(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140624
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】アウターミラーの仮保持構造
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B60R1/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051848
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000147660
【氏名又は名称】株式会社ペンストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴行
(72)【発明者】
【氏名】石川 樹
【テーマコード(参考)】
3D053
【Fターム(参考)】
3D053FF30
3D053GG06
3D053HH09
3D053JJ46
(57)【要約】
【課題】アウターミラーを車体側部材に固定する前に脱落しないように仮保持可能にし、しかも、アウターミラーを車体側部材に固定した後におけるシール性を十分に確保できるようにする。
【解決手段】シール材5には、車幅方向内方へ向けて突出し、アウタパネル101に形成されている開口部に挿入されるとともに上縁部102aに係止する仮保持部57が一体成形されている。仮保持部57は、車幅方向外側に開放された中空状に形成されている。ベース本体4は、シール材5よりも硬質な材料で構成されるとともに車幅方向内側へ突出し、仮保持部57に車幅方向外側から差し込まれる芯部47を有している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に配置される後方視認用鏡面を有するミラーハウジングを支持するベース本体を車体側部材に仮保持するためのアウターミラーの仮保持構造において、
前記ベース本体と前記車体側部材との間に設けられ、前記車体側部材に形成された開口部の周縁部をシールする弾性材からなるシール材を備え、
前記シール材には、車幅方向内方へ向けて突出し、前記車体側部材に形成されている開口部に挿入されるとともに当該開口部の周縁部に係止する仮保持部が一体成形され、
前記仮保持部は、車幅方向外側に開放された中空状に形成され、
前記ベース本体は、前記シール材よりも硬質な材料で構成されるとともに車幅方向内側へ突出し、前記仮保持部に車幅方向外側から差し込まれる芯部を有していることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記仮保持部の上面における突出方向基端から先端側へ離れた部分には、上方へ突出するとともに前記開口部の上縁部よりも車幅方向内側に位置付けられ、前記開口部の上縁部に対して車幅方向内側から係止する係止部が形成されていることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項3】
請求項2に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記係止部の上面は、前記仮保持部の突出方向先端に近づけば近づくほど下に位置するように傾斜していることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項4】
請求項1に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記仮保持部における突出方向基端から先端側へ離れた部分には、前記仮保持部を突出方向と交差する方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記芯部には、前記貫通孔に挿入される突出部が形成されていることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項5】
請求項4に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記仮保持部の外面における前記貫通孔よりも突出方向基端側には、突出方向と交差する方向に延びる係止面が形成され、
前記突出部は、前記係止面に車幅方向内側から当接することを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項6】
請求項4に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記仮保持部の内面における前記貫通孔よりも基端側へ離れた部分には、前記仮保持部の内方へ向けて突出し、前記芯部の外面に当接するシール部が環状に形成されていることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項7】
請求項2に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記芯部は、前記開口部の上縁部よりも車幅方向内側へ突出していることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【請求項8】
請求項2に記載のアウターミラーの仮保持構造において、
前記開口部の上縁部は、車両の前後方向に直線状に延びるように形成され、
前記仮保持部の上面は、前記開口部の上縁部に沿うように形成され、
前記芯部は、車両の前後方向に延びる板状をなしていることを特徴とするアウターミラーの仮保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の側部に設けられるアウターミラーを車体側部材に固定する前に、ミラーベースを車体側部材に仮保持しておくためのアウターミラーの仮保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の側部にはアウターミラーが設けられている。アウターミラーは、ミラーが取り付けられたミラーハウジングをドアに支持するためのミラーベースを備えている。ミラーベースは、高剛性な樹脂材や金属材で構成されているベース本体と、ベース本体とドアの外面との間に介在する弾性材からなるシール材とで構成されている。ミラーベースをドアに取り付ける際には、ベース本体に形成されている位置決め片をドアパネルに形成された位置決め孔に挿入して仮保持し、その後、ベース本体をドアに締結固定するようにしている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ミラーベースをドアに取り付ける際には、ベース本体にシール材を予め組み付けておき、シール材をベース本体に一体化した状態で、ミラーベースをドアに仮保持させる。このとき、特許文献1のようにベース本体に形成されている位置決め片をドアに形成された位置決め孔に挿入する構造を採用すれば仮保持構造が成立するが、この場合、位置決め孔がドアの外面に開口しているので、外部の水が位置決め孔からドアの内部に浸入しないように対策する必要がある。
【0005】
その対策の一つとして、シール材の一部を利用して位置決め孔を閉塞することが考えられる。しかし、位置決め孔には上述したように位置決め片を挿入する必要があることから、シール材で位置決め孔を閉塞してしまうと、仮保持構造が成立しなくなる。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、アウターミラーを車体側部材に固定する前に脱落しないように仮保持可能にし、しかも、アウターミラーを車体側部材に固定した後におけるシール性を十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本態様では、車両の側方に配置される後方視認用鏡面を有するミラーハウジングを支持するベース本体を車体側部材に仮保持するためのアウターミラーの仮保持構造を前提とすることができる。アウターミラーの仮保持構造は、前記ベース本体と前記車体側部材との間に設けられ、前記車体側部材に形成された開口部の周縁部をシールする弾性材からなるシール材を備えている。前記シール材には、車幅方向内方へ向けて突出し、前記車体側部材に形成されている開口部に挿入されるとともに当該開口部の周縁部に係止する仮保持部が一体成形されている。前記仮保持部は、車幅方向外側に開放された中空状に形成されている。前記ベース本体は、前記シール材よりも硬質な材料で構成されるとともに車幅方向内側へ突出し、前記仮保持部に車幅方向外側から差し込まれる芯部を有している。
【0008】
この構成によれば、ベース本体にシール材を組み付けると、ベース本体の芯部がシール材の仮保持部に差し込まれた状態でシール材がベース本体と一体化する。シール材をベース本体と一体化した後、シール材の仮保持部を車体側部材の開口部に挿入すると、仮保持部が開口部の周縁部に係止する。このとき、シール材が弾性材からなるものなので、仮保持部がアウターミラーの重量によって変形し易く、開口部の周縁部から離脱してしまうおそれがあるが、本態様では、シール材よりも硬質な材料からなる芯部が仮保持部に差し込まれていることから、仮保持部の変形量が芯部によって小さくなる。よって、仮保持部が開口部の周縁部から離脱しなくなり、仮保持状態が維持される。また、ベース本体を車体側部材に固定すると、シール材が開口部の周縁部をシールするので、外部の水が開口部から車体側部材の内部に浸入しないようにすることができる。
【0009】
前記仮保持部における突出方向基端から先端側へ離れた部分には、上方へ突出するとともに前記開口部の上縁部よりも車幅方向内側に位置付けられ、前記開口部の上縁部に対して車幅方向内側から係止する係止部が形成されていてもよい。すなわち、上方へ突出する係止部が開口部の上縁部に引っ掛かるように係止することで、仮保持部が開口部の周縁部から離脱し難くなる。
【0010】
前記係止部の上面は、前記仮保持部の突出方向先端に近づけば近づくほど下に位置するように傾斜していてもよい。これにより、仮保持部を開口部に挿入する作業を行うときに、係止部が開口部の上縁部に引っ掛かりにくくなり、仮保持部を開口部に挿入する作業を容易に行うことができる。
【0011】
前記仮保持部における突出方向基端から先端側へ離れた部分には、前記仮保持部を突出方向と交差する方向に貫通する貫通孔が形成されていてもよい。この場合、前記芯部には、前記貫通孔に挿入される突出部を形成することができる。また、前記仮保持部の外面における前記貫通孔よりも突出方向基端側には、突出方向と交差する方向に延びる係止面を形成し、前記突出部は、前記係止面に車幅方向内側から当接させることができる。これにより、芯部が仮保持部から抜け難くなる。
【0012】
前記仮保持部の内面における前記貫通孔よりも基端側へ離れた部分には、前記仮保持部の内方へ向けて突出し、前記芯部の外面に当接するシール部が環状に形成されていてもよい。このシール部が芯部の外面に当接することで、仮保持部の内面と芯部の外面との間をシールすることができる。よって、水が仮に仮保持部の内部に浸入したとしても、貫通孔から車幅方向内側に漏れ難くすることができる。
【0013】
前記芯部は、前記開口部の上縁部よりも車幅方向内側へ突出していてもよい。また、前記開口部の上縁部は、車両の前後方向に直線状に延びるように形成されていてもよく、この場合、前記仮保持部の上面は、前記開口部の上縁部に沿うように形成され、前記芯部は、車両の前後方向に延びる板状に形成することができる。これにより、仮保持部が開口部の上縁部に対して安定して係止するようになる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、車体側部材に形成された開口部の周縁部をシールするシール材に中空状の仮保持部を一体成形し、ベース本体の芯部を仮保持部に差し込むようにしたので、アウターミラーを車体側部材に対して脱落しないように仮保持することができ、しかも、アウターミラーを車体側部材に固定した後におけるシール性を十分に確保して水の浸入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るアウターミラーがドアに固定された状態を示す図である。
【
図3】アウターミラーをドアから取り外した状態を示す
図1相当図である。
【
図6】芯部が差し込まれたシール材の仮保持部近傍の斜視図である。
【
図7】
図2におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】
図2におけるVIII-VIII線断面図であり、仮保持部をアウタパネルの開口部に深く挿入した場合を示している。
【
図9】アウターミラーが車幅方向外側に傾いた状態を示す
図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るアウターミラー1の仮保持構造が適用された車両のドア100の一部を示すものである。
図1は、右側のドア100のアウタパネル101を縦方向に切断して示しており、この切断部位よりも前側にアウターミラー1が固定されている。この実施形態の説明では、車両前側を単に前といい、車両後側を単に後というものとする。また、右とは車両右側であり、左とは車両左側である。車幅方向は車両の左右方向である。
【0018】
この実施形態で説明するアウターミラー1は右側に設けられるものであるが、左側にも同様に構成された左右対称構造のアウターミラー(図示せず)が設けられている。アウターミラー1は、車両の右側方に配置される後方視認用鏡面2を有するミラーハウジング3と、ミラーハウジング3を支持するベース本体4とを備えている。ミラーハウジング3には、例えば鏡面2の角度調整を行うための電動の角度調整機構等が設けられている。アウターミラー1は、例えばサイドミラー、ドアミラーとも呼ばれる。
【0019】
ベース本体4の基端部(左端部)40は、ドア100のアウタパネル101に固定される部分である。ドア100は車体側部材の例であり、ベース本体4はアウタパネル101に直接固定されていてもよいし、ドア100の内部に設けられている補強部材やミラー取り付け用の部材等に固定されていてもよい。アウタパネル101、補強部材やミラー取り付け用の部材は、車体側部材の例である。
【0020】
図2は、
図1のA矢視図であり、アウタパネル101におけるアウターミラー1が固定されている部分近傍を車幅方向内側から見た図である。
図3は、アウターミラー1を取り外した状態を示す
図2相当図であり、アウタパネル101のみを示している。アウタパネル101の上部かつ前部近傍には、当該アウタパネル101を厚み方向(左右方向)に貫通する開口部102が形成されている。
【0021】
アウタパネル101の開口部102は、前後方向に長い形状とされている。開口部102の周縁部は、上縁部102a、下縁部102b、前縁部102c及び後縁部102dで構成されている。上縁部102a及び下縁部102bは前後方向に直線状に延びるように形成されている。前縁部102c及び後縁部102dは上下方向に直線状に延びるように形成されている。尚、開口部102の形状は図示した形状に限られるものではなく、例えば上下方向に長い形状であってもよいし、上下方向の寸法と前後方向の寸法とが同じ形状であってもよい。
【0022】
ベース本体4は、アウタパネル101に固定される基端部40から右へ向かって斜め上に延びている。ベース本体4を構成している材料は、例えば金属や硬質樹脂のようにシール材5を構成する材料よりも硬質な材料とされており、これにより、ベース本体4は高剛性な部材となる。ベース本体4の先端部(右端部)41には、ミラーハウジング3の左側下部が取り付けられている。ミラーハウジング3は、ベース本体4に対して上下方向に延びる軸周りに回動可能に取り付けられており、図示しない電動の格納機構によって
図1に示す使用位置と、図示しないが後方に回動した格納位置とに切り替えられるようになっている。
【0023】
図4に示すように、ベース本体4の基端部40は、前後方向に長い形状を有するとともに、アウタパネル101に沿うように上下方向に延びている。ベース本体4の基端部40における前後方向中間部には、下方に開放する切欠部42が形成されている。ベース本体4の基端部40における切欠部42よりも前側部分には、前側ボス部43が車室内側へ向けて突出するように設けられている。また、ベース本体4の基端部40における切欠部42よりも後側部分には、後側ボス部44、45が互いに上下方向に間隔をあけた状態で車室内側へ向けて突出するように設けられている。前側ボス部43、後側ボス部44、45には、ベース本体4をアウタパネル101に締結するためのボルトやネジ等の締結部材が螺合するようになっている。
【0024】
ベース本体4とアウタパネル101との間には、アウタパネル101に形成された開口部102の周縁部をシールする弾性材からなるシール材5(
図5に示す)が設けられている。シール材5は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等で構成されており、全体が一体成形されている。すなわち、シール材5は、ベース本体4の外周側を構成する外周部51と、外周部51よりも内側を構成する内周部52とを有している。外周部51の外形状は、ベース本体4の基端部40の外形状と略同じであり、この外周部51の周縁部が、ベース本体4の基端部40の周縁部とアウタパネル101の外面との間で厚み方向に挟持されて弾性変形する。
【0025】
シール材5の内周部52の前側部分には、ベース本体4の前側ボス部43の外周面を覆う前側筒状部53が一体成形されている。一方、内周部52の後側部分には、後側ボス部44、45の外周面をそれぞれ覆う後側筒状部54、55が一体成形されている。前側筒状部53及び後側筒状部54、55の車幅方向内側は開放されている。前側ボス部43の開口は、前側筒状部53の車幅方向内側の開放部分から車幅方向内側へ臨むようになっており、また、後側ボス部44、45の開口は、後側筒状部54、55の車幅方向内側の開放部分から車幅方向内側へ臨むようになっている。内周部52の前後方向中間部には、ハーネス(図示せず)を通すための通し孔56が形成されている。ハーネスは、上記角度調整機構や格納機構に電力を供給するための部材である。
【0026】
シール材5bの内周部52には、ベース本体4をアウタパネル101に対して仮保持するための仮保持部57が一体成形されている。仮保持部57は、前側筒状部53と後側筒状部54との間においてシール材5bの上下方向中央部よりも上に位置している。
図7~
図9にも示すように、仮保持部57は、内周部52から車幅方向内方へ向けて突出し、アウタパネル101に形成されている開口部102に挿入されるとともに当該開口部102の上縁部102aに係止する部分である。仮保持部57は、車幅方向外側に開放された中空状、即ち車幅方向外側に開放された筒状に形成されている。また、仮保持部57の上面は、アウタパネル101に形成されている開口部102の上縁部102aに沿うように形成されており、左右方向に延びている。尚、図示しないが、仮保持部57は開口部102の下縁部102b、前縁部102c及び後縁部102dのうち、任意の縁部に係止するように設けることもできる。
【0027】
仮保持状態における仮保持部57の突出方向先端部は、アウタパネル101の開口部102の上縁部102aよりも車室内側に達しており、ドア100内へ向けて突出している。仮保持部57の上面には、開口部102の上縁部102aに対して車幅方向内側から係止する係止部58が形成されている。係止部58は、仮保持部57の上面における突出方向基端から先端側へ離れた部分から上方へ突出するように、仮保持部57に一体成形されている。
【0028】
係止部58の上面は、仮保持部57の突出方向先端(車幅方向内端)に近づけば近づくほど下に位置するように傾斜した傾斜面58aで構成されている。傾斜面58aは、前後方向に延びている。傾斜面58aを形成することにより、仮保持部57における係止部58が形成された部分の上下方向の寸法が、突出方向先端に近づけば近づくほど短くなる。
【0029】
図6及び
図7に示すように、仮保持部57における突出方向基端から先端側へ離れた部分には、仮保持部57を突出方向と交差する方向に貫通する貫通孔59a、59bが形成されている。
図7に示すように、貫通孔59a、59bは、仮保持部57の前側部分及び後側部分にそれぞれ形成されている。前側の貫通孔59aが仮保持部57を貫通するように形成されているので、仮保持部57の先端側の前側部分が前方向に開放されることになる。また、後側の貫通孔59bが仮保持部57を貫通するように形成されているので、仮保持部57の先端側の後側部分が後方向に開放されることになる。
【0030】
仮保持部57の外面における前側の貫通孔59aよりも突出方向基端側には、突出方向と交差する方向に延びる前側係止面57aが形成されている。具体的には、前側係止面57aは、上下方向及び前後方向に延びる面で構成されており、前側の貫通孔59aの形成によってできた仮保持部57の外面の開口の縁部から前方へ突出するように位置付けられている。
【0031】
仮保持部57の外面における後側の貫通孔59bよりも突出方向基端側には、突出方向と交差する方向に延びる後側係止面57bが形成されている。具体的には、後側係止面57bは、上下方向及び前後方向に延びる面で構成されており、後側の貫通孔59bの形成によってできた仮保持部57の外面の開口の縁部から後方へ突出するように位置付けられている。
【0032】
図7~
図9に示すように、ベース本体4の基端部40は、開口部102の上縁部102aよりも車幅方向内側へ突出し、シール材5の仮保持部57に車幅方向外側から差し込まれる芯部47を有している。芯部47は、ベース本体4に一体成形されており、従って、芯部47を構成する材料は、ベース本体4を構成する材料と同様に、シール材5に比べて硬質な材料となっている。尚、芯部47は、ベース本体4に一体成形された部分であってもよいし、ベース本体4とは別体の部材で構成されていてもよい。芯部47がベース本体4と別体の場合、芯部47をベース本体4に固定することで、芯部47をベース本体4と一体化できる。
【0033】
芯部47は、開口部102の上縁部102aが延びる方向と略平行であり、前後方向に延びる板状をなしている。芯部47の突出方向先端部は、仮保持部57内において当該仮保持部57の先端部から若干、基端側寄りに位置付けられている。これにより、芯部47の突出方向先端部と、仮保持部57の内面との間に隙間Sが形成される。
【0034】
図8に示すように、芯部47の上面には、段部47aが形成されている。この段部47aの形成により、芯部47の上面の基端側が先端側に比べて上に位置することになる。段部47aには、シール材5の外面(車幅方向外側に位置する面)が車幅方向内側から当接し、これにより、芯部47と仮保持部57との車幅方向の相対的な位置関係が決定される。
【0035】
芯部47の厚み(上下方向の寸法)は段部47aよりも基端側が最も厚くなっている。芯部47における段部47aよりも先端側の領域は、中間部47bと、中間部47bよりも薄く形成された先端側部47cとで構成されている。芯部47の下面は、基端部から先端部まで延びる平面で構成される一方、芯部47の上面は、上記段部47aが形成されるとともに、中間部47bと先端側部47cとの厚みの差を持たせるために平面とはなっていない。具体的には、中間部47bと先端側部47cとの境界部分に、中間部47bから先端側部47cに向かって下降傾斜する接続面47dが形成されている。
【0036】
仮保持部57には、芯部47の中間部47b及び先端側部47cを差し込むことが可能になっている。芯部47の中間部47bを仮保持部57に差し込むと、中間部47bの厚みが厚いので、中間部47bが仮保持部57に強めに接触することになり、芯部47の抜け抑制効果が発揮される。
【0037】
芯部47の前端面及び後端面には、それぞれ前側の貫通孔59a及び後側の貫通孔59bに挿入される前側突出部47d及び後側突出部47eが形成されている。すなわち、前側突出部47dは、芯部47の前端面における前側の貫通孔59aに対応する部分から前方へ突出しており、芯部47が仮保持部57に対して正規の位置まで差し込まれると、前側の貫通孔59aから仮保持部57の外部へ向けて突出するように配置される。この状態で、前側突出部47dは、前側係止面57aに対して車幅方向内側から当接して係止する。また、後側突出部47eは、芯部47の後端面における後側の貫通孔59bに対応する部分から後方へ突出しており、芯部47が仮保持部57に対して正規の位置まで差し込まれると、後側の貫通孔59bから仮保持部57の外部へ向けて突出するように配置される。この状態で、後側突出部47eは、後側係止面57bに対して車幅方向内側から当接して係止する。前側突出部47d及び後側突出部47eが前側係止面57a及び後側係止面57bに係止すると、芯部47の仮保持部57からの抜けが抑制される。
【0038】
仮保持部57の内面における貫通孔59a、59bよりも基端側へ離れた部分には、シール部57cが形成されている。シール部57cは、仮保持部57の内方へ向けて突出するとともに仮保持部57の周方向に連続する環状をなしており、芯部47の外面に当接して弾性変形可能になっている。接続面47dにシール部57cが当接するように、両者の相対的な位置関係が設定されている。シール部57cを設けていることにより、仮保持部57の内面と芯部47の外面との間が全周に亘ってシールされることになる。
【0039】
(アウターミラーの取り付け要領)
次に、上記アウターミラー1をドア100のアウタパネル101に取り付ける要領について説明する。まず、ベース本体4にシール材5を保持させる。このとき、シール材5の仮保持部57にベース本体4の芯部47を差し込む。すると、芯部47の前側突出部47d及び後側突出部47eがそれぞれ仮保持部57の前側の貫通孔59a及び後側の貫通孔59bに挿入され、前側係止面57a及び後側係止面57bに係止する。仮保持部57に芯部47を差し込む際、貫通孔59a、59bが空気抜き孔となり、仮保持部57内の空気が貫通孔59a、59bから抜けるので差し込み作業に要する力が小さくて済む。
【0040】
また、シール材5の前側筒状部53にベース本体4の前側ボス部43を挿入し、シール材5の後側筒状部54、55にベース本体4の後側ボス部44、45を挿入する。このとき、ベース本体4には、ミラーハウジング3が取り付けられている。
【0041】
その後、シール材5の仮保持部57をアウタパネル101に形成されている開口部102に挿入する。
図8は、シール材5の仮保持部57を開口部102に深く挿入した状態を示している。この段階では、ベース本体4がアウタパネル101に固定される前なので、作業者がベース本体4から手を離すと、ベース本体4が車幅方向外側へ傾くように変位し、これにより、
図9に示すように仮保持部57の係止部58が、開口部102の上縁部102aに対して車幅方向内側から係止する。このとき、シール材5が弾性材からなるものなので、仮保持部57がアウターミラー1の重量によって変形し易く、開口部102の上縁部102aから離脱してしまうおそれがあるが、本実施形態では、シール材5よりも硬質な材料からなる芯部47が仮保持部57に差し込まれていることから、仮保持部57の変形量が芯部47によって小さくなる。よって、仮保持部57が開口部102の上縁部102aから離脱しなくなり、仮保持状態が維持される。このように、本発明に係るアウターミラー1の仮保持構造は、仮保持部57を有するシール材5と、ベース本体4の芯部47とを備えていることで、アウターミラー1の取り付け時に脱落しないように仮保持できる。
【0042】
その後、図示しない締結部材を前側ボス部43及び後側ボス部44、45に螺合させてベース本体4をアウタパネル102に固定すると、シール材5が開口部102の周縁部をシールするので、外部の水が開口部102からドア100の内部に浸入するのを抑制できる。
【0043】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本開示に係るアウターミラーの仮保持構造は、自動車の側部に設けられるアウターミラーをドアに仮保持する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 アウターミラー
3 ミラーハウジング
4 ベース本体
5 シール材
47 芯部
47d 突出部
57 仮保持部
57a 係止面
57c シール部
58 係止部
58a 傾斜面
59a 貫通孔
101 アウタパネル(車体側部材)
102 開口部
102a 上縁部