(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140634
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空気抜き装置
(51)【国際特許分類】
F16K 24/00 20060101AFI20241003BHJP
F16K 24/02 20060101ALI20241003BHJP
F16K 24/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F16K24/00 G
F16K24/02
F16K24/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051869
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山岸 秀規
【テーマコード(参考)】
3H055
【Fターム(参考)】
3H055AA11
3H055AA22
3H055BA17
3H055BA18
3H055CC03
3H055CC06
3H055GG01
3H055GG37
(57)【要約】
【課題】異物が混入した液体に対して送水管用空気弁を使用した場合であっても、フロート弁体の動作が悪くなることがない空気抜き装置を提供すること。
【解決手段】液体が輸送される液体輸送配管又は前記液体が貯蔵される液体貯槽に設置される空気抜き装置であって、圧力により変形するダイヤフラムによって分割されたケーシング上室とケーシング下室とを有する筒状のケーシングと、前記ケーシング下室と前記ケーシングの外部とを連通する管状の空気孔と、前記ケーシング下室と前記ケーシング上室とを連結し、溢流部を有する均圧管と、前記ケーシング上室の側面であって前記均圧管と前記ケーシング上室との接続部よりも低い位置の側面と、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の上部と、を連結する接続配管を備え、前記ダイヤフラムは、その変形時において前記空気孔の前記ケーシング下室の開口部を閉止可能である空気抜き装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が輸送される液体輸送配管又は前記液体が貯蔵される液体貯槽に設置される空気抜き装置であって、
圧力により変形するダイヤフラムによって分割されたケーシング上室とケーシング下室とを有する筒状のケーシングと、
前記ケーシング下室と前記ケーシングの外部とを連通する管状の空気孔と、
前記ケーシング下室と前記ケーシング上室とを連結し、溢流部を有する均圧管と、
前記ケーシング上室の側面であって前記均圧管と前記ケーシング上室との接続部よりも低い位置の側面と、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の上部と、を連結する接続配管と、を備え、
前記ダイヤフラムは、その変形時において前記空気孔の前記ケーシング下室の開口部を閉止可能である、空気抜き装置。
【請求項2】
前記溢流部は、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する前記液体が前記ケーシング上室に流入した場合における前記液体の液面の位置よりも高い位置に設置されている、請求項1に記載の空気抜き装置。
【請求項3】
前記液面の位置は、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する前記液体が前記ケーシング上室に流入液体が流入することにより前記ダイヤフラムが前記ケーシング下室の方向に変形し、前記空気孔が閉止され始めた時点tiでの前記空気抜き装置に存在する空気の体積を初期体積Viとし、
前記初期体積Viの前記空気を前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する液体の圧力となるまで加圧したとした場合の加圧後体積をVpとするとき、
前記初期体積Viと前記加圧後体積Vpとの体積差Vi-Vpに相当する前記液体が前記ケーシング上室に流入した場合の液面の位置である、請求項2に記載の空気抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気抜き装置に関する。特に、本発明は、シール部を液体から隔離した形態を備えた、液体輸送配管や液体貯槽に設置される空気抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの液体を輸送するための配管にその外部からその内部に空気が侵入する場合がある。配管の内部に侵入した空気がそのまま内部に滞留する場合には、配管の流路が狭くなる。また、液体を貯留する貯槽にその外部からその内部に空気が侵入する場合がある。配管の内部に侵入した空気がそのまま内部に滞留する場合には、当該配管の輸送可能量が減少する。また、貯槽の内部に侵入した空気がそのまま内部に滞留する場合には、当該貯槽の貯蔵可能量が減少する。このように配管等の内部にその外部から空気が侵入してそのまま内部に滞留する場合には、配管や貯槽を有効に利用することができないという問題が発生する。
【0003】
配管等の内部に空気が滞留することを防止するために、配管等の内部に滞留している空気を外部に排出するいわゆる「空気抜き」を実施する必要がある。一般的に空気抜きは、空気が滞留している配管の頭頂部又は貯槽の頭頂部に空気抜き弁を設け、操作者が当該空気抜き弁を操作することによって実行される。
【0004】
しかしながら、配管の配管長が長いため配管に空気抜きが必要な箇所が多い場合には、自動で空気抜きを実施することができる自動空気抜き装置を用いて、多くの箇所について空気抜きを行う必要がある。同様に、大型の貯槽であるため貯槽に空気抜きが必要な箇所が多い場合にも、多くの箇所について空気抜きを行う必要がある。
【0005】
特に、配管を新設する場合を考えると、工事等で空になった配管の内部に液体を流通させる場合等には、配管の内部に滞留している多量の空気を配管の外部に排出する必要がある。しかも、配管に存在する空気抜きが必要な多くの箇所において、同時に空気抜きが必要となる場合がある。このため、配管に存在する空気抜きが必要な多くの箇所で同時に空気抜きを行うために人手を介さずに自動空気抜き装置を用いて、自動で配管の内部に滞留している空気の空気抜きを行うことが望ましい。
【0006】
このような観点から、自動空気抜き装置として、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易な送水管用空気弁が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された送水管用空気弁は、フロート弁体がケーシング内で浮き上がることでケーシング上部の空気孔を塞ぎ、当該空気孔がシールされる構造として知られている。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載された送水管用空気弁は、送水管に接続される弁蓋、弁蓋に設けられ弁蓋の上方と下方とを連通する第1開口部、第1開口部に摺動可能に設けられその上方と下方とを連通する第2開口部を有する第1摺動体、第2開口部に摺動可能に設けられる第2摺動体、第2摺動体の下部に設けられるフロート、第2開口部より外側に形成され弁蓋の上方と下方とを連通する第1空気路、第2開口部の内側に形成され弁蓋の上方と下方とを連通する第2空気路、第1空気路の連通を遮断する第1弁体、および第2空気路の連通を遮断する第2弁体を備える。かかる送水管用空気弁は、水に浸かる部分の構造をシンプルにできるので、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易となり、空気路を直線状に形成することもできるので、よりシンプルな構造とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。すなわち、特許文献1に記載された送水管用空気弁は、管等の内部に滞留した空気の有無によりフロート弁体が上下移動して自動で空気をその外部に排出することにより空気を抜くため、操作者がフロート弁体を操作する手間を省くことができる。その一方、汚水等、異物が混入した液体に対して送水管用空気弁を使用すると、フロート弁体の動作が悪くなったり、シール部の密閉性を損なったりしてフロート弁体の動作不良が発生するという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、異物が混入した液体に対して送水管用空気弁を使用した場合であっても、シール部が液体に直接接触しないように当該シール部を液体から隔離させることによって、フロート弁体の動作が悪くなることがない空気抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく、種々実験を重ねた結果、シール部が液体に直接接触しないように液体から隔離することにより、汚水など異物が混ざった液体を配管により輸送しても、または、貯槽により貯蔵してもフロートの動作が悪くなること、シール部の密閉性が損なわれることがないという知見を見出した。本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0012】
すなわち、上記課題を有利に解決する本発明に係る空気抜き装置は、液体が輸送される液体輸送配管又は前記液体が貯蔵される液体貯槽に設置される空気抜き装置であって、圧力により変形するダイヤフラムによって分割されたケーシング上室とケーシング下室とを有する筒状のケーシングと、前記ケーシング下室と前記ケーシングの外部とを連通する管状の空気孔と、前記ケーシング下室と前記ケーシング上室とを連結し、溢流部を有する均圧管と、前記ケーシング上室の側面であって前記均圧管と前記ケーシング上室との接続部よりも低い位置の側面と、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の上部と、を連結する接続配管と、を備え、前記ダイヤフラムは、その変形時において前記空気孔の前記ケーシング下室の開口部を閉止可能であることを特徴とする。
【0013】
なお、本発明に係る空気抜き装置は、
(a)前記溢流部は、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する前記液体が前記ケーシング上室に流入した場合における前記液体の液面の位置よりも高い位置に設置されていること、
(b)前記液面の位置は、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する前記液体が前記ケーシング上室に流入液体が流入することにより前記ダイヤフラムが前記ケーシング下室の方向に変形し、前記空気孔が閉止され始めた時点tiでの前記空気抜き装置に存在する空気の体積を初期体積Viとし、前記初期体積Viの前記空気を前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する液体の圧力となるまで加圧したとした場合の加圧後体積をVpとするとき、前記初期体積Viと前記加圧後体積Vpとの体積差Vi-Vpに相当する前記液体が前記ケーシング上室に流入した場合の液面の位置であること、などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る空気抜き装置は、液体がケーシング内のダイヤフラムより上の部分に位置するケーシング上室に流入することにより、ダイヤフラムが下方向に変形して、ダイヤフラム下の部分に位置するダイヤフラム下室の空気孔を塞ぐ構造である。このため、本発明に係る空気抜き装置は、フロートが動作不良を起こす心配がない。
【0015】
また、本発明に係る空気抜き装置は、空気孔やシール部が液体に直接接触しないように液体から隔離されているため、液体に含まれる異物を噛み込むことがなく、シール部の密閉性が損なわれ難く、当該シール部のシール不良も発生し難いという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る空気抜き装置の概要を示した断面図である。
【
図2】本実施形態に係る空気抜き装置が備えているケーシングの内部に存在する空気のケーシングの外部への流通が停止した状態を示した断面図である。
【
図3-1】本実施形態に係る空気抜き装置が備えている均圧管が有する溢流部の一例を示した断面図である。
【
図3-2】本実施形態に係る空気抜き装置が備えている均圧管が有する溢流部の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る空気抜き装置について説明する。本実施形態に係る空気抜き装置は、液体が輸送される液体輸送配管又は前記液体が貯蔵される液体貯槽に設置される。本実施形態に係る空気抜き装置は、圧力により変形するダイヤフラムによって分割されたケーシング上室とケーシング下室とを有する筒状のケーシングと、前記ケーシング下室と前記ケーシングの外部とを連通する管状の空気孔と、前記ケーシング下室と前記ケーシング上室とを連結し、溢流部を有する均圧管と、前記ケーシング上室の側面であって前記均圧管と前記ケーシング上室との接続部よりも低い位置の側面と、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の上部とを連結する接続配管と、を備え、前記ダイヤフラムは、その変形時において前記空気孔の前記ケーシング下室の開口部を閉止可能である。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る空気抜き装置が備えている各部材について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る空気抜き装置の概要を示した断面図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る空気抜き装置100は、ケーシング101を備える。ケーシング101は、ダイヤフラム102によって分割されたケーシング上室111とケーシング下室112とを有する。空気抜き装置100は、ケーシング下室112とケーシング101の外部とを連通する管状の空気孔103と、ケーシング下室112とケーシング上室111とを連結する均圧管104とを備える。さらに、空気抜き装置100は、ケーシング上室111の側面であって均圧管104とケーシング上室111との接続部113よりも低い位置のケーシング外側面114と当該空気抜き装置100が設置される液体輸送配管200の上部とを連結する接続配管105を備える。
【0019】
本実施形態に係る空気抜き装置100は、液体輸送配管200に設置される。空気抜き装置100は、液体輸送配管200に接続される。接続配管105の上端151がケーシング上室111に接続され、接続配管105の下端152が液体輸送配管200の上部に接続されることによって、空気抜き装置100は、液体輸送配管200に接続される。液体輸送配管200の上部は、輸送される液体Lによって満たされておらず、液体輸送配管200の外部から侵入した空気Gによって満たされている。このため、液体輸送配管200の上部に滞留している空気Gを液体輸送配管200の外部に排出するために空気抜き装置100が用いられる。
【0020】
なお、本実施形態に係る空気抜き装置100は、液体Lが輸送される配管である液体輸送配管200のみならず、液体Lが貯蔵される液体貯槽(図示せず)に設置されてもよい。ここでは、空気抜き装置100が液体輸送配管200に設置された実施形態について説明をする。
【0021】
本実施形態に係る空気抜き装置100において、空気抜き装置100が設置される液体輸送配管200によって輸送される液体L又は液体貯槽によって貯蔵される液体Lは、液状であればよく、液体のみならず、液体中に鉱物や汚泥等を含んでいるスラリー等であってもよい。具体的に、液体輸送配管200によって輸送される液体L、又は液体貯槽に貯蔵される液体Lとしては、例えば、水、排水、汚水等の異物が混ざった液体、原油、液体燃料等を挙げることができる。
【0022】
空気抜き装置100は、ケーシング101を備えている。ケーシング101の形状は、筒状、好ましくは円筒状である。ケーシング101は、ケーシング101の上方に位置するケーシング上室111とケーシング101の下方に位置するケーシング下室112とから構成されている。ケーシング101を構成する材料は、耐圧性、耐久性及び加工性に優れた材料であればよく、例えば、ポリエチレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ステンレス、アルミ合金、スチールから構成されていてもよい。
【0023】
ケーシング101は、その内部にダイヤフラム102を有している。ダイヤフラム102は、ケーシング101の内部をケーシング101の上方に位置するケーシング上室111とケーシング下室112に分割する。ダイヤフラム102は、ケーシング101を構成するケーシング上室111側から受ける圧力によって、ケーシング下室112側に変形可能となっている。ダイヤフラム102は、接続配管105を経由して液体輸送配管200から流入した液体Lの重量によって、ケーシング下室112側に変形する。
【0024】
ダイヤフラム102は、ケーシング上室111とケーシング下室112との境界面を形成している。ダイヤフラム102は、ケーシング上室111とケーシング下室112とから形成される上下空間において接続配管105を経由して液体輸送配管200から流入する液体Lの流通と空気孔103から流入した気体の流通とを防止する機能を有する。ダイヤフラム102は、当該ダイヤフラム102の端縁部121をケーシング内側面115に固定するための固定部116を有している。固定部116は、ケーシング上室111とケーシング下室112側から形成される上下間において液体L及び気体の侵入を防止するためにダイヤフラム102の端縁部121をシールする。
【0025】
ダイヤフラム102は、ケーシング101をケーシング上室111とケーシング下室112とに分割する。ダイヤフラム102は、以下の形態を採用することによって、ケーシング101をケーシング上室111とケーシング下室112とに分割してもよい。ケーシング上室111の下端部をフランジ状に加工することによって、ケーシング上室フランジ117を形成する。ケーシング下室112の上端部をフランジ状に加工することによって、ケーシング下室フランジ118を形成する。ダイヤフラム102は、ケーシング上室フランジ117とケーシング下室フランジ118とによって挟み込まれて固定される。
【0026】
ダイヤフラム102は、気体G及び液体Lが透過しない材料で形成されている。ダイヤフラム102は、ケーシング上室111に流入した液体Lの重量によって柔軟に変形することができるものが好ましい。ダイヤフラム102は、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)等からなる合成樹脂からなる薄膜と、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)等のゴムからなるゴム薄膜との二層構造であってもよい。ダイヤフラム102が合成樹脂からなる薄膜とゴム薄膜との二層構造であれば、ケーシング101を構成するケーシング上室111の内部に流入した液体Lの重量により、ダイヤフラム102が柔軟に変形することができるため好ましい。
【0027】
空気抜き装置100は、空気孔103を備えている。空気孔103は、ケーシング下室112のケーシング底部119に設置されている。空気孔103は、均圧管104を経由して流入する空気Gが通過することができる形態であればよく、例えば、管状構造を有していてもよい。空気孔103は、ケーシング下室112の内部とケーシング101の外部とを連通する。空気孔103は、上端開口部131と下端開口部132とを有する。空気孔103の上端に位置する環状の上端開口部131は、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123に対向している。空気孔103の下端に位置する環状の下端開口部132は、ケーシング101の外部に対向している。空気孔103の下端に位置する下端開口部132は、ケーシング101の外部に対して開放されている。このため、ケーシング下室112の内部の圧力は、大気圧と等しくなっている。
【0028】
空気孔103の上端に位置する上端開口部131は、ダイヤフラム102がケーシング101の下方に位置するケーシング下室112の方向に凸状に変形すると、当該ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123と密着する。このように、空気孔103は、空気孔103の上端に位置する上端開口部131を閉止可能となるように、当該ダイヤフラム102に対向して設置されている。なお、空気孔103の直径は、ケーシング101の直径の1/2~1/4であることが好ましく、1/3であることが特に好ましい。
【0029】
ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123が空気孔103の上端開口部131と密着して当該空気孔103を完全にシールした状態において、ダイヤフラム102のダイヤフラム上面122は、ケーシング上室111からの圧力を受ける。一方、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123のうち、空気孔103の下端に位置する下端開口部132と対向している面は、大気圧を受ける。また、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123のうち、空気孔103の下端に位置する下端開口部132の外側となる面は、ケーシング下室112の圧力を受ける。したがって、ケーシング上室111とケーシング下室112の圧力が等しく、大気圧以上である場合には、空気孔103の面積が大きい程、ケーシング下室112から圧力を受けるダイヤフラム下面123の面積が減少する。その結果、ダイヤフラム102は、ダイヤフラム102が密着している空気孔103の上端開口部131に強く押し付けられる。
【0030】
空気抜き装置100は、均圧管104を備えている。均圧管104は、ケーシング101のケーシング上室111とケーシング101のケーシング下室112とを連結する。均圧管104の上端部142は、ケーシング上室111の上面に接続されていることが好ましい。均圧管104の下端部143は、ケーシング下室112の側面に接続されていることが好ましい。均圧管104は、液体輸送配管200から接続配管105を経由して流入した空気Gがケーシング上室111からケーシング下室112に移動することができるように構成されている。均圧管104とケーシング101のケーシング上室111とが連結されている位置は、ケーシング101のケーシング上室111と接続配管105とが接続されている位置よりも高い位置であることが好ましい。均圧管104とケーシング101のケーシング下室112とが連結されている位置は、ケーシング101のケーシング上室111と接続配管105とが接続されている位置よりも低い位置であることが好ましい。
【0031】
空気抜き装置100は、接続配管105を備えている。接続配管105は、ケーシング上室111と、ケーシング上室111の下方であってケーシング下室112の上方に位置しており、ケーシング101と液体輸送配管200とを連結する。接続配管105は、その一端にケーシング上室111に接続される接続配管上端151を有し、他の一端に液体輸送配管200に接続される接続配管下端152を有している。すなわち、接続配管105の接続配管上端151がケーシング101のケーシング上室111の下方近傍に連結されている。さらに、接続配管105の接続配管下端152が液体輸送配管200の上方近傍に連結されている。接続配管105は、液体輸送配管200の内部に貯蔵されている液体L及び液体輸送配管200の内部に滞留している空気Gをケーシング101のケーシング上室111に流入可能とすることができる。
【0032】
以下、本実施形態に係る空気抜き装置100に液体Lが流れる液体輸送配管200の内部に滞留している空気Gが液体輸送配管200の外部に排出される機構について説明する。併せて、液体輸送配管200の内部に滞留している空気Gが液体輸送配管200の外部に排出された後において、当該空気Gがケーシング101に再び流入しないようにシールされる機構についても説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る空気抜き装置100が設置された液体輸送配管200の内部に液体Lが流れており、かつ液体輸送配管200の上部に空気Gが滞留している状態Iを示している。この状態Iは、例えば、液体輸送配管200の補修や液体輸送配管200の新設等により、一旦空となった液体輸送配管200の内部に液体Lを新たに供給する場合、液体輸送配管200の内部に空気Gが侵入してしまった場合等に起こり得る。
【0034】
液体輸送配管200の内部に空気Gが滞留している状態Iから大気圧よりも高い圧力の液体Lを液体輸送配管200に流通させていくと、当該液体輸送配管200の内部に滞留している空気Gは、接続配管105を経由してケーシング101のケーシング上室111に押し出される。ケーシング上室111からに押し出された空気Gは、均圧管104とケーシング下室112を経由して空気孔103から排出される。
【0035】
次に、液体輸送配管200の内部に滞留している空気Gが空気孔103から排出されると、空気孔103から排出された空気Gの体積に相当する液体Lが液体輸送配管200から接続配管105に流れ込む(矢印方向に流入する)。液体輸送配管200から接続配管105に流れ込んだ液体Lは、ケーシング101のケーシング上室111に流れ込む。ケーシング上室111に流れ込んだ液体Lは、ケーシング101をケーシング上室111とケーシング下室112に分割するために設置されているダイヤフラム102のダイヤフラム上面122に流れ込む。
【0036】
その結果、ダイヤフラム102の中央部Cは、ダイヤフラム102のダイヤフラム上面122に流れ込んだ液体Lによって、ケーシング101の下方に位置するケーシング下室112方向に凸状に変形する。このため、
図2に示されるようにダイヤフラム102の中央部Cが空気孔103の上端開口部131と接触することにより、空気孔103の上端開口部131は、ダイヤフラム下面123によって、完全にシールされる(状態II)。最終的に空気孔103の上端開口部131が完全にシールされ、この状態IIが維持されることにより、ケーシング101の内部に存在する空気Gがケーシング101の外部への流通が停止する。
図2にケーシング101の内部に存在する空気Gのケーシング101の外部への流通が停止した状態IIを示す。
【0037】
液体輸送配管200の内部を流通する液体Lの圧力がさらに高い場合には、ケーシング101のケーシング上室111内に流入した液体Lの液位は、さらに上昇する。ケーシング上室111内に流入した液体Lの液面が上昇すると、ケーシング101のケーシング上室111と均圧管104とケーシング下室112に存在している空気Gは、圧縮される。
【0038】
空気Gが圧縮される際に接続配管105の接続配管下端152が液体輸送配管200に接続されている位置には、ケーシング上室111に流入した液体Lの液面Sと接続配管下端152が液体輸送配管200に接続されている位置との差に基づく圧力P1と、圧縮された空気Gの圧力P2とを合計した圧力がかかる。ケーシング上室111に流入した液体Lの液面Sと接続配管105が液体輸送配管200の接続配管下端152に接続されている位置との差に基づく圧力P1と圧縮された空気Gの圧力P2とを合計した圧力が液体輸送配管200の内部に存在する液体Lの圧力と等しくなれば、ケーシング101のケーシング上室111の内部に存在する液体Lの液面Sの上昇は、停止する。
【0039】
ここで、液体輸送配管200の内部に存在する液体Lの圧力が高い場合には、液体輸送配管200からケーシング101のケーシング上室111への液体Lの流入が止まることがない。このため、ケーシング上室111に存在する液体Lは、均圧管104に流入した後、均圧管104から溢流することによって、ケーシング101のケーシング下室112にも均圧管104から溢流した液体Lとして流入する場合がある。
【0040】
しかしながら、ケーシング下室112に均圧管104から溢流した液体Lが流入していない場合であっても、ケーシング下室112に均圧管104から溢流した液体Lが流入している場合であっても、ダイヤフラム下面123にかかる圧力は、ダイヤフラム上面122にかかる圧力を超えることはない。
【0041】
すなわち、ケーシング下室112にも均圧管104から溢流した液体Lが流入していない場合には、ケーシング上室111に存在している液体Lの荷重があるため、その荷重に相当する分だけダイヤフラム上面122には、ダイヤフラム下面123よりも高い圧力がかかる。
一方、ケーシング下室112にも均圧管104から溢流した液体Lが流入している場合には、均圧管104に流入した液体Lの液位は、ケーシング101のケーシング上室111の内部に存在する液体Lの液位を超えることはない。
このため、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123にかかる圧力は、最大でもダイヤフラム上面122にかかる圧力と同じになる。
【0042】
さらに、ダイヤフラム102のダイヤフラム上面122は、その全面が圧力を受けるのに対して、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123は、その中央部C付近にかかる圧力が大気圧である。ダイヤフラム102のダイヤフラム上面122にかかる圧力は、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123にかかる圧力よりも大きくなる。このため、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123は、常に空気孔103の上端開口部131に押し付けられる。ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123は、空気孔103の上端開口部131に密着した状態となる。その結果、空気孔103の上端開口部131は、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123によって、空気孔103が完全にシールされた状態を保持する。
【0043】
このように、ダイヤフラム102によって、空気孔103がシールされた状態を保持しながら、液体輸送配管200に滞留している空気Gが接続配管105を経由してケーシング101のケーシング上室111の内部に流入する。空気Gが接続配管105を経由してケーシング上室111の内部に流入することにより、ケーシング上室111の内部に存在する液体Lの液面Sが下がり、ダイヤフラム102のダイヤフラム上面122にかかる液体Lの荷重が減る。その結果、ダイヤフラム102のダイヤフラム下面123が空気孔103の上端開口部131から離れて、空気抜き装置100の内部に存在する空気Gの一部が当該空気抜き装置100の外部に排出される。また、ケーシング下室112に液体Lが存在する場合は、空気抜き装置100の内部に存在する空気G及び液体Lが当該空気抜き装置100の外部に排出される。
【0044】
このようにして、空気抜き装置100の内部に存在する空気Gが当該空気抜き装置100の外部に排出されることにより、排出された空気Gに相当する体積の分だけ液体Lがケーシング101のケーシング上室111に流入する。
ケーシング上室111に流入した液体Lによって、再びダイヤフラム102がケーシング下室112側に凸状に変形して、ダイヤフラム102が空気孔103の上端開口部131に密着することにより、空気孔103が完全にシールされる。
【0045】
なお、液体輸送配管200の内部に存在する液体Lの圧力が大気圧よりも僅かに高い場合には、本実施形態に係る空気抜き装置100を用いることなく、公知の液封構造を採用して、液体輸送配管200の内部に存在する空気Gを排出することができる。具体的に、液体輸送配管200の内部に存在する液体Lの圧力が大気圧より0.5気圧高い程度である場合には、流体Lが流れる液体輸送配管200の上部から上方に向かってに空気抜きのための配管を立ち上げる。そして、立ち上げた配管内の液柱の圧力により、空気孔103をシールすることができる。
【0046】
しかしながら、本実施形態に係る空気抜き装置100は、液体輸送配管200の内部の圧力が高い場合であっても、ダイヤフラム102による空気孔103のシールが有効に作用して、液体輸送配管200からの液体Lの流出を有効に防止しつつ、当該液体輸送配管200に存在する空気Gを排出することにより、空気抜きを行うことができる点に優れた技術的特徴を有する。
【0047】
以上説明したように、第1実施形態に係る発明によれば、シール部が液体に直接接触しないように液体から隔離することにより、汚水など異物が混ざった液体を液体輸送配管により輸送してもフロートの動作が悪くなること、及びダイヤフラムと空気孔により形成されるシール部の密閉性が損なわれることがない空気抜き装置を提供することができる。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る空気抜き装置について説明する。本実施形態に係る空気抜き装置は、上記空気抜き装置において、前記溢流部は、前記液体輸送配管又は前記液体貯槽の内部に存在する前記液体が前記ケーシング上室に流入した場合における前記液体の液面の位置よりも高い位置に設置されていることを特徴とする。すなわち、本実施形態に係る空気抜き装置100は、ケーシング下室112への液体輸送配管200からの液体Lの流入を防止するための構成を備える。
【0049】
上記実施形態に係る空気抜き装置100において、ケーシング下室112に液体Lが流入したとしても、ダイヤフラム102による空気孔103のシールは機能する。このため、液体輸送配管200の内部に存在する空気Gの排出には問題がない。
【0050】
しかしながら、液体輸送配管200の内部に存在する空気Gを外部に排出する際にケーシング下室112に溜まった液体Lが空気抜き装置100の外部に流出することがある。このため、ケーシング下室112に液体Lが入らないようにすることがより好ましい場合がある。特に、液体Lに固形物が含まれる場合には、当該固形物がダイヤフラム102と空気孔103の端部との間に挟まり、空気孔103のシールを保持することができない事態が発生する。このような技術的観点からも、ケーシング下室112に液体Lが入らないようにすることが好ましい。そこで、本実施形態に係る空気抜き装置100は、以下のような形態を採用することにより、ケーシング下室112への液体Lの流入を防止するとともに、液体輸送配管200の内部に存在する空気Gを排出することができる。
【0051】
図3-1および
図3-2は、本実施形態に係る空気抜き装置が備えている均圧管が有する溢流部の一例を示した断面図である。
図3-1(a)に示されるように、本実施形態に係る空気抜き装置100が備えている均圧管104の上端部142は、ケーシング101のケーシング天井部101Tと接続している。なお、均圧管104の下端部143(図示しない)は、ケーシング101のケーシング下室112と接続している。均圧管104は、ケーシング101のケーシング天井部101Tから上方に垂直に延設して当該均圧管104の最も高い位置を始点として約90°折れ曲がり、そのまま水平状態を維持することにより形成された溢流部141Aを有する。
図3-1(a)において、溢流部141Aを太線で示す。
【0052】
同様に、
図3-1(b)に示されるように、均圧管104の上端部142は、ケーシング101のケーシング天井部101Tと接続している。均圧管104は、ケーシング101のケーシング天井部101Tから上方に約45°の角度にて延設して当該均圧管104の最も高い位置を始点として下方に鋭角に折れ曲がることにより形成された溢流部141Bを有する。
図3-1(b)において、溢流部141Bを黒丸で示す。
【0053】
さらに、
図3-2(c)に示されるように、均圧管104の上端部142は、ケーシング101のケーシング側面部101Sと接続している。均圧管104は、ケーシング101のケーシング側面部101Sからそのまま水平状態を維持に延設して水平部分を形成した後、下方に90°折れ曲がることにより形成された溢流部141Cを有する。
図3-2(c)において、溢流部141Cを太線で示す。
【0054】
また、さらに、
図3-2(d)に示されるように、均圧管104の上端部142は、ケーシング101のケーシング側面部101Sと接続している。均圧管104は、ケーシング101のケーシング側面部101Sから上方に約45°の角度にて延設して当該均圧管104の最も高い位置を支点として下方に鋭角に折れ曲がることにより形成された溢流部141Dを有する。
図3-2(d)において、溢流部141Dを黒丸で示す。
【0055】
このように、本実施形態に係る空気抜き装置100は、均圧管104に溢流部141A~Dを有している。これらの溢流部141A~Dは、いずれも液体Lの液面Sが上昇する位置よりも高い位置に設置されている。このため、本実施形態に係る空気抜き装置100は、ケーシング下室112への液体輸送配管200から流入した液体Lの流入を効果的に防止することができる。なお、均圧管104に設けられる溢流部の形態は、溢流部141A~Dに限定されるものでなく、ケーシング101、ケーシング上室111、ケーシング下室112、均圧管104の形態に応じて適宜設定することができる。
【0056】
以上説明したように、第2実施形態に係る発明によれば、ケーシング下室112への液体輸送配管200からの液体Lが流入することなく、液体輸送配管の内部に存在する空気をその外部に排出することができる空気抜き装置を提供することができる。
【0057】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る空気抜き装置について説明する。
本実施形態に係る空気抜き装置は、上記空気抜き装置において、ダイヤフラムが空気孔をシールした後に液体の液面の上昇する高さが所定の方法によって決定されることを特徴とする。本実施形態の空気抜き装置において、ダイヤフラムが空気孔をシールした後に液体の液面の上昇する高さは、実験によって算出することができるが簡易的な算出方法として、以下の方法を採用して決定することもできる。
【0058】
まず、ダイヤフラム102が下方に変形して、空気孔103をシールし始めた時の液体Lの液面Sの位置から、空気抜き装置100の内部に残留した空気の初期体積Viを求める。次に、その空気を液体輸送配管200内の液体Lの圧力まで加圧した際の加圧体積Vpを求める。ここで、空気抜き装置100の内部に残留している空気の圧力は、液体輸送配管200内の液体Lの圧力を上回ることはない。このため、加圧体積Vpは、空気が最も圧縮された場合の体積となる。
【0059】
この時、初期体積Viと加圧体積Vpとの差となる体積(Vi-Vp)は、液体輸送配管200からケーシング101のケーシング上室111への液体Lの流入によって圧縮された空気の体積と考えることができる。したがって、ダイヤフラム102が空気孔103をシールし始めた時のケーシング101のケーシング上室111内の液体体積に上記初期体積Viと上記加圧体積Vpとの差となる体積(Vi-Vp)を加えた体積がケーシング101のケーシング上室111内に流入する液体Lの最大体積Vmaxとなる。
【0060】
仮に、ケーシング101のケーシング上室111に最大体積の液体Lが流入した場合には、ケーシング上室111の液体Lの液面Sの高さが均圧管104における溢流部141の高さよりも低ければ、ケーシング下室112への液体Lの流入は起こらないこととなる。すなわち、ケーシング101のケーシング111内に最大体積Vmaxの液体Lが流入したときのケーシング101の液体Lの液面Sの高さが均圧管104における溢流部141の高さよりも低くなるように設定することにより、ケーシング下室112への液体Lの流入を防止することができる。
【0061】
つまり、本実施形態に係る空気抜き装置100において、ケーシング上室111の液体Lの液面Sの高さが均圧管104における溢流部141の高さよりも低くなるように設定するためにケーシング上室111、ケーシング下室112、均圧管104の体積、均圧管104の形状を決定すればよい。ケーシング上室111、ケーシング下室112、均圧管104の体積、及び均圧管104の形状を決定する際には、空気抜き装置100の設計仕様、使用条件の変動等を考慮して余裕を持たせて決定することもできる。
例えば、空気抜き装置100において、均圧管104の部分の体積が大きい場合は、液体Lの流入量が増えて液面Sが上がっても液体Lの流入による体積減少が均圧管104の体積に比べて小さいと圧力上昇が少なく液面Sの上昇が止まりにくい。また、空気抜き装置100において、ケーシング101の径が上方に向かって小さくなっている場合には、ケーシング101の径が上下で一定の場合よりも、同じ液体Lの流入量でも、密閉された空気Gの圧力上昇が起きやすい。すなわち、本実施形態に係る空気抜き装置100の設計仕様による液面Sの上昇、密閉された空気Gの圧力を考慮して、ケーシング上室111の液体Lの液面Sの高さが均圧管104における溢流部141の高さよりも低くなるように設定してもよい。
【0062】
なお、ダイヤフラム102が下方に変形して、空気孔103をシールし始めた時点における液体Lの液面は、当該時点においてダイヤフラム102の上部に係る荷重と、ダイヤフラム102の材質、その厚み等によって決定されるダイヤフラム102の変形性に基づいて推定することができる。また、ダイヤフラム102が下方に変形して、空気孔103をシールし始めた時点における液体Lの液面は、実験によって決定してもよい。
【0063】
このように、本実施形態に係る空気抜き装置100は、ダイヤフラム102が空気孔103をシールした後に液体Lの液面Sの上昇する高さを簡易な方法によって決定することができる。本実施形態に係る空気抜き装置100は、ケーシング101のケーシング上室111内に最大体積Vmaxの液体Lが流入したときのケーシング101の液体Lの液面Sの高さが均圧管104における溢流部141の高さよりも低くなるように設定することにより、ケーシング下室112への液体Lの流入を防止することができる。
【0064】
以上説明したように、第3実施形態に係る発明によれば、上記実施形態に係る空気抜き装置を使用することにより、ダイヤフラムが空気孔をシールし始めた時点の液体の液面の位置を簡易な方法により決定することにより、ケーシング下室に液体が流入することなく、液体輸送配管の内部に存在する空気抜きを実現することができる。
【0065】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステム、または装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0066】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
本発明に係る空気抜き装置100を用いて、液体輸送配管200の内部に存在する空気の空気抜きを行った。具体的には、汚水を0.5MPaの圧力にて送給する800Aの液体輸送配管に本発明に係る空気抜き装置を
図1に示すような配置で設置し、液体輸送配管200の空気抜きを実施した。
【0068】
ここで、空気抜き装置100が備えている円筒状の鋼製のケーシング101の径をΦ300mm、ケーシング上室111の高さを500mm、ケーシング下室112の高さを50mmに設定した。さらに、液体輸送配管200とケーシング上室111とを接続する接続配管105を50Aの接続配管とし、空気孔103の孔径Φを100mm、その高さ30mmのせり上がりとした。均圧管104は、直径20mmの鋼製の配管とし、ケーシング101の天井部から50mm立ち上げてから横方向に曲げた後、さらに下方に曲げることによって、ケーシング下室112の側面に接続した。ダイヤフラム102は、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)からなる薄膜と、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなるゴム薄膜との二層構造を採用し、シール部との接触側がポリエチレンテレフタレート(PTFE)からなる薄膜となるように設置した。
【0069】
液体輸送配管200に汚水を送給開始し、空気孔103から空気が排出されることを検知した。その後、汚水がケーシング上室111に約330mmの高さで溜まった時点で空気孔103がダイヤフラム102を構成するポリエチレンテレフタレート(PTFE)からなる薄膜によってシールされる。そして、配管内に流入した汚水は、ケーシング101の天井付近に達したところで汚水水位の上昇は停止する。その後、空気抜き装置100は、空気孔103がダイヤフラム102によってシールされた状態を維持した。
【0070】
このように、本発明に係る空気抜き装置は、液体がケーシング内に設けられたダイヤフラムより上方に設けられたケーシング上室に流入することによりダイヤフラムが下方向に変形してダイヤフラムの下方に設けられたケーシング下室に設けられた空気孔を塞ぐ構造である。このため、本発明に係る空気抜き装置は、フロートが動作不良を発生することがないことが明らかとなった。
本発明に係る空気抜き装置によれば、ケーシング内に設けられたダイヤフラムが変形することにより、ケーシング下室に設けられた空気孔を塞ぐことにより、液体輸送配管等に存在する空気を抜くことができるので、製鉄業等の関連発達に寄与し、産業上きわめて有用である。