(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140619
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ガス配管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16L9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051841
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古宮山 常夫
(72)【発明者】
【氏名】各務 欣哉
(72)【発明者】
【氏名】松葉 浩臣
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 厚男
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA09
3H111BA15
3H111CA42
3H111CB02
3H111CB14
3H111CB22
3H111DA26
3H111DB11
(57)【要約】
【課題】真空空間で電圧が印加される環境に不活性ガスを導入する用途で使用し得るガス配管を提供する。
【解決手段】
ガス配管は、内面に凹凸部が形成されている筒体と、筒体内に充填されているセラミックス製の多孔質体を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に凹凸部が形成されている筒体と、
前記筒体内に充填されているセラミックス製の多孔質体と、を備えるガス配管。
【請求項2】
前記筒体の配管長さに対し、前記筒体の内面の沿面長さが1.08倍以上である請求項1に記載のガス配管。
【請求項3】
前記凹凸部の凹部間の距離が、5mm超500mm未満である請求項1に記載のガス配管。
【請求項4】
前記凹凸部の凸部間の距離が、1mm超498mm未満である請求項1に記載のガス配管。
【請求項5】
前記筒体内の平均気孔率が、15%以上60%以下である請求項1から4のいずれか一項に記載のガス配管。
【請求項6】
前記多孔質体の平均粒子径が、50mm以上600mm以下である請求項1から4のいずれか一項に記載のガス配管。
【請求項7】
前記筒体の材料が、酸化ケイ素質、酸化アルミニウム質、高耐熱樹脂から選択される少なくとも1つを主成分とする請求項1から4のいずれか一項に記載のガス配管。
【請求項8】
前記多孔質体の材料が、酸化ケイ素質と酸化アルミニウム質の少なくとも一方を主成分とする請求項1から4のいずれか一項に記載のガス配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ガス配管に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、高圧ガス(ブローバイガス)が通過するガス配管が開示されている。特許文献1には、ガス配管の材料としてラバー、合成樹脂、金属が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、一般的に、ガス配管はラバー、合成樹脂、金属等で形成されている。しかしながら、これらの材料は熱に弱く、ガス配管が高温に晒されると、ガス配管が損傷したり、変形することが起こり得る。ガス配管をセラミックス製とすれば、熱による損傷等を抑制することができる。しかしながら、セラミックス製のガス配管であっても、特定条件、例えば、真空空間で電圧が印加される環境にヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスを導入する場合、放電が発生し、ガス配管が溶融してしまうことがある。そのため、真空空間で電圧が印加される環境に不活性ガスを導入する用途で使用し得るガス配管の実現が必要とされている。本明細書は、上述した特定条件下において使用し得るガス配管を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する第1技術は、内面に凹凸部が形成されている筒体と、その筒体内に充填されているセラミックス製の多孔質体を備えるガス配管であってよい。
【0006】
本明細書で開示する第2技術は、第1技術のガス配管であり、上記筒体の配管長さに対し、上記筒体の内面の沿面長さが1.08倍以上であってよい。
【0007】
本明細書で開示する第3技術は、第1又は第2技術のガス配管であり、上記凹凸部の凹部間の距離が、5mm超500mm未満であってよい。
【0008】
本明細書で開示する第4技術は、第1から第3技術のいずれかに記載のガス配管であり、上記凹凸部の凸部間の距離が、1mm超498mm未満であってよい。
【0009】
本明細書で開示する第5技術は、第1から第4技術のいずれかに記載のガス配管であり、上記筒体内の平均気孔率が、15%以上60%以下であってよい。
【0010】
本明細書で開示する第6技術は、第1から第5技術のいずれかに記載のガス配管であり、上記多孔質体の平均粒子径が、50mm以上600mm以下であってよい。
【0011】
本明細書で開示する第7技術は、第1から第6技術のいずれかに記載のガス配管であり、上記筒体の材料が、酸化ケイ素質、酸化アルミニウム質、高耐熱樹脂から選択される少なくとも1つを主成分としていてよい。
【0012】
本明細書で開示する第8技術は、第1から第7技術のいずれかに記載のガス配管であり、上記多孔質体の材料が、酸化ケイ素質と酸化アルミニウム質の少なくとも一方を主成分としていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】第1実施例のガス配管の長手方向断面を示す。
【
図3】第1実施例のガス配管で用いられる筒体の断面図を示す。
【
図4】筒体内面の凹凸形状を説明するための図を示す。
【
図5】第1実施例の変形例を説明するための図を示す。
【
図6】第2実施例のガス配管で用いられる筒体の断面図を示す。
【
図7】第3実施例のガス配管で用いられる筒体の断面図を示す。
【
図8】第4実施例のガス配管で用いられる筒体の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示するガス配管は、真空空間で電圧が印加される環境に不活性ガスを導入する配管として好適に用いられる。ガス配管は、筒体と、筒体内に充填されているセラミックス製の多孔質体を備えている。筒体の内部をセラミックス粒子が充填しているので、このガス配管は、マクロ的にみると中実構造である。筒体の内面には、凹凸部が形成されている。そのため、筒体内の沿面長さは、筒体の配管長さより長い。なお、「配管長さ」とは、ガス配管の長手方向(ガスが流通する方向)における筒体の長さを意味する。また、「沿面長さ」とは、ガス配管の長手方向における筒体表面の長さを意味する。本明細書で開示するガス配管は、内表面(ガスと接触する面)に凹凸が形成されているので、配管長さに対し、筒体内面の沿面長さが長い。また、本明細書で開示するガス配管は、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスを導入する配管として好適に使用し得るが、その他に、水素ガス、メタンガス、大気等のガスを導入する配管として使用することもできる。
【0015】
筒体内に多孔質体を充填したガス配管では、不活性ガスが導入される環境における印加電圧が高くなると(例えば30kV以上になると)、筒体内面と多孔質体の隙間で電子が加速され、放電が発生しやすくなる。放電は、筒体の内面に沿って発生しやすい。しかしながら、本明細書で開示するガス配管は、筒体の内面に凹凸が形成されており、内面の沿面長さが長く確保されている。そのため、本明細書で開示するガス配管は、筒内の内面に沿って放電が発生しにくい。放電の発生を抑制することにより、筒体(ガス配管)が溶融することが抑制され、筒体の耐久性(寿命)を向上させることができる。
【0016】
また、本明細書で開示するガス配管は、筒体の内面に凹凸部が形成されているので、筒体内において多孔質体の移動が規制され、多孔質体が筒体から外れることを抑制することもできる。なお、凹凸部の凹部(又は凸部)は、筒体の周方向(長手方向に直交する方向)を一巡して形成されていてよい。あるいは、凹凸部の凹部(又は凸部)は、筒体の長手方向に対して螺旋状に形成されていてもよい。
【0017】
上記ガス配管は、多孔質体の粒径等を調整することにより、筒体内の気孔率を調整することができる。筒体内の気孔率を調整することにより、ガス配管の強度、ガス配管内(筒体内)の流路面積を調整することができる。なお、筒体内の気孔率は、筒体の気孔率より大きい。具体的には、筒体内の平均気孔率は15%以上60%以下に調整されており、筒体の気孔率は5%以下に調整されている。筒体内の平均気孔率が15%以上であれば、筒体内に確実にガス流路を確保することができる。また、筒体内の平均気孔率が60%以下であれば、ガス配管の強度が十分に確保され、例えば、強度が10MPa以上80MPaのガス配管を実現することができる。本明細書で開示するガス配管は、強度が10MPa以上80MPaに調整されている。筒体内の平均気孔率は、目的に応じた圧力損失に基づいて調整することができる。なお、筒体自体の気孔率を5%以下に調整することにより、筒体内のガスが筒体を通過して外部(ガス配管外)に漏れることを防止することができる。
【0018】
多孔質体の平均粒子径は、50μm以上600μm以下であってよい。多孔質体の平均粒子径が50μm以上であれば、粒子間に隙間が確保され、ガス流路を確実に確保することができる。また、多孔質体の平均粒子径が600μm以下であれば、多孔質体同士の接触面積、及び、多孔質体と筒体内面の接触面積が増大し、両者を安定して結合させることができる。なお、多孔質体の粒子間の平均距離(筒体内の平均気孔径)は、10μm以上200μm以下であってよい。
【0019】
筒体の材料は、酸化ケイ素質、酸化アルミニウム質、高耐熱樹脂(例えば、PTFE等のフッ素樹脂)、又はこれらの混合物を主成分としてよい。これらの材料は耐熱性が高く、ヘリウムガスが導入される環境の温度が高温であってもガス配管の損傷を抑制することができる。なお、筒体の内面に、アルミナ、ムライト等のセラミックスコーティングが施されていてもよい。また、多孔質体の材料は、酸化ケイ素質、酸化アルミニウム質、又はこれらの混合物を主成分としてよい。これらの材料は耐熱性が高く、また、高強度であり、ガス配管の強度を向上させることに寄与する。なお、「主成分」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことを意味する。
【0020】
なお、筒体及び多孔質体の材料がセラミックスの場合、両者は一体化していてよい。具体的には、筒体内面と多孔質体が結合していてよい。例えば、セラミックス材料の筒体の内部にセラミックス材料の多孔質体(セラミックス粒子)を充填した状態で焼成することにより、筒体内にセラミックス粒子の多孔質体を形成するとともに、筒体内面と多孔質体を焼結させ、筒体と多孔質体を一体化させてよい。筒体と多孔質体を一体化させることにより、ガス配管内を移動するガスの圧力によって多孔質体が破損することを抑制できる。
【0021】
筒体内面の沿面長さは、筒体の配管長さに対し、1.08倍以上であってよい。「沿面長さ/配管長さ」が1.08以上であれば、上述した利点(放電発生の抑制、多孔質体の外れ抑制)を確実に得ることができる。なお、筒体内面の沿面長さは、筒体の配管長さに対し、1.1倍以上であってよく、2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、25倍以上であってよく、50倍以上であってもよい。また、筒体内面の沿面長さは、筒体の配管長さに対し、50倍以下であってよい。「沿面長さ/配管長さ」が50を超えると、筒体の製造が困難となり、ガス配管の製造歩留まりが低下する。「沿面長さ/配管長さ」が50以下であれば、ガス配管の製造歩留まり低下を抑制することができる。なお、筒体内面の沿面長さは、筒体の配管長さに対し、25倍以下であってよく、10倍以下であってよく、5倍以下であってよく、3倍以下であってもよい。
【0022】
筒体内面に形成されている凹凸部において、凹部間の距離は、5mm超500mm未満であってよい。凹部間の距離が5mm超であれば内部の多孔質体が外れることを抑制することができる。また、凹部間の距離が500mm未満であれば、ガス配管の製造歩留まりの低下を抑制することができる。筒体内面に形成されている凹凸部において、凸部間の距離は、1mm超498mm未満であってよい。凸部間の距離が1mm超であれば、内部の多孔質体が外れることを抑制することができる。また、凸部間の距離が498mm未満であれば、ガス配管の製造歩留まりの低下を抑制することができる。なお、筒体の配管長さに対する筒体内面の沿面長さ(沿面長さ比)が10倍以下であれば、さらにガス配管の製造歩留まりの低下を抑制する(製造歩留まり71%以上を確保して製造する)ことができる。
【0023】
凹凸部の形状(凹部の形状、又は、凸部の形状)は、矩形、三角形、円弧、又は、これらの形状の組み合わせ等、特に限定されない。但し、製造歩留まりの低下を抑制するという観点より、凹凸部の形状は矩形であることが好ましい。詳細は省略するが、凹凸部の形状が矩形のガス配管は、凹凸部の形状が矩形以外のガス配管と比較して、最も高い製造歩留まりが得られることが確認されている。
【実施例0024】
(第1実施例)
図1及び
図2を参照し、ガス配管10について説明する。
図1はガス配管10の径方向断面を示し、
図2はガス配管10の長手方向断面を示している。
図1、2に示すように、筒体14の内側に、複数の多孔質体12が充填されている。筒体14の材料はアルミナであり、外径は30mmであり、気孔率は1%である。筒体14の内面に、凸部16及び凹部18からなる凹凸が設けられている。凸部16及び凹部18は、筒体14の長手方向20に複数設けられている。凸部16と凹部18の間には段差17が設けられており、
図2に示す断面では凸部16及び凹部18の形状は矩形である。なお、筒体14の外面には凹凸は設けられていない。
【0025】
凸部16,16間の距離D1は15mmであり、凹部18,18間の距離D2は20mmである。すなわち、筒体14は、内径15mmであり、長手方向20において間隔をあけて、2.5mm深さの複数の凹部18が設けられている。あるいは、筒体14は、内径20mmであり、長手方向20において間隔をあけて、2.5mm高さの複数の凸部16が設けられていると捉えることもできる。筒体14は、内面に凹凸が設けられており、外面に凹凸が設けられていないので、筒体14の配管長さL1に対し、筒体14の内面の沿面長さが大きい。なお、筒体14の内面の沿面長さは、長手方向20における凸部16の表面16sの長さ、段差17の表面17sの長さ、凹部18の表面18sの長さの合計長さである。筒体14では、配管長さL1に対する筒体14の内面の沿面長さが2倍に調整されている。ガス配管10は、筒体14の配管長さL1に対して筒体14の内面の沿面長さが大きいので、不活性ガスを導入する環境における印加電圧が高くなっても、筒体14内において放電の発生を抑制することができる。
【0026】
多孔質体12は、アルミナ粒子とガラスを焼成することにより形成されている。多孔質体12を構成するアルミナ粒子の平均粒子径は257μmである。多孔質体12,12間には空隙が設けられており、筒体14内の平均気孔率は35%である。多孔質体12は、凹部18内にも充填されている。ガス配管10は、未焼成の筒体14内に多孔質体12の原料(アルミナ粒子及びガラス)を充填した後、大気雰囲気にて1100~1300℃の焼成を行うことにより形成されている。焼成により、多孔質体12,12同士が焼結するとともに、筒体14と多孔質体12も焼結する。焼結した多孔質体12が凹部18内に存在することにより、多孔質体12が筒体14から外れることを抑制することができる。
【0027】
図3及び
図4を参照し、筒体14内の凹凸形状について説明する。
図3は、筒体14の断面図であり、
図2に示すガス配管10から多孔質体12を取り除いたものに相当する。
図4は、凸部16(凹部18)が形成されている方向を示している。
図3及び
図4に示すように、凸部16(凹部18)は、筒体14の長手方向において間隔をあけて、筒体の周方向に一巡して形成されている。そのため、筒体14の長手方向において、隣り合うリング状の凸部16,16の間に、リング状の凹部18が存在する。同様に、筒体14の長手方向において、隣り合うリング状の凹部18,18の間に、リング状の凸部16が存在する。
【0028】
図5は、筒体14aにおいて凸部16(凹部18)が形成されている方向を示している。筒体14aは、筒体14の変形例である。筒体14aでは、凸部16(凹部18)が、筒体14aの長手方向に沿って螺旋状に形成されている。このような形態であっても、筒体14aの断面(筒体14aの
図3に示す断面)を観察すると、筒体14aの長手方向において、隣り合う凸部16,16の間に凹部18が存在し、隣り合う凹部18,18の間に凸部16が存在する。筒体14に代えて筒体14aを用いてガス配管10を作製した場合も、筒体14aの配管長さに対し、筒体14aの内面の沿面長さが大きくなる。また、焼結した多孔質体12が凹部18内に存在することにより、多孔質体12が筒体14aから外れることを抑制することができる。そのため、筒体14に代えて筒体14aを用いてガス配管10を作製することもできる。
【0029】
以下、
図6から
図8を参照し、第2~第4実施例(筒体114,214及び314)について説明する。筒体114,214及び314は、筒体14の変形例であり、筒体14と実質的に同一の構造については、筒体14に付した参照番号と同一又は下二桁の数字が同一の参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。なお、以下に説明する筒体114,214及び314の何れも、筒体114,214,314の配管長さに対し、筒体114,214,314の内面の沿面長さが大きくなる。筒体114,214及び314は、何れも筒体14に代えてガス配管10を作製することができる。
【0030】
(第2実施例)
図6に示すように、筒体114では、凸部116が円弧状である。筒体114の場合、筒体114の内面の沿面長さは、長手方向20における凸部116の表面116sの長さ、凹部18の表面18sの長さの合計長さである。なお、筒体114においても、凸部116(凹部18)が、筒体114の長手方向に沿って螺旋状に形成されていてもよい。
【0031】
(第3実施例)
図7に示すように、筒体214では、凸部216が三角形状である。筒体214の場合、筒体214の内面の沿面長さは、長手方向20における凸部216の表面(三角形の斜面)216sの長さ、凹部18の表面18sの長さの合計長さである。なお、筒体214においても、凸部216(凹部18)が、筒体214の長手方向に沿って螺旋状に形成されていてもよい。
【0032】
(第4実施例)
図8に示すように、筒体314では、凸部316は、薄肉部315と厚肉部317を備えている。長手方向20において、厚肉部317の厚みは、薄肉部315の厚みより厚い。厚肉部317は、薄肉部315よりも凸部316の先端側に設けられている。厚肉部317は、薄肉部315に対し、長手方向20の一方向に突出している。具体的には、厚肉部は、薄肉部315に対し、ガス配管10の上流側に向けて突出している。図示は省略するが、筒体314を用いたガス配管10を作製すると、長手方向20において厚肉部317が多孔質体12に食い込み、多孔質体12が筒体314から外れることをさらに抑制することができる(
図2を比較参照)。筒体314の場合、筒体314の内面の沿面長さは、長手方向20における薄肉部315の表面315sの長さ、厚肉部313の表面317sの長さ、凹部18の表面18sの長さの合計長さである。なお、筒体314においても、凸部316(凹部18)が、筒体314の長手方向に沿って螺旋状に形成されていてもよい。
【0033】
(実験例)
沿面長さ比を変化させた筒体14(凸部が矩形状)を用いてガス配管10を作製し、放電試験を行った。放電試験は、ガス配管10内にヘリウムガスを30cm
3/分で流通させた状態で、ガス配管10の端部(ガス排出側の端部)に0~25kVの電圧を印加した。放電試験において25kVで放電が発生しなかった場合「A」評価とし、15~25kVで放電が発生した場合「B」評価とし、5~14kVで放電が発生した場合「C」評価とし、5kV未満で放電が発生した場合「D」評価とした。放電試験においては、「A」~「C」評価が合格レベルである。結果を
図9に示す。
【0034】
図9に示すように、沿面長さ比が大きくなる程(筒体14の配管長さに対して筒体14内面の沿面長さが長くなる程)、放電が起こりにくくなることが確認された。具体的には、沿面長さ比が1.05以上(試料13~試料22)であれば、合格レベルであることが確認された。また、沿面長さ比が1.08以上であれば、特に良好な耐放電性が得られることが確認された。
【0035】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。