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特開2024-140626鉄筋コンクリート梁における錆による曲げ部材の有限要素分析法
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  • 特開-鉄筋コンクリート梁における錆による曲げ部材の有限要素分析法 図1
  • 特開-鉄筋コンクリート梁における錆による曲げ部材の有限要素分析法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140626
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリート梁における錆による曲げ部材の有限要素分析法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20241003BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20241003BHJP
   E04C 3/20 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 3/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01L1/00 M
E01D1/00 C
E04C3/20
G01N3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051851
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】520204995
【氏名又は名称】上海海事大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】▲キ▼ 文嘉
(72)【発明者】
【氏名】王 逢生
【テーマコード(参考)】
2D059
2E163
2G061
【Fターム(参考)】
2D059BB39
2E163FD42
2G061AA07
2G061AB01
2G061CA08
2G061CB03
2G061DA11
2G061DA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モデルの境界条件、接触関係、初期応力場、その詳細な問題について具体的に選択し且つ巧みに組み合わせることにより、海洋環境が鉄筋錆を引き起こす場合、鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の力学的性能分析に適用される鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析法は、鉄筋コンクリート梁をモデリングすること、錆鉄筋膨張係数を材料パラメータとして導入すること、受力筋とコンクリートとの間の接触について、二次開発によって設定したバネユニットによってx、y、zの3つの方向の付着滑り関係をシミュレーションすること、底部スペーサの変位と回動を制限することを境界条件の一つとすること、ソフトウェア演算に投入して構造シミュレーション分析結果を取得することなどのキーステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析方法であって、
ステップS1、実際の作業状態に応じてモデル部品を構築し、前記モデル部品はコンクリート本体、フープ筋、補助筋、受力筋及びスペーサを備え、
ステップS2、前記モデル部品に対して様々な材料パラメータを設置し、前記材料パラメータは、コンクリート塑性損傷モデルと受力筋錆膨張係数を有し、
ステップS3、実際の作業状態に応じて前記モデル部品を鉄筋コンクリート梁モデルとして組み付けて、初期応力場を設置し、前記初期応力場は、真実の錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くために用いられように、受力筋とコンクリートとの間の、x、y、zの3つの方向を考慮した付着滑り関係を有し、前記付着滑り関係は、ソフトウェアの二次開発によって構築されるバネユニットによって導入され、
ステップS4、分析ステップパラメータを設置し、必要となるフィールド出力変数と履歴出力変数を選択し、
ステップS5、前記モデルに荷重と境界条件を加え、前記境界条件は、底部第1のスペーサのx、y方向の変位、x、y、z方向の回動、及び底部第2のスペーサのx、y方向の変位、y、z方向の回動を制限することを有し、
ステップS6、前記モデルに対してグリッドを分割してセル属性を設置し、ステップS7、前記モデルをソフトウェア演算に投入して必要となる構造シミュレーション分析結果を取得して整理する、
を包含する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップS1では、スペーサを離散鋼体として設置する、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS2では、前記モデル部品に対して様々な材料パラメータを設置することは、コンクリート材料パラメータを設置すること、及び鉄筋パラメータを設置することを含み、前記コンクリート材料パラメータは、コンクリート密度、弾性率、ポアソン比及び塑性パラメータを含み、前記塑性パラメータは、コンクリート塑性損傷モデルとして設置される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄筋パラメータは、フープ筋、補助筋、受力筋の3つの異なる強度レベルの鉄筋の密度、弾性率、ポアソン比及び塑性パラメータを含み、前記フープ筋は、HPB235、直径8mmに設置され、前記補助筋は、HPB235、直径12mmに設置され、前記受力筋は、HRB335、直径16mmに設置され、適切な膨張係数を設置し錆をシミュレーションする、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップS3は、以下のサブステップを含む、ステップS31、モデル部品間の相互関係に基づいて、モデル部品を対応位置に調整し、配筋に適合する鉄筋かご部品を構築し、スペーサ、コンクリート本体とともに鉄筋コンクリート梁を構成する、ステップS32、隣接するモデル部品の接触面の接触関係を構築する。スペーサとコンクリート本体との接触面の間にtie バインド拘束を設置し、フープ筋、補助筋とコンクリート本体との間にembedded region拘束を設置し、受力筋と鉄筋コンクリートとの間はソフトウェアの二次開発によってバネユニットを構築し、真実の錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くするように、x、y、zの3つの方向の付着滑り関係を考慮する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップS4では、前記フィールド出力変数と履歴出力変数は、構造の応力、歪み、変位、コンクリート損傷及び接触応力を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップS5では、前記荷重は、鉄筋コンクリート梁の4点曲げが受ける圧力、鉄筋コンクリート梁自体の重力を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップS6では、前記モデルは、10mmのピッチでグリッドを配置して分割する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップS7は、結果キーワード編集を含み、前記キーワードは、コンクリート塑性損傷パラメータを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素数値シミュレーション分析技術分野に関し、より具体的には、鉄筋コンクリート梁における錆による曲げ部材の有限要素分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート梁は、一体性と成型性に優れ、世界の各地で広く用いられる。様々なコンクリート材料の絶え間ない革新に伴い、構造が負担する荷重作業状態と環境条件も複雑になる傾向にあるため、構造の長期的な性能を評価することは実際の工事にとって非常に重要である。コンクリート疲労構成モデル及び計算方法の継続的な発展に伴い、数値分析方法はコンクリート部材の研究にますます多く使用されている。数値分析方法は、大量の労働力と財力を節約できるだけでなく、試験を行う時間を大幅に減少させ、研究効率を向上させる。有限要素数値分析の方法は、様々な工事状況を簡単にシミュレートして分析することができるが、該方法の精度は、理論上の仮定とモデリング技術に大きく影響される。言い換えれば、モデリング作業を行う時に、モデルの境界条件、材料構成関係、有限要素ユニットの分割などの重要な問題について、作業状態が異なれば、異なる選択と処理を行う必要があり、これらの重要なポイントを適切に処理しないと、数値分析結果の精度を確保することができない。具体的には、海洋環境における鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の分析問題について、本発明に係る参考文献に関して、幾つかの既存の研究成果は、モデル次元、境界条件、錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りなどの詳細な問題についてある程度簡略化を行っており、一方、このような簡略化は、必然的にシミュレーション結果の精度に一定の影響を与えてしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための課題】
【0003】
上記目的を実現するために、本発明は、鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析法を提供する。この方法は、以下のステップを含むことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ステップS1、実際の作業状態に応じてモデル部品を構築する。前記モデル部品はコンクリート本体、フープ筋、補助筋、受力筋及びスペーサを含む。
【0005】
ステップS2、前記モデル部品に対して様々な材料パラメータを設置する。前記材料パラメータは、コンクリート塑性損傷モデルと受力筋錆膨張係数を含む。
【0006】
ステップS3、実際の作業状態に応じて前記モデル部品を鉄筋コンクリート梁モデルとして組み付けて、初期応力場を設置する。前記初期応力場は、真実の錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くために用いられように、受力筋とコンクリートとの間の、x、y、zの3つの方向を考慮した付着滑り関係を含み、前記付着滑り関係は、ソフトウェアの二次開発によって構築されるバネユニットによって導入される。
【0007】
ステップS4、分析ステップパラメータを設置し、必要となるフィールド出力変数と履歴出力変数を選択する。
【0008】
ステップS5、前記モデルに荷重と境界条件を加える。前記境界条件は、底部第1のスペーサのx、y方向の変位、x、y、z方向の回動、及び底部第2のスペーサのx、y方向の変位、y、z方向の回動を制限することを含む。
【0009】
ステップS6、前記モデルに対してグリッドを分割してセル属性を設置する。
【0010】
ステップS7、前記モデルをソフトウェア演算に投入して必要となる構造シミュレーション分析結果を取得して整理する。
【0011】
さらに、前記ステップS1では、スペーサを離散鋼体として設置する。
【0012】
さらに、前記ステップS2では、前記モデル部品に対して様々な材料パラメータを設置することは、コンクリート材料パラメータを設置すること、及び鉄筋パラメータを設置することを含み、前記コンクリート材料パラメータは、コンクリート密度、弾性率、ポアソン比及び塑性パラメータを含み、前記塑性パラメータは、コンクリート塑性損傷モデルとして設置される。
【0013】
さらに、前記鉄筋パラメータは、フープ筋、補助筋、受力筋の3つの異なる強度レベルの鉄筋の密度、弾性率、ポアソン比及び塑性パラメータを含み、前記フープ筋は、HPB235、直径8mmに設置され、前記補助筋は、HPB235、直径12mmに設置され、前記受力筋は、HRB335、直径16mmに設置され、適切な膨張係数を設置し錆をシミュレーションする。
【0014】
さらに、前記ステップS3は、以下のサブステップを含む。
【0015】
ステップS31、モデル部品間の相互関係に基づいて、モデル部品を対応位置に調整し、配筋に適合する鉄筋かご部品を構築し、スペーサ、コンクリート本体とともに鉄筋コンクリート梁を構成する。
【0016】
ステップS32、隣接するモデル部品の接触面の接触関係を構築する。スペーサとコンクリート本体との接触面の間にtie バインド拘束を設置し、フープ筋、補助筋とコンクリート本体との間にembedded region拘束を設置し、受力筋と鉄筋コンクリートとの間はソフトウェアの二次開発によってバネユニットを構築し、真実の錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くするように、x、y、zの3つの方向の付着滑り関係を考慮する。
【0017】
さらに、前記ステップS4では、前記フィールド出力変数と履歴出力変数は、構造の応力、歪み、変位、コンクリート損傷及び接触応力を含む。
【0018】
さらに、前記ステップS5では、前記荷重は、鉄筋コンクリート梁の4点曲げが受ける圧力、鉄筋コンクリート梁自体の重力を含む。
【0019】
さらに、前記ステップS6では、前記モデルは、10mmのピッチでグリッドを配置して分割する。
【0020】
さらに、前記ステップS7は、結果キーワード編集を含み、前記キーワードは、コンクリート塑性損傷パラメータを含む。
【発明の効果】
【0021】
従来技術に比べて、上記発明は、以下の利点又は有益な効果を有する。
【0022】
本発明のモデルは、錆鉄筋膨張係数、受力筋とコンクリートとの間のx、y、zの3つの方向の付着滑り関係、特定の境界条件などの要素を考慮し、モデルの誤差を効果的に低減させることができ、本発明は、異なる受圧状況及び異なる鉄筋錆率における鉄筋コンクリート梁の受力状況をシミュレーションするために直接用いられることができ、鉄筋コンクリート梁の信頼性を評価するために重要な根拠と科学的サポートを提供することができる。具体的には、
(1)初期応力場は、接触面間がノートを共用することを簡単に思われたり、さらに簡単的に2つの接触面を一つの全体として簡略化して材料の属性のみについて区別するのではなく、面と面の接触対及び相互作用属性を定義する方法を採用し、モデルの実際の力学的行為をより正確に反映し、モデルの誤差を低減させることができる。
【0023】
(2)モデル鉄筋コンクリートの付着滑り係数は、ソフトウェアの二次開発に由来し、簡単にパラメータを設置するのではなく、バネユニットを設置して代替する。この方法は、x、y、zの3つの方向の付着滑り関係を考慮し、真実の鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くする。
【0024】
(3)鉄筋に対して膨張係数を設置することにより、鉄筋の錆に起因するコンクリートの破裂状況をシミュレーションし、鉄筋コンクリート梁の受力状況をより真実にシミュレーションすることができる。
【0025】
(4)スペーサを簡単なステンレスブロックでなく、鋼体として設置し、誤差をある程度低減させることができ、且つシミュレーションを行う時にスペーサの受力分析を行わず、計算量を減少する。
【0026】
(5)本発明は、キーワードを編集することによりコンクリートの損傷パラメータを設置することは、コンクリートの損傷状況をより直接に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面を参照した非限定的な実施例についての詳細な説明を読むことによって、本発明及びその特徴、外形及び利点は、明らかになる。
図1】本発明の一実施例における鉄筋コンクリート梁の全体モデル概略図である。
図2】本発明の一実施例における鉄筋コンクリート梁モデルの鉄筋構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
特許請求の範囲、明細書及び図面に示す方法における動作、ステップなどの実行順序は、特に順序の限定を明示せず、前の処理の出力が後ろの処理に用いられない限り、任意の順序で実現されることができる。
【0029】
以下の詳細の記述において、本発明をより深く理解するために、多くの特定的詳細を記述する。しかし、当業者にとって明らかなことは、本発明の趣旨を不明瞭にすることを避けるために、公知されている技術やモデルの詳細なプロセスを示していない。前述した公知されている技術は、例えばABAQUSソフトウェアにおけるモデリング、キーワード編集などの通常操作であり、前述した公知されているモデルは、例えばコンクリート塑性損傷モデルの構成関係である。
【0030】
本実施例は、鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析法を提供する。この方法は、ABAQUSソフトウェアにより実現され、以下のステップを含む。
【0031】
ステップS1、図1を参照し、実際の作業状態に応じてモデル部品を構築する。本実施例において構築する必要のあるモデルは、コンクリート本体1、フープ筋31、補助筋32、受力筋33及びスペーサ2の等価ユニットを含む。
【0032】
好ましい実施の形態として、スペーサ2は、その受力特性を考慮する必要がなく、離散鋼体として設置される。
【0033】
ステップS2、前記モデル部品に対して様々な材料パラメータを設置する。前記材料パラメータは、コンクリート塑性損傷モデルと受力筋錆膨張係数を含む。
【0034】
様々な材料パラメータを設置し且つ材料属性を対応するモデル部品に付与することにより、ステップS1におけるモデル部品はシミュレーションが要する物理属性を有し、それによって、ソフトウェアのシミュレーション計算によって、取得しようとする鉄筋コンクリートの錆による曲げ部材の受力分析を計算して取得する。例示的に、ステップS2は、具体的には、以下のサブステップを含む。
【0035】
ステップS21、コンクリートの材料パラメータを設置し、材料パラメータは、具体的には、コンクリート密度、弾性率、ポアソン比及び塑性に関連するパラメータなどを含む。塑性パラメータ部分をコンクリート塑性損傷モデルとして設置し、この構成関係は、関連付けがなされていない多硬化塑性と等方性損傷弾性を結び付けた方式を用いてコンクリートの破砕過程において発生した修復不可能の損傷を記述し、単方向ローディング、循環ローディング及び動的ローディングなどの場合に用いられることができる。例示的に、コンクリートの密度を2.3198E-09g/mとし、弾性率を32500MPaとし、ポアソン比を0.2とする。
【0036】
ステップS22、鉄筋パラメータを設置し、同様に、鉄筋パラメータは、具体的には、フープ筋、補助筋、受力筋の3つの強度レベルの鉄筋の密度、弾性率、ポアソン比及び塑性に関するパラメータなどを含む。3つの鉄筋の主な区別は、フープ筋が、斜め断面せん断強度を満たし、引っ張られる主鉄筋と受圧エリアのコンクリートを連結して共同に動作させるために用いられ、例示的に、HPB235レベル、直径8mmを選択し、補助筋が、梁の両端の上部において負モーメントを抵抗し、例示的に、HPB235レベル、直径12mmを選択し、受力筋が、荷重に起因した引張応力又は圧縮応力を受け、例示的に、HRB335レベル、直径16mmを選択し、適切な膨張係数を設置することにより破裂をシミュレーションすることにある。鉄筋の異なる錆率に基づいて異なる膨張係数を設置する。
【0037】
ステップS3、実際の作業状態に応じて前記モデル部品を鉄筋コンクリート梁モデルとして組み付けて、初期応力場を設置する。前記初期応力場は、真実の錆鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くするために用いられように、受力筋33とコンクリート本体1との間の、x、y、zの3つの方向を考慮した付着滑り関係を含み、前記付着滑り関係は、ソフトウェアの二次開発によって構築されるバネユニットによって導入される。
【0038】
好ましい実施の形態として、ステップS3は、以下のサブステップを含む。
【0039】
ステップS31、モデル部品間の相互関係に基づいて、モデル部品を対応位置に調整し、配筋に適合する鉄筋かご部品(図2を参照)を構築し、スペーサ2、コンクリート本体1とともに鉄筋コンクリート梁を構成する。
【0040】
ステップS32、異なる接触面に対してその実情に即した接触関係を構築する。本実施例に記述される異なる接触面の接触は、主に相互に接触する接触面対及び対応する相互作用関係を定義することにより実現される。以下の3つの態様を含む。
【0041】
(1)スペーサ2とコンクリート本体1。両者間にtieバインド拘束を設置し、両者は相対滑りが発生しないと思われる。
【0042】
(2)フープ筋31、補助筋32とコンクリート本体1。両者間にembedded region拘束を設置し、鉄筋をコンクリート本体に内蔵させ、鉄筋をコンクリートとともに受力させる。
【0043】
(3)受力筋33と鉄筋コンクリート。二次開発によってバネユニットを設置し、真実の鉄筋とコンクリートとの間の付着滑りに近くように、x、y、zの3つの方向の付着滑り関係を考慮する。
【0044】
具体的には、二次開発のシナリオは、以下の通りである。
#-*-coding:UTF-8-*-
session.journalOptions.setValues(replayGeometry=COORDINATE,recoverGeometry=COORDINATE)
from math import *
from abaqus import *
from abaqusConstants import *
from caeModules import *
from driverUtils import executeOnCaeStartup
executeOnCaeStartup()

Part1=str(str(getInput('Please enter the name of the fist target part'))+'-1')

Part2=str(str(getInput('Please enter the name of the second target part'))+'-1')


LENGTH = float(getInput('input the length of spring: '))
Springstiffness=float(getInput('input the Springstiffness of spring: '))

a = mdb.models['Model-1'].rootAssembly
n1 = a.instances[Part1].sets['Set-stressbar'].nodes
list1 = []
num_1 = len(n1)
for i in range(num_1):
list1.append((i,n1[i].coordinates[0],n1[i].coordinates[1],n1[i].coordinates[2]))

a = mdb.models['Model-1'].rootAssembly
n2 = a.instances[Part2].sets['Set-concrete'].nodes
list2 = []
num_2 = len(n2)
for j in range(num_2):
list2.append((j,n2[j].coordinates[0],n2[j].coordinates[1],n2[j].coordinates[2]))

list3 = []
for ii in range(num_1):
for jj in range(num_2):
if pow(((list1[ii][1]-list2[jj][1])**2+(list1[ii][2]-list2[jj][2])**2+(list1[ii][3]-list2[jj][3])**2),0.5)<float(LENGTH):
list3.append((list1[ii][0]+1,list2[jj][0]+1))
else:
continue

num_3=len(list3)
list4=[]
for iii in range(num_3):
n1 = a.instances[Part1].sets['Set-stressbar'].nodes
n2 = a.instances[Part2].sets['Set-concrete'].nodes
list4.append((n1[list3[iii][0]-1],n2[list3[iii][1]-1]))

a = mdb.models['Model-1'].rootAssembly
a.WirePolyLine(points=(list4), mergeType=IMPRINT,
meshable=OFF)
a = mdb.models['Model-1'].rootAssembly
e1 = a.edges
edges1 = e1[0:num_3]
a.Set(edges=edges1, name='Wire-1-Set-2')
##########################################################
【0045】
鉄筋が受ける応力の計算式は、以下の通りである。
【0046】
ステップS4、分析ステップパラメータを設置し、必要となるフィールド出力変数と履歴出力変数を選択する。このステップはABAQUSソフトウェアの作業フローに関連し、ソフトウェアの分析作業は、一定の分析ステップに基づいており、ソフトウェアのシミュレーション分析の結果は、出力する変数値により反映される。例示的に、ステップS4は、以下のサブステップを含む。
【0047】
ステップS41、分析ステップパラメータを設置する。分析ステップのパラメータについて分析ステップの時間長を設定する必要があり、本発明は、該パラメータを0.1から0.00001まで値を取り、分析ステップの時間長が0.00001よりも短い場合、作業分析演算を投入する時に、ソフトウェアエラーが発生する可能性がある。
【0048】
ステップS42、必要となるフィールド出力変数と履歴出力変数をチェックする。ABAQUSは、分析ステップモジュールにおいてシミュレーション分析が要する計算結果項目を設置することができ、主にフィールド出力変数と履歴出力変数に分けられ、ここで、フィールド変数出力は、ある量における空間位置による変化を記述するために用いられ、歴史変数は、ある量における時間による変化を記述するために用いられる。本実施例は、主に構造の応力、歪み、変位、コンクリート損傷及び接触応力という計算結果に注目する。
【0049】
ステップS5、前記モデルに荷重と境界条件を加える、前記境界条件は、底部第1のスペーサのx、y方向の変位、x、y、z方向の回動、及び底部第2のスペーサx、y方向の変位、y、z方向の回動を制限することを含む。このステップでは、荷重を加えることは、主に四点曲げによる構造に対する影響を考慮し、境界条件を加えることは、主に各モデル部品間の関係を反映する。例示的に、このステップは、具体的には、以下のサブステップを含む。
【0050】
ステップS51、モデルに重力荷重を加える。該ステップは、コンクリート本体と鉄筋かごに対する重力の影響を考慮する。pressure形式で荷重を加え、このようなやり方は制御及び調節することが容易であり、具体的には、以下のように反映される。
【0051】
(1)力の大きさによって、要求に応じて、鉄筋錆率が同じである場合、鉄筋コンクリート梁の正常使用の極限状態と負荷能力極限状態をシミュレーションすることができる。
【0052】
(2)同じ大きさの力を設置することにより、要求に応じて、錆率が異なる場合、鉄筋コンクリート梁の受力による破損状況をシミュレーションすることができる。
【0053】
ステップS52、境界条件を加える。底部第1のスペーサのx、y方向の変位、x、y、z方向の回動、底部第2のスペーサのx、y方向の変位、y、z方向の回動を制限する。
【0054】
ステップS6、前記モデルに対してグリッドを分割し且つセル属性を設置する。このステップは有限要素シミュレーション方法の原理に基づいており、即ち、モデルを有限個の一定の属性を有するサブ領域に分割して求解する。
【0055】
有限要素数値シミュレーション分析では、グリッド分割の寸法は比較的に重要な問題である。一般的には、グリッドを細かく分割するほど、計算結果は正確であり、相対的に、計算量は大きく、計算時間は長い。本実施例は、必要となる結果の正確性応じて、異なるモデル部品に対して異なる基準に応じてグリッドを分割し、グリッドピッチが大きすぎるとモデルの受力による変形は真実ではないことを招く恐れがあり、ピッチが小さすぎると演算量は大きすぎる。本実施例は、10mmピッチでグリッドを分割して配置し、このように、研究問題の具体的な状況に応じてグリッドを分割する方法は、計算精度と計算量の両方を兼ねて考慮する。
【0056】
ステップS7、前記モデルをソフトウェア演算に投入して必要となる構造シミュレーション分析結果を取得して整理する。例示的に、ステップS7では、コンクリートパラメータに対してキーワード編集を行い、鉄筋錆によるコンクリートの開裂破損をより直感にさせる。具体的には、edit keywordsを探し、コンクリート塑性損傷パラメータにおいてキーワード編集を設置する。
【0057】
理解できることとして、上述方法を実現するソフトウェアは、上述方法を実現することができるソフトウェアに限定され、ABAQUSに限らず、他の有限要素シミュレーションソフトウェア、例えば、ANSYS MIDASなどであってもよい。
【0058】
以上、本発明は、鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の有限要素分析法を提供する。前記方法は、鉄筋コンクリート梁をモデリングすること、錆鉄筋膨張係数を材料パラメータとして導入すること、受力筋とコンクリートとの間の接触について、二次開発によって設定したバネユニットによってx、y、zの3つの方向の付着滑り関係をシミュレーションすること、底部スペーサの変位と回動を制限することを境界条件の一つとすること、ソフトウェア演算に投入して構造シミュレーション分析結果を取得することなどのキーステップを含む。本発明は、モデルの境界条件、接触関係、初期応力場なその詳細な問題について具体的に選択し且つ巧みに組み合わせることにより、前述した有限要素分析法は、海洋環境が鉄筋錆を引き起こす場合、鉄筋コンクリート梁の錆による曲げ部材の力学的性能分析にさらに適用される。
【0059】
当業者であれば、当業者は、従来技術及び上述した実施例を組み合わせて変形例を実現することができ、ここではこれ以上説明しないことを理解すべきである。このような変形例は、本発明の実質的な内容に影響を与えるものではなく、ここではこれ以上説明しない。
【0060】
以上、本発明の好適な実施例について説明した。本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、詳細に説明されていない装置および構造は、当該分野における一般的な方法で実施されるものと理解されるべきであることを理解する必要がある。当業者であれば、本発明の技術的解決手段の範囲から逸脱することなく、上記開示された方法及び技術内容を利用して本発明の技術的解決手段に対して多くの可能な変化及び修飾を行うことができ、又は同等変化の等価実施例に修正することができ、これは本発明の本質的な内容に影響を与えない。したがって、本発明の技術的解決手段の内容から逸脱せず、本発明の技術的実質に基づいて以上の実施例に対して行われたいかなる簡単な修正、同等変化及び修飾は、いずれも依然として本発明の技術的解決手段の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0061】
1 コンクリート本体
2 スペーサ
31 フープ筋
32 補助筋
33 受力筋

図1
図2