ部分で基材を分割した分割基材について、一の分割基材と当該一の分割基材と隣接する他の分割基材との間の「ボクセルの集合体」を、基材同士を仕切る「基材ネック部」とする。基材ネック部を構成するボクセル数に格子解像度(1.2μm)の2乗を乗算した値(即ち、ボクセル数×(1.2μm))を基材ネック面積とする。平均基材ネック径は、√(基材ネック面積/π)で求められる。
【0029】
隔壁1は、水銀圧入法によって測定された隔壁1の全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率が、0.1~3.0%であることが好ましい。このように、本実施形態のハニカムフィルタ100において、隔壁1を構成する多孔質基材は、細孔径が10μm以下の細孔の相対的に細孔径の小さな細孔(小細孔)の細孔容積率が少ないことが好ましい。細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率の実質的な下限値が、上述した0.1%である。細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率が3.0%を超えると、小細孔が増大することに伴い、基材ネック部の平均基材ネック径が太くなり難くなる。このため、基材ネック部の平均基材ネック径を11~18μmの範囲に収めにくくなることがある。隔壁1の全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率の測定は、隔壁1の気孔率や平均細孔径と同様の測定方法、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。なお、特に限定されることはないが、隔壁1の全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率は、例えば、0.1~2.0%であることが更に好ましい。
【0030】
更に、本実施形態のハニカムフィルタ100における隔壁1は、水銀圧入法によって測定された隔壁1の細孔径分布において、累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10が、16~19μmであることが好ましい。以下、上述した「累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10の値」を、隔壁1の細孔径分布における「D10の値」ということがある。本実施形態のハニカムフィルタ100は、上記した細孔径分布におけるD10の値は、16~19μmのような比較的に高く設定されていることが好ましい。細孔径分布におけるD10の値を高く設定して小細孔を減らすことにより、隔壁1の透過抵抗が低くなり、ハニカムフィルタ100の圧力損失の上昇を有効に抑制することができる。細孔径分布におけるD10の値は、例えば、18~19μmであることが更に好ましい。
【0031】
隔壁1の累積細孔容積は、上述したように水銀圧入法によって測定された値である。隔壁1の累積細孔容積の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。隔壁1の累積細孔容積の測定は、以下のような方法によって行うことができる。まず、ハニカムフィルタ100から隔壁1の一部を切り出して、累積細孔容積測定用の試験片を作製する。試験片の大きさについては特に制限はないが、例えば、縦、横、高さのそれぞれの長さが、約10mm、約10mm、約20mmの直方体であることが好ましい。試験片を切り出す隔壁1の部位については特に制限はないが、試験片は、ハニカムフィルタ100のハニカム構造体4の軸方向の中心付近から切り出して作製することが好ましい。得られた試験片を、測定装置の測定用セル内に収納し、この測定用セル内を減圧する。次に、測定用セル内に水銀を導入する。次に、測定用セル内に導入した水銀を加圧し、加圧時において、試験片内に存在する細孔中に押し込まれた水銀の体積を測定する。この際、水銀に加える圧力を増やすにしたがって、細孔径の大きな細孔から、順次、細孔径の小さな細孔に水銀が押し込まれることとなる。したがって、「水銀に加える圧力」と「細孔中に押し込まれた水銀の体積」との関係から、「試験片に形成された細孔の細孔径」と「累積細孔容積」の関係を求めることができる。更に詳細に説明と、上記したように水銀圧入法により、真空状態に密閉した容器内にある試料(試験片)の細孔に水銀を浸入させるために徐々に圧力を加えていくと、圧力が加えられた水銀は、試料の大きな細孔から小さな細孔へと順に浸入していく。その時の圧力と圧入された水銀量から、試料に形成された細孔の細孔径、及びその細孔容積を算出することができる。以下、細孔径をa1、a2、a3・・・とした場合、a1>a2>a3・・・の関係を満たすものとする。ここで、各測定ポイント間(例えば、a1からa2)の平均細孔径は、「平均細孔径=(a1+a2)/2」として横軸に示すことができる。また、縦軸のLog微分細孔容積は、各測定ポイント間の細孔容積の増加分dVを細孔径の対数扱いの差分値(即ち、「log(a1)-log(a2)」)で割った値とすることができる。
【0032】
ハニカム構造体4に形成されているセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルと混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セル2とは、隔壁1によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0033】
隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、43.4~49.6個/cmであることが好ましく、45.0~48.1個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100を、自動車のエンジンから排出される排ガスを浄化するためのフィルタとして好適に利用することができる。
【0034】
隔壁1は、セラミックスの多孔質材料から構成されることが好ましく、特に、コージェライトを主成分として含む材料であることがより好ましい。即ち、隔壁1は、コージェライトを主成分として含む材料から構成された多孔質基材であることがより好ましい。ここで、「主成分」とは、その成分中に、90質量%以上存在する成分のことを意味する。隔壁1を構成する材料は、コージェライトを92質量%以上含むことが好ましく、94質量%以上含むことが更に好ましい。そして、隔壁1は、不可避的に含有される成分を除いてコージェライトからなることが特に好ましい。
【0035】
ハニカム構造体4の外周壁3は、隔壁1と一体的に構成されたものであってもよいし、隔壁1の外周側に外周コート材を塗工することによって形成した外周コート層であってもよい。例えば、図示は省略するが、外周コート層は、製造時において、隔壁と外周壁とを一体的に形成した後、形成された外周壁を、研削加工等の公知の方法によって除去した後、隔壁の外周側に設けることができる。
【0036】
ハニカム構造体4の形状については特に制限はない。ハニカム構造体4の形状としては、第一端面11(例えば、流入端面)及び第二端面12(例えば、流出端面)の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。
【0037】
ハニカム構造体4の大きさ、例えば、第一端面11から第二端面12までの長さや、ハニカム構造体4のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0038】
ハニカムフィルタ100においては、所定のセル2の第一端面11側の開口部、及び残余のセル2の第二端面12側の開口部に、目封止部5が配設されている。ここで、第一端面11を流入端面とし、第二端面12を流出端面とした場合に、流出端面側の開口部に目封止部5が配設され、流入端面側が開口したセル2を、流入セル2aとする。また、流入端面側の開口部に目封止部5が配設され、流出端面側が開口したセル2を、流出セル2bとする。流入セル2aと流出セル2bとは、隔壁1を隔てて交互に配設されていることが好ましい。そして、それによって、ハニカムフィルタ100の両端面に、目封止部5と「セル2の開口部」とにより、市松模様が形成されていることが好ましい。
【0039】
目封止部5の材料については特に制限はない。例えば、上述した隔壁1の材料と同様の材料であってもよいし、隔壁1の材料とは異なる材料であってもよい。
【0040】
ハニカムフィルタ100は、複数のセル2を区画形成する隔壁1に排ガス浄化用の触媒が担持されていることが好ましい。隔壁1に触媒を担持するとは、隔壁1の表面及び隔壁1に形成された細孔の内壁に、触媒がコーティングされることをいう。このように構成することによって、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることができる。また、捕集した煤等のPMの酸化を促進させることができる。
【0041】
隔壁1に担持する触媒については特に制限はない。例えば、このような触媒として、白金族元素を含有する触媒であって、アルミニウム、ジルコニウム、及びセリウムのうちの少なくとも一種の元素の酸化物を含む触媒を挙げることができる。触媒の担持量は、50~100g/Lであることが好ましい。なお、本明細書における、触媒の担持量(g/L)は、ハニカムフィルタ100の単位容積(L)当たりに担持される触媒の量(g)を示す。
【0042】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
図1図3に示す本実施形態のハニカムフィルタの製造方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法により製造することができる。まず、ハニカム構造体を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム構造体を作製するための坏土は、例えば、以下のように調製することができる。原料粉末として、タルク、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ等を用い、これらの原料粉末を、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるようにして調製することができる。
【0043】
本実施形態のハニカムフィルタは、隔壁を構成する多孔質基材の基材ネック部の平均基材ネック径が11~18μmである。このようなハニカムフィルタを製造する方法としては、例えば、坏土の調製において、坏土の原料粉末として従来より使用されていたカオリンを原料として用いずに、坏土の調製を行うことが好ましい。特に、カオリンは、原料粒径が小さいことが一般的であり、このような原料粒径が小さいカオリンを含まない原料粉末を用いて調製した坏土を用いることにより、基材ネック部の平均基材ネック径を、従来の製造方法によって製造された多孔質基材に比して太くすることができる。例えば、粒径15~25μmのタルク、粒径4~8μmのアルミナ等を原料として使用することができる。
【0044】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、ハニカム成形体を作製する。
【0045】
得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥し、ハニカム成形体の作製に用いた材料と同様の材料で、セルの開口部を目封止することで目封止部を作製する。目封止部を作製した後に、ハニカム成形体を更に乾燥してもよい。
【0046】
次に、目封止部を作製したハニカム成形体を焼成することにより、ハニカムフィルタを製造する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を3.4質量部、分散媒を1.0質量部、有機バインダを6.0質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。有機バインダとしては、メチルセルロース(Methylcellulose)を使用した。分散剤としては、ラウリン酸カリ石鹸を使用した。造孔材としては、平均粒子径30μmの吸水性ポリマーを使用した。コージェライト化原料としては、タルク、アルミナ、シリカゲル、水酸化アルミニウムを用いた。
【0049】
次に、得られた坏土を、押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて更に乾燥した。ハニカム成形体におけるセルの形状は、四角形とした。
【0050】
次に、乾燥後のハニカム成形体に、目封止部を形成した。まず、ハニカム成形体の流入端面にマスクを施した。次に、マスクの施された端部(流入端面側の端部)を目封止スラリーに浸漬し、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、ハニカム成形体の流入端面側に、目封止部を形成した。そして、乾燥後のハニカム成形体の流出端面についても同様にして、流入セルにも目封止部を形成した。
【0051】
次に、目封止部を形成したハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、乾燥したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、実施例1のハニカムフィルタを製造した。
【0052】
実施例1のハニカムフィルタは、端面の直径が118.4mmであり、セルの延びる方向の長さが152.4mmであった。また、隔壁の厚さが203.2μmであり、セル密度が41.9個/cmであった。
【0053】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、隔壁の気孔率(%)及び平均細孔径(μmm)の測定を行った。また、以下に示す気孔率及び平均細孔径の測定に用いた装置を用いて、隔壁の細孔径分布を求め、求めた細孔径分布から、全細孔容積に対する細孔径が10μm以下の細孔の細孔容積率(%)、及び累積細孔容積が全細孔容積の10%となる細孔径D10の値(μm)を求めた。また、以下の方法で、隔壁を構成する多孔質基材の基材ネック部の平均基材ネック径(μm)を求めた。各結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[気孔率(%)及び平均細孔径(μm)]
隔壁の気孔率及び平均細孔径は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定した。気孔率及び平均細孔径の測定においては、ハニカムフィルタから隔壁の一部を切り出して試験片とし、得られた試験片を用いて気孔率の測定を行った。試験片は、縦、横、高さのそれぞれの長さが、約10mm、約10mm、約20mmの直方体のものとした。試験片の採取箇所については、ハニカムフィルタの軸方向の中心付近とした。
【0056】
[平均基材ネック径(μm)]
まず、隔壁の多孔質体3次元データを3次元スキャンにより測定した。3次元スキャンは、Zeiss社製のXradia520Versa(商品名)を用いた。多孔質体3次元データはX,Y,Zの各方向の解像度がそれぞれ1.2μmであり、これにより得られる1辺が1.2μmの立方体がボクセルとなる。多孔質体3次元データは、X,Y,Zの座標毎の輝度データである。次に、多孔質体3次元データに対し、WaterShed法にて、くびれ部分で基材を分割した。SNOWアルゴリズムをプログラムに実装し、WaterShed法での上記分割を実施した。上記のようにして基材を分割した分割基材について、2つの隣接する分割基材の相互間のボクセルの集合体を、基材ネック部とした。このような基材ネック部を構成するボクセル数に格子解像度(1.2μm)の2乗を乗算した値(即ち、ボクセル数×(1.2μm))を基材ネック面積し、平均基材ネック径を、√(基材ネック面積/π)にて算出した。
【0057】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、A軸圧縮強度、及び圧力損失についての評価を行った。なお、A軸圧縮強度、及び圧力損失の各評価においては、評価を行う各ハニカムフィルタに対して、以下の方法によって白金族元素含有触媒を担持し、触媒担持後においてそれぞれ測定を行った。各結果を、表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
[触媒の担持方法]
まず、平均粒子径30μmの酸化アルミニウムを含む触媒スラリーを調製した。そして、調製した触媒スラリーを用いて、ハニカムフィルタに触媒を担持した。具体的には、触媒の担持は、ハニカムフィルタをディッピング(Dipping)することによって行い、その後、余分な触媒スラリーを空気にて吹き飛ばすことによって、ハニカムフィルタの隔壁に所定量の触媒を担持した。その後、触媒を担持したハニカムフィルタを100℃の温度で乾燥し、更に500℃、2時間の熱処理を行うことにより、触媒付きハニカムフィルタを得た。実施例1のハニカムフィルタに担持した触媒の担持量は、75g/Lであった。
【0060】
[A軸圧縮強度]
製品(ハニカムフィルタ)から切り出した直径約25.4mm×長さ25.4mmのテストピースを試料とし、試験機のヘッドスピード1mm/分以下で連続的に荷重を加える。破壊時の荷重Fを読み取り、下記式(1)により圧縮強度Pを算出して、ハニカムフィルタのA軸圧縮強度(MPa)を求めた。表2の「A軸圧縮強度比」の欄に、比較例1の触媒付きハニカムフィルタのA軸圧縮強度の値を100%とした場合における、各実施例及び比較例の触媒付きハニカムフィルタをA軸圧縮強度の値(%)を示す。A軸圧縮強度の評価においては、下記評価基準に基づき、各実施例のハニカムフィルタの評価を行った。
P=F/S (1)
(但し、上記式(1)において、Pは圧縮強度(Pa)を示し、Fは破壊時の荷重(N)を示し、Sは試料断面積(m)を示す。なお、試料断面積Sは、5.067×10-4とした。)
評価「優」:A軸圧縮強度比(%)の値が、150%以上である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:A軸圧縮強度比(%)の値が、120%以上、150%未満である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:A軸圧縮強度比(%)の値が、100%以上、120%未満である場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」:A軸圧縮強度比(%)の値が、100%未満の場合、その評価を「不可」とする。
【0061】
[圧力損失]
1.2L直噴ガソリンエンジンから排出される排ガスを700℃、600m/hの流量で流入させて、触媒付きハニカムフィルタの流入端面側と流出端面側との圧力を測定した。そして、流入端面側と流出端面側との圧力差を算出することにより、ハニカムフィルタの圧力損失(kPa)を求めた。表2の「圧力損失比」の欄に、比較例1の触媒付きハニカムフィルタの圧力損失の値を100%とした場合における、各実施例及び比較例の触媒付きハニカムフィルタを圧力損失の値(%)を示す。圧力損失評価においては、下記評価基準に基づき、各実施例のハニカムフィルタの評価を行った。
評価「優」:圧力損失比(%)の値が、80%以下である場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:圧力損失比(%)の値が、80%を超え、90%以下である場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:圧力損失比(%)の値が、90%を超え、100%以下である場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」:圧力損失比(%)の値が、100%を超える場合、その評価を「不可」とする。
【0062】
(実施例2~8)
実施例2~8においては、ハニカム成形体を作製するための坏土の調製において、以下に示すような原料を用いてハニカムフィルタを製造した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、隔壁の気孔率及び平均細孔径の測定を行った。また、上述した方法にて、10μm以下の細孔の細孔容積率(%)、D10の値(μm)、及び平均基材ネック径(μm)を求めた。各結果を表1に示す。実施例2~8においては、坏土を調製するための原料粉末において、カオリンを含まない原料粉末を使用した。
【0063】
(比較例1~7)
比較例1~7においては、ハニカム成形体を作製するための坏土の調製において、以下に示すような原料を用いてハニカムフィルタを製造した。得られたハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、隔壁の気孔率及び平均細孔径の測定を行った。また、上述した方法にて、10μm以下の細孔の細孔容積率(%)、D10の値(μm)、及び平均基材ネック径(μm)を求めた。各結果を表1に示す。比較例1及び2においては、坏土を調製するための原料粉末において、カオリンを含む原料粉末を使用した。比較例3~7においては、坏土を調製するための原料粉末において、カオリンを含まない原料粉末を使用し、隔壁の気孔率及び平均細孔径が表1の値となるように原料粉末の粒径や造孔材の粒径を調整した。
【0064】
実施例2~8及び比較例1~7のハニカムフィルタについて、実施例1と同様の方法で、A軸圧縮強度、及び圧力損失の評価を行った。各結果を表2に示す。
【0065】
(結果)
実施例1~8のハニカムフィルタは、A軸圧縮強度、及び圧力損失の評価において、評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも優れた結果を示すものであった。特に、実施例1のハニカムフィルタは基材ネック径が15μmであり、A軸圧縮強度の評価結果が特に優れたものであった。また、実施例6のハニカムフィルタは基材ネック径が16μmであり、こちらもA軸圧縮強度の評価結果が特に優れたものであった。実施例7のハニカムフィルタは10μm以下の細孔容積率が2.5%であり、圧力損失の評価結果が特に優れたものであった。
【0066】
一方、比較例2のハニカムフィルタは、平均基材ネック径が10μmであり、且つ気孔率が65%であり、A軸圧縮強度の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。比較例3のハニカムフィルタは、平均細孔径が17μmであり、触媒担持(以下、触媒コートともいう)後の圧力損失の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。比較例4のハニカムフィルタは、気孔率が71%であり、A軸圧縮強度の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。比較例5のハニカムフィルタは、気孔率が54%であり、触媒コート後の圧力損失の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。比較例6のハニカムフィルタは、隔壁厚さが266.7μmであり、触媒コート後の圧力損失の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。比較例7のハニカムフィルタは、隔壁厚さが190.5μmであり、A軸圧縮強度の評価結果が評価基準となる比較例1のハニカムフィルタよりも劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のハニカムフィルタは、排ガスに含まれる微粒子等を除去するための捕集フィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周壁、4:ハニカム構造体、5:目封止部、11:第一端面、12:第二端面、100:ハニカムフィルタ。
図1
図2
図3