IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フルヤ金属の特許一覧

特開2024-140616金属担持担体の製造方法および金属担持担体前駆体
<>
  • 特開-金属担持担体の製造方法および金属担持担体前駆体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140616
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】金属担持担体の製造方法および金属担持担体前駆体
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/24 20060101AFI20241003BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241003BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20241003BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20241003BHJP
   B22F 1/054 20220101ALN20241003BHJP
【FI】
B22F9/24 Z
B22F9/24 C
B22F9/24 B
B22F1/00 K
B22F1/00 M
B22F1/00 S
B22F1/00 L
B82Y30/00
B82Y40/00
B22F9/24 E
B22F9/24 F
B22F1/054
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051833
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 健二
(72)【発明者】
【氏名】水越 博
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017CA08
4K017EJ01
4K017EJ02
4K017FB07
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA13
4K018BB05
4K018BD10
(57)【要約】
【課題】ナノ金属粒子の粗大化がより抑制され、かつ、ナノ金属粒子の連続的製造でも配管等の閉塞が起こりにくい金属担持担体、特に、ナノ粒子の金属が担持された金属担持担体の製造方法を提供すること。
【解決手段】一種以上の金属の化合物と担体とを液体中で混合し、前記金属の化合物中の金属を担体に固定し、前記担体に固定された金属の量は、前記金属の化合物中の金属の量に対して0.8以上1以下であり、前記金属を固定した担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流し、前記金属の化合物中の金属を前記担体に担持させた金属担持担体を回収する金属担持担体の製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の金属の化合物と担体とを液体中で混合し、前記金属の化合物中の金属を担体に固定し、前記担体に固定された金属の量は、前記金属の化合物中の金属の量に対して0.8以上1以下であり、前記金属を固定した担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流し、前記金属の化合物中の金属を前記担体に担持させた金属担持担体を回収する金属担持担体の製造方法。
【請求項2】
前記金属の化合物が二種以上の金属の化合物である請求項1に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項3】
前記金属の化合物が少なくとも白金族金属の化合物を含む請求項1または2に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項4】
前記金属の化合物が少なくとも卑金属の化合物を含む請求項1または2に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項5】
前記白金族金属の化合物が白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物である請求項3に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項6】
前記卑金属の化合物が鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物である請求項4に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項7】
前記金属の化合物が白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物と、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物を含む請求項5または6に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項8】
前記金属が固定された担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流後、前記金属担持担体を洗浄する洗浄工程を含む請求項1または2に記載の金属担持担体の製造方法。
【請求項9】
担体に一種以上の金属が固定された金属担持担体前駆体。
【請求項10】
担体に二種以上の金属が固定された請求項9に記載の金属担持担体前駆体。
【請求項11】
前記担体に固定された金属が少なくとも白金族金属を含む請求項9または10に記載の金属担持担体前駆体。
【請求項12】
前記担体に固定された金属が少なくとも卑金属を含む請求項9または10に記載の金属担持担体前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属担持担体の製造方法および前記製造方法に用いられる金属担持担体前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等の排ガス浄化処理に用いる触媒や化合物合成などの各種反応に用いる触媒には貴金属等の希少金属を含む触媒が広く利用されている。しかし、希少金属は、高価かつ産出量が少ないため、その使用量を抑えることが求められており、活性が高いとされる粒径が100nm以下の小粒径の希少金属の粒子であるナノ粒子の開発が進められている。
【0003】
このようなナノ粒子の合成には、トリエチレングリコールなどの高沸点な還元剤を高温に加熱した状態で貴金属塩溶液を徐々に添加して合成するバッチ式合成が知られている。しかし、バッチ式合成では還元剤溶液中に存在する貴金属濃度が次第に濃くなるため、粒子が成長し粒子の粗大化が起きるなどの問題があり、粒子径の小さい合金を量産することはバッチ式合成では困難である。
【0004】
そこでこのようなナノ粒子の粗大化を防ぐ手段として、例えば、特許文献1にはマイクロリアクターを用いた金属粒子のフロー式合成方法が開示されている。特許文献1ではパラジウム金属塩溶液とルテニウム金属塩溶液とをマイクロリアクター内で還元剤の存在のもと、加圧下で反応させることによって、パラジウムとルテニウムの固溶体金属ナノ粒子を合成している。
【0005】
しかしながら極小粒径の金属ナノ粒子は凝集を起こしやすく、マイクロリアクターで金属ナノ粒子を合成しても、合成中または合成後の金属ナノ粒子の溶液中で金属ナノ粒子の凝集が進行し、結果として粒子が粗大化した金属粒子となる場合がある。
また、還元剤で還元する際に、原料である金属の還元速度の関係から、還元剤を多く使用する必要がある場合がある。還元剤は通常、アルカリ金属の水酸化物が用いられるが、アルカリ金属が粗大化した金属粒子中に水酸化イオンが混入した場合、混入した水酸化イオンを除去することは困難である。除去しきれずに金属粒子中に残存した水酸化イオンは反応装置およびその後の反応に悪影響を与えることが知られている。
【0006】
この粗大化を抑制する試みとして特許文献2には還元剤を含む液体と、担持する単金属微粒子または固溶体微粒子を構成する元素を含む液体と、担体粒子を含む液体とを連続的に送液しながらこれら液体を合流させ、金属ナノ粒子が担体上に担持されたフロー反応による金属ナノ粒子の合成に用いられる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-109275号公報
【特許文献2】WO2020/262121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の方法によれば、担体に金属ナノ粒子が担持されることで金属ナノ粒子の粗大化が抑制されるものの、その抑制効果は十分とは言えず、また装置の配管等の閉塞が発生して生産性が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記の態様を有する。
【0010】
[1]
一種以上の金属の化合物と担体とを液体中で混合し、前記金属の化合物中の金属を担体に固定し、前記担体に固定された金属の量は、前記金属の化合物中の金属の量に対して0.8以上1以下であり、前記金属を固定した担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流し、前記金属の化合物中の金属を前記担体に担持させた金属担持担体を回収する金属担持担体の製造方法。
[2]
前記金属の化合物が二種以上の金属の化合物である前記[1]に記載の金属担持担体の製造方法。
[3]
前記金属の化合物が少なくとも白金族金属の化合物を含む前記[1]または[2]に記載の金属担持担体の製造方法。
[4]
前記金属の化合物が少なくとも卑金属の化合物を含む前記[1]から[3]のいずれかに記載の金属担持担体の製造方法。
[5]
前記白金族金属の化合物が白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物である前記[3]に記載の金属担持担体の製造方法。
[6]
前記卑金属の化合物が鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物である前記[4]に記載の金属担持担体の製造方法。
[7]
前記金属の化合物が白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムおよびロジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物と、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属の化合物を含む前記[1]から[6]のいずれかに記載の金属担持担体の製造方法。
[8]
前記金属が固定された担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流後、前記金属担持担体を洗浄する洗浄工程を含む前記[1]から[7]のいずれかに記載の金属担持担体の製造方法。
【0011】
また、本発明は下記の態様を有する。
[9]
担体に一種以上の金属が固定された金属担持担体前駆体。
[10]
担体に二種以上の金属が固定された前記[9]に記載の金属担持担体前駆体。
[11]
前記担体に固定された金属が少なくとも白金族金属を含む前記[9]または[10]に記載の金属担持担体前駆体。
[12]
前記担体に固定された金属が少なくとも卑金属を含む前記[9]から[11]のいずれかに記載の金属担持担体前駆体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ナノ金属粒子の粗大化がより抑制され、かつ、ナノ金属粒子の連続的製造でも配管等の閉塞が起こりにくい金属担持担体、特に、ナノ粒子の金属が担持された金属担持担体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記金属担持担体の製造に用いられる金属担持担体前駆体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の製造方法の一部を実施する好ましい形態に係る製造装置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0015】
本発明の金属担持担体の製造方法(以下、本製造方法とも記す。)は、一種以上の金属の化合物と担体とを液体中で混合し、前記金属の化合物中の金属を担体に固定し、前記担体に固定された金属の量は、前記金属の化合物中の金属の量に対して、0.8以上1以下であり、前記金属を固定した担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流し、前記金属の化合物中の金属を前記担体に担持させた金属担持担体を回収する。
前記一種以上の金属の化合物(以下、本金属化合物とも記す。)は、一種の金属の化合物または二種以上の金属の化合物である。本金属化合物は、例えば、金属のハロゲン化物、カルコゲン化合物、水酸化物、無機酸塩等の無機金属化合物、および、アルコキシド化合物、有機酸塩、有機金属錯体等の有機金属化合物のいずれでもよく、両者の混合物であってもよい。
また、本金属化合物は同じ金属であって異なる化合物でもよいし、一つの化合物が二種以上の金属を含んでもよい。ただし、同じ金属で異なる化合物の場合は、一種の金属の化合物である。
これら化合物のなかでも、一種以上の金属のハロゲン化物、カルコゲン化合物、水酸化物、無機酸塩、アルコキシド化合物、カルボニル化合物、有機酸塩、有機金属錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、溶解度の観点からハロゲン化物がより好ましい。
【0016】
ハロゲン化物は、ヨウ化物、塩化物、臭化物が挙げられ、取り扱いの観点から塩化物が好ましい。
カルコゲン化合物は、取り扱いの観点から酸化物、硫化物が好ましい。
無機酸塩としては、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ケイ酸、亜硫酸、亜硝酸または亜リン酸等との金属塩が挙げられ、これらの中でも、安定性の観点から硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩が好ましく、硫酸塩がより好ましい。
【0017】
アルコキシド化合物としては、炭素数1から8のアルコキシとの金属アルコキシド化合物またはフェノールとの金属フェノキシド化合物が好ましく、金属メトキシ、金属エトキシ、金属プロポキシ、金属ブトキシ、金属フェノキシがより好ましい。
【0018】
有機酸塩としては、カルボン酸、スルホン酸等との金属塩が挙げられ、これらの中でも、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、イソフタル酸塩、テレフタル酸塩、サルチル酸塩等のカルボン酸塩、またはメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩が好ましい。前記有機酸はフッ素または塩素等で置換されていてもよく、また分子内または分子間で無水塩を形成してもよい。
これらの中でも溶解度の観点からシュウ酸塩、サリチル酸塩、ギ酸塩、乳酸塩がより好ましい。
【0019】
有機金属錯体としては、アルキル錯体、カルボニル錯体、オレフィン錯体、芳香族錯体、アセチルアセトナート錯体等が挙げられ、これらの有機金属錯体の中でも、還元性・熱分解性の観点からアセチルアセトナート錯体やカルボニル錯体が好ましい。
【0020】
本金属化合物中の一種以上の金属としては、周期律表で第3族から第12族に含まれる金属が挙げられ、貴金属または卑金属が挙げられる。
貴金属としては金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウムが挙げられ、本製造方法により得られる金属担持担体を排ガス浄化用の触媒として用いる場合は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムが好ましい。
【0021】
卑金属としては、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、鉛、亜鉛、すず、タングステン、モリブデン、タンタル、マグネシウム、コバルト、ビスマス、カドミウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、ベリリウム、クロム、ゲルマニウム、バナジウム、ガリウム、ハフニウム、インジウム、ニオブ、レニウム、タリウムが挙げられ、本製造方法により得られる金属担持担体を排ガス浄化用の触媒として用いる場合は、鉄、コバルト、銅、ニッケルが好ましい。
【0022】
本金属化合物としては、例えば、塩化白金酸、ジニトロジアンミン白金、ヘキサヒドロキソ白金酸、塩化パラジウム、塩化パラジウム酸カリウム、硫酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、塩化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム等が挙げられる。
本金属化合物は得られる金属担持担体の前記用途に応じて適宜選択されるが、例えば、塩化パラジウム酸カリウム、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化イリジウム、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム、硝酸ロジウムが好ましく、塩化パラジウム酸カリウム、塩化白金酸、塩化イリジウム酸がより好ましい。
【0023】
本金属化合物と混合する担体は、得られる金属担持担体の用途によって適宜選択されるが、例えば、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、カルシア、マグネシア、チタニア、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア、チタニア-ジルコニア、ランタナ、ランタナ-アルミナ、酸化スズ、酸化タングステン、アルミノシリケート、アルミノホスフェート、ボロシリケート、リンタングステン酸、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、ペロブスカイト、コージェライト、ムライト、シリコンカーバイド、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノホーン等を挙げることができる。担体を排ガス浄化用の触媒として用いる場合は、アルミナ、セリア、ジルコニア、セリア-ジルコニア、マグネシアがより好ましい。
前記担体は、比表面積が大きいほど、吸着する金属粒子の量を多くすることから、比表面積は、50m/g以上が好ましく、100m/g以上であることがより好ましい。
【0024】
前記本金属化合物と前記担体を液体中で混合する際に用いる液体は、通常、一気圧で80℃以上の融点を有する化合物であり、本金属化合物を溶解する化合物であってもよいし、本金属化合物をコロイド状またはスラリー状に分散させる化合物であってもよい。用いられる液体としては、水または有機溶媒が挙げられる。
後述するように本製造方法において、金属イオンまたは金属錯体を担体に効率的に固定できる観点から、本金属化合物中の金属が液体中で担体と混合する際に金属イオンとなるのが好ましく、本金属化合物を溶解する性質を持つ液体であるのが好ましい。
【0025】
有機溶媒としては、炭素数が2から6のアルコール、炭素数が3から8のアルカン、炭素数が1から6のカルボン酸、2個以上のヒドロキシ基(OH基)をもった多価アルコールが挙げられる。
有機溶媒のなかでは、アルコールが好ましい。
前記本金属化合物と前記担体を混合する際に用いる液体としては、使用する本金属化合物に応じて、適宜選択されるが、例えば、水、有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましく、水がより好ましい。
【0026】
本金属化合物と前記担体とを前記液体中で混合する際は、本金属化合物と前記液体とを予め混合し、そこへ担体を添加してもよいし、担体と前記液体とを予め混合し、そこへ本金属化合物を添加してもよいし、前記液体へ本金属化合物と担体を同時に添加してもよいし、本金属化合物と前記液体とを予め混合し、別途、担体と前記液体とを予め混合し、その後、両者を混合してもよい。添加に際しては、連続的に添加してもよいし、断続的に添加してもよい。
また、本金属化合物と前記担体との混合はバッチ式でも連続式でもどちらでもよい。
【0027】
本金属化合物中の金属が担体に効率的に固定されるという観点から、本金属化合物と前記液体とを予め混合し、そこへ担体を添加する方法、または、本金属化合物と前記液体とを予め混合し、別途、担体と前記液体とを予め混合し、その後、両者を混合する方法、のいずれかの方法が好ましい。
【0028】
前記液体中で混合する際の本金属化合物の濃度は、粒子径を小さくして担持する観点から、本金属化合物中の金属、担体および前記液体の質量の合計を100質量%として金属の濃度が低い方が好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。金属の濃度は0.1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
また、前記液体中で混合する際の担体の濃度は、液体の流動性の観点から、本金属化合物中の金属、担体および前記液体の質量の合計を100質量%として、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。担体の濃度は0.1質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
本金属化合物と担体を液体中で混合し混合液が得られる。得られた混合液中で本金属化合物中の金属は解離して金属イオンの形態、錯イオンを含む金属錯体の形態、および、本金属化合物の形態等、様々な形態で存在する。本製造方法では、前記混合液中に様々な形態で存在する本金属化合物中の金属を担体に固定する。
担体に固定するとは、後述するように担体に担持する場合とは異なり、前記様々な形態で存在する金属が担体表面や担体内部の細孔内に未還元の状態で吸着する事を意味する。
前記混合液中に前記のような様々な形態で存在する金属が担体に固定されることで、担体に1種以上の金属が固定された金属担持担体前駆体が形成される。金属担持担体前駆体は担体上に本金属化合物中の金属が、本金属化合物から解離した金属イオンの形態、錯イオンを含む金属錯体の形態、および、本金属化合物の形態等の状態で担体上に固定される。このように担体に固定された様々な形態の金属を「担体に固定された金属」とも称する。
【0030】
この金属担持担体前駆体は後述する還元剤との接触により、担体に固定された金属が0価の金属に還元されて担体に金属が担持された金属担持担体となる。
【0031】
一方、前記混合液中に存在する、金属イオン、錯イオンを含む金属錯体、および、本金属化合物等の一部は、担体に固定されず混合液中に存在する場合がある。この状態で後述する還元剤と接触すると、担体から遊離した状態で金属に還元され、その後、担体上に担持されると担体で金属粒子が成長して粗大化し、ナノ金属粒子のように粒径を小さくするのが困難となる。
また、固定されず混合液中に存在している金属イオン、錯イオンを含む金属錯体、および本金属化合物等が還元され、後述する流体中に浮遊した金属粒子となると、金属担持担体上の金属担持率が低下するため、所望の金属担持率とすることや金属担持率を上げることが困難となる。さらに混合液中に存在している金属イオン、錯イオンを含む金属錯体、および、本金属化合物等は連続的に搬送される流体中で還元され金属粒子となり、流体中に浮遊すると、搬送管内の管壁等に付着し、搬送管の閉塞を誘発し、生産性の低下の原因となる場合がある。特に、金属担持率を上げるために原料の金属化合物を多くすると、このような搬送管の閉塞がより顕著となる。
【0032】
本製造方法では、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量は0.8以上1以下である。なお、担体に固定された金属の量とは前記様々な形態で担体に固定された金属の全量である。
なお、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量が0.8以上1以下とは、前記のように担体に固定された金属の量を本製造方法で用いた本金属化合物中の金属の量で除した値が0.8以上1以下あり、その値が1とは本金属化合物中の金属が全て担体に固定されたことを意味する。
また、本金属化合物中の金属の量および担体に固定された金属の量はいずれも金属原子のモル数であり、例えば、金属錯体として担体に固定された場合、当該金属錯体に含有する金属のモル数である。担体に固定された金属の量は、前記様々な形態で担体に固定された金属のモル数の合計である。
【0033】
還元剤と接触する前に、混合液中に存在する金属イオン、錯イオンを含む金属錯体、および本金属化合物等を担体に固定することで、前記のような金属粒子の粗大化が抑制され、さらに担体への金属担持率の向上が達成される。
また、連続的に搬送される流体中に浮遊する金属粒子が減少し、搬送管内の壁等での金属粒子の析出も抑制されることから、搬送管等の閉塞が回避され、結果として生産性が向上する。
【0034】
なお、本金属化合物が二種以上の金属を含む場合、担体に固定された金属の量とは固定された各金属の合計である。本金属化合物が二種以上の金属を含む場合、担体に固定された各金属の量の比率は本金属化合物中の各金属の比率と必ずしも一致している必要はないが、本金属化合物中の各金属の量に対して、担体に固定された各金属の量が0.8以上1以下であり、本金属化合物中の各金属の比率と、担体に固定された各金属の比率が同じであることが好ましい。
前記のとおり、混合液中に様々な形態で存在する金属が担体に固定される。本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量は0.85以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。
【0035】
担体に固定された金属の量の測定方法は、例えば、金属を固定した担体を単離し、担体に固定された金属量をICP発光分光分析法や蛍光X線分析法等により定量する方法、または前記液体中で本金属化合物と担体を混合後、液体中の金属量をICP発光分光分析法等により定量して、全金属の量から液体中の金属量を差し引いて、担体に固定された金属量を算出する方法、等が挙げられる。
【0036】
前記液体中で本金属化合物と担体を混合しながら、混合液中の様々な形態で存在する金属の濃度を前記方法で定量することで、混合液中の様々な形態で存在する金属の担体への固定の終了点を見極められることから、効率的に金属を担体に固定することができる。
【0037】
金属の担体への固定は、例えば、混合液のpHを調整する、混合液を濃縮して前記液体の量を減少させる、真空含浸法により前記担体細孔内へ金属を導入する、前記担体の表面を修飾する等により行うことができる。
前記固定は、本金属化合物と担体を液体中で混合して得られる混合液中で、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量が0.8以上1以下となる方が、本金属化合物中の金属が混合液中に存在するより安定な状態となるような方法であればよく、前記方法に限定されない。
混合液のpHの調整方法は、例えば、混合液のpHに応じて、緩衝液、弱酸性化合物または弱塩基性化合物を混合液に添加する方法が挙げられる。
混合液を濃縮する場合、加熱、減圧、または、両者を組み合わせて液体を蒸発させ、混合液の体積で50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下まで減少させればよく、液体を全て除去してもよい。
担体の表面を修飾する場合、予め表面を修飾した担体を用いてもよいし、混合液に修飾剤を添加してもよい。担体の修飾方法は、例えば、担体の表面にカチオン性のイオンを生成させる方法、金属への配位能を有する基を担体の表面に導入する方法、等が挙げられる。
金属を担体に固定する方法は、前記混合液を濃縮する方法が簡便である観点から好ましい。
【0038】
前記工程により、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量が0.8以上1以下である金属担持担体前駆体が得られる。なお、以下では本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量が0.8以上1以下である金属担持担体前駆体を金属担持担体前駆体Aとも記す。
得られた金属担持担体前駆体Aは、一旦、本金属化合物を担体に固定する工程から分離し、後述する金属担持担体前駆体を含む流体としてもよいし、分離せず、そのまま金属担持担体前駆体Aを含む流体としてもよい。
【0039】
得られた金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流し、担体に固定された金属イオンを還元剤により還元して0価の金属とすることで、金属粒子が担体に担持された金属担持担体が得られる。金属担持担体前駆体Aを含む流体とは金属担持担体前駆体Aを含む気体または液体であり、還元剤を含む流体とは還元剤を含む気体または液体である。
【0040】
金属担持担体前駆体Aを含む気体としては、酸素、空気、または、不活性気体が挙げられる。不活性気体とは前記金属担持担体前駆体に含まれる金属と反応しない気体であり、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンが挙げられる。
金属担持担体前駆体Aを含む液体としては、金属担持担体前駆体Aを分散する液体が挙げられ、水または有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、前記本金属化合物と担体とを混合する際に用いた有機溶媒と同じ有機溶媒が挙げられる。金属担持担体前駆体Aを含む液体が有機溶媒の場合、前記本金属化合物と担体とを混合する際に用いた有機溶媒と同じであっても、異なっていてもよいが、製造効率の観点から同じ有機溶媒を用いるのが好ましい。
また、金属担持担体前駆体Aを含む流体は複数あってもよい。例えば、前記金属化合物の金属または化合物毎に異なる流体としてもよい。それぞれの流体は別々に後述する還元剤を含む流体と合流してもよいが、得られる金属担持担体中の品質を均一にする観点から、金属担持担体前駆体Aを含む流体が複数の場合、還元剤を含む流体と合流させる前に複数ある金属担持担体前駆体Aを含む流体を全て合流させるのが好ましい。複数ある金属担持担体前駆体Aを含む流体を全て合流する場合、順次合流させてもよいし、一括で合流させてもよい。
【0041】
還元剤は、前記金属担持担体前駆体A中の金属イオンを還元する能力を有する化合物であり、担体の金属を0価の金属とする化合物である。
還元剤としては、無機還元剤および有機還元剤が挙げられる。
無機還元剤としては、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、ジ亜リン酸ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、亜硫酸ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム等が挙げられる。
有機還元剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコールプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-ヘキサデカンジオールなどの1,2-アルカンジオール等が挙げられる。
【0042】
還元剤を含む気体としては、前記気体と同じ気体が挙げられ、還元剤を含む液体としては、前記液体と同じ液体が挙げられる。
また、還元性ガスを還元剤として含む流体としてもよい。還元性ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素、炭化水素ガスが挙げられる。
【0043】
前記金属担持担体前駆体Aを含む流体と前記還元剤を含む流体とを合流させる。それぞれの流体は液体同士、気体同士、または、液体と気体のいずれの組み合わせでもよいが、液体同士が製造効率の観点から好ましい。
【0044】
本製造方法において、前記金属担持担体前駆体Aを含む流体と前記還元剤を含む流体の少なくともいずれか一方は、連続的に供給される。連続的に供給されるいずれか一方の流体と、もう一方の流体とを連続的または間欠的に合流させる。得られる金属担持担体中の金属粒子の粒径を小さくする観点から、前記金属担持担体前駆体Aを含む流体と前記還元剤を含む流体の両方を連続的に供給しながら、両者を合流させるのが好ましい。
【0045】
金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させる際の温度は、還元反応を促進する観点から、100℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、300℃以上が更に好ましい。また、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させる際の温度は、得られる金属担持担体の金属粒子の粒径の観点から、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、374℃以下がさらに好ましい。
前記温度とするために、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体の少なくともいずれかの温度を前記温度の範囲まで昇温してから流体を合流させてもよいし、両流体の合流後、合流部の温度を前記温度の範囲としてもよい。
【0046】
金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させる際の圧力は、沸点を上昇させる観点から、0.1MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、30MPaが更に好ましい。また、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させる際の温度は、得られる金属担持担体の金属粒子の粒径の観点から、500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、374℃以下がさらに好ましい。
前記圧力とするために、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体の少なくともいずれかの圧力を前記圧力の範囲まで昇圧してから流体を合流させてもよいし、両流体の合流後、合流部の圧力を前記圧力の範囲としてもよい。
【0047】
金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させ、金属担持担体前駆体Aに含まれる金属イオンを還元する反応時間は、得られる金属担持担体に含まれる金属粒子が熱凝集により粗大化しないように、できるだけ短い反応時間であることが望ましい。反応時間は、好ましくは1分から300分であり、より好ましくは10分から120分、さらに好ましくは10分から60分である。
なお、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体との合流は、一回で行ってもよいし、複数回で行ってもよい。例えば、連続的に供給される金属担持担体前駆体Aを含む流体に還元剤を含む流体が複数回合流させてもよいし、連続的に供給される還元剤を含む流体に金属担持担体前駆体Aを含む流体を複数回合流させてもよい。複数回合流させる場合、前記合流させる際の温度および圧力は最初に合流する際の温度および圧力である。また、前記還元する反応時間は最初に合流してからの時間である。
【0048】
前記のようにして金属担持担体前駆体Aに含まれる金属イオンを還元剤で還元し、0価の金属粒子が担体に担持された金属担持担体(以下「本金属担持担体」とも記す。)が生成する。なお、担持とは前記固定とは異なり、0価の金属が担体上または担体の細孔内に付着した状態であり、通常、金属と担体間に物理的な力が働き、金属は担体に付着する。
生成した本金属担持担体を流体より分離し回収することにより、本金属担持担体が得られる。回収する方法は、例えば、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させた後、冷却等により本金属担持担体を析出させ、析出させた本金属担持担体を濾過、沈降、遠心分離等により流体から分離して回収する方法が挙げられる。
前記合流させる際の温度および圧力は前記方法で本金属担持担体を回収するまで保持するのが好ましい。また、前記還元する反応時間は本金属担持担体の回収までの時間である。
本金属担持担体を回収後、さらに水または有機溶媒等により洗浄し、前記と同様な方法で回収するのが、得られる本金属担持担体の純度の観点から好ましい。
【0049】
本製造方法において、前記金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させ、本金属担持担体を回収する工程は、得られる本金属担持担体中の金属粒子の粒径を小さく制御できるという観点から、図1に示したような製造装置を用いて行うのが好ましい。
【0050】
製造装置100は、金属担持担体前駆体Aを含む流体を供給する第1流体供給源1と、還元剤を含む流体を供給する第2流体供給源2とを有する。また、製造装置100は必要に応じて第1流体供給源1から供給される金属担持担体前駆体Aを含む流体、および、第2流体供給源2から供給される還元剤を含む流体を加熱するための加熱部を有してもよい。また、製造装置100は必要に応じて後述する圧力調整機構9により圧力を調整することができる。さらに、製造装置100は金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体を合流させる反応部3を有する。
前記第1流体供給源1と前記反応部3は供給ルート4で連結され、第1流体供給源1から金属担持担体前駆体Aを含む流体が供給ルート4により反応部3へ供給される。前記第2流体供給源2と前記反応部3は供給ルート5により連結され、第2流体供給源2から還元剤を含む流体が反応部3へ供給ルート5により供給される。
【0051】
さらに、反応部3は生成した反応物を回収する回収部7と供給ルート6により連結され、反応部3と回収部7の間の供給ルート6の周辺に冷却部8が配置されている。これにより、前記反応部3で生成した本金属担持担体は供給ルート6を通過するときに前記冷却部8により冷却され、前記回収部7へ搬送される。
さらに、製造装置100は反応部を高圧条件にする目的で、圧力調整機構9を有する。圧力調整機構9は、図1に示した様に前記回収部7に接続されていてもよいし、冷却部8と回収部7との間に供給ルート6を介して接続されていてもよい。
圧力調整機構としては、ブランジャー、シリンダー、レギュレーターが考えられるが、目詰まりまたは減耗の観点から、シリンダーが好ましい。
【0052】
前記供給ルート4から6は、例えば、配管等により形成される。
前記製造装置100によれば、安定的に本金属担持担体を作製することができる。
【0053】
前記反応部3において、金属担持担体前駆体Aを含む流体と還元剤を含む流体とを合流させ、両者を混合することによって、金属担持担体前駆体A中の金属イオンを還元し0価の金属粒子とする。
圧力調整機構9は、製造装置100の下流に位置しており、反応部3、供給ルート4、供給ルート5、供給ルート6と接続されていることから、製造装置100の全体の圧力を調整する機能を有しているが、反応部3の圧力のみを調整する機能であってもよい。図1では、圧力調整機構9により、反応部および前記全ての送液ルートの圧力が調整される。
【0054】
第1流体供給源1と反応部3とを結ぶ供給ルート4は供給手段を有する。供給ルート4にニードルバルブ、ストップバルブなどの流量を調整する流量調整手段を配置してもよい。
第2流体供給源2と反応部3とを結ぶ供給ルート5は供給手段を有する。供給ルート4と同様に、供給ルート5にニードルバルブ、ストップバルブなどの流量を調整する手段を配置してもよい。
また、前記供給手段の少なくとのいずれか一方は連続的に流体を供給する機能を有しており、両方が連続的に流体を供給する機能を有するのが好ましい。
【0055】
図1の製造装置では、供給ルート4または供給ルート5のいずれか一方、または両方に流れる流体を一方向へ移送する流量調整機構10、11を有してもよい。図1に示した製造装置100には、第1流体供給源1、第2流体供給源2、反応部3、供給ルート4、供給ルート5、供給ルート6、回収部7、冷却部8、圧力調整機構9に加えて、供給ルート4および供給ルート5のそれぞれに、前記流量調整機構10、11を有する態様を示した。この態様では、供給ルート4において金属担持担体前駆体Aを含む流体の流量および流速を、および、供給ルート5において還元剤を含む流体の流量および流速を、それぞれ安定的に制御することができるので、安定的に本金属担持担体を製造することができる。
流量調整機構10、11は、例えば、プランジャー、シリンダーまたはレギュレーターが例示できる。
【0056】
また、前記第1流体供給源1は複数あってもよい。前記第1流体供給源1が複数ある場合、それに応じて供給ルート4も複数設けられ、反応部3へそれぞれが繋げられてもよいし、反応部3の前に、複数ある供給ルート4が合流してもよい。
前記第1流体供給源1が複数ある場合、各第1流体供給源1は異なる金属の金属担持担体前駆体Aを含む流体を供給してもよいし、同じ金属の金属担持担体前駆体Aを含む流体を交互に供給してもよい。
【0057】
また、前記第2流体供給源2は複数あってもよい。前記第2流体供給源2が複数ある場合、それに応じて供給ルート5も複数設けられ、反応部3へそれぞれが繋げられてもよいし、反応部3の前に、複数ある供給ルート5が合流してもよい。
前記第2流体供給源2が複数ある場合、還元剤を含む流体を交互に供給してもよい。
【0058】
図1に記載するような供給ルートを用いた製造方法は連続的に本金属担持担体を製造でき、また、得られる本金属担持担体中の金属粒子の平均粒径を小さくできるので好ましい。
図1に記載するような供給ルートを用いた製造方法の場合、第1流体供給源1の前記金属担持担体前駆体Aが含有する金属イオン濃度および前記還元剤の濃度を制御することで得られる本金属担持担体中の金属粒子の平均粒径を制御することが可能である。
また、金属担持担体前駆体Aを含む流体の供給速度、還元剤を含む流体の供給速度、反応部の温度または冷却速度等を制御することにより、得られる本酸化物の平均粒径を前記好ましい範囲に制御することが可能である。
【0059】
また、本発明の金属担持担体前駆体(以下、「本金属担持担体前駆体」とも記す。)は担体に一種以上の金属イオンまたは金属錯体が固定されている。本金属担持担体前駆体は固定された金属イオンまたは金属錯体を還元することで金属担持担体となることから、金属担持担体の前駆体として好適に用いられる。
固定される、とは前記と同じである。
担体に固定される金属イオンまたは金属錯体は前記本金属化合物中の金属と同じく、貴金属または卑金属が挙げられ、目的とする金属担持担体の用途により適宜選定される。
貴金属としては、金、銀 、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム 、オスミウムが挙げられ、卑金属としては鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、鉛、亜鉛、すず、タングステン、モリブデン、タンタル、マグネシウム、コバルト、ビスマス、カドミウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、ベリリウム、クロム、ゲルマニウム、バナジウム、ガリウム、ハフニウム、インジウム、ニオブ、レニウム、タリウムが挙げられる。
また担体も前記本金属担持担体に用いられる担体と同じである。
【0060】
本金属担持担体前駆体が含有する金属の量は、目的とする金属担持担体の金属担持率等により適宜設定されるが、本金属担持担体前駆体の質量を100質量%として、0.1質量%から20質量%が好ましく、0.1質量%から10質量%がより好ましい。
【0061】
本金属担持担体前駆体は、例えば、本金属化合物と前記担体を液体中で混合して混合液として、本金属化合物から解離した金属イオンまたは金属錯体を前記担体に固定することで得られる。
金属イオンまたは金属錯体を担体に固定する方法は、前記の方法が挙げられる。
固定する際、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量は0.8以上1以下が好ましく、0.85以上が固定されるのがより好ましく、0.90以上が固定されるのがさらに好ましく、0.95以上が固定されるのが特に好ましい。
なお、本金属化合物中の金属の量、担体に固定された金属の量、本金属化合物中の金属の量に対して、担体に固定された金属の量については前記と同じである。
【0062】
得られた本金属担持担体前駆体は前記混合液から分離してもよいし、そのまま前記金属担持担体前駆体Aとして本製造方法に用いてもよい。分離する方法は、例えば、自然ろ過、吸引ろ過、クロスフローろ過が挙げられる。
また、得られた本金属担持担体前駆体は必要に応じて精製してもよい。精製の方法は、例えば、純水を用いた洗浄による不純物除去が挙げられる。
【0063】
前記本製造方法で得られる本金属担持担体は、担持された金属粒子の粒径を小さくすることが可能であり、また、粒径の粗大化を抑制しながら担体への金属の担持率を高くすることができる。したがって、本製造方法で得られた本金属担持担体は、排ガスの浄化用触媒等の化学触媒に対し好適に用いることができる。
また、前記本製造方法によれば、配管等への金属の析出が少なく、配管の閉塞が抑えられるとともに、原料として用いた金属化合物のロスを抑制することができる。
【0064】
また、前記本金属担持担体前駆体は、本製造方法に好適に用いることができる。また、本製造方法に限らず、金属担持担体を製造する上で、有効な前駆体となりうる。
【0065】
以上、本製造方法および本金属担持担体前駆体について説明した。しかしながら、本発明は、前記実施形態の構成に限定されない。例えば、図1に示した実施形態の構成において、他の任意の工程、装置、機能を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてもよい。
また、本金属担持担体前駆体は、他の任意の成分を含有してもよい。
【実施例0066】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>金属担持体の合成
1.5mLの水と、塩化パラジウム(小島化学製 パラジウム含有率32質量%)、塩化白金(フルヤ金属製 白金含有率46.8質量%)およびアルミナを表1に記載のとおりの量で混合し、ロータリーエバポレーターを用い、ウォーターバスの水温が60℃、真空度が60hPaに設定し水分を蒸留することで乾燥粉末を得た。
その後、乾燥粉末に表1に記載の量の純水を添加し、撹拌および超音波処理により均一に再分散することで、原料となる金属担持体前駆体溶液を得た。
次に、図1に示した製造装置を用いて、金属担持体を合成した。前記で得られた金属担持体前駆体溶液を第1流体供給源1に貯蔵し、第1流体供給源1から前記で得られた金属担持体前駆体溶液を30mL/minの速度で反応部3へ送液した。一方、第2流体供給源2に還元剤を貯蔵し、第2流体供給源2から還元剤であるエタノールを25質量%含むエタノール水溶液を200mL/minの速度で反応部3へ送液し、反応部3で、前記で得られた金属担持体前駆体溶液と還元剤との混合を行い、金属担持担体分散液を得た。その後、冷却部8において混合後の金属担持体分散液を1気圧で20℃の常温常圧に冷却し、回収部7にて回収した。その後、メンブレンフィルターで濾過後、濾物を電気乾燥機で800℃、4時間の条件で乾燥を行うことにより金属担持体1.8gを得た。
【0068】
<比較例1>金属担持体の合成
塩化パラジウム(小島化学製 パラジウム含有率32.3質量%)、塩化白金(フルヤ金属製 白金含有率46.8質量%)、1質量%のアルミナを含む分散液を表1に記載の量となるように混合し、原料となる金属を含む分散液1を得た。
次に、図1に示した製造装置を用いて、金属担持体を合成した。
前記で得られた金属を含む分散液1を第1流体供給源1に貯蔵し、第1流体供給源1から前記で得られた金属を含む分散液1を30mL/minの速度で反応部3へ送液した。一方、第2流体供給源2に還元剤を貯蔵し、第2流体供給源2から還元剤であるエタノールを25質量%含むエタノール水溶液を200mL/minの速度で反応部3へ送液し、反応部3で、前記で得られた金属を含む分散液1と還元剤との混合を行い、金属担持体分散液を得た。その後、冷却部8において混合後の金属担持体分散液を1気圧で20℃の常温常圧に冷却し、回収部7にて回収した。その後、メンブレンフィルターで濾過後、濾物を電気乾燥機で80℃、4時間の条件で乾燥を行うことにより金属担持体1.7gを得た。
【0069】
<比較例2>金属担持体の合成
塩化パラジウム(小島化学製 パラジウム含有率32.3質量%)と塩化白金(フルヤ金属製 白金含有率46.8質量%)の混合水溶液、および、1質量%のアルミナを含む分散液をそれぞれ表1に記載の量となるように金属を含む分散液2を準備した。なお、金属を含む分散液2中の金属濃度は15.9mmol/Lであった。
次に、図1に示した製造装置を用いて、金属担持体を合成した。
前記で得られた金属担持体前駆体溶液を第1流体供給源1に貯蔵し、第1流体供給源1から前記で得られた金属を含む分散液2を30mL/minの速度で反応部3へ流すとともに、アルミナ分散液も30ml/minの速度で反応部3へ流し、還元剤を200mL/minの速度で反応部3へ流すことにより、反応部3で混合を行い、金属担持体分散液を得た。その後、冷却部8において混合後の金属担持体分散液を常温常圧(1気圧20℃)に冷却し、回収部7にて回収した。その後、メンブレンフィルターで濾過後、濾物を電気乾燥機で80℃、4時間の条件で乾燥を行うことにより金属担持体1.7gを得た。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1、比較例1および比較例2で得た触媒のTEM観察および粒径評価を、日本電子製透過型電子顕微鏡(JEM-2010)を用いて少なくとも100個の触媒の観察を行った。また、粒子径は、アメリカ国立衛生研究所開発の画像解析ソフト(Image-J)を用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
上記結果から明らかなように、実施例1に記載の方法で合成した触媒は、比較例1および2の方法で合成した触媒と比較して粒径の微細化や、担持率の向上を示した。
したがって、一種以上の金属の化合物と担体とを液体中で混合し、前記金属の化合物中の金属を担体に固定し、前記担体に固定された金属の量は、前記金属の化合物中の金属の量に対して0.8以上1以下であり、前記金属を固定した担体を含む流体と還元剤を含有する流体とを合流し、前記金属の化合物中の金属を前記担体に担持させた金属担持担体を回収することで、ナノ金属粒子の粗大化がより抑制される。
更に、担体への担持率が向上した事を考慮すると、本製造方法において、金属を担体に予め固定する工程により、担体から脱離する金属の量が抑制され、配管へ付着する金属が少なくなることで装置配管の閉塞が起こりにくい金属担持担体、特に、ナノ粒子の金属が担持された金属担持担体が提供されると考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1:第1流体供給源
2:第2流体供給源
3:反応部
4:供給ルート
5:供給ルート
6:供給ルート
7:回収部
8:冷却部
9:圧力調整機構
10;流量調整手段
11:流量調整手段
100:製造装置

図1