(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140632
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051866
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】榊 真史
(72)【発明者】
【氏名】武 誠司
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕介
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AA12
5J046AB03
5J046PA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】画像表示装置内に存在する配線基板の存在を視認しにくくする画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置60において、画像表示装置用積層体70は、第1面11aと、第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む基板11と、基板11の第1面11a上に配置されたメッシュ配線層20とを有する配線基板10と、基板11の第1面11a側に位置する第1接着層95と、基板11の第2面11b側に位置する第2接着層96と、を有している。基板11は、透明性を有している。第1接着層95と第2接着層96との間の一部領域に、基板11の一部領域が配置されている。基板11の屈折率と第1接着層95の屈折率との差は、0.05以下である。基板11の屈折率と第2接着層96の屈折率との差は、0.05以下である。第1接着層95及び第2接着層96のうちの少なくとも一方は、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置用積層体と、
前記画像表示装置用積層体に積層された表示装置と、を備え、
前記画像表示装置用積層体は、
第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを含む基板と、前記基板の前記第1面上に配置されたメッシュ配線層とを有する配線基板と、
前記基板の前記第1面側に位置する第1接着層と、
前記基板の前記第2面側に位置する第2接着層と、を有し、
前記基板は、透明性を有し、
前記第1接着層と前記第2接着層との間の一部領域に、前記基板の一部領域が配置され、
前記基板の屈折率と前記第1接着層の屈折率との差は、0.05以下であり、
前記基板の屈折率と前記第2接着層の屈折率との差は、0.05以下であり、
前記第1接着層及び前記第2接着層のうちの少なくとも一方は、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含む、画像表示装置。
【請求項2】
前記第1接着層及び前記第2接着層が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含む、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記基板の屈折率と前記第1接着層の屈折率との差は、0.02以下であり、
前記基板の屈折率と前記第2接着層の屈折率との差は、0.02以下である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記配線基板は、電波送受信機能を有する、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記配線基板において、前記メッシュ配線層の周囲に、前記メッシュ配線層から電気的に独立したダミー配線層が設けられている、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記配線基板において、複数の前記ダミー配線層が設けられ、前記メッシュ配線層及び前記ダミー配線層の開口率は、前記メッシュ配線層から、前記メッシュ配線層に遠い前記ダミー配線層に向けて段階的に大きくなっている、請求項5に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施の形態は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スマートフォン、タブレット、スマートグラス(AR、MR等)等の携帯端末機器の高機能、小型化、薄型化及び軽量化が進んでいる。これら携帯端末機器は、複数の通信帯域を使用する。このため、通信帯域に応じた複数のアンテナが必要とされる。例えば、携帯端末機器には、電話用アンテナ、WiFi(Wireless Fidelity)用アンテナ、3G(Generation)用アンテナ、4G(Generation)用アンテナ、5G(Generation)用アンテナ、LTE(Long Term Evolution)用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC(Near Field Communication)用アンテナ等の複数のアンテナが搭載されている。しかしながら、携帯端末機器の小型化に伴い、アンテナの搭載スペースは限られており、アンテナ設計の自由度は狭まっている。また、限られたスペース内にアンテナを内蔵していることから、電波感度が必ずしも満足できるものではない。
【0003】
このため、携帯端末機器の表示領域又はスマートグラスの透過領域に搭載できるフィルムアンテナが開発されている。このフィルムアンテナは、透明基材上にアンテナパターンが形成された透明アンテナである。アンテナパターンは、メッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されている。導電体メッシュ層は、不透明な導電体層の形成部としての導体部と、非形成部としての多数の開口部とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-66610号公報
【特許文献2】特許第5636735号明細書
【特許文献3】特許第5695947号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルムアンテナを携帯端末機器に搭載した場合、携帯端末機器内に存在するフィルムアンテナの存在を視認しにくくすることが求められている。
【0006】
本実施の形態は、画像表示装置内に存在する配線基板の存在を視認しにくくすることが可能な、画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施の形態は、以下の[1]~[6]に関する。
【0008】
[1]画像表示装置用積層体と、前記画像表示装置用積層体に積層された表示装置と、を備え、前記画像表示装置用積層体は、第1面と、前記第1面の反対側に位置する第2面とを含む基板と、前記基板の前記第1面上に配置されたメッシュ配線層とを有する配線基板と、前記基板の前記第1面側に位置する第1接着層と、前記基板の前記第2面側に位置する第2接着層と、を有し、前記基板は、透明性を有し、前記第1接着層と前記第2接着層との間の一部領域に、前記基板の一部領域が配置され、前記基板の屈折率と前記第1接着層の屈折率との差は、0.05以下であり、前記基板の屈折率と前記第2接着層の屈折率との差は、0.05以下であり、前記第1接着層及び前記第2接着層のうちの少なくとも一方は、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含む、画像表示装置である。
【0009】
[2]前記第1接着層及び前記第2接着層が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含む、[1]に記載の画像表示装置。
【0010】
[3]前記基板の屈折率と前記第1接着層の屈折率との差は、0.02以下であり、前記基板の屈折率と前記第2接着層の屈折率との差は、0.02以下である、[1]又は[2]に記載の画像表示装置。
【0011】
[4]前記配線基板は、電波送受信機能を有する、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【0012】
[5]前記配線基板において、前記メッシュ配線層の周囲に、前記メッシュ配線層から電気的に独立したダミー配線層が設けられている、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の画像表示装置。
【0013】
[6]前記配線基板において、複数の前記ダミー配線層が設けられ、前記メッシュ配線層及び前記ダミー配線層の開口率は、前記メッシュ配線層から、前記メッシュ配線層に遠い前記ダミー配線層に向けて段階的に大きくなっている、[5]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本開示の実施の形態によると、画像表示装置内に存在する配線基板の存在を視認しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施の形態による画像表示装置を示す平面図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施の形態による画像表示装置を示す断面図(
図1のIIA-IIA線断面図)である。
【
図2B】
図2Bは、nanoTA測定を説明するためのグラフである。
【
図3】
図3は、一実施の形態による配線基板を示す平面図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態による配線基板を示す拡大平面図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図4のV-V線断面図)である。
【
図6】
図6は、一実施の形態による配線基板を示す断面図(
図4のVI-VI線断面図)である。
【
図7】
図7は、一実施の形態によるモジュールを示す断面図である。
【
図8】
図8(a)-(f)は、一実施の形態による配線基板の製造方法を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)-(c)は、一実施の形態によるモジュールの製造方法を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)-(d)は、一実施の形態による画像表示装置の製造方法を示す断面図である。
【
図11】
図11は、比較例としての画像表示装置を示す断面図(
図2Aに対応する断面図)である。
【
図12】
図12は、第1変形例による画像表示装置の配線基板を示す平面図である。
【
図13】
図13は、第1変形例による画像表示装置の配線基板を示す拡大平面図である。
【
図14】
図14は、第2変形例による画像表示装置の配線基板を示す平面図である。
【
図15】
図15は、第2変形例による画像表示装置の配線基板を示す拡大平面図である。
【
図16】
図16は、第3変形例による画像表示装置の配線基板を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、
図1乃至
図11により、一実施の形態について説明する。
図1乃至
図11は本実施の形態を示す図である。
【0017】
以下に示す各図は、模式的に示した図である。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施できる。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されず、適宜選択して使用できる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含めて解釈することとする。
【0018】
また、以下の実施の形態において、「X方向」とは、画像表示装置の一辺に対して平行な方向である。「Y方向」とは、X方向に垂直かつ画像表示装置の他の一辺に対して平行な方向である。「Z方向」とは、X方向及びY方向の両方に垂直かつ画像表示装置の厚み方向に平行な方向である。また、「表面」とは、Z方向プラス側の面であって、画像表示装置の発光面側であり、観察者側を向く面をいう。「裏面」とは、Z方向マイナス側の面であって、画像表示装置の発光面及び観察者側を向く面と反対側の面をいう。なお、本実施の形態において、メッシュ配線層20が、電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有するメッシュ配線層20である場合を例にとって説明するが、メッシュ配線層20は電波送受信機能(アンテナとしての機能)を有していなくても良い。
【0019】
図1及び
図2Aを参照して、本実施の形態による画像表示装置の構成について説明する。
【0020】
図1及び
図2Aに示すように、本実施の形態による画像表示装置60は、画像表示装置用積層体70と、画像表示装置用積層体70に積層された表示装置61と、を備えている。
図2Aに示すように、画像表示装置用積層体70は、配線基板10と、第1透明接着層(第1接着層)95と、第2透明接着層(第2接着層)96とを備えている。また、画像表示装置用積層体70は、カバーガラス75と、加飾層74とを備えている。カバーガラス75及び加飾層74は、第1透明接着層95を介して、配線基板10上に配置されている。なお、第1透明接着層95とカバーガラス75との間には、図示しない衝撃吸収層等が配置されていても良い。また、配線基板10と、配線基板10に電気的に接続された給電線85とによって、モジュール80Aが構成されている。
【0021】
モジュール80Aの配線基板10は、基板11と、メッシュ配線層20と、給電部40とを有する。
図2Aに示すように、基板11は、第1面11aと、第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む。メッシュ配線層20は、基板11の第1面11a上に配置されている。また、メッシュ配線層20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0022】
図2Aに示すように、画像表示装置60は、発光面64を有している。上述した配線基板10は、表示装置61に対して発光面64側(Z方向プラス側)に位置している。表示装置61に対して発光面64の反対側(Z方向マイナス側)には、通信モジュール63が配置されている。画像表示装置用積層体70と、表示装置61と、通信モジュール63とは、筐体62内に収容されている。
【0023】
図1及び
図2Aに示す画像表示装置60において、通信モジュール63を介して、所定の周波数(例えば、1GHzよりも大きい周波数)の電波を送受信でき、通信を行うことができる。通信モジュール63は、ミリ波用アンテナ、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかを含んでいても良い。このような画像表示装置60としては、例えばスマートフォン、タブレット等の携帯端末機器を挙げることができる。
【0024】
表示装置61は、例えば有機EL(Electro Luminescence)表示装置からなる。この表示装置61は、容易に変形し得るように構成されていても良い。例えば、表示装置61の剛性は、カバーガラス75の剛性よりも低くても良い。表示装置61は、例えば図示しない金属層、支持基材、樹脂基材、薄膜トランジスタ(TFT)、及び有機EL層を含んでいても良い。表示装置61上には、図示しないタッチセンサが配置されていても良い。なお、表示装置61は、有機EL表示装置に限られるものではない。例えば、表示装置61は、それ自体が発光する機能を持つ他の表示装置であっても良く、マイクロLED素子(発光体)を含むマイクロLED表示装置であっても良い。また、表示装置61は、液晶を含む液晶表示装置であっても良い。
【0025】
次に、画像表示装置用積層体70について詳細に説明する。上述したように、画像表示装置用積層体70は、配線基板10と、第1透明接着層95と、第2透明接着層96とを備えている。また、上述したように、画像表示装置用積層体70は、カバーガラス75と、加飾層74とを備えている。なお、画像表示装置用積層体70は、図示しないフレームに取り付けられることにより、ヘッドマウントディスプレイ(スマートグラス)に組み込まれていても良い。
【0026】
画像表示装置用積層体70のカバーガラス75は、配線基板10の基板11の第1面11a側に位置している。第1透明接着層95は、配線基板10の基板11とカバーガラス75との間に位置している。加飾層74は、カバーガラス75と第1透明接着層95との間に位置している。第2透明接着層96は、配線基板10の基板11の第2面11b側に位置している。ここでは、まず、画像表示装置用積層体70の第1透明接着層95について説明する。なお、配線基板10の詳細については後述する。
【0027】
第1透明接着層95は、配線基板10を加飾層74及びカバーガラス75に直接的又は間接的に接着する接着層である。この第1透明接着層95は、基板11の第1面11a側に位置している。第1透明接着層95は、光学透明性を有しており、OCA(Optical Clear Adhesive)層であっても良い。OCA層は、例えば以下のようにして作製された層である。まずポリエチレンテレフタレート(PET)等の離型フィルム上に、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を塗布する。次に、これを例えば紫外線(UV)等を用いて硬化することにより、OCAシートを得る。このOCAシートを対象物に貼合した後、離型フィルムを剥離除去することにより、上記OCA層を得る。第1透明接着層95の材料は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等であっても良い。とりわけ、第1透明接着層95は、アクリル系樹脂を含んでいても良い。この場合、第2透明接着層96が、アクリル系樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、第1透明接着層95と第2透明接着層96との屈折率の差を実質的になくし、第1透明接着層95と第2透明接着層96との界面B3での可視光の反射をより確実に抑えることができる。
【0028】
第1透明接着層95は、可視光線の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、第1透明接着層95の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。第1透明接着層95の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、画像表示装置用積層体70の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。なお、可視光線とは、波長が400nm以上700nm以下の光線のことをいう。また、可視光線の透過率が85%以上であるとは、測定する部材(例えば第1透明接着層95)に対して吸光度の測定を行った際、400nm以上700nm以下の全波長領域で、その透過率が85%以上となることをいう。吸光度の測定は、分光光度計(日本分光株式会社製の分光器:V-670)を用いて行うことができる。
【0029】
配線基板10は、上述したように、表示装置61に対して発光面64側に配置されている。この場合、配線基板10は、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間に位置する。より具体的には、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間の一部領域に、配線基板10の基板11の一部領域が配置されている。この場合、第1透明接着層95、第2透明接着層96、表示装置61及びカバーガラス75は、それぞれ配線基板10の基板11よりも広い面積を有する。このように、配線基板10の基板11を、平面視で画像表示装置60の全面ではなく一部領域に配置することにより、配線基板10の面積を小さくできる。このため、配線基板10の後述する第1方向配線21及び第2方向配線22を作製する際に、多数枚分の第1方向配線21及び第2方向配線22を一度に作製できる。このため、配線基板10の1枚当たりの製造コストを下げることができる。なお、配線基板10の基板11を、平面視で画像表示装置60の全面に配置しても良い。この場合、配線基板10を表示装置61上に配置する際に、位置決めに要する時間を短縮できる。
【0030】
配線基板10は、上述したように、透明性を有する基板11と、基板11の第1面11a上に配置されたメッシュ配線層20とを有する。メッシュ配線層20には、給電部40が電気的に接続されている。給電部40は、給電線85を介して、通信モジュール63に電気的に接続されている。また、配線基板10の一部は、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間に配置されることなく、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間から外方(Y方向マイナス側)に突出する。具体的には、配線基板10のうち、給電部40が設けられている領域が外方に突出する。これにより、給電部40と通信モジュール63との電気的な接続を容易に行うことができる。一方、配線基板10のうち、メッシュ配線層20が設けられている領域は、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間に位置する。なお、配線基板10の詳細については後述する。
【0031】
第2透明接着層96は、表示装置61を配線基板10に直接的又は間接的に接着する接着層である。この第2透明接着層96は、基板11の第2面11b側に位置している。第2透明接着層96は、第1透明接着層95と同様に、光学透明性を有しており、OCA(Optical Clear Adhesive)層であっても良い。第2透明接着層96の材料は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等であっても良い。とりわけ、第2透明接着層96は、アクリル系樹脂を含んでいても良い。これにより、第1透明接着層95と第2透明接着層96との屈折率の差を実質的になくし、第1透明接着層95と第2透明接着層96との界面B3での可視光の反射をより確実に抑えることができる。
【0032】
第2透明接着層96は、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、第2透明接着層96の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。第2透明接着層96の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、画像表示装置用積層体70の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。
【0033】
このような画像表示装置60において、基板11の屈折率と、第1透明接着層95の屈折率との差は、0.05以下であり、0.02以下となることが好ましい。また、基板11の屈折率と、第2透明接着層96の屈折率との差は、0.05以下であり、0.02以下となることが好ましい。さらに、第1透明接着層95の屈折率と、第2透明接着層96の屈折率との差は、0.05以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましい。例えば、第1透明接着層95の材料と第2透明接着層96の材料とが、屈折率が1.49であるアクリル系樹脂である場合、基板11の屈折率を1.45以上1.54以下とする。このような材料としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂等を挙げることができる。
【0034】
このように、基板11の屈折率と、第1透明接着層95の屈折率との差を0.05以下に抑えることにより、基板11と第1透明接着層95との界面B1での可視光の反射を抑え、基板11を観察者の肉眼で視認しにくくできる。また、基板11の屈折率と、第2透明接着層96の屈折率との差を0.05以下に抑えることにより、基板11と第2透明接着層96との界面B2での可視光の反射を抑え、基板11を観察者の肉眼で視認しにくくできる。さらに、第1透明接着層95の屈折率と、第2透明接着層96の屈折率との差を0.05以下に抑えることにより、第1透明接着層95と第2透明接着層96との界面B3での可視光の反射を抑えることができる。このため、第1透明接着層95と第2透明接着層96とを観察者の肉眼で視認しにくくできる。
【0035】
とりわけ、第1透明接着層95の材料と第2透明接着層96の材料とが、互いに同一の材料であることが好ましい。これにより、第1透明接着層95と第2透明接着層96との屈折率の差をより小さくし、第1透明接着層95と第2透明接着層96との界面B3での可視光の反射を抑えることができる。
【0036】
第1透明接着層95及び第2透明接着層96のうちの少なくとも一方は、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含んでいても良い。この場合、第1透明接着層95及び第2透明接着層96が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含んでいても良い。上述したように、第1透明接着層95及び第2透明接着層96は、硬化性接着層用組成物によって構成されるOCA層であっても良い。この場合、樹脂材料の軟化点は、硬化後の軟化点を意味する。
【0037】
ここで、硬化後の軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料は、硬化前の軟化点が約25℃以上約50℃以下になり得る。このように、第1透明接着層95等の材料が、硬化前の軟化点が25℃以上50℃以下の樹脂材料である場合、樹脂材料の流動性が高くなる。このため、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61が変形してしまうことを抑制できる。すなわち、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61に対して、第1透明接着層95等を構成する樹脂材料から、局所的に大きな力が加えられてしまうことを抑制できる。このため、表示装置61の剛性がカバーガラス75の剛性よりも低い場合であっても、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61が変形してしまうことを抑制できる。
【0038】
樹脂材料の軟化点は、nanoTA測定により測定する。nanoTA測定により樹脂材料の軟化点を測定する場合、まず、走査型プローブ顕微鏡(Anasys Instruments社製、nanoTA)を準備する。このとき、プローブは、Anasys Instruments社製、PR-EXP-AN2-300-5を使用する。次に、プローブを40℃まで加熱する。次いで、走査型プローブ顕微鏡のプローブの先端を樹脂材料に接触させた状態で、プローブを更に加熱する。このとき、プローブの加熱速度は、5℃/secとする。プローブを加熱することにより、樹脂材料のうち、プローブが接触している部分に熱が伝わる。これにより、プローブが接触している部分が、熱膨張する。そして、樹脂材料の熱膨張に起因して、プローブが変形することにより、プローブの先端が変位する(
図2BのA部参照)。次に、更にプローブを加熱することにより、樹脂材料が軟化し、プローブの先端が樹脂材料内に入り込む。これにより、プローブの変形が解消され、プローブの先端の変位量が小さくなる(
図2BのB部参照)。そして、頂点となる点の温度を、樹脂材料の軟化点(
図2BのC点参照)とする。
【0039】
また、
図2Aにおいて、第1透明接着層95の厚みT
3と第2透明接着層96の厚みT
4とのうち少なくとも一方の厚みは、基板11の厚みT
1の1.5倍以上であっても良く、2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることが更に好ましい。このように、基板11の厚みT
1に対して第1透明接着層95の厚みT
3又は第2透明接着層96の厚みT
4を十分に厚くすることにより、基板11と重なる領域で第1透明接着層95又は第2透明接着層96が厚み方向に変形し、基板11の厚みを吸収する。これにより、基板11の周縁において第1透明接着層95又は第2透明接着層96に段差が生じることを抑えることができ、基板11の存在を観察者が認識しにくくできる。
【0040】
第1透明接着層95の厚みT3及び第2透明接着層96の厚みT4のうち少なくとも一方の厚みは、基板11の厚みT1の10倍以下であることが好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。これにより、第1透明接着層95の厚みT3又は第2透明接着層96の厚みT4が厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。
【0041】
また、
図2Aにおいて、第1透明接着層95の厚みT
3は、第2透明接着層96の厚みT
4よりも厚くなっていても良い。ここで、上述したように、第1透明接着層95は、配線基板10の基板11の第1面11a側に位置している。また、配線基板10の基板11の第1面11a上には、メッシュ配線層20が配置されている。このため、メッシュ配線層20が形成する凹凸に起因して、第1透明接着層95の表面に凹凸が形成される可能性がある。これに対して、第1透明接着層95の厚みT
3が第2透明接着層96の厚みT
4よりも厚くなっていることにより、第1透明接着層95の表面に凹凸が形成されることを抑制でき、第1透明接着層95の表面を平滑にできる。
【0042】
第1透明接着層95の厚みT3と第2透明接着層96の厚みT4との間の差は、100μm以下であることが好ましい。ここで、上述したように、第1透明接着層95及び第2透明接着層96は、OCA層であり得る。このため、OCA層を作製した際にOCA層に発生し得る残留応力によって、第1透明接着層95及び第2透明接着層96には、第1透明接着層95及び第2透明接着層96を収縮させるように作用する引張応力が発生し得る。この引張応力は、第1透明接着層95の厚みT3又は第2透明接着層96の厚みT4が大きくなるにつれて、大きくなる可能性がある。そして、第1透明接着層95に発生した引張応力と、第2透明接着層96に発生した引張応力との差が大きくなった場合、配線基板10に反りが生じる可能性がある。これに対して、第1透明接着層95の厚みT3と第2透明接着層96の厚みT4との間の差が100μm以下であることにより、第1透明接着層95に発生した引張応力と、第2透明接着層96に発生した引張応力との差を小さくできる。これにより、第1透明接着層95に発生する引張応力と、第2透明接着層96に発生する引張応力との差に起因する、配線基板10の反りを低減できる。
【0043】
図2Aにおいて、第1透明接着層95の厚みT
3と第2透明接着層96の厚みT
4とが、互いに同一であっても良い。この場合、第1透明接着層95の厚みT
3及び第2透明接着層96の厚みT
4は、それぞれ基板11の厚みT
1の1.5倍以上であっても良く、2.0倍以上であることが好ましい。すなわち、第1透明接着層95の厚みT
3及び第2透明接着層96の厚みT
4の合計(T
3+T
4)は、基板11の厚みT
1の3倍以上となる。このように、基板11の厚みT
1に対して第1透明接着層95及び第2透明接着層96の厚みT
3、T
4の合計を十分に厚くすることにより、基板11と重なる領域で第1透明接着層95及び第2透明接着層96が厚み方向に変形(収縮)する。これにより、第1透明接着層95及び第2透明接着層96が、基板11の厚みを吸収する。このため、基板11の周縁において第1透明接着層95又は第2透明接着層96に段差が生じることを抑えることができ、基板11の存在を観察者が認識しにくくできる。
【0044】
第1透明接着層95の厚みT3と第2透明接着層96の厚みT4とが互いに同一である場合、第1透明接着層95の厚みT3及び第2透明接着層96の厚みT4は、それぞれ基板11の厚みT1の5倍以下であっても良く、3倍以下であることが好ましい。これにより、第1透明接着層95及び第2透明接着層96の両方の厚みT3、T4が厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。
【0045】
具体的には、基板11の厚みT1は、例えば2μm以上であっても良く、10μm以上であっても良く、15μm以上であることが好ましい。基板11の厚みT1を2μm以上とすることにより、配線基板10の強度を保持し、メッシュ配線層20の後述する第1方向配線21及び第2方向配線22が変形しにくいようにできる。また、基板11の厚みT1は、例えば200μm以下であっても良く、50μm以下であっても良く、25μm以下であることが好ましい。基板11の厚みT1を200μm以下とすることにより、基板11の周縁において第1透明接着層95及び第2透明接着層96に段差が生じることを抑え、基板11の存在を観察者が認識しにくくできる。また、基板11の厚みT1を50μm以下とすることにより、基板11の周縁において第1透明接着層95及び第2透明接着層96に段差が生じることを更に抑え、基板11の存在を観察者がより認識しにくくできる。
【0046】
第1透明接着層95の厚みT3は、例えば15μm以上であっても良く、20μm以上であることが好ましい。第1透明接着層95の厚みT3は、例えば500μm以下であっても良く、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることが更に好ましい。第1透明接着層95の厚みT3が500μm以下であることにより、第1透明接着層95の厚みT3が厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。また、第1透明接着層95の厚みT3が300μm以下であることにより、画像表示装置60の全体としての厚みを更に薄くできる。
【0047】
第2透明接着層96の厚みT4は、例えば15μm以上であっても良く、20μm以上であることが好ましい。第2透明接着層96の厚みT4は、例えば500μm以下であっても良く、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることが更に好ましい。第2透明接着層96の厚みT4が500μm以下であることにより、第2透明接着層96の厚みT4が厚くなりすぎることがなく、画像表示装置60の全体としての厚みを薄くできる。また、第2透明接着層96の厚みT4が300μm以下であることにより、画像表示装置60の全体としての厚みを更に薄くできる。
【0048】
上述したように、配線基板10と、配線基板10の基板11よりも広い面積を有する第1透明接着層95と、基板11よりも広い面積を有する第2透明接着層96とにより、画像表示装置用積層体70が構成されている。本実施の形態において、このような画像表示装置用積層体70も提供する。
【0049】
再度
図2Aを参照すると、カバーガラス75は、第1透明接着層95上に直接的又は間接的に配置されている。カバーガラス75は、第1透明接着層95のZ方向プラス側に位置するとともに、加飾層74上に配置されている。このカバーガラス75は、光を透過するガラス製の部材である。カバーガラス75は、板状であり、カバーガラス75の形状は、平面視で矩形であっても良い。カバーガラス75の厚みは、例えば200μm以上1000μm以下であっても良く、300μm以上700μm以下であることが好ましい。カバーガラス75の長手方向(Y方向)の長さは、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは100mm以上200mm以下であっても良い。カバーガラス75の短手方向(X方向)の長さは、20mm以上500mm以下、望ましくは50mm以上100mm以下であっても良い。
【0050】
加飾層74は、少なくとも一部が第1透明接着層95上に配置されている。加飾層74は、加飾フィルムであっても良い。加飾層74は、例えば、観察者側から見て表示装置61の表示領域と重なる部分の全部又は一部が開口しており、表示領域以外の部分を遮光する。すなわち、加飾層74は、観察者側から見て表示装置61の端部を覆うように配置される。
【0051】
図1に示すように、画像表示装置60の形状は、平面視で、全体として略長方形であり、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行となっている。画像表示装置60の長手方向(Y方向)の長さL
4は、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは100mm以上200mm以下の範囲で選択できる。画像表示装置60の短手方向(X方向)の長さL
5は、例えば20mm以上500mm以下、望ましくは50mm以上100mm以下の範囲で選択できる。なお、画像表示装置60の平面形状は、その角部がそれぞれ丸みを帯びた長方形であっても良い。
【0052】
次に、
図3乃至
図6を参照して、配線基板の構成について説明する。
図3乃至
図6は、本実施の形態による配線基板を示す図である。
【0053】
本実施の形態による配線基板10は、上述した画像表示装置60(
図1及び
図2A参照)に用いられる基板である。配線基板10は、表示装置61よりも発光面64側であって、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間に配置され得る(
図2A参照)。
図3に示すように、このような配線基板10は、上述したように、透明性を有する基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20とを有する。また、メッシュ配線層20には、給電部40が電気的に接続されている。
【0054】
基板11の形状は、平面視で略長方形である。図示された例においては、その長手方向がX方向に平行であり、その短手方向がY方向に平行となっている。基板11は、透明性を有するとともに略平板状であり、その厚みは全体として略均一となっている。画像表示装置60の長手方向(Y方向)における基板11の長さL
1(
図1及び
図3参照)は、例えば10mm以上200mm以下の範囲で選択できる。画像表示装置60の短手方向(X方向)における基板11の長さL
2(
図1参照)は、例えば3mm以上100mm以下の範囲で選択できる。なお、基板11の平面形状は、その角部がそれぞれ丸みを帯びた長方形であっても良い。
【0055】
基板11の材料は、可視光線領域での透明性と電気絶縁性とを有する材料であれば良い。基板11の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、又はフッ素樹脂材料等の有機絶縁性材料が用いられることが好ましい。ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート等であっても良い。アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレート等であっても良い。ポリオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン重合体等であっても良い。セルロース系樹脂は、トリアセチルセルロース等であっても良い。フッ素樹脂材料は、PTFE又はPFA等であっても良い。例えば、基板11の材料としては、シクロオレフィンポリマー(例えば日本ゼオン社製ZF-16)、又はポリノルボルネンポリマー(住友ベークライト社製)等の有機絶縁性材料が用いられても良い。また、基板11の材料としては、用途に応じてガラス、又はセラミックス等が適宜選択されても良い。なお、基板11は、単一の層によって構成された例を図示したが、これに限定されず、複数の基材又は層が積層された構造であっても良い。また、基板11はフィルム状の部材であっても良く、板状の部材であっても良い。
【0056】
基板11の誘電正接は、0.002以下であることが好ましい。基板11の誘電正接が上記範囲であることにより、とりわけメッシュ配線層20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得の損失(感度の低下)を小さくできる。
【0057】
基板11の比誘電率は、2以上10以下であることが好ましい。基板11の比誘電率が2以上であることにより、基板11の材料の選択肢を多くできる。また、基板11の比誘電率が10以下であることにより、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。すなわち、基板11の比誘電率が大きくなった場合、基板11の厚みが電磁波の伝搬に与える影響が、大きくなる。また、電磁波の伝搬に悪影響がある場合、基板11の誘電正接が大きくなり、電磁波の送受信に伴う利得の損失が大きくなり得る。これに対して、基板11の比誘電率が10以下であることにより、基板11の厚みが電磁波の伝搬に与える影響を小さくできる。このため、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。とりわけメッシュ配線層20が送受信する電磁波(例えばミリ波)が高周波である場合に、電磁波の送受信に伴う利得の損失を小さくできる。
【0058】
基板11の誘電正接及び比誘電率は、IEC 62562に準拠して測定できる。具体的には、まず、メッシュ配線層20が形成されてない部分の基板11を切り出して試験片を準備する。試験片の寸法は、幅10mm以上20mm以下、長さ50mm以上100mm以下とする。次に、IEC 62562に準拠し、誘電正接又は比誘電率を測定する。
【0059】
本実施の形態では、基板11は、透明性を有している。本明細書中、「透明性を有する」とは、可視光線(波長400nm以上700nm以下の光線)の透過率が85%以上であることを意味する。基板11は、可視光線の透過率が85%以上であっても良く、90%以上であることが好ましい。なお、基板11の可視光線の透過率の上限は特にないが、例えば100%以下であっても良い。基板11の可視光線の透過率を上記範囲とすることにより、配線基板10の透明性を高め、画像表示装置60の表示装置61を視認しやすくできる。
【0060】
本実施の形態において、メッシュ配線層20は、アンテナとしての機能をもつアンテナパターンからなっている。このメッシュ配線層20は、アレイアンテナとして構成されていても良い。このように、メッシュ配線層20を、アレイアンテナとして構成する場合、直進性の高いミリ波を送受信するミリ波用アンテナ性能を高めることができる。なお、アレイアンテナとは、複数のアンテナ素子(放射素子)を規則的に配置したアンテナであって、素子の励振の振幅及び位相を独立して制御できるアンテナをいう。
【0061】
図3に示すように、メッシュ配線層20は、基板11上に複数形成されている。メッシュ配線層20は、4つ以上設けられていることが好ましい。図示された例においては、メッシュ配線層20は、基板11上に4つ形成されている(
図1参照)。また、
図3に示すように、メッシュ配線層20は、基板11の全面に存在するのではなく、基板11上の一部領域のみに存在していても良い。各々のメッシュ配線層20は、互いに同一形状を有していても良い。この場合、各々のメッシュ配線層20は、後述する先端側部分20bの長さ(Y方向距離)L
aの誤差及び幅(X方向距離)W
aの誤差が、それぞれ10%内であることが好ましい。これにより、ミリ波用アンテナ性能を効果的に高めることができる。
【0062】
メッシュ配線層20は、給電部40側の基端側部分(伝送部)20aと、基端側部分20aに接続された先端側部分(送受信部)20bとを有する。基端側部分20aは、給電部40に接続されている。この場合、基端側部分(伝送部)20aは、マイクロストリップ線路又はコプレーナ線路を構成していても良い。基端側部分20aの形状と先端側部分20bの形状とは、それぞれ平面視で略長方形である。この場合、先端側部分20bの長さ(Y方向距離)は基端側部分20aの長さ(Y方向距離)と略同一であり、先端側部分20bの幅(X方向距離)は基端側部分20aの幅(X方向距離)よりも広い。
【0063】
このメッシュ配線層20の先端側部分20bは、所定の周波数帯に対応している。すなわち、先端側部分20bは、その長さ(Y方向距離)Laが特定の周波数帯に対応した長さとなっている。なお、対応する周波数帯が低周波であるほど先端側部分20bの長さLaが長くなる。メッシュ配線層20は、ミリ波用アンテナの他、電話用アンテナ、WiFi用アンテナ、3G用アンテナ、4G用アンテナ、5G用アンテナ、LTE用アンテナ、Bluetooth(登録商標)用アンテナ、NFC用アンテナ等のいずれかに対応していても良い。なお、複数の先端側部分20bの長さが互いに異なり、それぞれ異なる周波数帯に対応しても良い。あるいは、配線基板10が電波送受信機能を有していない場合、各メッシュ配線層20は、例えばホバリング機能、指紋認証、ヒーター、ノイズカット(シールド)等の機能を果たしても良い。なお、ホバリング機能とは、使用者がディスプレイに直接触れなくても操作可能となる機能をいう。
【0064】
図示された例においては、先端側部分20bは、その長手方向がX方向に平行であり、その短手方向がY方向に平行となっている。なお、先端側部分20bは、その長手方向がY方向に平行であり、その短手方向がX方向に平行であっても良い。先端側部分20bのY方向の長さLaは、例えば1mm以上100mm以下の範囲で選択できる。先端側部分20bのX方向の幅Waは、例えば1mm以上100mm以下の範囲で選択できる。とりわけ、メッシュ配線層20がミリ波用アンテナである場合、先端側部分20bの長さLaは、1mm以上、より好ましくは1.5mm以上の範囲で選択できる。メッシュ配線層20がミリ波用アンテナである場合、先端側部分20bの長さLaは、10mm以下、より好ましくは5mm以下の範囲で選択できる。
【0065】
メッシュ配線層20同士の距離は、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。すなわち、先端側部分20b同士の距離D
20b(
図3参照)は、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。先端側部分20b同士の距離D
20bが0.2mm以上であることにより、アンテナ素子間における、電磁波の意図しない干渉を抑制できる。先端側部分20b同士の距離D
20bが5mm以下であることにより、メッシュ配線層20が構成するアレイアンテナ全体のサイズを小さくできる。例えば、メッシュ配線層20が28GHzのミリ波用アンテナの場合、先端側部分20b同士の距離D
20bは、3.5mmであっても良い。また、メッシュ配線層20が60GHzのミリ波用アンテナの場合、先端側部分20b同士の距離D
20bは、1.6mmであっても良い。
【0066】
図4に示すように、メッシュ配線層20は、それぞれ金属線が格子状又は網目状に配置されたパターン形状を有している。このパターン形状は、X方向及びY方向に繰り返し配置されている。すなわちメッシュ配線層20は、第1方向(例えば、Y方向)に延びる部分(後述する第1方向配線21)と、第2方向(例えば、X方向)に延びる部分(後述する第2方向配線22)とから構成されるパターン形状を有している。
【0067】
メッシュ配線層20は、複数の配線を有している。具体的には、メッシュ配線層20は、複数の第1方向配線21と、複数の第1方向配線21を連結する複数の第2方向配線22とを有している。複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とは、全体として一体となって、格子状又は網目状の形状を形成している。各第1方向配線21は、メッシュ配線層20の長手方向(Y方向)に延びている。各第2方向配線は、メッシュ配線層20の幅方向(X方向)に直線状に延びている。なお、第1方向配線21及び第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれにも平行でない方向に延びていても良い。
【0068】
メッシュ配線層20においては、互いに隣接する第1方向配線21と、互いに隣接する第2方向配線22とに取り囲まれることにより、複数の開口部23が形成されている。各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。これにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。
【0069】
各開口部23の平面形状は、それぞれ、平面視で略正方形である。すなわち、第1方向配線21と第2方向配線22とは互いに等間隔に配置されている。複数の第1方向配線21は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP1は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲であっても良い。また、複数の第2方向配線22は、互いに等間隔に配置され、そのピッチP2は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲であっても良い。このように、複数の第1方向配線21と複数の第2方向配線22とがそれぞれ等間隔に配置されていることにより、メッシュ配線層20内で開口部23の大きさにばらつきがなくなり、メッシュ配線層20を肉眼で視認しにくくできる。また、第1方向配線21のピッチP1は、第2方向配線22のピッチP2と等しい。このため、上述したように、各開口部23は、それぞれ平面視略正方形状となっており、各開口部23からは、透明性を有する基板11が露出している。このため、各開口部23の面積を広くすることにより、配線基板10全体としての透明性を高めることができる。なお、各開口部23の一辺の長さL3は、例えば0.01mm以上1mm以下の範囲であっても良い。なお、各第1方向配線21と各第2方向配線22とは、互いに直交しているが、これに限らず、互いに鋭角又は鈍角に交差していても良い。また、開口部23の形状は、全面で同一形状同一サイズとするのが好ましいが、場所によって変えるなど全面で均一としなくても良い。
【0070】
図5に示すように、各第1方向配線21は、その長手方向に垂直な断面(X方向断面)が略長方形又は略正方形となる形状を有している。この場合、第1方向配線21の断面形状は、第1方向配線21の長手方向(Y方向)に沿って略均一となっている。
図6に示すように、各第2方向配線22は、その長手方向に垂直な断面(Y方向断面)が略長方形又は略正方形であり、上述した第1方向配線21の断面(X方向断面)形状と略同一の形状を有している。この場合、第2方向配線22の断面形状は、第2方向配線22の長手方向(X方向)に沿って略均一となっている。第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とは、必ずしも略長方形又は略正方形でなくても良い。例えば、第1方向配線21の断面形状と第2方向配線22の断面形状とが、表面側(Z方向プラス側)が裏面側(Z方向マイナス側)よりも狭い略台形、あるいは、長手方向両側に位置する側面が湾曲した形状であっても良い。
【0071】
本実施の形態において、第1方向配線21の線幅W
1(
図5参照)及び第2方向配線22の線幅W
2(
図6参照)は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の線幅W
1は、その長手方向に垂直な断面における幅(X方向距離)であり、第2方向配線22の線幅W
2は、その長手方向に垂直な断面における幅(Y方向距離)である。例えば、第1方向配線21の線幅W
1は0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下とすることが好ましい。また、第2方向配線22の線幅W
2は、0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択でき、0.2μm以上2.0μm以下とすることが好ましい。
【0072】
第1方向配線21の高さH
1(
図5参照)及び第2方向配線22の高さH
2(
図6参照)は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。ここで、第1方向配線21の高さH
1及び第2方向配線22の高さH
2は、それぞれZ方向の長さである。第1方向配線21の高さH
1及び第2方向配線22の高さH
2は、それぞれ例えば0.1μm以上の範囲で選択でき、0.2μm以上であることが好ましい。第1方向配線21の高さH
1及び第2方向配線22の高さH
2は、それぞれ例えば5.0μm以下の範囲で選択でき、2.0μm以下であることが好ましい。
【0073】
第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、導電性を有する金属材料であれば良い。本実施の形態において第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は銅であるが、これに限定されない。第1方向配線21及び第2方向配線22の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。また、第1方向配線21及び第2方向配線22は、電解めっき法によって形成されためっき層であっても良い。
【0074】
メッシュ配線層20の全体の開口率Atは、例えば87%以上100%未満の範囲であっても良い。メッシュ配線層20の全体の開口率Atをこの範囲とすることにより、配線基板10の導電性と透明性を確保できる。メッシュ配線層20の全体の開口率Atは、95%以上100%未満であることが好ましい。これにより、配線基板10の導電性を確保しつつ、配線基板10の透明性を高くできる。なお、開口率とは、所定の領域(例えばメッシュ配線層20の全域)の単位面積に占める、開口領域の面積の割合(%)をいう。開口領域とは、第1方向配線21、第2方向配線22等の金属部分が存在せず、基板11が露出する領域をいう。
【0075】
なお、図示しないが、基板11の第1面11a上であって、メッシュ配線層20を覆うように保護層が形成されていても良い。保護層は、メッシュ配線層20を保護するものであり、基板11のうち少なくともメッシュ配線層20を覆うように形成される。保護層の材料としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂とそれらの変性樹脂と共重合体、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニル樹脂とそれらの共重合体、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、塩素化ポリオレフィン等の無色透明の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0076】
再度
図3を参照すると、メッシュ配線層20に、給電部40が電気的に接続されている。この給電部40は、略長方形の導電性の薄板状部材からなる。給電部40の長手方向はX方向に平行であり、給電部40の短手方向はY方向に平行である。
【0077】
また、給電部40は、基板11の長手方向端部(Y方向マイナス側端部)に配置されている。給電部40の材料は、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄若しくはニッケルなどの金属材料、又はこれらの金属を含む合金を用いることができる。
【0078】
この給電部40は、配線基板10が画像表示装置60(
図1及び
図2A参照)に組み込まれた際、給電線85を介して画像表示装置60の通信モジュール63と電気的に接続される。なお、給電部40は、基板11の第1面11aに設けられているが、これに限らず、給電部40の一部又は全部が基板11の周縁よりも外側に位置していても良い。また、給電部40を柔軟に形成することにより、給電部40が画像表示装置60の側面や裏面に回り込むように構成されていても良い。この場合、給電部40が、画像表示装置60の側面や裏面側で通信モジュール63と電気的に接続できても良い。
【0079】
給電部40には、Y方向プラス側において、メッシュ配線層20が電気的に接続されている。この場合、給電部40は、メッシュ配線層20と一体に形成されている。給電部40の厚みT
5(Z方向距離、
図6参照)は、第1方向配線21の高さH
1(
図5参照)及び第2方向配線22の高さH
2(
図6参照)と同一とすることができ、例えば0.1μm以上5.0μm以下の範囲で選択できる。
【0080】
次に、
図7を参照して、モジュールの構成について説明する。
図7は、本実施の形態によるモジュールを示す図である。
【0081】
図7に示すように、モジュール80Aは、上述した配線基板10と、異方性導電フィルム85cを介して、給電部40に電気的に接続された給電線85とを備えている。上述したように、モジュール80Aが画像表示装置60に組み込まれた際、配線基板10の給電部40は、給電線85を介して、画像表示装置60の通信モジュール63に電気的に接続される。
【0082】
給電線85は、異方性導電フィルム(ACF)85cを介して、配線基板10に圧着されている。異方性導電フィルム85cは、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料と、導電粒子85dとを含んでいる。図示された例においては、異方性導電フィルム85cは、給電部40の一部を覆っている。これにより、給電部40の腐食等を抑制できる。
【0083】
異方性導電フィルム85cは、給電部40に対向するように配置されている。そして、導電粒子85dの一部が、給電部40に接触している。これにより、給電線85が給電部40に電気的に接続されている。なお、異方性導電フィルム85cの一部は、給電線85を配線基板10に圧着する際に、給電線85の周囲に溶出していてもよい。また、導電粒子85dの粒径は、例えば、7μm程度であってもよい。
【0084】
給電線85は、例えば、フレキシブルプリント基板であってもよい。給電線85は、基材85aと、基材85aに積層された金属配線部85bとを有している。このうち、基材85aは、例えばポリイミド等の樹脂材料や液晶ポリマーを含んでいてもよい。金属配線部85bは、例えば、銅を含んでいてもよい。この金属配線部85bは、導電粒子85dを介して、給電部40と電気的に接続されている。
【0085】
[配線基板の製造方法、モジュールの製造方法及び画像表示装置用積層体の製造方法]
次に、
図8(a)-(f)、
図9(a)-(c)及び
図10(a)-(d)を参照して、本実施の形態による配線基板10の製造方法、モジュール80Aの製造方法及び画像表示装置60の製造方法について説明する。
図8(a)-(f)は、本実施の形態による配線基板10の製造方法を示す断面図である。
図9(a)-(c)は、本実施の形態によるモジュール80Aの製造方法を示す断面図である。
図10(a)-(d)は、本実施の形態による画像表示装置60の製造方法を示す断面図である。
【0086】
まず、
図8(a)-(f)を参照して、本実施の形態による配線基板の製造方法について説明する。
【0087】
まず、
図8(a)に示すように、第1面11aと第1面11aの反対側に位置する第2面11bとを含む基板11を準備する。基板11は、透明性を有する。
【0088】
次に、基板11の第1面11a上に、メッシュ配線層20と、メッシュ配線層20に電気的に接続された給電部40とを形成する。
【0089】
この際、まず、
図8(b)に示すように、基板11の第1面11aの略全域に金属箔51を積層する。本実施の形態において金属箔51の厚さは、0.1μm以上5.0μm以下であっても良い。本実施の形態において金属箔51は、銅を含んでいても良い。
【0090】
次に、
図8(c)に示すように、金属箔51の表面の略全域に光硬化性絶縁レジスト52を供給する。この光硬化性絶縁レジスト52としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ系樹脂等の有機樹脂が挙げられる。
【0091】
続いて、
図8(d)に示すように、絶縁層54をフォトリソグラフィ法により形成する。この場合、フォトリソグラフィ法により光硬化性絶縁レジスト52をパターニングし、絶縁層54(レジストパターン)を形成する。この際、第1方向配線21及び第2方向配線22に対応する金属箔51が露出するように、絶縁層54を形成する。
【0092】
次に、
図8(e)に示すように、基板11の第1面11a上の、絶縁層54に覆われていない部分に位置する金属箔51を除去する。この際、塩化第二鉄、塩化第二銅、硫酸・塩酸等の強酸、過硫酸塩、過酸化水素若しくはこれらの水溶液、又はこれらの組合せ等を用いたウェット処理を行うことによって、基板11の第1面11aが露出するように金属箔51をエッチングする。
【0093】
続いて、
図8(f)に示すように、絶縁層54を除去する。この場合、過マンガン酸塩溶液やN-メチル-2-ピロリドン、酸又はアルカリ溶液等を用いたウェット処理や、酸素プラズマを用いたドライ処理を行うことによって、金属箔51上の絶縁層54を除去する。
【0094】
このようにして、基板11と、基板11の第1面11a上に設けられたメッシュ配線層20とを有する配線基板10が得られる。この場合、メッシュ配線層20は、第1方向配線21及び第2方向配線22を含む。このとき、金属箔の一部によって、給電部40が形成されても良い。あるいは、平板状の給電部40を別途準備し、この給電部40をメッシュ配線層20に電気的に接続しても良い。
【0095】
次に、
図9(a)-(c)を参照して、本実施の形態によるモジュールの製造方法について説明する。
【0096】
まず、
図9(a)に示すように、配線基板10を準備する。この際、例えば、
図8(a)-(f)に示す方法により、配線基板10を作製する。
【0097】
次に、導電粒子85dを含む異方性導電フィルム85cを介して、給電線85を給電部40に電気的に接続する。この際、まず、
図9(b)に示すように、配線基板10上に、異方性導電フィルム85c及び給電線85を配置する。このとき、異方性導電フィルム85cは、給電線85と給電部40との間に配置される。
【0098】
次いで、
図9(c)に示すように、給電線85を配線基板10に圧着させる。このとき、給電線85に対して圧力及び熱を加えることにより、給電線85を配線基板10に圧着させる。そして、導電粒子85dの一部が、給電部40に接触する。このようにして、給電線85が給電部40に電気的に接続される。このとき、異方性導電フィルム85cの一部が、給電線85の周囲に溶出し得る。
【0099】
このようにして、配線基板10と、導電粒子85dを含む異方性導電フィルム85cを介して、給電部40に電気的に接続された給電線85と、を備えるモジュール80Aが得られる。
【0100】
次に、
図10(a)-(d)を参照して、本実施の形態による画像表示装置60の製造方法について説明する。
【0101】
この際、まず、
図10(a)に示すように、例えば、カバーガラス75及び加飾層74と、第1透明接着層95とを互いに積層する。このとき、第1透明接着層95として、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を使用しても良い。この硬化性接着層用組成物には、極性基含有モノマーが含まれていても良い。カバーガラス75及び加飾層74と、第1透明接着層95とを互いに積層する際、例えば、第1透明接着層95が60℃程度となるように、第1透明接着層95等を加熱しても良い。
【0102】
次に、
図10(b)に示すように、第1透明接着層95にモジュール80Aの配線基板10を積層する。
【0103】
次に、
図10(c)に示すように、配線基板10に、第2透明接着層96を積層する。このとき、第2透明接着層96として、重合性化合物を含む液状の硬化性接着層用組成物を使用しても良い。この硬化性接着層用組成物には、極性基含有モノマーが含まれていても良い。このように、配線基板10に第2透明接着層96を積層することにより、第1透明接着層95と第2透明接着層96とによって配線基板10が挟み込まれる。このようにして、第1透明接着層95と、第2透明接着層96と、配線基板10と、を備える画像表示装置用積層体70が得られる。配線基板10に、第2透明接着層96を積層する際、例えば、第1透明接着層95及び第2透明接着層96が60℃程度となるように、第1透明接着層95等を加熱しても良い。
【0104】
次いで、
図10(d)に示すように、第2透明接着層96に表示装置61を積層する。このとき、例えば、第1透明接着層95及び第2透明接着層96が60℃程度となるように、第1透明接着層95等を加熱しても良い。
【0105】
ここで、上述したように、第1透明接着層95及び第2透明接着層96のうちの少なくとも一方が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含んでいる。また、硬化後の軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料は、硬化前の軟化点が、約25℃以上約50℃以下になり得る。このように、第1透明接着層95等の材料が、硬化前の軟化点が25℃以上50℃以下の樹脂材料である場合、第1透明接着層95等を60℃程度に加熱下際に、樹脂材料の流動性が高くなる。このため、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61が配線基板10と重なる領域で第1透明接着層95及び第2透明接着層96が厚み方向に変形し、配線基板10の厚みを吸収する。これにより、配線基板10の周縁において第2透明接着層96に段差が生じることを抑えることができる。このため、第2透明接着層96に生じた段差に起因して、表示装置61が変形してしまうことを抑制できる。
【0106】
次に、例えば、紫外線(UV)等を用いて、第1透明接着層95及び第2透明接着層96を硬化させる。
【0107】
このようにして、画像表示装置用積層体70と、画像表示装置用積層体70に積層された表示装置61と、を備える画像表示装置60が得られる。
【0108】
[本実施の形態の作用]
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0109】
図1及び
図2Aに示すように、配線基板10は、表示装置61を有する画像表示装置60に組み込まれる。このとき配線基板10は、表示装置61上に配置される。配線基板10のメッシュ配線層20は、給電部40及び給電線85を介して画像表示装置60の通信モジュール63に電気的に接続される。このようにして、メッシュ配線層20を介して、所定の周波数の電波を送受信でき、画像表示装置60を用いて通信を行うことができる。
【0110】
本実施の形態によれば、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間の一部領域に、基板11の一部領域が配置されている。また、基板11の屈折率と第1透明接着層95の屈折率との差が、0.05以下であり、基板11の屈折率と第2透明接着層96の屈折率との差が、0.05以下である。これにより、基板11と第1透明接着層95との界面B1及び基板11と第2透明接着層96との界面B2での可視光の反射を抑え、基板11を観察者の肉眼で視認しにくくできる。さらに、第1透明接着層95及び第2透明接着層96のうちの少なくとも一方が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含んでいる。これにより、樹脂材料の流動性を高くでき、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61が変形してしまうことを抑制できる。
【0111】
ここで、第1透明接着層95等を構成する樹脂材料の流動性が低い場合、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61に対して、局所的に大きな力が加えられてしまう可能性がある。上述したように、本実施の形態では、第1透明接着層95と第2透明接着層96との間の一部領域に、基板11の一部領域が配置されている。また、表示装置61の剛性は、カバーガラス75の剛性よりも低くなり得る。このため、比較例として、第1透明接着層95等を構成する樹脂材料の流動性が低い場合、配線基板10の厚みに起因して、配線基板10の周縁において第2透明接着層96に段差が生じるおそれがある。このように、配線基板10の周縁において第2透明接着層96に段差が生じた場合、第2透明接着層96に生じた段差に起因して、表示装置61が変形する可能性がある(
図11参照)。
【0112】
これに対して本実施の形態によれば、第1透明接着層95及び第2透明接着層96のうちの少なくとも一方が、軟化点が50℃以上200℃以下の樹脂材料を含んでいる。これにより、第1透明接着層95等を構成する樹脂材料の流動性を高くできる。このため、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61に対して、第1透明接着層95等を構成する樹脂材料から、局所的に大きな力が加えられてしまうことを抑制できる。この結果、第1透明接着層95等に表示装置61を積層する際に、表示装置61が変形してしまうことを抑制できる。このため、配線基板10の存在を観察者が認識しにくくできる。
【0113】
また、本実施の形態によれば、配線基板10が、基板11と、基板11上に配置されたメッシュ配線層20とを備えている。また、基板11が、透明性を有する。さらに、メッシュ配線層20が、不透明な導電体層の形成部としての導体部と、多数の開口部とによるメッシュ状のパターンとを有している。このため、配線基板10の透明性が確保されている。これにより、配線基板10が表示装置61上に配置されたとき、メッシュ配線層20の開口部23から表示装置61を視認でき、表示装置61の視認性が妨げられることがない。
【0114】
次に、配線基板の変形例について説明する。
【0115】
図12及び
図13は、配線基板の第1変形例を示している。
図12及び
図13に示す変形例は、メッシュ配線層20の周囲にダミー配線層30が設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図11に示す形態と略同一である。
図12及び
図13において、
図1乃至
図11に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0116】
図12に示す配線基板10において、メッシュ配線層20の周囲に沿ってダミー配線層30が設けられている。このダミー配線層30は、メッシュ配線層20とは異なり、実質的にアンテナとしての機能を果たすことはない。
【0117】
図13に示すように、ダミー配線層30は、所定のパターン形状をもつダミー配線30aの繰り返しから構成されている。すなわち、ダミー配線層30は、複数のダミー配線30aを含んでおり、各ダミー配線30aは、それぞれメッシュ配線層20(第1方向配線21及び第2方向配線22)から電気的に独立している。また、複数のダミー配線30aは、ダミー配線層30内の全域にわたって規則的に配置されている。複数のダミー配線30aは、互いに平面方向に離間するとともに、基板11上に突出して配置されている。すなわち各ダミー配線30aは、メッシュ配線層20、給電部40及び他のダミー配線30aから電気的に独立している。各ダミー配線30aの形状は、それぞれ平面視で略L字形である。
【0118】
この場合、ダミー配線30aは、上述したメッシュ配線層20のパターン形状の一部が欠落した形状をもつ。これにより、メッシュ配線層20とダミー配線層30との相違を目視で認識しにくくでき、基板11上に配置されたメッシュ配線層20を見えにくくできる。
図13に示すように、ダミー配線30aは、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びている。具体的には、ダミー配線30aは、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31aと、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32aとを含んでいる。このように、ダミー配線30aが、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びていることにより、基板11上に配置されたメッシュ配線層20をさらに見えにくくできる。ダミー配線層30の開口率は、メッシュ配線層20の開口率と同一であっても良く、異なっていても良いが、メッシュ配線層20の開口率に近いことが好ましい。
【0119】
本変形例のように、メッシュ配線層20の周囲に、メッシュ配線層20から電気的に独立したダミー配線層30が設けられていることにより、メッシュ配線層20の外縁を不明瞭にできる。これにより、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20を見えにくくでき、画像表示装置60の使用者がメッシュ配線層20を肉眼で認識しにくくできる。
【0120】
図14及び
図15は、配線基板の第2変形例を示している。
図14及び
図15に示す変形例は、メッシュ配線層20の周囲に互いに開口率が異なる複数のダミー配線層30A、30Bが設けられている点が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図13に示す形態と略同一である。
図14及び
図15において、
図1乃至
図13に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0121】
図14に示す配線基板10において、メッシュ配線層20の周囲に沿って互いに開口率が異なる複数(この場合は2つ)のダミー配線層30A、30B(第1ダミー配線層30A及び第2ダミー配線層30B)が設けられている。具体的には、メッシュ配線層20の周囲に沿って第1ダミー配線層30Aが配置され、第1ダミー配線層30Aの周囲に沿って第2ダミー配線層30Bが配置されている。このダミー配線層30A、30Bは、メッシュ配線層20とは異なり、実質的にアンテナとしての機能を果たすことはない。
【0122】
図15に示すように、第1ダミー配線層30Aは、所定のパターン形状をもつダミー配線30a1の繰り返しから構成されている。また、第2ダミー配線層30Bは、所定のパターン形状をもつダミー配線30a2の繰り返しから構成されている。すなわち、ダミー配線層30A、30Bは、それぞれ複数のダミー配線30a1、30a2を含んでおり、各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれメッシュ配線層20から電気的に独立している。また、ダミー配線30a1、30a2は、それぞれダミー配線層30A、30B内の全域にわたって規則的に配置されている。各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれ互いに平面方向に離間するとともに、基板11上に突出して配置されている。各ダミー配線30a1、30a2は、それぞれメッシュ配線層20、給電部40及び他のダミー配線30a1、30a2から電気的に独立している。各ダミー配線30a1、30a2の形状は、それぞれ平面視で略L字形である。
【0123】
この場合、ダミー配線30a1、30a2は、上述したメッシュ配線層20のパターン形状の一部が欠落した形状をもつ。これにより、メッシュ配線層20と第1ダミー配線層30Aとの相違、及び、第1ダミー配線層30Aと第2ダミー配線層30Bとの相違を目視で認識しにくくでき、基板11上に配置されたメッシュ配線層20を見えにくくできる。
図15に示すように、ダミー配線30a1、30a2は、第1方向配線21又は第2方向配線22に平行に延びている。具体的には、ダミー配線30a1は、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31a1と、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32a1とを含んでいる。ダミー配線30a2は、第1方向配線21と平行に延びる第1部分31a2と、第2方向配線22と平行に延びる第2部分32a2とを含んでいる。
【0124】
なお、第1ダミー配線層30Aの各ダミー配線30a1の面積は、第2ダミー配線層30Bの各ダミー配線30a2の面積よりも大きい。この場合、各ダミー配線30a1の線幅は各ダミー配線30a2の線幅と同一であるが、これに限らず、各ダミー配線30a1の線幅は各ダミー配線30a2の線幅よりも太くても良い。なお、ダミー配線30a1、30a2のその他の構成は、第3変形例におけるダミー配線30aの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0125】
本変形例では、メッシュ配線層20及び複数のダミー配線層30A、30Bの開口率は、メッシュ配線層20から、メッシュ配線層20に遠いダミー配線層30A、30Bに向けて段階的に大きくなっていることが好ましい。言い換えれば、各ダミー配線層の開口率は、メッシュ配線層20に近いものから遠いものに向けて、徐々に大きくなることが好ましい。この場合、第1ダミー配線層30Aの開口率は、メッシュ配線層20の開口率よりも大きいことが好ましい。第2ダミー配線層30Bの開口率は、第1ダミー配線層30Aの開口率よりも大きいことが好ましい。これにより、メッシュ配線層20及びダミー配線層30A、30Bの外縁をさらに不明瞭にできる。このため、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20をさらに見えにくくできる。
【0126】
このように、メッシュ配線層20から電気的に独立したダミー配線層30A、30Bが配置されていることにより、メッシュ配線層20の外縁をより不明瞭にできる。これにより、画像表示装置60の表面上でメッシュ配線層20を見えにくくでき、画像表示装置60の使用者がメッシュ配線層20を肉眼で認識しにくくできる。なお、メッシュ配線層20の周囲に、互いに開口率が異なる3つ以上のダミー配線層が設けられていても良い。
【0127】
図16は、配線基板の第3変形例を示している。
図16に示す変形例は、メッシュ配線層20の平面形状が異なるものであり、他の構成は上述した
図1乃至
図15に示す形態と略同一である。
図16において、
図1乃至
図15に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0128】
図16において、第1方向配線21と第2方向配線22とは、斜め(非直角)に交わっており、各開口部23は、平面視で菱形状に形成されている。第1方向配線21及び第2方向配線22は、それぞれX方向及びY方向のいずれにも平行でないが、第1方向配線21及び第2方向配線22のうちのいずれか一方がX方向又はY方向に平行であっても良い。
【0129】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0130】
(実施例1)
図2Aに示す構成をもつ画像表示装置60を作製した。
【0131】
このとき、配線基板10の基板11は、厚み13μmのシクロオレフィンポリマー製基板を用いた。基板11の屈折率は、1.535であった。
【0132】
また、第1透明接着層95及び第2透明接着層96として、厚み100μmのアクリル系樹脂製のOCA層を用いた。このとき、第1透明接着層95及び第2透明接着層96を構成する樹脂材料として、硬化性接着層用組成物を用いた。具体的には、第1透明接着層95及び第2透明接着層96を構成する樹脂材料として、硬化前の軟化点が40℃の樹脂材料を用いた。第1透明接着層95及び第2透明接着層96の硬化後の軟化点は、100℃であった。第1透明接着層95及び第2透明接着層96の軟化点は、nanoTA測定により測定した。nanoTA測定では、走査型プローブ顕微鏡(Anasys Instruments社製、nanoTA)を使用した。このとき、プローブは、Anasys Instruments社製、PR-EXP-AN2-300-5を使用した。また、第1透明接着層95及び第2透明接着層96の屈折率は、それぞれ1.534であった。
【0133】
次いで、視認性評価試験を行った。視認性評価試験では、画像表示装置における配線基板の視認性を確認した。具体的には、画像表示装置を、発光面側及び発光面とは反対側から観察し、配線基板10の視認性を確認した。
【0134】
(比較例1)
第1透明接着層95及び第2透明接着層96の材料として、硬化性樹脂ではない樹脂材料を用いたこと、第1透明接着層95及び第2透明接着層96の軟化点が270℃であったこと、第1透明接着層95及び第2透明接着層96の屈折率が、それぞれ1.531であったこと、以外は、実施例1と同様にして、視認性評価試験を行った。
【0135】
以上の結果を表1乃至表4に示す。表4において、「A(excellent)」は、配線基板10の周縁において表示装置61に変形(歪み)が生じていなかったことを意味する。また、「B(poor)」は、配線基板10の周縁において表示装置61に変形(歪み)が生じていたこと意味する。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
この結果、表1に示すように、比較例1では、配線基板10の周縁において表示装置61に変形(歪み)が生じていた。これに対して、実施例1では、配線基板10の周縁において表示装置61に変形(歪み)が生じていなかった。このため、本実施の形態による画像表示装置60では、配線基板10の存在を観察者が認識しにくくできることがわかった。
【0141】
上記実施の形態及び各変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。